説明

ドグクラッチ用ギヤ

【課題】ドグクラッチ用ギヤに加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、また、刃具に切削負荷が断続的に作用するのを防止して、刃具の寿命を長くすることができるドグクラッチ用ギヤを提供する。
【解決手段】外周に動力伝達歯11が形成されるリム部12と、回転軸1に嵌合するボス部13と、リム部12とボス部13を連結する環状連結部14と、環状連結部14の側面に形成されるドグ部材16と、を備え、ボス部13の軸方向端面13aに機械加工面が形成され、ボス部13とドグ部材16との連結部分17に、ドグ部材16からボス部13の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝18が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のドグクラッチ用ギヤに関し、特に、自動二輪車の変速機のドグクラッチ用ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドグクラッチ用ギヤとしては、回転軸上に隣接して設けられた2つのギヤの対向端面の一方に係合凸部を設けると共に、他方に係合凸部に噛み合う係合凹部を設け、ギヤを軸方向に相対移動して、係合凸部と係合凹部を噛み合わせることで、ギヤ間でトルクを伝達するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のドグクラッチ用ギヤは、外周部にギヤ歯を有するリム部と、回転軸に嵌合するボス部と、リム部とボス部を繋ぐと共に係合凹部が形成される環状壁部と、を備え、係合凹部の底壁に、係合凸部との係合面の近傍に底壁が残存するように、長円形の肉抜き孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−209950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、従来のドグクラッチ用ギヤとして、図9及び図10に示すようなドグクラッチ用ギヤ100が知られている。このドグクラッチ用ギヤ100は、外周にギヤ歯101を有するリム部102と、回転軸に嵌合するボス部103と、リム部102とボス部103を連結する環状連結部104と、環状連結部104の側面に円周方向に略等間隔に複数形成される係合凹部105と、互いに隣り合う係合凹部105,105間に形成される複数のリブ106と、を備え、リブ106と不図示の係合凸部との係合により回転駆動力が伝達されるため、リブ106には大きな力が作用する。
【0005】
しかしながら、従来のドグクラッチ用ギヤ100では、ボス部103の軸方向端面103aが機械加工されると、ボス部103とリブ106との連結部分107に加工エッジが形成され、この加工エッジに回転駆動力の伝達に伴う応力集中が発生してしまう可能性があった。また、ボス部103の軸方向端面103aの加工の際、円周方向に略等間隔に形成された複数のリブ106も切削加工してしまうため、旋盤などの刃具に切削負荷が断続的に作用して、刃具の寿命が低下する可能性があった。
【0006】
本発明は、かかる事情を考慮したものであり、その目的は、ドグクラッチ用ギヤに加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、また、刃具に切削負荷が断続的に作用するのを防止して、刃具の寿命を長くすることができるドグクラッチ用ギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、外周に動力伝達歯が形成されるリム部と、回転軸に嵌合するボス部と、リム部とボス部を連結する環状連結部と、環状連結部の側面に形成されるドグ部材と、を備え、回転軸上で隣り合うギヤのドグ部材と係合して回転力を伝達するドグクラッチ用ギヤであって、ボス部の軸方向端面に機械加工面が形成され、ボス部とドグ部材との連結部分に、ドグ部材からボス部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、逃げ溝は、ボス部の軸方向端面より、軸方向内側に向けて形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、逃げ溝は、ドグ部材の円周方向側面とボス部の外周側面とを滑らかに連続するように形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、リム部とドグ部材との連結部分に、ドグ部材からリム部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、逃げ溝は、ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、逃げ溝は、ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、おわん状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加えて、逃げ溝は、その底部からドグ部材の円周方向側面に向けて滑らかに連続して形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加えて、逃げ溝を構成するドグ部材側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ボス部の軸方向端面に機械加工面が形成され、ボス部とドグ部材との連結部分に、ドグ部材からボス部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されるため、ボス部の軸方向端面を機械加工する際に、ドグ部材が切削加工されることはない。これにより、連結部分に加工エッジが形成されることがないので、ドグクラッチ用ギヤに加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を向上することができる。また、ドグ部材が切削加工されないので、刃具に切削負荷が断続的に作用するのを防止することができ、刃具の寿命を長くすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、逃げ溝は、ボス部の軸方向端面より、軸方向内側に向けて形成されるため、ボス部の軸方向端面が大きな加工代で加工されたとしても、ボス部とドグ部材との連結部分に加工エッジが形成されることがない。これにより、ドグクラッチ用ギヤに加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を向上することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、逃げ溝は、ドグ部材の円周方向側面とボス部の外周側面とを滑らかに連続するように形成されるため、逃げ溝に作用する応力を低減することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を更に向上することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、ボス部とドグ部材との連結部分に加えて、リム部とドグ部材との連結部分に、ドグ部材からリム部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されるため、ドグ部材の両端において応力集中の発生を防止することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を更に向上することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、逃げ溝は、ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されるため、逃げ溝に作用する応力を低減することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を更に向上することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、逃げ溝は、ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、おわん状に形成されるため、逃げ溝に作用する応力を低減することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を更に向上することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、逃げ溝は、その底部からドグ部材の円周方向側面に向けて滑らかに連続して形成されるため、逃げ溝に作用する応力を低減することができ、ドグクラッチ用ギヤの耐久性を更に向上することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、逃げ溝を構成するドグ部材側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されるため、応力集中の発生箇所を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るドグクラッチ用ギヤの各実施形態が搭載される変速機を説明する断面図である。
【図2】本発明に係るドグクラッチ用ギヤの第1実施形態を説明する斜視図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】図2に示すリブの周辺の拡大斜視図である。
【図5】本発明に係るドグクラッチ用ギヤの第2実施形態を説明する斜視図である。
【図6】図5のB−B線矢視断面図である。
【図7】本発明に係るドグクラッチ用ギヤの第3実施形態を説明する斜視図である。
【図8】図7のC−C線矢視断面図である。
【図9】従来のドグクラッチ用ギヤを説明する斜視図である。
【図10】図9に示すリブの周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るドグクラッチ用ギヤの各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0025】
(第1実施形態)
まず、本実施形態のドグクラッチ用ギヤが搭載される変速機TMについて説明する。この変速機TMは、図1に示すように、クランクケース1に玉軸受4a,4bを介して回転可能に支持されるメイン軸2と、メイン軸2と平行に配置され、クランクケース1に玉軸受4c,4dを介して回転可能に支持されるカウンタ軸3と、メイン軸2とカウンタ軸3との間に配設され、メイン軸2の回転駆動力をカウンタ軸3に伝達する第1速〜第6速用歯車列G1〜G6と、を備える。
【0026】
第1速用歯車列G1は、メイン軸2に一体に設けられる第1速用駆動歯車M1と、カウンタ軸3に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承されて第1速用駆動歯車M1に噛合する第1速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C1と、を有する。
【0027】
第2速用歯車列G2は、メイン軸2に軸方向移動不能且つ相対回転不能に支承される第2速用駆動歯車M2と、カウンタ軸3に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承されて第2速用駆動歯車M2に噛合する第2速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C2と、を有する。
【0028】
第3速用歯車列G3は、メイン軸2に軸方向移動可能且つ相対回転不能に支承される第3速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)M3と、カウンタ軸3に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承されて第3速用駆動歯車M3に噛合する第3速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C3と、を有する。
【0029】
第4速用歯車列G4は、第3速用駆動歯車M3に一体に設けられてメイン軸2に軸方向移動可能且つ相対回転不能に支承される第4速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)M4と、カウンタ軸3に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承されて第4速用駆動歯車M4に噛合する第4速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C4と、を有する。
【0030】
第5速用歯車列G5は、メイン軸2に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承される第5速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)M5と、カウンタ軸3に軸方向移動可能且つ相対回転不能に支承されて第5速用駆動歯車M5に噛合する第5速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C5と、を有する。
【0031】
第6速用歯車列G6は、メイン軸2に軸方向移動不能且つ相対回転可能に支承される第6速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)M6と、カウンタ軸3に軸方向移動可能且つ相対回転不能に支承されて第6速用駆動歯車M6に噛合する第6速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)C6と、を有する。
【0032】
第1ドグクラッチDC1は、シフタギヤである第5速用従動歯車C5と第1速用従動歯車C1との間に設けられ、第5速用従動歯車C5及び第1速用従動歯車C1の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)21と係合凹部22が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0033】
第2ドグクラッチDC2は、シフタギヤである第5速用従動歯車C5と第4速用従動歯車C4との間に設けられ、第5速用従動歯車C5及び第4速用従動歯車C4の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)23と係合凹部22が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0034】
第3ドグクラッチDC3は、シフタギヤである第6速用従動歯車C6と第3速用従動歯車C3との間に設けられ、第6速用従動歯車C6及び第3速用従動歯車C3の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)23と係合凹部22が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0035】
第4ドグクラッチDC4は、シフタギヤである第6速用従動歯車C6と第2速用従動歯車C2との間に設けられ、第6速用従動歯車C6及び第2速用従動歯車C2の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)21と係合凹部22が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0036】
第5ドグクラッチDC5は、シフタギヤである第4速用駆動歯車M4と第5速用駆動歯車M5との間に設けられ、第4速用駆動歯車M4及び第5速用駆動歯車M5の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)21と係合凸部(ドグ部材)21が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0037】
第6ドグクラッチDC6は、シフタギヤである第3速用駆動歯車M3と第6速用駆動歯車M6との間に設けられ、第3速用駆動歯車M3及び第6速用駆動歯車M6の対向端面の一方と他方に、互いに係合可能な複数の係合凸部(ドグ部材)21と係合凸部(ドグ部材)21が円周方向に略等間隔にそれぞれ形成される。
【0038】
また、シフタギヤである第5速用従動歯車C5、第6速用従動歯車C6、及び一体形成される第3,第4速用駆動歯車M3,M4は、第1〜第3シフトフォーク5a〜5cで回動可能に保持されており、これら第1〜第3シフトフォーク5a〜5cがシフトドラム6により軸方向に駆動されることによって、軸方向にスライド移動される。そして、例えば、第5速用従動歯車C5の場合は、第1シフトフォーク5aにより軸方向にスライド移動されて、第5速用従動歯車C5の係合凸部21と第1速用従動歯車C1の係合凹部22が係合する状態、第5速用従動歯車C5の係合凸部23と第4速用従動歯車C4の係合凹部22が係合する状態、及び第5速用従動歯車C5の係合凸部21,23がいずれにも係合しない中立状態の切り換えが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態のドグクラッチ用ギヤについて、第3速用従動歯車C3を例に挙げて説明する。第3速用従動歯車C3は、図2〜図4に示すように、外周にギヤ歯(動力伝達歯)11が形成されるリム部12と、カウンタ軸3(回転軸)に嵌合する(図1参照)ボス部13と、リム部12とボス部13を連結する環状連結部14と、環状連結部14の側面に円周方向に略等間隔に複数(本実施形態では6個)形成される係合凹部22と、を備える。
【0040】
係合凹部22は、図2に示すように、リム部12と、ボス部13と、リム部12とボス部13とを径方向に連結して、円周方向に略等間隔に形成される複数(本実施形態では6個)のドグ部材であるリブ16と、から画成される。
【0041】
そして、本実施形態では、図3及び図4に示すように、ボス部13とリブ16との連結部分17に、リブ16からボス部13の軸方向端面13aに向けて軸方向に連続する逃げ溝18が形成されている。また、逃げ溝18は、ボス部13の軸方向端面13aより軸方向内側に向けて形成されている。また、逃げ溝18は、リブ16の円周方向側面16aとボス部13の外周側面13bとを滑らかに連続するように形成されている。また、逃げ溝18は、第3速用従動歯車C3の中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されている。また、逃げ溝18は、その底部からリブ16の円周方向側面16aに向けて滑らかに連続して形成されている。また、逃げ溝18を構成するリブ16側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されている。また、ボス部13の軸方向端面13aは、旋盤などによって旋削が施されて機械加工面となっている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のドグクラッチ用ギヤである第3速用従動歯車C3によれば、ボス部13の軸方向端面13aに機械加工面が形成され、ボス部13とドグ部材であるリブ16との連結部分17に、リブ16からボス部13の軸方向端面13aに向けて軸方向に連続する逃げ溝18が形成されるため、ボス部13の軸方向端面13aを機械加工する際に、リブ16が切削加工されることはない。これにより、連結部分17に加工エッジが形成されることがないので、第3速用従動歯車C3に加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を向上することができる。また、リブ16が切削加工されないので、刃具に切削負荷が断続的に作用するのを防止することができ、刃具の寿命を長くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝18は、ボス部13の軸方向端面13aより、軸方向内側に向けて形成されるため、ボス部13の軸方向端面13aが大きな加工代で加工されたとしても、連結部分17に加工エッジが形成されることがない。これにより、第3速用従動歯車C3に加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝18は、リブ16の円周方向側面16aとボス部13の外周側面13bとを滑らかに連続するように形成されるため、逃げ溝18に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0045】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝18は、第3速用従動歯車C3の中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されるため、逃げ溝18に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0046】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝18は、その底部からリブ16の円周方向側面16aに向けて滑らかに連続して形成されるため、逃げ溝18に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0047】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝18を構成するリブ16側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されるため、応力集中の発生箇所を減少させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を参照して、本発明に係るドグクラッチ用ギヤの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0049】
本実施形態の第3速用従動歯車C3では、図5及び図6に示すように、ボス部13とリブ16との連結部分17に逃げ溝18が形成されると共に、リム部12とリブ16との連結部分31に、リブ16からリム部12の軸方向端面12aに向けて軸方向に連続する逃げ溝32が形成されている。
【0050】
また、図5及び図6に示すように、逃げ溝32は、リブ16の軸方向端面16bより軸方向内側に向けて形成されている。また、逃げ溝32は、リブ16の円周方向側面16cとリム部12の内周側面12bとを滑らかに連続するように形成されている。また、逃げ溝32は、第3速用従動歯車C3の中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されている。また、逃げ溝32は、その底部からリブ16の円周方向側面16cに向けて滑らかに連続して形成されている。また、逃げ溝32を構成するリブ16側端面は、外周方向から内周方向に向けて滑らかに連続して形成されている。また、リブ16の軸方向端面16bは、旋盤などによって旋削が施されて機械加工面となっている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のドグクラッチ用ギヤである第3速用従動歯車C3によれば、ボス部13とリブ16との連結部分17に逃げ溝18が形成されると共に、リム部12とリブ16との連結部分31に逃げ溝32が形成されるため、リブ16の両端において応力集中の発生を防止することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0052】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝32は、リブ16の軸方向端面16bより軸方向内側に向けて形成されるため、リブ16の軸方向端面16bが大きな加工代で加工されたとしても、連結部分31に加工エッジが形成されることがない。これにより、第3速用従動歯車C3に加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を向上することができる。
【0053】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝32は、リブ16の円周方向側面16cとリム部12の内周側面12bとを滑らかに連続するように形成されるため、逃げ溝32に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0054】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝32は、第3速用従動歯車C3の中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されるため、逃げ溝32に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0055】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝32は、その底部からリブ16の円周方向側面16cに向けて滑らかに連続して形成されるため、逃げ溝32に作用する応力を低減することができ、第3速用従動歯車C3の耐久性を更に向上することができる。
【0056】
また、本実施形態の第3速用従動歯車C3によれば、逃げ溝32を構成するリブ16側端面は、外周方向から内周方向に向けて滑らかに連続して形成されるため、応力集中の発生箇所を減少させることができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
なお、上記第1及び第2実施形態では、本発明を第3速用従動歯車C3に適用した場合を例示したが、これに限定されず、第1速用従動歯車C1、第2速用従動歯車C2、及び第4速用従動歯車C4に本発明を適用してもよい。
【0058】
(第3実施形態)
次に、図7及び図8を参照して、本発明に係るドグクラッチ用ギヤの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0059】
本実施形態では、ドグクラッチ用ギヤについて、第5速用駆動歯車M5を例に挙げて説明する。第5速用駆動歯車M5は、図7及び図8に示すように、外周にギヤ歯11が形成されるリム部12と、メイン軸2(回転軸)に嵌合する(図1参照)ボス部13と、リム部12とボス部13を連結する環状連結部14と、環状連結部14の側面に円周方向に略等間隔に複数(本実施形態では4個)形成されるドグ部材である係合凸部21と、を備える。
【0060】
そして、本実施形態では、図7及び図8に示すように、ボス部13と係合凸部21との連結部分41に、係合凸部21からボス部13の軸方向端面13aに向けて軸方向に連続する逃げ溝42が形成されている。また、逃げ溝42は、ボス部13の軸方向端面13aより軸方向内側に向けて形成されている。また、逃げ溝42は、係合凸部21の円周方向側面21aとボス部13の外周側面13bとを滑らかに連続するように形成されている。また、逃げ溝42は、第5速用駆動歯車M5の中心軸を通る断面において、おわん状に形成されている。また、逃げ溝42は、その底部から係合凸部21の円周方向側面21aに向けて滑らかに連続して形成されている。また、逃げ溝42を構成する係合凸部21側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されている。また、ボス部13の軸方向端面13aは、旋盤などによって旋削が施されて機械加工面となっている。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のドグクラッチ用ギヤである第5速用駆動歯車M5によれば、ボス部13の軸方向端面13aに機械加工面が形成され、ボス部13とドグ部材である係合凸部21との連結部分41に、係合凸部21からボス部13の軸方向端面13aに向けて軸方向に連続する逃げ溝42が形成されるため、ボス部13の軸方向端面13aを機械加工する際に、係合凸部21が切削加工されることはない。これにより、連結部分41に加工エッジが形成されることがないので、第5速用駆動歯車M5に加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、第5速用駆動歯車M5の耐久性を向上することができる。また、係合凸部21が切削加工されないので、刃具に切削負荷が断続的に作用するのを防止することができ、刃具の寿命を長くすることができる。
【0062】
また、本実施形態の第5速用駆動歯車M5によれば、逃げ溝42は、ボス部13の軸方向端面13aより、軸方向内側に向けて形成されるため、ボス部13の軸方向端面13aが大きな加工代で加工されたとしても、連結部分41に加工エッジが形成されることがない。これにより、第5速用駆動歯車M5に加工エッジによる応力集中が発生するのを防止することができ、第5速用駆動歯車M5の耐久性を向上することができる。
【0063】
また、本実施形態の第5速用駆動歯車M5によれば、逃げ溝42は、係合凸部21の円周方向側面21aとボス部13の外周側面13bとを滑らかに連続するように形成されるため、逃げ溝42に作用する応力を低減することができ、第5速用駆動歯車M5の耐久性を更に向上することができる。
【0064】
また、本実施形態の第5速用駆動歯車M5によれば、逃げ溝42は、第5速用駆動歯車M5の中心軸を通る断面において、おわん状に形成されるため、逃げ溝42に作用する応力を低減することができ、第5速用駆動歯車M5の耐久性を更に向上することができる。
【0065】
また、本実施形態の第5速用駆動歯車M5によれば、逃げ溝42は、その底部から係合凸部21の円周方向側面21aに向けて滑らかに連続して形成されるため、逃げ溝42に作用する応力を低減することができ、第5速用駆動歯車M5の耐久性を更に向上することができる。
【0066】
また、本実施形態の第5速用駆動歯車M5によれば、逃げ溝42を構成する係合凸部21側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されるため、応力集中の発生箇所を減少させることができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
なお、本実施形態では、本発明を第5速用駆動歯車M5に適用した場合を例示したが、これに限定されず、第3速用駆動歯車M3、第4速用駆動歯車M4、第6速用駆動歯車M6、第5速用従動歯車C5、及び第6速用従動歯車C6に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
C1 第1速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
C2 第2速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
C3 第3速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
C4 第4速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
C5 第5速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
C6 第6速用従動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
M3 第3速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
M4 第4速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
M5 第5速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
M6 第6速用駆動歯車(ドグクラッチ用ギヤ)
2 メイン軸(回転軸)
3 カウンタ軸(回転軸)
11 ギヤ歯(動力伝達歯)
12 リム部
12a 軸方向端面
13 ボス部
13a 軸方向端面
13b 外周側面
14 環状連結部
16 リブ(ドグ部材)
16a 円周方向側面
17 ボス部とリブとの連結部分
18 逃げ溝
21 係合凸部(ドグ部材)
21a 円周方向側面
22 係合凹部
31 リム部とリブとの連結部分
32 逃げ溝
41 ボス部と係合凸部との連結部分
42 逃げ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に動力伝達歯が形成されるリム部と、回転軸に嵌合するボス部と、前記リム部と前記ボス部を連結する環状連結部と、前記環状連結部の側面に形成されるドグ部材と、を備え、前記回転軸上で隣り合うギヤの前記ドグ部材と係合して回転力を伝達するドグクラッチ用ギヤであって、
前記ボス部の軸方向端面に機械加工面が形成され、
前記ボス部と前記ドグ部材との連結部分に、前記ドグ部材から前記ボス部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されることを特徴とするドグクラッチ用ギヤ。
【請求項2】
前記逃げ溝は、前記ボス部の軸方向端面より、軸方向内側に向けて形成されることを特徴とする請求項1に記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項3】
前記逃げ溝は、前記ドグ部材の円周方向側面と前記ボス部の外周側面とを滑らかに連続するように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項4】
前記リム部と前記ドグ部材との連結部分に、前記ドグ部材から前記リム部の軸方向端面に向けて軸方向に連続する逃げ溝が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項5】
前記逃げ溝は、前記ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、略半円形状に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項6】
前記逃げ溝は、前記ドグクラッチ用ギヤの中心軸を通る断面において、おわん状に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項7】
前記逃げ溝は、その底部から前記ドグ部材の円周方向側面に向けて滑らかに連続して形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のドグクラッチ用ギヤ。
【請求項8】
前記逃げ溝を構成する前記ドグ部材側端面は、内周方向から外周方向に向けて滑らかに連続して形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のドグクラッチ用ギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−163500(P2011−163500A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29067(P2010−29067)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】