説明

ドアグラスラン

【課題】底壁部に打音緩衝リップが付帯するドアグラスランについて、ドアグラスランサッシュに対する組付性を改善する。
【解決手段】室内側の側壁部8と底壁部10との間に形成された斜状壁部16と、底壁部10の外面側に突出形成された打音緩衝リップ(突起部)24と、ドアサッシュ3の室内側の係止段状部5aに係止される室内側保持リップ22と、室内側の側壁部8と斜状壁部16との接続部に形成された屈曲容易部17とを備える。屈曲容易部17は、室内側の側壁部8と斜状壁部16との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていて、室内側の側壁部8が屈曲容易部17からチャンネル状空間の内方に向けて折り曲げ可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアにおけるドアサッシュの内周に装着されて、ドアガラスを昇降可能に案内支持しつつドアガラス閉時のシール性を確保するためのドアグラスランの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、この種のドアグラスランの構造においては、例えばドアサッシュ上辺部の断面図である図5に示すように、室内側の側壁部51と室外側の側壁部52およびそれら双方の側壁部51,52を接続する底壁部53とで断面略チャンネル状に形成されているとともに、それぞれの側壁部51,52の先端からチャンネル状空間の内方に向けてシールリップ54,55が突出形成されていて、ドアグラスラン50がドアサッシュ56に嵌合保持された状態でドアガラスGを昇降可能に案内支持するものである。
【0003】
そして、室内側の側壁部51と底壁部53とのなすコーナー部に着目した場合、ドアサッシュ56の内底面に当接する底部シールリップ57およびドアサッシュ56の段状部58に係止される保持リップ59とは別に、底壁部53にドアガラスGが当接した際の打音の緩衝を目的として、底壁部53の外面側において打音緩衝リップ60を突設することがある。この打音緩衝リップ60は、底壁部53の外面側において当該底壁部53に対するドアガラスGの当接位置よりも室内側に設定され、この打音緩衝リップ60の存在のために底壁部53とドアサッシュ56の内底面との間には所定の空隙61が確保される。なお、上記打音緩衝リップ60を有するドアグラスランは特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−281833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示したドアグラスラン50の構造では、底部シールリップ57や保持リップ59に加えて打音緩衝リップ60があるために、特に室内側の側壁部51と底壁部53とのなすコーナー部での断面剛性が相対的に高いものとなり、ドアサッシュ56に対するドアグラスラン50の組付性が極端に悪くなるという二次的不具合が発生する。
【0006】
より具体的には、ドアサッシュ56に対するドアグラスラン50の組み付けに際しては、先ずドアグラスラン50を内側に押し潰すように弾性変形させながらドアサッシュ56のチャンネル状空間に押し込み、次いで相対的に薄肉で剛性感の低い室外側の側壁部52を正規位置に着座させるように嵌合させることになる。この段階では、底壁部53および室内側の側壁部51はなおも不完全な嵌合状態にあることから、最後に相対的に厚肉で剛性感の高い室内側の側壁部51を図5の矢印Q方向に押し込んで底壁部53とともに正規嵌合状態とすることになる。
【0007】
その際に、底部シールリップ57の撓み反力に加えて、ドアサッシュ56の内底面に対する打音緩衝リップ60の底突きに伴う反力が矢印Q方向の押し込み力に対抗するかたちとなり、特に矢印Q方向の押し込み力が保持リップ59に挿入力として効果的に伝わらないことになる。その結果、保持リップ59がドアサッシュ56側の段状部58を乗り越えることができず、保持リップ59を段状部58に正しく係止させることができないことになる。
【0008】
したがって、保持リップ59を段状部58に正しく係止させる手段として例えばヘラ状の治具を用い、室内側の側壁部51と底壁部53とのなすコーナー部を斜め方向(矢印R方向)に無理押しする以外に方法がなく、ドアサッシュ56に対するドアグラスラン50組付性が極端に悪いものとなっているのが実情である。
【0009】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、先に述べたような打音緩衝リップが付帯するドアグラスランについて、ドアサッシュに対する組付性を改善した構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、室内側の側壁部と室外側の側壁部およびそれら双方の側壁部を接続する底壁部とで断面略チャンネル状に形成されているとともに、それぞれの側壁部の先端からチャンネル状空間の内方に向けてシールリップが突出形成されていて、ドアサッシュに嵌合保持された状態でドアガラスを昇降可能に案内支持するドアグラスランである。
【0011】
その上で、上記室内側の側壁部と底壁部との間に形成された斜状壁部と、上記底壁部の外面側であって且つ当該底壁部に対するドアガラスの当接位置よりも室内側に突出形成されていて、ドアサッシュに当接することで底壁部とドアサッシュとの間に空隙部を形成する突起部と、上記室内側の側壁部の外面側において斜状壁部を延長するように突出形成されていて、ドアサッシュの室内側の段状部に係止される室内側保持リップと、上記室内側の側壁部と斜状壁部との接続部に形成された屈曲容易部と、を備えている。そして、上記室内側の側壁部が屈曲容易部からチャンネル状空間の内方に向けて折り曲げ可能となっていることを特徴とするものである。
【0012】
この場合において、請求項2に記載のように、上記屈曲容易部は、室内側の側壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されているものとする。
【0013】
また、請求項3に記載のように、上記斜状壁部の外面側であって且つ突起部よりも室内側にドアサッシュに当接する底部シールリップが突出形成されていても良い。
【0014】
より具体的には、請求項4に記載のように、上記突起部は底壁部と斜状壁部との接続部に形成されているものとする。
【0015】
さらに、請求項5に記載のように、上記底壁部と斜状壁部との接続部に別の屈曲容易部が形成されていても良い。
【0016】
この場合において、請求項6に記載のように、上記別の屈曲容易部は、底壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されているものとする。
【0017】
さらにまた、請求項7に記載のように、上記室外側の側壁部の外面側にドアサッシュの室外側の段状部に係止される室外側保持リップが突出形成されていても良い。
【0018】
加えて、請求項8に記載のように、上記室内側の側壁部と斜状壁部との接続部に形成された屈曲容易部に近接して、例えばドアグラスランの長手方向での縮み防止のための金属製のワイヤが埋設されていても良い。
【0019】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、室内側の側壁部を屈曲容易部からチャンネル状空間の内方に向けて折り曲げた状態で当該室内側の側壁部に押し込み力を加えると、その押し込み力は室内側の保持リップに直接伝わることから、底壁部側の突起部の存在に左右されることなく、その室内側の保持リップはドアサッシュの室内側の段状部を簡単に乗り越えることが可能である。これにより、室内側の保持リップは室内側の段状部を乗り越えた時点で直ちにその室内側の段状部に正しく係止されることになる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、底壁部側の突起部の存在に左右されることなく、室内側の保持リップを室内側の段状部に容易に係止させることができるので、ドアサッシュに対するドアグラスランの組付性が大幅に向上する。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、屈曲容易部が、室内側の側壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていることにより、室内側の側壁部を屈曲容易部からチャンネル状空間の内方に向けて折り曲げる際の折り曲げ容易性に優れたものとなる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、斜状壁部に底部シールリップが突出形成されていることにより、シール性を確保できる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、ドアサッシュに対するドアグラスランのクッション性を確保でき、ドアガラスが当接した際の打音の発生を抑制または緩和できる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、底壁部と斜状壁部との接続部に別の屈曲容易部が形成されていることにより、ドアグラスランを押し潰すように撓み変形させて最初にドアサッシュに挿入する際の挿入容易性に優れたものとなる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、別の屈曲容易部が、底壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていることにより、上記挿入容易性が一段と優れたものとなる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、室外側の側壁部の外面側にドアサッシュの室外側の段状部に係止される室外側保持リップが突出形成されていることにより、ドアサッシュに対すドアグラスランの嵌合保持性が一段と良好なものとなる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、室内側の側壁部と斜状壁部との接続部に形成された屈曲容易部に近接して金属製のワイヤが埋設されていることにより、ワイヤ埋設部位の剛性が高められいて、室内側の側壁部の押し込み力をより確実に室内側の保持リップに伝えることができ、室内側の段状部に対する室内側の保持リップの係止が容易に且つより確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】自動車のフロントドアの概略説明図。
【図2】本発明を実施するためのより具体的な第1の形態を示す図で、図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】図2に示すドアグラスランの組付時の挙動を示す説明図。
【図4】本発明を実施するためのより具体的な第2の形態を示す要部断面図。
【図5】打音緩衝リップを備えるドアグラスランの一例を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1,2は本発明を実施するためのより具体的な形態を示し、図1は自動車のフロントドアの概略説明図を、図2は図1のA−A線に沿う拡大断面図をそれぞれ示している。すなわち、図2は、ドア本体2とそのドアウエスト部2aから上方のアーチ状のドアサッシュ3とからなる図1のフロントドア1において、車体側のルーフ部に沿うかたちとなるサッシュ上辺部3aでの拡大断面図を示している。なお、ここでは、サッシュ縦辺部3bでの断面形状については特に問わないものとする。
【0030】
図2に示すように、ドアサッシュ3のサッシュ上辺部3aはロールフォーミングにより所定の断面形状に成形されたものであって、開放側の溝幅よりも奥部側の溝幅の方が大きいドアグラスラン嵌合溝部として機能するチャンネル部4が曲折形成されている。チャンネル部4の室内側の面には張り出し部5をもってその上部に室内側の係止段状部5aが、室外側の面には極太の端末部6をもってその上部に室外側の係止段状部6aがそれぞれに形成されている。そして、このチャンネル部4にドアグラスラン7が嵌合保持されることになる。
【0031】
ドアグラスラン7は、周知のように、室内側の側壁部8と室外側の側壁部9およびそれら双方の側壁部8,9を接続する底壁部10とで断面略チャンネル状に形成されているとともに、それぞれの側壁部8,9の先端からチャンネル状空間の内方に向けてインナ側,アウタ側のそれぞれのシールリップ11,12が斜めに突出形成されている。そして、後述する室内側保持リップ22が室内側の係止段状部5aに、室外側保持リップ20が室外側の係止段状部6aにそれぞれ係止されるようにして、ドアグラスラン7がドアサッシュ3に嵌合保持されて、この状態でドアグラスラン7のチャンネル状空間で受容したドアガラスGを昇降可能に案内支持するとともに、ドアガラスG閉時のシール性を確保するようになっている。
【0032】
室内側の側壁部8は室外側の側壁部9および底壁部10に比べて相対的に厚肉のものとして形成されているとともに、同様に室内側のシールリップ11は室外側のシールリップ12に比べて厚肉のものとして形成されていて、図2から明らかなように、室外側に偏った状態でチャンネル状空間にドアガラスGを受容することになる。なお、室内側の側壁部8の先端には室内側のシールリップ11と逆向きにカバーリップ13が突出形成されていて、同様に室外側の側壁部9の先端には室外側のシールリップ12と逆向きにカバーリップ14が突出形成されている。これらのカバーリップ13,14はチャンネル状空間の開放端においてそれぞれドアサッシュ3に圧接することになる。
【0033】
室外側の側壁部9と底壁部10とはノッチ部15による局部的な肉厚減少部にて接続されている一方、室内側の側壁部8と底壁部10とは両者の間に介在する斜状壁部16を介して相互に接続されている。この斜状壁部16はその内外面共に底壁部10および室内側の側壁部8に対して所定角度だけ傾斜していて、室内側の側壁部8から底壁部10側に向かってその肉厚が漸次小さくなるように徐変している。そして、室内側の側壁部8と斜状壁部16との接続部では、その内面側が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていて、この肉厚減少部が斜状壁部16に対する室内側の側壁部8の屈曲容易部17として機能するようになっている。つまり、屈曲容易部17と後述する室内側保持リップ22の根元部とのなす肉厚が最も小さいものとなっている。
【0034】
同様に、斜状壁部16と底壁部10との接続部では、斜状壁部16の最小肉厚部が内面側に段差をもった状態で接続されていることにより、実質的にその内面側が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていて、この肉厚減少部が底壁部10に対す斜状壁部16の屈曲容易部18として機能するようになっている。
【0035】
室外側の側壁部9の根元側にはドアサッシュ3の内底面3bに向かって比較的厚肉の膨出部19が突出形成されているほか、室外側の側壁部9の外面には室外側保持リップ20とともにサブシールリップ21が突出形成されている。そして、サブシールリップ21がチャンネル部4の内面に圧接しつつ室外側保持リップ20が室外側の係止段状部6aに係止され、且つ先に述べた室外側のカバーリップ14がドアサッシュ3の開放側の端縁に圧接することで、少なくとも室外側の側壁部9はドアサッシュ3の正規位置に対して嵌合保持されることになる。
【0036】
他方、斜状壁部16の外面側においては、その外面をそのまま室内側の側壁部8に向かって延長するようにして図2の斜め下向きに室内側保持リップ22が突出形成されているとともに、斜状壁部16の外面側であって且つ底壁部10に近い部分から図2の斜め上向きに底部シールリップ23が突出形成されている。
【0037】
そして、底部シールリップ23がチャンネル部4の内底面3bに圧接しつつ室内側保持リップ22が室内側の係止段状部5aに係止され、且つ先に述べた室内側のカバーリップ13がドアサッシュ3の開放側の端縁に圧接することで、少なくとも室内側の側壁部8はドアサッシュ3の正規位置に対して嵌合保持されることになる。
【0038】
以上の説明で明らかなように、底部シールリップ23の撓み変形に基づく反力のほか、室内側,室外側のそれぞれのカバーリップ13,14の撓み変形に基づく反力を受けて、室外側保持リップ20が室外側の係止段状部56aに、室内側保持リップ22が室内側の係止段状部5aに、それぞれ押し付けられるようにしていわゆる引っ掛かりの関係となって係止されることになる。
【0039】
また、底壁部10の外面側であって且つ当該底壁部10に対するドアガラスGの当接位置よりも室内側、より具体的には底壁部10の外面側であって底部シールリップ23に近い部分、すなわち室内側の斜状壁部16と底壁部10との接続部に相当する位置には、当該底壁部10から直立する突起部としての打音緩衝リップ24がビード状に突出形成されている。この打音緩衝リップ24は、底壁部10に対して底突きするようなかたちでドアガラスGが当接した際の打音の発生を抑制または緩和する機能を有するものである。これらの打音緩衝リップ24や先に述べた膨出部19があることによって、底壁部10とドアサッシュ3の内底面3bとの間には所定の間隙25が確保されることになる。
【0040】
ただし、ドアサッシュ3に対するドアグラスラン7の正規嵌合状態では、先に述べたように室外側保持リップ20、室内側保持リップ22、双方のカバーリップ13,14および底部シールリップ23のそれぞれの撓み変形に基づく反力をもって弾性的に嵌合支持されているので、設計上は膨出部19および打音緩衝リップ24がドアサッシュ3の内底面3bに当接しないように設定されている。
【0041】
なお、図2から明らかなように、室内側の側壁部8と斜状壁部16との接続部であって屈曲容易部17の直近位置には、ドアグラスラン7そのものの縮み防止のために長手方向に沿って金属製のワイヤ26を埋設してある。同様に、室外側の側壁部9のうち室外側保持リップ20の根元部に相当する位置にも長手方向に沿って金属製のワイヤ27を埋設してある。
【0042】
ここで、ドアグラスラン7自体は、例えばTPOと称されるオレフィン系熱可塑性エラストマー、具体的にはポリプロピレン(PP)にEPDMをブレンドした熱可塑性エラストマーにより形成される。
【0043】
したがって、このように構成されたドアグラスラン7をドアサッシュ3に嵌合保持させるにあたっては、図2のほか図3に示すように、先ずドアグラスラン7を内側に押し潰すように弾性変形させながらドアサッシュ3のチャンネル状空間に押し込み、次いで相対的に薄肉で剛性感の低い室外側の側壁部9を正規位置に着座させるように嵌合させる。つまり、膨出部19をドアサッシュ3の内底面3bに突き当てながら室外側保持リップ20を室外側の係止段状部6aに係止させるとともに、室外側のカバーリップ14をチャンネル部4の開口縁に係止させる。この段階では、斜状壁部16を含む底壁部10および室内側の側壁部8はなおも不完全な嵌合状態にあり、特に室内側保持リップ22については室内側の係止段状部5aに対して正しく係止された状態にはない。
【0044】
そこで、図3に示すように、底壁部10や斜状壁部16が不完全な嵌合状態にあることを前提に、室内側の側壁部8を斜状壁部16との接続部である屈曲容易部17を曲げ位置としてドアグラスラン7自体のチャンネル状空間の内方に屈曲変位させる。つまり、図3に示すように、室内側の側壁部8を一旦ドアサッシュ3側の張り出し部5から遠ざけるように折り曲げて斜めの姿勢とする。そして、室内側の側壁部8が斜めの姿勢のままで当該室内側の側壁部8の断面における長手方向に押し込み力Fを付与し、斜状壁部16に直接押し込み力Fを加える。こうすることにより、室内側の側壁部8によって付与された押し込み力Fが斜状壁部16に効果的に伝わり、底部シールリップ23を一段と大きく撓み変形させながら斜状壁部16が押し込まれて、その斜状壁部16から突出形成されている室内側保持リップ22が無理なく室内側の係止段状部5aを乗り越えて、引っ掛かりの関係をもってその室内側の係止段状部5aに正しく係止されることになる。特に屈曲容易部17の近傍には予め金属製のワイヤ26を埋設してあることにより剛性が高められており、室内側の側壁部8に加えられた押し込み力Fを斜状壁部16や室内側保持リップ22に伝えやすくなる。
【0045】
その後、室内側の側壁部8を張り出し部5に沿わせるように図3の矢印M方向に戻した上で、室内側のカバーリップ13をチャンネル部4の開口縁部に係止させることによって、図2のような正しい嵌合保持状態となる。
【0046】
このように本実施の形態によれば、底壁部10に突起部として打音緩衝リップ24が突出形成されてはいても、室内側の側壁部8を屈曲容易部17から折り曲げて力を加えることにより、打音緩衝リップ24が障害となることなしに斜状壁部16や室内側保持リップ22を正しい位置に容易に収めることができ、ドアサッシュ3に対するドアグラスラン7の組付性がきわめて良好なものとなる。
【0047】
図4は本発明を実施するためのより具体的な形態を示し、図2と共通する部分には同一符号を付してある。
【0048】
この第2の形態では、屈曲容易部37が、室内側の側壁部8と斜状壁部16との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されている点では図2と同様であるが、その肉厚減少をより顕著にするために屈曲容易部37としてノッチ部形状としたものである。この第2の形態においても第1の形態と同様の作用効果が得られるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
3…ドアサッシュ
5a…室内側の係止段状部
6a…室外側の係止段状部
7…ドアグラスラン
8…室内側の側壁部
9…室外側の側壁部
10…底壁部
11…室内側のシールリップ
12…室外側のシールリップ
16…斜状壁部
17…屈曲容易部
18…屈曲容易部
20…室外側保持リップ
22…室内側保持リップ
23…底部シールリップ
24…打音緩衝リップ(突起部)
25…空隙部
26…ワイヤ
G…ドアガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内側の側壁部と室外側の側壁部およびそれら双方の側壁部を接続する底壁部とで断面略チャンネル状に形成されているとともに、それぞれの側壁部の先端からチャンネル状空間の内方に向けてシールリップが突出形成されていて、ドアサッシュに嵌合保持された状態でドアガラスを昇降可能に案内支持するドアグラスランであって、
上記室内側の側壁部と底壁部との間に形成された斜状壁部と、
上記底壁部の外面側であって且つ当該底壁部に対するドアガラスの当接位置よりも室内側に突出形成されていて、ドアサッシュに当接することで底壁部とドアサッシュとの間に空隙部を形成する突起部と、
上記室内側の側壁部の外面側において斜状壁部を延長するように突出形成されていて、ドアサッシュの室内側の段状部に係止される室内側保持リップと、
上記室内側の側壁部と斜状壁部との接続部に形成された屈曲容易部と、
を備えていて、
上記室内側の側壁部が屈曲容易部からチャンネル状空間の内方に向けて折り曲げ可能となっていることを特徴とするドアグラスラン。
【請求項2】
上記屈曲容易部は、室内側の側壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドアグラスラン。
【請求項3】
上記斜状壁部の外面側であって且つ突起部よりも室内側にドアサッシュに当接する底部シールリップが突出形成されていることを特徴とする請求項2に記載のドアグラスラン。
【請求項4】
上記突起部は底壁部と斜状壁部との接続部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のドアグラスラン。
【請求項5】
上記底壁部と斜状壁部との接続部に別の屈曲容易部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のドアグラスラン。
【請求項6】
上記別の屈曲容易部は、底壁部と斜状壁部との接続部の内面が凹状に窪んだ局部的な肉厚減少部として形成されていることを特徴とする請求項5に記載のドアグラスラン。
【請求項7】
上記室外側の側壁部の外面側にドアサッシュの室外側の段状部に係止される室外側保持リップが突出形成されていることを特徴とする請求項6に記載のドアグラスラン。
【請求項8】
上記室内側の側壁部と斜状壁部との接続部に形成された屈曲容易部に近接して金属製のワイヤが埋設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のドアグラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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