説明

ドラッグデリバリー用ビヒクルとしての非水性水混和性材料

医薬組成物は水に対する溶解度が低い少なくとも1種の医薬成分及び少なくとも1種の非水性水混和性材料を含む。このような医薬組成物は標的組織において治療に有意な量のこのような医薬成分を提供するのに有用である。医薬組成物は、眼の疾患、障害又は病気を治療し又は制御するために眼環境に対して又は眼環境内に投与するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水中に不溶性であるか又は可溶性が低い少なくとも1種の医薬成分及び非水性水混和性材料を含む医薬組成物及び医薬キットに関する。詳細には、本発明は、ヒト又は動物の標的組織に治療量のこのような医薬成分を有効に送達させるためのこのような組成物の使用に関する。特に、このような標的組織は眼組織である。このような医薬組成物を用いた治療方法も想定されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの医薬成分は水中に不溶性であるか又は可溶性が低く、そのため、治療有効量の医薬成分をヒト又は動物の標的組織で又は標的組織に提供することができる医薬組成物へと製剤することが困難である。
【0003】
一般に、目の外側部分は涙器及び結膜嚢を含む。目は、また、他の幾つかの構造物を含む。たとえば、強膜は眼球の外側被膜として機能し、虹彩という有色膜は、明るさ及び暗さに応答する、虹彩の中心にある収縮性開口部である瞳孔をとおした光の入射を調節する。目の水晶体は、網膜上に画像を形成するために光線の焦点を合わせる透明な屈折体であり、次いで、網膜はその光線を受け取りそしてそれを視神経を介して脳へ送る。このような構造物に栄養を与えそして老廃物の除去を助けるために、毛様体突起による分泌及び限外濾過の過程により血液から得られる流体である房水は前眼房から後眼房に循環し、そして線維柱帯網(trabecular network)及びシュレム管を通って眼外に出て行く。最後に、眼瞼及び結膜と呼ばれる眼瞼の裏側にある粘膜は目を保護しそして涙を分配する。このため、このような構造分化を考慮すると、眼環境に眼科治療用成分を送達することは非常に困難である可能性がある。
【0004】
局所適用は眼科成分の最も一般的な投与経路である。このような適用の利点として、便利さ、単純さ、非侵襲性、及び、患者が自分で投与できること、を挙げることができる。たとえば、ほとんどの局所眼科製剤は溶液又は懸濁液として市販されており、点眼器などのアプリケータによって目に直接的に適用される。
【0005】
米国特許第5,480,914号明細書及び米国特許第5,620,699号明細書(両方ともMeadows)は、眼などの水性生理機能系に眼科成分を送達させるのに使用される、非水性ぺルフルオロカーボン又はフッ素化シリコーン液体キャリア中に少なくとも1つの懸濁助剤の実質的に均一な分散体を含む、点滴注入可能な局所用の非水性チクソトロピー性ドラッグデリバリービヒクルを記載している。米国特許第3,767,788号明細書(Rankin)は、コンタクトレンズ装着によって傷つけられた眼を潤滑しそして保護するための、ポリエチレンオキシド、随意に、ポリエチレングリコール及び他の随意の眼科成分の水溶液を含む点滴注入可能な眼科溶液を記載している。
【0006】
又は、眼科成分は軟膏又はゲルによって目に局所的に送達されることができる。このようなデリバリービヒクルは外側眼表面との接触時間を長くし、そして「徐放性」投薬のように投与間隔を長くすることができる。眼科成分は、また、コンタクトレンズ、綿球又はメンブレン結合インサートなどのデバイスによって目に局所的に送達されてもよい。
【0007】
ソフトコンタクトレンズは水溶性医薬を吸収しそして長期間にわたって目に放出することができる。一方、綿球(すなわち、綿の小片)は眼科溶液で飽和されそして結膜嚢に配置され、医薬を局所送達しうる。メンブレン結合インサート(たとえば、Ocusert(登録商標))は膜制御ドラッグデリバリーシステムである。上側眼瞼又は下側眼瞼の裏の眼球結膜上に配置された後、そのデバイスは時間をかけてゆっくりと眼科医薬を放出する。
【0008】
しかしながら、涙による排出によって、投与された眼科製剤が失われるので、局所投与される医薬は、通常、目の後腔(posterior cavity)に有用な濃度で浸透せず、それゆえ、網膜、視神経及び他の眼球後区の疾患を治療し又は制御するためには治療的有益性がほとんどない。さらに、幾つかの現在入手可能な局所デリバリービヒクルはそれ自体が生来的な欠点を有する。たとえば、軟膏は接触のバリアとして機能することにより、他の眼科成分の送達を妨害することがある。軟膏は、また、投与後に視覚をぼかす。さらに、点眼器によって送達される、懸濁液中の眼科成分の効力は、懸濁液から活性成分が容易に沈降するために、一定でない可能性がある。結果として、しばしば、このような医薬の効力は適切な投与技術で決まる。
【0009】
製剤技術も眼環境におけるドラッグデリバリー及び治療結果に重要な役割を担うことがある。幾つかの眼科成分は多くの局所ドラッグデリバリービヒクル中で可溶性が低く、そのため、後腔(posterior cavity)に効率的に送達するのが困難になっている。局所投与に関連するこのような困難さを克服するために、眼科注入投与経路によって後腔(posterior cavity)の領域に眼科成分を送達させることができる。このように、眼科成分を送達するために幾つかの眼科注入法が使用されてきた。
【0010】
米国特許第5,718,922号明細書(Herrero-Vanrellら)は、長時間にわたって局所治療を行うために、眼内に注入するための親水性医薬又は薬剤を含む微小球を形成する方法を記載している。又は、米国特許第5,336,487号明細書(Refojoら)は網膜の眼内構造障害を治療する方法であって、目の硝子体液中に液体シリコーン/フルオロシリコーンオイルエマルジョンを注入し、その障害を治療しそして網膜を治癒させる方法を記載している。しかしながら、このような微小球又はエマルジョンは硝子体内への注入によって送達される際に視軸を塞ぐ可能性がある。
【0011】
又は、米国特許第5,366,739号明細書及び米国特許第5,830,508号明細書(両方ともMacKeen)はドライアイ症候群の治療のための、目に治療薬を長時間にわたって局所的に送達させるための組成物及び方法を記載している。さらに、治療薬はキャリア中に入れた水溶性でカルシウムをベースとする組成物として記載されており、キャリアは好ましくは疎水性/非水性(たとえば、ワセリン又はワセリンと白ろうとの組み合わせ)であるということが記載されている。次いで、組成物は手で又は無菌コットンアプリケータで目の外眼角に隣接する眼球外皮膚に送達される。非水性デリバリービヒクルが眼球外使用のための局所適用のためのものとして記載されているが、注入可能な組成物及び方法は開示されていない。
【0012】
さらに、Robert G. Strickleyによる経口用製剤及び注入用製剤のための可溶化賦形剤の総説は、水溶性溶剤(たとえば、ポリエチレングリコール300)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)、水溶性脂質(たとえば、ヒマシ油)、有機液体/半固体(たとえば、蜜ロウ)ならびに種々のシクロデキストリン及びリン脂質を含むような薬剤を記載している。R.G. StrickleyのSolubilizing Excipients in Oral and Injectable Formulations, Pharmaceutical Research, Vol. 21, No. 2, pp. 201-30 (2004年2月)を参照されたい。しかしながら、眼科注入可能な製剤、特に、眼環境の後部領域に注入するための長期放出性、制御放出性又は持続放出性の製剤は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記で議論したとおり、眼環境に治療用化合物を送達させることは困難なことがある。それゆえ、眼疾患を治療するための医薬は現在入手可能であるけれども、改良された眼科組成物及びこのような組成物を眼環境の後部領域に送達するための方法が、特に、このような組成物の活性成分の長期放出性、制御放出性又は持続放出性を達成するために、なおも求められている。新規の、改良された組成物は標的組織に治療有効量の医薬成分を提供することにおける現存する困難を有意に克服することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
一般に、本発明は、医薬組成物、医薬キット、及びこのような医薬組成物を用いた疾患、障害又は病気を治療し又は制御するための方法を提供する。
【0015】
1つの態様において、このような組成物は眼科組成物であり、そしてこのような疾患又は障害は眼の疾患又は障害である。
【0016】
別の態様において、本発明は、水中での溶解度が低い医薬成分及び少なくとも1種の非水性水混和性材料を含む眼科組成物であって、その医薬成分及び非水性水混和性材料が組み合わされて、眼科投与に適する少なくとも1つの混合物を形成することができる、眼科組成物を提供する。非水性水混和性材料は水に対する溶解度が低い医薬成分を可溶化させるために使用され、それにより、その医薬成分が治療有効量で標的組織に送達されうるようになる。
【0017】
さらに別の態様において、医薬成分は、少なくとも約0.1mg/gの量で非水性水混和性材料中で可溶化されうる。別の態様において、医薬成分は、約0.1mg/g〜約200mg/gの範囲の量で非水性水混和性材料中で可溶化されうる。
【0018】
さらに別の態様において、医薬成分は、たとえば、抗炎症剤、抗感染剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤を含む)、抗アレルギー剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、抗酸化剤、降圧剤、神経保護剤、細胞受容体アゴニスト、細胞受容体アンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、眼内圧(IOP)低下剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、α−2アドレナリン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンアゴニスト、プロスタグランジン及びプロスタグランジン受容体アゴニスト、アンジオテンシン交換酵素(ACE)阻害剤、AMPA受容体アンタゴニスト、NMDAアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体アンタゴニスト、ソマトスタチンアゴニスト、マスト細胞脱顆粒阻害剤、α−アドレナリン受容体遮断剤、α−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、トロンボキサンA2ミメティックス(mimetics)、プロテインキナーゼ阻害剤、プロスタグランジンF誘導体、プロスタグランジン−2−αアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、ムスカリン性薬物及びそれらの組み合わせを含む群の成分である。
【0019】
さらなる態様において、医薬組成物は粘度が約10センチポアズ(cp又はmPa・s)〜約10,000cpの範囲である。
【0020】
さらに別の態様において、非水性水混和性材料は、たとえば、低級アルカノール(たとえば、1〜10個、又は、1〜6個の炭素原子を有し、たとえば、エタノール)、アリールアルカノール(たとえば、環内に5〜14個、又は、5〜10個の炭素原子を有し、たとえば、ベンジルアルコール)、ポリオール(たとえば、2〜12個、又は、2〜6個の炭素原子を有し、たとえば、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトール)、n−メチルピロリドン、ポリアルキレングリコール(たとえば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ポリグリセリン、トリアセチン、ジメチルアセトイミド、ジメチルスルホキシド、アスコルビン酸、リン酸塩緩衝剤ビヒクル系、等張性ビヒクル(たとえば、ホウ酸、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、変性植物油もしくはワセリン、ならびに、アルキルセルロース材料(たとえば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなど)を含む水溶液、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、他の眼科分野で使用される無毒性で医薬上許容される有機及び無機キャリア、それらの誘導体、又はそれらの混合物であることができる。
【0021】
本発明のさらなる態様において、医薬組成物は眼科投与のための製剤に適するものであり、その医薬組成物は、たとえば、ヒトもしくは動物の目の硝子体液中に又は結膜下(subconjunctiva)に、又は、眼環境の他の後部領域に投与されたときに、治療有効量の医薬成分を送達させることができる。
【0022】
本発明のなおもさらなる態様において、組成物は少なくとも1種の添加剤を含み、限定するわけではないが、その添加剤には防腐剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、乳化剤、それらの誘導体又それらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
本発明の別の態様において、医薬組成物の製造方法が提供され、その方法は、少なくとも1種の非水性水混和性材料を提供すること、及び、その非水性水混和性材料中に水に対する溶解度が低い少なくとも1種の医薬成分を可溶化させることを含む。その医薬成分は治療有効量の医薬組成物を標的組織で又は標的組織に提供するのに十分な量でその水混和性材料中に可溶化される。1つの実施形態において、このような標的組織は眼組織である。
【0024】
さらに別の態様において、このような医薬組成物を製造する方法は、該組成物を無菌化することをさらに含む。無菌化は、たとえば、孔サイズが少なくとも約0.2μm以下であるフィルターを用いた無菌ろ過、少なくとも約150℃の温度で少なくとも約25分間の加熱殺菌、又は、混合物をγ線で照射することによる。
【0025】
さらなる態様において、本発明は眼の疾患、障害又は病気を治療し又は制御する方法を提供する。その方法は、医薬成分及び非水性水混和性材料を含む製剤の治療量を、このような治療又は制御を必要としている眼組織に投与することを含み、ここで、医薬成分はこのような非水性水混和性材料中に可溶化されうるが、水に対する溶解度は低い。1つの実施形態において、その方法は組成物をこのような眼組織中に注入することを含む。眼組織は、たとえば、ヒト又は動物の目の内部にある硝子体液又は結膜下(subconjunctiva)であることができる。
【0026】
本発明のなおもさらなる態様において、眼の疾患、障害又は病気として、限定するわけではないが、眼球後区の疾患又は障害を挙げることができる。特定の実施形態において、このような疾患又は障害は、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症(滲出型及び萎縮型を含む)、視神経炎、網膜炎、脈絡網膜炎、中間部ブドウ膜炎及び後部ブドウ膜炎、脈絡膜血管新生及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0027】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は下記の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって当業者にさらに理解されそして評価されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書中に使用される際に、用語「制御」とは、低減、寛解、緩和、及び阻止を含む。
【0029】
本明細書中に使用される際に、語句「水に対する溶解度が低い」又は「水中での溶解度が低い」とは、生理学的pH(約7.4)及び約25℃における水中での溶解度が0.1mg/g未満であることを意味する。本発明の組成物及び方法はこのような溶解度を有する医薬成分又は化合物に特に応用可能であるが、このような組成物及び方法は、水中での溶解度が5mg/g未満の範囲であり、治療上有意な濃度の組成物に製剤するのが困難である医薬化合物の濃度を高めた新規の製剤を提供するのにも有用である。
【0030】
この開示全体をとおして、特に断らないかぎり、組成物又は製剤の成分の濃度は質量基準である。
【0031】
一般に、本発明は、医薬組成物、医薬キット、及びこのような医薬組成物を用いた疾患又は障害を治療し又は制御するための方法を提供する。
【0032】
1つの態様において、このような組成物は眼科組成物であり、そしてこのような疾患又は障害は眼の疾患又は障害である。
【0033】
別の態様において、本発明は、少なくとも1種の医薬成分及び少なくとも1種の非水性水混和性材料を含む眼科組成物であって、その医薬成分及び非水性水混和性材料が組み合わされて、眼科注入用製剤に適する少なくとも1つの混合物を形成することができる、眼科組成物を提供する。非水性水混和性材料は水に対する溶解度が低い医薬成分を可溶化させるために使用され、それにより、その医薬成分が治療有効量で標的組織に送達されうるようになる。
【0034】
1つの態様において、本発明の医薬組成物は、眼科注入(たとえば、硝子体内への注入)によって、眼の疾患、障害又は病気を治療するのに適する。
【0035】
医薬業界内で知られている様々な医薬成分は本発明の教示に従って使用するのに適する。好ましい医薬成分は眼の兆候、疾患、症候群及び外傷などを治療するのに使用される成分である。さらに、いかなる特定の理論にも拘束されたくはないが、出願人は、本発明は、水不溶性であるか又は水溶性が低いが、水混和性材料中で可溶化されうる医薬成分とともに使用するのに特に適するものと信じる。このように、本発明は、このような不溶性であるか又は溶解度が低い医薬成分の送達、生体学的利用能及び標的組織での濃度を向上させる。
【0036】
水不溶性であるか又は水溶性が低い医薬成分、特に本発明の教示に従って眼環境で使用されるものを含めた医薬成分の非限定的な例として、抗炎症剤、抗感染剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤を含む)、抗アレルギー剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、抗酸化剤、降圧剤、神経保護剤、細胞受容体アゴニスト、細胞受容体アンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、IOP低下剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、α−2アドレナリン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンアゴニスト、プロスタグランジン及びプロスタグランジン受容体アゴニスト、アンジオテンシン交換酵素(ACE)阻害剤、AMPA受容体アンタゴニスト、NMDAアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体アンタゴニスト、ソマトスタチンアゴニスト、マスト細胞脱顆粒阻害剤、α−アドレナリン受容体遮断剤、α−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、トロンボキサンA2ミメティックス(mimetics)、プロテインキナーゼ阻害剤、プロスタグランジンF誘導体、プロスタグランジン−2αアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、ムスカリン性薬物及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0037】
1つの実施形態において、医薬成分は抗炎症剤、抗感染剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗原虫剤を含む)、抗アレルギー剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、抗酸化剤、降圧剤、神経保護剤、細胞受容体アゴニスト、細胞受容体アンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、IOP低下剤及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0038】
別の実施形態において、医薬成分は抗炎症剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、神経保護剤、免疫調節剤、IOP低下剤及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0039】
さらに別の実施形態において、医薬成分はβ−アドレナリン受容体アンタゴニスト、α−2アドレナリン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンアゴニスト及びプロスタグランジン受容体アゴニストからなる群より選ばれる。
【0040】
さらなる実施形態において、医薬成分はプロスタグランジンアゴニスト、β−2アゴニスト、ムスカリンアンタゴニスト及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0041】
1つの実施形態において、医薬成分は下記式Iを有するフルオロキノロン(新世代フルオロキノロン抗細菌剤であって、米国特許第5,447,926号明細書に開示されており、それを参照により本明細書中に取り込む)を含む。
【0042】
【化1】

【0043】
上式中、R1は、水素、非置換低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロアルキル基、非置換C5〜C24アリール基、置換C5〜C24アリール基、非置換C5〜C24ヘテロアリール基、置換C5〜C24ヘテロアリール基、及び、生体内で加水分解されうる基からなる群より選ばれ、R2は、水素、非置換アミノ基、及び、1個又は2個の低級アルキル基により置換されたアミノ基からなる群より選ばれ、R3は、水素、非置換低級アルキル基、置換低級アルキル基、シクロアルキル基、非置換低級アルコキシ基、置換低級アルコキシ基、非置換C5〜C24アリール基、置換C5〜C24アリール基、非置換C5〜C24ヘテロアリール基、置換C5〜C24ヘテロアリール基、非置換C5〜C24アリールオキシ基、置換C5〜C24アリールオキシ基、非置換C5〜C24ヘテロアリールオキシ基、置換C5〜C24ヘテロアリールオキシ基、及び、生体内で加水分解されうる基からなる群より選ばれ、Xはハロゲン原子からなる群より選ばれ、YはCH2、O、S、SO、SO2及びNR4からなる群より選ばれ、ここで、R4は、水素、非置換低級アルキル基、置換低級アルキル基及びシクロアルキル基からなる群より選ばれ、そしてZは酸素及び2個の水素原子からなる群より選ばれる。
【0044】
別の実施形態において、医薬成分は式IIを有するフルオロキノロンを含む。
【0045】
【化2】

((R)−(+)−7−(3−アミノ−2,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル)−8−クロロ−1−シクロプロピル−6−フルオロ−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸)
【0046】
さらに別の実施形態において、医薬成分は、米国特許出願公開第2006/0116396号明細書(それを参照により本明細書中に取り込む)に開示されているような式III又はIVを有するグルココルチコイド受容体アゴニストを含む。
【0047】
【化3】

【0048】
上式中、R4及びR5は、独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1〜C10(又は、C1〜C5もしくはC1〜C3)アルコキシ基、非置換C1〜C10(又は、C1〜C5もしくはC1〜C3)直鎖もしくは枝分かれアルキル基、置換C1〜C10(又は、C1〜C5もしくはC1〜C3)直鎖もしくは枝分かれアルキル基、非置換C3〜C10(又は、C3〜C6もしくはC3〜C5)環式アルキル基、及び、置換C3〜C10(又は、C3〜C6もしくはC3〜C5)環式アルキル基からなる群より選ばれる。
【0049】
さらに別の実施形態において、医薬成分は式V(式IIIの化合物の種類)を有するグルココルチコイド受容体アゴニストを含む。
【0050】
【化4】

【0051】
別の態様において、本発明の組成物、キット及び方法はヒト又は動物の他の組織に医薬成分を送達させるのに適切でありかつ有用であると想定される。このため、多くの治療及び診断分野で薬効を有する可能性のある、水中での溶解度が低い医薬成分は本発明での使用及び用途に応用できる。
【0052】
眼科以外の分野での使用のための医薬化合物の非限定的な種類及び例は、たとえば、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、抗精神薬、神経遮断薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、降圧薬、ホルモン、栄養物、ACE阻害剤(ace inhibiting agents)、抗糖尿病薬、低血圧治療薬、抗真菌薬(antimicotic agents)、抗パーキンソン病薬、抗リウマチ薬、β遮断薬、気管支鎮痙薬(brochospasmolytic agents)、心血管治療薬、カロチノイド、避妊薬、エンケファリン、抗高脂血薬、リンフォカイン、神経薬、プロスタサイクリン、精神薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
本発明における使用に適する非水性水混和性材料としては、限定するわけではないが、低級アルカノール(たとえば、1〜10個、又は、1〜6個の炭素原子を有し、たとえば、エタノール)、アリールアルカノール(たとえば、環内に5〜14個、又は、5〜10個の炭素原子を有し、たとえば、ベンジルアルコール)、ポリオール(たとえば、2〜12個、又は、2〜6個の炭素原子を有し、たとえば、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトール)、n−メチルピロリドン、ポリアルキレングリコール(たとえば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ポリグリセリン、トリアセチン、ジメチルアセトイミド、ジメチルスルホキシド、アスコルビン酸、リン酸塩緩衝剤ビヒクル系、等張性ビヒクル(たとえば、ホウ酸、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、変性植物油もしくはワセリン、ならびに、アルキルセルロース材料(たとえば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなど)を含む水溶液、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、他の眼科分野で使用される無毒性で医薬上許容される有機及び無機キャリア、それらの誘導体又はそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
医薬成分は治療有効濃度の医薬組成物を得るために十分な量で非水性水混和性材料中において可溶化され又は可溶化されうる。十分な量は選択される特定の医薬成分、選択される特定の非水性水混和性材料(1種又は複数種)及び意図された標的組織によって決まるであろう。しかしながら、一般には、医薬成分の十分な量は少なくとも約0.1mg/g(又は、少なくとも約1mg/g、又は少なくとも約2mg/g、又は、少なくとも約5mg/g)の量である。別の実施形態において、医薬成分は非水性水混和性材料中において約0.1mg/g〜約200mg/gで可溶化されうる。又は、医薬成分は非水性水混和性材料中において、約0.1mg/g〜約100mg/g、又は、約0.1mg/g〜約75mg/g、又は、約0.1mg/g〜約50mg/g、又は、約0.1mg/g〜約25mg/g、又は、約0.1mg/g〜約10mg/g、又は、約1mg/g〜約200mg/g、又は、約1mg/g〜約100mg/g、又は、約1mg/g〜約50mg/g、又は、約1mg/g〜約25mg/g、又は、約1mg/g〜約10mg/g、又は、約10mg/g〜約200mg/g、又は、約10mg/g〜約100mg/g、又は、約10mg/g〜約50mg/gの範囲の量で可溶化されうる。このような溶解度は生理学的pH(約7.4)及び約25℃で測定される。
【0055】
なおも別の態様において、医薬成分は混合物の合計質量の約0.01%(質量基準)〜約50%(質量基準)の濃度で混合物中に存在し、そして、水混和性ビヒクルは混合物の合計質量の約99.99%(質量基準)〜約50%(質量基準)の濃度で混合物中に存在する。特定の実施形態において、医薬成分の濃度は、質量基準で、約0.1%〜約25%(又は、約0.1%〜約10%、又は、約0.1%〜約5%、又は、約0.1%〜約2%、又は、約0.1%〜約1%、又は、約0.5%〜約5%、又は、約0.5%〜約2%、又は、約0.2%〜約2%、又は、約0.2%〜約1%)の範囲である。特定の他の実施形態において、水混和性ビヒクルは混合物(混合物中に含みうる可能性のある少量の他の添加剤の存在を除く)の実質的に残部を構成する。
【0056】
1つの態様において、組成物又は製剤の粘度は約10cp〜約10,000cpの範囲である。又は、組成物又は製剤の粘度は約10cp〜約5,000cp、又は、約10cp〜約2,000cp、又は、約10cp〜約1,000cpの範囲である。
【0057】
本発明の1つ以上の実施形態において、混合物は1種以上の添加剤をも含むことができ、その添加剤として、限定するわけではないが、防腐剤、非イオン性浸透圧調節剤、粘度調節剤、溶解度向上剤及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
防腐剤の非限定的な例として、塩化ベンズアルコニウム(BAK)、第四級アンモニウム化合物(たとえば、ポリコート(polyquat)−1、ポリコート−10)、過酸化水素、尿素過酸化水素、ソルビン酸/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、フェニルエチルアルコール、エチルパラベン及びメチルパラベンが挙げられる。これらの薬剤は、個別の量で、約0.001質量%〜約2質量%(好ましくは、約0.01質量%〜約1質量%)の量で存在しうる。
【0059】
粘度調節性化合物は対象への組成物の投与を容易にし又は意図した治療時間にわたる対象における生体利用能を促進するように設計されうる。粘度調節性化合物は、使用される水混和性キャリアの粘度によって、低分子量材料であるか又は高分子量材料であることができる。低分子量粘度調節剤の非限定的な例は脂肪アシル部分が4〜12個の炭素原子を含む中鎖トリグリセリド(MCT)である。粘度調節性化合物は適切な分子量の医薬上許容されるポリマーであることができ、そしてそれは組成物が硝子体中に投与された後に容易に分散されないように選択することができる。このような化合物は組成物の粘度を上げることができ、そして、その化合物として、限定するわけではないが、長鎖トリグリセリド(LCT、脂肪アシル部分が12個より多く、好ましくは18個より多く、より好ましくは22個より多くの炭素原子を含む)、水混和性アクリルエステルポリマー、ポリシロキサン及び水混和性ポリペプチドが挙げられる。
【0060】
溶解度向上剤の非限定的な例は、β−シクロデキストリンである。
【0061】
1つの態様において、医薬組成物は医薬成分をある期間にわたって放出する持続放出性、制御放出性又は長期放出性の溶液又は組成物であることができる。1つの実施形態において、医薬組成物は8時間以上の時間にわたって医薬成分を放出することができる。別の実施形態において、医薬組成物は12時間以上の時間にわたって医薬成分を放出することができる。別の好ましい実施形態において、医薬組成物は24時間以上の時間にわたって医薬成分を放出することができる。別の実施形態において、医薬組成物は2、3、4、5、6又は7日間以上の期間にわたって医薬成分を放出することができる。別の好ましい実施形態において、医薬組成物は2又は4週間以上の期間にわたって医薬成分を放出することができる。
【0062】
1つの態様において、本発明の組成物は局所投与用に製剤される。1つの実施形態において、このような組成物は、眼球前区の疾患、障害又は病気を治療し又は制御するために眼球前区、たとえば、眼球前方表面に局所投与されるように製剤される。
【0063】
又は、その混合物は、限定するわけではないが、ヒト又は動物の目の硝子体腔又は結膜下(subconjunctiva)を含めた眼環境への注入用に製剤されうる。その混合物は既知の方法及び原理に従って眼科注入用に製剤されることができ、そしてその後、注入デリバリーデバイス、たとえば、適切なゲージの針、たとえば、25〜30ゲージの針を用いて注入されることができる。
【0064】
場合により、混合物を眼環境に注入する前に、混合物は無菌化されてよい。無菌化の適切な方法として、限定するわけではないが、無菌化ろ過、加熱殺菌及びγ線照射が挙げられる。無菌化ろ過を選択する場合、1つの適切な無菌化ろ過の方法は孔サイズが少なくとも約0.2μm以下であるフィルターを用いることができる。加熱殺菌を選択する場合、1つの適切な加熱殺菌の方法は、混合物を少なくとも約150℃の温度で少なくとも約25分間殺菌することを含むことができる。γ線照射を選択する場合、1つの適切な方法は、約2.5Mrad〜約3.5Mradのレベルのγ線に本発明の組成物を暴露することを含むことができる。
【0065】
上述のとおり、本発明の別の態様は眼の疾患、障害又は病気を治療する方法を含む。その方法は、少なくとも1種の医薬成分及び少なくとも1種の水混和性材料を含む少なくとも1つの混合物を眼環境に投与することを含む。その混合物は眼の疾患、障害又は病気を治療するために使用でき、その眼の疾患、障害又は病気として、限定するわけではないが、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症(滲出型及び萎縮型を含む)、視神経炎、網膜炎、脈絡網膜炎、中間部ブドウ膜炎及び後部ブドウ膜炎、脈絡膜血管新生及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
別の態様において、適切な医薬成分を含む本発明の組成物は眼球前区の眼の疾患、障害又は病気を治療又は制御するために使用され、その眼の疾患、障害又は病気として、前部ブドウ膜炎(虹彩炎及び虹彩毛様体炎を含む)、角膜炎、結膜炎、角結膜炎(春季カタル(又はVKC)及びアトピー性角結膜炎を含む)、角膜潰瘍、角膜浮腫、無菌角膜浸潤、前部強膜炎、上強膜炎、眼瞼炎、及び、光屈折矯正角膜切除術(photorefractive keratectomy)、白内障除去手術、眼内レンズ(IOL)埋め込み、レーザー支援生体内角膜切削形成術(LASIK)、老眼矯正手術(conductive keratoplasty)及び放射状角膜切開などの手順から生じる手術後(又は術後)眼炎症が挙げられる。
【0067】
非水性水混和性材料及び医薬成分は組み合わされて、適切な混合物を形成することができ、その混合物として、限定するわけではないが、水混和性溶液、半固体又は懸濁液が挙げられる。別の実施形態において、水混和性溶液はさらに疎水性媒体に添加されてよくそして全体として、安定なエマルジョンを形成することができる。たとえば、混合物は水混和性材料中に医薬成分の粒子を含む懸濁液であることができる。本発明の様々な実施形態において、医薬成分の粒子は粒度が約0.01μm〜約1μm直径である。別の実施形態において、粒度は約0.05μm〜約0.5μm直径である。
【0068】
いかなる特定の理論にも拘束されたくないが、出願人は、本発明のドラッグデリバリービヒクルとしての非水性水混和性材料は眼環境内の標的組織に医薬成分を送達させることに関して本明細書中に記載した問題の1つ以上に対処できるものと信じる。
【0069】
たとえば、水性媒体中での溶解度が低い医薬成分の可溶化で、非水性水混和性材料中で、より高い溶解度を有することが可能である。このような高められた溶解度により、標的組織で、標識組織内で又は標識組織付近での医薬成分もしくは成分粒子の利用能が高められ、それにより、標的組織で、標識組織内で又は標識組織付近での成分濃度を高めることができる。
【0070】
ある場合には、医薬成分の量又は用量は非水性水混和性材料中に完全に可溶性であることができ、それにより、上記の量又は用量の全量は水混和性溶液として所望の眼環境に送達される。他の場合には、医薬成分は懸濁液として送達されることができ、それでも、本発明の非水性水混和性デリバリービヒクル中の溶解度が高いので、組成物の流体相中の医薬成分の濃度を高くすることができ、それにより、より有意な濃度の医薬成分が標的組織で又は標的組織付近で利用可能である。
【0071】
水混和性材料を用いることのさらなる利点は、粒子の生体利用能を改良する可能性があることである。水混和性材料が散逸し又は眼液(たとえば、涙又は硝子体液)が組成物液滴又は注入ボーラスに浸透するときに、医薬成分の非常に小さい粒子が露出する。ほとんどの条件下で、より小さい医薬成分の粒子のほうが、より大きい粒子よりも高い生体利用能を有する。より小さい粒子のさらなる利点は、軟膏や眼注入可能な分散体などの従来の眼科組成物とは異なり、その粒子が視軸内に入りそして視覚を妨害する可能性が低いことである。
【0072】
下記の実施例は本発明をさらに説明し、そして本発明又は本明細書中に記載した特定の手順もしくは組成物を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0073】
例1
水/涙混和性溶液製剤
5% トリアセチン
5% ポリエチレングリコール400
5% プロピレングリコール
0.1% EDTA二ナトリウム
0.15 アスコルビン酸ナトリウム
0.1% トコフェルソラン(tocophersolan)(TPGS)
0.5% フェニルエチルアルコール
適量 式IIを有する化合物
適量 pHを5.5〜6に調節するためのNaOH(1N溶液)
適量 水
【0074】
すべての成分(NaOHを除く)を水相に添加する。高速で10〜30分間混合する。pHを5.5〜6に調節する。この溶液は眼の細菌感染症を治療するのに有用である。
【0075】
例2
水/涙混和性溶液製剤
5% プロピレングリコール
1% α−トコフェロール
0.1% PHMB
適量 ポリエチレングリコール400
適量 式Vを有する化合物
pH調節のためのNaOH(1N溶液)
【0076】
すべての成分(NaOHを除く)を無菌化された容器に添加する。10〜30分間完全に混合する。pHを5.5〜6に調節する。この溶液は眼の炎症を治療するのに有用である。
【0077】
例3
水/涙混和性懸濁液製剤
5% トリアセチン
5% ポリエチレングリコール400
5% プロピレングリコール
0.1% EDTA二ナトリウム
0.15 アスコルビン酸ナトリウム
0.1% トコフェルソラン(tocophersolan)(TPGS)
0.5% フェニルエチルアルコール
有効量 セレコキシブ(celecoxib)(Celebrex(登録商標)としても知られる、COX−2阻害剤)
適量 pHを5.5〜6に調節するためのNaOH(1N溶液)
適量 水
【0078】
すべての成分(医薬及びNaOHを除く)を水相に添加する。高速で10〜30分間混合する。pHを5.5〜6に調節する。医薬濃度が100〜500mg/mLとなるように、所望の量の医薬物質を少量部分の水相に添加する。湿潤ミリングを用いて医薬物質の平均粒度を10μm以下に減じる。このようにミリング処理した懸濁液を追加の水相によって所望の医薬濃度となるように希釈する。この懸濁液は眼の炎症を治療するのに有用である。
【0079】
例4
シクロデキストリンを含有する水/涙混和性溶液
5% トリアセチン
5% ポリエチレングリコール400
1% β−シクロデキストリン
0.1% EDTA二ナトリウム
0.1% アスコルビン酸ナトリウム
0.1% トコフェルソラン(tocophersolan)(TPGS)
0.2% フェニルエチルアルコール
適量 製剤を飽和させるブリモニジン
適量 pHを5.5〜6に調節するためのNaOH(1N溶液)
適量 水
【0080】
すべての成分(NaOHを除く)を水相に添加する。pHを5.5〜6に調節する。この溶液の硝子体内投与は眼神経保護を行うのに有用である。
【0081】
例5
界面活性剤を含有する水/涙混和性溶液
5% トリアセチン
5% ポリエチレングリコール400
5% プロピレングリコール
1% PEG−35ヒマシ油(Cremophor EL)
0.1% EDTA二ナトリウム
0.1% アスコルビン酸ナトリウム
0.1% トコフェルソラン(tocophersolan)(TPGS)
0.25% フェニルエチルアルコール
適量 製剤を飽和させるモキシフロキサシン
適量 pHを6〜6.5に調節するためのNaOH(1N溶液)
適量 水
【0082】
すべての成分(NaOHを除く)を水相に添加する。pHを6〜6.5に調節する。この溶液は眼の細菌感染症を治療するための局所投与に有用である。
【0083】
例6
粘度を高めた、界面活性剤を含有する水/涙混和性溶液
5% トリアセチン
5% ポリエチレングリコール400
5% プロピレングリコール
1% PEG−35ヒマシ油(Cremophor EL)
0.2% カルボマー(Carbomer) 980
0.1% EDTA二ナトリウム
0.1% アスコルビン酸ナトリウム
0.1% トコフェルソラン(tocophersolan)(TPGS)
0.25% フェニルエチルアルコール
適量 製剤を飽和させるシクロスポリンA
適量 pHを6〜6.5に調節するためのNaOH(1N溶液)
適量 水
【0084】
トリアセチン、PEG−400、プロピレングリコール、PEG−35ヒマシ油、フェニルエチルアルコール及びシクロスポリンAを合わせる。混合して医薬を溶解させる。残りの成分を水に添加し、カルボマー980を水中で溶解するまで高剪断下に分散させる。シクロスポリンAを含有する部分を、カルボマー980を含有する部分に添加し、均一になるまで混合する。pHを6〜6.5に調節する。この溶液はドライアイ症候群を治療し又は軽減するのに有用である。
【0085】
例7
水を含有しない水混和性溶液製剤
5% DMSO
0.1% ポリソルベート80
94.9% ポリエチレングリコール400
適量 製剤を飽和させるラタノプロスト(プロスタグランジン類似体)
【0086】
すべての成分(ラタノプロストを除く)を均一になるまで混合する。その混合物にラタノプロストを、飽和になるまで混合しながら添加する。この製剤は患者のIOPを低下させるための組成物のさらなる調製のための出発材料として有用であることができる。
【0087】
本発明は、ここまで、いかなる当業者であっても本発明を実施することができるような完全で、明確で、簡潔でかつ正確な用語で記載されてきた。上記の記載は本発明の好ましい実施形態及び実施例を説明しており、特許請求の範囲に示したとおりの本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明に変更がなされてよいことが理解されるべきである。さらに、本発明の特定の要素、実施形態及び用途が示されそして記載されてきたが、特に、上記の教示及び添付の特許請求の範囲から考慮して、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって変更がなされうるので、本発明はそれに限定されないことが当然に理解されるであろう。さらに、上記のとおりの実施形態は単に例示の目的であり、本発明の範囲を限定することが意図されないことも理解される。本発明の範囲は均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈される特許請求の範囲によって特定される。さらに、本明細書中に引用したすべての刊行物の全体が本明細書中に取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)非水性水混和性材料を提供すること、及び、
b)前記非水性水混和性材料中に、水に対する溶解度が低い医薬成分を可溶化させること、
の工程を含む、医薬組成物の製造方法であって、
前記医薬成分は治療有効濃度の医薬組成物を得るのに十分な量で前記非水性水混和性材料中に可溶化されることができ、
前記非水性水混和性材料は、前記医薬組成物を標的組織内に投与したときに、治療有効量の医薬成分を送達するのに十分な量で組成物中に存在する、医薬組成物の製造方法。
【請求項2】
前記非水性水混和性材料は、1〜6個の炭素原子を有するアルカノール、5〜10個の炭素原子を有するアリールアルカノール、2〜6個の炭素原子を有するポリオール、n−メチルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリグリセリン、トリアセチン、ジメチルアセトイミド、ジメチルスルホキシド、アスコルビン酸、リン酸塩緩衝剤ビヒクル系、等張性ビヒクル、変性植物油もしくはワセリン、ならびに、アルキルセルロース材料を含む水溶液、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、他の眼科分野で使用される無毒性で医薬上許容される有機及び無機キャリア、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記非水性水混和性材料は水と混合されて水性材料と非水性材料との混合物を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記非水性水混和性材料中に可溶化されうる医薬成分の前記十分な量は少なくとも約0.1mg/gの量である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記医薬成分は抗炎症剤、抗感染剤、抗アレルギー剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、抗酸化剤、降圧剤、神経保護剤、細胞受容体アゴニスト、細胞受容体アンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、IOP低下剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、α−2アドレナリン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンアゴニスト、プロスタグランジン及びプロスタグランジン受容体アゴニスト、アンジオテンシン交換酵素(ACE)阻害剤、AMPA受容体アンタゴニスト、NMDAアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体アンタゴニスト、ソマトスタチンアゴニスト、マスト細胞脱顆粒阻害剤、α−アドレナリン受容体遮断剤、α−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、トロンボキサンA2ミメティックス(mimetics)、プロテインキナーゼ阻害剤、プロスタグランジンF誘導体、プロスタグランジン−2αアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、ムスカリン性薬物及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる成分である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組成物を無菌化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
水に対する溶解度が低い医薬成分であって、医薬組成物を標的組織に対して又は標的組織内に投与したときに治療有効量で該組成物中に存在している医薬成分、及び、
前記治療有効量の前記医薬成分を可溶化させるために十分な量の非水性水混和性材料、
を含む医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬成分は少なくとも約0.1mg/gの量で前記非水性水混和性材料中に可溶化されている、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬成分は抗炎症剤、抗感染剤、抗アレルギー剤、抗増殖剤、血管新生抑制剤、抗酸化剤、降圧剤、神経保護剤、細胞受容体アゴニスト、細胞受容体アンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、IOP低下剤、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、α−2アドレナリン受容体アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、コリンアゴニスト、プロスタグランジン及びプロスタグランジン受容体アゴニスト、アンジオテンシン交換酵素(ACE)阻害剤、AMPA受容体アンタゴニスト、NMDAアンタゴニスト、アンジオテンシン受容体アンタゴニスト、ソマトスタチンアゴニスト、マスト細胞脱顆粒阻害剤、α−アドレナリン受容体遮断剤、α−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、トロンボキサンA2ミメティックス(mimetics)、プロテインキナーゼ阻害剤、プロスタグランジンF誘導体、プロスタグランジン−2αアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、ムスカリン性薬物及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物は水が前記非水性水混和性材料と混合されたものをさらに含む、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記非水性水混和性材料は、1〜10個の炭素原子を有するアルカノール、5〜14個の炭素原子を有するアリールアルカノール、2〜12個の炭素原子を有するポリオール、n−メチルピロリドン、ポリアルキレングリコール、ポリグリセリン、トリアセチン、ジメチルアセトイミド、ジメチルスルホキシド、アスコルビン酸、リン酸塩緩衝剤ビヒクル系、等張性ビヒクル、変性植物油もしくはワセリン、ならびに、アルキルセルロース材料を含む水溶液、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル、他の眼科分野で使用される無毒性で医薬上許容される有機及び無機キャリア、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記非水性水混和性材料は眼組織と適合性である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項13】
防腐剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、乳化剤、それらの誘導体及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる添加剤をさらに含む、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物は粘度が約10cp〜約10,000cpの範囲である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬成分は式Vを有する化合物を含む、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬成分は式IIを有する化合物を含む、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項17】
眼の疾患、障害又は病気を治療し又は制御する方法であって、
非水性水混和性材料中に可溶化された、水に対する溶解度が低い医薬成分を含む混合物を、前記疾患、障害又は病気を治療し又は制御するための治療有効量で眼環境に対して又は眼環境内に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記眼の疾患、障害又は病気は、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、加齢性黄斑変性症(滲出型及び萎縮型を含む)、視神経炎、網膜炎、脈絡網膜炎、中間部ブドウ膜炎及び後部ブドウ膜炎、脈絡膜血管新生、前部ブドウ膜炎(虹彩炎及び虹彩毛様体炎を含む)、角膜炎、結膜炎、角結膜炎(春季カタル(又はVKC)及びアトピー性角結膜炎を含む)、角膜潰瘍、角膜浮腫、無菌角膜浸潤、前部強膜炎、上強膜炎、眼瞼炎、及び、光屈折矯正角膜切除術(photorefractive keratectomy)、白内障除去手術、眼内レンズ(IOL)埋め込み、レーザー支援生体内角膜切削形成術(LASIK)、老眼矯正手術(conductive keratoplasty)及び放射状角膜切開などの手順から生じる手術後(又は術後)眼炎症、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記投与は眼球前区の眼の疾患、障害又は病気を治療し又は制御するために局所投与によって行われる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記投与は眼球後区の眼の疾患、障害又は病気を治療し又は制御するために硝子体内投与により行われる、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2011−502989(P2011−502989A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532125(P2010−532125)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080267
【国際公開番号】WO2009/058585
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】