説明

ドップラースペクトル映像をディスプレイするための超音波診断システム及び方法

【課題】スペクトルドップラー成分を演算できる最も速い反復周期でドップラースペクトルデータを獲得して格納し、ユーザが選択したスイープスピードに従って、ドップラースペクトル映像を表示する超音波診断システム及び方法を提供する。
【解決手段】超音波診断システムで超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期を設定するための周期設定部310と、ドップラースペクトルデータ獲得部320と、ドップラースペクトルデータを格納するための格納部330と、ユーザからスイープスピード情報の入力を受けるためのユーザ入力部340と、反復周期と選択されたスイープスピードとを比較してドップラースペクトルデータを調節するためのデータ調節部350と、調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像を表示するためのディスプレイ部360とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断システムに関するものであって、特にドップラースペクトル映像をディスプレイする超音波診断システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波診断システムは、無侵襲及び非破壊特性を有しており、対象体内部の情報を得るための医療分野に広く用いられている。超音波診断システムは、直接切開して観察する外科手術の必要がなく、高解像度の人体内部組織の映像をリアルタイムで医者に提供することができるので、医療分野において非常に重要なものとして用いられている。近来の高特性超音波診断システムは、対象体の内部形状(例えば、患者の内臓器官)の2次元または3次元診断映像だけでなく、心臓または血管内に流れる血流に対するドップラースペクトル映像をも提供している。
【0003】
超音波診断システムは、超音波信号を送信及び受信するために一般に圧電(piezoelectric)物質で形成される変換素子を用いる。超音波診断システムは、変換素子を電気的に刺激して人体に伝えられる超音波信号を生成して人体に送信する。人体に送信された超音波信号は、不連続的な人体組織の境界で反射され、人体組織の境界から変換素子へ伝達される超音波エコー信号は電気的信号に変換される。変換された電気的信号を増幅及び信号処理して組織に対する超音波映像データを生成する。
【0004】
一方、超音波診断システムは、血管内血流の移動速度を測定したり心臓の動きを測定するために、ドップラー効果(Doppler Effect)を用いる。図1はB−モード(Brightness−mode)映像(BI)とドップラースペクトル映像(DS)とを同時にディスプレイした例を示す例示図である。ユーザが入力手段(例えば、トラックボール)を用いてB−モード映像(BI)で血管に対応する映像にサンプルボリューム(SV)を設定すると、超音波診断システムは対象体でサンプルボリューム(SV)に該当する領域に超音波信号を反復的に送信し、これによる受信信号に基づいてスペクトルドップラー成分を演算する。このように獲得したスペクトルドップラー成分に基づいてサンプルボリューム(SV)に対応するドップラースペクトル映像(DS)がディスプレイされる。ドップラースペクトル映像(DS)は、血管や心臓内の血流または心臓壁のように動く物体の動き方向及び速度などのような情報を示し、ドップラースペクトル映像(DS)の横軸は時間を示して縦軸は速度(または周波数)を示す。
【0005】
図2は、従来のスペクトルドップラー成分を演算するための周期を概略的に示す例示図である。図2を参照すると、超音波診断システムは対象体のB−モード映像にサンプルボリュームを設定すると、サンプルボリュームに対応する所定領域にパルス反復周波数(pulse repetition frequency, PRF)で超音波信号を反復的に送信した後、所定領域から反射された超音波エコー信号を受信して超音波データを獲得する。超音波診断システムは反復周期(repetition period, RP)で超音波データからスペクトルドップラー成分を演算する。従来の超音波診断システムでの反復周期はサンプルボリュームをスキャニングするための時間を示すスイープスピードによって決定される。スイープスピードはキーボード、トラックボールのようなユーザ入力装置を通じて調節することができる。このように獲得したドップラースペクトルデータを格納した後、ディスプレイ装置を介して格納されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像をディスプレイする。
【0006】
従来は、ユーザがスイープスピードを選択すると、選択したスイープスピードに該当する反復周期(RP)が設定される。このように設定された反復周期で超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得し、獲得したドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像をディスプレイする。獲得したドップラースペクトルデータは、バッファ(buffer)などのメモリに格納される。一方、メモリに格納されたドップラースペクトルデータを用いてドップラースペクトル映像をディスプレイする場合、ユーザはスイープスピードを速やかにまたはゆっくり調節してドップラースペクトルデータを時間軸に拡大または縮小することができる。このような場合、ドップラースペクトル映像の解像度の制約が伴う問題がある。また、選択したスイープスピードによってドップラー成分を演算するための反復周期が設定されるため、最大スイープスピードを設定するのに制限が伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超音波診断システムでスペクトルドップラー成分を演算することができる最も速い反復周期でドップラースペクトルデータを獲得して格納し、ユーザが選択したスイープスピードに従って格納されたドップラースペクトルデータの一部をデシメーション(decimation)またはインターポレーション(interpolation)してドップラースペクトル映像をディスプレイする超音波診断システム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明によるドップラースペクトル映像をディスプレイするための超音波診断システムは、前記超音波診断システムで超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期を設定するための周期設定部と、前記設定された反復周期で前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得するためのドップラースペクトルデータ獲得部と、前記ドップラースペクトルデータを格納するための格納部と、スイープスピードを選択するためにユーザからスイープスピード情報の入力を受けるためのユーザ入力部と、前記反復周期と前記選択されたスイープスピードとを比較して前記ドップラースペクトルデータを調節するためのデータ調節部と、前記調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像をディスプレイするためのディスプレイ部とを備える。
【0009】
本発明による超音波診断システムでドップラースペクトル映像をディスプレイするための方法は、超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期を設定する段階と、前記反復周期で前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得する段階と、前記ドップラースペクトルデータを格納する段階と、スイープスピードを選択するためにユーザからスイープスピード情報の入力を受ける段階と、前記反復周期と前記選択したスイープスピードを比較する段階と、前記比較結果に基づいて前記ドップラースペクトルデータを調節する段階と、前記調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトルをディスプレイする段階とを備える。
【発明の効果】
【0010】
前述したように、本発明によってドップラースペクトルデータを獲得するための反復周期がシステムでサポートされる最も速い周期で固定されているためにドップラースペクトル映像の画質の低下なく、ドップラースペクトル映像のドップラースペクトルディスプレイ間隔を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図3は、本発明による超音波診断システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図3を参照すると、本発明実施例による超音波診断システム300は、RP設定部310、ドップラースペクトルデータ獲得部320、格納部330、ユーザ入力部340、データ調節部350及びディスプレイ部360を備える。
【0012】
RP設定部310は、超音波診断システム300でパルス反復周波数(PRF)で超音波信号を対象体に反復送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算することができる最も短い演算時間(最小または最短の演算可能時間)を計算する。このように計算された演算時間に所定のマージンを加えて超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期(repetition period、RP)を設定する。本発明の実施例では、超音波診断システム300の円滑な動作のために演算時間の約1〜10%をマージンとして設定することができる。反復周期は超音波診断システム300の性能によって決定できる。
【0013】
ドップラースペクトルデータ獲得部320は、パルス反復周波数で超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからRP設定部310で設定された反復周期でスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得する。このように反復周期ごとに獲得したドップラースペクトルデータは反復周期情報と共に格納部330に格納される。
【0014】
ユーザ入力部340は、ディスプレイ部360の画面にドップラースペクトル映像をディスプレイするための間隔であるスイープスピード情報の入力をユーザから受ける。データ調節部350は、格納部330に格納されたドップラースペクトルデータを読み出した後、ユーザ入力部340に入力されたスイープスピード情報と反復周期情報を比較する。データ調節部350は、比較結果に応じて読み出したドップラースペクトルデータを調節する。例えば、ユーザが入力したスイープスピードがRPより速い場合、読み出したドップラースペクトルデータをインターポレーション(interpolation:内挿補間)してドップラースペクトルデータの各ドップラースペクトルのディスプレイ時間間隔をスイープスピードに合うように調節する。反面、ユーザが入力したスイープスピードがRPより遅い場合、読み出したドップラースペクトルデータをデシメーション(decimation:間引き)してドップラースペクトルデータの各ドップラースペクトルのディスプレイ時間間隔をスイープスピードに合うように調節する。
【0015】
ディスプレイ部360は、データ調節部350で調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像をディスプレイする。
【0016】
図4は、本発明の実施例によるスペクトルドップラー成分を演算する周期を示す概略図である。図4に示した通り、RP設定部310で最も短い演算時間(最小または最短の演算可能時間)に所定のマージンを加えて反復周期(RP)を設定する。以後、設定された反復周期で超音波データからスペクトルドップラー成分を演算して各周期ごとにドップラースペクトルデータを獲得してメモリ部330に格納する。即ち、本発明による反復周期はユーザによって選択されるスイープスピードと関係なく設定される。
【0017】
以下、本発明によるドップラースペクトル映像をディスプレイする方法について詳細に説明する。
【0018】
図5は、本発明によるドップラースペクトル映像をディスプレイする方法を示すフローチャートである。
【0019】
図5を参照すると、対象体に超音波信号を送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算することができる最も短い演算時間を計算し、計算された演算時間に所定のマージンを加えて反復周期を設定する(S510)。設定された反復周期ごとに超音波信号を対象体の所定領域にパルス反復周波数で送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得して格納する(S520)。
【0020】
以後、ユーザからスイープスペクトルを選択するためのスイープスピード情報が入力されると、反復周期と選択されたスイープスピード情報を比較してドップラースペクトルデータの調節如何を判断する(S530)。ドップラースペクトルデータを調節するものと判断された場合、スイープスピードが反復周期より速い場合には、ドップラースペクトルデータをインターポレーションし、スイープスピードが反復周期より遅い場合にはドップラースペクトルデータをデシメーションする(S540)。例えば、1KHzの反復周期でドップラースペクトルデータを獲得して格納した後、ユーザが入力したスイープスピードが100Hz、200Hz、...、1KHzまたは2KHzであれば、格納されたドップラースペクトルデータを10:1、5:1、...、1:1または1:2でデシメーションするか或いはインターポレーションする。このように調節されたドップラースペクトルデータは、ユーザが入力したスイープスピードでディスプレイされる(S550)。
【0021】
本発明を望ましい実施例を通じて説明し例示したが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項及び範疇を逸脱せず、様々な変形及び変更がなされることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】B−モード(Brightness−mode)映像とドップラースペクトル映像を同時にディスプレイした例を示す例示図である。
【図2】従来のスペクトルドップラー成分を演算するための周期を概略的に示す例示図である。
【図3】本発明による超音波診断システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例によるスペクトルドップラー成分を演算する周期を示す概略図である。
【図5】本発明によるドップラースペクトル映像をディスプレイする方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
310:RF設定部
320:ドップラースペクトルデータ獲得部
330:格納部
340:ユーザ入力部
350:データ調節部
360:ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドップラースペクトル映像をディスプレイするための超音波診断システムにおいて、
前記超音波診断システムで超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期を設定するための周期設定部と、
前記設定された反復周期で前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得するためのドップラースペクトルデータ獲得部と、
前記ドップラースペクトルデータを格納するための格納部と、
スイープスピードを選択するためにユーザからスイープスピード情報の入力を受けるためのユーザ入力部と、
前記反復周期と前記選択されたスイープスピードとを比較して前記ドップラースペクトルデータを調節するためのデータ調節部と、
前記調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトル映像をディスプレイするためのディスプレイ部と
を備えることを特徴とする超音波診断システム。
【請求項2】
前記反復周期は、前記超音波診断システムで前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための最も短い演算時間を計算して設定されることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記反復周期は、前記演算時間に所定のマージンを加えて設定されることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記データ調節部は、
前記スイープスピードが前記反復周期より速い場合には、ドップラースペクトルデータをインターポレーション(interpolation)し、前記スイープスピードが前記反復周期より遅い場合には、ドップラースペクトルデータをデシメーション(decimation)することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項5】
超音波診断システムでドップラースペクトルをディスプレイするための方法において、
超音波信号を対象体に送受信して得る超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための反復周期を設定する段階と、
前記反復周期で前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算してドップラースペクトルデータを獲得する段階と、
前記ドップラースペクトルデータを格納する段階と、
スイープスピードを選択するためにユーザからスイープスピード情報の入力を受ける段階と、
前記反復周期と前記選択したスイープスピードを比較する段階と、
前記比較結果に基づいて前記ドップラースペクトルデータを調節する段階と、
前記調節されたドップラースペクトルデータに基づいてドップラースペクトルをディスプレイする段階と
を備えることを特徴とするドップラースペクトル映像をディスプレイするための方法。
【請求項6】
前記反復周期は、前記超音波診断システムで前記超音波データからスペクトルドップラー成分を演算するための最も短い演算時間を計算して設定されることを特徴とする請求項5に記載のドップラースペクトル映像をディスプレイするための方法。
【請求項7】
前記反復周期は、前記演算時間に所定のマージンを加えて設定されることを特徴とする請求項6に記載のドップラースペクトル映像をディスプレイするための方法。
【請求項8】
前記ドップラースペクトルデータを調節する段階において、
前記スイープスピードが前記反復周期より速い場合には、ドップラースペクトルデータをインターポレーションし、前記スイープスピードが前記反復周期より遅い場合にはドップラースペクトルデータをデシメーションすることを特徴とする請求項7に記載のドップラースペクトル映像をディスプレイするための方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−229339(P2008−229339A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67418(P2008−67418)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(597096909)株式会社 メディソン (269)
【氏名又は名称原語表記】MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】