説明

ドライアイスによる汚染物除去方法

本発明は、汚染した物体をドライアイスで洗浄するための方法に関し、物体はその表面の少なくとも一部に、汚染物が付着する機能層を有し、
(a)機能層はその下に位置する物体表面に付着している力よりも弱い力で、汚染物が機能層に付着し、
(b)機能層は好ましくは物体よりも小さな熱伝導率を有し、
(c)機能層は室温で、ドライアイスとの接触時に発生する温度差に耐える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能層をコーティングした物体の汚染した個所に、噴射媒体を噴射することにより、汚染物を除去するための方法に関する。この噴射媒体はガス流によって汚染物に噴射され、噴射媒体はドライアイスからなっているかまたはドライアイスを含んでいる。本発明は更に、本発明に係る方法によってきわめて良好に洗浄可能である、機能層を有する汚染した物体と、本発明に係る方法をきわめて効果的に実施可能である、汚染した物体をドライアイスによって洗浄するための装置に関する。本発明は更に、物体の汚染物をドライアイスで除去する際に汚染物と物体の間の温度平衡を遅延するための機能被膜の使用に関する。それによって、本発明に係る方法をきわめて良好に実施することができる。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野において、使用される工具、製造装置または補助装置は、例えば塗料、接着剤、加工助剤または練り粉および油脂のような使用物質によって定期的に汚染される。このような物質は装置表面でしばしば燃焼するかまたはクラックを生じ、それによってきわめて頑固で付着しやすい汚染物層が発生する。
【0003】
このような部分的に頑固な汚染物(汚れ)を除去(洗浄)するためのきわめて効果的な方法は、ドライアイス洗浄である。この方法の場合、洗浄作用はいろいろな機械的要因および物理的要因に基づいている。ここで、(i)ドライアイスを汚染物に衝突させることによる機械的な摩耗のほかに、(ii)ドライアイスの低い温度(大気圧で約−78℃)によって引き起こされる、基層に対する大きな温度差(熱応力)に関連して、低い温度によって汚染物を脆弱化することと、(iii)場合によっては昇華作用によって付加的に冷却することと、(iv)ドライアイスの昇華時の急速な容積増大の機械的作用とが挙げられる。
【0004】
通常の方法では、ドライアイスペレットが150m/s、好ましくは300m/sよりも速い速度のガス流によって、噴射装置から洗浄すべき物体の汚染物領域に噴射される。ペレットの場合の噴射材料の大きさは直径が約3mmであり、長さは決まっていない。追加の装置によって、ペレットの大きさを小さくすることができる。汚染物面に対する代表的な噴射角度は約60〜90°である。
【0005】
今日一般的である、ドライアイスを用いた汚染物除去(ドライアイス洗浄)方法は、一連の欠点を有する。ガス流が多量で、ひいてはドライアイス粒の流速が速いと、110dB(A)以上のきわめて大きな騒音が発生する。
【0006】
カプセルに収納することによって騒音を抑えることができるようにするために、金型の自動洗浄を行うことが、多数報告されているが、これは今まで市場で価値を認められていない。(大型の装置に組み込んだ状態での)標準噴射管による金型自動洗浄の場合、機構の運動制限に基づいて、特に部品の表面が複雑なときに、洗浄されにくいかまたは洗浄されないアンダーカットの陰の部分が生じる。この欠点は手作業によって軽減可能であるがしかし、作業が非常に面倒であるにもかかわらず、洗浄結果は少しだけしか改善されない。従って、今日では一般的に、手で洗浄して最適な洗浄効果を得るために、複雑な設備または複雑な設備の汚れた部品が分解される。更に、熱伝導が良好な汚染物は洗浄を困難にする。というのは、ドライアイス洗浄作用の温度差効果が急速な温度平衡によって低下するからである。熱伝導が良好で熱容量の小さな物体または物体表面、例えば急速に冷却される薄い物体についても、同じことが当てはまる。本明細書において熱伝導とは熱伝導率であると理解される。
【0007】
更に、凝集力の小さな汚染物は物体表面次第では洗浄効果がない。なぜなら、汚染物が物体と汚染物の間の境界面における剥離作用よりも脆くなり、従って汚染物の残りが付着したままになるからである。例えば、塗料装置で何度も上塗りされる塗料は層毎に順々に除去される。
【0008】
使用される搬送ガス流の高い圧力によって、汚染物だけでなく、洗浄すべき物体も大きな機械的負荷にさらされる。この負荷は、例えば高い湿度のような外的影響によって、アイスの型内の水がドライアイスと共に物体に噴射されるときに更に大きくなり、それによって洗浄すべき表面に窪みや欠陥個所を生じることになる。洗浄すべき表面の大きな機械的負荷は重要である。というのは、多くの用途で、洗浄によって、新たに汚染物を生じる物体の規定通りの使用に、物体を再び供することができるからである。それによって、材料負荷の持続によって規則的なサイクルで洗浄が行われる。
【0009】
特許文献1には、基層から被膜を除去するための装置と方法が記載されている。この場合、付加的な機械的衝撃を加えるためのニードル装置によってドライアイス洗浄が補助される。この文献で提案された方法により、特に硬い汚染物または固着した汚染物を適切に除去することができる。この装置の欠点は、表面形状や物体材料が制限されることにある。例えばタイヤ形状あるいは溝または深い切り込みを有する形状のような複雑な形状は汚染物を除去されないかまたは多かれ少なかれ垂直な面領域だけしか除去されない。更に、合成樹脂ニードルを使用する場合でも、例えば銅またはアルミニウムからなる金属表面のような軟らかい表面が傷つくことを考慮すべきである。
【0010】
従来技術で知られている他の方法では、ドライアイス洗浄がレーザー洗浄(特許文献2)、慣用の洗浄媒体の付加的な計量供給(特許文献3)および固体の噴射媒体の計量供給(特許文献4)と組み合わせられている。この組み合わせによってそれぞれ、汚染物や洗浄すべき物体に関するドライアイス洗浄の用途が拡張され同時に、洗浄効果が高められる。
【0011】
汚染物除去効果を高めるための他のアプローチが例えば特許文献5で追求されている。噴射媒体の衝突速度を高めることにより、ドライアイス洗浄の機械的な効果が高められる。しかし、このアプローチは機械的な負荷が増大することになり、洗浄可能な物体表面が制限される。更に、圧力を高めることによって、騒音が大きくなる。
【0012】
特許文献6,7,8,9には、自動洗浄を可能にする方法と装置が記載されている。上記のほとんどの方法は、金型、特にタイヤ金型の内壁を洗浄する働きをし、騒音発生を低減する。これらの方法と装置の共通点は、防音カバーを使用し、ロボット装置/走行装置を利用することである。しかし、この解決策では特に騒音を低減するために、一連の欠点が生じる。例えば、ロボット装置/走行装置は高価で重く、各金型に合わせて新たに調節しなければならず、そして異なる形状に付加的に適合させなければならない。作業中、光学的なチェックが不可能であるので、洗浄されなかった個所は作業の終了まで分からない。更に、洗浄すべき物体の部品が外れて多量のガス流によって旋回させられ、物体表面が傷つくことが認識できない。
【0013】
特許文献10には、噴射媒体で物体を噴射処理するための方法が記載されている。この場合、噴射媒体はガス流によって物体の表面に案内される。噴射媒体として少なくともドライアイスが使用される。この文献に記載された除去すべき汚染物はドライアイスよりも大きな硬度を有するがしかし、洗浄すべき物体よりも小さな熱伝導率を有していなければならない。特許文献10では更に、汚染物の少なくとも一部が物体表面と異なる熱膨張係数を有することが要求される。これは、その都度の汚染物(汚れ)と組み合わせた、汚染物除去(洗浄)すべき物体の材料選択を非常に制限する。
【0014】
上記の制限理由は、特許文献10に記載された方法の作用から明らかである。ドライアイスは温度が約−78℃であり、従って普通の作業周囲温度(ほぼ室温、すなわち20℃)の場合、剥がされる汚染物に対して大きな温度差(ΔT)を有する。ドライアイスは汚染物に接触する際、急速な表面冷却をもたらす。この冷却は汚染物表面から始まる。その結果、温度差に基づく所望な熱応力、部分的にはこの熱応力によって生じる汚染物の亀裂形成が生じるので、CO2ペレットの衝突によって汚染物が付加的な機械的作用に基づいて物体表面から剥げ落ちる。従って、CO2ペレットが汚染物を除去すべき表面に高速で衝突することが有利である。更に、上述のように、衝突によってCO2が急速に蒸発し、その容積が非常に大きくなり(昇華作用)、圧力衝撃が生じる。この圧力衝撃は亀裂内で強く作用し、そして物体表面における汚染物の付着力が汚染物内の凝集力よりも小さいときには、圧力衝撃は物体表面と汚染物の間の境界面にきわめて効果的に作用する。従って、例えば一緒に最適に焼結されていないスプレーしぶき領域からなる粉末塗料のような、凝縮力の小さな材料は、汚染物として除去することが困難である。というのは、熱的な脆さのため、この材料が個々に分割されるからである。
【0015】
特許文献10で要求される、物体表面と汚染物との異なる熱膨張係数により、ドライアイスで材料を冷却する際に、汚染物と物体表面との間に熱応力が発生する。この熱応力は所望なせん断作用を境界面に生じることになる。このせん断作用は洗浄すべき物体の表面からの汚染物の分離を促進する。
【0016】
特許文献10に記載された洗浄方法の場合、汚染物がドライアイスの作用を受けて、洗浄すべき物体よりもはるかに強くかつ急速に冷却されることが重要である。そのためには、洗浄すべき物体が大きな熱容量と良好な熱伝導率を有することが前提となる。なぜなら、そうでないときには、物体表面と汚染物の間の(境界面の両側の)急速な温度平衡がドライアイスの重要な作用に逆らうことになるからである。これは特に、大きな面積および/または頑固な汚れの場合の長時間持続される洗浄に当てはまる。一般的に、洗浄すべき物体とドライアイスとの接触が時間的に長ければ長いほど、洗浄は困難になる。なぜなら、温度平衡に基づいて熱応力が小さくなるからである。その結果、極端な場合には、方法を何度も(途中で物体を加熱した後で)実施せずに、頑固で広範囲の汚れを上記方法で効果的に除去することはもはや不可能になる。
【0017】
更に、複雑な表面形状の洗浄は問題がある。特に表面の窪み、深い隅またはアンダーカット部が重要である。というのは、汚れが周囲領域から急速に除去されるので、残っている汚染物のすぐ近くの物体表面が急速に冷却され、物体の良好な熱伝導率に基づいて、深い位置にある汚れのための熱応力が失われるからである。
【0018】
特許文献10から、CO2噴射洗浄の効果について、次の条件が重要であることが明らかである。
− 汚染物の熱伝導率は洗浄すべき表面よりも小さくなければならない。
− 洗浄すべき物体は大きな熱容量を有していなければならない。
− 汚染物の熱負荷能力は小さくなければならない。それによって、熱応力が発生する。
− 洗浄の成果を収めるためには、使用される噴射媒体(CO2ペレット)の量を多くし、衝突圧力を高める必要がある。
− 汚染物は、その中の凝集力よりも弱い力で、洗浄すべき表面に付着していなければならない。
【0019】
これらの条件は最終的には、物体表面と除去可能な汚染物材料との選択可能性の制限につながる。更に、上記条件によって特に、CO2ペレットの高い衝突速度が必要となる。これは大きな騒音を生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許発明第19946957号明細書
【特許文献2】独国特許発明第20308788号明細書
【特許文献3】独国特許発明第10233304号明細書
【特許文献4】独国特許発明第10010012号明細書
【特許文献5】独国特許発明第10254159号明細書
【特許文献6】独国特許発明第19712513号明細書
【特許文献7】独国特許発明第19830397号明細書
【特許文献8】独国特許発明第19936698号明細書
【特許文献9】国際公開第98/07548号パンフレット
【特許文献10】国際公開第02/072312号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そこで、本発明の課題は、従来技術によって知られている上記の欠点の一部またはすべてを減らすかまたは回避する、物体の汚染物を除去するための方法を提供することである。目的は特に、ドライアイスによる物体表面の洗浄時の騒音発生を低減できるようにすることである。更に、表面の機械的な負荷を低減できるようにすべきである。他の目的は、洗浄すべき物体(またはその表面)と汚染物との材料組み合わせの多様性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この課題は本発明に従い、次のステップ
a)汚染した物体を準備し、この場合物体がその表面の少なくとも一部に、汚染物が付着する機能層を有し、
(i)機能層がその下に位置する物体表面に付着している力よりも弱い力で、汚染物が機能層に付着し、
(ii)機能層が物体(特に物体表面の範囲)よりも小さな熱伝導率を有し、
(iii)機能層が−78℃から室温までの範囲において、ドライアイスとの接触時に発生する温度差に耐えることができ、
b)ドライアイスを準備し、そして
c)ガス流を用いて汚染物に噴射される、ドライアイスからなっているかまたはドライアイスを含む噴射媒体を、物体の汚染した個所に噴射することによって汚染物を除去する、
を有する汚染物除去方法によって解決される。
【0023】
機能層が酸素、炭素および珪素を含むプラズマ重合体の層である場合には、物体は塗装装置のための構成要素であってもよいがしかし、所定の状況では、物体と機能層からなる他の組み合わせを、上記の組み合わせとして選択することが得策である。
【0024】
いろいろな用途にとって、本発明に従って使用される機能層がプラズマ重合体の層である場合には、機能層が次の特徴の複数または全部を満たさないことが得策である。
− ESCAを用いた測定について、物質量の比O:Siが1.1よりも大きく、2.6よりも小さく、そして物質量の比C:Siが0.6よりも大きく、2.2よりも小さく、
− プラズマ重合体の層が、重合条件の時間的な変更によって製造可能である勾配層であり、
− プラズマ重合体の被膜が水素および/またはフッ素を含み、この場合、
1.8:1>n(Hおよび/またはF):n(C)<3.6:1
が当てはまる。
【0025】
特に、上記の複数また全部の特性を満たさないプラズマ重合体の層は、次の特徴の複数または全部を有する。
− 物質量の比O:Siが0.75〜1.1よりも大きく、
− 物質量の比C:Siが2.2以上2.5未満であり、
− プラズマ重合体の機能層が炭素、珪素、酸素、水素および場合によっては普通の汚染物からなり、プラズマ重合体生成物のESCAスペクトルにおいて、285.00eVでC 1s ピークの脂肪族成分に較正する際に、25℃で350mm2/sの動粘度と、25℃で0.97g/mLの密度を有する、トリメチルシロキシ−時間制限のポリジメチルシロキサン(PDMS)と比較して、Si 2p ピークが、より高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.44eVだけずらされた結合エネルギー値を有し、O 1s ピークはより高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.50eVだけずらされた結合エネルギー値を有する(更に、この特徴の更なる制約が可能であるかまたは有利である。後述参照)。
【0026】
本発明に係る有利な方法は、機能層を有する汚染した物体によって実施される。この物体の場合、パラメータ「物体の種類」、「汚染物の種類」および「機能層の組成」の一つまたは複数は、有利であるとして後述する実施形および/または詳しく特徴づけられた実施形を有する。
【0027】
本明細書において、汚染物とは、それぞれの物体の所定の用途または所定の使用の際に、物体表面に規則的に付着したままになる汚れであると理解される。汚染物は更に、物体に塗布された除去可能な層でもよい。汚染物は一般的に、天然物、印刷インキ、接着剤、ゴム、生ゴム、合成樹脂、塗料、食品、例えばポリマーコンクリートのような建築資材用原料としての(一部が)硬化可能な無機物質、例えばオイルおよび/または油脂のような化学物質、亜鉛メッキのような金属層、化学的製品、生物工学的製品または薬品を製造するための原料、例えば藻のような生物学的材料の付着物を含む剥離可能な有機および/または無機(金属と非金属)の材料であってもよい。汚染物は上記物質の残りまたは前駆体でもよい。
【0028】
機能層は次の特性を満たすべきである。
− 機能層が物体表面とは反対側に、低エネルギーの付着防止表面を有するので、汚染物の付着力/付着作用が低下する。
− 機能層は、汚染物と一緒に除去されないようにするために、物体表面に対して充分な付着力を有する。
− 機能層は充分の大きさの内部強度/表面硬度を有する。それによって、ドライアイスの衝突やその後のドライアイスの昇華によって機能層は傷つかない。
− 機能層は、普通の作業条件、すなわち、特に室温(20℃)から出発して、ドライアイスとの接触時に発生する温度差に対して耐えることができる。これは、機能層が、低温脆化を生じないで、約20℃から出発して少なくとも−78℃までの温度差に耐えることを意味する。機能層が低温脆化を生じないで、120Kの温度差、更に好ましくは140Kの温度差、更に好ましくは220Kの温度差、非常に好ましくは350Kの温度差、更に非常に好ましくは428Kの温度差に耐えると有利である。機能層が250℃から−78℃まで、好ましくは350℃から−78℃までの範囲において低温脆化に耐え、更に好ましくは350℃から−85℃またはそれ以下の温度までの範囲に耐える。
− 機能層は、ドライアイスによって行われる洗浄作用を補助するために、物体/物体表面よりも小さな熱伝導率を有する。機能層は実際に断熱的に作用し、物体と汚染物の間の温度平衡の急速な発生を防止することができる。
− 従って、機能層が汚染物よりも小さな熱伝導率を有すると有利である。これはドライアイスによって行われる洗浄作用を補助する。汚染物と機能層の間の温度平衡が遅れて発生することにより、熱応力が強く発生する。それによって、特に汚染物と機能層の間の境界面で、剥離作用を生じることになる。同時に、機能被膜は物体表面に対する断熱材である。これにより、熱容量が小さく、熱伝導率が大きな物体も、本発明に係る方法で処理することができる。機能被膜の断熱作用により、本来の物体表面の高温状態は、汚染物除去結果にとってあまり重要ではない。本発明の重要な部分は、ドライアイスを用いて物体の汚染物を除去する際に、汚染物(本明細書で特定するような汚染物が有利である)と物体(同様に本明細素で特定するような物体が有利である)との間の温度平衡を遅らせるための、特に後述する有利な実施形の機能被膜の使用である。
【0029】
機能層の提案した個々の特性はすべて、本発明に係る方法を実施するために寄与する。しかし、この方法を可能にするために、すべての特性を満たす必要はない。通常の場合、使用される機能層が有する提案した特性が多ければ多いほど、本発明に係る方法を容易に実施することができる。
【0030】
提案した特性により、機能層はドライアイス洗浄の熱的な作用を改善することができる。同時に、機能層が汚染物の付着作用を低下させるので、汚染物除去の際にドライアイスをより低い圧力で噴射することができる。それによって、表面の機械的な負荷が低減され、そして特にドライアイス洗浄時に発生する騒音が低減される。同時に、−78℃またはそれ以下の低い表面温度を早く達成することができる。機能層は更に、洗浄すべき物体が損傷する危険を減らし、洗浄すべき物体に関する材料選択を拡げる。機能層が上記の温度および温度差で脆弱化または熱応力を生じないことが重要である。従って、本発明に係る方法において、150m/sまたはそれ以下の速度、好ましくは120m/sまたはそれ以下の速度のドライアイス用搬送ガス流を使用することができる。同様に、ドライアイスが水をほとんど含んでいなく、それによって水の氷によって損傷する危険が減り、および/またはドライアイスが雪および/またはペレットの形で使用されると有利である。
【0031】
本発明に係る方法を用いるために、噴射装置を備えた、汚染した物体をドライアイスで洗浄する装置がきわめて効果的であることが分かった。この噴射装置自体は、
a)より合わせられた経路を有し、各経路は噴射出口に穴を有し、この穴は噴射装置の縦軸線に対して30〜50°の角度をなして噴射物質を流出させ、および/または
b)装置を備え、この装置によって、ドライアイスが噴射装置から流出する前に、0.3mm以下の直径の穴を通過することが保証される。
【0032】
b)に記載した装置は例えば篩またはそれに類似するものである。この装置は所望なペレット大きさを保証し、例えば穴あき板の形をした通過装置でもよい。この装置は大きなペレットの通過を阻止し、このペレットを要求された寸法にする。
【0033】
大きさを制限する装置やペレット噴射システムの代わりに、雪噴射システムを使用することができる。
【0034】
汚染した物体をドライアイスで洗浄するための上記装置の利点は特に、回転運動を発生し、同時に衝突角度を最適化することにより、高速のガス流による標準噴射装置の場合と同じ洗浄効果が得られることにある。回転および衝突角度のため、例えば金型のような組み立てられた物体の汚染物を除去する際の運動の制限による、洗浄されないカットの陰の部分がほとんど無くなる。装置は特に機能被膜との組み合わせによって、洗浄時の音圧を100dB(A)またはそれ以下に低減し、同様に搬送ガス流の圧力を低下させることによって機能層の機械的な負荷を小さくするために寄与する。というのは、ドライアイス噴射流の衝撃力が噴射圧力に大きく依存し、粒子の大きさにはあまり左右されないからである。更に、ドライアイス噴射流の衝撃力は流量に左右されず、そして適切な限度内であれば同様に作業間隔に左右されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1a】噴射装置の横断面図である。
【図1b】噴射角度を明らかにするための概略図である。
【図1c】本発明に係る装置の噴射パターンを示す図である。
【図1d】ドライアイスで洗浄するための従来の装置の噴射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明に係る方法を実施するための本発明に係る上記の装置の重要な部分を概略的に示す図である。
汚染した物体をドライアイスで洗浄するための、図1a〜1dに示した本発明に係る装置の部分の作用は次の通りである。
【0037】
ペレット入口1から、ペレットが搬送ガス流の作用を受けて噴射装置に搬入される。一般的に使用されるペレットは直径が3mmで長さが決まっていないローラの形をしている。ペレットは搬送ガス流の圧力を受けて、0.3mm以下の穴を有するダイプレート2に押し付けられる。これにより、ペレットは粉々になる。それによって、ドライアイス片が生じる。このドライアイス片はダイプレートを通過することができ、搬送ガス流によって一緒に運ばれる。大きなドライアイス片は跳ね返り、再び搬送ガス流の作用を受けてダイプレートに衝突する。これは、ドライアイス片がダイプレートを通過できるように完全に破砕されるまで繰り返される。
【0038】
経路分割3が開始される際に、材料流は互いに分離された3つの経路に分割される。経路分割3の開始時には、横断面図8から分かるように、経路はまだ完全に分離されていない。これは材料流を改善することができる。経路の完全な分離は参照符号9を付けた概略的な横断面図に示してある。噴射物質(破砕されたペレット)は噴出流部4から流出する。その際、経路の位置は横断面図10によって示してある。流出は40〜60°の噴射角度で行われる。これは噴射装置の縦軸線に対して30〜50°の角度をなして流出することになる。装置は遠心力作用6を有する噴射パターンを発生する。この噴射パターンは従来技術に係る公知の噴射パターン7と異なり、噴射媒体の横方向運動を有するので、噴射媒体は例えばアンダーカットのような複雑な表面構造部まで良好に到達することができる。本発明に係る方法は、汚染物が付着する機能層を表面の一部に有する汚れた物体に非常に適している。この場合、
− 汚染物は機能層の下方に位置する物体表面よりも弱く機能層に付着する。
− 機能層は物体よりも熱伝導率が小さい。
− 室温時に、ドライアイスとの接触によって発生する温度差に耐えることができる。
従って、このような物体は本発明の構成要素でもある。このような物体は好ましくは、塗装作業装置の構成要素ではない。
【0039】
このような本発明に係る物体にとって、フッ素有機材料および/または珪素有機材料をベースとした機能層であると有利である。
【0040】
プラズマ重合被膜が機能層として使用されると有利である。プラズマ重合被膜は、プラズマ源を用いてガス相析出することによって発生する被膜である。その際、ガス相析出にはガス相で断片化される前駆物質が使用される。この断片化は、それに基づいてガス相でおよび/または析出される表面で析出すべき物質が重合される(プラズマ重合)ように行われる。
【0041】
プラズマ重合の際、少なくとも炭素、珪素および/または硫黄を微小量を含むガス状物質は、プラズマ内で励起されて断片化される。これらの物質、特にプラズマ重合可能な前駆物質(しばしばモノマーと呼ばれる)の分子の、ガス状態または蒸気状態での励起と断片化は、電子および/またはエネルギーに富むイオンおよび/またはエネルギーに富む光子を照射することによって行われる。その際、荷電されたまたは電気的に中性に励起された分子断片が生じる。この分子断片は既にガス室内で互いに反応することができる。更に、分子断片は表面との衝撃相互作用によって電気的に中性化および/または逆励起および/または反射される。更に、分子断片またはその反応生成物は表面に析出可能であり、そこに層を形成することになる。この層の形成はしばしば化学的な結合部を形成して行われる。
【0042】
この析出層に、プラズマの電気的な放電とそのイオン照射および/または電子照射および/または光子照射が持続的に作用する。従って、析出層には、例えば原子または分子断片を分離しながらの自由な原子価の形成のような他の反応を開始することができる。この自由な原子価はガス層から反応性の種を結合することによってあるいは隣接する原子価との層内部での架橋によって再結合可能である。それによって、高度な架橋が被膜内で達成可能である。
【0043】
プラズマ重合の際に通常は、コーティングすべき表面の高さ構造体、レリーフおよび起伏が充分に維持される。これは多くの場合表面構造の模倣と呼ばれる。
【0044】
プラズマ重合体層の特性は通常、使用されるモノマーと製造条件に依存する。プラズマ重合体層は例えばその構造に関して、プラズマ重合体の典型的な特性によって重合体とは明確に異なっている。
− プラズマ重合体の構造はプラズマ励起中の断片化に基づいて、使用される前駆物質の構造と全く共通点がない。
− プラズマ励起中の断片化によって、プラズマ重合体層は規則的な構造をしていない。− プラズマ重合体は高度に架橋されているが、それにもかかわらず共有結合を有することができる。
− プラズマ重合体層は通常は、製造後、時間が経つうちに初めて空気中の酸素および/または湿気によって飽和させられる長命の遊離基を有する。
− プラズマ重合体層はタクティシティーを有していない(すなわち、配置の繰り返し単位が連続する規則性が存在しない)。なぜなら、配置の繰り返し単位が配位連鎖反応によって生じないからである。
− プラズマ重合体層は無定形である。
【0045】
本発明では、重合条件の時間的な変更によって製造可能であるプラズマ重合体の勾配層の機能層が有利である。重合条件は、特に重合の際の析出にとって重要なパラメータを意味する。このような勾配層は例えば独国特許発明第10034737号明細書、特にその特許請求の範囲に記載されている。
【0046】
ESCAを用いて測定する場合、物質量比O:Siが0.75よりも大きくて2.6よりも小さく、物質量比C:Siが0.6よりも大きくて2.5よりも小さいことと(このような層は特に国際公開第03/002269号パンフレットと独国特許出願公開第10131156A1号明細書、特にその特許請求の範囲に記載されている)および/またはプラズマ重合体の機能層が炭素、珪素、酸素、水素および場合によっては普通の汚れからなっていることが、機能層にとって特に有利である。この場合、プラズマ重合体生成物のESCAスペクトルにおいて、285.00eVでC 1s ピークの脂肪族成分に較正する際に、25℃で350mm2/sの動粘度と、25℃で0.97g/mLの密度を有する、トリメチルシロキシ−時間制限のポリジメチルシロキサン(PDMS)と比較して、Si 2p ピークは、より高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.44eVだけずらされた結合エネルギー値を有し、O 1s ピークはより高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.50eVだけずらされた結合エネルギー値を有する(このような層は特にドイツ国の書類番号102006018476.9の出願、特にその特許請求の範囲に記載されている)。
【0047】
本発明に係る汚染した物体にとって、プラズマ重合体の被膜(機能層)が水素および/またはフッ素を含んでいるときわめて有利である。この場合、
1.8:1<n(Hおよび/またはF):n(C)<3.6:1
好ましくは
2.2:1<n(Hおよび/またはF):n(C)<3.3:1
が当てはまる。
【0048】
機能層にとって1.5≦n(C):n(O)≦2.5の比が特に有利である。
【0049】
本発明では、機能層が結合剤またはプライマを介して物体の表面に結合されると有利である。この場合、結合剤はプラズマ重合体の被膜からなっていてもよい。機能層が0.5W/mkまたは0.1W/mkから1W/mkまでの熱伝導率を有すると有利である。所定の用途にとって、機能層が1μmよりも厚いと利点がある。しかし、0.01〜1μmの厚さが有利である。
【0050】
熱伝導率が0.05〜1W/mkで珪素有機性質および/またはフッ素有機性質であるプラズマ重合体被膜が特に適している。
【0051】
プラズマ重合体被膜は、きわめて輪郭模倣性があり、非常に薄く作ることができ、それによって金型である物体を実際よりも小さな寸法で作る必要がなく、物体表面に良好に付着させることができるので非常に適している。プラズマ重合体層は高い硬度と内部強度を有する。というのは、プラズマ重合体層が三次元のすべての方向において目の詰んだように架橋されているからである。その際、珪素有機ベースおよび/またはフッ素有機ベースのプラズマ重合体被膜は勾配層としてきわめて良好に構成可能であるので、物体表面に良好に付着すると共に、低エネルギーの不粘着表面を形成可能である。その際、層組成および析出条件によって、層を本発明に係る方法に、すなわち特に洗浄すべき物体表面に汚染の方式で最適に合わせることができる。この範囲における最適化は専門家にとって少ない試みで容易に可能である。
【0052】
上記のプラズマ重合体層、特に有利であると記載したプラズマ重合体層は、温度勾配をきわめて有利な方法で最大にし、それによってドライアイス洗浄の熱的な作用を最大にする。同時に、汚染物の付着作用を低減する。それによって、上記の方法で、ドライアイス用の搬送ガス流の作業圧力、ひいては流速を低下させることが可能である。これによって、噴射圧力が低下すると共に表面温度が低下するので、熱の作用を更に高めることができる。ドライアイス粒の作業圧力または衝撃力の低下は更に、機械的に敏感な材料を加工することを可能にする。特に、騒音が減少する。基本的には、あらゆる大きさのドライアイスで作業することができ、特に最大直径が0.3mmのペレットが効果的であることが分かった。
【0053】
本発明に係る方法は定期的に洗浄しなければならない物体にきわめて良好に適用可能である。この方法は更に、(機能層上にある)被膜を除去し、普通の態様で付着している汚染物を洗浄するために適している。
【0054】
用途は特に、接着剤加工、合成樹脂加工、ゴム加工特にタイヤ製造、塗料加工、食品加工、電解層亜鉛メッキの場合のような表面改良、印刷インキ加工、建設資材製造、繊維工業、化学工業、生物工学および薬品産業である。
【0055】
汚染物を除去すべき物体は例えば成形金型(エンボシング型を含む)またはその部品、プレスまたはその部品、接着剤を計量塗布するための装置またはその部品、加硫金型またはその部品、はんだ付けジグ、印刷機械の印刷ロールまたはケーシングまたは他の部品、例えば格子のような塗装装置の構成部材、張り枠(生地改良)、切断装置(生ゴミまたは圧縮によって付着する他の材料)、グリル火格子、産業焼き型(ワッフルの焼き型)、埋め込み灯火のプリズム(飛行場標識灯)、化学物質、薬品の原料、インキ、塗料、ポリマー、食品および/またはその他の天然物質を混合、詰め替え、搬送、運搬、被膜形成、測定、計量供給、加熱、冷却、乾燥、分離、破砕、貯蔵、硬化および/または洗浄するための装置、例えばフィルタ、篩、熱交換器、カッター、化学的、生化学的または生物工学的反応装置、押し出し型の構成部材、処理された物質の残り、特にはねた物質によって汚染した上記装置および設備の周辺装置の部品である。
【0056】
本発明の一部は機能層を備えた汚染した物体である。この物体は機能層の範囲において20W/mk以上の熱伝導率を有し、および/または機能層は10W/mk以下の熱伝導率を有する。
【0057】
次の分野のための本発明に係る方法が特に経済的に重要である。
− タイヤ製造およびゴム加工:幾何学的に詳細に形成された金型内で、タイヤ(合成ゴム、天然ゴム)を(約180℃まで)加硫する際に、長い間には、ゴムの残りと加工助剤の残りがゆっくり成長して金型内に生じる。この加工助剤は成形ブランクに噴霧される(成形ブランク事前処理)。この場合、金型は規則的なサイクルで洗浄しなければならない。同じことがゴム加工の他の分野にも当てはまる。
− 合成樹脂加工:高温エンボシングダイによって(一般的に200〜240℃の範囲で)製造および加工する際に(例えばポリエステル接着剤のような接着剤を形成および使用する際に)、高温エンボシングのときに適用される温度により、接着剤がひび割れを生じることになる。これは金型内でゆっくり成長する。同じ作用が軟弾性発泡合成樹脂(例えばPUまたは発泡メラニン)と技術的な不織布を加工する際に生じる。従って、この場合にも、汚染物除去を定期的に行わなければならない。
例えばポリウレタン、エポキシ樹脂またはホットメルトのような合成樹脂を加工する際に、離型剤が定期的に使用される。この離型剤は金型内でゆっくり成長する。この汚染物も規則的な洗浄時間的間隔で除去しなければならない。
− 接着剤加工:接着剤(1K,2K、溶剤を含むかまたは含んでいない)、熱間糊、冷間糊、フォトレジスト、塗料、はんだレジスト、リノリウム、オイル、樹脂を、例えばローラ塗布工具、プレス、張り合わせ装置、鋳造装置または封止装置で加工および計量供給する際に、しばしば残りが生じる。この残りは定期的に洗浄除去すべきである。
− 印刷インキ/印刷用黒インキを加工する際に、使用される工具を定期的に汚染物除去すべきである。
− 食品分野:例えばコーヒー加工、チョコレート加工、チーズ加工、肉加工、ソーセージ加工おおび魚加工のためあるいはパン菓子とシリアルの製造のための撹拌装置と搬送装置は、食品成分によって汚染され、その機能を維持するために定期的に洗浄すべきである。
【0058】
汚染物が最終製品の前駆体または成分または前駆体または成分の残りであることに留意すべきである。
【実施例】
【0059】
タイヤを加硫する際に、ゴムの残りと加工助剤の残りが加硫プレスの加硫金型表面に残ったままになる。これは高温と繰り返される加硫過程によってゆっくりとひび割れる。付着固定された汚染物が生じる。この汚染物は金型の定期的な洗浄を必要とする。
【0060】
特に金型の弁が汚染される。従って、弁は長い間にはその機能を発揮しなくなる。
【0061】
本発明に係る方法に従ってタイヤ金型を洗浄するために、弁を備えた加硫金型はプラズマ重合体の機能層を有する。この機能層は次のように製造された。
【0062】
【表1】

【0063】
1W/mkよりも小さな熱伝導率を有し、輪郭を模倣するこの被膜により、最大150m/sの速度のドライアイス用搬送ガス流が使用されるときに、金型はドライアイスで迅速にかつ効果的に洗浄可能である。これによって、洗浄時の騒音発生が大幅に低減された。更に、ドライアイス消費を約50%だけ減らすことができた。更に、上記の機能層によって、時間的洗浄間隔を8〜10倍に延長させることができた。弁はもはやほとんど閉塞せず、それによって簡単に洗浄することができ、ほとんど交換する必要がない。弁は更に、機械的負荷が小さい。
【符号の説明】
【0064】
1 ペレット入口
2 ダイプレート(穴の大きさは0.3mm以下)
3 経路の分離の開始(3つの部分からなる羽根状のピッチ)
4 噴射出口
5 噴射角度
6 噴射パターン(本発明に係る遠心力作用)
7 噴射パターン(従来技術の点状)
8 開始される経路分離の概略的な横断面図
9 経路分離の概略的な横断面図
10 噴射出口における経路位置の概略的な横断面図
11 噴射装置内における経路の概略図(破線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物が付着する機能層を、表面の少なくとも一部に有する汚染した物体であって、
(a)機能層がその下に位置する物体表面に付着している力よりも弱い力で、汚染物が機能層に付着し、
(b)機能層が物体よりも小さな熱伝導率を有し、
(c)機能層が−78℃から室温までの範囲において、ドライアイスとの接触時に発生する温度差に耐えることができ、
(d)物体が塗装作業装置のための構成部品ではない、
汚染した物体。
【請求項2】
機能層がフッ素有機材料および/または珪素有機材料をベースとしている、請求項1に記載の汚染した物体。
【請求項3】
機能層がプラズマ重合体被膜である、請求項1または2に記載の汚染した物体。
【請求項4】
機能層が重合条件の時間的な変更によって製作可能であるプラズマ重合体勾配層である、請求項3に記載の汚染した物体。
【請求項5】
(a)ESCAを用いた測定の際に、機能層にとって、
− 物質量の比O:Siが0.75よりも大きく、2.6よりも小さく、および/または
− 物質量の比C:Siが0.6よりも大きく、2.5よりも小さく、および/または(b)プラズマ重合体の機能層が炭素、珪素、酸素、水素および場合によっては普通の汚染物からなり、プラズマ重合体生成物のESCAスペクトルにおいて、285.00eVでC 1s ピークの脂肪族成分に較正する際に、25℃で350mm2/sの動粘度と、25℃で0.97g/mLの密度を有する、トリメチルシロキシ−時間制限のポリジメチルシロキサン(PDMS)と比較して、Si 2p ピークが、より高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.44eVだけずらされた結合エネルギー値を有し、O 1s ピークはより高いかまたはより低い結合エネルギーに対して最大で0.50eVだけずらされた結合エネルギー値を有する、請求項3または4に記載の汚染した物体。
【請求項6】
プラズマ重合体の被膜が水素および/またはフッ素を含み、この場合、
1.8:1<n(Hおよび/またはF):n(C)<3.6:1
好ましくは
2.2:1<n(Hおよび/またはF):n(C)<3.3:1
が当てはまる、請求項3〜5のいずれか一つに記載の汚染した物体。
【請求項7】
物体が、接着剤加工、ゴム加工、合成樹脂加工、食品加工、表面改良、印刷インキ加工、建設資材製造、繊維製造および加工のための装置の構成部品、ランプ、プリズム、光学部品および化学工業、薬品産業および生物工学のための構成部品からなるグループから選択されている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の汚染した物体。
【請求項8】
汚染物が、接着剤、合成樹脂、ゴム、塗料、食品構成要素、金属層、印刷インキ、建設資材、化学製品、生物工学的製品または薬品を製造するための原料、生物学的材料またはその前駆体またはその残渣からなるグループから選択されている、請求項1〜7のいずれか一つに記載の汚染した物体。
【請求項9】
物体が機能層の範囲において20W/mk以上の熱伝導率を有し、および/または機能層が10W/mk以下の熱伝導率を有する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の汚染した物体。
【請求項10】
汚染した物体をドライアイスで洗浄するための装置であって、この装置が噴射装置を備え、噴射装置が
(a)より合わせられた経路(11)を有し、各経路が噴射出口(4)に穴を有し、この穴が噴射装置の縦軸線に対して30〜50°の角度をなして噴射物質を流出(5)させ、および/または
(b)装置(2)を備え、この装置によって、ドライアイスが噴射装置から流出する前に、0.3mm以下の直径の穴を通過することが保証される、装置。
【請求項11】
汚染物を除去するための方法であって、この方法が次のステップ
a)請求項1〜9のいずれか一つに記載の汚染した物体あるいは物体が塗料加工のための装置の構成要素である点だけが請求項1〜9のいずれか一つに記載の物体と異なる物体を準備し、
b)ドライアイスを準備し、そして
c)ガス流を用いて汚染物に噴射される、ドライアイスからなっているかまたはドライアイスを含む噴射媒体を、物体の汚染した個所に噴射することによって汚染物を除去する、
を含んでいる、方法。
【請求項12】
ステップc)において請求項10記載の装置が使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)において、150m/s以下の速度のドライアイス用搬送ガス流が使用される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ドライアイスが実質的に水を含んでおらずおよび/または雪の形および/またはペレットの形で使用される、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
ドライアイスによる物体の汚染物除去の際の、請求項1,8,9のいずれか一つに記載されているような汚染物と、請求項1,7,9に記載されているような物体あるいは請求項1,7,9に記載されているような物体とは物体が塗料加工装置用の構成要素である点だけが異なる物体との間の温度平衡を遅らせるための、請求項1〜6のいずれか一つに記載されているような機能被膜の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【公表番号】特表2010−505634(P2010−505634A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530903(P2009−530903)
【出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060636
【国際公開番号】WO2008/040819
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(505201168)フラウンホファー ゲゼルシャフト ツール フェルドルンク デル アンゲヴァントテン フォルシュンク エー ファウ (10)
【Fターム(参考)】