説明

ドレン機構及びこれを備える流体フィルタ

【課題】キャップのドレン穴にドレンパイプを小さな力で挿入でき、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入し保持するドレン機構の提供。
【解決手段】ドレン機構は、フィルタケースに着脱自在に装着され、ドレン穴15を形成し、ドレン穴に挿入するドレンパイプ33の係合部35が係合する突起部18を有するキャップ3と、ドレン穴を閉鎖するキャップ内部に設けられ且つパイプの先端部との接触でドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位するバルブ部材25を備え、バルブ部材には、パイプの先端部を保持する凹部28が設けられ、バルブ部材の凹部の内側には、パイプの先端部に当接部29を設け、ドレン穴に挿入するパイプの係合部の先端側がキャップ係合突起部の後端側に当接した状態で、係合部と係合突起部当接先端とドレン穴を閉鎖した状態のバルブ部材の保持凹部の開口端との間隔Aは、係合部及び係合突起部の当接先端とパイプの先端との間隔Bより長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレン機構及びこれを備える流体フィルタに関し、さらに詳しくは、キャップのドレン穴にドレンパイプを比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入して確実に保持できるドレン機構及びこれを備える流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体フィルタとして、濾過エレメントの交換が可能であり、その交換の際にケース内部に残留するオイルを排出するためのドレン機構を備えるオイルフィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、例えば、図7に示すように、オイルフィルタ101のケースに着脱自在に装着され且つドレン穴115が形成されたキャップ103と、このドレン穴115を閉鎖するようにキャップ103の内部に設けられるバルブ部材125と、を備え、ドレン穴115に挿入されるドレンパイプ133の先端部134でバルブ部材125をバネ111の付勢力に抗して押し上げてドレン穴115を開放させ、ドレンパイプ133を介してキャップ103の内部の残留オイルを排出するようにしたドレン機構124が開示されている。そして、残留オイルの排出の際には、ドレンパイプ133の係合部135をキャップ103の係合突起部118に係合させると共に、ドレンパイプ133の先端部134をバルブ部材125の保持凹部128に保持させて、キャップ103に対してドレンパイプ133を固定するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−111447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のドレン機構124では、図8に示すように、ドレン穴115に挿入されるドレンパイプ133の係合部135の先端側がキャップ103の係合突起部118の後端側に当接した状態において、係合部135及び係合突起部118の当接先端とバルブ部材125の保持凹部128の開口端との間隔A’が、係合部135及び係合突起部118の当接先端とドレンパイプ133の先端との間隔B’より短く設定されているので、ドレンパイプ133の挿入を更に進めると、図9に示すように、ドレンパイプ133の先端部134が保持凹部128内に収容保持された状態で、ドレンパイプ133を無理に弾性変形させて係合部135及び係合突起部118を係合させることとなり、ドレンパイプ133の挿入に比較的大きな力が必要であり挿入しにくいものとなっている。また、挿入しにくいため、ドレン穴115にドレンパイプ133が真っ直ぐに挿入されず、ドレンパイプ133の先端部134が保持凹部128に収まらず抜け落ちてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、キャップのドレン穴にドレンパイプを比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入して確実に保持できるドレン機構及びこれを備える流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.流体フィルタのケースに着脱自在に装着され、且つ、ドレン穴が形成され、更に、該ドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部が係合する係合突起部を有するキャップと、
前記ドレン穴を閉鎖するように前記キャップの内部に設けられ、且つ、前記ドレン穴に挿入される前記ドレンパイプの先端部との接触により該ドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位されるバルブ部材と、を備え、
前記バルブ部材には、前記ドレンパイプの先端部を保持する保持凹部が設けられており、該バルブ部材の該保持凹部の内側には、前記ドレンパイプの先端部が当接する当接部が設けられており、
前記ドレン穴に挿入される前記ドレンパイプの前記係合部の先端側が前記キャップの前記係合突起部の後端側に当接した状態において、該係合部及び該係合突起部の当接先端と前記ドレン穴を閉鎖した状態の前記バルブ部材の前記保持凹部の開口端との間隔(A)は、該係合部及び該係合突起部の当接先端と前記ドレンパイプの先端との間隔(B)より長くされていることを特徴とする流体フィルタのドレン機構。
2.前記バルブ部材の前記当接部の内側には、前記ドレン穴に向かって突出する突出部が設けられている上記1.記載の流体フィルタのドレン機構。
3.前記当接部の外端側と前記保持凹部の内端側とは曲面部で連絡されている上記1.又は2.に記載の流体フィルタのドレン機構。
4.上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のドレン機構を備えることを特徴とする流体フィルタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流体フィルタのドレン機構によると、ドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部の先端側がキャップの係合突起部の後端側に当接した状態において、ドレンパイプの先端部はキャップの保持凹部の外方に位置して自由端となっており、この状態より、ドレンパイプの挿入を更に進めると、ドレンパイプの係合部とキャップの係合突起部との圧接によりドレンパイプが弾性変形して、その先端部が当接部に当接してバルブ部材をドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位させ、ドレンパイプの係合部がキャップの係合突起部を乗り越えて係合されると共に、ドレンパイプの先端部がバルブ部材の保持凹部に保持される。このように、ドレン穴に挿入されるドレンパイプの先端部を自由端として容易に弾性変形させて係合部及び係合突起部を係合させるようにしたので、キャップのドレン穴にドレンパイプを比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入して保持凹部で確実に保持できる。また、ドレンパイプの係合部をキャップの係合突起部に係合させると共に、ドレンパイプの先端部をバルブ部材の保持凹部に保持させるようにしたので、キャップに対してドレンパイプを極めて強固に保持できる。
また、前記バルブ部材の前記当接部の内側に、前記ドレン穴に向かって突出する突出部が設けられている場合は、ドレンパイプでバルブ部材を変位させる際に、ドレンパイプの先端部がバルブ部材の当接部に当接されると共に突出部に支持されるため、ドレンパイプをより真っ直ぐに挿入できる。
さらに、前記当接部の外端側と前記保持凹部の内端側とが曲面部で連絡されている場合は、ドレンパイプの先端部が曲面部を介して当接部から保持凹部へ円滑に移動され、ドレンパイプの先端部を保持凹部でより確実に保持できる。
【0009】
本発明の流体フィルタによると、ドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部の先端側がキャップの係合突起部の後端側に当接した状態において、ドレンパイプの先端部はキャップの保持凹部の外方に位置して自由端となっており、この状態より、ドレンパイプの挿入を更に進めると、ドレンパイプの係合部とキャップの係合突起部との圧接によりドレンパイプが弾性変形して、その先端部が当接部に当接してバルブ部材をドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位させ、ドレンパイプの係合部がキャップの係合突起部を乗り越えて係合されると共に、ドレンパイプの先端部がバルブ部材の保持凹部に保持される。このように、ドレン穴に挿入されるドレンパイプの先端部を自由端として容易に弾性変形させて係合部及び係合突起部を係合させるようにしたので、キャップのドレン穴にドレンパイプを比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入して保持凹部で確実に保持できる。また、ドレンパイプの係合部をキャップの係合突起部に係合させると共に、ドレンパイプの先端部をバルブ部材の保持凹部に保持させるようにしたので、キャップに対してドレンパイプを極めて強固に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態に係る流体フィルタのドレン機構は、以下に述べるキャップ及びバルブ部材を備える。
【0011】
上記「キャップ」は、流体フィルタのケースに着脱自在に装着され、且つドレン穴が形成され、更にドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部が係合する係合突起部を有する限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。この係合突起部は、例えば、ドレン穴の内方に突出していることができる。また、上記係合部は、例えば、ドレンパイプの先端側外周に外方に突出して設けられていることができる。さらに、上記ドレンパイプの先端側には、例えば、その先端から軸方向に切り込まれるスリットが形成されていることができる。これにより、ドレンパイプの弾性変形を更に容易なものとすることができる。
【0012】
上記「バルブ部材」は、上記ドレン穴を閉鎖するようにキャップの内部に設けられ、且つドレン穴に挿入されるドレンパイプの先端部との接触によりドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位される限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。このバルブ部材には、以下に述べる保持凹部及び当接部が設けられている。さらに、バルブ部材には、例えば、後述する突出部が設けられていることができる。
上記バルブ部材は、通常、バネ等の弾性体によりドレン穴を閉鎖する方向に付勢されている。また、上記バルブ部材は、例えば、上記キャップの係合突起部との接触によりドレン穴を閉鎖することができる。
【0013】
上記「保持凹部」は、上記ドレンパイプの先端部を保持する限り、その構造、形状、配置形態等は特に問わない。この保持凹部は、例えば、環状であるドレンパイプの先端部と略同じ大きさの環状であることができる。また、この保持凹部の縦断面形状は、例えば、縦断面凸弧状であるドレンパイプの先端部と対応する凹弧状であることができる。これにより、ドレンパイプの先端部を保持凹部でより確実に保持できる。
【0014】
上記「当接部」は、上記バルブ部材の上記保持凹部の内側に配置され且つドレンパイプの先端部が当接する限り、その構造、形状、配置形態等は特に問わない。
上記当接部の外端側と上記保持凹部の内端側とは、例えば、曲面部で連絡されていることができる。この曲面部は、例えば、上記当接部の外端側及び/又は上記保持凹部の内端側により構成されていていることができる。
【0015】
上記「突出部」は、上記バルブ部材の当接部の内側に設けられ且つドレン穴に向かって突出する限り、その構造、形状、配置形態等は特に問わない。この突出部は、通常、ドレンパイプの先端部を支持するものである。
上記突出部は、例えば、ドレン穴に向かって縮径するテーパ面を有することができる。これにより、ドレン穴にドレンパイプを斜めに挿入した場合でも、ドレンパイプの先端部が突出部に案内され、ドレンパイプの先端部を当接部の適正な位置に当接させることができる。
上記突出部の外端側と当接部の内端側とは、例えば、縦断面形状が凸弧状であるドレンパイプの先端部と対応する縦断面凹弧状の曲面部で連絡されていることができる。これにより、ドレンパイプの先端部を当接部及び突出部で更に確実に支持できる。上記曲面部は、例えば、上記突出部の内端側及び/又は上記当接部の外端側により構成されていることができる。
【0016】
ここで、上記ドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部の先端側がキャップの係合突起部の後端側に当接した状態において、係合部及び係合突起部の当接先端とドレン穴を閉鎖した状態のバルブ部材の保持凹部の開口端との間隔(A)は、係合部及び係合突起部の当接先端とドレンパイプの先端との間隔(B)より長くされている(図4参照)。
この場合、例えば、上記キャップの係合突起部の係合端とドレン穴を閉鎖した状態のバルブ部材の保持凹部の保持底端との間の間隔(C)は、係合部及び係合突起部の当接先端とドレンパイプの先端との間の間隔(D)より長くされていることができる(図5参照)。これにより、上記間隔(C)を上記間隔(D)より短くしたものに比べて、バルブ部材の変位量を必要最小限に抑えることができ、ドレンパイプの挿入に必要な力をより小さくできる。
【0017】
なお、他の実施形態に係る流体フィルタのドレン方法としては、例えば、上述したドレン機構を用いるドレン方法であって、キャップのドレン穴にドレンパイプを挿入して、ドレンパイプの係合部とキャップの係合突起部との圧接によりドレンパイプを弾性変形させ、ドレンパイプの先端部をバルブ部材の当接部に当接させてバルブ部材をドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位させ、ドレンパイプの挿入を更に進めて、ドレンパイプの係合部がキャップの係合突起部を乗り越えて両部を係合させると共に、ドレンパイプの先端部をバルブ部材の保持凹部に保持させる形態等を挙げることができる。これにより、ドレン穴に挿入されるドレンパイプの先端部を自由端として容易に弾性変形させて係合部及び係合突起部を係合させることができ、キャップのドレン穴にドレンパイプを比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプを真っ直ぐに挿入して保持凹部で確実に保持できる。また、ドレンパイプの係合部がキャップの係合突起部に係合されると共に、ドレンパイプの先端部がバルブ部材の保持凹部に保持されるので、キャップに対してドレンパイプを極めて強固に保持できる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「流体フィルタ」として、内燃機関のシリンダブロック(図示せず。)に装着されるオイルフィルタを例示する。
【0019】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1に示すように、下方を開放してなる有底筒状の樹脂製のケース2と、このケース2に着脱自在に装着される上方を開放してなる有底筒状の樹脂製のキャップ3と、これらケース2及びキャップ3で構成されるハウジング4の内部に収容される菊花状の濾過エレメント5と、を備えて基本的に構成されている。
【0020】
上記キャップ3の外周面には、雄ネジ部8が形成されていると共に、Oリング9が装着されている。また、ケース2の内周面には雌ネジ部10が形成されている。これら雄ネジ部8と雌ネジ部10とを螺合させて、Oリング9を介してケース2とキャップ3とを係合させると、ハウジング4内部が液密に保持される。このハウジング4内部では、バネ11の付勢力によって筒状体12及びケース2に設けられたケース突起部6にて、各シール材13,14を介して濾過エレメント5の上下端部がシールされる。また、上記ケース2の上部中央側には、濾過エレメント5により濾過されたオイルを内燃機関に戻すための流出口2aが形成されている。また、このケース2の流出口2aの周囲には、内燃機関から送られる汚染オイルをケース2内に流入させるための複数の流入口2bが形成されている。
【0021】
また、上記キャップ3の底部3aの中心穴には、金属製の筒状部材16がインサート成形により一体固定されている。この筒状部材16の内周側は、雌ネジ15aが形成されたドレン穴15とされている。また、上記キャップ3の底部3aの下端側にはドレン穴15を囲んでOリング等のシール部材17が装着されている。このドレン穴15には、金属製のドレンボルト20が着脱自在に装着されている。このドレンボルト20は、その外周側に雄ネジ21aが形成されたプラグ部21と、このプラグ部21の下端側に連なるフランジ部22とを有している。そして、このドレンボルト20の雄ネジ21aとドレン穴15の雌ネジ15aとを螺合させて、ドレン穴15にドレンボルト20をネジ止めすると、プラグ部21によりドレン穴15が閉塞されると共に、フランジ部22がシール部材17に圧接することによりドレン穴15が液密に保持される。
【0022】
また、上記キャップ3の底部3aの上部中央側には、ドレンパイプ33の係合部35(図3参照)が係合する円環状の係合突起部18が設けられている。この係合突起部18は、図2に示すように、ドレン穴15の内方に突出し且つケース側に向かって斜めに延びている。また、この係合突起部18は、図4に示すように、ドレン穴15の軸方向に対して傾斜して延びる内側傾斜面18aと、この内側傾斜面18aの上端側に連なりドレン穴15の軸方向に延びる第1壁面18bと、この第1壁面18bの上端側に連なり第1壁面18bに略直交する方向に延びる第2壁面18cと、この第2壁面18cの外端側に連なり内側傾斜面18aと平行な方向に延びる外側傾斜面18dと、を有している。
【0023】
次に、ドレン機構24について説明する。このドレン機構24は、図2に示すように、ドレン穴15を閉鎖するようにキャップ3の内部に設けられる皿状で金属製のバルブ部材25を備えている。このバルブ部材25は、筒状体12(図1参照)の内部で軸方向(図2中で上下方向)に移動自在に支持されると共に、バネ11によりドレン穴15を閉鎖する方向(図2中で下方向)に付勢されている。また、このバルブ部材25には、上記係合突起部18の外側傾斜面18dに当接するテーパ状の弁部26が設けられている。従って、ドレン穴15からドレンボルト20を取り外した状態であっても、バネ11により付勢されるバルブ部材25の弁部26が係合突起部18の外側傾斜面18dに当接することによってドレン穴15の閉鎖状態が維持される。
【0024】
上記バルブ部材25の弁部26の内側には、図4に示すように、テーパ状壁27を介してドレンパイプ33の先端部34を保持する保持凹部28が設けられている。この保持凹部28の平面形状は、平面形状が円環状であるドレンパイプ33の先端部34と略同径の円環状とされている。また、この保持凹部28の縦断面形状は、縦断面形状が凸弧状であるドレンパイプ33の先端部34と対応する凹弧状とされている。また、上記バルブ部材25の保持凹部28の内側には、ドレンパイプ33の先端部34が当接する平板状の当接部29が設けられている。この当接部29の外端側と保持凹部28の内端側とは縦断面凸弧状の曲面部30で連絡されている。さらに、上記バルブ部材25の当接部29の内側には、ドレン穴15に向かって突出する突出部31が設けられている。この突出部31は、ドレン穴15に向かって縮径するテーパ面31aを有している。また、この突出部31の外端側と当接部29の内端側とは、縦断面形状が凸弧状であるドレンパイプ33の先端部34と対応する縦断面凹弧状の曲面部32で連絡されている。
【0025】
上記ドレンパイプ33は、図3に示すように、樹脂製であり、ドレン穴15に挿入可能な外径の円筒状に形成されている。このドレンパイプ33の先端側外周には、外方に膨出する形状の複数(例えば、3つ)の係合部35が円周方向に沿って等ピッチ間隔(例えば、120度間隔)で設けられている。また、ドレンパイプ33の先端側の複数の係合部35の間には、ドレンパイプ33の先端から軸方向に切り込まれる複数(例えば、3つ)のスリット36が形成されている。上記各係合部35は、図4に示すように、ドレンパイプ33の軸方向に対して傾斜して延びる先端傾斜面35aと、この先端傾斜面35aの下端側に連なりドレンパイプ33の軸方向に延びる壁面35bと、この壁面35bの下端側に連なりドレンパイプ33の軸方向に対して傾斜して延びる後端傾斜面35cと、を有している。また、ドレンパイプ33の軸方向中間部の外周にはフランジ部37が設けられている。このフランジ部37の表面側には、ドレンパイプ33の係合部35がキャップ3の係合突起部18に係合したときにキャップ3の底部3aのシール部材17に圧接して係止する立ち上げ片37aが設けられている{図6(c)参照}。
【0026】
ここで、図4に示すように、上記ドレン穴15に挿入されるドレンパイプ33の係合部35の先端側である先端傾斜面35aがキャップ3の係合突起部18の後端側である内側傾斜面18aに当接した状態において、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレン穴15を閉鎖した状態のバルブ部材25の保持凹部28の開口端との間隔Aは、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間隔Bより長くされている。また、図5に示すように、キャップ3の係合突起部18の係合端である第2壁面18cとドレン穴15を閉鎖した状態のバルブ部材25の保持凹部28の保持底端との間の間隔Cは、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間の間隔Dより長くされている。
【0027】
(3)オイルフィルタの作用
次に、上記オイルフィルタ1の作用について説明する。
上記オイルフィルタ1の通常使用時には、図1に示すように、キャップ3のドレン穴15にシール部材17を介してドレンボルト20が取り付けられ、ドレン穴15はドレンボルト20及びバルブ部材25により閉鎖されている。
【0028】
一方、濾過エレメント5、Oリング9、シール部材17等の交換作業時には、先ず、図2中に仮想線で示すように、ドレン穴15からドレンボルト20を緩めて取り外す。このとき、ドレン穴15はバルブ部材25により閉鎖状態が維持されており、ハウジング4内部の残留オイルがドレン穴15から排出されない。
【0029】
次に、ドレン穴15にドレンパイプ33を挿入すると、図3に示すように、ドレンパイプ33の係合部35の先端側がキャップ3の係合突起部18の後端側に当接する。このとき、ドレンパイプ33の先端部34はバルブ部材25の保持凹部28の外方に位置しており自由端となっている。
【0030】
この状態より、ドレンパイプ33の挿入を更に進めると、図6(a)に示すように、スリット36によりドレンパイプ33が弾性変形して係合部35が係合突起部18に乗り上げる。そして、ドレンパイプ33の挿入を更に進めると、図6(b)に示すように、ドレンパイプ33が更に大きく弾性変形して、ドレンパイプ33の先端部34がバルブ部材25の当接部29及び突出部31に当接してバルブ部材25が押し上げられドレン穴15が開放される。このとき、ドレンパイプ33のスリット36及び中心穴を介してハウジング4内の残留オイルが外部に排出され始める。
【0031】
次いで、ドレンパイプ33の挿入を更に進めると、図6(c)に示すように、ドレンパイプ33の係合部35が係合突起部18を乗り越えてドレンパイプ33の弾性復元力により係合部35が係合突起部18に係合する。この係合部35及び係合突起部18の係合と略同時に、ドレンパイプ33の先端部34は保持凹部28の内部に収容保持され、ドレンパイプ33がキャップ3に固定される。そして、その固定状態のドレンパイプ33のスリット36及び中心穴を介してハウジング4内部の残留オイルが排出される。
【0032】
その後、ハウジング4内部の残留オイルの排出が完了したら、ドレンパイプ33をドレン穴15から引き抜き、ケース2に対してキャップ3を緩めて分離し、濾過エレメント5、Oリング9、シール部材17等の交換作業が行われる。なお、ドレンパイプ33の引き抜き作用は、上述したドレンパイプ33の挿入作用の略逆の手順で行われる。
【0033】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のドレン機構24では、バルブ部材25の保持凹部28の内側にドレンパイプ33の先端部34が当接する当接部29を設けると共に、ドレン穴15に挿入されるドレンパイプ33の係合部35の先端傾斜面35aがキャップ3の係合突起部18の内側傾斜面18aに当接した状態において、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレン穴15を閉鎖した状態のバルブ部材25の保持凹部28の開口端との間隔Aを、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間隔Bより長くしたので、ドレン穴15に挿入されるドレンパイプ33の先端部34を自由端として容易に弾性変形させて係合部35及び係合突起部18を係合させることができる。従って、キャップ3のドレン穴15にドレンパイプ33を比較的小さな力で容易に挿入できると共に、ドレンパイプ33を真っ直ぐに挿入して保持凹部28で確実に保持できる。なお、本実施例のドレン機構24では、従来のドレン機構(図9参照)のように、ドレンパイプ133の先端部134が保持凹部128内に収容保持された状態で、ドレンパイプ133を無理に弾性変形させて係合部135及び係合突起部118を係合させるものと比べて、ドレンパイプの挿入に必要な力を略1/3程度とすることができた。
【0034】
また、本実施例では、キャップ3に、ドレンパイプ33の係合部35が係合する係合突起部18を設けると共に、バルブ部材25に、ドレンパイプ33の先端部34を保持する保持凹部28を設け、ハウジング4内部の残留オイルを排出する際、ドレンパイプ33の係合部35をキャップ3の係合突起部18に係合させると共に、ドレンパイプ33の先端部34をバルブ部材25の保持凹部28に保持させるようにしたので、キャップ3に対してドレンパイプ33を極めて強固に保持できる。その結果、ドレンパイプに横方向の外力がかかっても傾斜、離脱等を生じ難くできる。
【0035】
また、本実施例では、ドレン穴15に挿入されるドレンパイプ33の係合部35の先端傾斜面35aがキャップ3の係合突起部18の内側傾斜面18aに当接した状態において、キャップ3の係合突起部18の第2壁面18cとドレン穴15を閉鎖した状態のバルブ部材25の保持凹部28の保持底端との間の間隔Cを、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間の間隔Dより長くしたので、上記間隔Cを上記間隔Dより短く設定してなるものに比べて、バルブ部材25の変位量を必要最小限に抑えることができ、ドレンパイプ33の挿入に必要な力をより小さくできる。
【0036】
また、本実施例では、バルブ部材25の当接部29の内側に、ドレン穴15に向かって縮径して突出する突出部31を設けたので、ドレンパイプ33によりバルブ部材25を変位させる際に、ドレンパイプ33の先端部34がバルブ部材25の当接部29に当接されると共に突出部31に支持され、ドレンパイプ33をより真っ直ぐに挿入できる。また、ドレン穴15に対してドレンパイプ33を斜めに挿入した場合でも、ドレンパイプ33の先端部34が突出部31のテーパ面31aに案内され、ドレンパイプ33の先端部34を当接部29に適正な位置で当接させることができる。
【0037】
また、本実施例では、突出部31の外端側と当接部29の内端側とを、縦断面形状が凸弧状であるドレンパイプ33の先端部34と対応する縦断面凹弧状の曲面部32で連絡するようにしたので、ドレンパイプ33の先端部34を当接部29及び突出部31で更に確実に支持でき、バルブ部材25をより真っ直ぐに押し上げることができる。
【0038】
さらに、本実施例では、当接部29の外端側と保持凹部28の内端側とを縦断面凸弧状の曲面部30で連絡するようにしたので、ドレンパイプ33の先端部34が曲面部30を介して当接部29から保持凹部28へ円滑に移動され、ドレンパイプ33の先端部34を保持凹部28内により確実に保持させることができる。
【0039】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、ドレンパイプ33の係合部35がキャップ3の係合突起部18に係合した状態において、キャップ3の係合突起部18とバルブ部材25の保持凹部28との間の間隔Cを、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間の間隔Dより長くした形態を例示したが、これに限定されず、例えば、キャップ3の係合突起部18とバルブ部材25の保持凹部28との間の間隔Cを、係合部35及び係合突起部18の当接先端とドレンパイプ33の先端との間の間隔Dより短くした形態としてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、バルブ部材25として、当接部29の内側に突出部31を設けてなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、突出部31を設けずに円板状の当接部29を有するバルブ部材としてもよい。
【0041】
さらに、上記実施例では、キャップ3の係合突起部18に、バルブ部材25の弁座としての機能を持たせるようにしたが、これに限定されず、例えば、バルブ部材25の弁座としての機能を係合突起部18とは別の部位に持たせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
流体を濾過するフィルタの内部残留流体を排出する技術として広く利用される。特に、内燃機関で使用されるエレメント交換型のオイルフィルタの内部残留オイルを排出する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例に係るオイルフィルタの縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】実施例に係るドレン機構を説明するための説明図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】ドレン機構の作用を説明するための説明図であり、(a)はドレンパイプの係合部がキャップの係合突起部に乗り上げた状態を示し、(b)はドレンパイプの先端部でバルブ部材を押し上げた状態を示し、(c)はドレンパイプの先端部がバルブ部材の保持凹部に保持された状態を示す。
【図7】従来のドレン機構の拡大断面図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】従来のドレン機構の作用を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1;オイルフィルタ、2;ケース、3;キャップ、15;ドレン穴、18;係合突起部、24;ドレン機構、25;バルブ部材、28;保持凹部、29;当接部、30;曲面部、31;突出部、33;ドレンパイプ、34;先端部、35;係合部、A,B;間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体フィルタのケースに着脱自在に装着され、且つ、ドレン穴が形成され、更に、該ドレン穴に挿入されるドレンパイプの係合部が係合する係合突起部を有するキャップと、
前記ドレン穴を閉鎖するように前記キャップの内部に設けられ、且つ、前記ドレン穴に挿入される前記ドレンパイプの先端部との接触により該ドレン穴の閉鎖を解除する方向に変位されるバルブ部材と、を備え、
前記バルブ部材には、前記ドレンパイプの先端部を保持する保持凹部が設けられており、該バルブ部材の該保持凹部の内側には、前記ドレンパイプの先端部が当接する当接部が設けられており、
前記ドレン穴に挿入される前記ドレンパイプの前記係合部の先端側が前記キャップの前記係合突起部の後端側に当接した状態において、該係合部及び該係合突起部の当接先端と前記ドレン穴を閉鎖した状態の前記バルブ部材の前記保持凹部の開口端との間隔(A)は、該係合部及び該係合突起部の当接先端と前記ドレンパイプの先端との間隔(B)より長くされていることを特徴とする流体フィルタのドレン機構。
【請求項2】
前記バルブ部材の前記当接部の内側には、前記ドレン穴に向かって突出する突出部が設けられている請求項1記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項3】
前記当接部の外端側と前記保持凹部の内端側とは曲面部で連絡されている請求項1又は2に記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドレン機構を備えることを特徴とする流体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−197663(P2009−197663A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39426(P2008−39426)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】