説明

ドラッグデリバリー用バッキーサム又はカーボンナノチューブの使用方法

治療薬を哺乳動物に投与するための諸組成物と諸方法とを開示する。それら組成物は、(i) 両親媒性の置換済みフラーレンを含有する諸小胞であって、治療薬が小胞の内部、若しくは小胞の壁の諸層の間に存在しているそれら小胞か;(ii) フラーレンのコアと官能性部分とを含有する置換済みフラーレンであって、治療薬が該置換済みフラーレンと結合している該置換済みフラーレンか;又は(iii) 治療薬が諸カーボンナノチューブに共有結合しているそれらカーボンナノチューブ;を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
2002年2月14日に出願された同時係属仮出願第60/356,856号からの優先権を主張する。その仮出願明細書の開示内容は、言及することによって、そっくりそのまま本明細書に組み入れる。
(1.発明の分野)
本発明は、哺乳動物に治療薬を投与するための組成物及び方法に関する。いっそう詳しく言えば、本発明は、複数の小胞(vesicles)であって、該小胞の壁が置換済みフラーレン(substituted fullerenes)を含有しており、且つ、該小胞が治療薬を含有している上記複数の小胞と;治療薬で被覆されている複数の被覆済み(derivatized)カーボンナノチューブと;それら小胞又はそれら被覆済みカーボンナノチューブを哺乳動物に投与するための方法と;に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の記述)
近年、ドラッグデリバリー(薬物送達)、DNAトランスフェクション(transfection)、及び他の医療用途及び生物学的用途のために、種々のアプローチが研究されてきた。1つの、そのような組のアプローチには、小胞(vesicles)又はリポソーム(liposomes)が包含される(本明細書において、これら2つの用語は、互換性があるように用いる)。
「ミシュラ(Mishra)等:Drug Deliv.,7(3),第155頁〜159頁(2000)」は、赤血球ゴースト(erythrocyte ghosts)に塩酸ドキソルビシンを装填することを教示している。いわゆる逆生体膜小胞(reverse biomembrane vesicles)は、膜がゴースト内部の中に出芽すること[エンドサイトーシス(endocytosis;細胞内取り込み)]によって形成され、各々の親ゴースト(parent ghost)の内部に小さい小胞の蓄積が引き起こされた。逆生体膜小胞中に取り込まれるドキソルビシンの量は、充填済み小胞1ml当り0.75mgであった。生体外(in vitro)放出プロフィルは、16時間で薬物放出の52.86%を示した。
「グオ(Guo)等:Drug Deliv.,7(2),第113頁〜116頁(2000)」には、インシュリンを含有する可とう性レシチン小胞の製法が教示されており、インシュリンの経皮送達に及ぼすこれら小胞の影響が評価されている。諸小胞をマウス腹皮に塗ったとき、血糖は、18時間以内に50%を超える量だけ低下した。
【0003】
「フロイント(Freund):Drug Deliv.,8(4),第239頁〜244頁(2001)」は、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びポリオキシエチレンアルコールを含有する非カチオン性多重膜ベクターの中に治療分子を被包することを教示している。そのような、薬物を取り込んだベクターは、リン脂質の溶媒変性層状相(lyotropic lamellar phase)を剪断変形させることによって調製された。
しかし、当該技術では、ドラッグデリバリーに適した諸特性[即ち、とりわけ、それら小胞を形成する両親媒性物質が低毒性であること;及び、小胞の形成と小胞の離解(disaggregation;構成成分への分解;分離分解)とが迅速であること]を有する諸小胞の必要性が存続している。そのような諸特性はまた、非小胞ベースのドラッグデリバリー系に関しても同様に重要である。
フラーレンは、その最もよく知られている例はC60であるが、最初、「クロート(Kroto)等:Nature(1985)318:162」によって報告された。それ以来、フラーレンの被覆は迅速に行うことができるため、広範囲に渡る被覆済みフラーレンを調製することが可能であり、それらフラーレンの特性が探求されてきた。
【0004】
両親媒性の被覆済みフラーレンは、「ヒルシュ(Hirsch)等:Angew.Chem.Int.Ed.39(10),第1845頁〜1848頁(2000)」によって報告されている。ヒルシュによる被覆済みフラーレンは、18個のカルボン酸部分と、5個の疎水性部分であって各々が一対の親油性C12炭化水素鎖を有している該疎水性部分とを含有する1個のデンドリマー基(dendrimeric group)を含有した。それら両親媒性被覆済みフラーレンの水溶液のフリーズフラクチャー(freeze-fracture)電子顕微鏡写真撮影法によって、それら両親媒性被覆済みフラーレンは、二重層小胞(bilayer vesicles)(これは、両親媒性被覆済み諸フラーレン分子であって、実質的に全てがそれらフラーレン分子の親水基と一緒に該小胞の外部に配向している該フラーレン分子の外層と;両親媒性被覆済み諸フラーレン分子であって、実質的に全てがそれらフラーレン分子の親水基と一緒に該小胞の内部に配向している該フラーレン分子の内層と;を有している膜によって定義される小胞であって、前記外層の諸分子の疎水基が前記内層の諸分子の疎水基に極めて接近している該小胞を意味している)を形成し、また、約100nm〜約400nmの直径を有していることが明らかになった。
【0005】
「ブラウン(Braun)等:Eur.J.Org.Chem.,第1173頁〜1181頁(2000)」は、ビオチン化リポフラーレンの合成を教示している。
カーボンナノチューブ及びそれらの被覆方法は知られている。「ホルツィンガー(Holzinger)等:Angew.Chem.Int.Ed.,40(21),第4002頁〜4005頁(2001)」は、カーボンナノチューブの側壁にニトレンを付加環化することと、求核性カルベンを付加することと、ラジカルを付加することとを報告している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、1つの具体例において、内部と、外部と、1つ以上の層を有する壁とを有している小胞であって、各々の層が、化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンを含有しており;しかも、前記小胞の壁が、前記置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有しており;しかも、前記小胞の内部か、壁の2つの層の間の部分か、又は両者が、治療薬を含有している;上記小胞に関する。
【0007】
本発明は、もう1つの具体例において、治療薬を哺乳動物に投与する方法において、
(i) 薬学的に有効な量の前記治療薬を含有する溶液を前記哺乳動物に投与する段階であって、該治療薬が、小胞の内部か、前記小胞の壁の2つの層の間の一部分か、又は両者に存在しており;しかも、前記小胞が、上記に規定される通りのものである;該投与段階
を包含する、上記投与方法に関する。
本発明は、更にもう1つの具体例において、小胞の内部か、小胞の壁の2つの層の間か、又は両者に治療薬を含有する該小胞を可逆的に形成する方法であって、
上述の通りに、水性溶媒中に、化学構造Iを有する置換済みフラーレンと、治療薬とを溶解する工程であって、該溶媒のpHは、該置換済みフラーレンから小胞を形成するのに十分低い該溶解工程を包含する、上記形成方法に関する。
【0008】
本発明は、更にもう1つの具体例において、
カーボンナノチューブと、
少なくとも1種の治療薬であって、各々の治療薬が前記カーボンナノチューブに共有結合している該治療薬と
を有している被覆済みカーボンナノチューブに関する。
本発明は、更なる具体例において、治療薬を哺乳動物の組織に送達する方法において、
(i)カーボンナノチューブと、少なくとも1種の治療薬であって、各々の治療薬が該カーボンナノチューブに共有結合している該少なくとも1種の治療薬とを有する被覆済みカーボンナノチューブを哺乳動物に投与する段階;及び
(ii) 前記被覆済みカーボンナノチューブが前記組織に接近している時、前記カーボンナノチューブと前記の少なくとも1種の治療薬の間の共有結合の破壊を促進するアジュバントを哺乳動物に投与し、そうすることによって、該少なくとも1種の治療薬を該組織に送達する段階、
を包含する上記送達方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、治療薬を特定の組織に容易に配送することのできる諸組成物を都合良く調製することができる。治療薬を特定の組織まで導くことができるので、該治療薬のいっそう少ない投与量を使用することが可能となり、また、該治療薬の全身的副作用を減少させることができる。更に、本発明の種々の具体例において使用される諸置換済みフラーレン及び諸カーボンナノチューブは、該治療薬を配送した後、体から容易に取り除かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(説明に役立つ諸具体例の記述)
本発明は1つの具体例において、内部と、外部と、1つ以上の層を有する壁とを有している小胞であって、各々の層が、化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンを含有しており;しかも、前記小胞の壁が、前記置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有しており;しかも、前記小胞の内部か、壁の2つの層の間の部分か、又は両者が、治療薬を含有している;上記小胞に関する。
【0011】
「小胞(vesicle)」は、その用語が本明細書で使用されるとき、(a)親水性(水を好むような)領域、典型的には、荷電部分又は極性部分(例えば、とりわけ、当業者には知られている極性頭部基(polar headgroups)を有している部分)と、(b)疎水性(水を嫌うような)領域、典型的には、無極性部分(例えば、とりわけ、当業者には知られている炭化水素鎖)の両方を含有している諸分子を意味する諸両親媒性分子の集合である。水溶液中で、それら両親媒性分子が壁(即ち、3次元の閉曲面)を形成するとき、該小胞が形成される。該壁は、小胞の内部と小胞の外部との境界を定める。壁の外面は典型的には、諸両親媒性分子の親水性領域が、該水溶液の溶媒である水と接触するような具合に配向しているそれら両親媒性分子によって形成される。壁の内面は、諸両親媒性分子の親水性領域が、小胞の内部に存在している水と接触するような具合に配向しているそれら両親媒性分子によって形成されることがある。或いは、壁の内面は、諸両親媒性分子の疎水性領域が、小胞の内部に存在している疎水性物質と接触するような具合に配向しているそれら両親媒性分子によって形成されることがある。
【0012】
壁の中の諸両親媒性分子は、層を形成する傾向があり、それ故に、壁は、諸両親媒性分子の1つ以上の層を有することがある。壁が1つの層から成る場合、該壁は、「単一層膜(unilayer membrane)」又は「単分子層膜(monolayer membrane)」と称することがある。壁が2つの層から成る場合、該壁は、「二重層膜(bilayer membrane)」と称することがある。2以上の層〜あらゆる数の層を有する壁もまた、本発明の範囲に入る。
該小胞は、本明細書では「バッキーサム(buckysome)」と称することがある。
「C」は、n個の炭素原子を有するフラーレン部分をいう。バックミンスターフラーレン(buckminsterfullerenes)は、フラーレンとしても、又はいっそうくだけた言い方ではバッキーボール(buckyballs)としても知られているが、本質的にsp−ハイブリッド炭素から成るかご様分子である。フラーレンは、ダイヤモンド及び黒鉛とは別の、純炭素の第3の形態である。フラーレンは典型的には、六角形、五角形、又は両者の形態で配列されている。最も知られているフラーレンは、12個の五角形と、その分子の大きさによって決まる、種々の数の六角形とを有している。通常のフラーレンは、C60及びC70を含有している。とは言え、約400個以下の炭素原子を含有しているフラーレンも知られている。本明細書において、「


」は、C60分子、又は分子中のC60部分を表すものとして用いる。
【0013】
フラーレンは、既知のいずれかの技術によって生成することができる。それら技術は、黒鉛の高温蒸発を包含するが、それに限定されない。フラーレンは、他にも製造業者はあるが、MER社(MER Corporation)(アリゾナ州トゥーソン)及びフロンティア・カーボン社(Frontier Carbon Corporation)が市販されているか、又は市販されているものと思われる。
特定の置換済みC60異性体の命名法は複雑である。本明細書では、いわゆるヒルシュ案(Hirsch Scheme)[ヒルシュ(Hirsch):Angew.Chem.Intl.Ed.,33(4),第437頁〜438頁(1994)]を使用する。
【0014】
フラーレンを種々の置換基で置換する方法は、当該技術では周知である。諸方法には、とりわけ、1,3−双極付加[シジュベスマ(Sijbesma)等:J.Am.Chem.Soc.,115,第6510頁〜6512頁(1993);スズキ:J.Am.Chem.Soc.,114,第7301頁〜7302頁(1992);スズキ等:Science,254,第1186頁〜1188頁(1991);プラト(Prato)等:J.Org.Chem.,58,第5578頁〜5580頁(1993);バセラ(Vasella)等:Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,31,第1388頁〜1390頁(1992);プラト等:J.Am.Chem.Soc.,115,第1148頁〜1150頁(1993);マッジーニ(Maggini)等:Tetrahedron Lett.,35,第2985頁〜2988頁(1994);マッジーニ(Maggini)等:J.Am.Chem.Soc.,115,第9798頁〜9799頁(1993);及びマイヤー(Meier)等:J.Am.Chem.Soc.,116,第7044頁〜7048頁(1994)]、ディールス・アルダー(Diels-Alder)反応[イヨダ(Iyoda)等:J.Chem.Soc.Chem.Commun.,第1929頁〜1930頁(1994);ベリック(Belik)等:Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,32,第78頁〜80頁(1993);ビデル(Bidell)等:J.Chem.Soc.Chem.Commun.,第1641頁〜1642頁(1994);及びマイダイン(Meidine)等:J.Chem.Soc.Chem.Commun.,第1342頁〜1344頁(1993)]、他の付加環化プロセス[サウンダース(Saunders)等:Tetrahedron Lett.,35,第3869頁〜3872頁(1994);タデシタ(Tadeshita)等:J.Chem.Soc.Perkin.Trans.,第1433頁〜1437頁(1994);ベーア(Beer)等:Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33,第1087頁〜1088頁(1994);クスカワ(Kusukawa)等:Organometallics,13,第4186頁〜4188頁(1994);アーフェルドゥンク(Averdung)等:Chem.Ber.,127,第787頁〜789頁(1994);アカサカ(Akasaka)等:J.Am.Chem.Soc.,116,第2627頁〜2628頁(1994);ウー(Wu)等:Tetrahedron Lett.,35,第919頁〜922頁(1994);及びウィルソン(Wilson):J.Org.Chem.,58,第6548頁〜6549頁(1993)]、付加/脱離によるシクロプロパン化[ヒルシュ等:Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33(4),第437頁〜438頁(1994);及びベストマン(estmann)等:C.Tetra.Lett.,35,第9017頁〜9020頁(1994)]、並びに、カルボアニオン/アルキル・リチウム/グリニャール試薬の付加[ナガシマ(Nagashima)等:J.Org.Chem.,59,第1246頁〜1248頁(1994);ファーガン(Fagan)等:J.Am.Chem.Soc.,114,第9697頁〜9699頁(1994);ヒルシュ等:Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,31,第766頁〜768頁(1992);及びコマツ(Komatsu)等:J.Org.Chem.,59,第6101頁〜6102頁(1994)]が包含される。
【0015】
置換済みフラーレンの合成は、マーフィ等の米国特許第6,162,926号明細書によって再検討されている。
フラーレン(とりわけ、C60)は、八面体付加パターン(6個の頂点を有する八面体)において、6個以下の付加物を容易に受け取ることが見出だされた[ブレットライヒ(Brettreich)等:Angew.Chem.Int.Ed.,39,第1845頁〜1848頁(2000)]。
【0016】
Bは、1〜40個の極性頭部基部分を含有するいずれかの有機部分から選定する。「極性頭部基(polar headgroup)」は、極性のある部分であり、そのことは、該部分内部における各々の結合の結合双極子のベクトル和がゼロでないことを意味する。極性頭部基は、正に荷電するか、負に荷電するか、又は中性であることがある。極性頭部基は、該部分の少なくとも一部分が、その分子の環境にさらされることができるような具合に配置することができる。典型的な極性頭部基部分は、当該技術で知られている中でも、カルボン酸部分、アルコール部分、アミド部分、及びアミン部分を包含するが、それらに限定されない。Bは好ましくは、約6個〜約24個の極性頭部基部分を有している。1つの具体例において、Bは、極性頭部基部分の大部分がカルボン酸部分である構造を有する。これらカルボン酸部分は、置換済みフラーレンが水性溶媒に溶解する時、水にさらされる。デンドリマー(dendrimeric)構造、又は他の通常の高度に枝分かれした構造は、Bの構造として適している。
【0017】
bの値は、1〜5のいずれかの整数であることがある。1つの具体例において、1個以上のB基が存在する(即ち、b>1である)とき、そのようなB基は全て、互いに隣接している。この文脈における「隣接して(adjacent)」は、以下に定義されるように、A基のみを有するB基は全く存在しないこと、及び/又は、最も近くに隣接している付加地点に置換基は全く存在しないことを意味する。b>1であるときの八面体付加パターンの場合、「隣接して(adjacent)」は、B基の最も近くに接近している、八面体の4個の頂点は、全てがA基である訳ではないか、又は空の状態であることを意味する。
1つの具体例において、Bは18個の極性頭部基部分を有しており、b=1である。
Bの極性頭部基部分は、(1個以上の)B基を親水性にする傾向がある。
【0018】
各々のBは、1つ以上の共有結合によって、Cに結合されている。フラーレン炭素が、形成される可能性があり且つフラーレン構造を崩壊しないと思われる共有結合であれば、如何なる共有結合も考えられる。諸例には、炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、又は炭素−窒素結合が包含される。B基の1個以上の原子(例えば、1個又は2個の原子)が、Cへの結合に関与することがある。1つの具体例において、B基の1個の炭素原子は、Cの2個の炭素原子に結合しており、しかも、Cのそれら2個の炭素原子は互いに結合している。
1つの具体例において、Bは、アミドデンドロン(amide dendron)構造
>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)
を有している。
化学構造IのAは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分である。1つの具体例において、その有機部分は、Cに対して遠位の2個を有している。「Cに近接した末端」は、A基の一部分であって、Cに対して1個以上の結合を形成している、A基の1個以上の原子(例えば、1個又は2個の原子)を含有している該一部分を意味する。「Cに対して遠位の末端」は、A基の一部分であって、Cに対して1個以上の結合を形成する如何なる原子をも含有していないものの、Cに近接したA基末端に対して1個以上の結合を形成する1個以上の原子を含有しているものである該一部分を意味する。
【0019】
に対して遠位の各々の末端は、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している。−Cは、直鎖、枝分かれ、環状、芳香族、それらのある組み合わせである場合がある。Aは、Cに対して遠位の2個の末端であって、各々の−Cが直鎖であり、12≦x≦18であり、y=2x+1であるのが好ましい。それら2個の末端の各々において、x=12であり、y=25であるのがいっそう好ましい。
に対して遠位のそれら末端は、A基を疎水性又は親油性にする傾向がある。
aの値は、1〜5のいずれかの整数である場合がある。aは、5であるのが好ましい。1つの具体例において、1個を超えるA基が存在する(即ち、a>1である)とき、そのようなa基は全て、互いに隣接している。この文脈における「隣接して(adjacent)」は、以下に定義されるように、B基のみを有するA基は全く存在しないこと、及び/又は、最も近くに隣接している付加地点に置換基は全く存在しないことを意味する。a>1であるときの八面体付加パターンの場合、「隣接して(adjacent)」は、A基の最も近くに接近している、八面体の4個の頂点は、全てがB基である訳ではないか、又は空の状態であることを意味する。
【0020】
各々のAは、1つ以上の共有結合によって、Cに結合されている。フラーレン炭素が形成される可能性があり且つフラーレン構造を崩壊しないと思われる共有結合であれば、如何なる共有結合も考えられる。諸例には、炭素−炭素結合、、炭素−酸素結合、又は炭素−窒素結合が包含される。A基の1個以上の原子(例えば、1個又は2個の原子)が、Cへの結合に関与することがある。1つの具体例において、A基の1個の炭素原子は、Cの2個の炭素原子に結合しており、しかも、Cのそれら2個の炭素原子は互いに結合している。
1つの具体例において、Aは、化学構造 >C(C(=O)O(CH11CHを有している。
B基及びA基の数は、2〜6から選ばれる(即ち、2≦b+a≦6である)。1つの具体例において、b+a=6である。1個以上の親水性B基と1個以上の疎水性A基とを組み合わせることによって、置換済みフラーレンは両親媒性になる。特定の意図された用途にとって望ましいかも知れない特定の両親媒性品質を有するフラーレンを生成するために、B基及びA基の数と素性(identity)とを選定することができる。
【0021】
1つの好ましい具体例において、置換済みフラーレンは、化学構造II:


[式中、X’は、>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)であり、各々のXは、>C(C(=O)O(CH11CHである]を有している。化学構造II[式中、各々のXは、>C(C(=O)O(CH11CHである]を有する置換済みフラーレンの化学構造の表示は、図1に示す。
【0022】
1つの具体例において、置換済みフラーレンは、図1に示す構造を有する。
置換済みフラーレンは、1個以上のB基か、1個以上のA基か、又は両者に共有結合している1個以上の官能基を更に有することがある。1つの具体例において、該1個以上の官能基は、1個以上のB基に共有結合している。
「官能基(functional group)」は、特定の化合物に結合し、そうして、置換済みフラーレンを該特定化合物と結合させる基を意味する。
1つの具体例において、官能基は、ビオチン又はビオチン含有部分(即ち、ストレプトアビジンに結合すると思われる部分)である。
【0023】
もう1つの具体例において、官能基は、抗原結合性部分である。抗原結合性部分は、抗体の抗原識別部を含有している部分を意味する。抗体の抗原識別部を含有している部分の諸例は、とりわけ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のFabフラグメント、ポリクローナル抗体のFabフラグメント、モノクローナル抗体のFabフラグメント、及びポリクローナル抗体のFabフラグメントを包含するが、それらに限定されない。単一鎖又は複数鎖の抗原識別部を使用することができる。複数鎖の抗原識別部は、融合することがあるか、又は融合しないことがある。
抗原結合性部分は、あらゆる既知のクラスの抗体から選定することができる。既知のクラスの諸抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを包含するが、必ずしもそれらに限定されない。例えば、IgGクラスの既知のサブクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を包含するが、必ずしもそれらに限定されない。他の諸クラスは、当業者に通常知られている複数のサブクラスを有している。
【0024】
抗原結合性部分は、いずれの種に由来する抗体からでも選定することができる。この文脈における「〜に由来する(Derived from)」は、ある種(species)の個々のメンバーから生体内で調製されて抽出される;又は、該種の個々のメンバーから生体内で調製される抗体と実質的に同一である不変領域(invariant regions)を有する抗体ペプチドか、若しくは、該種からの抗体に対して特異的に増大する抗血清によって認識される抗体ペプチドを、全体的にせよ部分的にせよ、核酸分子でエンコード化すること(encoding)により既知のバイオテクノロジーによって調製される;を意味することがある。典型的な種は、とりわけ、ヒト、チンパンジー、ヒヒ、他の霊長類、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ及びウサギを包含するが、それらに限定されない。1つの具体例において、該抗体は、キメラである:即ち、複数の部分であって、各々の部分が異なる種に由来する該複数の部分を有している。それら部分の1つがヒト由来であるキメラ抗体は、ヒト化抗体と見なすことができる。
【0025】
多種多様の哺乳動物種の、多種多様の細胞型、組織及び器官と、多種多様の医療条件とに関連する抗原を認識する諸抗原識別部分を利用することができる。典型的な医療条件は、とりわけ、癌(例えば、肺癌、口腔癌、皮膚癌、胃癌、大腸癌、神経系癌、白血病、乳癌、子宮頚癌、前立腺癌、及び睾丸癌);関節炎;感染症(例えば、細菌感染症、ウィルス感染症、真菌感染症、他の微生物感染症);皮膚、眼、脈管系、又は他の細胞型、組織若しくは器官の疾患;を包含するが、それらに限定されない。
【0026】
当該技術で知られている典型的な抗原識別部分は、[ニューヨーク州ニューヨーク、インクローン(Imclone)から入手できる]脈管内皮成長因子受容体(VEGF−r)に対する抗体;[カリフォルニア州フレモント、アブゲニックス(Abgenix)から入手できる]上皮成長因子受容体(EGF−r)に対する抗体;[ワシントン州シアトル、コリキサ社(Corixa Corporation)から入手できる]肺癌と結合するポリペプチドに対する抗体;[ドイツ、ルートウィヒスハーフェン、BASF株式会社から入手できる]ヒト腫瘍壊死因子アルファ(hTNF−α)に対する抗体;を包含するが、それらに限定されない。
諸抗原識別部分は、当該技術で知られている種々の技術によって調製することができる。これらの技術は、当業者に知られている諸技術の中でもとりわけ、「Nature,256,第495頁〜497頁(1975)」でコーラー(Kohler)及びミルスタイン(Milstein)によって記述されている免疫手法、並びに、「バードン(Burdon)等編集:生化学及び分子生物学の実験技術(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology),第13巻,アムステルダム、エルセビア科学出版社(Elsevier Science Publishers)(1985)」における『モノクローナル抗体技術、げっし動物とヒトのハイブリドーマの産生及び特徴付け(Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas)』でキャンベル(Campbell)によって記述されている免疫手法;だけでなく、「Science,246,第1275頁〜1281頁(1989)」でフセ(Huse)等によって記述されている組換えDNA技術;をも包含するが、それらに限定されない。
【0027】
更なる具体例において、官能基は、組織識別部分であって、特定組織の細胞によって表現され、細胞の外部に存在している1種以上のタンパク質と特異的に結合することによって該組織の細胞を認識する部分を意味する該組織識別部分である。そのような部分の例は、他のクラスの諸部分の中でもとりわけ、諸ペプチドを包含するが、それらに限定されない。本明細書で使用する用語「諸ペプチド(peptides)」は、1種以上のアミノ酸を含有するあらゆるペプチドを包含する。典型的な諸ペプチドは、とりわけ、VEGF;EGF;他の諸成長因子;及び、他の諸受容体(例えば、細胞表面受容体、細胞質受容体、及び核受容体)のための配位子;を包含するが、それらに限定されない。
【0028】
1つの具体例において、極性頭部基がカルボン酸部分であり、官能基がペプチドである場合、官能基は、該極性頭部基中のカルボン酸と該ペプチド中のアミンの間のアミノ結合によって、極性頭部基に結合することができる。
組織識別部分は、いずれかの種(species)又は複数の種から誘導することが可能であり、また、いずれかの細胞型、組織若しくは器官を標的とするように、又はいずれかの疾患を治療するように選定することができる。
諸官能基を含有させることによって、置換済みフラーレンが特定の組織を標的とする可能性が高まる。小胞の膜の、少なくとも幾らかの置換済みフラーレンの諸分子の中に諸官能基を含有させることによって、該小胞が特定の組織を標的とする可能性が高まる。
該官能基は、1個以上のリンカー(a linker or linkers)、即ち、(a)上記に規定されるようなビオチン含有部分、抗原結合性部分又は組織識別部分と、(b)上記に規定されるような置換済みフラーレンの両方に共有結合されている部分をも含有することができる。1つの具体例において、それら極性頭部基がカルボン酸部分である場合、リンカーはエステルであることがある。
【0029】
小胞膜中の諸置換済みフラーレン分子の幾らかが、官能基を含有している場合、該小胞膜のそれら置換済みフラーレン分子の約0.01モル%から約100モル%は、該官能基を含有する。費用を低減するために;また、多くの官能基は、それらが結合する特定の化合物に対して感度が非常に高いという観察結果を考慮に入れると;該小胞膜のそれら置換済みフラーレン分子の約0.01モル%から約1モル%が、該官能基を含有するのが好ましい。
1つの具体例において、小胞の壁は、置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有する。該小胞膜の残部は、他の両親媒性化合物を含有する。この文脈における「両親媒性化合物(amphiphilic compound)」は、ある化合物であって、それの諸分子がそれぞれ疎水性領域及び親水性領域を含有する該化合物を意味している。そのような両親媒性化合物は、とりわけ、市販の脂質(例えば、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ホスファチジルコリン、及びリン酸ジオレオイルトリメチルアンモニウム)を包含するが、それらに限定されない。
【0030】
1つの具体例において、小胞の壁は、化学構造Iを有する置換済みフラーレンを少なくとも約75モル%含有する。もう1つの具体例において、小胞の壁は、化学構造Iを有する置換済みフラーレンから本質的に成る。
1つの具体例において、小胞の壁は、二重層の膜である。該二重層膜は、2つの層、即ち、置換済みフラーレン、及び(存在するならば)他の1種以上の両親媒性化合物から形成されている内部層であって、実質的に全ての置換済みフラーレン及び他の諸両親媒性分子が、それらの疎水性部分を外部層に向けて配向している該内部層と;置換済みフラーレン及び他の1種以上の両親媒性化合物から形成されている前記外部層であって、実質的に全ての置換済みフラーレン、及び(存在するならば)他の諸両親媒性分子が、それらの疎水性部分を前記内部層に向けて配向している該外部層と;を含有する。結果として、内部層及び外部層の各々の実質的に全ての分子の親水性部分は、小胞に対して、小胞の内部又は外部における水性溶媒に向けて配向する。
【0031】
それら分子の親水性部分の親水性は、溶媒のpH又は他の諸パラメータが変われば、変化することがある(例えば、pHが諸置換済みフラーレンのB基の極性頭部基部分のpKaより上まで増大すれば、それら置換済みフラーレンは、小胞の膜から容易に分離して、水相の中に入る)ので、小胞を形成するために、溶媒のpH及び他の諸パラメータは、当業者によるごく普通の実験の問題として調整することができる。
小胞は内部を有しており、該内部は水性溶媒を含有しているので、該小胞は、該小胞の内部に治療薬を更に含有することができる。そのような化合物は典型的には、小胞を形成する工程の一部として、該小胞の内部に導入する:その導入は、例えば、治療薬、諸置換済みフラーレン及び他の諸両親媒性化合物を、存在するならば、pH及び他の諸条件の下、水性溶媒の中に導き入れ、そうすることによって、該置換済みフラーレン、及び(存在するならば)他の諸両親媒性化合物は、自己集合させて(self-assemble)小胞を形成し、該小胞が自己集合する間、治療薬の諸分子を該小胞の中に封鎖する(sequestered;隔離する)ことによって行なう。自己集合を容易にするため、溶媒のpHは約8.0未満であるのが好ましい。しかし、当該技術で知られている、小胞の内部に治療薬を含有させる他の技術は使用することができる。
【0032】
1つの具体例において、小胞の内部が水を含有し、実質的に疎水性溶媒を含有しない場合、治療薬は、水溶性薬剤又は他の化合物であって、哺乳動物に投薬することによって、該哺乳動物が患っている医療状態を軽減することができるものである。1つの具体例において、治療薬は、諸水溶性抗癌剤から成る群から選択する。
1つの具体例において、小胞の壁は、単分子層膜であって、その中で、置換済みフラーレン、及び(存在するならば)他の1種以上の両親媒性化合物の分子は、実質的に全てが、それらの親水性領域が、小胞に対して小胞の内部又は外部で極性相又は水性相に隣接し、且つ、それらの疎水性領域が、小胞に対して小胞の内部又は外部で無極性相に隣接するような具合に配向している該単分子層膜である。この文脈において、「極性の(polar)」及び「無極性の(apolar)」は、水等に対するいっそう大きい親水性、混和性を有する相は、水への溶解度がいっそう小さい相に比べて極性がいっそう大きいという点で、相対語である。1つの具体例において、小胞中の単分子層膜の実質的に全ての分子の疎水性領域は、該小胞の内部に向かって配向している。
【0033】
1つの具体例において、小胞の内部が疎水性溶媒又は他の無極性物質を含有し、実質的に水を含有しない場合、治療薬は、疎水性薬剤又は他の化合物であって、哺乳動物に投薬することによって、該哺乳動物が患っている医療状態を軽減することができるものである。用語「疎水性の(hydrophobic)」及び「親油性の(lipophilic)」は、それら用語が本明細書のどこに記載されていても同義である。
小胞の内部には、如何なる疎水性化合物をも含有させることができる:それは典型的には、置換済みフラーレン、(存在するならば)他の諸両親媒性化合物、及び疎水性化合物を、単分子層膜が形成すると思われるpH及び他の諸条件の下、水性溶媒の中に供給する工程と;小胞に自己集合させる工程であって、その工程の間に該疎水性化合物が小胞内部に封鎖されると思われる該工程と;によって行うことができる。該小胞の集合を容易にするためには、該溶媒のpHは、約8.0未満であるのが好ましい。
小胞は、(単一の二分子膜を有する)単薄層、(複数の二分子膜を有する、「タマネギ様」)複薄層、又は(単一の単薄層膜を有する)半薄層(hemilamellar)である場合がある。小胞は、約50Å〜約10μmの寸法を有することがある。小胞の寸法、小胞の膜の数及び性質、並びに小胞の他の諸パラメータは、ごく普通の実験の問題として調整することができる。
【0034】
1つの具体例において、治療薬は、フラーレン(例えば、とりわけ、官能基を含有する置換済みフラーレン)と結合する。その結合はとりわけ、フラーレンのコアと治療薬の間の共有結合か;(存在するならば)該フラーレンの置換基と、治療薬の間の共有結合か;該フラーレンの置換基の上の正に荷電した基若しくは負に荷電した基と治療薬上の逆に荷電した基の間のイオン結合か;又は、フラーレンのコアにおける治療薬の被包化(encapsulation;カプセル化);である場合がある。共有結合は、直接的である場合があり;或いは、共有結合は、治療薬と、フラーレンのコア、若しくは、(存在するならば)該フラーレンの置換基とを結合する共有結合を利用していることがある。1つの具体例において、共有結合は、適切な開裂技術(cleaving technique)(例えば、とりわけ、光分解、酵素による開裂、又は化学的開裂)によって開裂することができる。もう1つの具体例において、治療薬と該フラーレンの間の非共有結合は、適切な薬物を施すことによって分離することができる:例えば、結合がイオン結合である場合、その結合は、治療薬上の荷電基と同一の電荷の荷電化合物を施すことによって分離することができる。置換済みフラーレンと治療薬の間の非共有結合を分離するための他の諸技術は、本明細書を考慮に入れれば、当業者には容易に分かるであろう。分離を促進するのに使用する薬物又は酵素は、「アジュバント(adjuvant)」と称することがある。
【0035】
如何なる源(source)からの如何なる治療薬も使用することができる。当該技術で知られているように、治療薬は、既知の諸技術の中でもとりわけ、合理的な薬剤設計;コンビナトリアル化学(combinatorial chemistry);又は偶然の発見;によって発明することができる。天然に存在している治療薬は、植物、動物、バクテリア、菌類(fungus)、ウィルス、又は他の生物に由来することがある。諸治療薬は、既知の化学的合成技術によって合成することができる。
治療薬は、いずれかの疾患を治療することができる。典型的な疾患は、数ある中でもとりわけ、癌、自己免疫疾患、感染症、肝臓病、及び神経系疾患を包含するが、それらに限定されない。
【0036】
1つの具体例において、治療薬は抗癌剤である。治療薬の諸例には、とりわけ、パクリタキセル[タクソール(Taxol),ブリストール・マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb)として市販されている];ドキソルビシン[商品名「アドリアマイシン(Adriamycin)」でも知られている];ビンクリスチン[商品名「オンコビン(Oncovin)」、「Vincaser PES」及び「Vincrex」で知られている];アクチノマイシンD;アルトレタミン;アスパラギナーゼ;ブレオマイシン;ブスルファン;カペシタビン;カルボプラチン;カルムスチン;クロラムブシル;シスプラチン;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダウノルビシン;エピルビシン;エトポサイド;フルダラビン;フルオロウラシル;ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;イダルビシン;イホスアミド;イリノテカン;ロムスチン;メルファラン;メルカプトプリン;メトトレキサート;マイトマイシン;ミトザントロン;オキサリプラチン;プロカルバジン;ステロイド;ストレプトゾシン;タキソテア;タモゾロミド(tamozolomide);チオグアニン;チオテパ;トムデックス;トポテカン;トレオスルファン;UFT[ウラシル・テガファー(uracil-tegufur)];ビンブラスチン;及び、ビンデシン;が包含される。
【0037】
他の治療薬は、とりわけ次のもの:ヒドロコドン、アトルバスタチン、エストロゲン、アテノロール、レボチロキシン、アジスロマイシン、フロセミド、アモキシシリン、アムロジピン、アルブテロール、ロラタジン、ヒドロクロロチアジド、オメプラゾール、セルトラリン、パロキセチン、トリアムテレン、ランソプラゾール、イブプロフェン、セレコキシブ、シムバスタチン、セファレキシン、メトホルミン、ロフェコキシブ、リシノプリル、アモキシシリン、クラブラネート(clavulanate)、プロポキシフェン、プロゲステロン、プレドニゾン、ノルゲスチメート、エチニルエストラジオール、アセトアミノフェン、コデイン、セチリジン、フェキソフェナジン、レボチロキシン、アモキシシリン、メトプロロール、ロラレパム、メトプロロール、フルオキセチン、ラニチジン、ゾルピデム、シタロプラム、アミトリプチリン、アレンドロネート、キナプリル、クエン酸シルデナフィル、プラバスチン、ナプロキセン、ガバペンチン、ワルファリン、シプロフロキサシン、ベラパミル、ジゴキシン、アルブテロール、ビュープロピオン、リシノプリル、クロナゼパム、トラマドール、シクロベンザプリン、トラゾドン、フルチカゾン、モンテルカスト、ジアゼパム、一硝酸イソソルビドs.a.、グリブライド、ベンラファクシン、レボフロキサシン、メドロキシプロゲステロン、アモキシシリン、フルコナゾール、エナラプリル、ワルファリン、カリソプロドール、トリメト(trimeth)、スルファメト(sulfameth)、プロピオン酸塩、ベナゼプリル、モメタゾン、ドキシサイクリン、エストラジオール、アロプリノール、マレイン酸ロシグリタゾン、クロピログレル、プロプラノロール、アムロジピン、ベナゼプリル、メチルプレドニソロン、バルサルタン、ロサルタン、インスリン、クロニジン、ジルチアゼム、ロラティジン(loratidine)、偽エフェドリン、ラタノプロスト、ピオグリタゾン、ロラティジン、偽エフェドリン、リスペリドン、フェキソフェナジン、偽エフェドリン、ドキサゾシン、ラロキシフェン、ノルエチンドロン、葉酸、ペニシリン、オキシコドン、テマゼパム、ジルチアゼム、サルメテロール、フォシロプリル、オキシコドン、ラミプリル、プロメタジン、テラゾシン、オランザピン、ゲムフィブロジル、レボチロキシン、ノルエチンドロン、スマトリプタン、ヒドロキシジン、メクリジン、ロサルタン、ラベプラゾール、フェニトイン、クラリスロマイシン、グリメピリド、パントプラゾール、スピロノラクトン、イプラトロピウム、アルブテロール、タムスロシン、ペニシリン、リシノプリル、メトクロプラミド、ミノサイクリン、ビソプロロール、ジゴキシン、バルサルタン、メトロニダーゾール、セフプロジル、トリアムシノロン、グリピジド、ノルエチンドロン、レボノルゲストレル、セフロキシム、ナイスタチン、キャプトプリル、プロメタジン、コデイン、アシクロビル、ノルゲスチメート、オキシコドン、イルベサルタン、ネファゾドン、ミルタザピン、バラシクロビル、メチルフェニデート、セリバスタチン、フルオキセチン、ニトロフラントイン、ロラタジン、グリブリド、メトフォルミン、メトフォルミン、ジルチアゼム、デソゲストレル、ムピロシン、L−ノルゲストレル、フルバスタチン、アスピリン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、エソメプラゾール、メタキサロン、ノルトリプチリン、シメチジン、フェノフィブレート、臭化イプロトロピウム(iprotropium bromide)、タモキシフェン、カルシトニンサーモン(calcitonin salmon)、フェロジピン、レボノルゲストレル、サルメテロール、フルチカゾン、セオフィリン、テトラシクリン、トルテロジン、ガチフロキサシン、ニフェジピン、ジクロフェナック、トリアムシノロン、アセトニド、プロメタジン、インドメタシン、ベンゾナテート、フェノバルビタル、ナプロキセンナトリウム、モメタゾン、ヒドロコドン、グリピジド、ジバルプロエックス(divalproex)、ニトログリセリン、及びフェナゾピリジンを包含するが、それらに限定されない。
【0038】
本発明のいずれかの組成物又は方法において、1種以上の治療薬を使用することができる。
治療薬の作用形態は、化学療法的であるか、放射線療法的であるか、又はもう1つの作用形態を有している。1つの具体例において、光、熱又は他の外部エネルギーが治療作用(therapeutic action)を実現させるのを可能にする具合に、治療薬は、光、熱又は他の外部エネルギーの適用に影響を与えることがある。
1つの具体例において、治療薬は、壁の2つの層の間に存在する。この具体例における治療薬は、水溶性化合物又は親油性化合物である場合がある。
【0039】
もう1つの具体例において、小胞は、センサー分子を含有することができる。本明細書で使用する「センサー分子(sensor molecule)」は、特定の原子又は分子と選択的に結合することのできる分子である。当該技術において知られているいずれかのセンサー分子を使用することができる。該センサー分子は、フラーレンと結合することができるか;又は、疎水性タイプ、親水性タイプ若しくは両方のタイプの相互作用によって小胞の壁にしっかり固着することができる。
更なる具体例において、小胞は診断薬を含有することができる。本明細書で使用する「診断薬」は、電磁放射線を適用すること;加熱すること;冷却すること;放射能を測定すること;又は、当該技術で知られている他の技術;によって、容易に検出することができる。診断薬は、フラーレンと結合することができるか;又は、疎水性タイプ、親水性タイプ若しくは両方のタイプの相互作用によって小胞の壁にしっかり固着することができる。
【0040】
もう1つの具体例において、本発明は、治療薬を哺乳動物に投与する方法において、
(i) 薬学的に有効な量の前記治療薬を含有する溶液を前記哺乳動物に投与する段階であって、該治療薬が、(a)内部と外部と壁とを有する小胞の内部か、(b)前記壁の2つの層の間の一部分か、又は(c)両者に存在しており;しかも、前記壁が1つ以上の層を有しており、且つ、各々の層が、化学構造Iを有する置換済みフラーレンを含有している;該投与段階
を包含する、上記投与方法に関する。
小胞、置換済みフラーレン及び治療薬は、上述の通りである。1つの具体例において、小胞は、化学構造Iを有する置換済みフラーレンを少なくとも約75モル%含有している。もう1つの具体例において、小胞の壁は、化学構造Iを有する置換済みフラーレンから本質的に成っている。
【0041】
1つの具体例において、小胞の壁は単分子層膜である。もう1つの具体例において、小胞の壁は二重層膜である。
1つの具体例において、小胞の壁の中の置換済みフラーレン分子の約0.01モル%〜約100モル%は、B基に共有結合されている官能基を更に含有し、該官能基は組織を認識する。もう1つの具体例において、該官能基は、上記に定義されるような、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ぶ。
当業者には明白なことであるが、治療薬の薬学的に有効な量は、とりわけ、その化合物;意図されているそれの効果;投薬計画;及び哺乳動物の体重又は他の諸特性;によって変わる。治療薬の投与量は典型的には、体重1kg当り約0.001mg〜体重1kg当り約1000mgの範囲である。1つの具体例において、治療薬の投与量は典型的には、上記の範囲内であり且つ体重1kg当り約0.01mgより多い。もう1つの具体例において、治療薬の投与量は典型的には、上記の範囲内であり且つ体重1kg当り約100mg未満である。
【0042】
1つの具体例において、治療薬は抗癌剤である。該抗癌剤は、パクリタキセル、ドキソルビシン及びビンクリスチンから成る群から選定するのがいっそう好ましい。
治療薬を、小胞の内部の中か又は小胞の諸層の間に組み込むためのいずれかの技術を使用することができる。典型的な技術は、上述されており、小胞は、該小胞を形成することができるpH及び他の条件の下、水性溶媒中、治療薬の存在下で形成する。この技術は、バッチ又は連続ベースで実行することができる。しかし、他の諸技術[例えば、とりわけ、小胞の内部の中への治療薬の溶液のマイクロインジェクション(microinjection)]を使用することができる。
【0043】
投薬段階において、小胞と、該小胞の内部か、該小胞の壁の2つの層の間か、又は両者に入っている治療薬とを含有する溶液は、哺乳動物の中に取り入れることができる。その溶液は、極性又は水性の溶媒と、治療薬を有する小胞と含有している。その溶液は、アジュバント;防腐剤;及び、他の諸化合物であって、該溶液を形成すること、貯蔵すること及び/又は使用することを考慮したとき、それら化合物が含有されていることが望ましいと思われるそれら化合物;を更に含有することができる。
治療薬を取り入れることが望まれている哺乳動物であれば如何なるものも、該方法の対象であり得る。1つの具体例において、哺乳動物はヒトである。
本明細書で使用する用語「投薬すること(administering)」は、化合物を哺乳動物に取り入れるあらゆる技術を包含することを意図している。投薬の典型的な経路には、とりわけ、経皮経路、皮下経路、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、経口経路、直腸内経路、及び鼻経路が包含される。
【0044】
1つの具体例において、小胞は、上述のような素性(identity)及び濃度の官能基を更に有する置換済みフラーレンを含有する。そのような置換済みフラーレンを含有する小胞は、特定の組織に誘導することができる。
この文脈における「特定の組織(particular tissue)」は、1つの細胞型に限定することを意図していないが、特定の体液;種々の組織を含有する特定の器官;等を称することを意図することがある。特定の組織であってそこに小胞を誘導することが望ましいと思われる該組織は、胃腸組織;流動組織;リンパ組織;胆管組織;髄液;滑液;眼の水様液;及び、前述のものにおける腫瘍、又は他のいずれかの組織若しくは細胞型における腫瘍;を包含するが、それらに限定されない。
フラーレンそれ自体は一般に、炭素の毒性に類似する毒性を有しており、また、置換済みフラーレンは一般に、毒性活性を有しているようには予想されていない。例えば、ベンゼンに入れたフラーレンをマウスに24週以下の間、経皮投与を繰返した結果(投与量=200μg/日)、良性皮膚腫瘍も悪性皮膚腫瘍も形成されなかった[ネルソン(Nelson)等:Toxicology & Indus. Health,9(4),第623頁〜630頁(1993)]。更に、処理を行なった後、72時間の時間経過に渡り、皮膚細胞における、DNA合成に及ぼす影響もオルニチン脱炭酸酵素活性に及ぼす影響も、全く観察されなかった。[ザハレンコ(Zakharenko)等:Doklady Akademii Nauk.,335(2),第261頁〜262頁(1994)]は、C60が、比較的高い投与量で染色体損傷を生じなかったことを示した。
【0045】
1つの具体例において、官能基は、特定の組織と直接的に相互作用する。例えば、官能基が抗原結合性部分であり、且つ、該部分によって認識される抗原が特定の組織の諸細胞の表面に存在するタンパク質である場合、該官能基は、該タンパク質に結合して、小胞を該特定の組織に導くであろう。もう1つの具体例において、官能基が組織識別部分である場合、該官能基は、特定の組織を認識して、小胞を該特定の組織に導くであろう。抗原結合性部分及び組織識別部分、並びに、それら部分が結合する抗原、及びそれら部分が認識する組織は、当該技術では周知である。官能基と特定の組織の間の他の直接的相互作用は、起こり得るものであり、本発明の一部として意図されている。
【0046】
もう1つの具体例において、官能基は、特定の組織と間接的に相互作用する。このことは、官能基がアジュバントと相互作用して、該アジュバントが特定の組織と相互作用することを意味する。本明細書で使用する「アジュバント(adjuvant)」は、生体外で起ころうと、哺乳動物に投与することによって導かれようと、有益な機能を提供するいずれかの分子を称する。1つの具体例において、アジュバントは、抗原結合性部分又は組織識別部分、及びストレプトアビジン部分を含有しており、また、置換済みフラーレンの官能基は、ビオチン含有部分を含有している。小胞は、置換済みフラーレンのビオチン含有部分及びアジュバントのストレプトアビジン部分によって、アジュバントと相互作用し、また、該アジュバントは、上述のような抗原結合性部分又は組織識別部分によって、特定の組織と相互作用する。
【0047】
アジュバントは、他の有益な機能又は追加的な有益な機能を与えることができる。1つの具体例において、アジュバントは、小胞と、組織の細胞膜との結合を容易にする。該小胞と該膜との結合によって、該小胞内部に含有されている治療薬が該細胞の細胞質の中に導き入れられる。
多くの有用なアジュバントは、哺乳動物の体内には存在していない。従って、本方法は、1つの具体例において、哺乳動物にアジュバントを投与する段階であって、該アジュバントにより、該官能基による該組織の認識;小胞と組織の細胞膜との結合(union);又は両者;が容易となる該投与段階を更に包含する。該アジュバントは、上述の通りであり;また、上述のように、如何なる投薬経路によっても投与することができる。該アジュバントは、小胞含有溶液を投与する前;該溶液を投与した後;又は、該溶液と同時に;投与することができる。該アジュバントは典型的には、小胞含有溶液と同じ経路で投与するが、該アジュバントは所望により、異なる経路で投与することができる。
【0048】
本方法によると、1つの具体例において、小胞は生体内で離解するために、哺乳動物に対して全身的に配送することができる。本方法によると、治療薬を含有する小胞を特定組織に誘導することができる。多くの場合、小胞が特定組織に極めて接近した時、治療薬を放出するのが望ましい。
該組織に極めて接近した時に、治療薬を放出することのできる1つの技術には、小胞と、該組織の細胞膜との結合(union)が包含される。結合は、上述のように、特定のアジュバントを使用することによって容易となることがある。
【0049】
組織に極めて接近した時に、治療薬を放出することのできるもう1組の技術には、小胞が該組織に極めて接近した時に、該小胞を離解させることが包含される。そのような技術の1つには、該小胞が存在している体液のpHを高めることが包含される。そのような体液のpHを高めることによって、置換済みフラーレンのB基の上の、荷電したカルボキシル基(−COO)の数は増大し;また、そのpHと置換済みフラーレンの正確な化学構造とによって決まるが、置換済みフラーレンの分子は、自由エネルギーの点で、小胞の膜の中に留まるよりも、水性溶液の中に入り込む方がいっそう好都合であることを見出だすであろう。このことによって、小胞は離解し、治療薬は放出する。従って、1つの具体例において、本方法は、体液のpHを高める段階であって、該体液中で、小胞とそれの内部に入っている治療薬とを含有する溶液が、小胞が離解するpHまで存在する該段階を更に包含する。1つの具体例において、該pHは約11.0を超えるまで高める。
【0050】
該pHを高めるのに適した技術であれば如何なる技術でも使用することができる。該pHを高める段階は典型的には、体液のpHを高めると思われる化合物を含有する溶液(例えば、塩基性溶液)を、哺乳動物に投与することによって行なうことができる。そのような溶液は、上述のいずれかの経路又は当該技術で知られているいずれかの経路を経て投与することができる。
小胞を離解するためのもう1つの技術は、幾つかの種類の置換済みフラーレン(例えば、ディールス・アルダー付加環化反応(Diels-Alder cycloaddition reactions)によって形成される幾つかの種類の置換済みフラーレン)が、室温よりも僅かに高い温度で、それらフラーレンの置換基を容易に喪失し、これは該置換基のジエン構造によって決まり;また、幾つかの種類の置換済みフラーレン(例えば、アルデヒドから誘導された付加化合物)が、水分又は熱によって、それらフラーレンの置換基を容易に喪失する;という観察結果に見出だされる。置換済みフラーレンのB基、A基、又は両者は、そのような諸反応によって該フラーレンに付加されるように選定することができる。結果として、それら置換基の性質と、当業者にとって且つごく普通の実験の問題として、容易に認められる他の諸パラメータとによって決まることであるが、置換済みフラーレンは、該置換済みフラーレンが、投与の時又は投与の直後、B基、A基、又は両者を喪失するような具合に、設計することができる。B基、A基、又は両者の喪失によって、該置換済みフラーレンの両親媒性特性が減少し、結果として、該置換済みフラーレンの、小胞の膜を形成する又は維持する能力が減少するであろう。このことによって、小胞が離解するものと思われる。
【0051】
小胞を離解させるための更なる技術は、該小胞が体液と接触する時、自然に離解させることである。このプロセスは、体液内に存在するであろう諸因子(タンパク質、脂質、塩、等)の存在によって促進させることができる。このプロセスは、本方法を操作する者が更に介入することなく起こることがある。
小胞を離解させるためのもう1つの技術には、光開裂性の極性頭部基を使用することが包含される。該フラーレンのコアを極性頭部基と結合させるために、光開裂性部分(photocleavable moiety)[例えば、−Ar(NO)CH−(式中、Arは芳香族炭化水素部分である)]を使用することができ、小胞はそのような置換済みフラーレンから形成することができる。適切な波長の電磁放射線をこの具体例の小胞に照射する場合、光開裂性部分は開裂することが可能であり、結果として該置換済みフラーレンから極性頭部基を除去することによって、該小胞の離解を引き起こすことができる。
小胞を離解するための更なる技術には、超音波エネルギーを使用することが包含される。哺乳動物の体のある領域を、十分な超音波エネルギーにさらした時、その領域内に存在している諸小胞は、離解して、(存在するならば)該小胞と結合している治療薬を放出することができる。それら小胞は、特定の細胞型、組織若しくは器官を目標に設定されている結果として、該領域内に存在し得るであろうし、或いは、体循環の結果として、該領域内に存在し得るであろう。
【0052】
小胞を離解するためのもう1つの技術には、小胞と結合する生物学的センサー分子(例えば、小胞の壁の中のフラーレン分子と共有結合しているセンサー部分;又は、小胞の壁との、疎水性タイプ、親水性タイプ若しくは両方のタイプの相互作用によって固着している諸センサー分子)を使用することが包含される。特定のセンサー分子は、体液(例えば、血液)の中に存在している諸原子及び諸分子を検出することができる。血液中に存在している典型的な諸原子及び諸分子には、とりわけ、グルコース;無機物(例えば、とりわけ、カルシウム、カリウム、又はナトリウム);諸ホルモン(例えば、とりわけ、インシュリン、甲状腺ホルモン、テストステロン、エストロゲン、若しくは成長因子);諸ペプチド;諸酵素;又は血液成分(例えば、とりわけ、赤血球の表面分子、白血球の表面分子、血小板、若しくは細胞外ヘモグロビン);が包含される。1つの具体例において、センサー分子は、体液が、センサー分子によって検出可能な過剰の原子又は分子を有している体領域(bodily region)に遭遇した時、該センサー分子が該原子若しくは該分子と結合して小胞を離れるか;又は、該センサー分子が構造変化を受ける;ような具合に選定することができる。いずれにしても、センサー分子、小胞、及び他の諸特徴(features)を適切に選定すれば、該小胞は構成成分に分解することができる。もう1つの方法として、センサー分子は、体液に該原子又は分子が不足している体領域に遭遇した時、小胞の離解(disaggregation;構成成分への分解;分離分解)が起こるような具合に選定することができる。
【0053】
本発明は、1つの具体例において、哺乳動物の治療状態を診断する方法において、
(i) 薬学的に有効な量の診断薬を含有する溶液を前記哺乳動物に投与する段階であって、該診断薬が、(a)内部と外部と壁とを有する小胞の内部か、(b)前記壁の2つの層の間の一部分か、又は(c)両者に存在しており;しかも、該小胞は、上述の通りであり、上述のように官能基で置換された諸フラーレンを含有する;該投与段階と、
(ii) 前記診断薬を検出する段階と
を包含する上記診断方法に関する。
【0054】
いずれかの手段によって検出することのできるいずれの薬剤も、「診断薬」となり得る。1つの具体例において、診断薬は蛍光標識試薬(fluorophore;フルオロフォア)である。蛍光標識試薬は、特定波長の電磁放射線にさらされた時、蛍光を放つようにすることができる。もう1つの具体例において、診断薬は放射性核種である。放射性核種は、既知の諸技術によって検出することができる。他の諸診断薬は、当該技術で知られている。
本方法は、特定の細胞型又は組織に治療薬を放出する代わりに、該細胞型又は組織の近辺に診断薬を、官能基(例えば、抗原結合性部分、又は組織識別部分)で置換された諸フラーレンを含有する小胞を使用することによって誘導することを除いて、上述の治療方法に類似する。
【0055】
本発明は1つの具体例において、治療薬を哺乳動物に投与する方法において、
(i)(a)(a-i) n個の炭素原子を含有するフラーレン部分であって、nが整数で60≦n≦240である該フラーレン部分と、(a-ii) ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基とを有する置換済みフラーレン;並びに、(b)薬学的に有効な量の、フラーレン部分と結合している治療薬;を含有する溶液を投与する段階
を包含する上記投与方法に関する。
前記置換済みフラーレン及び前記治療薬は、上述の通りである。1つの具体例において、治療薬は抗癌剤である。
【0056】
本方法は、1つの具体例において、(ii)アジュバントを哺乳動物に投与する段階であって、治療薬が置換済みフラーレンから解離するのを、該アジュバントによって促進する該投与段階を更に包含する。特定の置換済みフラーレンと特定の治療薬とのための適切なアジュバントは、上記の解説を考慮して選定することができる。
ドラッグデリバリー媒体として機能する、(代替的にリポソームと称される)小胞の能力は、上記に解説したように;また、とりわけ、カルフォルニア州マウンテンビュー、アルザ社(Alza Corporation)、カルフォルニア大学、及びセクウス・ファルマシューティカルズ(Sequus Pharmaceuticals)による研究によって知られているように;当該技術では周知である。
【0057】
本方法は、もう1つの具体例において、
カーボンナノチューブと、
少なくとも1種の治療薬であって、各々の治療薬が、前記カーボンナノチューブに共有結合しているか、又は該カーボンナノチューブの内部に存在している該少なくとも1種の治療薬と
を有している被覆済みカーボンナノチューブに関する。
周知のように、炭素は、高温蒸気から自己集合して(self-assemble)、完全球状の閉鎖された籠(closed cages)(フラーレン)を形成する傾向だけでなく、遷移金属触媒の助けによって自己集合し、単一壁の円筒であって、片端又は両端でセミフラーレン・ドーム(semifullerene dome)を用いて封鎖されていることもある該円筒を形成する傾向をも有している。これらのチューブは、炭素の二次元単結晶と見なすことができる。重ね合わされた単一壁の円筒を有する複数壁の円筒も観察することができた。単一壁の円筒と複数壁の円筒の両者は、本明細書で使用する用語「カーボンナノチューブ」に包含される。
【0058】
カーボンナノチューブを定義する場合、術語の認定体系を用いるのが有用である。本明細書では、「ドレッセルハウス(Dresselhaus)等:フラーレンとカーボンナノチューブの科学(Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes),第19章」に記述されているカーボンナノチューブの術語を使用する。単一壁の円筒状フラーレンは、ダブル・インデックス(double index)(n,m)によって互いに区別される:ここに、n及びmは、六角形の「亀甲網入り(chicken-wire)」黒鉛の単一ストリップ(strip)が円筒の表面の上に巻き付けられるとき、それの両端部が継目なしで結び付くような具合に、該ストリップを切断する方法を示す整数である。n=mであるとき、結果として生じるチューブは、「ひじ掛け椅子(arm-chair)」又は(n,n)タイプのものであると言われている。なぜなら、チューブが、チューブ軸に垂直に切断されるとき、六角形の側面のみが露出し;また、チューブ端部の周辺のそれらのパターンが、n回繰り返されるひじ掛け椅子の腕及び座に似ているからである。チューブのタイプとは関係なく、単一壁のナノチューブは全て、極めて大きい熱伝導率と引張り強度とを有する。
【0059】
単一壁のカーボンナノチューブ(SWNTs)は、複数壁のカーボンナノチューブに比べて、欠陥が存在しない可能性が遥かに大きい。これは、複数壁カーボンナノチューブは、時々生じる欠陥があっても存続し得るに対して、単一壁カーボンナノチューブ(SWNTs)は、不飽和炭素の諸原子価の間に橋(bridges)を形成することによって欠陥を補うための隣接壁を有していないためと思われる。単一壁カーボンナノチューブは、いっそう少ない欠陥しか有していないので、それらナノチューブは通常、いっそう強く;いっそう伝導性であり;また、類似直径の複数壁カーボンナノチューブに比べて、典型的にはいっそう有用である。しかし、単一壁カーボンナノチューブと複数壁カーボンナノチューブの両者は、本発明の範囲内で使用することができる。単一壁カーボンナノチューブ又は複数壁カーボンナノチューブの正確な化学構造は、極めて重要である訳ではなく、当業者のごく普通の実験の問題である。単一壁カーボンナノチューブはしばしば、約0.3nm〜約8nmの直径を有する。1つの具体例において、単一壁カーボンナノチューブは、約1.2nmの直径を有する。複数壁カーボンナノチューブはしばしば、約30nm〜約200nmの直径を有する。
1つの具体例において、カーボンナノチューブは、(10,10)構造を有する単一壁カーボンナノチューブである。
【0060】
少なくとも1種の治療薬は、カーボンナノチューブに共有結合することのできるいずれかの治療薬から選定する。用語「少なくとも1種の治療薬(at least one therapeutic agent)」は、1種の治療薬の1個以上の分子と、1種以上の治療薬の各々の1個以上の分子の両者を包含する。1つの具体例において、治療薬は、カーボンナノチューブの1個以上の炭素と該治療薬の1個以上の原子の間の1つ以上の結合によって、該カーボンナノチューブに結合させることができる。1つの具体例において、治療薬の1個以上の原子は、炭素、酸素及び窒素から成る群から選定する。それら結合は、単結合であるのが好ましい。
この具体例において、いずれかの望ましい治療薬は、カーボンナノチューブに結合させることができる。1つの具体例において、治療薬は上述の通りである。
【0061】
もう1つの具体例において、治療薬は、カーボンナノチューブの内部に存在することがある。1つの具体例において、治療薬は上述の通りである。
被覆済み(derivatized)カーボンナノチューブは、他の諸部分を更に含有することができる。1つの具体例において、被覆済みカーボンナノチューブは、上述のように、ビオチン、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基を更に含有する。
【0062】
本発明は、もう1つの具体例において、治療薬を哺乳動物に配送する方法において、
(i)カーボンナノチューブと;少なくとも1種の治療薬であって、各々の治療薬が、該カーボンナノチューブに共有結合している該少なくとも1種の治療薬と;を有する被覆済みカーボンナノチューブを哺乳動物に投与する段階
を包含する、上記配送方法に関する。
前記の被覆済みカーボンナノチューブは、上述の通りである。1つの具体例において、前記被覆済みカーボンナノチューブは、ビオチン、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基を更に含有する。前記被覆済みカーボンナノチューブが哺乳動物の所望の組織に導入されるのが、そのような官能基によって高められるであろう。
【0063】
本方法は、1つの具体例において、
(ii) カーボンナノチューブと少なくとも1種の治療薬の間の共有結合の破壊を促進するアジュバントを哺乳動物に投与し、そうすることによって、該少なくとも1種の治療薬を組織に配送する段階
を更に包含する。
第2の投与段階は、上述のようないずれかの適切な経路によって行なうことができる。第2の投与段階で投与するアジュバントは、少なくとも1種の治療薬をカーボンナノチューブに連結している共有結合の破壊を促進するいずれかの化合物である場合があるか;或いは、いずれか他の方法で治療薬の作用を高めるいずれかの化合物である場合がある。アジュバントは典型的には、水溶液の状態であり;また、該水溶液は、保存剤、及び当該技術で知られている他の諸化合物を更に含有することができる。
本方法の1つの具体例は、図8に示す。
次の諸例は、本発明の好ましい諸具体例を実証するために包含されている。次の諸例に開示する諸技術が、本発明を実施するとき十分機能を果たすように、本発明者らによって見出だされた諸技術を表していることは、当業者にはよく理解される筈である。しかし、本開示内容を考慮すれば、開示されている特定の諸具体例において多くの変形を行うことが可能であり;更に、多くの変形から、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、ほぼ同等の結果又は類似の結果が得られる;ことを、当業者はよく理解する筈である。
【0064】
諸例
次の諸例は、両親媒性リポフラーレン1(化学構造III)が、安定な諸リポソームを形成することができることを示す(例1)。それらリポソームの大きさは、溶液のpH値を制御することによって影響を受けることがある(例2)。更に、蛍光標識(fluorescence-marker)又はアンカー分子(anchor molecule)を用いて、両親媒性リポフラーレンの酸ユニット(acid-units)を機能化することができる(例3)。
(諸実験技術)
極低温透過型電子顕微鏡検査(Cryo−TEM)
リン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.84)に入れた、新たに調製したアンフィフラーレン(amphifullerene)の溶液の液滴(5μリットル)を、穴の多い親水性化済み炭素膜で覆ったグリッド(grid)の上に落とし;「BALTEC MED 020装置」を用いながら、8Wで60秒間プラズマ処理を行ない;次いで、過剰の流体は吸い取って、該炭素膜の諸穴に広がっている(spanning)該溶液の超薄層を創り出した。グリッドは、標準プランジング(plunging)装置を用いて、液体エタン中、それの凝固点(89K)で、直ちに溶化した(vitrified)。溶化済み諸試料は、液体窒素の下、ガタン(Gatan)のクリオホルダー(cryoholder)及びステージを使用している「フィリップス(Philips) CM12 透過型電子顕微鏡」の中に移した。顕微鏡による検査は、不必要な照射を避けるために該顕微鏡の低線量プロトコルを使用しながら、−175℃の試料温度で実施した。一次倍率(primary magnification)は58,300倍であり;また、焦点はずし(defocus)は、18Å(Cs=2mm)でのCTF[コントラスト伝達関数(contrast transfer function)]の最初のゼロに対応して、0.9μmになるように選定した。
【0065】
動的光散乱法
アンフィフラーレンは、無塵のMilli−Q−水に溶解させ、次いで、Millex−GS−フィルタ[ミリポア(Millipore)、孔径22μm]か、又はMillex−HA−フィルタ[ミリポア、孔径0.45μm]で1回濾過した。キュベット及びフラスコは全て、アセトン溜め(acetone fountain)中で無塵にした。次の装置:スペクトラ・フィジックス(Spectra-Physics)からの「Stabilite 2060−KR−R クリプトンイオン・レーザ(λ=647.1nm)」、ALVからの「ゴニオメーター SP−86」、及びALVからの「ディジタル相関器 ALV−3000」を用いて、動的光散乱測定を行なった。
【0066】
単分子層の実験
アンフィフラーレンは、クロロホルムに0.2ナノモル/μリットルの濃度で溶解させた。空気/水の界面での全ての単分子層実験のために、サブフェーズ(subphase)は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)0.25mMを含有し、また、リン酸塩25mMか又はHEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)20mMの緩衝液で処理した。他に表示しない限り、pHはNaOH(リン酸塩緩衝液に対しては約13mM、HEPES緩衝液に対しては約4mM)によってpH=7.0に調整した。諸緩衝液は、ミリポア(Millipore)の純水を用いて調製した。アンフィフラーレン誘導体の単分子層は、微量注射器を用いて該有機溶液から広げ、次いでその後、圧縮して所望の表面圧力にした。
種々のpH値での膜出納実験は、全ての実験に対して、422cmの最大表面積と20.0±0.2℃のサブフェーズ温度とを用いて、ラングミュアトラフ(Langmuir trough)で実施した。単一分子層のpK−値は、次のような内部「滴定区画(titration compartment)」を備えた専用のフィルムバランス(film balance)を用いて決定した:アンフィリポフラーレンの単一分子層は、先ず、pH=4のサブフェーズの上で4.5mN/mに圧縮した。この後、該トラフと該滴定区画の間のチャネルリンク(channel link)は、与圧密閉状態で閉じ;次いで、該区画のサブフェーズのpHは、1.00M NaOHの合計500μリットルを、注入穴(injection hole)を通して該サブフェーズの中に注入することによって、連続的に増大させ;次いで、適切な平衡の後、πの変化を記録した。
【実施例1】
【0067】
例1:両親媒性リポフラーレン1(図1)に基づく、安定した種々の集合体の形成
両親媒性リポフラーレン1は、(図1)に示す構造を有している。両親媒性リポフラーレン(アンフィフラーレン)1は、pH=7.4の水溶液において、自発的に集合する (aggregate;一体化する)ことが観察された。それら集合体は、少なくとも数日間は安定であり、また、それらは、少なくとも4×10−7モル/リットルのcmc(臨界ミセル形成定数)までは構成成分に分解されなかった。
それらリポソームの大きさ及び形状は、光散乱法及び電子顕微鏡検査法を用いて決定した。両親媒性リポフラーレン1は、単一層(二重層)の諸小胞及び円筒状の諸ミセル(micelles)を形成する傾向があった。これら小胞の直径は、50nmから約400nmまで様々であった。それら円筒状ミセルは、おおよそ2分子の大きさに相当する7nmの厚さを有し、また、それら円筒状ミセルは、種々の長さを示し、50nmから200nmまで様々であった。典型的な小胞の極低温透過型電子顕微鏡検査は、図2に示す。この小胞は、約80nmの直径と、約7nmの二重層の厚さとを有した。該二重層中の暗い領域は、アンフィフラーレンのC60のコアを表している。
【実施例2】
【0068】
例2:pH値を変化させることによる、リポソームの大きさの調整
プロトン化(protonation)の程度を変化させることは、アンフィフラーレン1のpK値に起因して可能であり、6〜11のpH範囲で観察された。該pHの変化は、アンフィフラーレンを含有するリポソームの表面の電荷密度に著しく影響を及ぼす。従って、該pHを変えることによって、集合体の特性を変えることが可能であると考えられた。この挙動は、アンフィフラーレンの単分子層に関するpH滴定実験;及び、pHに対する光散乱測定値の依存関係;によって実証された。
単分子層の実験
単分子層のpH滴定によって、たとえ、溶液中の集合体の挙動に関する直接的情報が与えられないとしても、小胞表面における静電的相互作用に関する情報は、容易に入手することができる。単分子層での圧力は、該溶液のpH値に直接関係しており、また、諸酸ユニットの間の静電的相互作用にも直接関係している。pHが増大するにつれて表面電荷は増大する。また、pHが増大するにつれて集合体を形成する傾向は減少するものと思われる。表面圧力に対するpHの依存関係は、図3に示す。
【0069】
溶液中での光散乱実験
リポソームの溶液における小胞寸法がpH依存により変わることは、光散乱実験によって示された。表1は、pHを約7から約11に増大させることによって、小胞の流体力学的半径は約50nmから約19nmに減少した。他の両親媒性リポフラーレンを使用しても、これらの値に関する類似の調整が達成されるものと考えられる。
【0070】

【表1】

【実施例3】
【0071】
例3:蛍光分子又はアンカー分子を用いたアンフィフラーレン1の機能化
アンフィフラーレン1に生体分子を結合させるために、我々は、アンカー分子を使用した。これの研究に、蛍光標識のテキサスレッド(Texas Red)(登録商標)[スルホロダミン;オレゴン州ユージーン、モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes, Inc.)から市販されている]を使用した。
もう1つの実験では、生体分子(アビジン、ストレプトアビジン)に結合し得るビオチンを、アンフィフラーレン1に結合させた。
【0072】
テキサスレッド(登録商標)の結合
テキサスレッド(登録商標)は、ローダミンから誘導される蛍光標識試薬(fluorophore)であり、他の諸ローダミン誘導体に比べていっそう長い波長を放出する。標識化のための事前条件は、標識化されるアンフィフラーレン1〜2%(最大で5%);及び、できるだけデンドリマー(dendrimer)1種当り唯1種の蛍光標識試薬;に設定した。次の、カルボキシル基末端基に関する統計的標識化は、無水クロロホルムに入れたカルボニルジイミダゾール(CDI)の新たに調製した標準溶液と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に入れたテキサスレッド(登録商標)の新たに調製した標準溶液とを用いて、無水クロロホルム中で行なった。アンフィフラーレン1は、先ず、CDIによりカルボン酸基で部分的に活性化された。1時間後、該蛍光標識試薬のアミノ誘導体を5モル%添加した。次いで、そのカップリング(coupling)は、薄層クロマトグラフ(TLC)によって行なった。その溶液は、1日間撹拌し、その後、クロロホルムで希釈し、次いで、水で洗浄した。次いで、オレンジ色をしたクロロホルム相は、TLCプレートに移し、次いで、(シリカTLCプレート上の)予備TLCによって分離した。アンフィフラーレンを含有する小部分をエタノールで繰り返し溶媒和を行ない、溶存シリカを塩化メチレンで沈降させた後、溶液は回転蒸発を行ない(rotary evaporated)、生成物は真空で乾燥させた。
【0073】
図7は、フラーレン標識のテキサスレッド(登録商標)で標識化した樹枝状フラーレンのヘキサキス付加物(hexakisadduct)の合成を示す。
全収率は78%であった。薄層クロマトグラフ(TLC)の対照を使用することによって、該生成物の純度が証明された。混合物中の1と2の比は、紫外/可視分光学によって決定した。589nmでのテキサスレッド(登録商標)の強い吸収帯によって、分子2は蛍光標識試薬ユニット(図4)の小部分のための検出と検量線の作成とが可能になった。文献には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に入れたテキサスレッド(登録商標)の吸収係数は591nmで81×10であることが報告されている。2を特徴付けるために、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−シメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)を使用したため、(少量のDMFで予備溶媒和した)DCMに入れたテキサスレッド(登録商標)の吸収係数を決定した。62(±0.3)×10の値が得られた。
DCM中のアンフィフラーレン1の吸収係数を決定した。271nmでのε=77×10、282nmでのε=79×10、318nmでのε=52×10、及び334nmでのε=41×10の値は、報告されている諸値と良く一致した。
アンフィフラーレン1と蛍光標識試薬テキサスレッド(登録商標)の吸収係数の比を用いて、標識化された諸分子の量を決定した。図5に示す紫外/可視スペクトルの蛍光標識試薬領域における基線の適切な補正を行なって、標識化比2.0%を決定した。
【0074】
ビオチンの結合
アンフィフラーレンを機能化するための別の試みにおいて、生体分子(アビジン、ストレプトアビジン)に結合し得るアンカー分子ビオチンを結合させた。蛍光標識試薬との諸カップリング実験に基づいて、ビオチン・スペーサ分子(spacer-molecule)は、アンフィフラーレン1に結合して、アンカーで機能化されたアンフィフラーレン3を与えた。
【0075】
本明細書において開示され権利が請求されている諸組成物及び諸方法は全て、この開示内容を考慮すれば、過度の実験を行うことなく、製造し成し遂げることができる。本発明のそれら組成物及びそれら方法は、好ましい諸具体例の形で記述してきたが、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、それら組成物及びそれら方法に;並びに、本明細書に記述する方法の諸段階(諸工程)において、又は諸段階(諸工程)のシーケンスにおいて;諸変形を加えることができることは、当業者には明白であると思われる。いっそう具体的に言えば、化学的にも生理学的にも関連のあるある薬剤を本明細書に記述する薬剤と置き換えることは可能であり、同時に、同一又は類似の結果が達成されることは明白であろう。当業者に明白な、そのような類似の代替及び一部修正は全て、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲及び概念の範囲内にあるものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の特定の置換済みフラーレン[これは、「アンフィフラーレン(amphifullerene)」と呼ばれることがある]を示す。3個の>C(C(=O)O(CH11CH部分を表すための薄墨色の使用は、これら3個の部分が、想定される観察者がこの方向では直接見ることのできない、該フラーレンの領域のフラーレン芯に結合していることを示す。
【図2】図1によって表されるアンフィフラーレンを含有している小胞の極低温透過型電子顕微鏡検査(cryo−TEM)画像を示す。二重層中の暗い領域は、アンフィフラーレンのC60−芯を表す。
【図3】図1によって表されるアンフィフラーレンから形成される単分子層の滴定等温曲線(titration isotherm)を得るための、pHの関数としての圧力を示す。
【図4】図1によって表されるアンフィフラーレンのTexas Red(テキサス・レッド)(登録商標)誘導体の紫外/可視スペクトルを示す。Texas Red(登録商標)誘導体は、実施例3の案1では化合物2と称する。
【図5】2.0%蛍光物質で部分的に標識化した樹枝状フラーレン(dendrofullerene)(化合物2)の紫外/可視スペクトルを示す。
【図6】本発明による、官能基を含有する特定の置換済みフラーレンを示す。薄墨色の使用は、図1のものに従う。官能基は、ビオチン含有部分であり、リンカー部分(linker moiety)を含有している。
【図7】蛍光標識のTexas Red(登録商標)で標識化されたアンフィフラーレンを合成するための計画を示す。
【図8】カーボンナノチューブを使用することによって、治療化合物を配送する方法の具体例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部と、外部と、1つ以上の層を有する壁とを有している小胞であって、各々の層が、化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンを含有しており;しかも、前記小胞の壁が、前記置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有しており;しかも、前記小胞の内部か、壁の2つの層の間の部分か、又は両者が、治療薬を含有している;上記小胞。
【請求項2】
壁が二重層の膜である、請求項1記載の小胞。
【請求項3】
壁が単分子層の膜である、請求項1記載の小胞。
【請求項4】
Bが18個の極性頭部基部分を含有しており;AがCに対して遠位の2個の末端を有しており;x=12であり;y=25であり;a=5である、請求項1記載の小胞。
【請求項5】
置換済みフラーレン分子が、化学構造II:


[式中、X’は、>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)であり、各々のXは、>C(C(=O)O(CH11CHである]を有している、請求項4記載の小胞。
【請求項6】
置換済みフラーレン分子が、図1に示される構造を有している、請求項5記載の小胞。
【請求項7】
置換済みフラーレン分子の約0.01モル%〜約100モル%が、B基に共有結合されている官能基を更に含有している、請求項1記載の小胞。
【請求項8】
官能基が、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれている、請求項7記載の小胞。
【請求項9】
官能基を有する置換済みフラーレンが、図6に示される構造を有している、請求項8記載の小胞。
【請求項10】
壁が、化学構造Iを有する置換済みフラーレンを少なくとも75モル%含有している、請求項1記載の小胞。
【請求項11】
治療薬が抗癌剤である、請求項1記載の小胞。
【請求項12】
治療薬を哺乳動物に投与する方法において、
(i) 薬学的に有効な量の前記治療薬を含有する溶液を前記哺乳動物に投与する段階であって、該治療薬が、(a)内部と外部と壁とを有する小胞の内部か、(b)前記壁の2つの層の間の一部分か、又は(c)両者に存在しており;しかも、前記壁が1つ以上の層を有しており;しかも、各々の層が、化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも、
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンを含有しており;しかも、前記小胞の壁が、前記置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有している;該投与段階、
を包含する、上記投与方法。
【請求項13】
壁は二重層の膜である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
壁は単分子層の膜である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
置換済みフラーレン分子の約0.01モル%〜約100モル%は、B基に共有結合されている官能基を更に含有する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
官能基は、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ぶ、請求項15記載の方法。
【請求項17】
壁は、化学構造Iを有する置換済みフラーレンを少なくとも75モル%含有する、請求項12記載の方法。
【請求項18】
治療薬が抗癌剤である、請求項12記載の方法。
【請求項19】
(ii) 哺乳動物にアジュバントを投与する段階であって、官能基が存在するならば、小胞の外部に隣接する壁の層における置換済みフラーレンに共有結合されている官能基による組織の認識;該組織の細胞膜と小胞の結合;又は両者;を、該アジュバントが容易にする該投与段階、
を更に包含する、請求項12記載の方法。
【請求項20】
(ii) 小胞を、構成成分に分解する段階、
を更に包含する、請求項12記載の方法。
【請求項21】
内部と外部と壁とを有する小胞を可逆的に形成する方法において、該壁が1つ以上の層を有しており、しかも、該小胞の内部か、壁の2つの層の間の一部分か、又は両者が治療薬を含有している該形成方法であって、
水性溶媒中に、
(a)化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンと、
(b)前記治療薬と、
を溶解する工程であって、該溶媒のpHは、該置換済みフラーレンから小胞を形成するのに十分低い該溶解工程を包含する、上記形成方法。
【請求項22】
壁は二重層膜である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
壁は単分子層の膜である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
pHは約8.0未満である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
小胞を、構成成分に分解する工程を更に包含する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
カーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブに共有結合している少なくとも1種の治療薬と、
を有している被覆済みカーボンナノチューブ。
【請求項27】
カーボンナノチューブが、(10,10)構造を有している、請求項26記載の被覆済みカーボンナノチューブ。
【請求項28】
治療薬が抗癌剤である、請求項26記載の被覆済みカーボンナノチューブ。
【請求項29】
ビオチン、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基を更に含有している、請求項26記載の被覆済みカーボンナノチューブ。
【請求項30】
治療薬を哺乳動物に送達する方法において、
(i)カーボンナノチューブと、該カーボンナノチューブに共有結合している少なくとも1種の治療薬とを有する被覆済みカーボンナノチューブを哺乳動物に投与する段階、
を包含する、上記送達方法。
【請求項31】
(ii) カーボンナノチューブと少なくとも1種の治療薬の間の共有結合の破壊を促進するアジュバントを哺乳動物に投与し、そうすることによって、該少なくとも1種の治療薬を該哺乳動物に送達する段階を更に包含する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
カーボンナノチューブは、(10,10)構造を有する、請求項30記載の方法。
【請求項33】
治療薬は抗癌剤である、請求項30記載の方法。
【請求項34】
被覆済みカーボンナノチューブは、ビオチン、ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基を更に含有している、請求項30記載の方法。
【請求項35】
n個の炭素原子を有するフラーレン部分であって、nが整数で60≦n≦240である該フラーレン部分と、
ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれている官能基と、
を有している置換済みフラーレン。
【請求項36】
化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有しており、しかも、官能基が、B基に共有結合されている、請求項35記載の置換済みフラーレン。
【請求項37】
Bが、18個の極性頭部基部分を含有しており;Aが、Cに対して遠位の2個の末端を含有しており;x=12であり;y=25であり;b=1であり;a=5である、請求項36記載の置換済みフラーレン。
【請求項38】
化学構造II:


[式中、X’は、>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)であるか、又は、官能基で置換された>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)であり;各々のXは、>C(C(=O)O(CH11CHである]を有している、請求項37記載の置換済みフラーレン。
【請求項39】
フラーレン部分と結合している治療部分を更に有している、請求項35記載の置換済みフラーレン。
【請求項40】
治療部分が抗癌剤である、請求項39記載の置換済みフラーレン。
【請求項41】
治療薬を哺乳動物に投与する方法において、
(i)(a)(a-i) n個の炭素原子を含有するフラーレン部分であって、nが整数で60≦n≦240である該フラーレン部分と、(a-ii) ビオチン含有部分、抗原結合性部分、及び組織識別部分から成る群から選ばれる官能基とを有する置換済みフラーレン;並びに、(b)薬学的に有効な量の、フラーレン部分と結合している治療薬と;を含有する溶液を投与する段階、
を包含する、上記投与方法。
【請求項42】
治療薬は抗癌剤である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
(ii) アジュバントを哺乳動物に投与する段階であって、治療薬が置換済みフラーレンから解離するのを、該アジュバントによって促進する該投与段階、
を更に包含する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
哺乳動物の治療状態を診断する方法において、
(i) 薬学的に有効な量の診断薬を含有する溶液を前記哺乳動物に投与する段階であって、該診断薬は、(a)内部と外部と壁とを有する小胞の内部か、(b)前記壁の2つの層の間の一部分か、又は(c)両者に存在しており;しかも、前記壁は1つ以上の層を有しており;しかも、各々の層は、化学構造I:
(I) (B)−C−(A)
[式中、Cは、n個の炭素原子を有するフラーレン部分であり、nは、整数であって60≦n≦240であり;
Bは、1個〜約40個の極性頭部基部分を含有する有機部分であり;
bは、整数であって1≦b≦5であり;
各々のBは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されており;
Aは、Cに近接した末端と、Cに対して遠位の1個以上の末端とを有している有機部分であって、Cに対して遠位のそれら末端がそれぞれ、−C(式中、xは整数であって8≦x≦24であり、yは整数であって1≦y≦2x+1である)を有している該有機部分であり;
aは、整数であって1≦a≦5であり;
2≦b+a≦6であり;しかも、
各々のAは、1個又は2個の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合によって、Cに共有結合されている]を有する置換済みフラーレンを含有しており;しかも、前記小胞の壁は、前記置換済みフラーレンを少なくとも約50モル%含有しており;しかも、前記置換済みフラーレン分子の約0.01モル%〜約100モル%は、B基に共有結合している組織識別部分又は抗原結合性部分を更に含有している;前記投与段階と、
(ii) 前記診断薬を検出する段階と、
を包含する、上記診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−502966(P2006−502966A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−567369(P2003−567369)
【出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/004416
【国際公開番号】WO2003/068185
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(504310032)シー スィクスティ、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】