説明

ドア装置

【課題】デザイン上の自由度を向上させるとともに、悪戯、盗難等を的確に防止する。
【解決手段】ドア開口102を閉じた状態にてロック機構104により車体101にロックされるとともに錠機構105により施錠されるサイドドア本体2と、ロック機構104と連動してロック解除操作を行うためのドアハンドル3と、を備え、サイドドア本体102の表面には錠機構105の施錠及び解錠の操作を行うための鍵穴が配され、ドアハンドル3が所定の隠蔽位置HPにてサイドドア本体2の表面と略面一となって鍵穴を隠蔽するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア本体に、操作用のドアハンドルと、施錠及び解錠に用いられる鍵穴が設けられるドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用、建物用等のドア装置として、ドア枠体に形成された開口を開閉するドア本体が、ドア枠体に対して閉状態となるようロックされるものが一般的である。車両用のサイドドア、バックドア等については、ストライカとラッチの係合によりドア本体が車体側にロックされる。また、建物用のドアについては、ドアハンドルと連動する係合部が、ドア枠体の係合孔に嵌り込むことにより、ドア本体が建物のドア開口に設置されたドア枠にロックされる。ドアハンドルはドア本体の表面に突出して設けられている。
【0003】
また、この種のドア装置では、ドア本体がドア枠体に対して錠機構により施錠及び解錠されるものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。ドア本体の表面には鍵穴が形成され、正規のキーを挿入されると錠操作が可能となっている。自動車車両では鍵穴にキーを挿入することなく携帯機と通信を行って施錠及び解錠を行うものも知られているが、このようなドア装置においても、ドア本体の表面に鍵穴が配置され、携帯機の電池の電力が消耗し尽くしたときに錠機構を直接的に操作できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−009352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のドア装置では、ドアハンドルがドア本体から突出して設けられ、鍵穴がドア本体の表面に露出しているので、ドア本体の表面上にこれらを配さなければならずデザイン上の制約があった。また、鍵穴がドア本体の表面に露出していることから、車両、建物等の使用者以外の第三者が、鍵穴に不正なキーや異物を挿入することができ、悪戯、盗難等を防止することができないという問題もある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デザイン上の自由度を向上させるとともに、悪戯、盗難等を的確に防止することのできるドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、
ドア枠体の開口を開閉し、該開口を閉じた状態にてロック機構により前記ドア枠体にロックされるとともに錠機構により施錠されるドア本体と、
前記ドア本体に所定方向へ移動自在に設けられ、前記ロック機構と連動してロック解除操作を行うためのドアハンドルと、を備え、
前記ドア本体の表面には、前記錠機構の施錠及び解錠の操作を行うための鍵穴が配され、
前記ドアハンドルは、所定の隠蔽位置にて前記ドア本体の表面と略面一となって前記鍵穴を隠蔽するドア装置が提供される。
【0007】
本発明のドア装置では、ドアハンドルが隠蔽位置に位置している状態で、ドアハンドルがドア本体と一体的に視認され、鍵穴についても直接的に視認されることはないので、ドアハンドル及び鍵穴によりデザイン上の制約を受けることはない。そして、看者にはドア本体の表面にドアハンドル及び鍵穴が存在しないような印象が与えられ、従来と異なったデザインが可能となる。
また、隠蔽位置にてドアハンドルにより鍵穴が隠蔽されることから、車両、建物等の使用者以外の第三者に鍵穴が目につくことはない。また、ドアハンドルが隠蔽位置に存在するときは、第三者が鍵穴に不正なキーや異物を挿入することはできない。
【0008】
また、上記ドア装置において、
前記ドアハンドルは、前記隠蔽位置から前記鍵穴を露出させる露出位置へ移動可能に構成されることが好ましい。
【0009】
このドア装置によれば、ドアハンドルを隠蔽位置から露出位置へ移動させることにより、鍵穴を用いて施錠・解錠を行うことができる。
【0010】
また、上記ドア装置において、
前記ドアハンドルを、前記隠蔽位置と前記露出位置の間で移動させるハンドル操作用アクチュエータと、
外部から受信した信号に基づいて前記ドアハンドルの位置を決定し、前記ハンドル操作用アクチュエータを駆動して前記ドアハンドルの位置を制御するハンドル制御部と、をさらに備えた構成が好ましい。
【0011】
このドア装置によれば、ハンドル制御部により、周囲の状況に応じてドアハンドルの位置が自動的に制御されるので、実用に際して極めて便利である。
【0012】
また、上記ドア装置において、
前記ハンドル制御部は、外部から解錠に関する信号を受信すると、前記ドアハンドルが前記隠蔽位置から前記露出位置へ移動するよう前記ハンドル操作用アクチュエータを制御することが好ましい。
【0013】
このドア装置によれば、例えば、車両、建物等の使用者が携帯している携帯機から無線により解錠に関する信号を受信したり、車両、建物等の室内の使用者が解錠スイッチを操作するなどして有線により解錠に関する信号を受信すると、ハンドル制御部はドアハンドルを隠蔽位置から露出位置へと移動させる。ここで、ドアハンドルは、露出位置においてはドア本体と略面一となっていないので、使用者等にとって手を引っ掛けやすい姿勢となっている。このように、解錠に関する信号を受信する前まではドアハンドルに鍵穴の隠蔽機能を発揮させ、解錠に関する信号を受信してドアハンドルが操作される蓋然性が高い場合には隠蔽機能よりも操作性を優先させることができる。
【0014】
また、上記ドア装置において、
前記ハンドル制御部は、ドア本体から携帯機が所定距離まで接近したことを検知すると、前記ドアハンドルが前記隠蔽位置から前記露出位置へ移動するよう前記ハンドル操作用アクチュエータを制御することが好ましい。
【0015】
このドア装置によれば、使用者が携帯する携帯機が所定距離まで接近したことを検知すると、ハンドル制御部はドアハンドルを隠蔽位置から露出位置へと移動させる。ここで、ドアハンドルは、露出位置においてはドア本体と略面一となっていないので、使用者等にとって手を引っかけて操作しやすい姿勢となっている。このように、使用者が接近するまではドアハンドルに鍵穴の隠蔽機能を発揮させ、使用者が接近してドアハンドルが操作される蓋然性が高い場合には隠蔽機能よりも操作性を優先させることができる。
【0016】
また、上記ドア装置において、
前記ドア本体における前記ドアハンドルの周囲の一部は、前記ドアハンドルと略面一に形成された他部に比して凹む凹部をなすことが好ましい。
【0017】
このドア装置によれば、ドア本体におけるドアハンドルの周囲の一部が凹部をなしていることから、ドアハンドルが隠蔽位置に位置している状態でも、使用者等は凹部に指等を差し入れてドアハンドルを操作することができる。
【0018】
また、前記目的を達成するため、本発明では、
キーを挿抜する鍵穴を有し、ドア本体を施錠する錠機構と、
前記錠機構の前記鍵穴を隠蔽し、前記ドア本体を開閉操作するドアハンドルと、
外部より特定状態信号を受信して前記ドアハンドルを開放して前記鍵穴を外部からアクセスできるようにするハンドル制御部と、を備えたことを特徴とするドア装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドアハンドル及び鍵穴によりデザイン上の制約を受けることはなく、デザイン上の自由度を向上させることができる。また、第三者が鍵穴に不正なキーや異物を挿入することはできず、悪戯、盗難等を的確に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1から図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1は自動車車両の側面図である。
【0021】
図1に示すように、このドア装置1は、自動車車両100に搭載され、車体101のドア開口102を開閉するサイドドア本体2と、サイドドア本体2の外側に設けられるドアハンドル3と、を備えている。サイドドア本体2の上側にはウインドガラス4が配され、サイドドア本体2にウインドガラス4を包囲するフレーム部5が形成されている。ウインドガラス4はサイドドア本体の下側内部に配されたウインドレギュレータにより上下する。以下、自動車車両100の前後方向及び左右方向を基準としてドア装置1について説明する。
【0022】
本実施形態においては、サイドドア本体2はフロントドア用であり、前端下部にて車体101側にヒンジ機構103により取り付けられている。サイドドア本体2は、ヒンジ機構103による固定部分を中心として回動自在であり、後端側が左右外側へ移動することでドア開口102が開放され、乗員の乗降が可能な状態となる。
【0023】
サイドドア本体2は、ドア開口102を閉じた状態にてロック機構104により車体101にロックされる。ロック機構104は、車体101に設けられたストライカ104aと、ストライカ104aと係脱自在でサイドドア本体2に設けられるラッチ104bと、を有している。ストライカ104aは、略コ字状を呈し、車体101のアウタパネルにボルトで締結固定されている。また、ラッチ104bは、サイドドア本体2の内部に取り付けられ、インナパネルに形成された開口にストライカ104aが進入すると、ストライカ104aと係合する。ラッチ104bは、ドアハンドル3とワイヤ106を介して接続されており、ドアハンドル3が操作されるとラッチ104bとストライカ104aとの係合か解除される。
【0024】
また、サイドドア本体2は、ドア開口102を閉じた状態にて錠機構105により施錠される。本実施形態においては、錠機構105により施錠されると、ラッチ部104bを移動させることができなくなり、ドアハンドル3の操作が無効となる。錠機構105は、サイドドア本体2に設けられたシリンダ錠105a(図2参照)を有し、サイドドア本体2にシリンダ錠105aの鍵穴105bが配される。図1に示すように、鍵穴105bは、ドアハンドル3が隠蔽位置にあるときに、ドアハンドル3により隠蔽される。
【0025】
フレーム部5は、後方へ向かって斜め上側に延びる前部5aと、前部5aの後端から後方へ向かって略水平に延びる中間部5bと、中間部5bの後端から略下方へ延びる後部5cと、から形成される。そして、後部5cの上下中央における左右外側にドアハンドル3が配されている。本実施形態においては、ドアハンドル3の操作部3aの前後寸法はフレーム部5の後部5と略一致しており、側面視において外観上、フレーム部5の後部5cの上下中央領域をドアハンドル3の操作部3aが占めている。ドアハンドル3は、側面視にて略四角形状に形成される。
【0026】
図2はドアハンドルにより鍵穴が隠蔽された状態のドア装置の縦断面図である。
図2に示すように、ドアハンドル3の操作部3aは、隠蔽位置HPにてサイドドア本体2のアウタパネル2aと略面一となっている。アウタパネル2aは、操作部3aの裏面側が他部に比して凹む凹部2cをなしている。ドアハンドル3は、平板状の操作部3aと、操作部3aの左右内側に突出してアウタパネル2aに軸支される連結部3bと、を有している。連結部3bは、操作部3aから車両室内側へ向かって延びる第1連結部3cと、第1連結部3cの上端から車両室外側へ向かって上方へ傾斜して延びる第2連結部3dと、を有している。
【0027】
ドアハンドル3の第2連結部3dは、ハンドル操作用アクチュエータ20のロッド21の上端に形成された当接部21aと当接する。具体的には、ロッド21は室内側から室外側へ向かって下方へ傾斜して延び、当接部21aが第2連結部3dの中間部分と当接している。これにより、ハンドル操作用アクチュエータ20を駆動してロッド21を伸張させて当接部21aを斜め下方へ移動させると、操作部3aが隠蔽状態HPから室外側へ回動する。
【0028】
また、ドアハンドル3の第2連結部3dの上端には、ピン部材6を挿通する挿通孔が形成される。ピン部材6は、アウタパネル2aの左右内側に突出形成された上下一対の軸受部2bを挿通しており、この結果、ドアハンドル3はサイドドア本体2に対してピン部材6を中心して回動自在となっている。
【0029】
また、第2連結部3bには、左右内側へ延びる固定部材7が固定される。固定部材7はドアハンドル3が操作されると、連結部3bとともに一体的に移動する。固定部材7は、上下に延びるリンク材8の上端に接続される。リンク材8の下端は、アウタパネル2aに軸支されたワイヤ接続部材9に回動自在に連結される。ワイヤ接続部材9は、一端が凹部2cから室内側へ突出する軸部2dの先端に軸支され、他端が上下に移動する。ワイヤ接続部材9の他端にはワイヤ106が接続され、ワイヤ接続部材9の他端が下方へ移動すると、ラッチ104bがストライカ104aとの係合が解除される。
【0030】
ワイヤ接続部材9は、アウタパネル2aの軸部2dを巻回するトーションばね10により付勢される。トーションばね10は、ワイヤ接続部材9、リンク材8及び固定部材7を介して、ドアハンドル3を隠蔽位置HP側へ付勢する。ここで、特に図示していないが、ドアハンドル3の連結部3bには隠蔽位置HPにてアウタパネル2aの室内側の面と当接する規制部を形成し、この規制部によりドアハンドル3がアウタパネル2aに対して略面一となるよう位置決めされている。尚、ドアハンドル3の操作部3aとアウタパネル2aとの間には僅かに間隙Sが形成されており、この間隙Sに専用の工具等を差し入れることにより、緊急時等にドアハンドル3を操作できるようになっている。
【0031】
錠機構105のシリンダ錠105aは、ドアハンドル3の操作部3aの室内側に配される。シリンダ錠105aは、アウタパネル2aの凹部2cにおける下側部分に設けられ、正規のキーが鍵穴105bに挿入されて操作されると、室内側に配されたワイヤ107が移動するようになっている。このワイヤ107により、サイドドア本体2の施錠・解錠を機械的に行うことができる。
【0032】
図3は携帯機及びドア装置の概略ブロック図である。
このドア装置1は、鍵穴105bに正規のキーを挿入して施錠・解錠を行うことに加え、携帯機50を用いて施錠・解除を遠隔操作できるよう構成されている。具体的に、ドア装置1は、外部と有線で通信する通信部30と、通信部30にて受信した信号に基づいて錠機構105の施錠・解錠用アクチュエータ31、ロック機構104のハンドル操作用アクチュエータ20等に信号を送信するハンドル制御部32と、を備えている。ハンドル制御部32は、外部より特定状態信号を受信してドアハンドル3を開放して鍵穴105bを外部からアクセスできるようにする。
【0033】
ドア装置1は、携帯機50から送信される施錠信号及び解錠信号を通信部30により受信する他、I/Oインターフェース部34を通じて車両室内のドアスイッチ110から施錠信号及び解錠信号を有線により受信する。また、I/Oインターフェース部34は、車両の速度を検出する車速センサ120と、車両のサイドブレーキのON・OFF状態を検出するブレーキスイッチ122と、車両のエンジンの回転数を検出する回転数センサ124と、から信号を受信する。ハンドル制御部32は、CPU32a及びメモリ32bを有し、メモリ32bには各アクチュエータ20,31を制御するためのプログラム等が記憶されている。
【0034】
また、携帯機50は、携帯者が操作可能な施錠スイッチ51及び解錠スイッチ52を備え、各スイッチ51,52の押圧状態に基づいて施錠・解錠に関する信号を出力する制御部53と、制御部53と接続され外部に施錠・解錠に関する信号を発信する通信部54と、を備えている。制御部53は、CPU53a及びメモリ53bを有し、メモリ53bには施錠・解除に関する信号を出力するためのプログラム等が記憶されている。
【0035】
図4は、自動車車両の室内の概略外観斜視図である。
図4に示すように、サイドドア本体2の室内側にはドアトリム2eが取り付けられている。このドアトリム2eに、錠機構105の施錠・解除操作を行うドアスイッチ110と、ロック機構104のロック解除装置を行う解除レバー130が設けられている。これにより、乗員は、室内側から錠機構105及びロック機構104の操作を行うことができる。
【0036】
図5はドアハンドルが移動して鍵穴が露出した状態のドア装置の縦断面図である。
図5に示すように、ドアハンドル3を隠蔽位置HPから回動させると、鍵穴105bを露出させる露出位置EPへ移動する。すなわち、このドア装置1によれば、ドアハンドル3を隠蔽位置HPから露出位置EPへ移動させることにより、鍵穴105bを用いて施錠・解錠を行うことができるようになっている。ドアハンドル3は、露出位置EPにおいてはサイドドア本体2と略面一となっていないので、使用者等にとって手を引っ掛けやすい姿勢となっている。
【0037】
ドアハンドル3の隠蔽位置HPから露出位置EPへの移動は、ハンドル操作用アクチュエータ20を駆動することにより行われる。すなわち、アクチュエータ20を駆動してロッド21の当接部21aが斜め下方へ移動すると、ドアハンドル3が回転して露出位置EP側へ移動する。また、露出位置EPから隠蔽位置HPへは、アクチュエータ20の駆動を停止しロッド21をフリーの状態とすることにより行われる。すなわち、ロッド21をフリーの状態とすることにより、トーションばね10の付勢力によりドアハンドル3が隠蔽位置HPへ自動的に復帰する。
【0038】
図6はドアハンドルによりロック機構のロックが解除される状態のドア装置の縦断面図である。
図6に示すように、ドアハンドル3を露出位置EPからさらに移動させると、ロック機構104によるストライカ104aとラッチ104bの係合が解除されるロック解除位置RPへ移動する。露出位置EPからロック解除位置RPへの移動は、専ら使用者の操作部3aの操作により行われる。
【0039】
このドア装置1のハンドル制御部32の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。尚、ドアハンドル3が隠蔽位置HPで、サイドドア本体2が施錠された状態を初期状態とする。
【0040】
まず、ドア装置1にて施錠信号を受信したか否かを判断する(ステップS1)。この施錠信号は、ドア装置1と通信可能な範囲にて携帯機50の施錠スイッチ51が押圧されると通信部30に無線で受信され、車両室内のドアスイッチ110が乗員により操作されるとI/Oインターフェース部34に有線で受信される。
【0041】
ステップS1にて施錠信号を受信したと判断すると、施錠・解錠用アクチュエータ31を駆動して錠機構105を施錠状態から解錠状態とするとともに(ステップS2)、ハンドル操作用アクチュエータ20を駆動してドアハンドル3を露出位置EPまで移動させる(ステップS3)。ステップS1にて施錠信号を受信していないと判断した場合は、ステップS1へ戻って待機状態となる。
【0042】
ステップS3の後、車両走行条件が成立しているか否かを判別する。具体的には、ブレーキスイッチ122がOFF状態であるか否かを判断し(ステップS4)、車速センサ120が所定の車速を検出しているか否かを判断し(ステップS5)、回転数センサ124によりエンジンが動作しているか否かを判断する(ステップS6)。ステップS4〜S6の条件を全て満たしている場合は、車両走行条件が成立したものとしハンドル操作用アクチュエータ20の駆動を停止してドアハンドル3を隠蔽位置HPまで移動させる(ステップS7)。ここで、ステップS4〜S6のいずれかの条件が満たされていない場合は、車両走行条件が成立していないものとして、ドアハンドル3は露出位置EPのままとなる。
【0043】
ステップS4〜S6にて条件が満たされていない場合及びステップS7の後、ドア装置1にて解錠信号を受信したか否かを判断する(ステップS8)。この解錠信号も施錠信号と同様に、ドア装置1と通信可能な範囲にて携帯機50の解錠スイッチ51が押圧されると通信部30に無線で受信され、車両室内のドアスイッチ110が乗員により操作されると有線でI/Oインターフェース部34にて受信される。ステップS8にて解錠信号を受信していないと判断した場合は、ステップS4へ戻る。
【0044】
ステップS8にて解錠信号を受信したと判断すると、施錠・解錠用アクチュエータ31を駆動して錠機構105を解錠状態から施錠状態とするとともに(ステップS9)、ハンドル操作用アクチュエータ20の駆動を停止する。これにより、トーションばね10の付勢力によりドアハンドル3が隠蔽位置HPまで移動する(ステップS10)。ここで、ステップS7にてハンドル操作用アクチュエータ20の駆動が停止している場合は停止状態が維持される。ステップS10の後、ステップS1へ戻る。
【0045】
尚、図7のフローチャートでは、携帯機50の施錠スイッチ51及び解錠スイッチ52または車両室内のドアスイッチ110により操作される際の動作を説明しているが、鍵穴105bに正規のキーが挿入されて使用者等直接的に施錠及び解錠することも可能である。
【0046】
以上のように構成されたドア装置1によれば、ドアハンドル3が隠蔽位置HPに位置している状態で、ドアハンドル3がサイドドア本体2と一体的に視認され、鍵穴105bについても直接的に視認されることはないので、ドアハンドル3及び鍵穴105bによりデザイン上の制約を受けることはない。そして、看者にはサイドドア本体2の表面にドアハンドル3及び鍵穴105bが存在しないような印象が与えられ、従来と異なったデザインが可能となる。
【0047】
また、隠蔽位置HPにてドアハンドル3により鍵穴105bが隠蔽されることから、車両、建物等の使用者以外の第三者に鍵穴105bが目につくことはない。そして、ドアハンドル3が隠蔽位置HPにて、第三者が鍵穴105bに不正なキーや異物を挿入することはできない。
【0048】
従って、本実施形態のドア装置1によれば、サイドドア本体2のデザイン上の自由度を向上させるとともに、悪戯、盗難等を的確に防止することができる。
【0049】
また、本実施形態のドア装置1によれば、ドアハンドル3を隠蔽位置HPから露出位置EPの間で移動させるハンドル操作用アクチュエータ20を備え、外部から解錠に関する信号を受信すると、ドアハンドル3が隠蔽位置HPから露出位置EPへ移動するようハンドル操作用アクチュエータ20が制御される。これにより、解錠に関する信号を受信する前まではドアハンドル3に鍵穴105bの隠蔽機能を発揮させ、解錠に関する信号を受信してドアハンドル3が操作される蓋然性が高い場合には隠蔽機能よりも操作性を優先させることができる。
【0050】
尚、前記実施形態においては、携帯機50の施錠スイッチ51及び解錠スイッチ52の操作により、ハンドル操作用アクチュエータ32を制御するものを示したが、例えば、携帯機50がサイドドア本体2から所定距離まで接近したことを検知すると、ドアハンドル3が隠蔽位置HPから露出位置EPへ移動するようハンドル操作用アクチュエータ32を制御するようにしてもよい。この構成は、携帯機50の接近により自動的にサイドドア本体2の施錠・解錠を行うスマートキーシステムに採用することが好ましい。
【0051】
この構成とした場合のドア装置1のハンドル制御部32の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。尚、ドアハンドル3が隠蔽位置HPで、サイドドア本体2が施錠された状態を初期状態とする。
【0052】
まず、ドア装置1の通信部30にて、車両のIDと合致する携帯機50が所定距離まで接近したか否かを判断する(ステップS21)。この判断に際しては、例えば、携帯機50から定常的に信号を外部に向けて発信させておき、ドア装置1の通信部30にて携帯機50と通信が成立したときに所定距離まで接近したと判断するようにすればよい。ここで、携帯機50側とドア装置1側とでIDの認証を行うので、異なる車両IDの携帯機50が接近した場合には、携帯機50が接近したとは判断されない。
【0053】
ステップS21にて携帯機50が接近したと判断すると、施錠・解錠用アクチュエータ31を駆動して錠機構105を施錠状態から解錠状態とするとともに(ステップS22)、ハンドル操作用アクチュエータ20を駆動してドアハンドル3を露出位置EPまで移動させる(ステップS23)。ステップS21にて携帯機50が接近していないと判断した場合は、ステップS1へ戻って待機状態となる。
【0054】
ステップS23の後、携帯機50が車両室内に存在するか否かを判別する(ステップS24)。本実施形態においては、この判別は車両室内に設けられた車両側通信部が携帯機50と通信可能か否かにより行われる。携帯機50が車両室内に存在すると判断された場合は、ハンドル操作用アクチュエータ20の駆動を停止する。これにより、ドアハンドル3がトーションばね10の付勢力により隠蔽位置HPまで移動する(ステップS25)。ステップS24で携帯機50が車両室内に存在しないと判断された場合は、ドアハンドル3は露出位置EPのままとなる。
【0055】
ステップS24にて携帯機50が車両室内に存在しないと判断された場合及びステップS25の後、携帯機50がサイドドア本体2から所定距離より離隔したか否かを判断する(ステップS26)。この判断に際しては、例えば、携帯機50から定常的に信号を外部に向けて発信させておき、ドア装置1の通信部30にて携帯機50と通信が不能となったときに所定距離より離隔したと判断するようにすればよい。ステップS26にて携帯機50がサイドドア本体2から所定距離より離隔していないと判断した場合は、ステップS24へ戻る。
【0056】
ステップS26にて携帯機50が所定距離より離隔したと判断すると、施錠・解錠用アクチュエータ31を駆動して錠機構105を解錠状態から施錠状態とするとともに(ステップS27)、ハンドル操作用アクチュエータ20の駆動を停止する(ステップS28)。これにより、トーションばね10の付勢力によりドアハンドル3が隠蔽位置HPまで移動する。ステップS28の後、ステップS21へ戻る。
【0057】
尚、図8のフローチャートでは、携帯機50の施錠スイッチ51及び解錠スイッチ52または車両室内のドアスイッチ110により操作される際の動作を説明しているが、鍵穴105bに正規のキーが挿入されて使用者等が直接的に施錠及び解錠することも可能となっている。
【0058】
このように、使用者が携帯する携帯機50が所定距離まで接近したことを検知すると、ハンドル制御部32はドアハンドル3を隠蔽位置HPから露出位置EPへと移動させる。ここで、ドアハンドル3は、露出位置EPにおいてはサイドドア本体2と略面一となっていないので、使用者等にとって手を引っかけて操作しやすい姿勢となっている。このように、使用者が接近するまではドアハンドル3に鍵穴105bの隠蔽機能を発揮させ、使用者が接近してドアハンドル3が操作される蓋然性が高い場合には隠蔽機能よりも操作性を優先させることができる。
【0059】
また、前記実施形態においては、自動車車両100に搭載されるドア装置1を例示したが、例えば、鉄道車両のような他の車両に搭載されるドア装置にも適用可能であるし、住居等の建物に備え付けられるドア装置にも適用可能である。
また、自動車車両100において、サイドドアでなくバックドアに適用しても同様の作用効果を得ることができる。さらに、ヒンジ機構103により車両に取り付けられるものでなく、例えば、レール機構により車両に取り付けられるスライド式のサイドドアであっても適用可能なことは勿論である。
【0060】
また、前記実施形態においては、ドアハンドル3を隠蔽位置HPから露出位置EPへ移動させる際に操作部3aの全部分が室外方向へ移動するものを示したが、例えば、図9に示すように、操作部3aの一部が室外方向へ移動して他部が室内方向へ移動するようにしてもよい。この構成によれば、隠蔽位置HPの状態で操作部3aの他部を室内側へ強く押圧することにより、隠蔽位置HPにおけるドアハンドル3の手動操作が可能となる。この構成とすれば、工具等を用いることなく、緊急時等にドアハンドル3の手動操作が可能となる。
【0061】
さらに、ドアハンドル3の操作部3aを分割自在或いは折り畳み自在に構成し、操作部3aを分割あるはい折り畳むことにより、緊急時等に鍵穴105bを露出可能に構成してもよい。
【0062】
さらに、前記実施形態においては、フレーム部5の後部5cの一部とドアハンドル3とが略面一となるものを示したが、例えば、図10に示すように、フレーム部5の後部5cを全体的に覆うようドアハンドル3を設けて、中央部5bやサイドドア本体2の下側と略面一となるようにしてもよい。この場合、ドアハンドル3は、前端側を中心として回動し、後方が車両外側へ移動するよう構成されることが好ましい。
【0063】
さらに、前記実施形態においては、ドアハンドル3が隠蔽位置HPに位置している状態で、ドアハンドル3が全周にわたってサイドドア本体2のアウタパネル2aと略面一となるものを示したが、例えば、図11に示すように、サイドドア本体2におけるドアハンドル3の周囲の一部が、他部に比して凹む凹部2fをなすよう構成してもよい。このドア装置1によれば、ドアハンドル3が隠蔽位置HPに位置している状態でも、使用者等は凹部2fに指等を差し入れてドアハンドル3を操作することができる。
【0064】
さらに、前記実施形態においては、ハンドル操作用アクチュエータ20のロッド21の移動によりドアハンドル3を移動させるものを示したが、例えば、カム機構等を用いてドアハンドル3を移動させるようにしてもよいし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態を示す自動車車両の側面図である。
【図2】ドアハンドルにより鍵穴が隠蔽された状態のドア装置の縦断面図である。
【図3】携帯機及びドア装置の概略ブロック図である。
【図4】自動車車両の室内の概略外観斜視図である。
【図5】ドアハンドルが移動して鍵穴が露出した状態のドア装置の縦断面図である。
【図6】ドアハンドルによりロック機構のロックが解除される状態のドア装置の縦断面図である。
【図7】ドア装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】変形例を示すものであって、ドア装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】変形例を示すドア装置の概略断面図である。
【図10】変形例を示す自動車車両の側面図である。
【図11】変形例を示す自動車車両の側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ドア装置
2 サイドドア本体
2a アウタパネル
2b 軸受部
2c 凹部
2d 軸部
2e ドアトリム
2f 凹部
3 ドアハンドル
3a 操作部
3b 連結部
3c 第1連結部
3d 第2連結部
4 ウインドガラス
5 フレーム部
5a 前部
5b 中間部
5c 後部
6 ピン部材
7 固定部材
8 リンク材
9 ワイヤ接続部材
10 トーションばね
20 ハンドル操作用アクチュエータ
21 ロッド
21a 当接部
30 通信部
31 施錠・解錠用アクチュエータ
32 制御部
32a CPU
32b メモリ
34 I/Oインターフェース部
50 携帯機
51 施錠スイッチ
52 解錠スイッチ
53 制御部
53a CPU
53b メモリ
54 通信部
100 自動車車両
101 車体
102 ドア開口
103 ヒンジ機構
104 ロック機構
104a ストライカ
104b ラッチ
105 錠機構
105a シリンダ錠
105b 鍵穴
106 ワイヤ
107 ワイヤ
110 ドアスイッチ
120 車速センサ
122 ブレーキスイッチ
124 回転数センサ
EP 露出位置
HP 隠蔽位置
RP ロック解除位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠体の開口を開閉し、該開口を閉じた状態にてロック機構により前記ドア枠体にロックされるとともに錠機構により施錠されるドア本体と、
前記ドア本体に所定方向へ移動自在に設けられ、前記ロック機構と連動してロック解除操作を行うためのドアハンドルと、を備え、
前記ドア本体の表面には、前記錠機構の施錠及び解錠の操作を行うための鍵穴が配され、
前記ドアハンドルは、所定の隠蔽位置にて前記ドア本体の表面と略面一となって前記鍵穴を隠蔽することを特徴とするドア装置。
【請求項2】
前記ドアハンドルは、前記隠蔽位置から前記鍵穴を露出させる露出位置へ移動可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項3】
前記ドアハンドルを、前記隠蔽位置と前記露出位置の間で移動させるハンドル操作用アクチュエータと、
外部から受信した信号に基づいて前記ドアハンドルの位置を決定し、前記ハンドル操作用アクチュエータを駆動して前記ドアハンドルの位置を制御するハンドル制御部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のドア装置。
【請求項4】
前記ハンドル制御部は、外部から解錠に関する信号を受信すると、前記ドアハンドルが前記隠蔽位置から前記露出位置へ移動するよう前記ハンドル操作用アクチュエータを制御することを特徴とする請求項3に記載のドア装置。
【請求項5】
前記ハンドル制御部は、ドア本体から携帯機が所定距離まで接近したことを検知すると、前記ドアハンドルが前記隠蔽位置から前記露出位置へ移動するよう前記ハンドル操作用アクチュエータを制御することを特徴とする請求項3または4に記載のドア装置。
【請求項6】
前記ドア本体における前記ドアハンドルの周囲の一部は、前記ドアハンドルと略面一に形成された他部に比して凹む凹部をなすことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドア装置。
【請求項7】
キーを挿抜する鍵穴を有し、ドア本体を施錠する錠機構と、
前記錠機構の前記鍵穴を隠蔽し、前記ドア本体を開閉操作するドアハンドルと、
外部より特定状態信号を受信して前記ドアハンドルを開放して前記鍵穴を外部からアクセスできるようにするハンドル制御部と、を備えたことを特徴とするドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−321470(P2007−321470A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153836(P2006−153836)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】