説明

ドアロック制御装置

【課題】ドアロック解除系の異常が認識可能なドアロック制御装置を実現する。
【解決手段】車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置は、ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段(121)と、開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態と検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段(101)と、判定手段の判定結果を報知する報知手段(141)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロック制御装置に関し、とくに、車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアについては、走行中には開けることができないようにロックが行われる。ロックは、車両の停止状態において開扉用ハンドルが操作されることを条件として解除される。具体的には、ロック解除は、ドアロック解除用モータを、専用の制御装置で開扉用ハンドルの操作状態と車速状態に基づいて制御することにより行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−146688号公報(第2−3頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような制御では、ドアロック解除用モータの作動状態が制御装置にフィードバックされないので、例えば、開扉用ハンドルを操作したにも拘わらずドアロック解除用モータが作動しないとか、開扉用ハンドルを操作しないにも拘わらずドアロック解除用モータが作動したとかの異常が発生してもそれを認識することができない。
【0004】
そこで、本発明の課題は、ドアロック解除系の異常が認識可能なドアロック制御装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置であって、前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、前記開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、を具備することを特徴とするドアロック制御装置である。
【0006】
上記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置であって、前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、車両の停止状態における前記開扉用ハンドルの操作状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、を具備することを特徴とするドアロック制御装置である。
【0007】
上記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、前記ドアはリアゲートのドアであり、前記検出手段、前記判定手段および前記報知手段はロック機構の内部に設けられ、前記速度状態を示す信号はボデー側のコンピュータから与えられ、前記報知手段による報知は前記コンピュータに対して行われる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドアロック制御装置である。
【0008】
上記の課題を解決するための請求項4に係る発明は、前記報知は前記速度状態を表す信号の供給線を利用して行われる、ことを特徴とする請求項3に記載のドアロック制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置は、前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、前記開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を報知する報知手段とを具備するので、ドアロック解除系の異常が認識可能なドアロック制御装置を実現することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置は、前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、車両の停止状態における前記開扉用ハンドルの操作状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を報知する報知手段とを具備するので、ドアロック解除系の異常が認識可能なドアロック制御装置を実現することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、前記ドアはリアゲートのドアであり、前記検出手段、前記判定手段および前記報知手段はロック機構の内部に設けられ、前記速度状態を示す信号はボデー側のコンピュータから与えられ、前記報知手段による報知は前記コンピュータに対して行われるので、リアゲートのドアロック解除系の異常が認識可能なドアロック制御装置を実現することができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、前記報知は前記速度状態を表す信号の供給線を利用して行われるので、信号の供給線の増加を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、本発明は発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。図1に、ドアロック制御装置100の電気的構成を示す。ドアロック制御装置100は、発明を実施するための最良の形態の一例である。本装置の構成によって、ドアロック制御装置に関する発明を実施するための最良の形態の一例が示される。
【0014】
ドアロック制御装置100は、モータ200を制御してドアロックの解除を行わせる。モータ200は、その回転によって図示しないロック機構のラッチを解除する。モータ200は、本発明におけるドアロック解除用モータの一例である。
【0015】
モータ200の制御はスイッチ300の操作に基づいて行われる。スイッチ300は、車両のドアの開扉用ハンドルの操作に連動してオン・オフする。スイッチ300のオンは開扉用ハンドルの開操作に対応する。
【0016】
ドアロック制御装置100はCPU101を有する。CPU101はドアロック制御装置100の中枢である。CPU101には電源電圧+Vが供給されている。スイッチ300のオン・オフ信号は入力信号IN1としてCPU101に入力される。
【0017】
CPU101は、出力信号OUT1でFET111を駆動する。FET111は、電源+Bによるモータ200への電流供給ラインに直列に接続されており、その導通/非導通によりモータ200の電流をオン/オフしてモータ200の回転/停止を行わせる。モータ200およびFET111にはキャパシタ112,113がそれぞれ並列に接続されている。
【0018】
FET111のドレイン電圧は、抵抗122とキャパシタ123による1次遅れ回路を通じてトランジスタ121のベースに入力される。トランジスタ121はコレクタが抵抗124を通じて電圧+Vにプルアップされている。トランジスタ121のコレクタ電圧がCPU101に入力信号IN2として入力される。
【0019】
FET111のオン/オフによってドレイン電圧がlow/highとなり、それに伴ってトランジスタ121がオフ/オンとなるので、コレクタ電圧はhigh/lowとなる。これによって、FET111のオン/オフすなわちモータの作動/不作動が入力信号IN2のレベルのhigh/lowで示される。CPU101は、このような入力信号IN2を、スイッチ300からの入力信号IN1と対比して異常の有無を判定する。
【0020】
トランジスタ121、抵抗122、キャパシタ123および抵抗124からなる回路は、本発明における検出手段の一例である。CPU101は本発明における判定手段の一例である。
【0021】
CPU101には、外部から供給された車速信号SPDがトランジスタ131を介して入力される。車速信号SPDは、車両が停止しているか走行しているかを表す信号であり、停止/走行に応じて信号レベルがそれぞれhighおよびlowとなる2値信号である。車速信号SPDは、本発明における車両の速度状態を表す信号の一例である。
【0022】
車両の停止と走行の区別は、例えば、5km/hの速度を閾値として行われ、5km/h未満を停止、5km/h以上を走行としている。なお、閾値は5km/hに限らず適宜の速度としてよい。
【0023】
車速信号SPDは、抵抗132とキャパシタ133からなる1次遅れ回路を通じてトランジスタ131のベースに入力される。トランジスタ131はコレクタが抵抗134を通じて電圧+Vにプルアップされている。トランジスタ131のコレクタ電圧がCPU101に入力信号IN3として入力される。
【0024】
トランジスタ131が介在することにより、車速信号SPDは論理が反転されて入力される。このため、CPU101への入力信号は、停止/走行に応じて信号レベルがそれぞれlowおよびhighとなる。CPU101は、車速信号SPDがhigh(その反転信号がlow)の状態でスイッチ300がオンになったときモータ200を駆動する。なお、CPU101は、車速信号SPDがlow(その反転信号がhigh)の状態でスイッチ300がオンになってもモータ200の駆動を行わない。
【0025】
CPU101は、もう1つの出力信号OUT2でトランジスタ141を駆動する。トランジスタ141は、抵抗132とキャパシタ133からなる1次遅れ回路の入力側に並列に接続され、コレクタが抵抗142によって電圧+Vにプルアップされている。
【0026】
ドアロック制御装置100の動作を説明する。図2にタイムチャートを示す。図2の(a)はスイッチ300のオン/オフ状態すなわちCPU101の入力信号IN1を示し、(b)はモータ200の作動状態すなわちCPU101の入力信号IN2を示し、(c)はCPU101の出力信号OUT2を示し、(d)は車速信号SPDを示す。
【0027】
車速信号SPDがhighの状態でスイッチ300がオン/オフされると、それに対応してモータ200が作動(オン)/不作動(オフ)となる。このように入力信号IN1と入力信号IN2が正しく対応しているときは、CPU101は正常と判定し信号レベルがlowの出力信号OUT2を生じる。このため、トランジスタ141はオフとなり、車速信号SPDが供給される信号線の信号レベルはhighに保たれる。
【0028】
これに対して、例えば、タイムチャートの最後の部分に示すように、スイッチ300のオンに対応するモータ200のオン(破線)が無い場合は、異常と判定して出力信号OUT2をhighにする。このような出力信号OUT2によってトランジスタ141がオンとなり、車速信号SPDが供給される信号線の信号レベルはlowとなる。スイッチ300のオフの対応するモータ200のオフが無い場合も同様である。
【0029】
このような信号レベルの変化によって、信号線の他端側に異常発生が報知される。トランジスタ141および抵抗142からなる回路は、本発明における報知手段の一例である。なお、報知信号は車速信号SPDの供給線を利用せずに専用の信号線で報知するようにしてもよい。
【0030】
車速信号SPDがlowの状態では、CPU101がモータ200の駆動を行わないので、入力信号IN2はスイッチ300のオン/オフに無関係に常にオフでなければならない。そこで、これに反する状態は異常として報知される。すなわち、車速信号SPDがlowの状態で、入力信号1N1,1N2がともにオンのとき、および、入力信号1N1がオフで入力信号1N2がオンのときは異常報知が行われる。
【0031】
なお、車速信号SPDがlowの状態で、入力信号1N1がオンで入力信号1N2がオフのとき、および、入力信号1N1がオフで入力信号1N2がオフのときはいずれも正常状態であるから、異常報知は行われない。
【0032】
車両のリアゲートにおけるドアロックを制御する場合は、ドアロック制御装置100はリアゲート側に設けられる。そして、電源+Bおよび車速信号SPDの供給は、車両のボデー側から行われる。
【0033】
図3に、そのような構成の一例を示す。ドアロック制御装置100は、ワイヤーハーネス400によってホスト装置500に接続される。ワイヤーハーネス400は電源供給線と車速信号供給線を含む。
【0034】
ドアロック制御装置100において、モータ状態検出回路120は、図1におけるトランジスタ121、抵抗122、キャパシタ123および抵抗124からなる回路であり、信号授受回路130は、トランジスタ131、抵抗132、キャパシタ133および抵抗134からなる回路と、トランジスタ141および抵抗142からなる回路を合体した回路である。また、電源回路150は、CPU101、モータ状態検出回路120および信号授受回路130に電源を供給する回路である。
【0035】
ホスト装置500はCPU501を有する。CPU501には電源回路510によって電源供給が行われる。CPU501は、車輪速度監視部520からの入力信号に基づいて車速信号SPDを生成し、それをドアロック制御装置100に供給する。CPU501は、本発明におけるボデー側のコンピュータの一例である。
【0036】
CPU501は、また、車速信号供給線の信号を入力信号とする。車速信号供給線には、CPU501が出力した車速信号SPDとドアロック制御装置100が出力した報知信号が存在するが、車速信号SPDがhighとなっている状態で報知信号がlowになったときは、信号レベルの変化に基づいてリアゲートにおける異常発生を認識することができる。
【0037】
CPU501は、異常報知があったときは表示部530によって異常の発生を表示する。表示部530は、例えば、音響、音声、発光、文字や図形のグラフィックディスプレー等によって異常発生を表示する。これによって、車両の使用者はドアロック解除系に異常が発生したことを認識することができる。異常表示と同時に、CPU501によってドアロック制御装置100への電源供給を遮断するようにしてもよい。
【0038】
図4に、車両内でのドアロック制御装置100、ワイヤーハーネス400およびホスト装置500の配置の一例を示す。ドアロック制御装置100は、モータ200およびスイッチ300とともにリアゲートドア600の内部に設けられる。このうち、ドアロック制御装置100とモータ200はロック機構の近傍もしくは内部に設けられ、スイッチ300は開扉用ハンドルの近傍に設けられる。ホスト装置500はボデー700の前部に設けられる。ホスト装置500における表示部530は運転席の正面のコンビネーションメータ702に組み込まれる。このようなドアロック制御装置100とホスト装置500がワイヤーハーネス400によって接続される。
【0039】
以上、ドアロック制御装置100をリアゲート側に設けた例を示したが、ドアロック制御装置100はリアゲートに限らず、フロントドアやリアドア等、所望のドアに設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の一例のドアロック制御装置の電気的構成を示す図である。
【図2】ドアロック制御装置の動作のタイムチャートを示す図である。
【図3】ドアロック制御装置とホスト装置の関係を示す図である。
【図4】車両におけるドアロック制御装置とホスト装置の配置を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100 : ドアロック制御装置
101 : CPU
112,113 : キャパシタ
120 : モータ状態検出回路
121 : トランジスタ
122 : 抵抗
123 : キャパシタ
124 : 抵抗
130 : 信号授受回路
131 : トランジスタ
132 : 抵抗
133 : キャパシタ
134 : 抵抗
141 : トランジスタ
142 : 抵抗
150 : 電源回路
200 : モータ
300 : スイッチ
400 : ワイヤーハーネス
500 : ホスト装置
510 : 電源回路
520 : 車輪速度監視部
530 : 表示部
600 : リアゲートドア
700 : ボデー
702 : コンビネーションメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置であって、
前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、
前記開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、
を具備することを特徴とするドアロック制御装置。
【請求項2】
車両のドアの開扉用ハンドルの操作状態と車両の速度状態に基づいてドアロック解除用モータを制御する制御装置であって、
前記ドアロック解除用モータの作動状態を検出する検出手段と、
車両の停止状態における前記開扉用ハンドルの操作状態と前記検出手段によって検出されたドアロック解除用モータの作動状態との比較に基づいて異常の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を報知する報知手段と、
を具備することを特徴とするドアロック制御装置。
【請求項3】
前記ドアはリアゲートのドアであり、
前記検出手段、前記判定手段および前記報知手段はロック機構の内部に設けられ、
前記速度状態を示す信号はボデー側のコンピュータから与えられ、
前記報知手段による報知は前記コンピュータに対して行われる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドアロック制御装置。
【請求項4】
前記報知は前記速度状態を表す信号の供給線を利用して行われる、
ことを特徴とする請求項3に記載のドアロック制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−307526(P2006−307526A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131065(P2005−131065)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】