説明

ドアクローザ制御装置及び該装置を用いた電気錠システム

【課題】利用者に応じて扉の閉鎖速度を最適な速度に制御できる。
【解決手段】情報読取器30は、情報記憶媒体20に記憶された利用者用IDを読み取って認証判別器41に出力する。認証判別器41は、利用者用IDが入力されると、現在の調整弁52dの調整弁位置情報を位置検出手段53から取得し、この調整弁位置情報、利用者用ID、記憶手段41aに記憶された閉扉制御テーブルに基づいて利用者に応じた閉扉速度に制御するための閉扉速度値を設定して閉扉制御信号をドアクローザ制御手段42aに出力する。ドアクローザ制御手段42aは、認証判別器41に設定された閉扉速度値になるように、ドアクローザ50にドアクローザ制御信号を出力して調整弁52dの位置を調整し、ドアクローザ50の閉鎖速度を自動調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の入出口に設けられた扉の所定位置に介設されるドアクローザに係り、特に利用者に応じて扉の閉扉速度を最適な速度に自動制御することができるドアクローザ制御装置及び該装置を用いた電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の出入口などの開口部を開閉する扉において、扉の左右いずれかの側部と扉枠や壁部といった静止部材との間には、扉の上部に位置するドアクローザがヒンジ結合により回動自在に取り付けられている。
【0003】
下記特許文献1には手動式の開閉扉の上部に取り付けられた開閉時の速度調節が可能な油圧式ドアクローザが開示されている。図4に示すように、このドアクローザ101は、本体102がドアDの上縁の垂直面に固定されるとともに、本体上面102aの略中央より水平方向に延設されるアーム103の先端103aが建物側の上枠F1に固定されている。このドアクローザ本体102内には、図示しないが、ラック、ピニオン、コイルスプリングなどより構成される閉鎖機構が設けられているとともに、この閉鎖機構の作動が緩やかとなるように作動油が充填されている。また、ピニオンの軸となる作動軸は、本体102の上下両面より突出するように支持されて取り付けられ、上方に突出する作動軸の上端には、前記アーム103の基端103bが連結固定されている。
【0004】
アーム103は、中途が回動自在に支軸103cを介して折曲自在とされており、先端103aがブラケット104を介して回動自在に建物側の上枠F1に固定されている。すなわち、アーム103は、ドアDと建物側縦枠F2とを連結する蝶番Hとともに、リンク機構を構成している。また、ドアクローザ本体102の外側面としての側端面102cには、本体102内部に通ずる操作孔105が一対穿設されている。これら操作孔105は、図5に示すように、同軸心となる開口孔部106、雌ねじ部107、流路部108と、これら各部に対して直交する一対の連結流路109で構成されている。流路部108は、大径流路部108Aと絞り流路部108Bと小径流路部108Cとで構成され、各流路部間にはテーパ部108a,108bが介設されている。
【0005】
なお、一方の操作孔105Aでは、各連結流路109が、雌ねじ部107の位置と最奥の小径流路部108Cの位置とに、本体102内部へ通ずるようにそれぞれ形成され、また、他方の操作孔105Bでは、最奥の小径流路部108Cが一方の操作孔105Aの小径流路部108Cより長尺に形成され、各連結流路109が、大径流路部108Aの中途と小径流路部108Cの最奥位置にそれぞれ形成されている。そして、これら操作孔105には、速度調整弁110がそれぞれ取り付けられている。
【0006】
この速度調整弁110は、図5に示すように、ネジ部111と軸部112とが同軸心となって一体に形成された略軸状に形成されている。ネジ部111は、この速度調整弁110の基端を構成し、基端面側はネジ頭部113とされ、前記操作孔105の雌ねじ部107と螺合する雄ねじ部114が形成されるとともに、Oリングなどのシール材115が装着される凹溝部116が周面に形成され、また、このネジ頭部113の端面113aにドライバーなどの操作工具が嵌合する凹溝117が形成されている。
【0007】
また、軸部112は、速度調整弁110の先端側を構成し、ネジ部111にテーパ部118を介して設けられている。この軸部112は、ネジ部111より小径で、かつ操作孔105の大径流路部108Aより小径となるよう形成され、先端に軸部本体よりやや小径な絞り軸部119が設けられている。この絞り軸部119には、外周側面の一部に切欠部120が先端面に向けて形成されている。
【0008】
そして、この速度調整弁110は、前述した操作孔105にそれぞれ挿入されるとともに、雄ねじ部114が操作孔105の雌ねじ部107に螺着され、装着される。装着状態では、速度調整弁110の絞り軸部119が、操作孔105の絞り流路部108Bに嵌合し、挿入深さの調整で、絞り軸部119の切欠部120が流路の弁となるようになっている。すなわち、速度調整弁110をねじ込むと、切欠部120による流路が狭くなり、また、この速度調整弁110を緩めると切欠部120による流路が拡がるようになる。
【0009】
このドアクローザ1は、ドアDを開放状態から閉鎖させる際に、アーム基端103bに連結固定された作動軸がアーム103の作動により回動するが、内部の閉鎖機構により、ドアDを閉鎖する方向に付勢される。このとき、本体102内部に充填された作動油により、閉鎖の速度が緩やかとなるが、内部のラックがピストン状に作動するとともに、速度調整弁110による、操作孔105内の流路部108及び連結流路109を流れる作動油の量で、その速度を調整することができるようになっている。したがって、この速度調整弁110をねじ込み、絞り軸部119の切欠部120による流路を狭めて流量を小さくすれば、ドアDの閉鎖速度が遅くなる。これに対し、速度調整弁110を緩めて切欠部120による流路を広げて流量を大きくすれば、ドアDの閉鎖速度が速くなる。
このように、速度調整弁110を操作することにより、利用者の利便性に応じたドアDの開閉速度を容易に調節することができる。
【0010】
ところで、上記ドアクローザに加え、主に扉の閉鎖力を利用しつつモータの駆動により扉を開放位置から閉鎖位置に回動するとともに、開扉時には開扉方向に自動回動可能に駆動する扉の開閉速度を調節する速度調節機構が備え付けられた自動開閉扉用のドアクローザも知られている。このようなドアクローザとしては例えば下記特許文献2に開示されるものが公知である。
【0011】
さらに、近年、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等に設置された各種扉の錠前部分には、不審者の侵入を回避するため、防犯性に富んだ電気錠システムが採用されている。この種の電気錠システムは、ある特定の施解錠信号により、例えばモータやソレノイドなどの駆動手段を駆動してデッドボルトを扉枠のストライクの係止穴に対して電気的に進退させることで錠の施解錠を行っている。そして、近年では、通常の鍵穴挿入式の金属製の鍵に代わり、ICチップ内蔵カードや磁気カードなどを利用した施解錠カード、リモコンキーなどの無線通信機を用いて施解錠制御を行う電気錠システムが普及している。
なお、このような電気錠システムとしては、例えば下記特許文献3に開示されるようなものが公知である。
【特許文献1】特開平8−60936号公報
【特許文献2】特開平9−112123号公報
【特許文献3】特開平9−317272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献2や特許文献3に開示されるドアクローザでは、扉の閉鎖速度を調節するため、速度調整弁110を回動操作したり(特許文献2)、モータの駆動制御により予め設定された閉鎖速度に自動制御し(特許文献3)、利用者の利便性に応じた扉の閉鎖速度を調節している。
【0013】
しかしながら、特許文献2や特許文献3のドアクローザに限らず、通常の扉の閉鎖速度は、健常者の入退出時の速度に合わせて速度調整されている。このたため、入退室者が特に老人や身体に障害がある人の場合には、健常者と同じ速度で入退室ができない場合が多く、入退室し終える前に扉が閉鎖状態になって扉に挟まれて怪我をするなど、非常に扱いにくく、危険な面もあった。
【0014】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、健常者以外の人であってもその利用者に応じた閉鎖速度を制御することができるドアクローザ制御装置及び該装置を用いた電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のドアクローザ制御装置は、利用者を識別するための利用者用IDが予め記憶された情報記憶媒体を用いたドアクローザ制御装置であって、
扉の閉扉速度を調整するための調整弁を回転駆動する速度調整機構と、前記調整弁の回転位置に基づく調整弁位置を検出する位置検出手段とを備えたドアクローザと、
前記情報記憶媒体に記憶された前記利用者用IDを読み取る情報読取器と、
前記利用者用IDに該当する利用者個々に関する情報と、前記利用者個々の最適な閉扉速度に関する情報と、前記閉扉速度に応じて調整される前記調整弁の回転角度情報とが互いに関連付けされた閉扉制御テーブルを有し、前記情報読取器が読み取った前記利用者用IDと、前記位置検出手段が検出した調整弁位置に関する情報と、前記閉扉制御テーブルとに基づき前記速度調整機構を駆動して前記調整弁の位置を調整制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の電気錠システムは、請求項1記載のドアクローザ制御装置を用いた電気錠システムであって、
前記情報記憶媒体には電気錠の施解錠に必要な施解錠IDが記憶されており、
前記制御装置は、前記情報読取器が前記情報記憶媒体から読み取った前記施解錠IDの正当性を判別し、正常に認証したときのみ前記電気錠を施解錠制御することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、利用者が健常者や障害者に関わらず利用者に応じた最適な閉扉速度に自動調整することができ、扉を開閉した際に安全に入退室することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るドアクローザ制御装置を含む電気錠システムの概略構成の一例を示す概念図、図2は本発明に係るドアクローザ制御装置における速度調整機構を説明するための概略図、図3は本発明に係るドアクローザ制御装置の閉扉速度制御に関する処理動作を説明するためのフローチャート図である。
【0019】
なお、以下の最良の形態では、本例のドアクローザ制御装置を備えた扉の施解錠を電気的に行う電気錠システムに採用した例で説明するが、これに限定されるものではない。例えば、通常の金属製のシリンダ錠を用いた鍵穴挿入式の扉など、扉と建物枠との間に介設されたドアクローザに採用することができる。
【0020】
まず、本例のドアクローザ制御装置の構成について図1を参照しながら詳細に説明する。本例のドアクローザ制御装置1は、扉10と建物側の枠体との間に介設されたドアクローザ50に具備される速度調整機構を制御して利用者に応じた閉扉速度に自動制御するものである。
【0021】
ドアクローザ制御装置1は、図1に示すように、各種形態の情報記憶媒体20が用いられ、情報読取器30、制御装置40、ドアクローザ50を備えて概略構成される。また、扉10には、情報記憶媒体20に記憶された施解錠IDに基づいて電気的に錠前を施解錠する電気錠60が配設されている。
【0022】
なお、本例のドアクローザ制御装置1および電気錠60には、不図示の電源部から必要に応じた駆動電源が供給される。但し、電気錠60は電池駆動も可能とされている。
【0023】
情報記憶媒体20は、例えば磁気カード、ICカード、非接触ICチップ内蔵カードなどのカード状記憶媒体、リモコンキーや携帯電話などの各種通信機器などで構成される。情報記憶媒体20は、利用者ごとに割り当てられる利用者個人を識別するための利用者用ID(例えば年齢、健常者か障害者かの識別などの利用者を特定する情報)と、扉10に内蔵された電気錠60を施解錠するのに必要な施解錠IDとを記憶している。この情報記憶媒体20の利用者用IDと施解錠IDは、利用者が電気錠60を施解錠する際に、情報読取器30によって読み取られる。
【0024】
情報読取器30は、例えば磁気カード、ICカード、非接触ICチップ内蔵カードなどのカード状記憶媒体から情報(利用者用ID、施解錠ID)を読み取るカードリーダ、リモコンキーや携帯電話などの各種通信機器から送信される情報(利用者用ID、施解錠ID)を読み取るための受信器などで構成される。情報読取器30は、電気錠60の施解錠時に、情報記憶媒体20から利用者用IDと施解錠IDを読み取り、この読み取った各情報をシリアル通信で制御装置40に出力している。
【0025】
制御装置40は、認証判別器41と制御器42とを備えて構成され、情報読取器30からの利用者用IDや施解錠IDを受信し、この受信した各情報に基づき、ドアクローザ50や電気錠60の各種制御を行っている。
【0026】
認証判別器41は、各種情報の識別を行う認証機能を備えた機器からなり、記憶手段41aを備えている。記憶手段41aは、例えば例えば書き換え可能なROMやRAMなどの半導体メモリやHDDなどで構成される。記憶手段41aは、利用者用IDに該当する利用者に関する情報と、利用者毎に最適な閉扉速度に関する情報と、閉扉速度に応じた調整弁52dの回転角度情報とが互いに関連付けされた閉扉情報テーブルを記憶している。また、記憶手段41aは、情報読取器30から取得した施解錠IDが正当な認証情報であるか否かを判別するための認証用施解錠IDを記憶している。さらに、記憶手段41aは、閉扉情報テーブルや認証用施解錠IDの他、電気錠60を構成する各機器の機器情報、電気錠60のモニタ情報(錠前の施解錠状態を示す情報、扉の開閉状態を示す情報)を含む電気錠60全体の制御に関する各種データを記憶している。
【0027】
認証判別器41は、情報読取器30から利用者用IDを取得したときに、ドアクローザ50に備え付けられた後述する位置検出手段53に対し、現在の調整弁52dの回転位置に基づく調整弁位置情報を要求している。認証判別器41は、この要求に基づく位置検出手段53からの現在の調整弁52dの調整弁位置情報と、情報読取器30から取得した利用者用IDと、記憶手段41aに記憶された閉扉情報テーブルとに基づいて、利用者が健常者(或いは老人)であるか否か、調整弁52dの位置が正しいか否かなどを照合判別して利用者個々の識別を行い、この結果により、利用者に応じた最適な閉扉速度に制御するための閉扉速度値を設定し、この設定に基づく閉扉制御信号を制御器42に出力している。
【0028】
さらに、認証判別器41は、利用者用IDの認証判別と同時に情報読取器30から取得した施解錠IDと、記憶手段41aに予め記憶された認証用施解錠IDとを照合してその正当性を判別し、正常に認証したときのみ、電気錠60の施解錠制御を行うための施解錠制御信号を制御器42に出力している。
【0029】
制御器42は、例えばCPUやROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータで構成され、ドアクローザ制御手段42aと電気錠制御手段42bとを備えている。制御器42は、認証判別器41から入力される各種信号に基づいて各種制御を行う。
【0030】
ドアクローザ制御手段42aは、認証判別器41から入力される閉扉制御信号に基づく閉扉速度値になるように、ドアクローザ50の閉鎖速度を調整するためのドアクローザ制御信号をドアクローザ50に出力している。
【0031】
電気錠制御手段42bは、認証判別器41から施解錠制御信号が入力されると、そのときの電気錠60のモニタ情報(錠前の施解錠状態や扉10の開閉状態を示す情報)に応じて錠前を施解錠制御している。すなわち、現在の電気錠60の状態が施錠・閉扉であれば錠前を解錠制御し、現在の電気錠60の状態が解錠・閉扉であれば錠前を施錠制御している。また、電気錠制御手段42bは、錠前の施解錠に関する施解錠IDの入出力制御の他、錠前の施解錠時に駆動機構を駆動させるための駆動制御信号の出力、施解錠操作の指示入力時のモニタ情報(錠前の施解錠状態や扉10の開閉状態を示す情報)の判別処理などを行っている。
【0032】
ドアクローザ50は、建物の入出口に設置された扉10の上縁に固定されるクローザ本体51と、この本体51により延設されるアームの先端が建物側の枠に固定される閉鎖機構によって、開放した扉10を閉鎖させる際にその閉鎖方向に移動を付勢して扉10を閉鎖している。
【0033】
また、ドアクローザ50は、扉10を閉鎖する際にアームの回動速度を調整するための速度調整機構52を具備し、制御装置40からのドアクローザ制御信号を、例えば扉10の蝶番に組み込まれた蝶番型の通電金具11や金具本体が扉10と枠体とに分離されて組み込まれた蛇腹型の通電金具11を介して入力し、このドアクローザ制御信号に基づいて速度調整機構52を駆動制御して扉10の閉扉速度を最適速度に自動調整している。
【0034】
速度調整機構52は、図2に示すように、例えばステッピングモータなどの駆動手段52aと、所定のギア比で駆動手段52aの回転速度を減速する複数のギアからなる動力伝達機構としてのギア機構52bとを有する調整弁駆動機構52cと、調整弁駆動機構52cを介しての回転によって閉扉速度が調整可能な調整弁52dとを備えて構成される。速度調整機構52は、制御器42のドアクローザ制御手段42aからドアクローザ制御信号が入力されたときに、このドアクローザ制御信号に基づいて駆動手段52aを駆動し、その動力(回転力)をギア機構52bを介して調整弁52dに伝達する。そして、この動力の伝達により調整弁52dを回転させ、閉鎖機構の回動速度を調整し、扉の閉扉速度を最適値に自動調整している。
【0035】
また、速度調整機構52は、例えばエンコーダなどの位置検出手段53を備え、認証判別器41から調整弁位置情報の要求があったときに、予め設定された調整弁52dの基準位置を基に現在の調整弁52dの回転位置を検出し、この検出した回転位置に基づく調整弁位置情報を認証判別器41に出力している。
【0036】
なお、ドアクローザ50としては、調整弁52dを回転させることで扉の閉扉速度が可変できる構成であれば良く、例えば図4や図5に示す構成を採用した場合には、速度調整弁110が調整弁52dに相当する。
【0037】
電気錠60は、例えばモータやアクチュエータなどの駆動機構を備えて構成され、電気錠60を駆動する際に、電気錠制御手段42bから錠前の施錠または解錠に必要な駆動制御信号が入力され、この制御信号の入力により扉10枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことで施解錠する。
【0038】
次に、上記構成によるドアクローザ制御装置1の処理動作について図3を参照しながら説明する。ここでのドアクローザ制御装置1は、図1に示すように、情報記憶媒体20として施解錠カードを用いて錠前の施解錠を行うカード式の電気錠60を用いた電気錠システムに採用し、健常者であるか障害者であるかの判別に基づいて扉10の閉扉速度を自動調整する処理を例にとって説明する。なお、図3では、扉10の閉扉速度を自動調整する閉扉速度制御に関する処理のみを示している。
【0039】
利用者は、電気錠60を施解錠するため、所持する施解錠カード(情報記憶媒体20)を情報読取器30にかざす。これにより、施解錠カードに記憶された利用者用IDと施解錠IDとを情報読取器30に受信させて読み取らせる(ST1)。
【0040】
情報読取器30は、施解錠カードから受信して読み取った利用者用IDと施解錠IDとを制御装置40に出力する。制御装置40の認証判別器41は、情報読取器30から利用者用IDが入力されると、調整弁52dの現在の位置を確認するべく位置検出手段53に調整弁位置情報を要求して確認する(ST2)。そして、認証判別器41は、位置検出手段53から調整弁位置情報を取得すると、利用者用IDに最適な閉扉速度に制御するための照合判別を行うため、まず情報読取器30が読み取った利用者用IDが健常者を示すものか否かの判別を行う(ST3)。
【0041】
そして、情報読取器30が読み取った利用者用IDが健常者を示すものであると判別すると(ST3−Yes)、利用者用IDに応じた調整弁52dの位置になっているか否かの判別を行う(ST4)。これに対し、情報読取器30が読み取った利用者用IDが健常者を示すものでないと判別すると(ST3−No)、利用者が障害者であると認識し、この利用者用IDに応じた調整弁52dの位置になっているか否かの判別を行う(ST5)。
【0042】
次に、ST4において、調整弁52dの位置が利用者用IDに応じた位置であると判別すると(ST4−Yes)、調整弁52dの位置を調整せず(ST6)、処理を終了する。これに対し、調整弁52dの位置が利用者用IDに応じた位置でないと判別すると(ST4−No)、認証判別器41の認証判別結果に基づくドアクローザ制御手段42aの制御により、調整弁52dの位置が利用者に応じた最適値に調整され(ST7)、ドアクローザ50を最適な閉鎖速度に自動制御し、処理が終了する。
【0043】
また、ST5において、調整弁52dの位置が利用者用IDに応じた位置であると判別すると(ST5−Yes)、調整弁52dの位置を調整せず(ST7)、処理を終了する。これに対し、調整弁52dの位置が利用者用IDに応じた位置でないと判別すると(ST5−No)、認証判別器41の認証判別結果に基づくドアクローザ制御手段42aの制御により、調整弁52dの位置が利用者に応じた最適値に調整され(ST6)、ドアクローザ50を最適な閉鎖速度に自動制御し、処理が終了する。
【0044】
なお、ドアクローザ制御装置1は、上述した閉扉速度制御と同時に、情報読取器30が情報記憶媒体20から読み取った施解錠IDの照合判別も行っており、照合した結果、読み取った施解錠IDが正当であると認証したときは、施解錠を行うための施解錠制御信号を電気錠60に出力し、電気錠60を電気的に施解錠制御している。
【0045】
このように、上述したドアクローザ制御装置1は、利用者が所持する情報記憶媒体20の利用者用IDを情報読取器30が読み取って制御装置40の認証判別器41に出力する。認証判別器41は、利用者用IDが入力されると、現在の調整弁52dの位置を確認するための調整弁位置情報を位置検出手段53から取得し、この調整弁位置情報と利用者用IDと記憶手段41aに記憶された閉扉制御テーブルとに基づいて利用者に応じた閉扉速度に制御するための閉扉制御信号を制御器42のドアクローザ制御手段42aに出力する。そして、ドアクローザ制御手段42aは、認証判別器41からの閉扉制御信号に基づいてドアクローザ50を制御するためのドアクローザ制御信号をドアクローザ50に出力し、ドアクローザ50の閉鎖速度を自動調整する。これにより、ドアクローザの閉鎖速度は、利用者が健常者や障害者に関わらず利用者に応じた最適な閉扉速度に自動調整され、扉10を開閉した際に安全に入退室することができる。
【0046】
ところで、図3を用いた説明では、情報記憶媒体20から取得した利用者IDが健常者を示すものか否かに応じて調整弁52dの位置調整を行う場合を例にとって説明したが、現在の調整弁位置情報に基づいて認証判別器41の記憶手段41aに記憶された閉扉制御テーブルを参照し、利用者ID毎に調整弁52dの位置調整を行うことができる。
【0047】
また、上述した形態では、電気錠システムに採用した例で説明したが、これに限定されることはなく、従来から知られている鍵穴式の錠前を配設した扉10でも使用することができる。この場合、電気的な電気錠60の施解錠制御に関する構成や処理動作が不要となり、上述した実施形態よりもさらに簡素な構成となる。
【0048】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るドアクローザ制御装置を含む電気錠システムの概略構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明に係るドアクローザ制御装置における速度調整機構を説明するための概略図である。
【図3】本発明に係るドアクローザ制御装置の処理動作を説明するためのフローチャート図である。
【図4】従来のドアクローザの概略を説明するための全体概略斜視図である。
【図5】従来のドアクローザの一部を拡大した分解断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ドアクローザ制御装置
10 扉
11 通電金具
20 情報記憶媒体
30 情報読取器
40 制御装置
41 認証判別器
41a 記憶手段
42 制御器
42a ドアクローザ制御手段
42b 電気錠制御手段
50 ドアクローザ
51 クローザ本体
52 速度調整機構
52a 駆動手段
52b ギア機構
52c 調整弁駆動機構
53 位置検出手段
60 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を識別するための利用者用IDが予め記憶された情報記憶媒体を用いたドアクローザ制御装置であって、
扉の閉扉速度を調整するための調整弁を回転駆動する速度調整機構と、前記調整弁の回転位置に基づく調整弁位置を検出する位置検出手段とを備えたドアクローザと、
前記情報記憶媒体に記憶された前記利用者用IDを読み取る情報読取器と、
前記利用者用IDに該当する利用者個々に関する情報と、前記利用者個々の最適な閉扉速度に関する情報と、前記閉扉速度に応じて調整される前記調整弁の回転角度情報とが互いに関連付けされた閉扉制御テーブルを有し、前記情報読取器が読み取った前記利用者用IDと、前記位置検出手段が検出した調整弁位置に関する情報と、前記閉扉制御テーブルとに基づき前記速度調整機構を駆動して前記調整弁の位置を調整制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とするドアクローザ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のドアクローザ制御装置を用いた電気錠システムであって、
前記情報記憶媒体には電気錠の施解錠に必要な施解錠IDが記憶されており、
前記制御装置は、前記情報読取器が前記情報記憶媒体から読み取った前記施解錠IDの正当性を判別し、正常に認証したときのみ前記電気錠を施解錠制御することを特徴とする電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−202275(P2008−202275A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37907(P2007−37907)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】