説明

ドアウエストシール

【課題】ダストの捕集または捕捉機能を具備しながら、ドアガラス拭き取り性能の向上を図ったドアウエストシールの構造を提供する。
【解決手段】取付基部6とこの取付基部6から突出形成されたシールリップ7とを備え、シールリップ7のシール面7aがドアガラスと摺動することになるインサイドウエストシール4の構造である。シールリップ7のシール面7aに、上下方向を指向する直線状のダスト捕集溝10をシールリップ7の長手方向に沿って多数形成してある。各ダスト捕集溝10はドアガラス摺動方向に対し鋭角をなして傾斜しているとともに、隣り合うダスト捕集溝10,10同士はガラス昇降方向で互いにオーバーラップさせてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアウエスト部に装着されるシール部材であるところのドアウエストシールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドアウエストシール(広義の意味では「ドアウエザーストリップ」と称されることもある。)の構造として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。この特許文献1に記載されたものでは、ドアウエストシールのシール面にダストの捕集または捕捉機能を具備させるために、ドアウエストシールのうちドアガラスと摺動することになるシールリップのシール面に、ガラス昇降方向(上下方向)を指向する凹溝をドアウエストシールの長手方向に沿って多数並べて形成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−67579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたドアウエストシールの構造では、凹溝を設けたことによるダストの捕集または捕捉機能は期待できるものの、凹溝そのものの空間はドアガラスに接触しないことになるため、凹溝に相当する部分ではドアガラスの昇降時にドアガラスを拭き取ることができないことになる。特に、特許文献1に記載のように、ガラス昇降方向を指向する凹溝をドアウエストシールの長手方向に沿って多数形成してあると、いわゆる縦縞状に拭き取り残り(払拭残り)が発生することになり、シールリップによる拭き取り性能の向上の上でなおも改善の余地を残している。
【0005】
本発明はこのような従来技術のもつ課題に着目してなされたものであり、ダストの捕集または捕捉機能を具備しながら、ドアガラス拭き取り性能の向上を図ったドアウエストシールの構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造を前提としている。
【0007】
その上で、上記シールリップのシール面に上下方向を指向する斜めの部分を含むダスト捕集溝をシールリップの長手方向に沿って多数形成するとともに、隣り合うダスト捕集溝同士をガラス昇降方向で互いにオーバーラップさせてあることを特徴とする。
【0008】
この場合において、上記のようにダスト捕集溝は少なくとも一部に斜めの部分を含んでいれば良く、請求項2に記載のように、上記ダスト捕集溝の斜めの部分がドアガラスの昇降方向に対して鋭角をなしていることが望ましい。
【0009】
また、請求項3に記載のように、上記ダスト捕集溝のそれぞれは直線状のものであっても良いから、この場合にはダスト捕集溝そのものがドアガラスの昇降方向に対して鋭角をなして傾斜しているものとする。さらに、請求項4に記載のように、上記ダスト捕集溝のそれぞれは略S字状のものであっても良い。
【0010】
請求項5に記載の発明は、自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造を前提としている。その上で、上記シールリップのシール面に、上方を頂部とし下方を底辺とする略三角形状のダスト捕集溝を底辺同士が近接するようにシールリップの長手方向に沿って多数形成するとともに、各ダスト捕集溝の中央部には凸部を残してあることを特徴とする。
【0011】
この場合、請求項6に記載のように、各ダスト捕集溝の中央部に残された凸部は当該ダスト捕集溝と相似形をなす形状のものであり、且つダスト捕集溝の頂部と凸部とをガラス昇降方向で互いにオーバーラップさせてあることが望ましい。
【0012】
請求項7に記載の発明は、自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造を前提としている。その上で、上記シールリップのシール面に、独立した多数の突起部をシールリップの長手方向に沿って並設してなる突起群を複数段にわたって残すことで、それ以外の領域を格子状のダスト捕集溝とし、特定の段の突起群における突起部同士の間にその上段側または下段側の突起群におけるそれぞれの突起部が位置するようにそれぞれの突起群が互い違いの関係にあって、且つ特定の段の突起群におけるそれぞれの突起部の大きさがその上段側または下段側の突起群における突起部同士の間の距離と等しいかまたはそれよりも大きく設定してあることを特徴とする。
【0013】
この場合において、請求項8に記載のように、それぞれの突起群における各突起部が共に同じ大きさで且つ上下方向に長い長方形状のものであることが望ましい。
【0014】
請求項9に記載の発明は、自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造を前提としている。その上で、上記シールリップのシール面に、X字状のダスト捕集溝を互いに連続するようにシールリップの長手方向に沿って多数並設してあることを特徴とする。
【0015】
この場合において、請求項10に記載のように、隣り合うX字状のダスト捕集溝同士の間に菱形状の突起部が残されているとともに、隣り合う菱形状の突起部同士の間に上下で対をなす三角形状の突起部が残されているものとする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造を前提としている。その上で、上記シールリップに、そのシール面側から裏面に貫通する貫通孔を上下二つで一組としたものをシールリップの長手方向に沿って多数形成し、上下二つで一組とした貫通穴のそれぞれの位置をガラス昇降方向で一致させてあることを特徴とする。
【0017】
この場合において、ダストを下方に落ちやすいようにするためには、請求項12に記載のように、上記シールリップがドアガラスに圧接している状態では、上下二つで一組とした貫通穴のうち上側の貫通穴の軸線がシールリップの裏面側に向かって下り勾配となり、且つ下側の貫通穴の軸線がシールリップのシール面側に向かって下り勾配となるように設定してあることが望ましい。
【0018】
したがって、少なくとも請求項1〜4に記載の発明では、ダスト捕集溝によるダストの捕集または捕捉機能が発揮されることで、ドアガラスの傷付きや異音の発生を防ぐことができることはもちろんのこと、ダスト捕集溝同士がガラス昇降方向で互いにオーバーラップしていることにより、ドアガラスの拭き取り残りが発生することがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダストの捕集または捕捉機能を具備しながら、ドアガラスの拭き取り残りが発生することがないので、ドアガラスの拭き取り性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】自動車のドアの概略構造を示す示す図で、室内側から見た斜視図。
【図2】本発明に係るドアウエストシールの第1の形態を示す図で、図1のA−A線に沿う拡大断面説明図。
【図3】図2のB−B線に相当する断面図で、ドアガラス昇降動作時の断面図。
【図4】図2のB−B線に相当する断面図で、ドアガラス全閉時の断面図。
【図5】本発明に係るドアウエストシールの第2の形態を示す図で、図2と同等部位の拡大断面説明図。
【図6】本発明に係るドアウエストシールの第3の形態を示す図で、図2と同等部位の拡大断面説明図。
【図7】図6のC−C線に相当する断面図で、ドアガラス昇降動作時の断面図。
【図8】本発明に係るドアウエストシールの第4の形態を示す図で、図2と同等部位の拡大断面説明図。
【図9】本発明に係るドアウエストシールの第5の形態を示す図で、図2と同等部位の拡大断面説明図。
【図10】本発明に係るドアウエストシールの第6の形態を示す図で、図2と同等部位の拡大断面説明図。
【図11】図10のE−E線に相当する断面図で、ドアガラス昇降動作時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜4は本発明に係るドアウエストシールを実施するためのより具体的な第1の形態を示し、図1は自動車のドアの一例としてサッシュレスタイプのドアの概略構造を、図2は図1のA−A線に沿う断面の詳細を示している。すなわち、図2はドア1のドア本体2におけるドアウエスト開口部のインサイド側(室内側)およびアウトサイド側(室外側)のそれぞれにドアガラス3を挟んで対向配置されるされることになるドアウエストシールのうち、インサイド側に配置されるインサイドウエストシール4の例を示している。
【0022】
図1,2に示すように、ドアウエスト開口部を形成しているドアインナパネル5側のウエストフランジ部5aとレインフォース5bとの重合部にドアウエストシールとしてのインサイドウエストシール4が装着されている。
【0023】
インサイドウエストシール4は、取付基部6と、取付基部6から上下二段にわたって互いに平行に突出形成されたシールリップ7,8と、上側のシールリップ7に近接して突出形成されたカバーリップ9とを備えている。取付基部6は断面形状が略縦長コ字状に形成されているとともに、上下二段にわたってリブ6a,6bが突出形成されていて、取付基部6が先に述べたウエストフランジ部5aとレインフォース5bとの重合部に嵌合保持される。そして、上側のリブ6aから上側のシールリップ7とカバーリップ9とが、下側のリブ6bから下側のシールリップ8がそれぞれに斜めに突出形成されている。
【0024】
ここで、取付基部6には当該取付基部6と相似形をなす図示外の芯金が埋設されることがあるほか、ウエストフランジ部5aに圧接する係止リップ6cが突出形成されている。また、取付基部6が例えばEPDM等の硬質のソリッドゴム系材料で形成されるのに対して、上下のシールリップ7,8やカバーリップ9は軟質の発泡スポンジゴム系材料にて形成される。
【0025】
上側のシールリップ7のうちドアガラス3と摺動することになるシール面7aには、上下方向を指向する多数のダスト捕集溝10をシールリップ7の長手方向に沿って所定のピッチで且つ互いに平行に形成してある。これらのダスト捕集溝10はそれぞれが直線状のものであって、且つそれぞれがドアガラス3(図3参照)の昇降方向に対して鋭角をなして傾斜しているとともに、隣り合うダスト捕集溝10,10同士がドアガラス3の昇降方向で互いにオーバーラップするように設定してある。ここでは、図2のB−B線断面である図3に示すように、少なくとも三本のダスト捕集溝10,10同士がドアガラス3の昇降方向で互いにオーバーラップしている。なお、図3の矢印M2はドアガラス3の昇降方向を示す。また、図2では直線状のダスト捕集溝10全体がドアガラス3の昇降方向に対して鋭角をなして傾斜している場合の例を示しているが、ダスト捕集溝10の少なくとも一部に傾斜した斜めの部分が含まれていれば所期の目的を達成できる。
【0026】
したがって、このようなインサイドウエストシール4の構造によれば、図3に示すように、ドアガラス3の昇降動作時にそのドアガラス3と摺動することになるインサイドウエストシール4は、上側のシールリップ7が根元部から起立気味となってそのシール面7aがドアガラス3と相対摺動することになるので、ドアガラス3の室内側に面に付着しているダストDはダスト捕集溝10に捕集または捕捉されることになる。そして、ドアガラス3の昇降動作時においては、図3から明らかなように、シールリップ7のシール面7aのうち根元部に近い部分はドアガラス3から浮き上がり気味となってドアガラス3と摺動しないため、ダスト捕集溝10に捕集または捕捉されたダストDはドアガラス3とシール面7aとの相対摺動を繰り返すうちにやがては下方に落下することになる。なお、図2の矢印M1は捕集または捕捉後のダストDの移動方向を示している。
【0027】
また、上側のシールリップ7によるドアガラス3の拭き取り性に着目した場合、それぞれのダスト捕集溝10の凹状空間はドアガラス3に直接接触することはないものの、隣り合うダスト捕集溝10,10同士がドアガラス3の昇降方向で互いにオーバーラップしているため、シール面7aのうちそれらの隣り合うダスト捕集溝10,10同士の間に介在している細いシール面がドアガラス3と相対摺動することになる。その結果、ドアガラス3とシールリップ7とが相対摺動するかぎりにおいては、そのドアガラス3の室内側の全面がシールリップ7によって払拭または拭き取られて、拭き取り残りが発生することはない。
【0028】
ここで、ドアガラス3の昇降機構としてモータ駆動式のパワーウインドレギュレータ機構を採用している一般的なドアでは、昇降動作時のドアガラス3の位置と全閉時のドアガラス3の位置とが異なることが多い。これは、ドアガラス3を最上昇位置である全閉位置まで上昇させると、ドアガラス3のうちドアウエスト相当部がモータの余力により室外側に押し出されるためで、それに伴って図4に示すようにドアガラス3に対する上側のシールリップ7の圧接力が弱くなる傾向にある。このことは、図4に示すように、上側のシールリップ7におけるシール面7aの大部分がドアガラス3から離間し、シールリップ7の先端面7bのみがドアガラス3に圧接することを意味する。なお、上記のような昇降動作時のドアガラス3の位置と全閉時のドアガラス3の位置とが異なる当該ドアガラス3の挙動については、例えば特開2004−124645号公報に詳しい。
【0029】
そこで、本実施の形態では、上記のような全閉時におけるドアガラス3の挙動を考慮し、シールリップ7の先端面7bにはダスト捕集溝10を設定しないかたちとしてある。したがって、図4に示すように、シールリップ7の先端面7bがドアガラス3に密着することによりドアガラス3のとの間に隙間が発生する余地はなく、音や風あるいはダスト等が室内側に漏れ出すことはない。また、図4に示すように、ドアガラス3の全閉状態でその先端面7b付近にダストDが付着していたとしても、図3に示すようにドアガラス3が全閉状態から下降する過程でシール面7aにおけるいずれかのダスト捕集溝10に捕集または捕捉されることになる。
【0030】
このように本実施の形態によれば、ダスト捕集溝10によるダストDの捕集または捕捉機能を具備しながら、ドアガラス3の拭き取り残りが発生することがないので、ドアガラス3の拭き取り性能が向上することになる。
【0031】
なお、この実施の形態では、図1に示したようなサッシュレスタイプのドア1において、そのインサイドウエストシール4に適用した場合について例示しているが、サッシュタイプのドアはもちろんのこと、必要に応じてドアガラス3を挟んで対向配置されるアウトサイドウエストシールについても同様に適用することができる。さらに、図2において、上側のシールリップ7だけでなく、必要に応じて下側のシールリップ8にもダスト捕集溝10を設けることが可能である。
【0032】
図5は本発明に係るドアウエストシールを実施するための第2の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0033】
この第2の実施の形態では、図5に示すように、シールリップ7のシール面7aに形成されるそれぞれのダスト捕集溝20を上下方向に長い略S字状のものとしたものである。この略S字状のダスト捕集溝20にはドアガラス3(図3参照)の昇降方向に対して鋭角をなす斜めの部分が含まれているとともに、隣り合うダスト捕集溝20,20同士が互いにオーバーラップしている点では先の第1の実施の形態のものと共通している。なお、図5の矢印M3は略S字状のダスト捕集溝20で捕集または捕捉されたダストDの移動方向を示している。
【0034】
したがって、この第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることはもちろんのこと、略S字状のダスト捕集溝20を上下方向に引き伸ばしたと仮定した場合の展開長さが第1の実施の形態のものより長いので、ダストDの捕集または捕捉空間を一段と大きく確保できる利点がある。
【0035】
図6は本発明に係るドアウエストシールを実施するための第3の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0036】
この第3の実施の形態では、図6に示すように、シールリップ7のシール面7aに、上方を頂部とし下方を底辺とする略三角形状のダスト捕集溝、より具体的には縦長の二等辺三角形のダスト捕集溝30をその底辺同士が互いに近接するようにシールリップ7の長手方向に沿って多数並設し、各ダスト捕集溝30の中央部には当該ダスト捕集溝30と相似形をなす凸部11を残したものである。
【0037】
なお、隣り合うダスト捕集溝30,30の底辺同士が互いに接している必要はなく、また、凸部11は必ずしもダスト捕集溝30と相似形のものである必要はない。要は、ドアガラス3の昇降時にドアガラス3と摺動する位置に凸部11が設定されていて、なお且つその凸部11とダスト捕集溝30の頂部がドアガラス3の昇降方向で位置的にオーバーラップする関係にあれば良い。さらに、図6の矢印M4はダスト捕集溝30で捕集または捕捉されたダストDの移動方向を示している。
【0038】
したがって、この第3の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることはもちろんのこと、図7に示すように、ダスト捕集溝30のうちシールリップ7の根元部に近い部分、より具体的にはダスト捕集溝30のうち二等辺三角形の底辺近傍では、ドアガラス3に接触せずに当該ドアガラス3から浮き上がった状態となって下方に向かって大きく開放された状態となる。そのため、ダスト捕集溝30に捕集されて上方から下方に向かって順次移動するダストDが自重によって落下しやすいものとなる。
【0039】
また、上記シールリップ7によるドアガラス3の拭き取り性に着目した場合、それぞれのダスト捕集溝30の凹状空間はドアガラス3に直接接触することはないものの、上述の通り凸部11がダスト捕集溝30の頂部とオーバーラップする関係で設けられているため、シール面7aのうちそれらの隣り合うダスト捕集溝30,30同士の間に介在している三角状のシール面と凸部11とがドアガラス3と相対摺動することになる。その結果、拭き取り残りが発生することはない。
【0040】
図8は本発明に係るドアウエストシールを実施するための第4の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0041】
この第4の実施の形態では、図8に示すように、シールリップ7のシール面7aに縦長で長方形の独立した多数の突起部12をシールリップ7の長手方向に沿って横一連に並設してこれを突起群120とし、この突起群120を複数段(この実施の形態では三段)にわたって残すことで、それ以外の領域をシール面7aよりも一段低い格子状のダスト捕集溝40としてある。そして、特定の段の突起群120における突起部12,12同士の間にその上段側または下段側の突起群120におけるそれぞれの突起部12が位置するようにそれぞれの突起群120を互い違いの関係とし、さらに特定の段の突起群120におけるそれぞれの突起部12の大きさがその上段側または下段側の突起群120における突起部12,12同士の間の距離と少なくとも同等、望ましくはそれよりも大きいものとして設定してある。ここで、各突起部12の形状を縦長で長方形のものとしているのは、捕集したダストDを下方に落ちやすくするためである。なお、図8の矢印M5はダスト捕集溝40で捕集または捕捉されたダストDの移動方向を示している。
【0042】
したがって、この第4の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることはもちろんのこと、ダストDの捕集領域を一段と大きく確保できる利点がある。
【0043】
また、上記シールリップ7によるドアガラス3の拭き取り性に着目した場合、上述の通り特定の段の突起群120におけるそれぞれの突起部12の大きさがその上段側または下段側の突起群120におけるそれぞれの突起部12,12同士の間の距離と少なくとも同等、望ましくはそれよりも大きいものとして設定してあるため、特定の段の突起部12と少なくともその上段側または下段側の突起部12とがドアガラス3と相対摺動することになる。その結果、拭き取り残りが発生することはない。
【0044】
図9は本発明に係るドアウエストシールを実施するための第5の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0045】
この第5の実施の形態では、図9に示すように、シールリップ7のシール面7aに菱形状の独立した多数の突起部13をシールリップ7の長手方向に沿って横一連に並設してこれを菱形状の突起群130とするとともに、その菱形状の突起群130の上下において二等辺三角形の独立した多数の突起部14,15をシールリップ7の長手方向に沿ってそれぞれに横一連に並設してこれらを三角形の突起群140,150とし、これらの菱形状および三角形の突起群130,140,150を上下三段にわたって残すことで、それ以外の領域をシール面7aよりも一段低いダスト捕集溝50としてある。言い換えるならば、この第5の実施の形態では、シールリップ7のシール面7aに、X字状をなす多数のダスト捕集溝50を互いに連続するように当該シールリップ7の長手方向に沿って横一連に並設してある。
【0046】
より具体的には、シールリップ7のシール面7aにおいて、隣り合うX字状のダスト捕集溝50,50同士の間に菱形状の突起部13が残されているとともに、隣り合う菱形状の突起部13,13同士の間に上下で対をなす二等辺三角形の突起部14,15が残されていて、これらの菱形状の多数の突起部13からなる横一連の菱形状の突起群130、およびその上下において二等辺三角形の多数の突起部14,15からなる横一連の三角形の突起群140,150を残して、それ以外の領域をシール面7aよりも一段低い溝状空間とし、もってX字状をなす多数のダスト捕集溝50を互いに連続するように当該シールリップ7の長手方向に沿って横一連に並設してある。なお、図9のM6はダスト捕集溝60で捕集または捕捉されたダストDの移動方向を示している。
【0047】
この第5の実施の形態においても、先の第4の実施の形態のものと同様の効果が得られることになる。
【0048】
また、上記シールリップ7によるドアガラス3の拭き取り性に着目した場合、上述の通り菱形状の突起部13とその上下に二等辺三角形状14,15を残すことにより、X字状をなすダスト捕集溝50を形成しているため、菱形状の突起部13と少なくともその上下に残された二等辺三角形状14,15のいずれか一方とがドアガラス3と相対摺動することになる。その結果、拭き取り残りが発生することはない。
【0049】
図10は本発明に係るドアウエストシールを実施するための第6の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0050】
この第6の実施の形態では、図10に示すように、シールリップ7のシール面7aに、上下で対をなすダスト捕集のための貫通穴16,17をシールリップ7の長手方向に沿って所定のピッチで多数設けたものである。それぞれの貫通穴16,17はシールリップ7のシール面7aから裏面に貫通しているとともに、上下で対をなす貫通穴16,17同士はドアガラス3の昇降方向において位置的に一致していて、言い換えるならば上下で対をなす貫通穴16,17同士はドアガラス3の昇降方向において同一軸線上にて開口している。そして、図11に示すように、ドアガラス3の昇降時においてシールリップ7がドアガラス3に圧接している状態では、上側の貫通穴16の軸線がシールリップ7の裏面側に向かって下り勾配となり、なお且つ下側の貫通穴17の軸線もシール面7a側に向かって下り勾配となるように設定してある。
【0051】
したがって、この第6の実施の形態によれば、シールリップ7のシール面7aに上下で対をなす多数の貫通穴16,17が形成されてはいても、図11から明らかなように、ドアガラス3と圧接することになるシールリップ7の突出長の中間部分(上下で対をなす貫通穴16,17同士の間の領域)には貫通穴16または17が形成されていないので、そのシールリップ7の全長においてシール面7aがドアガラス3と圧接することになり、拭き取り残りが発生することがない。
【0052】
また、図11に示すように、ドアガラス3の昇降時においてシールリップ7がドアガラス3に圧接している状態では、上側の貫通穴16の開口縁がドアガラス3に圧接することになるものの、シールリップ7の根元部に近い下側の貫通穴17の開口縁はドアガラス3とは摺動しないことになる。そのため、ドアガラス3との摺動によって上側の貫通穴16で捕集または捕捉されたダストDは、やがては裏面側に向かって下り勾配をもつ上側の貫通穴16からシールリップ7の裏面に一旦は排出されることになるものの、そのシールリップ7の裏面を伝い落ちて再び下側の貫通穴17に捕集または捕捉されることになる。この場合、下側の貫通穴17についてもシール面7a側に向かって下り勾配を有していることになるので、この下側の貫通穴17にて捕集または捕捉されたダストDはシール面7a側において当該下側の貫通穴17から下方に向かって落下することになる。なお、なお、図10,11のM7は貫通穴16で捕集または捕捉されたダストDの移動方向を示している。
【0053】
ここで、これまでに述べた各実施の形態において、ダスト捕集溝10〜50は、例えばインサイドウエストシール4の押出成形後にレーザ加工あるいはローラによる挟み込み加工等にて加工するものとし、また貫通穴16,17についてはレーザ加工あるいはドリル加工等にて加工するものとする。さらに、各ダスト捕集溝10〜50の溝幅や貫通穴16,17の穴径は、標準的なダストの粒径が200μm程度であることから、その粒径よりも大きな寸法に設定する。こうすることにより、各ダスト捕集溝10〜50や貫通穴16,17がダストDを捕集したままであっても、ドアガラス3に傷を付けてしまうおそれがない。
【符号の説明】
【0054】
1…ドア
4…インサイドウエストシール(ドアウエストシール)
6…取付基部
7…シールリップ
7a…シール面
10…ダスト捕集溝
11…凸部
12…突起部
13…突起部
14…突起部
15…突起部
16…貫通穴
17…貫通穴
20…ダスト捕集溝
30…ダスト捕集溝
40…ダスト捕集溝
50…ダスト捕集溝
120…突起群
130…突起群
140…突起群
150…突起群
D…ダスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造であって、
上記シールリップのシール面に上下方向を指向する斜めの部分を含むダスト捕集溝をシールリップの長手方向に沿って多数形成するとともに、
隣り合うダスト捕集溝同士をガラス昇降方向で互いにオーバーラップさせてあることを特徴とするドアウエストシール。
【請求項2】
上記ダスト捕集溝の斜めの部分がドアガラスの昇降方向に対して鋭角をなしていることを特徴とする請求項1に記載のドアウエストシール。
【請求項3】
上記ダスト捕集溝のそれぞれは直線状のものであって、且つドアガラスの昇降方向に対して鋭角をなして傾斜しているものであることを特徴とする請求項1に記載のドアウエストシール。
【請求項4】
上記ダスト捕集溝のそれぞれは略S字状のものであることを特徴とする請求項1に記載のドアウエストシール。
【請求項5】
自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造であって、
上記シールリップのシール面に、上方を頂部とし下方を底辺とする略三角形状のダスト捕集溝を底辺同士が近接するようにシールリップの長手方向に沿って多数形成するとともに、
各ダスト捕集溝の中央部には凸部を残してあることを特徴とするドアウエストシール。
【請求項6】
各ダスト捕集溝の中央部に残された凸部が当該ダスト捕集溝と相似形をなす形状のものであり、且つダスト捕集溝の頂部と凸部とをガラス昇降方向で互いにオーバーラップさせてあることを特徴とする請求項5に記載のドアウエストシール。
【請求項7】
自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造であって、
上記シールリップのシール面に、独立した多数の突起部をシールリップの長手方向に沿って並設してなる突起群を複数段にわたって残すことで、それ以外の領域を格子状のダスト捕集溝とし、
特定の段の突起群における突起部同士の間にその上段側または下段側の突起群におけるそれぞれの突起部が位置するようにそれぞれの突起群が互い違いの関係にあって、且つ特定の段の突起群におけるそれぞれの突起部の大きさがその上段側または下段側の突起群における突起部同士の間の距離と等しいかまたはそれよりも大きく設定してあることを特徴とするドアウエストシール。
【請求項8】
それぞれの突起群における各突起部が共に同じ大きさで且つ上下方向に長い長方形状のものであることを特徴とする請求項7に記載のドアウエストシール。
【請求項9】
自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造であって、
上記シールリップのシール面に、X字状のダスト捕集溝を互いに連続するようにシールリップの長手方向に沿って多数並設してあることを特徴とするドアウエストシール。
【請求項10】
隣り合うX字状のダスト捕集溝同士の間に菱形状の突起部が残されているとともに、隣り合う菱形状の突起部同士の間に上下で対をなす三角形状の突起部が残されていることを特徴とする請求項9に記載のドアウエストシール。
【請求項11】
自動車のドアウエスト部に装着され、取付基部とこの取付基部から突出形成されたシールリップとを備えているとともに、シールリップのシール面がドアガラスと摺動することになるドアウエストシールの構造であって、
上記シールリップに、そのシール面側から裏面に貫通する貫通孔を上下二つで一組としたものをシールリップの長手方向に沿って多数形成し、
上下二つで一組とした貫通穴のそれぞれの位置をガラス昇降方向で一致させてあることを特徴とするドアウエストシール。
【請求項12】
上記シールリップがドアガラスに圧接している状態では、上下二つで一組とした貫通穴のうち上側の貫通穴の軸線がシールリップの裏面側に向かって下り勾配となり、且つ下側の貫通穴の軸線がシールリップのシール面側に向かって下り勾配となるように設定してあることを特徴とする請求項11に記載のドアウエストシール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−28203(P2013−28203A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163782(P2011−163782)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】