ナチュラルキラーp30(NKp30)機能障害及びその生物学的用途
本発明は、被験者における好ましくない、又は逆に、好ましい癌の予後を評価する方法に関し、その方法が、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常な相対量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常なナチュラルキラーp30(NKp30)発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、突然変異したNCR3核酸、異常な相対量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現もしくは活性の存在は、被験者における癌の予後を示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、遺伝学、免疫学、及び医薬の分野に関する。本発明者らは、特に、被験者において癌の予後を決定するために使用することができるヒト遺伝子の同定、任意の処置前での癌の処置に対する被験者の感受性、又は所定の期間後での癌の処置の有効性を開示する。ヒト遺伝子を、さらに、癌の予防又は処置において、ならびに治療活性薬物のスクリーニングのために使用してよい。
本開示は、より具体的には、特に異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は少なくとも1つの異常なNKp30受容体(NKp30タンパク質)アイソフォームの発現又は活性をもたらす変化したNCR3又はNKp30の遺伝子発現に関与する変化した又は異常な細胞傷害誘発受容体3(NCR3)遺伝子に関し、前記の異常な遺伝子、転写物アイソフォーム、及びタンパク質アイソフォームが治療介入のための新規標的を表わす。
【0002】
背景
癌と効率的に戦うことは、腫瘍細胞を直接標的とする、又は、細胞に対する宿主防衛を高める医薬的化合物に依存する。いくつかの抗癌治療が提示されており、とりわけ特徴的なのは、化学療法[アントラサイクリン、例えばドキシサイクリン(DOX)、オキサリプラチン(oxali−platinum)(本明細書においてPLATと呼ぶ)及びシスプラチン(本明細書においてPLATと呼ぶ)、ならびにチロシンキナーゼ阻害剤などが腫瘍学者の武器である最も効率的な細胞毒性薬剤であると考えられている]及び放射線療法[X線(XR)]であるが、前記処置の利益は依然として不十分な傾向がある。上記治療が抗癌治療の70%までの基礎を表わすため、処置に対する低下反応に関与する機能障害の検出が、患者管理のために不可欠であるように思われる。
腫瘍の治療耐性という出現する問題は、第一に、腫瘍での処置の有効性、そして、第二に、腫瘍細胞の根絶における免疫宿主系の有効性を考慮する重要性を強調する。本発明者らは、本明細書において、内因性(免疫)腫瘍抑制機構が、癌処置により誘導される外因性腫瘍抑制機構と相乗的に作用すること、及び、免疫反応に関与する遺伝子中の突然変異がこれらの外因性腫瘍抑制機構に影響を与えることを実証する。遺伝子の突然変異及び転写状態は、癌処置に対する臨床反応を予測する新たな因子を構成する。
【0003】
消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の最もよく見られる間葉性腫瘍である1。GISTは、カハールの間質細胞、腸ペースメーカー細胞の腫瘍性形質転換に起因すると考えられる。GISTの真の発生率は未知のままであるが、しかし、臨床試験からの経験によって米国における1年当たり4500〜6000の新症例の発生率が示唆される2。診断時の年齢中央値は約58歳である。
歴史的には、GISTは、3つの従来の癌治療モダリティーにより標的にされてきた:外科手術、化学療法、及び放射線療法。外科手術は、切除可能な疾患を伴う患者に有効であるが、しかし、疾患は50%もの個人において再発しうる。化学療法及び放射線療法ではほとんど有効性が示されていない3。大きな進展が、GISTにおけるKITオンコジーン中の「機能獲得」突然変異の発見と共に1998年に起きた4。KITは膜貫通KIT受容体チロシンキナーゼ(CD117)をコードし、それは、そのリガンドによる結合を介して活性化される場合、細胞内情報伝達プロセスを調節する。突然変異による構成的なチロシンキナーゼの活性化は、無調節な細胞増殖及び悪性形質転換をもたらす。GISTの90%超が、活性化KIT突然変異を持つ5。これらの突然変異は、共通して、症例の57〜71%においてエクソン11(膜近傍ドメイン)、症例の10〜18%においてエクソン9(細胞外ドメイン)、症例の1〜4%においてエクソン13(チロシンキナーゼドメインI)、及び症例の1〜4%においてエクソン17(チロシンキナーゼドメインII)において起こる1。KIT突然変異を欠くGISTの約35%が、関連する受容体チロシンキナーゼ、小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)をコードする遺伝子において活性化突然変異を有する6。PDGFRA突然変異は、エクソン12(GISTの1〜2%)、エクソン18(2〜6%)、及びエクソン14(<1%)において同定されている7。KIT及びPDGFRA突然変異の同定は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を用いた特異的な標的治療の開発を導いた。TKIイマチニブメシレート(STI571、Gleevec-Novartis)及びスニチニブマレート(SU11248、Sutent-Pfizer)を用いた治療は、切除不可能な転移性及び再発性疾患に有効である8。イマチニブは、KIT、PDGFRA、及びABLを含むいくつかのチロシンキナーゼを選択的に阻害する。第II相イマチニブ試験からのデータによって、KITの突然変異状態がイマチニブに対する臨床反応を予測する最も重要な因子であることが明らかになった8。イマチニブを受けたエクソン11KIT突然変異体を発現するGISTを伴う患者は、実質的により高い部分反応率、より長い生存期間中央値、及び野生型又はエクソン9KIT突然変異体を発現するGISTを伴う患者よりも進行するより低い可能性を有した。イマチニブは劇的に有効な薬剤であるが、しかし、その利益の持続時間は有限である。第2の標的チロシンキナーゼ阻害剤であるスニチニブマレートは、近年の励みになる結果の後に、イマチニブ耐性GISTの処置のために承認されている9。しかし、前に説明された通り、薬物耐性はますますよく見られる現象である10。
【0004】
小児における全ての癌関連死亡の15%に関与し、神経芽細胞腫は、小児集団に影響を与える、最もよく見られる頭蓋外悪性腫瘍であり、そして2番目に最もよく見られる充実性腫瘍である11。末梢交感神経系のこの癌は、提示のその二又パターンのために周知である。小児の約半分が、外科手術単独で治癒することができる局在化腫瘍を有する。肝臓、皮膚、リンパ節、又は骨髄を含む疾患を示す年齢1歳未満の小児の小さな部分集合は、それらの疾患の範囲にも関わらず良好な予後を有する。残りの小児は、広範囲にわたる転移性疾患又は非常に大きい、侵襲性の局在化腫瘍を有する。これらの小児は、約30%の不良な長期生存率を有する。神経芽細胞腫を伴う小児を処置する課題は、低リスク疾患を伴う患者での過剰処置を回避しながら、高リスク患者の生存率を増加させることである。神経芽細胞腫における転帰の標準的な予後指標は、年齢、病期、及び組織病理である。追加の染色体マーカー及び分子マーカーが存在し、リスク群割り当て及び転帰予測の正確性が改善し始めている12。
【0005】
抗腫瘍反応の役者の内、ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞標的を直ぐに殺し、そしてサイトカイン、例えばTNFα及びIFNγなどを産生する強力な能力によって腫瘍に対する先天的防御を提供する13。
【0006】
NK細胞は、マウスにおいて転移性腫瘍の播種を予防することにより腫瘍増殖を制御する14。ヒト悪性腫瘍におけるNK細胞の関連性は、Nature Immunolのために書かれた最近のPerspectiveにおいて本発明者らにより考察されている15。本発明者らにより得られた最近発表されたデータによって、GIST患者において、GIST腫瘍が、イマチニブメシレート(IM)を用いた代表的標準治療の間にNK細胞により制御されうることが確立された。実際に、IMはc−kit依存性DC/NK細胞クロストークを促進し、マウス及びヒトの両方においてNK細胞のIFNγ産生に導くことができる16。重要なことには、2ヶ月のIM後でのNK細胞のIFNγ産生が、IMで処置された進行性GISTにおける長期生存の独立予測因子を表した17。精製NK細胞でのそのような増強されたIFNγ産生が、成熟DCを用いた短期間のエクスビボでの再刺激後に達成され、「免疫学的レスポンダー」からのNK細胞がGIST発生の間にインビボで予備刺激されていたことを示唆する18、19。ヒトの癌に対するそれらの有効な役割に関する進行中の疑問にも関わらず、NK活性化又はサイトカイン受容体の生理学的連結及び/又は阻害受容体の遮断は、NK細胞の増殖、輸送、細胞傷害性、ケモカイン及びサイトカインの産生、ならびに血液学的悪性腫瘍及び一部の充実性腫瘍を抑えるために利用することができる樹状細胞誘発をもたらしうる。
【0007】
ヒトの主要組織適合複合体(MHC)は、高密度の多型遺伝子により特徴付けられた、染色体領域6p21.3内に約4メガベースのDNAを包含する20、21。クラスIII MHCのテロメア末端は、クラスIV領域と指定されている。なぜなら、それが、炎症機能をコードする遺伝子、例えば腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバー、同種移植炎症因子1(AIF1)、ヒートショック70kDaタンパク質1B(HSPA1B)、リンホトキシン−α LTA)及び−β(LTB)、HLA−B関連転写物3(BAT3)、白血球特異的転写物1(LST1)、ならびに細胞傷害誘発受容体3(NCR3/1C7/CD337/NKp30)などを含むからである22(図1を参照のこと)。NCR3遺伝子は、いくつかのmRNAスプライスバリアントに転写され、その大部分が免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面分子に翻訳される23−25。NCR3遺伝子産物の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を生成することにより、Morettaのグループは、NCR3遺伝子産物の細胞分布を定義し、腫瘍細胞及び樹状細胞の殺傷に関与する新規NK細胞受容体としてNKp30を特徴付けることに成功した26、27。それは、NKp44、NKp46、及びNKp80も含むいわゆる細胞傷害受容体(NCR)の一部である28。NK細胞中でのその発現を超えて、NKp30を、IL−15刺激された臍帯Tリンパ球29及び子宮内膜上皮細胞30の表面上に暴露させることができる。しかし、成人の抹消血においては、循環NKp30発現細胞だけがNK細胞である。NKp46とは対照的に、NKp30のマウスオルソログは偽遺伝子(ハツカネズミ(Mus musculus)において、しかし、Mus caroliではない)であり25、31、32、NKp30の探索のための適したマウスモデルがないことを意味する。しかし、ラットは、NKp30に対するオルソログタンパク質をコードする遺伝子NCR3を発現し33、転写物がマカク(M. fascicularis)において検出される32。
【0008】
ヒトNKp30は、2つの推定N−グリコシル化部位を含む細胞外可変型Ig様ドメインを伴う190のアミノ酸の膜貫通タンパク質である26。3つの選択的スプライシングは、それらがいずれの特定のエクソン4を利用するかに依存して、3つの異なる細胞内ドメイン(36、25、及び12のアミノ酸を有する)を産生することができる24。追加の選択的スプライシングは、細胞外ドメインにおける25AAの欠失を誘導し、可変型Ig様ドメインの代わりに、予測される定常型Ig様ドメインの形成に導くことができる24、32。NK細胞の細胞表面での複数の形態のNKp30の存在を受けて、NKp30に対するポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロットによって、恐らくはグリコシル化における差に、しかし、また、最終的には代替タンパク質コアに対応する約10kDの広いバンドが明らかになる26。これらの代替形態のNKp30が記載されたが、この観察の機能的関連性はまだ明らかではない。
【0009】
腫瘍環境におけるNKp30の役割に関して、NKp30は、種々の腫瘍(癌腫、神経芽細胞腫、骨髄及びリンパ芽球性白血病を含む)のインビトロでの溶解及びまた種々の細胞株の溶解に関与してきた26、34、35。NKp30は、免疫反応(標的を攻撃する)のエフェクター段階だけでなく、同種免疫の予備刺激段階でも要である。実際に、NKp30は、DC細胞及びNK細胞の間のクロストークを調節している。本発明者らはマウスにおいてNK細胞活性化を誘発するDCの能力を記載した最初であり36、そして続く研究によってこれらの細胞型の間での双方向性の調節が明確に確立された27、37、38。DC/NK比率及びNK細胞側でのKIR/NKG2A発現に依存して、活性化NK細胞が未熟DCの活性化を弱める又は促進しうる。両方の場合において、NKp30がNK細胞によるDCの認識に直接的に関与する。後者の場合において(活性化NK細胞が未熟DCを活性化する場合)、NKp30誘発がNK細胞によるTNFα及びIFNγの放出を導き、両方のサイトカインがDC成熟プロセスに参加する39。故に、DC/NK細胞のクロストークが、Th1分化を調節するために不可欠であるように思われる40、41。従って、NKp30誘発は、リンパ節における適応免疫反応のマスターレギュレーターを表わしうる。
【0010】
最近の試験によって、ヒトのマラリア感染におけるNKp30の役割が実証されている42、43。結果は、NKp30が、NK細胞−熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が寄生した赤血球細胞の相互作用に関与することを示唆する42。この相互作用は、直接的、特異的、及び機能的であり、パーフォリン産生及びグランザイムB放出に導く。さらに、関連性が、軽度マラリアとNCR3プロモーター内に位置付けられる突然変異の間で実証されている(NCR3−412 G/C − rs2736191)43。これは、NKp30における遺伝的変異が熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球に対するヒトNK細胞の反応性の不均一性を説明しうることを示唆する44。
【0011】
NKp30が、標的細胞(腫瘍細胞又は樹状細胞)の細胞膜上の硫酸ヘパリン残基を識別しうることが示唆されている45。しかし、これらの結果は、Warren et al.により批判された46。Angel Porgadorのグループは、これらの試験において使用された種々のNKp30Fc組換えタンパク質を比較することによりこの論争に決着をつけようと試みた。彼らの知見は、Fcタンパク質上でのグリコシル化がNKp30リガンドの認識において重要であることであり、及び、彼らは、硫酸ヘパリンがインビトロアッセイにおいて組換えNKp30に結合するとの彼らの最初の知見を確認している47。Pogge et al.は、白血球抗原−B−関連転写物3(BAT3)が腫瘍細胞により放出され、そしてNKp30と会合すると主張している48。Byrd et al.は、NKp30リガンドが大半の細胞株において細胞内で、恐らくは、初期エンドソームコンパートメントにおいて発現することを実証した49。
【0012】
要約すると、強い証拠が、特に腫瘍環境及びインビボモデルにおけるNKp30リガンドの厳密な性質に関して欠けている。
【0013】
要約
本明細書において開示する第1の目的は、被験者において癌の予後を評価する方法にあり、この方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を、被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は、前記被験者における癌の好ましくない予後を示している。
【0014】
被験者において癌の予後を評価する特定の方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、(相対)量のNKP30 RNA転写物及び/又はタンパク質アイソフォーム、特に中間、短い、及び/又は長いNKp30アイソフォームを測定することを含み、そのような量は、癌の経過を示しており、前記被験者における癌の予後の評価を可能にする。
【0015】
本明細書において開示する別の目的は、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を評価する方法にあり、特にインビトロ又はエクスビボで、(相対)量のNKP30 RNA転写物及び/又はタンパク質アイソフォーム、特に中間、短い、及び/又は長いNKp30アイソフォームを測定することを含み、そのような量は、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を示している。
【0016】
異常なNKp30タンパク質発現は、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)タンパク質アイソフォーム、好ましくは中間NKp30タンパク質アイソフォームの結果でありうるが、前記アイソフォームは定常又は可変Ig様ドメインを有する。
【0017】
特定の実施態様において、検出量もしくは測定量、発現又は活性を、それぞれ、コントロール条件もしくは参照値もしくは平均値、又はコントロールサンプルにおいて検出又は測定されたものと比較する。
【0018】
上に記載する方法の特定の実施態様に従い、決定されたアイソフォーム相対量は、短い/中間NKp30アイソフォーム相対量、短い/長いNKp30アイソフォーム相対量、中間/長いNKp30アイソフォーム相対量、及び短い/中間/長いNKp30アイソフォーム相対量からなる群よりを選択されうる。
本明細書において提供される結果により明らかにされる通り(実験セクションのパートBを参照のこと)、NKp30中間アイソフォームの量の(相対的)増加及び/又はNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの量における減少が、被験者のサンプルにおいて測定され、被験者(本明細書において「プロファイルB」として特定される群に含まれる被験者)における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
特に、NKp30中間アイソフォームの(相対的)増加ならびにNKp30の短い及び長いアイソフォームにおける減少は、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
逆に、NKp30中間アイソフォームの(相対的)減少ならびにNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームにおける増加が、被験者(本明細書において「プロファイルA」として特定される群に含まれる被験者)における癌の好ましい予後又は癌の処置に対する被験者のポジティブな反応を示している。
【0019】
機能的NKp30発現は、典型的には、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルに関連しており、被験者において、参照値又は平均値と比較した場合、NKp30中間アイソフォームの相対的な発現又は量が減少しており、そしてNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの相対的な発現又は量が増加していることが、本発明者らにより実際に本明細書において実証されている。
特定の実施態様において、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルは、NKp30中間アイソフォームの(相対)量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対)量よりも低いプロファイルである。
【0020】
これは、そのような保護的なNKp30プロファイルを示す被験者が、異常なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイル、特にNKp30中間アイソフォームの相対量が、参照値もしくは平均値、又はNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対)量よりも高いプロファイルを示す被験者よりも、癌の致死的進化に対するより高い自然保護の利益を得ることを意味する。
【0021】
NCR3遺伝子及び発現産物における特定の突然変異が本明細書においてさらに記載される。これらの突然変異は、被験者における癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性、又は、被験者において、癌の処置の有効性を評価する方法において使用可能である。前記突然変異を含む対立遺伝子は、治療介入のための新規標的を表す。
【0022】
一実施態様において、本記載は、このように、被験者において癌の予後を評価する方法を提供し、この方法は、被験者からのサンプルにおいて、突然変異したNCR3核酸、異常なNKp30の発現アイソフォームプロファイル又は状態、特に異常なNKp30 RNA転写物の発現アイソフォームプロファイル又は状態、又は異常なNKp30タンパク質のアイソフォーム発現もしくは活性の存在を検出することを含む。
【0023】
被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)の置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)より選択されるSNPを含む、突然変異したNCR3配列の存在の、被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
【0024】
さらなる実施態様において、本記載は、被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する方法を提供し、この方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)の置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPを含む、突然変異したNCR3核酸配列の存在の検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、実験セクションのパートBにおいて明らかにする通り、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の好ましくないネガティブな反応を示している。
【0025】
本願は、さらに以下の使用を記載する:
− 被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、(i)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物、(ii)(a)機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム及び/又は(iii)(a)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、機能的なNKp30 RNA転写を回復することが可能である化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、樹状細胞(DC)の成熟に導く化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、NK細胞の活性化に導く化合物又は物質;
及び、処置の対応する方法。
【0026】
この記載は、さらに、上で定義する有効量の化合物を被験者に投与することを含む、それを必要とする被験者において癌を処置又は予防する方法を提供する。
好ましい実施態様において、被験者は、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する。
【0027】
特定の実施態様において、それを必要とする被験者において癌を処置又は予防する方法は、NCR3転写(選択的スプライシング)の調節及び/又は特に少なくとも1つの機能的NKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性、好ましくはNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの調節、特に活性化を含む。
【0028】
特に、異常なNCR3遺伝子、特にNCR3遺伝子の突然変異した対立遺伝子を持つ被験者を処置する方法(その方法では併用治療を用いることを含む)を本明細書において提供する。被険者は、このように、例えば、遺伝子治療、タンパク質置換治療を通じて、又は、NKp30タンパク質模倣剤、アクチベーター及び/又は阻害剤(上で定義するものなど)の投与を通じて処置してよい。前記方法の少なくとも1つは、例えば、癌治療、例えば、アルキル化剤の投与を意味する化学療法、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)の投与を意味する治療、PKC阻害剤(例えばGo6983など)50の投与を意味する治療、又は放射線療法などと組み合わせてよい。
【0029】
癌を予防又は処置するために有用な化合物をスクリーニングするためのインビトロでの方法も記載されている。特定の方法は、試験化合物又は物質が、NCR3の発現、又はNKp30、好ましくは特定のNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォーム、又は特定のNKp30アイソフォームの発現又は活性を調節する能力を決定することを含む。別の特定の方法は、試験化合物又は物質が、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで、NKp30のリガンド、好ましくは特定のNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォーム、又は特定のNKp30アイソフォームの発現又は活性を模倣、誘導、増加、もしくは刺激する、又は逆に、減少させる能力を決定することを含む。
【0030】
この記載は、さらに、特定の実施態様において、以下を提供する:
− 特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの(特異的)増幅を可能にする、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする核酸プライマー;
− 特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームと(特異的に)ハイブリダイズする、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする核酸プローブ;
− 特定のアイソフォームのNKp30タンパク質に(特異的に)結合する、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする抗体(その派生物及び前記抗体を産生するハイブリドーマを含む)。
【0031】
この記載は、また、上で定義する、プライマー、プローブ、及び/又は抗体を含むキットを提供する。そのようなキットは、増幅、ハイブリダイゼーション、又は結合反応を実施するための容器もしくはサポート、及び/又は試薬を含みうる。
【0032】
本発明の特定の局面は、プライマー、プローブ、及び/又は抗体を含む物質の組成物にあり、それらは、可変Ig様細胞外ドメイン又は定常Ig様細胞外ドメインを有する短い、中間の、及び長いNKp30アイソフォームからなる群より選択される少なくとも1つのアイソフォームを特異的に検出するようにデザインされている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】NCR3遺伝子の局在化及び構造;NCR3:ナチュラル細胞傷害誘発受容体3;LST1:白血球特異的転写物1;LTB:リンホトキシンβ;TNF:腫瘍壊死因子;LTA:リンホトキシンα;UTR:非翻訳領域;SNP:一塩基多型
【図2】NKP30受容体の6つの選択的スプライシング形態
【図3】GIST患者及び健常ボランティアにおけるNKP30アイソフォームの割合の比較(実験セクションのパートA):(A)6つのアイソフォームの割合を、41人のGIST患者(P)と37人の健常ボランティア(HV)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアの間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図4】処置の経過中での4人のGIST患者におけるNKp30転写プロファイルの個人内安定性の表示;6つのアイソフォームの割合を、4人のGIST患者におけるGLEEVEC[イマチニブメシレート(STI571)]処置の経過中に比較し、NKP30転写プロファイルの個人内安定性を評価した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。各患者について、括弧中の数字は処置後時間(ヶ月)を表す。
【図5】NKp30転写プロファイルのクラスタリングによるGIST患者と健常ボランティアの識別(実験セクションのパートA);教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは患者(P)又は健常ボランティア(HV)を表す。括弧中の数字は、再発までの時間(ヶ月)を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。
【図6】41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアのクラスタリングにより得られたA群及びB群におけるNKp30転写プロファイルの特性付け(実験セクションのパートA);6つのアイソフォームの割合を、GIST患者(A)及び健常ボランティア(C)においてA群(好ましいNKp30プロファイル)とB群(好ましくないNKp30プロファイル)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。SHORT−、INTER−、及びLONGテールアイソフォームの割合を、GIST患者(B)及び健常ボランティア(D)においてA群とB群の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図7】37人の健常ボランティア(HV)及び41人のGIST患者(P)におけるINTER高/SHORT低/LONG低のA群とINTER低/SHORT高/LONG高のB群の間でのNKp30表面発現の比較(実験セクションのパートA);NK細胞を、CD3−APC(クローンUCHT)、NKp30−PE(クローンAF29−4D12)、CD56−PC5(クローンN901)を用いて免疫染色した。細胞表面分析を、FACScaliburサイトメーター及びCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用したフローサイトメトリーを通じて実施した。
【図8】INTER高/SHORT低/LONG低のA群及びINTER低/SHORT高/LONG高のB群におけるNK細胞(NKp30架橋±IL−2後)からのIFNgの産生(実験セクションのパートA);(A)IFNgの産生を、A群及びB群における健常ボランティア(HV)及びGIST患者(P)の刺激されたNK細胞からの上清におけるELISAにより評価した。NK細胞を、NKp30(2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30)の架橋により20時間刺激した。有意差は、各群内のHVとPの間で検出されなかった。(B)HV及びPを一緒に考慮したA群及びB群におけるNKP30架橋後のIFNg産生の表示。(C)IFNgの産生を、20時間にわたるNKp30及びIL−2の架橋によるHV及びP(1000UI/ml)の刺激されたNK細胞からの上清におけるELISAにより評価した。有意差は、各群内のHVとPの間で検出されなかった。(D)HV及びPを一緒に考慮したA群及びB群におけるNKP30架橋+IL−2後のIFNg産生の表示。バーは中央値を表す。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。**:P<0.01
【図9】INTER高/SHORT低/LONG低のA群及びINTER低/SHORT高/LONG高のB群におけるNCR3*3571及びNCR3*3790候補突然変異の頻度(実験セクションのパートA);(A)B群のNKp30転写プロファイルは、非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異に関連する(Bにおける13%対Aにおける0%)。(B)A群のNKp30転写プロファイルは、NCR3遺伝子の3’非翻訳領域に局在化されるNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異に関連する(Aにおける58%対Bにおける3%)。
【図10】NCR3ヌクレオチド配列におけるNCR3*3571及びNCR3*3790候補突然変異の局在化;エクソン配列はボールド体である。終止コドン及びポリアデニル化部位がインフレームになっている。INTERアイソフォームの転写は、第1のポリアデニル化部位に依存する。SHORT及びLONGアイソフォームの転写は、第2のポリアデニル化部位に依存する。非同義のNCR3*3571突然変異は、LONGアイソフォームの細胞内ドメイン(エクソン4III)に局在化される。NCR3*3790突然変異は、第2のポリアデニル化部位に局在化される。NCR3*3790 C対立遺伝子はポリアデニル化部位を破壊し、SHORT及びLONGアイソフォームの転写を遮断する。ECドメイン:細胞外ドメイン;TMドメイン:膜貫通ドメイン;ICドメイン:細胞内ドメイン;3’UTR:3’非翻訳領域。
【図11】良好な又は不良な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者におけるNKP30アイソフォームの割合の比較(実験セクションのパートA);(A)6つのアイソフォームの割合を、良好な臨床予後を伴う7人の神経芽細胞腫患者と不良な臨床予後を伴う12人の神経芽細胞腫患者の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、良好な臨床予後を伴う7人の神経芽細胞腫患者と不良な臨床予後を伴う12人の神経芽細胞腫患者の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。
【図12】NKp30転写プロファイルのクラスタリングによる良好な及び不良な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者の識別(実験セクションのパートA);教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは良好な臨床予後(GP)又は不良な臨床予後(BP)を伴う神経芽細胞腫患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。
【図13】19人の神経芽細胞腫患者のクラスタリングにより得られた1群及び2群におけるNKp30転写プロファイルの特性付け(実験セクションのパートA);(A)6つのアイソフォームの割合を、神経芽細胞腫患者において1群(好ましくないNKp30プロファイル)と2群(好ましいNKp30プロファイル)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、神経芽細胞腫患者において1群と2群の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図14】ヒストンデアセチラーゼ阻害剤及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を用いたNCR3遺伝子の選択的スプライシングの調節(実験セクションのパートA);NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォーム(SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォーム)のWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(A)YTS細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、トリコスタチンA(100nM)(TSA)と37℃で45時間インキュベートした。(B)NK92細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、5−アザシチジン(2μM)(5AZA)及びIL−2(50UI/ml)と37℃で36時間インキュベートした。
【図15】ベクターにおけるNKp30エクソン4I、エクソン4II、及びエクソン4IIIの発現クローニングのスキーム;NK92細胞株のNCR3遺伝子に由来する3つのcDNA NKp30a(LONG)(エクソン4III)、NKp30b(SHORT)(エクソン4II)、及びNKp30c(INTERMEDIATE)(エクソン4I)をpIRESバイシストロニック発現ベクター中にクローニングする。
【図16】細胞株におけるNKp30a、b、又はcアイソフォームの発現;Jurkat(A)及びNKL細胞株(B)を、NKp30a、b、又はcの種々のアイソフォームをコードするプラスミドcDNAを用いて、又はGFPと共にトランスフェクトした。G418中での3週間の選択後、細胞株をフローサイトメトリーによりGFP及びNKp30発現について調べた。代表的なドットプロットをJurkat(A)及びNKL(B)について描写する。
【図17】G418選択前後でのトランスフェクトされたNKL細胞株の表現型分析;別々のNKp30アイソフォームをコードするcDNAを用いて安定的にトランスフェクトされたNKL細胞株上の異なるNK細胞受容体のフローサイトメトリー分析。有意差は観察されなかった。
【図18】NKp30cアイソフォームは、NKp30誘発時にサイトカイン分泌を媒介しない;PMA−イオノマイシンを伴う(A)もしくは伴わない(B)で、固定化したマウスIgG2a抗NKp30 Ab(クローン210847、2.5ug/ml)又はコントロールIgG(5ng/mL、0.1μg/mL)を使用し、全て3つのトランスフェクトされたJurkat(A)又はNKL(B)を架橋した。また、トランスフェクトされたNKLを、未熟DC(比率DC:NKL 1:3)(C)、又は種々の腫瘍細胞株(比率1:1)(D)を用いて24時間刺激した。グラフは3つからの代表的な実験を描写し、上清中のIL−2(A)又はIFNγ(B、C、D)又はTNFα(C)分泌レベルをモニターしている。実験を、3つの異なるDCドナー(C)を使用して、3回(A、B、D)及び5回実施し、同一の結果を得た。*p<0.05
【図19】NKp30a(LONG)アイソフォームは、NKLの脱顆粒を選択的に誘導する;7時間のNKp30架橋後での全ての3つのNKLトランスフェクタント上でのCD107a発現を示す(A)。抗NKp30 mAb(B)又はK562(C)でコーティングされたP815に対する3つのNKp30トランスフェクトされたNKL細胞傷害を、標準的な4時間クロム放出アッセイにおいて実施した。実験を、種々のエフェクター対標的(E:T)比率(50:1、25:1、12.5:1、5:1)(C)及び50:1(B)で3重で行った。3つからの代表的な実験を描写する。*p<0.05
【図20】80人のGIST患者のコホートにおけるNKp30アイソフォームの発現;(A)GISTのコホートにおける3つの別々のアイソフォームに基づくNKp30プロファイルのクラスタリング。3つのNKp30アイソフォームの割合に基づくNKp30プロファイルをRT−PCR(β2ミクログロブリンで標準化)により実施し、NKp30プロファイルの教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン中央相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。(B)GISTとHVの間でのNKp30の各アイソフォームの異なる割合。80人のGISTについて(A)において提示されるデータを、2群(プロファイルA対プロファイルB GIST)における別々のアイソフォームの割合としてグラフ中に描写し、そしてn=56のHVのコホートを用いて得られた結果と比較する。(C)プロファイルAとBは、フローサイトメトリーにおいて検出されたNKp30発現において差がない。新鮮なNK細胞を、IM治療中にNKp30アイソフォームの転写分析の時点で調べた。2群間に有意差を見いだすことはできなかった。*p<0.05. ns:非有意
【図21】バルクPBMC及び精製NK細胞において得られたNKp30の転写プロファイリングの比較。NKp30の各々の個々のスプライスバリアントの相対発現のRT−PCRにおける決定を、プロファイルA(A)を伴う11のGIST及びプロファイルB(B)を伴う9のGISTで、図20A及び20Bに記載される手順に従い、フィコール後のPBMC又は精製NK細胞から抽出されたcDNAから開始して実施した。有意差(ns)は、PBMC及びNKからのNKp30プロファイルの間で観察されなかった。
【図22】プロファイルBの個人が、プロファイルAホモログと比較し、NKp30依存的な機能的欠損を示す。(A)GISTと一致されたHVの間での3つの別々のアイソフォームに基づくNKp30プロファイルのクラスタリング。図20aと同一の設定であるが、しかし、HV由来のNK細胞からのNKp30を、56の性別、年齢、及び地理を一致させたHVにおいて調べた。(B−C)プロファイルBは、個人の全コホートにおけるNKp30依存的なTNFα産生の欠損に関連する。n=56のHV及びn=80のGISTからの循環NK細胞でのNKp30の架橋は、24時間目にELISAにおいて測定されたサイトカイン産生をもたらした。TNFα放出を、教師なしの階層的クラスタリングに従い、プロファイルA又はBに分類される個人((B)におけるGIST+HV、(C)におけるGIST)の間で比較した(図20A)。(D)プロファイルBは、NKp30依存的なNK細胞の脱顆粒における欠損を示す。(B−C)と同一であるが、しかし、CD107a発現を、固定化された抗NKp30及び1000IU/mlのrhIL−2の存在において分析した。全ての実験を3重で実施し、2回は、2つの異なる時点での個人の大半についてであった。 *p<0.05. ns:非有意
【図23】NKp30アイソフォームがGIST患者の生存を決定する。(A)プロファイルA(n=44)対B(n=36)のGIST患者における最初のイマチニブメシレート(IM)処置からの全生存。カプラン・マイアー方法を使用した単変量解析において、プロファイルBの患者(図20Aにおいて定義される)が、劣った全生存を有することが見出された(生存の中央値:プロファイルBにおける80ヶ月対プロファイルAにおいて中央値に達せず、ログランク検定:p=0.001)。コックス回帰分析において、プロファイルBのGISTが、13.1に等しい死の相対リスクを有した(95% CI[4.9−36.1]、p=0.01)。(B)フローサイトメトリーにおけるNKp30膜発現の機能としての全生存。転写プロファイルの決定時の循環NK細胞での(A)と同様であるが、しかし、<56%(n=26)又は>及び56%に等しい(n=27)NKp30表面発現を提示するGISTを考慮した分析(図20A)。NKp30表面発現の閾値(56%)を、80人のGIST患者の中央値として定義した(図20C)。
【図24】NCR3* 3790 T/C SNPは、プロファイルB及び「一遺伝子性」チロシンキナーゼ駆動性の悪性腫瘍に関連する。(A)プロファイルA及びBの個人におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。材料及び方法において記載する手順に従った、図20Aにおいて詳述するGISTコホート及び図20B及び図21Aにおいて詳述するHVの患者の遺伝子型決定。(B)AMLのFLT3突然変異状態に従った、AMLを持つ患者におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。腫瘍の突然変異状態を、前に記載された通りに決定した51。(C)GISTのKIT突然変異状態に従った、GISTを持つ患者におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。腫瘍の突然変異状態を、前に記載された通りに決定した52。腫瘍の突然変異状態は、図20に記載するGISTのコホートにおける32.5%の症例において未決定のままであった。
【0034】
定義
種々の実施態様の概説を容易にするために、以下の用語の説明を提供する:
【0035】
本明細書で使用する「癌」という用語は、任意の型の悪性腫瘍(一次又は転移)を指す。
典型的な癌は、X線、アントラサイクリン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチン感受性の癌、例えば乳癌、胃癌、肉腫(特に胃腸間質性腫瘍又はGIST)、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、子宮頸癌、前立腺癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、ORL癌、小児腫瘍(神経芽細胞腫、多形性膠芽腫)、リンパ腫、白血病(急性及び慢性骨髄性白血病(AML及びCML)、急性リンパ芽球白血病(ALL))、ミエローマ、セミノーマ、ホジキン及び悪性血液疾患などである。別の典型的な癌は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に感受性の癌、例えば胃腸間質性腫瘍(GIST)などである。
【0036】
「処置に対する感受性」という用語は、処置に対する被験者の反応のレベルを指し、限定はされないが、個人における治療用化合物又は物質を代謝する能力、プロドラッグを活性薬物に変換する能力、薬物動態(吸収、分布、排泄)、及び薬物の薬力学(受容体関連)を含む。この処置は、化学療法、例えば、アルキル化剤又はアントラサイクリン、例えばドキシサイクリン(DOX)、オキサリプラチン、もしくはシスプラチンなどの投与を含む化学療法;チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)及びスニチニブマレート(SU11248)などの投与を意味する治療でよい;及び/又は、処置は、例えばガンマ線又はX線(XR)を使用した放射線療法でよい。
【0037】
本明細書で使用する「癌の予後」という用語は、疾患の経過、換言すると、疾患の推定される致死的な又はポジティブな健康転帰の評価からなる方法を指す。
典型的には、癌を発生する増加リスクを有する被験者が、NKp30アイソフォームの異常な状態又はプロファイルを有し、それにおいてNKp30中間アイソフォームの相対量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの参照値もしくは平均値、又は(相対)量よりも相対的に高い。
【0038】
検査されるサンプルは、核酸及び/又はポリペプチドを含む。そのようなサンプルの例は、液体、組織、細胞サンプル、器官、生検などを含む。
回収されたサンプルの性質は、特定の型の癌に必ずしも相関しない。回収された組織は、実際に、癌組織(好ましくは、パラフィン包埋よりむしろ凍結)又は健常組織(例えば、血液、皮膚、間質)でよい。
組織は、選択された癌組織から回収してよい。
サンプルは、また、例えば、血液、血漿、及び骨髄より選択された組織から、任意の異常な又は疾患状態の前記組織とは無関係に、得てよい。
好ましくは、サンプルは、NKp30を発現することが公知である細胞、例えば臍帯Tリンパ球及び子宮内膜上皮細胞、好ましくは末梢血単核細胞(PBMC)、特定のNK細胞などを含む。
特定の実施例において、アッセイを、小児腫瘍、例えば神経芽細胞腫及びGISTより選択される癌に苦しむ被験者で実施する場合、血液(特にPBMCの集団を含むサンプル)、間質、皮膚、又は腫瘍組織のサンプルが提供されうる。
【0039】
本発明を種々の被険者における、例えば、動物、特に哺乳動物、好ましくはヒト(成人、小児、及び胎児期を含む)において使用してよい。
「被験者」という用語は、一般的に、癌に苦しむ患者、又は癌を発症しうる被験者を指す。
【0040】
被験者は、また、潜在的な骨髄ドナーである被験者でありうる。本発明を使用し、ドナー被験者が正常なNKp30発現、特に正常なNKp30 RNA転写物アイソフォーム状態もしくはプロファイル、又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現もしくは活性を有するか否かを決定してよい。
被験者は、さらに、同種骨髄移植のための候補者でありうる。
【0041】
「異常」という用語は、本明細書において、正常な特徴からの逸脱である。正常な特徴が、集団のためのコントロール、標準などにおいて見出すことができる。例えば、異常状態が疾患状態、例えば癌などである場合、正常な特徴の2、3の適切な供給源は、癌を患っていない個人、癌を患っていないと考えられる個人の標準集団などを含みうる。
癌に苦しんでいるが、しかし、当業者に公知の好ましい臨床基準(個人の年齢、癌の病期、及び/又は癌の組織病理の病期など)に基づき好ましい予後を有すると考えられる個人の集団は、特定の実施態様において、コントロール集団又は参照集団と考えられうる。
「異常な」という用語は、通常、疾患に関連する状態を指す。例えば、特定の異常(NCR3核酸又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの発現もしくは活性における異常など)が、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する耐性に関連すると記載することができる。
典型的には、「異常な」という用語をNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルを参照して使用してよく、それにおいてNKp30中間アイソフォームの量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの参照値もしくは平均値、又は相対量よりも高い。NKp30中間アイソフォームの異常(相対)量は、例えば、可変細胞外ドメインを伴う長い、短い、及び中間のアイソフォーム含む全アイソフォーム量の好ましくは約15%、好ましくは20%、さらにより好ましくは19%を超える量である。長いアイソフォームの対応するパーセンテージは、約20%、好ましくは約15%よりも劣り、短いアイソフォームの対応するパーセンテージは、短いアイソフォームについての約80%、好ましくは77%、さらにより好ましくは70%よりも劣る。
【0042】
異常な核酸、例えば異常なNCR3核酸などは、ある様式で、正常な(野性型)核酸とは異なる核酸である。そのような異常は、必ずしも限定されないが、コントロール又は標準と比較し、核酸における突然変異[例えば点突然変異など(例、一塩基多型、別名SNP)又は2、3から数個のヌクレオチドの短い欠失、挿入又は重複など]を含む。これらの型の異常が、同じ核酸中に、又は同じ細胞もしくはサンプル中に共存することができることが理解されるであろう。また、核酸中の異常が、対応するタンパク質の発現において異常を起こしうることが理解される。
【0043】
NKp30タンパク質は、本明細書において、NCR3遺伝子によりコードされるタンパク質に関する。
前に説明した通り、NCR3遺伝子は、6つの異なるタンパク質(それぞれNKp30A、NKp30B、NKp30C、NKp30D、NKp30E、及びNKp30Fと名付けられる)をコードする6つの異なる選択的スプライシング形態を提示する(図2)24。アイソフォームの3つが、潜在的な可変Ig型又はIg様ドメインをコードし、他の3つが潜在的な定常Ig型又はIg様ドメイン(部分欠失させた可変Ig型ドメイン)をコードする。これらの2つの異なる細胞外ドメインを、いずれのエクソン4(図1)が発現されるかに依存して、36のアミノ酸(「長いテール(tail)」ドメイン)、25のアミノ酸(「中間テール」ドメイン)、及び12のアミノ酸(「短いテール」ドメイン)の3つの異なる細胞内ドメインに連結することができる24。
【0044】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームは、このように、タンパク質アイソフォームであり、その配列、配置、成熟、又は発現は正常な野生型タンパク質アイソフォームとは異なる。好ましくは、異常タンパク質アイソフォームは機能的ではない、又は部分的にだけ機能的である。
この用語は、好ましくは、少なくとも1つの異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を含むが、しかし、また、例えば、正常なNKp30タンパク質をコードするmRNAの異常転写に起因する、少なくとも1つの正常なNKp30タンパク質アイソフォームの異常発現を包含する(そのような異常転写は、例えば、異常な選択的スプライシングにより、癌処置により、及び/又は癌自体により誘導され得、コントロール又は標準のレベル又は量と比較して、減少されうる、又は逆に、増加されうる)。同様に、NKp30タンパク質アイソフォームの活性レベルは、少なくとも1つの正常なNKp30タンパク質アイソフォームの異常発現、又は、少なくとも1つの異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を反映しうる。
【0045】
NKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性、例えば異常なNKp30タンパク質アイソフォーム発現は、コントロール又は標準と比較した場合、ある様式で、以下でさらに説明する正常な(野生型)状況におけるタンパク質の発現又は活性とは異なる発現又は活性を指す。
それは、特に、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォーム、恐らくは、NCR3によりコードされる6つのNKp30タンパク質アイソフォームの2つ、3つ、4つ、5つの又は全てのNKp30タンパク質アイソフォームの被験者における発現又は活性を指し、コントロール又は標準と比較した場合、ある様式で、正常な(野生型)状況におけるタンパク質の発現又は活性とは異なる。
【0046】
異常の決定のための、サンプルとの比較に適切なコントロール又は標準は、正常であると考えられる(例えば、健常被験者のサンプル)又は癌を患っているが、しかし、前に説明された好ましい臨床基準、ならびに、恐らくは任意のセット(そのような値が検査室から検査室で変動しうることを念頭に置く)であるとしても、検査値から良い結果を得ている患者の集団に対応するサンプルを含む。
検査室の標準及び値は、公知の又は決定された集団値に基づいて設定してよいが、測定された、実験的に決定された値の容易な比較を可能にするグラフ又は表のフォーマットにおいて提供してよい。
【0047】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームという用語は、必ずしも限定されないが、以下を含む:(1)1つ又は複数のアミノ酸残基が異なるようタンパク質の配列における潜在的な変異又は突然変異;(2)タンパク質の配列に対する1つ又は2、3のアミノ酸残基の短い欠失又は付加;(3)全タンパク質ドメイン又はサブドメインが除去又は付加されるような、アミノ酸残基のより長い欠失又は付加;(4)コントロール又は標準の量と比較し、減少した、又は逆に、増加した量の機能的なタンパク質アイソフォームの発現;(5)タンパク質アイソフォームの細胞局在又は標的化の変化;(6)時間的に調節されたタンパク質アイソフォームの発現の変化(タンパク質が、それが正常ではない場合に発現し、あるいは、それが正常である場合に発現しないようにする);及び(7)各々をコントロール又は標準と比較し、局在化した(例、器官又は組織特異的)タンパク質アイソフォームの発現の変化(タンパク質が、それが正常に発現する場合に発現せず、又は、それが正常に発現しない場合に発現するように)。
【0048】
「NKp30タンパク質アイソフォーム活性」という用語は、その天然のリガンドの1つに対するNKp30の任意の直接的結合、NKp30により媒介される又は好まれる任意の間接的結合、ならび顕著にはNKp30経路の下流エフェクター、例えばCD3ζ、KARAP/DAP12、DAP10、FcRγなどにおける直接的又は間接的な結合の効果を包含する。
【0049】
本願において使用される通り、「NCR3遺伝子」という用語は、TNF遺伝子、ならびにそのバリアント、アナログ、及びフラグメント(癌に対する感受性に関連するその対立遺伝子(例、生殖細胞系列突然変異)を含む)に近接する、主要組織適合複合体(MHC)クラスIII領域中のヒト染色体6p21.3上のナチュラル細胞傷害誘発受容体3を指す。NCR3遺伝子は、また、NKp30遺伝子と呼んでよい。
【0050】
組換え核酸を、化学合成、遺伝子操作、酵素技術、又はその組み合わせを含む、従来技術により調製してよい。適したNCR3遺伝子配列は、遺伝子バンク、例えばNCBI(参照アセンブリー: NC_000006.10(31668740−31664650);RefSeq DNA: NM 147130;GeneID:259197)、Ensembl(Ensembl Gene ID:ENSG00000204475)などで見出されうる。対応するポリペプチド配列は、NCBI遺伝子バンク中の参照NP_667341.1(RefSeqペプチド)の下で見いだされる。
【0051】
「NCR3遺伝子」という用語は、配列番号:1 NC_000006.10(31668933−31664651)又は上で特定した任意のコード配列の任意のバリアント、フラグメント、又はアナログを含む。
【0052】
NKp30タンパク質又はポリペプチドの特定の例は、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014845[“短いテール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(SHORT−WT)−配列番号2]、Vega ペプチドID:OTTHUMP00000014846[“中間テール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(INTER−WT)−配列番号3]、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014844[“長いテール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(LONG−WT)−配列番号4]、VegaペプチドID:無し[“短いテール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(SHORT−DEL)−配列番号5]、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014847[“中間テール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(INTER−DEL)−配列番号6]、及びVegaペプチドID:無し[“長いテール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(LONG−DEL)−配列番号7]からなる群より選択されるペプチドの全て又は部分を含む。
【0053】
多型は、例えば、変異が存在するヌクレオチド位置により、ヌクレオチド変異により起こされるアミノ酸における変化により、又は変異に関連づけられる核酸分子の何らかの他の特徴における変化(例、二次構造、例えばステム−ループなどの変化、又は、関連分子、例えばポリメラーゼ、RNaseなどについての核酸の結合親和性の変化)により言及することができる。例として、NCR3遺伝子の領域において本明細書で開示する多型は、NCR3遺伝子におけるその位置により[例、バリアント残基3571 G/T(Reference SNP Cluster Report: rs3179003)又は3790 T/C(Reference SNP Cluster Report: rs986475)の数値位置に基づく](NKp30ポリペプチドにおけるバリアントアミノ酸の数値位置に基づく)、それがNCR3 mRNAの二次構造に有する効果により、又は、それがNKp30ポリペプチドの三次構造に有する効果(例、リガンド、例えば硫酸ヘパリン及びBAT3などのポリペプチドの結合親和性の変化)により言及することができる。
【0054】
検出/診断
上記の観察を使用して、本発明者らは、本明細書において、被験者におけるNCR3遺伝子座の分析及び/又は被験者におけるNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォームのモニタリングに基づく方法を提供する。
本発明の関連内で、「診断」という用語は、上で定義する被験者における、種々の病期(早期の発症前段階及び後期を含む)での検出、投薬、比較などを含む。診断は、典型的には、最も適切な処置(薬理遺伝学)などを定義するための被験者の予後及び特性付けを含む。
【0055】
本明細書において記載する一般的な目的は、被験者において癌の予後を評価する方法にあり、この方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物、又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現もしくは活性の存在は前記被験者における癌の好ましくない予後を示している。
【0056】
本明細書において記載する別の一般的な目的は、癌、例えば小児腫瘍など、特に神経芽細胞腫の処置に対する被験者の感受性を評価する方法にあり、その方法が、インビトロ又はエクスビボで、(i)突然変異したNCR3核酸、(ii)異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は前記処置に対する耐性を示している。被験者において癌の処置の有効性を評価する方法の検出工程は、理想的には、前記処置の前、間、及び/又は後に実施される。
【0057】
本明細書において記載するさらなる一般的な目的は、被験者における癌、例えばGISTなどの処置の有効性を評価する方法にあり、その方法が、前記処置の前、間、及び/又は後に、(i)突然変異したNCR3核酸、(ii)異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は前記処置に対する耐性を示している。
【0058】
さらなる目的は、被験者からのサンプルを提供する第1工程を含む、上に記載する方法である。
【0059】
本発明に従い、被験者の感受性を評価することができる処置は、好ましくは、例えば、アルキル化剤、アントラサイクリン、例えばDOX(ドキソルビシン、イダルビシン、4エピルビシン、ミトキサントロン)、オキサリプラチン及びシスプラチン(PLAT)などの投与を含む化学療法;チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)又はスニチニブマレート(SU11248)などの投与を含む治療;ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)の投与を含む治療;及び、例えばX線(XR)を意味する放射線療法の少なくとも1つより選択される。
【0060】
診断方法は、上記の処置又は薬物に対する感受性もしくは反応、又は処置もしくは薬物に対する副作用を分析及び予測し、被験者を特定の処置薬を用いて処置すべきか否かを決定するために使用してよい。例えば、この方法が、被験者、特に正常なNKp30アイソフォーム発現プロファイル、特に正常なNKp30 RNA転写物アイソフォームプロファイルを伴う被験者が、TKI、FTI、及び/又はアントラサイクリン、PLAT及び/又はXRに対してポジティブに反応する可能性を示す場合、前記処置を個人に施してよい。逆に、この方法が、個人又は被験者、特に異常なNKp30アイソフォーム発現プロファイルを伴う被験者が、前記処置に対してネガティブに反応する可能性が高い場合、代替方向の処置を処方してよい。
【0061】
ネガティブな反応は、効果的な反応の非存在又は有毒な副作用の存在と定義してよい。これは、この処置が、癌を予防又は処置するために非効率的であるように思われることを意味する。換言すると、処置を必要とする被験者、又は癌自体が、前記処置に対して耐性であると思われる。不良な反応は、野生型NCR3を持つ又は機能的なNKp30タンパク質アイソフォームを発現する患者において観察される反応よりも有意に劣る反応である。
【0062】
突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は、耐性、即ち、癌の処置に対する被験者のネガティブな又は不良な反応を示しており、又は、前に説明した通り、有毒な副作用の存在を示している。
【0063】
NCR3突然変異は、NCR3ゲノム配列において又はRNAにおいて決定されうる。
【0064】
検出された突然変異は、先天的な又は獲得された突然変異でありうる。
【0065】
NCR3遺伝子座における突然変異は、単独で又は種々の組み合わせで、遺伝子座のコード及び/又は非コード領域中の任意の形態の突然変異、欠失、再配列、及び/又は挿入でありうる。突然変異は、より具体的には、点突然変異を含む。欠失は、遺伝子座のコード又は非コード部分において1、2又はそれ以上の残基の任意の領域、例えば1つの残基から全遺伝子又は遺伝子座までを包含しうる。例えば約20未満の連続塩基対のドメイン(イントロン)又は反復配列又はフラグメントなどの典型的な欠失は、より小さな領域に影響を与えるが、より大きな欠失も起こりうる。挿入は、遺伝子座のコード又は非コード部分における1つ又は数個の残基の付加を包含しうる。挿入は、典型的には、遺伝子座における1〜20の塩基対の付加を含みうる。再配列は配列の逆位を含む。NCR3遺伝子座の突然変異は、終止コドン、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAのスプライシング又はプロセシング、産物の不安定性、切断ポリペプチドの産生などをもたらしうる。この変化は、機能、安定性、標的化、又は構造が変化した、少なくとも1、恐らくは2、3、4、5、又は6つのNKp30スプライシングバリアント(又はスプライシング形態)の産生をもたらしうる。この変化は、また、タンパク質アイソフォーム発現における減少、又は、代わりに前記産生の増加を起こしうる。
【0066】
本発明に従った方法の特定の実施態様において、NCR3遺伝子における変化は、NCR3遺伝子又は対応する発現産物における点突然変異、欠失及び挿入、より好ましくは点突然変異、さらにより好ましくは一塩基多型(SNP)より選択される。
【0067】
本発明は、特に、突然変異したNCR3ヒト核酸配列を開示する。
突然変異したNCR3ヒト核酸配列の特定の例は、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651),(Reference SNP Cluster Report:rs3179003)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)への置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)、及び、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651),(Reference SNP Cluster Report:rs986475)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)への置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPより選択されるSNPを含む。
【0068】
被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)への置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)より選択されるSNPを含む、突然変異したNCR3配列の存在の被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
【0069】
さらなる実施態様において、本記載は、被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法を提供し、この方法は、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10 (31668933−31664651)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)への置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPを含む、突然変異したNCR3核酸配列の存在の被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の好ましくない又はネガティブな反応を示している。
【0070】
本明細書において記載する方法は、さらに、その目的が、被験者が多型についてホモ接合性又はヘテロ接合性であるかを決定することである工程を含みうる。
【0071】
本発明の方法において、NCR3遺伝子における任意の突然変異又は変化は、他のマーカー、例えば他の任意の遺伝子又はタンパク質における他の突然変異又は変化などとの組み合わせで評価してよい。
【0072】
サンプル中での突然変異したNCR3核酸の存在は、サンプルの遺伝子型決定を通じて検出することができる。検出は、NCR3遺伝子の全て又は部分の選択的ハイブリダイゼーション及び/又は増幅を使用し、NCR3遺伝子の全て又は部分のシークエンシングにより実施することができる。より好ましくは、NCR3遺伝子の特異的増幅は、突然変異の特定工程の前に行う。
本明細書において記載する特定の実施態様において、突然変異したNCR3核酸の存在を、制限酵素消化、シークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション(特に、核酸プローブ、例えば、浮遊状態の又は核酸アレイ上に存在する核酸プローブを用いて)、及び/又は選択的増幅を使用することにより検出する。
特定の実施態様は、被験者のNCR3遺伝子配列における少なくとも1つのSNPの存在の検出を含む。
【0073】
特定の実施態様において、本明細書において記載する方法は、異常なNCR3RNA発現の存在を検出することを含む。異常なNCR3発現は、突然変異したRNA配列の存在、異常なRNAスプライシング又はプロセシングの存在、異常量のRNAの存在などを含む。これらは、例えば、制限酵素消化、NCR3 RNAの全て又は部分のシークエンシング、前記RNA又は対応する合成cDNAの全て又は部分の選択的ハイブリダイゼーション又は選択的増幅を含む、当技術分野において公知の種々の技術により検出されうる。
異常なRNAスプライシングは、図2及び15に現れるスプライシング形態より選択される1つ又は複数の特定のスプライシングバリアント(又は、本明細書において「スプライシング形態」もしくは「RNA転写物アイソフォーム」と呼ぶ)のNKp30をコードする異常量のRNAの転写を誘導することができ、及び/又は、本明細書において定義する異常な形態の前記バリアントの少なくとも1つ、恐らくは、前記バリアント又はRNA転写物アイソフォームの2、3、4、5、又は全ての転写を誘導することができる。
【0074】
本明細書において記載する方法は、被験者のサンプルにおいて、以下:
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び中間テール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の中間テール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン、中間テール定常又はテール可変Ig様ドメイン、及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
の相対量を測定及び比較することによる、
又は、各量の特定のアイソフォーム又は各相対量の少なくとも2つの、好ましくは3つの別々のアイソフォームを、コントロール値、参照値、又は平均相対値と比較することによる、NKp30タンパク質発現又は活性を決定する工程を含みうる。
【0075】
特に、コントロール相対値と比較し、増加(相対)量のNKp30の中間テール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物及び減少(相対)量のNKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物及び/又は短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物は、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する耐性を示している。
【0076】
さらなる実施態様において、この方法は、少なくとも1つのNKp30ポリペプチド又はタンパク質アイソフォームの異常発現の存在を検出することを含む。異常発現は、突然変異したポリペプチドアイソフォーム配列の存在、異常(相対)量のNKp30ポリペプチド又はタンパク質アイソフォームの存在、異常な組織分布の存在などを指す。
これらは、例えば、増幅及び/又は特異的リガンド(例えば抗体など)に対する結合を含む、当技術分野において公知の種々の技術により検出されうる。
他の適した方法を使用し、異常なNCR3遺伝子又はRNA発現又は配列を検出又は定量化してよい。それらは、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、サザンブロット(DNAについて)、ノーザンブロット(RNAについて)、一本鎖高次構造分析(SSCA)、PFGE、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル移動、クランプ変性ゲル電気泳動、ヘテロデュプレックス分析、RNase保護、化学的ミスマッチ切断、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)を含む。
【0077】
前に説明した通り、特定の実施態様において、この方法は、被験者からのサンプルにおける異常なNCR3核酸の存在を検出又は決定することを含む。これは、前に説明した通り、前記サンプル中に存在する核酸の制限酵素消化、シークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション、及び/又は選択的増幅を使用することにより達成することができる。
【0078】
制限酵素消化は、当技術分野において周知の技術及び酵素を使用して行うことができる。
【0079】
シークエンシングは、自動シーケンサーを使用し、当技術分野において周知の技術を使用して行うことができる。シークエンシングは、完全なNCR3遺伝子又は、より好ましくは、その特定のドメイン、典型的には、有害な突然変異又は他の変化を持つことが公知である又は疑われるもので実施してよい。
【0080】
増幅は、核酸複製を開始させる役割を果たす相補的な核酸配列の間での特定のハイブリッドの形成に基づく。
【0081】
増幅が、当技術分野における公知の種々の技術に従って、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、及び制限酵素断片長多型(RFLP)により実施してよい。
【0082】
これらの技術は、市販の試薬及びプロトコールを使用して実施することができる。好ましい技術では対立遺伝子特異的PCR又はPCR−SSCPを使用する。増幅は、通常、反応を開始するために特異的な核酸プライマーの使用を要求する。
【0083】
本明細書において記載する核酸プライマーは、周囲領域を含む、NCR3コード配列(例、遺伝子、又は遺伝子座、又はRNA)から配列を増幅するために有用である。
NCR3標的領域を増幅するために使用することができるプライマーは、NCR3のゲノム配列又はRNA配列及び、特に、配列番号1の配列に基づいてデザインしてよい。
【0084】
特定のプライマーは、NCR3コード配列の標的領域に隣接するNCR3遺伝子座の部分と相補的であり、それに特異的にハイブリダイズすることができる。
【0085】
標的領域は、癌に対する素因又は癌を発生する増加した可能性を有する特定の被険者において変更された領域でありうる。
この点について、本発明の特定のプライマーは、NCR3遺伝子又はRNA中の突然変異した配列に特異的である。そのようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出は、NCR3遺伝子座における突然変異の存在を示す。対照的に、増幅産物の非存在は、特定の突然変異がサンプル中に存在しないことを示す。
【0086】
本明細書において開示する方法において使用可能な典型的な核酸プライマーは、点突然変異を含む突然変異したNCR3配列、典型的には、点突然変異、好ましくは、前に定義した一塩基多型(SNP)を含む野生型NCR3配列に対して相補的であり、特異的にハイブリダイズするプライマーである。
【0087】
本発明に関連して使用可能な特異的核酸プライマーを以下に開示する。
【0088】
3571 G/T多型を含む領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表1】
これらの配列を使用し、471bpのフラグメントを増幅してよい。
【0089】
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_25630865_10を使用し、3571 G/T多型を遺伝子型決定することができる。
【0090】
3790 T/C多型を含む領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表2】
これらの配列を使用し、471bpのフラグメントを増幅してよい。
【0091】
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_7514908_10を使用し、3790 T/C多型を遺伝子型決定することができる。
【0092】
標的領域は、さらに、特定のNKp30 RNA転写物をコードする領域でありうる。
そのような標的領域を増幅する核酸プライマーの例を、実験セクションにおいて開示している(配列番号20〜30及び48)。
【0093】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの存在を、本明細書において開示する方法において、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする核酸プライマーを用いた選択的増幅を使用することにより検出してよい。
【0094】
特定のRNA転写物アイソフォームを増幅する特異的プライマーの例を以下に記載する:
【0095】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表3】
これらの配列を使用し、323bpのフラグメントを増幅してよい。
【0096】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表4】
これらの配列を使用し、266bpのフラグメントを増幅してよい。
【0097】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表5】
これらの配列を使用し、319bpのフラグメントを増幅してよい。
【0098】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表6】
これらの配列を使用し、262bpのフラグメントを増幅してよい。
【0099】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表7】
これらの配列を使用し、321bpのフラグメントを増幅してよい。
【0100】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表8】
これらの配列を使用し、264bpのフラグメントを増幅してよい。
【0101】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表9】
これらの配列を使用し、266bpのフラグメントを増幅してよい。
【0102】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表10】
これらの配列を使用し、263bpのフラグメントを増幅してよい。
【0103】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表11】
これらの配列を使用し、263bpのフラグメントを増幅してよい。
【0104】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表12】
これらの配列を使用し、260bpのフラグメントを増幅してよい。
【0105】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表13】
これらの配列を使用し、264bpのフラグメントを増幅してよい。
【0106】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表14】
これらの配列を使用し、261bpのフラグメントを増幅してよい。
【0107】
ハイブリダイゼーション検出方法は、特定の配列、特にNCR3核酸配列突然変異又は特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームを検出する役割を果たす相補的な核酸配列の間での特定のハイブリッドの形成に基づく。
【0108】
特定の検出技術は、野生型の又は突然変異したNCR3遺伝子又はNKp30 RNA転写物アイソフォームに特異的な核酸プローブの使用を含み、ハイブリッドの存在の検出が続く。プローブは、浮遊状態に、又は、基材もしくは支持体に固定してよい(核酸アレイ技術と同様に)。プローブは典型的には標識され、ハイブリッドの検出を容易にする。そのような核酸プローブを本明細書において開示する。
【0109】
典型的なハイブリダイゼーション検出方法は、以下の、被験者からのサンプルを、NCR3核酸(好ましくは遺伝子座)、特に突然変異したNCR3核酸に特異的な核酸プローブと接触させ、そしてハイブリッドの形成を評価する工程を含む。
特に好ましい実施態様において、この方法は、同時に、サンプルを、野生型NCR3遺伝子座及びその種々の異常な又は突然変異した形態にそれぞれ特異的であるプローブのセットと接触させることを含む。この実施態様において、サンプル中でNCR3遺伝子座における種々の形態の突然変異の存在を直接的に検出することが可能である。また、種々の被険者からの種々のサンプルを並行して処理してよい。
【0110】
突然変異したNCR3核酸の存在を、このように、本明細書において開示する方法において、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームにハイブリダイズする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする、少なくとも1つの核酸プローブ、特に、浮遊状態の又はヌクレオチドアレイ上に存在する核酸プローブとの選択的ハイブリダイゼーションにより検出してよい。
【0111】
本明細書において開示する特定の方法は、その目的が、癌の処置に対する被験者の感受性/反応を評価すること、又は、被験者における癌の予後を評価することであり、被験者から、DNAの試験サンプル、好ましくはNCR3配列を含むことが疑われる又は公知であるDNAのサンプルを得る工程を含みうる。この方法は、好ましくは、以下の工程を含む:(a)被験者からの試験DNAサンプルを、少なくとも1つの核酸プローブと接触させ、それにおいて、前記核酸プローブは、突然変異したNCR3配列(例えば本明細書において記載するものの1つ)と相補的であり、それに特異的にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションサンプルを形成し、(b)ハイブリダイゼーションサンプルを、NCR3配列と少なくとも1つの核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションが生じることを可能にするのに適した条件下で維持し、及び(c)NCR3配列と少なくとも1つの核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションが存在するか否かを検出する。
【0112】
NCR3配列と核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションを使用し、被験者における好ましくない、又は逆に、好ましい癌の予後を示してよい。
【0113】
NCR3配列と核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションをさらに使用し、被験者に施された処置に対する癌の反応(耐性又は感受性)を特定してよい。
【0114】
前に説明した通り、特定の突然変異したNCR3配列、特に非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異を含むNCR3配列は、癌の好ましくない予後、及び特定の癌の処置に対する耐性、ならびに他の突然変異したNCR3配列、特にNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異を含むNCR3配列に関連する。
【0115】
この処置は、好ましくは、化学療法、特に、アルキル化剤又はアントラサイクリン、例えばDOX、及び/又はオキサリプラチンもしくはシスプラチン(PLAT)などの投与を含む化学療法;TKI、例えばイマチニブメシレート(STI571)及びスニチニブマレート(SU11248)などの投与を含む治療;FTIの投与を含む治療;及び好ましくはX線(XR)を含む放射線療法より選択される。
【0116】
典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、30℃を上回る、好ましくは35℃を上回る、より好ましくは42℃を超過する温度、及び/又は約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩度を含む。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩度、及び/又は他の試薬、例えばSDS、SSCなどの濃度を改変することにより、当業者により調整されうる。
本開示の目的について、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション分子と標的配列の間に25%未満のミスマッチがある場合にだけハイブリダイゼーションが生じる条件を包含する。
【0117】
本発明の関連内で、プローブは、NCR3遺伝子又はRNA(の標的部分)と相補的であり、それとの特異的なハイブリダイゼーションが可能であるポリヌクレオチド配列を指し、それは前に記載したNCR3対立遺伝子に関連するポリヌクレオチド多型の検出に適する。プローブは、好ましくは、NCR3遺伝子、RNA、又はその標的部分に完全に相補的である。プローブは、典型的には、15〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは20〜50ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸を含む。より長いプローブを使用してもよいことを理解すべきである。本発明の好ましいプローブは、20〜30ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸分子であり、それは、変化を持つNCR3核酸の領域(例えば、遺伝子又はRNA)に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0118】
異常な(例、突然変異した)NCR3配列(特に、遺伝子又はRNA)に特異的な核酸プローブ、即ち、前記の異常なNCR3配列に特異的にハイブリダイズし、正常な(参照)NCR3配列にはハイブリダイズしない核酸プローブを、本明細書において使用可能である。特異性は、標的配列に対するハイブリダイゼーションが、特異的なシグナルを生成することを示し、それは非特異的なハイブリダイゼーションを通じて生成されたシグナルから区別できる。完全に相補的な配列が本明細書において好ましい。しかし、特異的なシグナルが非特異的なハイブリダイゼーションから区別されうる限り、特定のミスマッチを許容してよいことを理解すべきである。
【0119】
プローブの配列は、癌の処置に対する被験者の感受性、又は被験者における癌の好ましい予後に関連する、突然変異、特に点突然変異、例えばSNPなどを持つNCR3遺伝子又はRNAの任意の配列に基づいて容易に調製することができる。
また、これらの核酸分子のフラグメント又は部分、例えばNCR3配列における上で特定された多型を包含する領域に基づいてプローブ及びプライマーを生成することが適切である。
【0120】
本明細書において記載する方法において実際に使用可能な典型的な突然変異したNCR3配列は、NCR3の野生型配列及び点突然変異、好ましくは前に記載した一塩基多型(SNP)を含む。
【0121】
ヌクレオチド置換、ならびにプローブの化学修飾を実施してよい。そのような化学修飾を達成し、ハイブリッドの安定性を増加させる(例、挿入基)、又はプローブを標識してよい。標識の典型的な例は、限定なしに、ラジオアイソトープ、酵素基質、補助因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン、及び酵素を含む。標識のための方法及び種々の目的に適切な標識の選択におけるガイダンスが、例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1989)及びAusubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)において考察されている。
【0122】
本発明は、また、癌の処置に対する被験者の感受性を評価する方法、又は、被験者における癌の予後を評価する方法における、本明細書において記載する核酸プローブ又はプライマーの使用に関する。
【0123】
癌の処置に対する被験者の感受性を評価し、癌の処置の有効性を評価し、又は被験者における癌の予後を評価する本明細書において開示する方法を、さらに、上に示す通りに、先天的又は獲得された少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を、被験者からのサンプルにおいて、そのような異常なNKp30タンパク質に対する結合について同定されたリガンドを使用して検出することにより実施してよい。
【0124】
本発明の好ましい方法は、被験者からのサンプルを、NKp30タンパク質アイソフォーム(正常なNKp30、例、野生型NKp30、又は異常なNKp30)に対する結合について同定されたリガンドと接触させ、結合が被験NKp30と前記NKp30リガンドの間で生じるか否かを、例えば、前記被験NKp30と前記NKp30リガンドの間での複合体の形成を決定することにより評価する工程を含む。
【0125】
本明細書において開示する特に好ましい方法は、被験者からのサンプルを、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドと接触させることにより、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの存在を決定する工程を含む。
【0126】
リガンドは、定義された標的に対して特異的に結合する薬剤である。
「特異的に」という用語は、薬剤の10%未満、好ましくは5%未満が、前記の定義された標的とは異なる標的に結合することを意味する。このように、NKp30タンパク質アイソフォーム特異的リガンドは、NKp30タンパク質だけに、即ち、本発明に関連して、NKp30タンパク質アイソフォームに実質的に結合する。異なる型のリガンド、例えばNKp30タンパク質アイソフォームだけに実質的に結合する特異的な抗体及び他の薬剤(及びその機能的フラグメント)などを使用してよい。
【0127】
本明細書において開示する好ましいリガンドは、特定の正常なNKp30タンパク質アイソフォーム又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドである。
【0128】
抗NKp30タンパク質抗体、特に、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに特異的な抗体が本明細書において開示されており、Harlow and Lane(Antibodies, A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1988)を含む、多くのテキストに記載される標準手順を使用して産生されうる。特定のリガンドが、NKp30タンパク質アイソフォーム又は特定のNKp30スプライシングバリアント、スプライシング形態又はNKp30 RNA転写物アイソフォームだけに実質的に結合することは、通常の手順を使用又は適応することにより容易に決定されうる。1つの適したインビトロアッセイではウエスタンブロッティングの手順を使用する(Harlow and Lane (Antibodies, A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1988)を含む、多くの標準的なテキストに記載されている)。ウエスタンブロッティングを使用し、所定のNKp30タンパク質結合剤、例えば抗NKp30タンパク質モノクローナル抗体などが、特定のNKp30タンパク質、即ち、本発明に関連して、特定のNKp30タンパク質アイソフォームだけに実質的に結合することが決定されうる。
【0129】
本発明の関連内で、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびに実質的に同じ抗原特異性を有するそのフラグメント又は派生物を指す。
抗体のより短いフラグメントも特異的な結合剤としての役割を果たすことができる。例えば、特定のNKp30に結合するFAb、Fv、及び一本鎖Fv(scFv)は、NKp30特異的な結合リガンドでありうる。
【0130】
これらの抗体フラグメントを以下の通りに定義する:(1)FAb(無傷な軽鎖及び1つの重鎖の部分を産生するための酵素パパインを用いた全抗体の消化により産生される抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むフラグメント);(2)FAb’(無傷な軽鎖及び1つの重鎖の部分を産生するためのペプシンを用いた全抗体の処理、続く還元により得られる抗体分子のフラグメント);2つのFAb’フラグメントが1つの抗体分子当たり得られる;(3)(FAb’)2(続く還元なしに、酵素ペプシンを用いた全抗体の処理により得られる抗体のフラグメント);(4)F(Ab’)2(2つのジスルフィド結合により一緒に保持された2つのFAb’フラグメントの二量体);(5)Fv(2つの鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む遺伝子操作されたフラグメント);及び(6)一本鎖抗体(「SCA」)(適したポリペプチドリンカーにより連結された、遺伝的に融合された一本鎖分子としての、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子)。これらのフラグメントを作る方法は通常通りである。
【0131】
本明細書において提示する特定の抗体は、前に定義され、本明細書において例示される、NKp30タンパク質又はポリペプチド、典型的にNKp30ポリペプチドに特異的である。
【0132】
本発明において使用可能な特定の抗体は、また、各々の特定の野生型NKp30ポリペプチドアイソフォームに特異的でありうる。好ましくは、抗体は、NKp30(配列番号38及び39)の細胞外ドメイン及びNKp30(配列番号40〜42)の細胞内ドメインより選択される配列の全て又は特有の部分を含む。NKp30可変Ig様細胞外ドメインを配列番号38に描写する。特異的な抗NKp30可変Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号43に描写する。NKp30定常Ig様細胞外ドメインを配列番号39に描写する。特異的な抗NKp30定常Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号44に描写する。NKp30の短い細胞内ドメインを配列番号40に描写する。特異的な抗NKp30の短い細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号45に描写する。NKp30の中間細胞内ドメインを配列番号41に描写する。特異的な抗NKp30の中間細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号46に描写する。NKp30の長い細胞内ドメインを配列番号42に描写する。特異的な抗NKp30の長い細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号47に描写する。
そのような配列を、さらに、担体ペプチドとしてKLHに抱合してよい。
【0133】
このように、特定の実施態様において、サンプルを、異常なNKp30タンパク質又はポリペプチドに特異的な抗体と接触させ、免疫複合体の形成を決定する。免疫複合体を検出するための種々の方法、例えばELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)などを使用することができる。
【0134】
特定のNKp30タンパク質に対する結合について同定された他のリガンドは、例えば、ヘパラン硫酸及びBAT3である。
【0135】
リガンドは、特に、プローブを使用して検出されうる。プローブには好ましくはタグが付けられる。
【0136】
特定の実施態様において、本発明は、このように、本明細書において、NKp30経路を介した腫瘍細胞の免疫原性の欠如を検出するための方法を開示し、この方法は、TKI、アントラサイクリン、シスプラチン、オキサリプラチン、又はX線で処理された、NKp30リガンドを発現する自己腫瘍細胞の接触を含み、前記リガンドの結合の非存在は腫瘍細胞の免疫原性の欠如と相関している。
【0137】
当業者に周知の技術、例えばELISA結合アッセイ又はウエスタンブロット(WB)などを、上に記載する方法において適用してよい。
【0138】
非特異的な結合が起こりうるが、標的NKp30ポリペプチドアイソフォームに対する結合が、より高い親和性で起こり、非特異的な結合から確実に識別することができる。
【0139】
サンプルの核酸又はタンパク質と前に記載したリガンド又はプローブの間での接触を、任意の適したデバイス、例えばプレート、チューブ、ウェル、ガラスなどにおいて実施してよい。特定の実施態様において、接触は、核酸アレイ上又は特定のプローブ又はリガンドアレイ上で実施する(例えばヌクレオチドアレイ上に存在する核酸プローブなど)。
【0140】
リガンドは、前に記載したプローブとちょうど同じように、浮遊状態で又は基材もしくは支持体上に固定してよい。
基材は、固形又は半固形の基材、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどを含む任意の支持体でよい。基材は、種々の形態及びサイズ、例えばスライド、メンブレン、ビーズ、カラム、ゲルなどでよい。
接触は、複合体が、試薬(リガンド又はプローブ)とサンプルの核酸又はポリペプチドの間で形成されるために適した任意の条件の下で行ってよい。
サンプルは、このように、同時に、又は並行して、又は連続的に、NCR3核酸、NKp30 RNA転写物、又はNKp30タンパク質もしくはポリペプチドの異なる形態、例えば野生型の正常なアイソフォーム及びその種々の異常な形態に特異的な種々のリガンド又はプローブと接触させてよい。
【0141】
本発明では、さらに、NKp30活性を決定する工程を含む方法を開示する。
【0142】
NKp30は、主に、3つの可能な発現レベルを考慮することにより、NK細胞においてインビボで発現される:(i)クローンレベル、(ii)亜集団レベル、及び(iii)全末梢血集団のレベル。NKp30シグナル伝達は、炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFα及びIFNγ)の分泌の誘発及びDC成熟の加速のために不可欠である。
【0143】
本願において、異常なNKp30タンパク質活性は、このように、例えば、TNFα及びIFNγより選択される化合物の分泌の非存在又は存在、又はその細胞レベルにおける変化とも相関しうる。そのような細胞レベル、特にナチュラルキラー(NK)細胞レベルを、NKp30タンパク質活性を決定する工程を含む、本明細書において開示する方法において本発明者により測定してよい。そのような測定を、さらに、正常レベルと比較してよい。
異常なNKp30活性を、NK細胞及びコーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を含む培養において、IL−2の存在又は非存在において、IFNγ(精製されたNK細胞に由来する)の細胞レベルを測定することにより検出してよい。測定レベルを、好ましくは、IL−2の存在又は非存在において、PBS(リン酸緩衝食塩水)中のNK細胞の培養から測定された参照レベルと比較する。
【0144】
異常なNKp30活性を、さらに、TKIにより条件付けられた未熟な樹状細胞(DC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む共培養中の(精製されたNK細胞に由来する)IFNγの細胞レベルを測定することにより検出してよい。DCは、試験される被験者からの自己細胞又は同種細胞である。NK細胞は、好ましくは、自己細胞である。共培養は、並行して、NKp30リガンド及びモノクローナル抗体抗NKp30より選択される少なくとも1つの化合物の存在において、及び前記化合物のいずれかの非存在において実現されうる。
【0145】
異常なNKp30活性を、さらに、抹消血単核細胞(PBMC)及びコーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を含む培養中の(PBMCに由来する)IFNγ又はTNFαの細胞レベルを測定することにより検出してよい。測定レベルを、好ましくは、コーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を伴わないPBMCの培養から測定された参照レベルと比較する。
被験IFNγ又はTNFαの測定レベルを、さらに、それぞれの参照レベルと比較してよい。
本発明者らは、実際に、異常なIFNγ又はTNFαレベル(特に、公知の標準と比較した減少値)が、異常なNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームプロファイル、特に、NKp30の中間アイソフォームの相対的な高発現及びNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの減少した発現と相関することを発見した。
【0146】
TNFα及びIFNγ分泌を、当技術分野において周知の技術、例えばELISA、フローサイトメトリーにおける細胞内サイトカイン染色、又はサイトカイン分泌アッセイにより決定してよい。
【0147】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性は、また、正常なNKp30転写物アイソフォームの異常転写に相関しうる。異常転写は、コントロール又は標準の量もしくはレベルと比較して増加した発現でありうる。それは、また、例えば、癌処置により又は癌自体により誘導された、コントロール又は標準の量もしくはレベルと比較して増加した発現でありうる。
本発明は、NKp30をコードするmRNAの細胞のレベルを測定することによるNKp30タンパク質発現又は活性の決定を含む方法を提供し、コントロールレベルと比較した増加レベルは、異常なNKp30タンパク質発現と相関する。mRNAレベルは、エクスビボで又はインビトロで、例えば、患者の単離PBMCで、又は患者の単離NK細胞で測定してよい。
そのような方法は、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖転写)の使用を含む工程を含むことができる。
【0148】
本願に記載されている方法は、このように、前に示す通り、好ましくは、正常状態においてNKp30を発現する細胞(好ましくは、自己PBMC及び/又はNK細胞より選択される)を含むサンプルで実施する。
【0149】
本発明者らは、さらに、本明細書において、潜在的なNK細胞、幹細胞、又は骨髄のドナーの被験者であり、そのためNKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する必要がある被験者のNCR3突然変異状態及び/又はNKp30アイソフォーム状態又はプロファイルの決定を含む診断方法を記載する。
そのような診断方法は、また、NK細胞、幹細胞、又は骨髄移植のための候補において実施してよい。
【0150】
前に定義した、癌の処置に対する被験者の感受性又は被験者における癌の処置の有効性を評価する方法において使用される、又は被験者における癌の予後を評価する方法において使用されるキットが、さらに、本明細書において提供される。キットは、前に記載した、核酸プローブ、プライマー、及び/又はリガンド、例えば抗体などを含む。
キットは、また、ハイブリダイゼーション、増幅、又は結合反応、例えば、抗原−抗体免疫反応を実施するための容器又は支持体、試薬、及び/又はプロトコールを含みうる。
【0151】
本明細書において記載する方法は、インビボ、インビトロ、又はエクスビボで実施してよい。それらは、好ましくは、インビトロ又はエクスビボで実施される。
【0152】
スクリーニング方法
本願は、また、特に、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において、癌を予防又は処置するために有用な、化合物又は物質、好ましくは薬物候補又はリードをスクリーニングするための新規方法を提供し、試験化合物又は物質が、NCR3遺伝子の発現、及び/又は特定のNKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性を調節する能力を決定することを含む。
【0153】
上に記載する方法を使用してスクリーニングされる好ましい試験化合物又は物質は、NCR3遺伝子の機能的な転写及び/又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォーム、特に、少なくとも1つの突然変異した又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復又は増強することが可能である。
【0154】
NKp30中間(INTER)タンパク質アイソフォーム発現を減少させる、好ましくは、NKp30の短い(SHORT)及び/又は長い(LONG)タンパク質アイソフォーム発現をさらに増強又は増加させる化合物が好ましい。換言すると、NKp30中間アイソフォームの相対的発現が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの発現よりも低い、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームプロファイルを支持する化合物が、特に好ましい。
【0155】
本明細書において開示するスクリーニング方法では、好ましくは、NCR3核酸又はNKp30ポリペプチドもしくはタンパク質アイソフォーム、ならびにNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子を、新たな標的として使用する。そのような成熟は、CD83、CD86、及びHLADRの上方調節により特定されうる。この方法は、結合アッセイ及び/又は機能アッセイを含み、インビトロ、細胞系、又は動物などにおいて実施してよい。
【0156】
本発明者らは、特に、生物学的に活性な化合物又は物質、特に、癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質を選択する方法を開示し、前記方法は、インビトロで試験化合物又は物質を、NCR3核酸(例えば、遺伝子又はRNA)、NKp30タンパク質又はポリペプチドアイソフォーム、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子、及び、その任意のフラグメントより選択される産物と接触させること、及び前記化合物又は物質が前記産物に結合する能力を決定することを含む。
【0157】
さらなる特定の実施態様において、この方法は、本発明のNKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子を発現する組換え宿主細胞を、試験化合物又は物質と接触させること、及び、前記化合物又は物質がそれぞれ前記NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回する前記分子に結合し、その活性を調節する能力を決定することを含む。
特定の実施態様において、前記NKp30タンパク質アイソフォームは、NKp30の異常な状態又はプロファイルに関与する、異常な、好ましくは突然変異したNKp30タンパク質アイソフォーム又はそのフラグメントでありうる。
【0158】
前記核酸、ポリペプチド、又は分子に対する結合は、試験化合物又は物質が前記標的の活性を調節し、このようにして被験者において癌に導く経路に影響を与える能力としての指標を提供する。
【0159】
結合の決定は、当業者に公知の種々の技術により実施してよく、その一部は、本明細書において前に記載しており、例えば試験化合物又は物質の標識により、特定のNKp30タンパク質又はポリペプチド(野生型又は異常なNKp30)、例えば特にNKp30アイソフォーム、又は特にNKp30タンパク質又はポリペプチドなどに対する結合について公知である、又は同定されている標識されたコントロール又は参照リガンドとの競合による。
【0160】
本明細書において記載するさらなる目的は、生物学的に活性な化合物又は物質、特に癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法にあり、前記方法が、インビトロで、試験化合物又は物質を、本明細書において記載するNCR3遺伝子、特に野生型又は突然変異したNCR3遺伝子と接触させること、及び、前記化合物又は物質が前記NCR3遺伝子の発現を調節する、特にその選択的スプライシングを調節する能力を決定することを含む。
【0161】
生物学的に活性な化合物又は物質は、NCR3の機能的な転写及び/又は特定のNCR3タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である化合物でありうる。
【0162】
本明細書において、本発明者らにより(実験セクションを参照のこと)、特にトリコスタチンA(TSA)及び5−アザシチジン(5AZA)が、参照値又は平均発現値と比較し、NKp30 SHORT及びLONGアイソフォームの過少発現量に関連するNKp30 INTERアイソフォームの有意な(相対的な)過剰発現量を誘導するために、野生型NCR3遺伝子スプライシングを調節することができることが実証されている。
本発明者らは、さらに、本明細書において、特に、組み合わせで使用される配列番号49〜51に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド53が、参照値又は平均発現値と比較し、NKp30 SHORT及びLONGアイソフォームの相対的な過剰発現量に関連するNKp30 INTERアイソフォームの有意な(相対的な)過少発現量を誘導するために、野生型NCR3遺伝子スプライシングを調節することができることを開示する。
【0163】
生物学的に活性な化合物又は物質を選択する別の方法が、さらに提供され、それにおいて、前記方法は、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子と接触させること、及び、前記化合物又は物質がそれぞれ前記NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回する前記分子の活性を調節する能力を決定することの工程を含む。
【0164】
本明細書で開示する方法において使用可能であるNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く特定の分子は、TLR3リガンド、例えば二本鎖RNA(例えば、ポリA:U及びポリI:C)及び/又は低メチル化C及びGに富むオリゴヌクレオチド(CpGオリゴヌクレオチド)などより選択してよい。
【0165】
本明細書の別の特定の目的は、癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法にあり、前記方法が、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30の活性の調節に関与するポリペプチド、例えばIL−15、sushi IL−15Rα−IL−15ポリペプチド、又はその結合部位を含むフラグメントと接触させること、及び、前記化合物又は物質が前記ポリペプチド又はそのフラグメントに結合する能力を決定することを含む。
【0166】
さらなる特定の実施態様において、方法は、NKp30タンパク質アイソフォームの活性の調節に関与するポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を、試験化合物又は物質と接触させること、及び、前記試験化合物又は物質が前記タンパク質に結合し、前記タンパク質の活性を調節する能力を決定することを含む。
【0167】
本明細書において開示するさらなる方法は、生物学的に活性な化合物又は物質、特に癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質を選択する工程を含み、前記方法は、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30の活性の調節に関与する遺伝子と接触させること、及び、前記試験化合物又は物質が前記遺伝子の発現を調節する能力を決定することを含む。
【0168】
スクリーニングの方法の特定の実施態様において、調節は活性化である。スクリーニングの方法の別の特定の実施態様において、調節は阻害である。
【0169】
本発明の方法は、多くの化合物又は物質のスクリーニングに適する。これらの化合物又は物質は、種々の由来、性質、及び組成でありうる。試験化合物又は物質は、単離された又は他の物質との混合物中の、任意の有機又は無機物質、例えば脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子などでありうる。化合物又は物質は、例えば、産物のコンビナトリアルライブラリーの全て又は部分でありうる。
【0170】
特定の実施態様において、本発明は、また、癌の処置のために有用な化合物又は物質、好ましくは突然変異した又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現及び/又はNCR3遺伝子の機能的な転写を回復することが可能である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法を開示し、前記方法は、試験化合物又は物質が、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで、特定のNKp30タンパク質アイソフォーム又はそのリガンドの発現又は活性を調節する、特に誘導もしくは増加させる、又は逆に、減少させる能力を決定することを含む。
【0171】
本発明者らは、特定のNKp30タンパク質アイソフォームのリガンドならびにNKp30シグナル伝達経路を迂回する分子が、前に定義した通りに、癌治療に対する被験者の感受性を増加することができることを実証している。
【0172】
好ましいリガンドを使用して、正常な又は保護的なNKp30タンパク質の長い及び短いアイソフォームプロファイル発現を、比較的に、中間アイソフォームプロファイルb発現まで上方調節する、及び/又は、前に定義した通りに、癌治療に対する被験者の感受性を増加させてよい。
【0173】
本明細書において特定される、正常な又は保護的なNKp30タンパク質アイソフォーム発現を上方調節する、及び/又は、癌治療に対する被験者の感受性を増加させるために使用できる、NKp30シグナル伝達経路を迂回する好ましい分子は、NKp44、NKp46、NKG2D、NKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する被験者のNK細胞、幹細胞、又は骨髄上のTRAILに対する抗体より選択されうる。
【0174】
上のスクリーニング方法を、任意の適したデバイス、例えばプレート、例えば、マルチウェルプレート、チューブ、ディッシュ、フラスコなどにおいて実施してよい。いくつかの試験化合物又は物質を、並行してアッセイすることができる。
【0175】
組成物及び使用
公知の、又は、前に記載したスクリーニング方法を用いて単離され、機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は活性を回復又は増強、即ち、増加又は支持することが可能である、被験者において癌、特に小児癌、例えば神経芽細胞腫、又は肉腫、特にGIST、又は白血病、特にAMLを処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、本明細書に記載されている。
【0176】
被験者は、好ましくは、前に説明した、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者である。
【0177】
機能的NKp30発現は、典型的には、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルに関連しており、被験者において、参照値又は平均値と比較した場合、NKp30中間アイソフォームの相対量が減少しており、そして、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの相対的な発現が増加していることが、本発明者らにより本明細書において実証されている。
特定の実施態様において、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルは、NKp30中間アイソフォームの(相対)量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの量よりも低いプロファイルである。
【0178】
記載したスクリーニング方法により得られる物質を使用して、前に定義した通り、癌治療に対する被験者(前に定義した)の感受性を増強するための医薬的組成物を調製することもできる。
【0179】
化合物又は物質は、公知の化合物もしくは物質又は本発明のスクリーニング方法を使用して選択される化合物又は物質でありうる。
【0180】
被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するために使用可能な本明細書における化合物の例は、さらに、機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物アイソフォーム、機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム、NKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター、又はそのようなベクター又は核酸を含む組換え宿主細胞より選択することができる。
【0181】
機能的なNKp30 RNA転写又はNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現もしくは活性を回復することが可能である化合物又は物質をさらに使用して、前に定義した通りに、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製してよい。
【0182】
そのような化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばバルプロ酸(VPA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、MS−275、アクラルビシン、バナジン酸ナトリウム;DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン(デシタビン)など;PKC阻害剤、例えばGo6983など;イマチニブメシレート(STI571);サイトカイニンキネチン;シクロヘキシミド;デキサメタゾン;オレイン酸ナトリウム;エストロゲン;プロゲステロン;オンコスタチンM(OSM);FK506;サイクロスポリンA;スタウロスポリン及びその任意の組み合わせからなる群において選択してよい。
【0183】
配列番号49−51のアンチセンスオリゴヌクレオチドも、前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するために組み合わせで使用可能な化合物の例である。
【0184】
正常なNKp30タンパク質発現又はNKp30タンパク質アイソフォームの活性を有する被験者のNK細胞、骨髄、及び幹細胞は、そのような被験者において癌を処置又は予防するために使用することができる物質の例である。
【0185】
前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するためのNKp30シグナル伝達経路を迂回し、樹状細胞(DC)の成熟に導く生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、本明細書において開示される。
【0186】
そのような化合物は、好ましくは、IFNγ、TNFα、及びその組み合わせからなる群において選択される。
【0187】
前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するためのNKp30シグナル伝達経路を迂回し、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化に導く生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、さらに本明細書において開示される。
そのような化合物は、好ましくは、NKp44、NKp46、CD16(FcγRIIIA)、NKG2D、及びTLR3リガンドからなる群より選択される。
TLR3リガンドは、好ましくは、例えばポリA:U及びポリI:Cより選択してよい二本鎖RNAである。
【0188】
本発明者らは、さらに本明細書において、公知の又は本発明の方法を用いて選択される、及び、機能的なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を回復又は増強することが可能である上に記載する化合物又は産物の少なくとも1つを含む医薬的化合物を提供する。
【0189】
医薬的組成物は、本明細書において、さらに有利には、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)及び/又はスニチニブマレート(SU11248);ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)及びアントラサイクリン、例えばDOX、オキサリプラチン、及び/又はシスプラチン(PLAT)などを、組み合わせ調製物として、前記癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含んでよい。
【0190】
本明細書において記載する特定の組成物は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、PKC阻害剤及び/又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤を、単独で又は組み合わせ調製物として、前記癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含む。
【0191】
本明細書において開示する医薬的組成物は、さらに、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む。
【0192】
好ましい実施態様において、本明細書において記載する医薬的組成物、特に、化学療法産物を含まない医薬的組成物を、NKp30が突然変異した個人において、化学療法又は放射線療法の施行を含む任意の処置前に投与する。医薬的組成物の投与は、単回投与又は反復投与において、任意の続く処置の前及び/又は間に、例えば、任意の続く処置の1日前及び前記処置の間の3週間おきに実施してよい。
【0193】
TLR3リガンドを含む医薬的組成物は、好ましくは、任意の化学療法又は放射線療法の前及び/又は間に投与される。
【0194】
本明細書において提供する医薬的組成物の投与は、当業者に公知の任意の方法により、好ましくは経口経路により又は注射により(全身経路を介して)実施してよい。投与用量は、当業者により適応されうる。
【0195】
典型的には、処置の観点で、投与用量は例えば以下でありうる:
− 4−エピルビシン(アントラサイクリン)について:3週間おきに100mg/m2;
− オキサリプラチンについて:3週間おきに約600−1000mg/m2;
− 核酸化合物について、用量は、例えば、ポリA:Uについて、6週間で30−50mg/週に及ぶ。
【0196】
予防的処置に関連して、本発明の医薬的組成物は、好ましくは、3週間おきに投与される。
【0197】
反復処置は、恐らくは他の活性薬剤、治療、又は任意の医薬的に許容可能な賦形剤(例、バッファー、等張生理食塩水、安定化剤の存在においてなど)との組み合わせで実施してよいことが理解される。
【0198】
本発明は、また、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性の活性化を通じた、被験者において癌を処置又は予防する方法にある。
【0199】
特に、NCR3遺伝子の突然変異した対立遺伝子を持ち、異常なNKp30タンパク質アイソフォームを発現し、又は異常なNKp30タンパク質アイソフォーム活性を示す被験者を処置する方法(併用療法を含む)が本明細書において提供される。
被験者は、このように、例えば、遺伝子治療、タンパク質置換治療を通じて、又は、NKp30タンパク質アイソフォーム模倣剤及び/又は正常な又は保護的なNKp30タンパク質アイソフォーム状態又はプロファイルのアクチベーターの投与を通じて処置してよく、それにおいてNKp30中間アイソフォームの相対的発現は、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対的)発現より低い。前記方法の少なくとも1つを、さらに、前に定義した通りに、癌治療に組み合わせてよい。
【0200】
本発明は、また、本明細書において前に記載した通り、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性の活性化を通じた、被験者において癌を処置又は予防する方法にある。
【0201】
診断方法は、本明細書において記載する通り、癌の処置に対する被験者の感受性を評価し、又は、癌患者において先天的な又は獲得されたNKp30の定性的又は定量的な欠損を検出することを目的とし、そのような処置のために選択可能な被験者、特に、癌処置、特に化学療法処置、及び/又は同種骨髄移植の候補である、又は、それを受けるであろう被験者に適用してよい。同種骨髄移植の候補である、又は、それを受けるであろう被験者に関して、NKp30アイソフォーム発現の状態又はプロファイルに関して適切な骨髄ドナー被験者を選択することが好ましい。適切な骨髄ドナー被験者は、実際には、本明細書において定義するNKp30アイソフォームの機能的な又は正常な発現又は活性を有する被験者である。
【0202】
本発明の他の特徴及び利点を、以下の実験セクション(図1〜24を参照のこと)において与えており、それは例示的であり、本願の範囲を限定しないと見なすべきである。
【0203】
実験セクション
A.予備アッセイ(41人の患者/37人の健常ボランティアのコホート)
本発明者らは、本明細書において、NCR3遺伝子の転写調節(NK細胞表面でのNKp30アイソフォームの発現の定量的及び定性的な調節)における欠損が、長期間のT細胞依存的な抗腫瘍反応の確立に必要である、NKp30及びIFNγの産生を通じたNK細胞によるDC活性化の減少を介した腫瘍増殖の制御に影響を与えることを実証している41。
本発明者らは、最初に、41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアにおいてNCR3遺伝子中に分布する21の一塩基多型(SNP)を遺伝子型決定している。予備結果は、NCR3遺伝子中の2つの突然変異がGISTの制御に関連することを明らかにした。
【0204】
材料及び方法
患者及び健常ボランティア(HV)
コホートは、最初に、TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)により処置された41人のGIST患者から成り、Institut Gustave Roussy(IGR)において経過観察された。GIST患者は、EORTC第III相試験62005又はFrench Sarcoma Group(大半がIGR及びCLB)第III相臨床試験(BFR14)に登録され、それぞれイマチニブメシレート(IM)の用量及び持続時間を評価した。BRF14は、再発中の転移性又は切除不能な悪性GISTを伴う患者における、3年後に(実際には最初の1年間)処置介入対継続を無作為化した非盲検多施設試験であった54。EORTC62005試験は、GIST患者におけるIMの1日400mg対800mgを比較する無作為化試験であった55。
書面のインフォームドコンセントが、臨床試験及び免疫学的試験のための地域倫理委員会(Comite Consultatif de Protection des Personnes se pretant a la Recherche Biomedicale, Kremlin-Bicetre)に従って患者から得られた。
ヘパリン添加血液を、イマチニブメシレート(IM)治療から2、6、12ヶ月後に患者から採取した。約37人の健常ボランティアを、免疫学的パラメーターについてのコントロールとして使用した。
年齢、性別、リンパ球及びNK細胞の数、IMを用いた治療での用量及び持続時間を含む患者の特徴が記載されている(Menard et al.42)。
腫瘍反応をコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより評価し、そして反応を処置の開始から3ヶ月後ごとにRECIST基準に従って分類した。非進行性疾患には、安定疾患及び客観的な部分的又は完全な反応が包含された。患者の経過観察の中央値は47ヶ月(範囲6−75ヶ月)であった。
IGR、Center Leon Berard及び周辺の抗癌センターで管理された19人の神経芽細胞腫患者の予備コホートは、転移性腫瘍及び限局性腫瘍から成った。良好な又は不良な臨床予後を伴う患者の分類は、疾患の病期、年齢、及びMYCNオンコジーン増幅に基づいた12。
【0205】
RNA抽出及びRT−PCR
全細胞RNAを、RNeasyキット(Qiagen)を用いてPBMC及びNK細胞株から単離した。第1鎖cDNAを、5μgの全RNAから、SuperScript(商標)II Reverse Transcriptase及びランダムプライマー(Promega)を使用し、Invitrogenの取扱説明書に従って合成した。
【0206】
「GIST患者及び健常ボランティア」コホートについて、リアルタイム定量的PCR増幅を、FastStart DNA Master SYBRGreen I Mixを使用し、製造業者の取扱説明書に従って、0.3μMのプライマー、2mMのMgCl2、及びcDNAを用いて、20μlの最終反応容積中で行った。サーマルサイクリングをLightCycler(Roche Molecular System)を使用して実施し、95℃での10分間のインキュベーションにより開始し、38サイクル(95℃、1秒;65℃、10秒;72℃、20秒)が続いた。NKp30 mRNA発現レベルを、対応するGAPDH mRNA量を用いて、その相対的mRNA量を割ることにより標準化した。
リアルタイム定量的PCRにおいて使用される特異的プライマーは、Primer3(v.0.4.0)ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/)を用いてデザインした。
以下のプライマーを使用した:NKp30Fex2:5’−GTGAGGAATGGAACCCCAGAGT−3’(配列番号20);NKp30Fex2del:5’−GTGGTTCCAGGGAAGGAGGC−3’(配列番号21);NKp30Rex4I:5’−TTCCCATGTGACAGTGGCATT−3’(配列番号22又は27);NKp30Rex4II:5’−CCGGAGAGAGTAGATTTGGCATATT−3’(配列番号23);NKp30Rex4III:5’−TGGACCTTTCCAGGTCAGACATT−3’(配列番号24)。プライマー対”NKp30Fex2/NKp30Rex4II”を使用し、NKP30 SHORT−WT転写物を増幅した;SHORT−DEL転写物については”NKp30Fex2del/NKp30Rex4II”;INTER−WT転写物については”NKp30Fex2/NKp30Rex4I”;INTER−DEL転写物については”NKp30Fex2del/NKp30Rex4I”;LONG−WT転写物については“NKp30Fex2/NKp30Rex4III”;LONG−DEL転写物については“NKp30Fex2del/NKp30Rex4III”。
パートBにおいて以下に説明される通り、本発明者らは、後に、使用されているプライマー対(上で特定される)は、NKp30特異的であるが、LONG、SHORT、及びINTERMEDIATEアイソフォーム(即ち、それらのそれぞれの細胞内ドメインに従って区別されるNKp30アイソフォーム)間だけを識別でき、定常(”DEL”)と可変(”WT”)アイソフォーム(即ち、それらのそれぞれの細胞外ドメインに従って区別されるNKp30アイソフォーム)間はできない。明らかな通り、上の結果によって、特に被験者における癌の予後を評価するための重要なアイソフォームとしてのNKp30中間アイソフォームの特定が可能になる。上に記載した試験(パートA)は、しかし、二回目に(パートB)、患者数を二倍にし、前記NKp30中間アイソフォームの戦略的価値を確認するコホートで、本発明者らにより完成されている。TagMan方法を使用して加えた記載結果は、しかし、より具体的であり、パートBにおいて以下で説明する通りである。
【0207】
神経芽細胞腫コホートについて、より実用的な定量化システムを使用した。6つのNKP30転写物及びβ2Mハウスキーピング転写物のためのPCRプライマー及びTaqManプローブをPrimer Expressソフトウェアv1.0(Applied Biosystems)を用いてデザインした。
以下のプライマー及びプローブを使用した:NKP30 EC−WT:5’−TTTCCTCCATGACCACCAGG−3’(配列番号25);NKP30 EC−DEL:5’−GGTTCCAGGGAAGGAGGCT−3’(配列番号26);NKP30 EX4I:5’−TTCCCATGTGACAGTGGCATT−3’(配列番号27又は22);NKP30EX4II:5’−CGGAGAGAGTAGATTTGGCATATT−3’(配列番号28);NKP30EX4III:5’−GGACCTTTCCAGGTCAGACATT−3’(配列番号29);NKP30Probe(6−FAM/TAMRA):5’−AGCTGCACATCCGGGACGTGC−3’(配列番号30);B2MFor:5’−GATGAGTATGCCTGCCGTGT−3’(配列番号31);B2MRev:5’−AATTCATCCAATCCAAATGCG−3’(配列番号32);B2MProbe(6−FAM/TAMRA):5’−AACCATGTGACTTTGTCACAGCCCAA−3’(配列番号33)。
1マイクロリットルの第1鎖cDNAを、12.5μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)及び0.75μLのNKP30プライマー(10μM)及びプローブ(5μM)又は0.5μLのβ2Mプライマー(10μM)及びプローブ(5μM)と最終容積25μL中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、ABI prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用して行った。PCR条件は以下の通りであった:最初のインキュベーション50℃で2分、変性95℃で10分、続いて95℃で15秒、そして60℃(NKP30 SHORT−、INTER−、及びLONG−WT、ならびにβ2M転写物について)又は62℃(NKP30 SHORT−、INTER−、及びLONG−DEL転写物について)で1分間の45サイクル。リアルタイムPCR(RT−PCR)データを、2-ΔΔCT方法を使用し、製造業者の指示に従って分析した。
【0208】
本発明者らは、さらに、シグナル出現を可能にする別のNKP30Probe(6−FAM/TAMRA)を産生しており、前記プローブは、上に記載する配列番号30に対応するプローブよりも特異的であり、即ち、上に記載した適用されるRT−PCR方法に関連して、潜在的なDNA混入物とcDNAの間で識別できることに注目すべきである。前記の新たなプローブが、本明細書において配列番号48として特定されており、拡大コホートで使用されており、下の実験パートの記載から明らかである(パートB)。
【0209】
クローニング
合成された第1鎖NK92 cDNAを、PCRにより、HotStarTAQ DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いて50μl反応中で、Hybaid装置を使用して増幅した。
クローニングシステムのために使用されるHPLC精製プライマーを、Primer3 v0.4.0ソフトウェアを用いてデザインした:SHORT−WT及びSHORT−DEL用:KPNI−NKp30 5’−GGGGTACCCCGACATGGCCTGGATGCTGTT−3’(配列番号34)及びEcoRI−SHORT 5’−GGAATTCCTGGTGGAAGGGAAAGTTCAG−3’(配列番号35);INTER−WT及びINTER−DEL用:KPNI−NKp30及びEcoRI−INTER 5’−GGAATTCCTTTTGAAGAGGACTAGGGACATC−3’(配列番号36);LONG−WT及びLONG−DEL用:KPNI−NKp30及びEcoRI−LONG 5’−GGAATTCCATTTCTCAGGACAATCAGG−3’(配列番号37)。
下線を引いた配列は、発現プラスミドベクター中のDNAクローニング用の制限酵素認識部位である。サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で15分)で開始し、変性(95℃で40秒)、SHORT、INTER、及びLONGプライマーについてアニーリング(67℃で30秒)、及び伸長(72℃で1分)の30サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。PCR産物をアガロースゲルで単離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を使用して精製し、そして制限酵素KpnI及びEcoRI(Ozyme)を用いて消化した。消化されたフラグメントを、pcDNA3.1哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)に、そして後にpIRES2哺乳動物バイシストロニック発現ベクター(CLONTECH)にも連結した。ヌクレオチド配列をABI PRISM 310遺伝子アナライザー(Applied Biosystems)により分析した。
【0210】
遺伝子型決定
DNAを、Ficoll−Hypaque密度勾配により分離された抹消血単核細胞(PBMC)から抽出した。NCR3突然変異を同定するために、本発明者らは3つの定義されたPCR産物のシークエンシング分析を実施した。
3つのプライマー対を、PRIMER3プログラムを用いてデザインした:NCR3Frag1:5’−GATGGGTCTGGGTACTGGTG−3’(配列番号14)及び5’−GGGATCTGAGCAGTGAGGTC−3’(配列番号15);NCR3Frag2:5’−ATCCTGTGCTCTCTGGGTGT−3’(配列番号16)及び5’−CTGTACCAGCCCCTAGCTGA−3’(配列番号17);NCR3Frag3:5’−CTGAACTTTCCCTTCCACCA−3’(配列番号18)及び5’−GGTCCAGCCAGTAAAAACCA−3’(配列番号19)。
PCR増幅を、AmpliTaq(PE Biosystems)を用いて、50μl反応中で、Hybaid装置を使用して行った。サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で5分)で開始し、変性(95℃で40秒)、アニーリング30秒(NCR3Frag1プライマーについて64℃、NCR3Frag2プライマーについて60℃、及びNCR3Frag3プライマーについて64℃)、及び伸長(72℃で10秒)の40サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。シークエンシング反応を開始する前に、PCR産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、そして2%アガロースゲル電気泳動により定量化した。シークエンシング反応を、CEQ8000キット及びCEQ8000自動化蛍光シークエンサー(Beckman Coulter)を用いて実施した。
【0211】
クラスタリング分析
研究された教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した56。
【0212】
HDAC及び脱メチル化剤によるNCR3選択的スプライシングの調節
NK92細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、5−アザシチジン(2μM)及びIL−2(50UI/ml)と37℃で36時間インキュベートした。
YTS細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、トリコスタチンA(100nM)と37℃で45時間インキュベートした。
【0213】
NK細胞フローサイトメトリー分析
NK細胞を以下の抗体を用いて染色した:BD Pharmingenから購入したCD3−APC(クローンUCHT)、MiltenyiからのNKp30−PE(クローンAF29−4D12)、Beckman-CoulterからのCD56−PC5(クローンN901)。蛍光をFACScaliburサイトメーターで取得し、そして続いてCellQuest Proソフトウェアを用いて分析した。
【0214】
インビトロNK細胞エフェクター機能の評価
NKp30架橋実験では、NK細胞を、ヒトNK細胞Easy Sepキット(Stem Cell Technologies, Paris, France)を用いて精製し(純度>95%)、2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30(クローン210847、R&D Systems、Lille、France)又はアイソタイプコントロールを用いて7時間コーティングした96ウェル−Maxisorpプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)中に播種した。20時間のNKp30架橋後、上清を回収し、−80℃で保存し、そして次に市販のELISAキットを使用し、製造業者の取扱説明書(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)に従って評価した。あるいは、NK細胞を、10μMモネンシンを添加したAIMV中で2μlの抗CD107a−PE(クローンH4A3,Pharmingen)と7時間インキュベートし、CD3/CD56染色を架橋の終わりに実施した。
【0215】
統計分析
ノンパラメトリックなマン−ホイットニー検定を異なる群の比較のために使用した。結果は、p<0.05の場合、95%の信頼で有意であると考えられた。全ての統計分析を、GraphPad Prismソフトウエアバージョン5を用いて実施した。
【0216】
予備試験での特定の目的
目的1:GIST患者における処置に対する反応におけるNKp30アイソフォームの保有率及び予測値。
イマチニブメシレートで処置された一連の>40人の消化管肉腫(GIST)を持つ患者及び>30人の年齢及び性別を一致させた健常ボランティア(HV)を、個々のNKp30アイソフォームの各々の発現のそれらの転写パターンについて検証した。
【0217】
並行して、精製された抹消血単核細胞(PBMC)上でのNKp30発現レベル及び機能(抗NKp30抗体を用いた架橋時での脱顆粒及びIFNγ/TNFα産生)をアッセイしている。
NKp30のmRNAプロファイリング、タンパク質発現、及び機能の間の相関を、i)HV患者及びGIST患者の間、ii)イマチニブメシレートを用いて処置された患者における進行性及び非進行性の間で検証した。
【0218】
目的2:神経芽細胞腫患者におけるNKp30アイソフォームの予後値
特定のヒト悪性腫瘍(例えば神経芽細胞腫など)が、NK細胞により制御されうる。この仮定に基づき、本発明者らは、GIST患者において立証されたNKp30 mRNA発現の保護的パターンも、従来の処置で処置された他の悪性腫瘍に適用されるか否かを研究している。19人の神経芽細胞腫患者の予備コホートを試験した(良好な臨床予後を伴う患者対不良な臨床予後を伴う患者におけるPBMC細胞中のNKp30 mRNAのプロファイリング)。
【0219】
目的3:NKp30アイソフォームの薬理学的調節
エピジェネティック調節によって選択的スプライシングの調節が可能になる。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を使用し、本発明者らは、定義されたパターンを伴うNK細胞株で、インビトロでの種々の割合の各々の個々のNKp30スプライシングバリアントにおける潜在的な変化を試験している。
【0220】
結果
1.GIST患者における処置に対する反応におけるNKp30アイソフォームの保有率及び予測値
利用可能なデータベースに従い、ヒトNCR3遺伝子は、6つの異なってスプライシングされる転写物として発現される:2つの型の細胞外ドメインが存在する(可変Ig様ドメイン及び定常Ig様ドメイン)、それらの各々が3つの別々の細胞内ドメイン(短い、中間、及び長いテール)の1つに連結されている24(図1)。
6つのNKp30アイソフォームの臨床的及び機能的関連性を研究するために、本発明者らは、最初に、41人のGIST患者(全員が少なくとも2ヶ月間にわたりイマチニブメシレートを用いて処置される−標準的ケア−)及び37人のHVのNKp30転写プロファイルを分析した。
特異的プライマーを、RT−PCR方法を使用して6つの転写物を定量化するために、各NKp30アイソフォームについて設計した(SHORT−WT:可変Ig様ドメイン/短いテール;INTER−WT:可変Ig様ドメイン/中間テール;LONG−WT:可変Ig様ドメイン/長いテール;SHORT−DEL:定常Ig様ドメイン/短いテール;INTER−DEL:定常Ig様ドメイン/中間テール;LONG−DEL:定常Ig様ドメイン/長いテール)(図2)。上で説明した通り、2回目において、SYBRGreenアッセイにおいて使用される上に記載したプライマーは、実際に、3つの別々の細胞内ドメインに特異的であるが、しかし、可変及び定常細胞外ドメインアイソフォームの間を識別することはできないと思われた。以下に加えた結果によって、LONG、SHORT、及びINTERMEDIATEアイソフォームの間を識別するための第1の使用したプライマーの関連性が確認される。本発明者らは、また、第1の使用した抗体が、NKp30特異的であるが、定常ドメインアイソフォームを確実に特定することができず、しかし、可変細胞外ドメインアイソフォームを確実に検出することができることを発見した。以下に加えた結果は、本明細書においてより関連している。なぜなら、それらは、配列番号25、27(又は22)、28、29、31、32、33、及び48により特定される上に記載するプライマーを使用して得られ、それらは、SHORT、LONG、及びINTERMEDIATE可変細胞外ドメイン(“WT”)アイソフォームを特異的に特定することができる。それらは非常に重要な(二重)患者コホートで使用されたため、それらは本明細書で、特に被験者における癌の予後を評価するために、各アイソフォームの正確な相対量を制御するために使用可能である。
NKp30アイソフォームの発現を、PBMCのcDNAから評価した。GIST患者及びHVにおける6つのNKp30アイソフォームの割合の比較によって、41人の患者の第1コホートで、GIST患者におけるINTER−DELアイソフォームの過少発現量に関連するSHORT−DELアイソフォームの過剰発現量が明らかになった(図3A)。
細胞内ドメイン[3つのSHORT、INTER、及びLONG細胞内ドメインについてのWT(可変Ig様ドメイン)バリアント及びDEL(定常Ig様ドメイン)バリアントの合計]を考慮することにより、GIST患者プロファイルは、最初に、HVと比較した、SHORTアイソフォームの過剰発現量及びINTERアイソフォームの過少発現量により特徴付けられた(図3B)。
処置の経過中での4人のGIST患者におけるNKp30転写プロファイルの安定性を制御した(図4)。患者の大半が、安定なNKp30プロファイルを示した。
6つのNKP30アイソフォームに基づく階層的クラスタリングアプローチを使用し、本発明者らは、最初に、2群における患者のコホートを分離した(図5)。B群の患者は、進行までの加速時間(45ヶ月で35%の再発)を示した。対照的に、A群の患者のわずか16%がイマチニブメシレートの45ヶ月後に再発した。興味深いことに、HVの50%が、好ましくないB群において分離された。
本発明者らは、A群及びB群に関連するNKP30転写プロファイルを特徴付けた(図6):A群は、この特定の例において、INTER高/SHORT低/LONG低プロファイル(「プロファイルA」と呼ぶ)により特徴付けられ、B群は、GIST患者(図6A−B)についてと同様に健常ボランティアについて、INTER低/SHORT高/LONG高プロファイル(「プロファイルB」と呼ぶ)により特徴付けられた(図6C−D)。
【0221】
2.GIST患者及びHVにおけるNKp30アイソフォームの転写プロファイルの機能的関連性
HV及びGIST患者から精製されたNK細胞でのFACS分析におけるNKp30細胞表面発現の比較では、プロファイルA対プロファイルBを示し、有意差は明らかにならなかった(図7)。興味深いことに、これらの2つのプロファイルの機能的な特徴付けによって、INTER低/SHORT高/LONG高プロファイルBと、インビトロでのNKp30架橋時のNK細胞による(精製NK細胞上での)IFNγの低産生の間の関連が明らかになった(図8)。
関連性は、これらのNK細胞の細胞毒性機能とNKp30プロファイルの間で検出されなかった(データ示さず)。
【0222】
3.GIST患者及びHVにおけるNCR3突然変異とNKp30アイソフォームの転写プロファイルの間での関連性
B群のNKp30 INTER低/SHORT高/LONG高転写プロファイルは、非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異に関連する(B群の突然変異した個人の13%対A群の0%)。
A群のNKp30 INTER高/SHORT低/LONG低プロファイルは、NCR3遺伝子の3’非翻訳領域中に位置付けられるNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異に関連する(A群の突然変異した個人の58%対B群の3%)(図9)。興味深いことに、NCR3*3790 C突然変異は、NCR3遺伝子中のポリアデニル化部位を破壊する(図10)。NCR3*3790 CC患者での結果は、INTERアイソフォームの排他的な転写である(データ示さず)。
【0223】
4.神経芽細胞腫患者におけるNKp30アイソフォームの予後値
神経芽細胞腫における6つのNKp30アイソフォームの臨床的な関連性を研究するために、本発明者らは、良好な又は不良な臨床予後を伴う診断時の19人の患者でのNKp30転写プロファイルを分析した。
NKp30アイソフォームの発現を、PBMCのcDNAから評価した。神経芽細胞腫患者における6つのNKp30アイソフォームの割合の比較によって、良好な予後を伴う神経芽細胞腫患者と比較し、不良な予後を伴う神経芽細胞腫患者におけるINTERアイソフォームの過少発現量に関連するSHORT及びLONGアイソフォームの過剰発現量の傾向が明らかになった(図11)。
6つのNKP30アイソフォームに基づく階層的クラスタリングアプローチを使用し、本発明者らは、2群における患者のコホートを分離した(図12)。良好な臨床予後を伴う7人の患者の5人が、NKp30 INTER高/SHORT低/LONG低プロファイルにより特徴付けられる2群において分離された(図13)。この特定の例において、非進行性GIST患者(プロファイルA)において立証されたNKp30 mRNA発現の保護的パターンが、良好な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者に適用されると思われた。
【0224】
5.薬物を用いたNCR3遺伝子の選択的スプライシングの調節
選択的スプライシングを調節するいくつかのアプローチを使用し、NKp30 INTER低/SHORT高/LONG高(本試験(パートA)において得られた最初の結果後にプロファイルBとして特定された)からNKp30 INTER高/SHORT低/LONG低(本試験(パートA)において得られた最初の結果後にプロファイルAとして特定された)へのスイッチを操作してよい。
本発明者らは、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤に属する薬物のいくつかのファミリーを試験している。
YTS細胞株及びNK92 NK細胞株をモデルとして使用した。なぜなら、両方がNKp30 INTER低/SHORT高/LONG高(パートAにおいてプロファイルBとして特定された)を示すからである。予備結果によって、トリコスタチンA(TSA)及び5−アザシチジン(5AZA)が、YTS細胞株及びNK92細胞株においてそれぞれSHORT及びLONGアイソフォームの過少発現量に関連するINTERアイソフォームの有意な過剰発現量を誘導できることが示された(図14)。
【0225】
B.追加試験(80人の患者/56人の健常ボランティアのコホート)
材料及び方法
発現ベクターにおけるスプライセオソームのクローニング及びトランスフェクション
合成された第1鎖NK92 cDNAを、PCRにより、HotStarTAQ DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いて50μl反応中で、Hybaid装置を使用して増幅した。クローニングシステムのために使用されるHPLC精製プライマーを、Primer3 v0.4.0ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/)を用いてデザインした:NKp30b用:KPNI−NKp30 5’−GGGGTACCCCGACA TGGCCTGGATGCTGTT−3’(配列番号34)及びEcoRI−NKp30b 5’−GGAATTCCTGGTGGAAGGGAAA GTTCAG−3’(配列番号35);NKp30c用:KPNI−NKp30及びEcoRI−NKp30c 5’−GGAATTCCTTTTGAA GAGGACTAGGGACATC−3’(配列番号36);NKp30a用:KPNI−NKp30及びEcoRI−NKp30a 5’−GGAATTCCATTTCTCAGGACAATCAGG−3’(配列番号37)。下線を引いた配列は、発現プラスミドベクター中のDNAクローニング用の制限酵素認識部位である。
【0226】
サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で15分)で開始し、変性(95℃で40秒)、NKp30a、b、及びcプライマーについてアニーリング(67℃で30秒)、及び伸長(72℃で1分)の30サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。PCR産物をアガロースゲルで単離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を使用して精製し、そして制限酵素KpnI及びEcoRI(Ozyme)を用いて消化した。消化されたフラグメントをpIRESバイシストロニック哺乳動物発現ベクター(Clontech)に連結した。ヌクレオチド配列をABI PRISM 310遺伝子アナライザー(Applied Biosystems)により分析した。
【0227】
NKLクローンを使用した機能試験
DC/NKクロストーク。GM−CSF+IL−4中で培養された0.5×105個の未熟単球由来DCを、前に記載された通りに17、NKp30a(LONG)、b(SHORT)、又はc(INTERMEDIATE)アイソフォームのいずれかを発現する1.5×105個のNKLクローンと24時間、1:3の比率で混合した。上清を収集し、市販のELISAヒトIFNγ、ヒトTNFαキット(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)を使用してサイトカインレベルをモニターした。腫瘍/NK混合培養。105個のHEK 293(E. Vivier, CIML, Marseille, Franceの好意により提供)又はGIST 882(J. A. Fletcher, Harvard Medical School, Boston, MAの好意により提供)又はMel 888を、NKp30a(LONG)、b(SHORT)、又はc(INTERMEDIATE)アイソフォームのいずれかを発現する105個のNKLクローンと24時間、1:1の比率で混合した。上清を収集し、市販のELISA(上に記載)を使用してサイトカインレベルをモニターした。架橋NKp30及び脱顆粒測定及びサイトカイン産生。以下の説明を参照のこと。
【0228】
患者及び健常ボランティアのコホート
NK細胞反応の免疫モニタリング試験によって、EORTC Phase III試験62005に登録されたGIST患者及びFrench Sarcoma Group Phase III臨床試験(BFR14)に含まれたGIST患者が前向きに検証され、IMの用量及び持続時間がそれぞれ評価された(n=80)。書面のインフォームドコンセントが、臨床試験及び免疫学的試験のための地域倫理委員会に従って患者から得られた。ヘパリン添加血液を処置中に(IM治療の2−94ヶ月の間、平均=28±3ヶ月)患者から採取した。患者の特徴を表1に描写している。
【0229】
【表15】
【0230】
腫瘍反応をコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより評価し、そして反応を処置の開始から3ヶ月後ごとにRECIST基準に従って分類した。非進行性疾患には、安定疾患及び部分的又は完全な反応が包含された。
N=56の健常ボランティア(性別及び年齢を一致させたGIST患者)を免疫学的パラメーターのためのコントロールとして使用した。
【0231】
AML患者のコホート
標準的FAB57及びWHO基準58に従いデノボAMLを伴う年齢45歳(±12.6)の218人の患者について、利用可能なFLT3突然変異状態を分析した。腫瘍の突然変異状態を、前に記載した通りに決定した51。全てを、ダウノルビシン又はイダルビシン及びアラシチン(aracytin)と組み合わせた導入化学療法により処置した。60歳以下の患者(n=193)を自己幹細胞移植(ASCT)又は高用量のアラシチンを用いた集中化学療法に、他(n=25)を中間用量のアラシチンを用いた化学療法に割り当てた。
【0232】
NKp30依存的サイトカイン分泌及びバルクNK細胞上での脱顆粒の評価
GIST患者及びHVのPBMCをFicoll-Hypaque(Amersham Pharmacia, Orsay, France)密度緩衝遠心分離により得た。NKp30架橋実験では、NK細胞を、ヒトNK細胞Easy Sepキット(Stem Cell Technologies, Paris, France)を用いて精製し(純度>95%)、2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30(クローン210847、R&D Systems、Lille、France)又はアイソタイプコントロールを用いて7時間コーティングした96ウェル−Maxisorpプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)中に播種した。別の方法では、NK細胞を1000IUのrIL−2(Chiron, USA)を用いて40時間活性化した。次に、NK細胞の上清を、市販のELISAキット(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)を使用し、それらのTNFaレベルについて評価した。脱顆粒を、前に記載した通りに、フローサイトメトリーにより評価した17。簡単に説明すると、NK細胞を、10μMモネンシンを添加したAIMV中で2μlの抗CD107a−PE(クローンH4A3,Pharmingen)と7時間インキュベートし、CD3/CD56染色を架橋の終わりに実施した。
【0233】
アイソフォームのRT−PCR及び非階層的クラスタリング
全細胞RNAを、RNeasyキット(Qiagen)を用いてPBMC及びNK細胞株から単離した。第1鎖cDNAを、5μgの全RNAから、SuperScript(商標)II Reverse Transcriptase及びランダムプライマー(Promega)を使用し、Invitrogenの取扱説明書に従って合成した。6つのNKP30転写物及びβ2Mハウスキーピング転写物のためのPCRプライマー及びTaqManプローブをPrimer Expressソフトウェアv1.0(Applied Biosystems)を用いてデザインした。以下のプライマー及びプローブを使用した:
【表16】
1マイクロリットルの第1鎖cDNAを、12.5μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)及び0.75μLのNKP30プライマー(10μM)及びプローブ(5μM)又は0.5μLのβ2Mプライマー(10μM)及びプローブ(5μM)と最終容積25μL中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、StepOnePlus System(Applied Biosystems)を使用して行った。PCR条件は以下の通りであった:最初のインキュベーション50℃で2分、変性95℃で10分、続いて95℃で15秒、そして60℃(NKP30a(LONG)、b(SHORT)、及びc(INTERMEDIATE)、ならびにβ2M転写物について)で1分間の45サイクル。リアルタイムPCRデータを、2−ΔCT方法を使用し、製造業者の指示に従って分析した。別々のNKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と3つのa、b、及びcアイソフォームの総量の比率として決定した。教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン中央相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した56。
【0234】
NCR3エクソン4の3’UTR領域の遺伝子型決定
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_7514908_10を使用し、3790 T/C多型を遺伝子型決定することができる。簡単に説明すると、10ngのゲノムDNAを、5μlの2×TaqMan Genotyping Master Mix(Applied Biosystems)及び0.25μlの40×genotyping assayと最終容積10μl中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、StepOnePlus System(Applied Biosystems)を使用して行った。
【0235】
統計分析。フィッシャー直接確率法及びノンパラメトリックなマン−ホイットニー検定を異なる群の比較のために使用した。全ての統計分析を、GraphPad Prismソフトウエアバージョン5を用いて実施した。生存曲線をカプラン−マイアー方法に従ってプロットし、そしてログランク検定を使用して比較した。全生存率及び無増悪生存率についての独立危険因子を、Cox比例ハザード回帰モデルを使用して決定した。生存分析のために、SPSS17.0ソフトウェアを使用した。
【0236】
結果
3つのNCR3/NKp30エクソン4アイソフォームの発現クローニング
NCR3/NKp30エクソン4によりコードされる別々のアイソフォームの潜在的な機能を解明するために(図1)、本発明者らは、pIRES発現ベクター中に3つの別々のNCR3/NKp30スプライスバリアントをクローニングした(図15)。これらの3つの転写物は、エクソン4I、4II、及び4IIIを使用し、それぞれNKp30c(INTERMEDIATE)、NKp30b(SHORT)、及びNKp30a(LONG)と名付けられている23(配列番号8、9、及び10)。NKp30a及びNKp30bの転写物は3’末端に276ntを共有し、しかしながら、それらの最後のエクソンの5’スプラス部位で分岐し、NKp30bの4番目のエクソン(エクソン4II)がNKp30aのイントロン3に55ntだけ伸びている。NKp30a及びNKp30bの転写物は、それぞれ位置31664825及び31664952に終止コドンを持ち、そしてNCBI Reference Sequence:NC_000006.10(配列番号1)を使用し、位置31664690に共通のポリアデニル化シグナル(ポリアデニル化シグナル2)及び位置31664671に共通のポリアデニル化部位を共有する。NKp30cの4番目のエクソン(エクソン4I)は、NKp30a及びNKp30bのイントロン3に伸び、そして位置31665070に別個の終止コドンを、そして位置31665049及び31665031にそれぞれポリアデニル化シグナル及び部位を持つ24。3つの別々のNKp30スプライスバリアントをコードするcDNA構築物(配列番号8、9、及び10で示す)を、Jurkat細胞株又はNKL細胞株に、緑色蛍光タンパク質GFPをコードするポリシストロニックレポーター遺伝子の5’に安定的にトランスフェクトした。G418中での選択後、表面NKp30発現を免疫蛍光法及び細胞蛍光測定により決定し、それをGFP蛍光又は非トランスフェクト細胞と比較した。全てのトランスフェクト細胞が、同程度のレベルのGFP及びNKp30を発現した(図16)。また、3つのNKp30トランスフェクト細胞株は、他のNK細胞受容体(NKG2D、NKp44、NKp46、KIR、CD25、図17)の発現において親細胞とは異ならず、それらの続く機能比較を可能にした。
【0237】
各NKp30アイソフォームの異なる機能を分析するために、本発明者らは、NKp30会合後にトランスフェクトJurkat細胞及びNKL細胞からのサイトカイン放出をモニターした。NKp30a及びNKp30bのいずれかを発現する細胞が、それぞれ多量のIL−2(図18A)及びIFNγ(図18B)を産生したのに対し、NKp30cアイソフォームを発現する細胞はNKp30誘発に反応してサイトカインを分泌しなかった(図18A及びB)。NKL−NKp30c細胞は、また、未熟樹状細胞(DC)を認識しなかった。それは、DCとの共培養において容易にIFNγ及びTNFαを分泌したNKL−NKp30a細胞又はNKL−NKp30b細胞とは対照的である39(図18C)。同様の結果が、可変レベルのNKp30リガンドを発現するHEK293、Mel888、及びGIST882腫瘍細胞を使用して得られた(データ示さず)(図18D)。細胞毒性アッセイによって、NKL−NKp30a(しかし、NKL−NKp30bやNKL−NKp30cではない)細胞が直接的な又は再指令された殺傷アッセイにおいて脱顆粒を示すことが明らかになった(図19)。このように、NKp30aが、細胞毒性レベルでNKエフェクター機能を誘発すことができる唯一のアイソフォームであると思われる。全体で、発現クローニングによって、このように、NKp30アイソフォームがインビトロでそれらのエフェクター機能において有意に異なること、及び、NKp30cが機能的に欠損したアイソフォームを構成することが、この後者の分子が細胞表面で安定に見え、正確に発現されることができるという事実にもかかわらず、明らかになった。
【0238】
80人のGIST患者のコホートにおけるNCR3/NKp30遺伝子の異なる発現パターン
末梢NK細胞における3つのNKp30アイソフォームの異なる発現プロファイルを研究するために、本発明者らは、GIST患者又は健常ボランティア(HV)からのバルク抹消血単核細胞(PBMC)上のβ2ミクログロブリンに対して標準化された、NKp30a、b、又はc用の特異的プライマーを使用した定量的RT−PCRを実施した。教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラムを使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。図20において、各列は1つのNKp30アイソフォームを表し、そして各カラムは1人のGIST患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。GIST患者の80人中44人(55%)が、NKp30a及びNKp30bが最も主なアイソフォームである転写プロファイルを示した(<<プロファイルA>>と指定)(図20A及び20B)。逆に、<<プロファイルB>>の個人は、高い割合のNKp30cアイソフォームを提示した(図20A及び20B)。NKp30発現の細胞分布の高い特異性から予測される通り26、各NKp30アイソフォームの異なる発現プロファイルを明らかにするRT−PCRの結果が、PBMC対バルクNK細胞において同程度であった(図21)。経時的な個人内変動が有意に思われなかったことは注目に値する(4人の代表的な個人での疾患経過中の3〜4の異なる時間点で示されている、図4)。
【0239】
患者において得られた2つのプロファイルを解釈するために、本発明者らは、それらを、性別、年齢、及び地理的由来において一致された56人のHVのコホートにおいて得られた各アイソフォームの相対的な転写収量と比較した。明らかに、HVからのPBMC又はNK細胞が、プロファイルA GISTのような、NKp30a及びbアイソフォームを主に発現する(図20B)。
【0240】
さらに、プロファイルA及びプロファイルBの個人が、同程度のレベルのNKp30膜発現を示し、NKp30の共通する細胞外部分に特異的な抗体を用いて染色されたNK細胞の比較細胞蛍光分析により決定された通りである(図20C)。
【0241】
GIST患者について確立されたクラスタリングを使用した56人のHVからのNKp30発現プロファイルの分類は、GIST患者とHVが、主なNKp30c発現を伴う個人の割合において異なることを示す。GIST患者の53%がプロファイルBを持ち、わずか30%のHVがこのカテゴリーに入る(フィッシャー直接確率法:p=0.02)(図22A)。
【0242】
全体で、これらの結果は、NKp30の優先的なエクソン4の使用における安定した表現型の存在、及び、非機能的なNKp30cアイソフォーム(プロファイルB)の主な発現が、コントロールコホートよりもGISTにおいてより高頻度であることを示す。
【0243】
プロファイルB(NKp30c)GIST患者からのNK細胞によるTNFαの分泌欠損
次に、本発明者らは、NKp30のインビトロ架橋後に、<<プロファイルA>>(n=76)対<<プロファイルB>>(n=60)を示す個人からの精製NK細胞によるTNFα放出を比較的に評価した。プロファイルBを伴うGIST患者及びHVからのNK細胞は、NKp30cを過剰発現するトランスフェクトNKL細胞株において観察される機能的な欠損に従い、プロファイルAの個人と比較し(図22B)、TNFα産生における有意な減少を示す(上を参照のこと)。この異なる反応は、IL−2の非存在又は存在の両方において、NKp30の誘発時に得られた(図22B)。しかし、それらのNK細胞をIL−2単独で刺激し(NKp30特異的抗体の非存在において)、TNFα分泌を測定した場合、プロファイルAとプロファイルBの個人の間で差は存在しなかった(図22B)。NKp30依存的な反応における同様の差が、HVを分析から除き、プロファイルA及びBを伴うGIST患者だけを互いに比較した場合に得られた(図22C)。重要なことに、プロファイルBの患者からのNK細胞が、プロファイルAの患者と比較し、低下したNKp30促進性の脱顆粒を示した(図22D)。故に、NKp30スプライシングにおける個人内変動は、TNFα分泌及びNK細胞脱顆粒に影響を与える。非機能的NKp30cアイソフォームを主に発現するプロファイルBを伴う個人は、NKp30駆動性のNKエフェクター機能における明白で、しかしながら選択的な欠損を示す。
【0244】
プロファイルB(NKp30c)GIST患者の不良な予後
本発明者らは、GIST患者での全生存率の前向き分析を実施し、それらは全てKITチロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブメシレート(IM)を用いて処理された。80人のGIST患者での臨床経過観察の平均は51ヶ月(±24)であった。プロファイルA及びBは、GIST予後を決定する古典的なパラメーターのいずれかにおいて有意に異ならなかった(表1)。このように、長期生存に関連するc−KITプロトオンコジーンのエクソン11突然変異を持つ腫瘍を伴う患者の割合は、プロファイルA及びプロファイルBにおいてそれぞれ55%及び53%であった(フィッシャー直接確率法:p=ns)8。プロファイルBの患者は、単変量解析において最初のIM処置から劣る全生存率を有することが見出された(生存の中央値:プロファイルBにおける80ヶ月対プロファイルAにおいて中央値に達せず、ログランク検定:p=0.001)(図23A)。Coxモデルを使用した多変量解析において、プロファイルBが、全生存率についての唯一の独立予後因子として保持された(RR=13.1、95% CI[4.9−36.1]、p=0.01)。対照的に、NK細胞のNKp30発現レベルが同じコホートの患者内での全生存率に影響を有した(図23B)。全体で、これらデータは、機能異常NKp30cアイソフォーム(プロファイルB)の優先的な発現がGIST患者における憂うつな治療の転帰を予測することを示す。
【0245】
プロファイルB(NKp30c)患者に関連するNCR3*3790T/C(rs986475)
次に、本発明者らは、NKp30スプライスバリアントの優先的な発現をこの遺伝子の一塩基多型(SNP)遺伝子型に関連付けることを試みた。スプライシング変異は、NKp30a/bの転写を可能にするポリアデニル化シグナル2の喪失を導き、選択的NKp30c転写を駆動することが提示されている。実際に、NCR3遺伝子のポリアデニル化シグナル2における位置するSNP(NCR3*3790 T/C、rs986475)(図1)が、AAUAAAモチーフ内の一塩基置換に起因するNKp30a/bの転写を除去しうる。それは次にポリアデニル化及び切断効率に影響を与える59。従って、本発明者らのデータは、NCR3*3790がNKp30エクソン4の選択的スプライシングを制御することができることを示す。実際に、プロファイルBパターン(NKp30c過剰発現)を提示するそれらの患者の51%が、NCR3*3790 TC又はCC遺伝子型を示した(対プロファイルAを示すGIST患者における0%、フィッシャー直接確率法:p<0.0001)(図24A)。同様に、プロファイルBパターンを提示するHVの約58%が、NCR3*3790 TC又はCC遺伝子型を持った(図24B)。結論として、NCR3*3790 T/Cは、欠損NKp30cアイソフォームの発現を上昇させるエクソン4Iの異常な使用に導くことができる因子の1つである。
【0246】
c−KIT及びFLT3における機能獲得突然変異は、GIST及びAML患者においてNCR3*3790 T/Cに関連する
オンコジーン駆動性のDNA損傷反応は、NK細胞認識のために要求されるNCRリガンドの膜発現を誘発し、そしてこれは免疫媒介性の腫瘍抑制の機構を構成しうる60。従って、欠損したNK細胞機能が、特定の悪性腫瘍の発生の素因となりうる。軽微なNK細胞機能障害を、定義されたオンコジーン駆動性の悪性腫瘍と一致させる試みにおいて、本発明者らは、別々のc−kit/PDGFRα突然変異を持つGIST患者(GIST患者の約14%がc−kit/PDGFRαにおける突然変異を持たないことに注意すること)ならびにFLT3内部タンデム重複遺伝子バリアント(FLT3−ITD)を持つ急性骨髄白血病(AML)を伴う患者(AMLの約15%において発癌を駆動させる)におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度を決定することを選んだ61。本発明者らは、AMLにおいてNCR3*3790 T/C SNPの存在とFLT3−ITDの間に有意な関連性を見いだした。NCR3*3790突然変異バリアントを提示するFLT3−ITDを持つAMLの34.6%(18/52)対FLT3−ITDオンコジーンを欠くAMLにおける18.7%(31/166)(フィッシャー直接確率法:p=0.01)(図24C)。GISTについては、検出可能なc−kit又はPDGFRα突然変異を持つGISTの21%(n=43)がNCR3*3790SNPを提示したが、検出可能なc−kit又はPDGFRα突然変異を欠くGIST患者の0%(n=6)がこのNCR3*3790SNPを示した(図24D)。これらの結果は、NKp30アイソフォーム発現(及び、拡大すると、NK細胞機能)に影響を与える多型が、オンコジーン受容体チロシンキナーゼの活性化突然変異により駆動される2つの悪性腫瘍において遺伝的に相互作用しうることを示唆する。
【0247】
考察
1999年に記載されたが24、NKp30のスプライセオソーム(spliceoform)は決して研究の題材になることはなかった。本明細書において、本発明者らは、初めて、80人の患者及び56人の健常ボランティアの重要なコホートで、消化管肉腫の発生中でのNCR3/NKp30エクソン4スプライセオソームの病理生理学的関連性を記載しており、標的処置の経過中でのNKp30a/bアイソフォームの保護機能を強調している。
【0248】
選択的スプライシングが、ヒトゲノムにおいて、具体的には神経遺伝子及び免疫関連遺伝子についての機能調節の主要な機構として現れている。選択的スプライシングの使用は、発生、組織特異的、又は病理依存的な方法で細胞により制御されることができる。細胞は、公知のリン酸化経路、選択的スプライシングパターンを調節するためのスプライシング因子の再局在化及び合成を使用する62、63。ヒトNCR3遺伝子は、少なくとも3つのユニークなカルボキシ末端を伴うタンパク質をコードしうるいくつかの選択的スプライシング形態を有する。
cDNA選択、それに続くヒト脾臓cDNAライブラリースのクリーニングによって、ヒトNCR3/NKp30エクソン4の3つの選択的形態が明らかになり、そのcDNAがシークエンシングされ、GenBankに提出された(受入番号AF031136−38)24、25。初期の試験によって、NKp30 mRNAが脾臓、扁桃腺、B細胞株、及びNK細胞株において、そして肝臓における異なるスプライシングパターンを伴い発現されることが明らかになった。実際に、NCR3/NKp30の全ての3つの主なスプライス形態、即ち、hNKp30c(INTERMEDIATE)(AF031137)、hNKp30b(SHORT)(AF031136)、hNKp30a(LONG)(AF031138)がヒト扁桃腺及びNK細胞において発現され、完全なエクソン2を含んだ。しかし、ヒト肝臓でのRT−PCRによって、エクソン2(完全なエクソン2又は75bp欠失エクソン2)のレベルでの2つのアイソフォームにおけるhNKp30aの非存在、しかし、hNKp30bの存在を示すユニークなパターンが明らかになった。抗NKp30ペプチド抗体を用いた免疫染色を使用し、Sivakamasundari et al.(2000)は、ヒトNK細胞と適合性がある扁桃腺中でのリンパ濾胞の胚中心におけるNKp30タンパク質の存在を明らかにすることができた25。2005年に、ヒトNKp30遺伝子の6つのアイソフォームの詳細な転写分析が、胎児及び成人の両方の組織において実施されている32。V型Igドメイン含有形態(NKp30a、b、及びc)がより高度に発現されている形態であり、NKp30cが最も遍在し、豊富な形態である(胎児脳を除く)ことは注目に値する。興味深いことに、NKp30a及びbが、脳の主なスプライセオソームであった32。
【0249】
NK細胞における種々のNKp30アイソフォームの協調発現を制御する機構は不明確なままである。興味深いことに、この発現パターンは、CD56発現レベル及びCD27に基づいて区別される異なるNK細胞サブセットにおいて同様であることが見出された(ND、示さず)。さらに、イマチニブメシレートを用いたGIST治療が、ある場合において、数年に及び、経時的にNKp30発現のパターンを調節するようには思われなかった(図4)。薬理学的化合物、例えばヒストンデアセチラーゼ阻害剤(トリコスタチンA、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸)、配列番号49〜51に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド(前に説明した)、又はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン)は、遺伝子の選択的スプライシングにおいて干渉することが公知であり、NK細胞の欠損機能に関連するパターンを制御する/切り替える貴重なツールを表わしうる。
【0250】
目的の配列
− NCR3遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号1)
>ref|NC_000006.10|NC_000006:c31668933−31664651ホモサピエンス染色体6、参照アセンブリー、完全配列
【表17】
注意:エクソン配列はボールド体である。開始コドン及び終止コドンに下線を引いている。エクソン2における欠失はイタリック体である。
【0251】
− 6つのNKP30アイソフォームのペプチド配列:
「短いテール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(SHORT−WT)−配列番号2(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029163)
【表18】
「中間テール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(INTER−WT)−配列番号3(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029164)
【表19】
「長いテール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(LONG−WT)−配列番号4(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029162)
【表20】
「短いテール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(SHORT−DEL)−配列番号5(VegaペプチドIDなし)
【表21】
「中間テール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(INTER−DEL)−配列番号6(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029165)
【表22】
「長いテール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(LONG−DEL)−配列番号7(VegaペプチドIDなし)
【表23】
注意:太字のアミノ酸は以下のドメインに隣接する:(左から右へ)シグナルペプチド、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン。
可変Ig様ドメインを含むアイソフォームにおいて、定常Ig様ドメインを特徴とする欠失した細胞外領域に下線を引いている。
【0252】
− 6つのNKP30転写物のヌクレオチド配列:
「短いテール−可変Ig様ドメイン」転写物(SHORT−WT)−配列番号8
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076211)
【表24】
「中間テール−可変Ig様ドメイン」転写物(INTER−WT)−配列番号9
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076212)
【表25】
「長いテール−可変Ig様ドメイン」転写物(LONG−WT)−配列番号10
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076210)
【表26】
「短いテール−定常Ig様ドメイン」転写物(SHORT−DEL)−配列番号11
(VegaペプチドIDなし)
【表27】
「中間テール−定常Ig様ドメイン」転写物(INTER−DEL)−配列番号12
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076213)
【表28】
「長いテール−定常Ig様ドメイン」転写物(LONG−DEL)−配列番号13
(VegaペプチドIDなし)
【表29】
注意:開始コドンに下線を引いている。元の終止コドンはボールド体である。
【0253】
プライマー配列
− 3571G/T及び3790T/Cの多型を含むNCR3遺伝子の3つの領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマー:
【表30】
【0254】
− SYBRGREEN検出に基づく定量化のための6つのNKp30 RNA転写物を増幅する特異的プライマー:
【表31】
【0255】
− TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のための6つのNKp30 RNA転写物を増幅する特異的プライマー:
【表32】
【0256】
− 6つのNKP30アイソフォームのクローニングのために使用したHPLC精製プライマー:
【表33】
【0257】
− 特異的な抗NKp30抗体を得るために使用したNKp30細胞外及び細胞内ドメインならびにアミノ酸ペプチドのペプチド配列:
NKp30アイソフォームの可変Ig様細胞外ドメイン−配列番号38
【表34】
NKp30アイソフォームの定常Ig様細胞外ドメイン−配列番号39
【表35】
NKp30アイソフォームの短い細胞内ドメイン−配列番号40
【表36】
NKp30アイソフォームの中間細胞内ドメイン−配列番号41
【表37】
NKp30アイソフォームの長い細胞内ドメイン−配列番号42
【表38】
特異的な抗NKp30可変Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号43
【表39】
特異的な抗NKp30定常Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号44
【表40】
特異的な抗NKp30短いIg様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号45
【表41】
特異的な抗NKp30中間Ig様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号46
【表42】
特異的な抗NKp30長いIg様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号47
【表43】
注意:定常Ig様ドメインを特徴とする欠失した細胞外領域を、可変Ig様ドメインにおいて下線を引く。特異的な抗NKp30抗体を得るために使用したペプチドの配列は、NKp30細胞外及び細胞内ドメインの配列においてボールド体である。
NKP30プローブ(6−FAM/TAMRA):
【表44】
配列(標的:ポリアデニル化シグナル1)
【表45】
配列(標的:ポリアデニル化部位1)
【表46】
配列INTERを遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチド
【表47】
【0258】
【表48】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、遺伝学、免疫学、及び医薬の分野に関する。本発明者らは、特に、被験者において癌の予後を決定するために使用することができるヒト遺伝子の同定、任意の処置前での癌の処置に対する被験者の感受性、又は所定の期間後での癌の処置の有効性を開示する。ヒト遺伝子を、さらに、癌の予防又は処置において、ならびに治療活性薬物のスクリーニングのために使用してよい。
本開示は、より具体的には、特に異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は少なくとも1つの異常なNKp30受容体(NKp30タンパク質)アイソフォームの発現又は活性をもたらす変化したNCR3又はNKp30の遺伝子発現に関与する変化した又は異常な細胞傷害誘発受容体3(NCR3)遺伝子に関し、前記の異常な遺伝子、転写物アイソフォーム、及びタンパク質アイソフォームが治療介入のための新規標的を表わす。
【0002】
背景
癌と効率的に戦うことは、腫瘍細胞を直接標的とする、又は、細胞に対する宿主防衛を高める医薬的化合物に依存する。いくつかの抗癌治療が提示されており、とりわけ特徴的なのは、化学療法[アントラサイクリン、例えばドキシサイクリン(DOX)、オキサリプラチン(oxali−platinum)(本明細書においてPLATと呼ぶ)及びシスプラチン(本明細書においてPLATと呼ぶ)、ならびにチロシンキナーゼ阻害剤などが腫瘍学者の武器である最も効率的な細胞毒性薬剤であると考えられている]及び放射線療法[X線(XR)]であるが、前記処置の利益は依然として不十分な傾向がある。上記治療が抗癌治療の70%までの基礎を表わすため、処置に対する低下反応に関与する機能障害の検出が、患者管理のために不可欠であるように思われる。
腫瘍の治療耐性という出現する問題は、第一に、腫瘍での処置の有効性、そして、第二に、腫瘍細胞の根絶における免疫宿主系の有効性を考慮する重要性を強調する。本発明者らは、本明細書において、内因性(免疫)腫瘍抑制機構が、癌処置により誘導される外因性腫瘍抑制機構と相乗的に作用すること、及び、免疫反応に関与する遺伝子中の突然変異がこれらの外因性腫瘍抑制機構に影響を与えることを実証する。遺伝子の突然変異及び転写状態は、癌処置に対する臨床反応を予測する新たな因子を構成する。
【0003】
消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の最もよく見られる間葉性腫瘍である1。GISTは、カハールの間質細胞、腸ペースメーカー細胞の腫瘍性形質転換に起因すると考えられる。GISTの真の発生率は未知のままであるが、しかし、臨床試験からの経験によって米国における1年当たり4500〜6000の新症例の発生率が示唆される2。診断時の年齢中央値は約58歳である。
歴史的には、GISTは、3つの従来の癌治療モダリティーにより標的にされてきた:外科手術、化学療法、及び放射線療法。外科手術は、切除可能な疾患を伴う患者に有効であるが、しかし、疾患は50%もの個人において再発しうる。化学療法及び放射線療法ではほとんど有効性が示されていない3。大きな進展が、GISTにおけるKITオンコジーン中の「機能獲得」突然変異の発見と共に1998年に起きた4。KITは膜貫通KIT受容体チロシンキナーゼ(CD117)をコードし、それは、そのリガンドによる結合を介して活性化される場合、細胞内情報伝達プロセスを調節する。突然変異による構成的なチロシンキナーゼの活性化は、無調節な細胞増殖及び悪性形質転換をもたらす。GISTの90%超が、活性化KIT突然変異を持つ5。これらの突然変異は、共通して、症例の57〜71%においてエクソン11(膜近傍ドメイン)、症例の10〜18%においてエクソン9(細胞外ドメイン)、症例の1〜4%においてエクソン13(チロシンキナーゼドメインI)、及び症例の1〜4%においてエクソン17(チロシンキナーゼドメインII)において起こる1。KIT突然変異を欠くGISTの約35%が、関連する受容体チロシンキナーゼ、小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)をコードする遺伝子において活性化突然変異を有する6。PDGFRA突然変異は、エクソン12(GISTの1〜2%)、エクソン18(2〜6%)、及びエクソン14(<1%)において同定されている7。KIT及びPDGFRA突然変異の同定は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を用いた特異的な標的治療の開発を導いた。TKIイマチニブメシレート(STI571、Gleevec-Novartis)及びスニチニブマレート(SU11248、Sutent-Pfizer)を用いた治療は、切除不可能な転移性及び再発性疾患に有効である8。イマチニブは、KIT、PDGFRA、及びABLを含むいくつかのチロシンキナーゼを選択的に阻害する。第II相イマチニブ試験からのデータによって、KITの突然変異状態がイマチニブに対する臨床反応を予測する最も重要な因子であることが明らかになった8。イマチニブを受けたエクソン11KIT突然変異体を発現するGISTを伴う患者は、実質的により高い部分反応率、より長い生存期間中央値、及び野生型又はエクソン9KIT突然変異体を発現するGISTを伴う患者よりも進行するより低い可能性を有した。イマチニブは劇的に有効な薬剤であるが、しかし、その利益の持続時間は有限である。第2の標的チロシンキナーゼ阻害剤であるスニチニブマレートは、近年の励みになる結果の後に、イマチニブ耐性GISTの処置のために承認されている9。しかし、前に説明された通り、薬物耐性はますますよく見られる現象である10。
【0004】
小児における全ての癌関連死亡の15%に関与し、神経芽細胞腫は、小児集団に影響を与える、最もよく見られる頭蓋外悪性腫瘍であり、そして2番目に最もよく見られる充実性腫瘍である11。末梢交感神経系のこの癌は、提示のその二又パターンのために周知である。小児の約半分が、外科手術単独で治癒することができる局在化腫瘍を有する。肝臓、皮膚、リンパ節、又は骨髄を含む疾患を示す年齢1歳未満の小児の小さな部分集合は、それらの疾患の範囲にも関わらず良好な予後を有する。残りの小児は、広範囲にわたる転移性疾患又は非常に大きい、侵襲性の局在化腫瘍を有する。これらの小児は、約30%の不良な長期生存率を有する。神経芽細胞腫を伴う小児を処置する課題は、低リスク疾患を伴う患者での過剰処置を回避しながら、高リスク患者の生存率を増加させることである。神経芽細胞腫における転帰の標準的な予後指標は、年齢、病期、及び組織病理である。追加の染色体マーカー及び分子マーカーが存在し、リスク群割り当て及び転帰予測の正確性が改善し始めている12。
【0005】
抗腫瘍反応の役者の内、ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞標的を直ぐに殺し、そしてサイトカイン、例えばTNFα及びIFNγなどを産生する強力な能力によって腫瘍に対する先天的防御を提供する13。
【0006】
NK細胞は、マウスにおいて転移性腫瘍の播種を予防することにより腫瘍増殖を制御する14。ヒト悪性腫瘍におけるNK細胞の関連性は、Nature Immunolのために書かれた最近のPerspectiveにおいて本発明者らにより考察されている15。本発明者らにより得られた最近発表されたデータによって、GIST患者において、GIST腫瘍が、イマチニブメシレート(IM)を用いた代表的標準治療の間にNK細胞により制御されうることが確立された。実際に、IMはc−kit依存性DC/NK細胞クロストークを促進し、マウス及びヒトの両方においてNK細胞のIFNγ産生に導くことができる16。重要なことには、2ヶ月のIM後でのNK細胞のIFNγ産生が、IMで処置された進行性GISTにおける長期生存の独立予測因子を表した17。精製NK細胞でのそのような増強されたIFNγ産生が、成熟DCを用いた短期間のエクスビボでの再刺激後に達成され、「免疫学的レスポンダー」からのNK細胞がGIST発生の間にインビボで予備刺激されていたことを示唆する18、19。ヒトの癌に対するそれらの有効な役割に関する進行中の疑問にも関わらず、NK活性化又はサイトカイン受容体の生理学的連結及び/又は阻害受容体の遮断は、NK細胞の増殖、輸送、細胞傷害性、ケモカイン及びサイトカインの産生、ならびに血液学的悪性腫瘍及び一部の充実性腫瘍を抑えるために利用することができる樹状細胞誘発をもたらしうる。
【0007】
ヒトの主要組織適合複合体(MHC)は、高密度の多型遺伝子により特徴付けられた、染色体領域6p21.3内に約4メガベースのDNAを包含する20、21。クラスIII MHCのテロメア末端は、クラスIV領域と指定されている。なぜなら、それが、炎症機能をコードする遺伝子、例えば腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバー、同種移植炎症因子1(AIF1)、ヒートショック70kDaタンパク質1B(HSPA1B)、リンホトキシン−α LTA)及び−β(LTB)、HLA−B関連転写物3(BAT3)、白血球特異的転写物1(LST1)、ならびに細胞傷害誘発受容体3(NCR3/1C7/CD337/NKp30)などを含むからである22(図1を参照のこと)。NCR3遺伝子は、いくつかのmRNAスプライスバリアントに転写され、その大部分が免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面分子に翻訳される23−25。NCR3遺伝子産物の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を生成することにより、Morettaのグループは、NCR3遺伝子産物の細胞分布を定義し、腫瘍細胞及び樹状細胞の殺傷に関与する新規NK細胞受容体としてNKp30を特徴付けることに成功した26、27。それは、NKp44、NKp46、及びNKp80も含むいわゆる細胞傷害受容体(NCR)の一部である28。NK細胞中でのその発現を超えて、NKp30を、IL−15刺激された臍帯Tリンパ球29及び子宮内膜上皮細胞30の表面上に暴露させることができる。しかし、成人の抹消血においては、循環NKp30発現細胞だけがNK細胞である。NKp46とは対照的に、NKp30のマウスオルソログは偽遺伝子(ハツカネズミ(Mus musculus)において、しかし、Mus caroliではない)であり25、31、32、NKp30の探索のための適したマウスモデルがないことを意味する。しかし、ラットは、NKp30に対するオルソログタンパク質をコードする遺伝子NCR3を発現し33、転写物がマカク(M. fascicularis)において検出される32。
【0008】
ヒトNKp30は、2つの推定N−グリコシル化部位を含む細胞外可変型Ig様ドメインを伴う190のアミノ酸の膜貫通タンパク質である26。3つの選択的スプライシングは、それらがいずれの特定のエクソン4を利用するかに依存して、3つの異なる細胞内ドメイン(36、25、及び12のアミノ酸を有する)を産生することができる24。追加の選択的スプライシングは、細胞外ドメインにおける25AAの欠失を誘導し、可変型Ig様ドメインの代わりに、予測される定常型Ig様ドメインの形成に導くことができる24、32。NK細胞の細胞表面での複数の形態のNKp30の存在を受けて、NKp30に対するポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロットによって、恐らくはグリコシル化における差に、しかし、また、最終的には代替タンパク質コアに対応する約10kDの広いバンドが明らかになる26。これらの代替形態のNKp30が記載されたが、この観察の機能的関連性はまだ明らかではない。
【0009】
腫瘍環境におけるNKp30の役割に関して、NKp30は、種々の腫瘍(癌腫、神経芽細胞腫、骨髄及びリンパ芽球性白血病を含む)のインビトロでの溶解及びまた種々の細胞株の溶解に関与してきた26、34、35。NKp30は、免疫反応(標的を攻撃する)のエフェクター段階だけでなく、同種免疫の予備刺激段階でも要である。実際に、NKp30は、DC細胞及びNK細胞の間のクロストークを調節している。本発明者らはマウスにおいてNK細胞活性化を誘発するDCの能力を記載した最初であり36、そして続く研究によってこれらの細胞型の間での双方向性の調節が明確に確立された27、37、38。DC/NK比率及びNK細胞側でのKIR/NKG2A発現に依存して、活性化NK細胞が未熟DCの活性化を弱める又は促進しうる。両方の場合において、NKp30がNK細胞によるDCの認識に直接的に関与する。後者の場合において(活性化NK細胞が未熟DCを活性化する場合)、NKp30誘発がNK細胞によるTNFα及びIFNγの放出を導き、両方のサイトカインがDC成熟プロセスに参加する39。故に、DC/NK細胞のクロストークが、Th1分化を調節するために不可欠であるように思われる40、41。従って、NKp30誘発は、リンパ節における適応免疫反応のマスターレギュレーターを表わしうる。
【0010】
最近の試験によって、ヒトのマラリア感染におけるNKp30の役割が実証されている42、43。結果は、NKp30が、NK細胞−熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)が寄生した赤血球細胞の相互作用に関与することを示唆する42。この相互作用は、直接的、特異的、及び機能的であり、パーフォリン産生及びグランザイムB放出に導く。さらに、関連性が、軽度マラリアとNCR3プロモーター内に位置付けられる突然変異の間で実証されている(NCR3−412 G/C − rs2736191)43。これは、NKp30における遺伝的変異が熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球に対するヒトNK細胞の反応性の不均一性を説明しうることを示唆する44。
【0011】
NKp30が、標的細胞(腫瘍細胞又は樹状細胞)の細胞膜上の硫酸ヘパリン残基を識別しうることが示唆されている45。しかし、これらの結果は、Warren et al.により批判された46。Angel Porgadorのグループは、これらの試験において使用された種々のNKp30Fc組換えタンパク質を比較することによりこの論争に決着をつけようと試みた。彼らの知見は、Fcタンパク質上でのグリコシル化がNKp30リガンドの認識において重要であることであり、及び、彼らは、硫酸ヘパリンがインビトロアッセイにおいて組換えNKp30に結合するとの彼らの最初の知見を確認している47。Pogge et al.は、白血球抗原−B−関連転写物3(BAT3)が腫瘍細胞により放出され、そしてNKp30と会合すると主張している48。Byrd et al.は、NKp30リガンドが大半の細胞株において細胞内で、恐らくは、初期エンドソームコンパートメントにおいて発現することを実証した49。
【0012】
要約すると、強い証拠が、特に腫瘍環境及びインビボモデルにおけるNKp30リガンドの厳密な性質に関して欠けている。
【0013】
要約
本明細書において開示する第1の目的は、被験者において癌の予後を評価する方法にあり、この方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を、被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は、前記被験者における癌の好ましくない予後を示している。
【0014】
被験者において癌の予後を評価する特定の方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、(相対)量のNKP30 RNA転写物及び/又はタンパク質アイソフォーム、特に中間、短い、及び/又は長いNKp30アイソフォームを測定することを含み、そのような量は、癌の経過を示しており、前記被験者における癌の予後の評価を可能にする。
【0015】
本明細書において開示する別の目的は、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を評価する方法にあり、特にインビトロ又はエクスビボで、(相対)量のNKP30 RNA転写物及び/又はタンパク質アイソフォーム、特に中間、短い、及び/又は長いNKp30アイソフォームを測定することを含み、そのような量は、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を示している。
【0016】
異常なNKp30タンパク質発現は、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)タンパク質アイソフォーム、好ましくは中間NKp30タンパク質アイソフォームの結果でありうるが、前記アイソフォームは定常又は可変Ig様ドメインを有する。
【0017】
特定の実施態様において、検出量もしくは測定量、発現又は活性を、それぞれ、コントロール条件もしくは参照値もしくは平均値、又はコントロールサンプルにおいて検出又は測定されたものと比較する。
【0018】
上に記載する方法の特定の実施態様に従い、決定されたアイソフォーム相対量は、短い/中間NKp30アイソフォーム相対量、短い/長いNKp30アイソフォーム相対量、中間/長いNKp30アイソフォーム相対量、及び短い/中間/長いNKp30アイソフォーム相対量からなる群よりを選択されうる。
本明細書において提供される結果により明らかにされる通り(実験セクションのパートBを参照のこと)、NKp30中間アイソフォームの量の(相対的)増加及び/又はNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの量における減少が、被験者のサンプルにおいて測定され、被験者(本明細書において「プロファイルB」として特定される群に含まれる被験者)における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
特に、NKp30中間アイソフォームの(相対的)増加ならびにNKp30の短い及び長いアイソフォームにおける減少は、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
逆に、NKp30中間アイソフォームの(相対的)減少ならびにNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームにおける増加が、被験者(本明細書において「プロファイルA」として特定される群に含まれる被験者)における癌の好ましい予後又は癌の処置に対する被験者のポジティブな反応を示している。
【0019】
機能的NKp30発現は、典型的には、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルに関連しており、被験者において、参照値又は平均値と比較した場合、NKp30中間アイソフォームの相対的な発現又は量が減少しており、そしてNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの相対的な発現又は量が増加していることが、本発明者らにより実際に本明細書において実証されている。
特定の実施態様において、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルは、NKp30中間アイソフォームの(相対)量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対)量よりも低いプロファイルである。
【0020】
これは、そのような保護的なNKp30プロファイルを示す被験者が、異常なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイル、特にNKp30中間アイソフォームの相対量が、参照値もしくは平均値、又はNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対)量よりも高いプロファイルを示す被験者よりも、癌の致死的進化に対するより高い自然保護の利益を得ることを意味する。
【0021】
NCR3遺伝子及び発現産物における特定の突然変異が本明細書においてさらに記載される。これらの突然変異は、被験者における癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性、又は、被験者において、癌の処置の有効性を評価する方法において使用可能である。前記突然変異を含む対立遺伝子は、治療介入のための新規標的を表す。
【0022】
一実施態様において、本記載は、このように、被験者において癌の予後を評価する方法を提供し、この方法は、被験者からのサンプルにおいて、突然変異したNCR3核酸、異常なNKp30の発現アイソフォームプロファイル又は状態、特に異常なNKp30 RNA転写物の発現アイソフォームプロファイル又は状態、又は異常なNKp30タンパク質のアイソフォーム発現もしくは活性の存在を検出することを含む。
【0023】
被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)の置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)より選択されるSNPを含む、突然変異したNCR3配列の存在の、被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
【0024】
さらなる実施態様において、本記載は、被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する方法を提供し、この方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)の置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPを含む、突然変異したNCR3核酸配列の存在の検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、実験セクションのパートBにおいて明らかにする通り、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の好ましくないネガティブな反応を示している。
【0025】
本願は、さらに以下の使用を記載する:
− 被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、(i)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物、(ii)(a)機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム及び/又は(iii)(a)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、機能的なNKp30 RNA転写を回復することが可能である化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、樹状細胞(DC)の成熟に導く化合物又は物質;
− 突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、NK細胞の活性化に導く化合物又は物質;
及び、処置の対応する方法。
【0026】
この記載は、さらに、上で定義する有効量の化合物を被験者に投与することを含む、それを必要とする被験者において癌を処置又は予防する方法を提供する。
好ましい実施態様において、被験者は、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する。
【0027】
特定の実施態様において、それを必要とする被験者において癌を処置又は予防する方法は、NCR3転写(選択的スプライシング)の調節及び/又は特に少なくとも1つの機能的NKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性、好ましくはNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの調節、特に活性化を含む。
【0028】
特に、異常なNCR3遺伝子、特にNCR3遺伝子の突然変異した対立遺伝子を持つ被験者を処置する方法(その方法では併用治療を用いることを含む)を本明細書において提供する。被険者は、このように、例えば、遺伝子治療、タンパク質置換治療を通じて、又は、NKp30タンパク質模倣剤、アクチベーター及び/又は阻害剤(上で定義するものなど)の投与を通じて処置してよい。前記方法の少なくとも1つは、例えば、癌治療、例えば、アルキル化剤の投与を意味する化学療法、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)の投与を意味する治療、PKC阻害剤(例えばGo6983など)50の投与を意味する治療、又は放射線療法などと組み合わせてよい。
【0029】
癌を予防又は処置するために有用な化合物をスクリーニングするためのインビトロでの方法も記載されている。特定の方法は、試験化合物又は物質が、NCR3の発現、又はNKp30、好ましくは特定のNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォーム、又は特定のNKp30アイソフォームの発現又は活性を調節する能力を決定することを含む。別の特定の方法は、試験化合物又は物質が、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで、NKp30のリガンド、好ましくは特定のNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォーム、又は特定のNKp30アイソフォームの発現又は活性を模倣、誘導、増加、もしくは刺激する、又は逆に、減少させる能力を決定することを含む。
【0030】
この記載は、さらに、特定の実施態様において、以下を提供する:
− 特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの(特異的)増幅を可能にする、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする核酸プライマー;
− 特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームと(特異的に)ハイブリダイズする、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする核酸プローブ;
− 特定のアイソフォームのNKp30タンパク質に(特異的に)結合する、又は、短い、中間の、及び長いアイソフォームの間、好ましくは、また、定常Ig様ドメインアイソフォームと可変Ig様ドメインアイソフォームの間の識別を可能にする抗体(その派生物及び前記抗体を産生するハイブリドーマを含む)。
【0031】
この記載は、また、上で定義する、プライマー、プローブ、及び/又は抗体を含むキットを提供する。そのようなキットは、増幅、ハイブリダイゼーション、又は結合反応を実施するための容器もしくはサポート、及び/又は試薬を含みうる。
【0032】
本発明の特定の局面は、プライマー、プローブ、及び/又は抗体を含む物質の組成物にあり、それらは、可変Ig様細胞外ドメイン又は定常Ig様細胞外ドメインを有する短い、中間の、及び長いNKp30アイソフォームからなる群より選択される少なくとも1つのアイソフォームを特異的に検出するようにデザインされている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】NCR3遺伝子の局在化及び構造;NCR3:ナチュラル細胞傷害誘発受容体3;LST1:白血球特異的転写物1;LTB:リンホトキシンβ;TNF:腫瘍壊死因子;LTA:リンホトキシンα;UTR:非翻訳領域;SNP:一塩基多型
【図2】NKP30受容体の6つの選択的スプライシング形態
【図3】GIST患者及び健常ボランティアにおけるNKP30アイソフォームの割合の比較(実験セクションのパートA):(A)6つのアイソフォームの割合を、41人のGIST患者(P)と37人の健常ボランティア(HV)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアの間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図4】処置の経過中での4人のGIST患者におけるNKp30転写プロファイルの個人内安定性の表示;6つのアイソフォームの割合を、4人のGIST患者におけるGLEEVEC[イマチニブメシレート(STI571)]処置の経過中に比較し、NKP30転写プロファイルの個人内安定性を評価した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。各患者について、括弧中の数字は処置後時間(ヶ月)を表す。
【図5】NKp30転写プロファイルのクラスタリングによるGIST患者と健常ボランティアの識別(実験セクションのパートA);教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは患者(P)又は健常ボランティア(HV)を表す。括弧中の数字は、再発までの時間(ヶ月)を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。
【図6】41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアのクラスタリングにより得られたA群及びB群におけるNKp30転写プロファイルの特性付け(実験セクションのパートA);6つのアイソフォームの割合を、GIST患者(A)及び健常ボランティア(C)においてA群(好ましいNKp30プロファイル)とB群(好ましくないNKp30プロファイル)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。SHORT−、INTER−、及びLONGテールアイソフォームの割合を、GIST患者(B)及び健常ボランティア(D)においてA群とB群の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図7】37人の健常ボランティア(HV)及び41人のGIST患者(P)におけるINTER高/SHORT低/LONG低のA群とINTER低/SHORT高/LONG高のB群の間でのNKp30表面発現の比較(実験セクションのパートA);NK細胞を、CD3−APC(クローンUCHT)、NKp30−PE(クローンAF29−4D12)、CD56−PC5(クローンN901)を用いて免疫染色した。細胞表面分析を、FACScaliburサイトメーター及びCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用したフローサイトメトリーを通じて実施した。
【図8】INTER高/SHORT低/LONG低のA群及びINTER低/SHORT高/LONG高のB群におけるNK細胞(NKp30架橋±IL−2後)からのIFNgの産生(実験セクションのパートA);(A)IFNgの産生を、A群及びB群における健常ボランティア(HV)及びGIST患者(P)の刺激されたNK細胞からの上清におけるELISAにより評価した。NK細胞を、NKp30(2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30)の架橋により20時間刺激した。有意差は、各群内のHVとPの間で検出されなかった。(B)HV及びPを一緒に考慮したA群及びB群におけるNKP30架橋後のIFNg産生の表示。(C)IFNgの産生を、20時間にわたるNKp30及びIL−2の架橋によるHV及びP(1000UI/ml)の刺激されたNK細胞からの上清におけるELISAにより評価した。有意差は、各群内のHVとPの間で検出されなかった。(D)HV及びPを一緒に考慮したA群及びB群におけるNKP30架橋+IL−2後のIFNg産生の表示。バーは中央値を表す。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。**:P<0.01
【図9】INTER高/SHORT低/LONG低のA群及びINTER低/SHORT高/LONG高のB群におけるNCR3*3571及びNCR3*3790候補突然変異の頻度(実験セクションのパートA);(A)B群のNKp30転写プロファイルは、非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異に関連する(Bにおける13%対Aにおける0%)。(B)A群のNKp30転写プロファイルは、NCR3遺伝子の3’非翻訳領域に局在化されるNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異に関連する(Aにおける58%対Bにおける3%)。
【図10】NCR3ヌクレオチド配列におけるNCR3*3571及びNCR3*3790候補突然変異の局在化;エクソン配列はボールド体である。終止コドン及びポリアデニル化部位がインフレームになっている。INTERアイソフォームの転写は、第1のポリアデニル化部位に依存する。SHORT及びLONGアイソフォームの転写は、第2のポリアデニル化部位に依存する。非同義のNCR3*3571突然変異は、LONGアイソフォームの細胞内ドメイン(エクソン4III)に局在化される。NCR3*3790突然変異は、第2のポリアデニル化部位に局在化される。NCR3*3790 C対立遺伝子はポリアデニル化部位を破壊し、SHORT及びLONGアイソフォームの転写を遮断する。ECドメイン:細胞外ドメイン;TMドメイン:膜貫通ドメイン;ICドメイン:細胞内ドメイン;3’UTR:3’非翻訳領域。
【図11】良好な又は不良な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者におけるNKP30アイソフォームの割合の比較(実験セクションのパートA);(A)6つのアイソフォームの割合を、良好な臨床予後を伴う7人の神経芽細胞腫患者と不良な臨床予後を伴う12人の神経芽細胞腫患者の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、良好な臨床予後を伴う7人の神経芽細胞腫患者と不良な臨床予後を伴う12人の神経芽細胞腫患者の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。
【図12】NKp30転写プロファイルのクラスタリングによる良好な及び不良な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者の識別(実験セクションのパートA);教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは良好な臨床予後(GP)又は不良な臨床予後(BP)を伴う神経芽細胞腫患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。
【図13】19人の神経芽細胞腫患者のクラスタリングにより得られた1群及び2群におけるNKp30転写プロファイルの特性付け(実験セクションのパートA);(A)6つのアイソフォームの割合を、神経芽細胞腫患者において1群(好ましくないNKp30プロファイル)と2群(好ましいNKp30プロファイル)の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(B)SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォームの割合を、神経芽細胞腫患者において1群と2群の間で比較した。NKp30アイソフォームの割合を、各細胞内ドメインについてのWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。中央値±標準誤差を表わした。マンホイットニー検定を統計分析のために使用した。*:P<0.05− **:P<0.01− ***:P<0.001
【図14】ヒストンデアセチラーゼ阻害剤及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を用いたNCR3遺伝子の選択的スプライシングの調節(実験セクションのパートA);NKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォーム(SHORT−、INTER−、及びLONG−テールアイソフォーム)のWT−(可変Ig様)及びDEL−(定常Ig様)細胞外ドメインの相対量の合計と6つのアイソフォームの総量の比率として示す。(A)YTS細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、トリコスタチンA(100nM)(TSA)と37℃で45時間インキュベートした。(B)NK92細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、5−アザシチジン(2μM)(5AZA)及びIL−2(50UI/ml)と37℃で36時間インキュベートした。
【図15】ベクターにおけるNKp30エクソン4I、エクソン4II、及びエクソン4IIIの発現クローニングのスキーム;NK92細胞株のNCR3遺伝子に由来する3つのcDNA NKp30a(LONG)(エクソン4III)、NKp30b(SHORT)(エクソン4II)、及びNKp30c(INTERMEDIATE)(エクソン4I)をpIRESバイシストロニック発現ベクター中にクローニングする。
【図16】細胞株におけるNKp30a、b、又はcアイソフォームの発現;Jurkat(A)及びNKL細胞株(B)を、NKp30a、b、又はcの種々のアイソフォームをコードするプラスミドcDNAを用いて、又はGFPと共にトランスフェクトした。G418中での3週間の選択後、細胞株をフローサイトメトリーによりGFP及びNKp30発現について調べた。代表的なドットプロットをJurkat(A)及びNKL(B)について描写する。
【図17】G418選択前後でのトランスフェクトされたNKL細胞株の表現型分析;別々のNKp30アイソフォームをコードするcDNAを用いて安定的にトランスフェクトされたNKL細胞株上の異なるNK細胞受容体のフローサイトメトリー分析。有意差は観察されなかった。
【図18】NKp30cアイソフォームは、NKp30誘発時にサイトカイン分泌を媒介しない;PMA−イオノマイシンを伴う(A)もしくは伴わない(B)で、固定化したマウスIgG2a抗NKp30 Ab(クローン210847、2.5ug/ml)又はコントロールIgG(5ng/mL、0.1μg/mL)を使用し、全て3つのトランスフェクトされたJurkat(A)又はNKL(B)を架橋した。また、トランスフェクトされたNKLを、未熟DC(比率DC:NKL 1:3)(C)、又は種々の腫瘍細胞株(比率1:1)(D)を用いて24時間刺激した。グラフは3つからの代表的な実験を描写し、上清中のIL−2(A)又はIFNγ(B、C、D)又はTNFα(C)分泌レベルをモニターしている。実験を、3つの異なるDCドナー(C)を使用して、3回(A、B、D)及び5回実施し、同一の結果を得た。*p<0.05
【図19】NKp30a(LONG)アイソフォームは、NKLの脱顆粒を選択的に誘導する;7時間のNKp30架橋後での全ての3つのNKLトランスフェクタント上でのCD107a発現を示す(A)。抗NKp30 mAb(B)又はK562(C)でコーティングされたP815に対する3つのNKp30トランスフェクトされたNKL細胞傷害を、標準的な4時間クロム放出アッセイにおいて実施した。実験を、種々のエフェクター対標的(E:T)比率(50:1、25:1、12.5:1、5:1)(C)及び50:1(B)で3重で行った。3つからの代表的な実験を描写する。*p<0.05
【図20】80人のGIST患者のコホートにおけるNKp30アイソフォームの発現;(A)GISTのコホートにおける3つの別々のアイソフォームに基づくNKp30プロファイルのクラスタリング。3つのNKp30アイソフォームの割合に基づくNKp30プロファイルをRT−PCR(β2ミクログロブリンで標準化)により実施し、NKp30プロファイルの教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン中央相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。各列はNKP30アイソフォームを表し、各カラムは患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。(B)GISTとHVの間でのNKp30の各アイソフォームの異なる割合。80人のGISTについて(A)において提示されるデータを、2群(プロファイルA対プロファイルB GIST)における別々のアイソフォームの割合としてグラフ中に描写し、そしてn=56のHVのコホートを用いて得られた結果と比較する。(C)プロファイルAとBは、フローサイトメトリーにおいて検出されたNKp30発現において差がない。新鮮なNK細胞を、IM治療中にNKp30アイソフォームの転写分析の時点で調べた。2群間に有意差を見いだすことはできなかった。*p<0.05. ns:非有意
【図21】バルクPBMC及び精製NK細胞において得られたNKp30の転写プロファイリングの比較。NKp30の各々の個々のスプライスバリアントの相対発現のRT−PCRにおける決定を、プロファイルA(A)を伴う11のGIST及びプロファイルB(B)を伴う9のGISTで、図20A及び20Bに記載される手順に従い、フィコール後のPBMC又は精製NK細胞から抽出されたcDNAから開始して実施した。有意差(ns)は、PBMC及びNKからのNKp30プロファイルの間で観察されなかった。
【図22】プロファイルBの個人が、プロファイルAホモログと比較し、NKp30依存的な機能的欠損を示す。(A)GISTと一致されたHVの間での3つの別々のアイソフォームに基づくNKp30プロファイルのクラスタリング。図20aと同一の設定であるが、しかし、HV由来のNK細胞からのNKp30を、56の性別、年齢、及び地理を一致させたHVにおいて調べた。(B−C)プロファイルBは、個人の全コホートにおけるNKp30依存的なTNFα産生の欠損に関連する。n=56のHV及びn=80のGISTからの循環NK細胞でのNKp30の架橋は、24時間目にELISAにおいて測定されたサイトカイン産生をもたらした。TNFα放出を、教師なしの階層的クラスタリングに従い、プロファイルA又はBに分類される個人((B)におけるGIST+HV、(C)におけるGIST)の間で比較した(図20A)。(D)プロファイルBは、NKp30依存的なNK細胞の脱顆粒における欠損を示す。(B−C)と同一であるが、しかし、CD107a発現を、固定化された抗NKp30及び1000IU/mlのrhIL−2の存在において分析した。全ての実験を3重で実施し、2回は、2つの異なる時点での個人の大半についてであった。 *p<0.05. ns:非有意
【図23】NKp30アイソフォームがGIST患者の生存を決定する。(A)プロファイルA(n=44)対B(n=36)のGIST患者における最初のイマチニブメシレート(IM)処置からの全生存。カプラン・マイアー方法を使用した単変量解析において、プロファイルBの患者(図20Aにおいて定義される)が、劣った全生存を有することが見出された(生存の中央値:プロファイルBにおける80ヶ月対プロファイルAにおいて中央値に達せず、ログランク検定:p=0.001)。コックス回帰分析において、プロファイルBのGISTが、13.1に等しい死の相対リスクを有した(95% CI[4.9−36.1]、p=0.01)。(B)フローサイトメトリーにおけるNKp30膜発現の機能としての全生存。転写プロファイルの決定時の循環NK細胞での(A)と同様であるが、しかし、<56%(n=26)又は>及び56%に等しい(n=27)NKp30表面発現を提示するGISTを考慮した分析(図20A)。NKp30表面発現の閾値(56%)を、80人のGIST患者の中央値として定義した(図20C)。
【図24】NCR3* 3790 T/C SNPは、プロファイルB及び「一遺伝子性」チロシンキナーゼ駆動性の悪性腫瘍に関連する。(A)プロファイルA及びBの個人におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。材料及び方法において記載する手順に従った、図20Aにおいて詳述するGISTコホート及び図20B及び図21Aにおいて詳述するHVの患者の遺伝子型決定。(B)AMLのFLT3突然変異状態に従った、AMLを持つ患者におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。腫瘍の突然変異状態を、前に記載された通りに決定した51。(C)GISTのKIT突然変異状態に従った、GISTを持つ患者におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度。腫瘍の突然変異状態を、前に記載された通りに決定した52。腫瘍の突然変異状態は、図20に記載するGISTのコホートにおける32.5%の症例において未決定のままであった。
【0034】
定義
種々の実施態様の概説を容易にするために、以下の用語の説明を提供する:
【0035】
本明細書で使用する「癌」という用語は、任意の型の悪性腫瘍(一次又は転移)を指す。
典型的な癌は、X線、アントラサイクリン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチン感受性の癌、例えば乳癌、胃癌、肉腫(特に胃腸間質性腫瘍又はGIST)、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、子宮頸癌、前立腺癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、ORL癌、小児腫瘍(神経芽細胞腫、多形性膠芽腫)、リンパ腫、白血病(急性及び慢性骨髄性白血病(AML及びCML)、急性リンパ芽球白血病(ALL))、ミエローマ、セミノーマ、ホジキン及び悪性血液疾患などである。別の典型的な癌は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に感受性の癌、例えば胃腸間質性腫瘍(GIST)などである。
【0036】
「処置に対する感受性」という用語は、処置に対する被験者の反応のレベルを指し、限定はされないが、個人における治療用化合物又は物質を代謝する能力、プロドラッグを活性薬物に変換する能力、薬物動態(吸収、分布、排泄)、及び薬物の薬力学(受容体関連)を含む。この処置は、化学療法、例えば、アルキル化剤又はアントラサイクリン、例えばドキシサイクリン(DOX)、オキサリプラチン、もしくはシスプラチンなどの投与を含む化学療法;チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)及びスニチニブマレート(SU11248)などの投与を意味する治療でよい;及び/又は、処置は、例えばガンマ線又はX線(XR)を使用した放射線療法でよい。
【0037】
本明細書で使用する「癌の予後」という用語は、疾患の経過、換言すると、疾患の推定される致死的な又はポジティブな健康転帰の評価からなる方法を指す。
典型的には、癌を発生する増加リスクを有する被験者が、NKp30アイソフォームの異常な状態又はプロファイルを有し、それにおいてNKp30中間アイソフォームの相対量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの参照値もしくは平均値、又は(相対)量よりも相対的に高い。
【0038】
検査されるサンプルは、核酸及び/又はポリペプチドを含む。そのようなサンプルの例は、液体、組織、細胞サンプル、器官、生検などを含む。
回収されたサンプルの性質は、特定の型の癌に必ずしも相関しない。回収された組織は、実際に、癌組織(好ましくは、パラフィン包埋よりむしろ凍結)又は健常組織(例えば、血液、皮膚、間質)でよい。
組織は、選択された癌組織から回収してよい。
サンプルは、また、例えば、血液、血漿、及び骨髄より選択された組織から、任意の異常な又は疾患状態の前記組織とは無関係に、得てよい。
好ましくは、サンプルは、NKp30を発現することが公知である細胞、例えば臍帯Tリンパ球及び子宮内膜上皮細胞、好ましくは末梢血単核細胞(PBMC)、特定のNK細胞などを含む。
特定の実施例において、アッセイを、小児腫瘍、例えば神経芽細胞腫及びGISTより選択される癌に苦しむ被験者で実施する場合、血液(特にPBMCの集団を含むサンプル)、間質、皮膚、又は腫瘍組織のサンプルが提供されうる。
【0039】
本発明を種々の被険者における、例えば、動物、特に哺乳動物、好ましくはヒト(成人、小児、及び胎児期を含む)において使用してよい。
「被験者」という用語は、一般的に、癌に苦しむ患者、又は癌を発症しうる被験者を指す。
【0040】
被験者は、また、潜在的な骨髄ドナーである被験者でありうる。本発明を使用し、ドナー被験者が正常なNKp30発現、特に正常なNKp30 RNA転写物アイソフォーム状態もしくはプロファイル、又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現もしくは活性を有するか否かを決定してよい。
被験者は、さらに、同種骨髄移植のための候補者でありうる。
【0041】
「異常」という用語は、本明細書において、正常な特徴からの逸脱である。正常な特徴が、集団のためのコントロール、標準などにおいて見出すことができる。例えば、異常状態が疾患状態、例えば癌などである場合、正常な特徴の2、3の適切な供給源は、癌を患っていない個人、癌を患っていないと考えられる個人の標準集団などを含みうる。
癌に苦しんでいるが、しかし、当業者に公知の好ましい臨床基準(個人の年齢、癌の病期、及び/又は癌の組織病理の病期など)に基づき好ましい予後を有すると考えられる個人の集団は、特定の実施態様において、コントロール集団又は参照集団と考えられうる。
「異常な」という用語は、通常、疾患に関連する状態を指す。例えば、特定の異常(NCR3核酸又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの発現もしくは活性における異常など)が、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する耐性に関連すると記載することができる。
典型的には、「異常な」という用語をNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルを参照して使用してよく、それにおいてNKp30中間アイソフォームの量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの参照値もしくは平均値、又は相対量よりも高い。NKp30中間アイソフォームの異常(相対)量は、例えば、可変細胞外ドメインを伴う長い、短い、及び中間のアイソフォーム含む全アイソフォーム量の好ましくは約15%、好ましくは20%、さらにより好ましくは19%を超える量である。長いアイソフォームの対応するパーセンテージは、約20%、好ましくは約15%よりも劣り、短いアイソフォームの対応するパーセンテージは、短いアイソフォームについての約80%、好ましくは77%、さらにより好ましくは70%よりも劣る。
【0042】
異常な核酸、例えば異常なNCR3核酸などは、ある様式で、正常な(野性型)核酸とは異なる核酸である。そのような異常は、必ずしも限定されないが、コントロール又は標準と比較し、核酸における突然変異[例えば点突然変異など(例、一塩基多型、別名SNP)又は2、3から数個のヌクレオチドの短い欠失、挿入又は重複など]を含む。これらの型の異常が、同じ核酸中に、又は同じ細胞もしくはサンプル中に共存することができることが理解されるであろう。また、核酸中の異常が、対応するタンパク質の発現において異常を起こしうることが理解される。
【0043】
NKp30タンパク質は、本明細書において、NCR3遺伝子によりコードされるタンパク質に関する。
前に説明した通り、NCR3遺伝子は、6つの異なるタンパク質(それぞれNKp30A、NKp30B、NKp30C、NKp30D、NKp30E、及びNKp30Fと名付けられる)をコードする6つの異なる選択的スプライシング形態を提示する(図2)24。アイソフォームの3つが、潜在的な可変Ig型又はIg様ドメインをコードし、他の3つが潜在的な定常Ig型又はIg様ドメイン(部分欠失させた可変Ig型ドメイン)をコードする。これらの2つの異なる細胞外ドメインを、いずれのエクソン4(図1)が発現されるかに依存して、36のアミノ酸(「長いテール(tail)」ドメイン)、25のアミノ酸(「中間テール」ドメイン)、及び12のアミノ酸(「短いテール」ドメイン)の3つの異なる細胞内ドメインに連結することができる24。
【0044】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームは、このように、タンパク質アイソフォームであり、その配列、配置、成熟、又は発現は正常な野生型タンパク質アイソフォームとは異なる。好ましくは、異常タンパク質アイソフォームは機能的ではない、又は部分的にだけ機能的である。
この用語は、好ましくは、少なくとも1つの異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を含むが、しかし、また、例えば、正常なNKp30タンパク質をコードするmRNAの異常転写に起因する、少なくとも1つの正常なNKp30タンパク質アイソフォームの異常発現を包含する(そのような異常転写は、例えば、異常な選択的スプライシングにより、癌処置により、及び/又は癌自体により誘導され得、コントロール又は標準のレベル又は量と比較して、減少されうる、又は逆に、増加されうる)。同様に、NKp30タンパク質アイソフォームの活性レベルは、少なくとも1つの正常なNKp30タンパク質アイソフォームの異常発現、又は、少なくとも1つの異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を反映しうる。
【0045】
NKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性、例えば異常なNKp30タンパク質アイソフォーム発現は、コントロール又は標準と比較した場合、ある様式で、以下でさらに説明する正常な(野生型)状況におけるタンパク質の発現又は活性とは異なる発現又は活性を指す。
それは、特に、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォーム、恐らくは、NCR3によりコードされる6つのNKp30タンパク質アイソフォームの2つ、3つ、4つ、5つの又は全てのNKp30タンパク質アイソフォームの被験者における発現又は活性を指し、コントロール又は標準と比較した場合、ある様式で、正常な(野生型)状況におけるタンパク質の発現又は活性とは異なる。
【0046】
異常の決定のための、サンプルとの比較に適切なコントロール又は標準は、正常であると考えられる(例えば、健常被験者のサンプル)又は癌を患っているが、しかし、前に説明された好ましい臨床基準、ならびに、恐らくは任意のセット(そのような値が検査室から検査室で変動しうることを念頭に置く)であるとしても、検査値から良い結果を得ている患者の集団に対応するサンプルを含む。
検査室の標準及び値は、公知の又は決定された集団値に基づいて設定してよいが、測定された、実験的に決定された値の容易な比較を可能にするグラフ又は表のフォーマットにおいて提供してよい。
【0047】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームという用語は、必ずしも限定されないが、以下を含む:(1)1つ又は複数のアミノ酸残基が異なるようタンパク質の配列における潜在的な変異又は突然変異;(2)タンパク質の配列に対する1つ又は2、3のアミノ酸残基の短い欠失又は付加;(3)全タンパク質ドメイン又はサブドメインが除去又は付加されるような、アミノ酸残基のより長い欠失又は付加;(4)コントロール又は標準の量と比較し、減少した、又は逆に、増加した量の機能的なタンパク質アイソフォームの発現;(5)タンパク質アイソフォームの細胞局在又は標的化の変化;(6)時間的に調節されたタンパク質アイソフォームの発現の変化(タンパク質が、それが正常ではない場合に発現し、あるいは、それが正常である場合に発現しないようにする);及び(7)各々をコントロール又は標準と比較し、局在化した(例、器官又は組織特異的)タンパク質アイソフォームの発現の変化(タンパク質が、それが正常に発現する場合に発現せず、又は、それが正常に発現しない場合に発現するように)。
【0048】
「NKp30タンパク質アイソフォーム活性」という用語は、その天然のリガンドの1つに対するNKp30の任意の直接的結合、NKp30により媒介される又は好まれる任意の間接的結合、ならび顕著にはNKp30経路の下流エフェクター、例えばCD3ζ、KARAP/DAP12、DAP10、FcRγなどにおける直接的又は間接的な結合の効果を包含する。
【0049】
本願において使用される通り、「NCR3遺伝子」という用語は、TNF遺伝子、ならびにそのバリアント、アナログ、及びフラグメント(癌に対する感受性に関連するその対立遺伝子(例、生殖細胞系列突然変異)を含む)に近接する、主要組織適合複合体(MHC)クラスIII領域中のヒト染色体6p21.3上のナチュラル細胞傷害誘発受容体3を指す。NCR3遺伝子は、また、NKp30遺伝子と呼んでよい。
【0050】
組換え核酸を、化学合成、遺伝子操作、酵素技術、又はその組み合わせを含む、従来技術により調製してよい。適したNCR3遺伝子配列は、遺伝子バンク、例えばNCBI(参照アセンブリー: NC_000006.10(31668740−31664650);RefSeq DNA: NM 147130;GeneID:259197)、Ensembl(Ensembl Gene ID:ENSG00000204475)などで見出されうる。対応するポリペプチド配列は、NCBI遺伝子バンク中の参照NP_667341.1(RefSeqペプチド)の下で見いだされる。
【0051】
「NCR3遺伝子」という用語は、配列番号:1 NC_000006.10(31668933−31664651)又は上で特定した任意のコード配列の任意のバリアント、フラグメント、又はアナログを含む。
【0052】
NKp30タンパク質又はポリペプチドの特定の例は、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014845[“短いテール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(SHORT−WT)−配列番号2]、Vega ペプチドID:OTTHUMP00000014846[“中間テール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(INTER−WT)−配列番号3]、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014844[“長いテール可変Ig様ドメイン”アイソフォーム(LONG−WT)−配列番号4]、VegaペプチドID:無し[“短いテール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(SHORT−DEL)−配列番号5]、VegaペプチドID:OTTHUMP00000014847[“中間テール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(INTER−DEL)−配列番号6]、及びVegaペプチドID:無し[“長いテール定常Ig様ドメイン”アイソフォーム(LONG−DEL)−配列番号7]からなる群より選択されるペプチドの全て又は部分を含む。
【0053】
多型は、例えば、変異が存在するヌクレオチド位置により、ヌクレオチド変異により起こされるアミノ酸における変化により、又は変異に関連づけられる核酸分子の何らかの他の特徴における変化(例、二次構造、例えばステム−ループなどの変化、又は、関連分子、例えばポリメラーゼ、RNaseなどについての核酸の結合親和性の変化)により言及することができる。例として、NCR3遺伝子の領域において本明細書で開示する多型は、NCR3遺伝子におけるその位置により[例、バリアント残基3571 G/T(Reference SNP Cluster Report: rs3179003)又は3790 T/C(Reference SNP Cluster Report: rs986475)の数値位置に基づく](NKp30ポリペプチドにおけるバリアントアミノ酸の数値位置に基づく)、それがNCR3 mRNAの二次構造に有する効果により、又は、それがNKp30ポリペプチドの三次構造に有する効果(例、リガンド、例えば硫酸ヘパリン及びBAT3などのポリペプチドの結合親和性の変化)により言及することができる。
【0054】
検出/診断
上記の観察を使用して、本発明者らは、本明細書において、被験者におけるNCR3遺伝子座の分析及び/又は被験者におけるNKp30 RNA転写物もしくはタンパク質アイソフォームのモニタリングに基づく方法を提供する。
本発明の関連内で、「診断」という用語は、上で定義する被験者における、種々の病期(早期の発症前段階及び後期を含む)での検出、投薬、比較などを含む。診断は、典型的には、最も適切な処置(薬理遺伝学)などを定義するための被験者の予後及び特性付けを含む。
【0055】
本明細書において記載する一般的な目的は、被験者において癌の予後を評価する方法にあり、この方法は、特にインビトロ又はエクスビボで、突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物、又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現もしくは活性の存在は前記被験者における癌の好ましくない予後を示している。
【0056】
本明細書において記載する別の一般的な目的は、癌、例えば小児腫瘍など、特に神経芽細胞腫の処置に対する被験者の感受性を評価する方法にあり、その方法が、インビトロ又はエクスビボで、(i)突然変異したNCR3核酸、(ii)異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は前記処置に対する耐性を示している。被験者において癌の処置の有効性を評価する方法の検出工程は、理想的には、前記処置の前、間、及び/又は後に実施される。
【0057】
本明細書において記載するさらなる一般的な目的は、被験者における癌、例えばGISTなどの処置の有効性を評価する方法にあり、その方法が、前記処置の前、間、及び/又は後に、(i)突然変異したNCR3核酸、(ii)異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、前記の突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は前記処置に対する耐性を示している。
【0058】
さらなる目的は、被験者からのサンプルを提供する第1工程を含む、上に記載する方法である。
【0059】
本発明に従い、被験者の感受性を評価することができる処置は、好ましくは、例えば、アルキル化剤、アントラサイクリン、例えばDOX(ドキソルビシン、イダルビシン、4エピルビシン、ミトキサントロン)、オキサリプラチン及びシスプラチン(PLAT)などの投与を含む化学療法;チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)又はスニチニブマレート(SU11248)などの投与を含む治療;ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)の投与を含む治療;及び、例えばX線(XR)を意味する放射線療法の少なくとも1つより選択される。
【0060】
診断方法は、上記の処置又は薬物に対する感受性もしくは反応、又は処置もしくは薬物に対する副作用を分析及び予測し、被験者を特定の処置薬を用いて処置すべきか否かを決定するために使用してよい。例えば、この方法が、被験者、特に正常なNKp30アイソフォーム発現プロファイル、特に正常なNKp30 RNA転写物アイソフォームプロファイルを伴う被験者が、TKI、FTI、及び/又はアントラサイクリン、PLAT及び/又はXRに対してポジティブに反応する可能性を示す場合、前記処置を個人に施してよい。逆に、この方法が、個人又は被験者、特に異常なNKp30アイソフォーム発現プロファイルを伴う被験者が、前記処置に対してネガティブに反応する可能性が高い場合、代替方向の処置を処方してよい。
【0061】
ネガティブな反応は、効果的な反応の非存在又は有毒な副作用の存在と定義してよい。これは、この処置が、癌を予防又は処置するために非効率的であるように思われることを意味する。換言すると、処置を必要とする被験者、又は癌自体が、前記処置に対して耐性であると思われる。不良な反応は、野生型NCR3を持つ又は機能的なNKp30タンパク質アイソフォームを発現する患者において観察される反応よりも有意に劣る反応である。
【0062】
突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、及び/又は少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在は、耐性、即ち、癌の処置に対する被験者のネガティブな又は不良な反応を示しており、又は、前に説明した通り、有毒な副作用の存在を示している。
【0063】
NCR3突然変異は、NCR3ゲノム配列において又はRNAにおいて決定されうる。
【0064】
検出された突然変異は、先天的な又は獲得された突然変異でありうる。
【0065】
NCR3遺伝子座における突然変異は、単独で又は種々の組み合わせで、遺伝子座のコード及び/又は非コード領域中の任意の形態の突然変異、欠失、再配列、及び/又は挿入でありうる。突然変異は、より具体的には、点突然変異を含む。欠失は、遺伝子座のコード又は非コード部分において1、2又はそれ以上の残基の任意の領域、例えば1つの残基から全遺伝子又は遺伝子座までを包含しうる。例えば約20未満の連続塩基対のドメイン(イントロン)又は反復配列又はフラグメントなどの典型的な欠失は、より小さな領域に影響を与えるが、より大きな欠失も起こりうる。挿入は、遺伝子座のコード又は非コード部分における1つ又は数個の残基の付加を包含しうる。挿入は、典型的には、遺伝子座における1〜20の塩基対の付加を含みうる。再配列は配列の逆位を含む。NCR3遺伝子座の突然変異は、終止コドン、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAのスプライシング又はプロセシング、産物の不安定性、切断ポリペプチドの産生などをもたらしうる。この変化は、機能、安定性、標的化、又は構造が変化した、少なくとも1、恐らくは2、3、4、5、又は6つのNKp30スプライシングバリアント(又はスプライシング形態)の産生をもたらしうる。この変化は、また、タンパク質アイソフォーム発現における減少、又は、代わりに前記産生の増加を起こしうる。
【0066】
本発明に従った方法の特定の実施態様において、NCR3遺伝子における変化は、NCR3遺伝子又は対応する発現産物における点突然変異、欠失及び挿入、より好ましくは点突然変異、さらにより好ましくは一塩基多型(SNP)より選択される。
【0067】
本発明は、特に、突然変異したNCR3ヒト核酸配列を開示する。
突然変異したNCR3ヒト核酸配列の特定の例は、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651),(Reference SNP Cluster Report:rs3179003)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)への置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)、及び、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651),(Reference SNP Cluster Report:rs986475)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)への置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPより選択されるSNPを含む。
【0068】
被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法は、被験者からのサンプルにおいて、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10(31668933−31664651)]の位置3571でのグアニン(G)からチミン(T)への置換(3571 G/T)(ATG開始コドンに対する位置)に導く一塩基多型(SNP)より選択されるSNPを含む、突然変異したNCR3配列の存在の被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の耐性を示している。
【0069】
さらなる実施態様において、本記載は、被験者において癌の予後、癌の処置に対する被験者の感受性又は、被験者における、癌の処置の有効性を決定又は評価する特定の方法を提供し、この方法は、点突然変異、好ましくは、配列番号1[NC_000006.10 (31668933−31664651)]の位置3790でのシトシン(C)からチミン(T)への置換(3790 T/C)(ATG開始コドンに対する位置)に導くSNPを含む、突然変異したNCR3核酸配列の存在の被験者からのサンプルにおける検出を含み、そのような点突然変異を含む突然変異したNCR3配列の存在の検出は、前記被験者における癌の好ましくない予後、又は癌の処置に対する被験者の好ましくない又はネガティブな反応を示している。
【0070】
本明細書において記載する方法は、さらに、その目的が、被験者が多型についてホモ接合性又はヘテロ接合性であるかを決定することである工程を含みうる。
【0071】
本発明の方法において、NCR3遺伝子における任意の突然変異又は変化は、他のマーカー、例えば他の任意の遺伝子又はタンパク質における他の突然変異又は変化などとの組み合わせで評価してよい。
【0072】
サンプル中での突然変異したNCR3核酸の存在は、サンプルの遺伝子型決定を通じて検出することができる。検出は、NCR3遺伝子の全て又は部分の選択的ハイブリダイゼーション及び/又は増幅を使用し、NCR3遺伝子の全て又は部分のシークエンシングにより実施することができる。より好ましくは、NCR3遺伝子の特異的増幅は、突然変異の特定工程の前に行う。
本明細書において記載する特定の実施態様において、突然変異したNCR3核酸の存在を、制限酵素消化、シークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション(特に、核酸プローブ、例えば、浮遊状態の又は核酸アレイ上に存在する核酸プローブを用いて)、及び/又は選択的増幅を使用することにより検出する。
特定の実施態様は、被験者のNCR3遺伝子配列における少なくとも1つのSNPの存在の検出を含む。
【0073】
特定の実施態様において、本明細書において記載する方法は、異常なNCR3RNA発現の存在を検出することを含む。異常なNCR3発現は、突然変異したRNA配列の存在、異常なRNAスプライシング又はプロセシングの存在、異常量のRNAの存在などを含む。これらは、例えば、制限酵素消化、NCR3 RNAの全て又は部分のシークエンシング、前記RNA又は対応する合成cDNAの全て又は部分の選択的ハイブリダイゼーション又は選択的増幅を含む、当技術分野において公知の種々の技術により検出されうる。
異常なRNAスプライシングは、図2及び15に現れるスプライシング形態より選択される1つ又は複数の特定のスプライシングバリアント(又は、本明細書において「スプライシング形態」もしくは「RNA転写物アイソフォーム」と呼ぶ)のNKp30をコードする異常量のRNAの転写を誘導することができ、及び/又は、本明細書において定義する異常な形態の前記バリアントの少なくとも1つ、恐らくは、前記バリアント又はRNA転写物アイソフォームの2、3、4、5、又は全ての転写を誘導することができる。
【0074】
本明細書において記載する方法は、被験者のサンプルにおいて、以下:
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び中間テール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の中間テール定常又はテール可変Ig様ドメイン及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
− NKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメイン、中間テール定常又はテール可変Ig様ドメイン、及び短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物、
の相対量を測定及び比較することによる、
又は、各量の特定のアイソフォーム又は各相対量の少なくとも2つの、好ましくは3つの別々のアイソフォームを、コントロール値、参照値、又は平均相対値と比較することによる、NKp30タンパク質発現又は活性を決定する工程を含みうる。
【0075】
特に、コントロール相対値と比較し、増加(相対)量のNKp30の中間テール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物及び減少(相対)量のNKp30の長いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物及び/又は短いテール定常又はテール可変Ig様ドメインRNA転写物は、被験者における癌の好ましくない予後又は癌の処置に対する耐性を示している。
【0076】
さらなる実施態様において、この方法は、少なくとも1つのNKp30ポリペプチド又はタンパク質アイソフォームの異常発現の存在を検出することを含む。異常発現は、突然変異したポリペプチドアイソフォーム配列の存在、異常(相対)量のNKp30ポリペプチド又はタンパク質アイソフォームの存在、異常な組織分布の存在などを指す。
これらは、例えば、増幅及び/又は特異的リガンド(例えば抗体など)に対する結合を含む、当技術分野において公知の種々の技術により検出されうる。
他の適した方法を使用し、異常なNCR3遺伝子又はRNA発現又は配列を検出又は定量化してよい。それらは、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、サザンブロット(DNAについて)、ノーザンブロット(RNAについて)、一本鎖高次構造分析(SSCA)、PFGE、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル移動、クランプ変性ゲル電気泳動、ヘテロデュプレックス分析、RNase保護、化学的ミスマッチ切断、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)を含む。
【0077】
前に説明した通り、特定の実施態様において、この方法は、被験者からのサンプルにおける異常なNCR3核酸の存在を検出又は決定することを含む。これは、前に説明した通り、前記サンプル中に存在する核酸の制限酵素消化、シークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション、及び/又は選択的増幅を使用することにより達成することができる。
【0078】
制限酵素消化は、当技術分野において周知の技術及び酵素を使用して行うことができる。
【0079】
シークエンシングは、自動シーケンサーを使用し、当技術分野において周知の技術を使用して行うことができる。シークエンシングは、完全なNCR3遺伝子又は、より好ましくは、その特定のドメイン、典型的には、有害な突然変異又は他の変化を持つことが公知である又は疑われるもので実施してよい。
【0080】
増幅は、核酸複製を開始させる役割を果たす相補的な核酸配列の間での特定のハイブリッドの形成に基づく。
【0081】
増幅が、当技術分野における公知の種々の技術に従って、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、及び制限酵素断片長多型(RFLP)により実施してよい。
【0082】
これらの技術は、市販の試薬及びプロトコールを使用して実施することができる。好ましい技術では対立遺伝子特異的PCR又はPCR−SSCPを使用する。増幅は、通常、反応を開始するために特異的な核酸プライマーの使用を要求する。
【0083】
本明細書において記載する核酸プライマーは、周囲領域を含む、NCR3コード配列(例、遺伝子、又は遺伝子座、又はRNA)から配列を増幅するために有用である。
NCR3標的領域を増幅するために使用することができるプライマーは、NCR3のゲノム配列又はRNA配列及び、特に、配列番号1の配列に基づいてデザインしてよい。
【0084】
特定のプライマーは、NCR3コード配列の標的領域に隣接するNCR3遺伝子座の部分と相補的であり、それに特異的にハイブリダイズすることができる。
【0085】
標的領域は、癌に対する素因又は癌を発生する増加した可能性を有する特定の被険者において変更された領域でありうる。
この点について、本発明の特定のプライマーは、NCR3遺伝子又はRNA中の突然変異した配列に特異的である。そのようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出は、NCR3遺伝子座における突然変異の存在を示す。対照的に、増幅産物の非存在は、特定の突然変異がサンプル中に存在しないことを示す。
【0086】
本明細書において開示する方法において使用可能な典型的な核酸プライマーは、点突然変異を含む突然変異したNCR3配列、典型的には、点突然変異、好ましくは、前に定義した一塩基多型(SNP)を含む野生型NCR3配列に対して相補的であり、特異的にハイブリダイズするプライマーである。
【0087】
本発明に関連して使用可能な特異的核酸プライマーを以下に開示する。
【0088】
3571 G/T多型を含む領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表1】
これらの配列を使用し、471bpのフラグメントを増幅してよい。
【0089】
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_25630865_10を使用し、3571 G/T多型を遺伝子型決定することができる。
【0090】
3790 T/C多型を含む領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表2】
これらの配列を使用し、471bpのフラグメントを増幅してよい。
【0091】
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_7514908_10を使用し、3790 T/C多型を遺伝子型決定することができる。
【0092】
標的領域は、さらに、特定のNKp30 RNA転写物をコードする領域でありうる。
そのような標的領域を増幅する核酸プライマーの例を、実験セクションにおいて開示している(配列番号20〜30及び48)。
【0093】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの存在を、本明細書において開示する方法において、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする核酸プライマーを用いた選択的増幅を使用することにより検出してよい。
【0094】
特定のRNA転写物アイソフォームを増幅する特異的プライマーの例を以下に記載する:
【0095】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表3】
これらの配列を使用し、323bpのフラグメントを増幅してよい。
【0096】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表4】
これらの配列を使用し、266bpのフラグメントを増幅してよい。
【0097】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表5】
これらの配列を使用し、319bpのフラグメントを増幅してよい。
【0098】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表6】
これらの配列を使用し、262bpのフラグメントを増幅してよい。
【0099】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表7】
これらの配列を使用し、321bpのフラグメントを増幅してよい。
【0100】
SYBRGREEN検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表8】
これらの配列を使用し、264bpのフラグメントを増幅してよい。
【0101】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表9】
これらの配列を使用し、266bpのフラグメントを増幅してよい。
【0102】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA SHORT−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表10】
これらの配列を使用し、263bpのフラグメントを増幅してよい。
【0103】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表11】
これらの配列を使用し、263bpのフラグメントを増幅してよい。
【0104】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA INTER−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表12】
これらの配列を使用し、260bpのフラグメントを増幅してよい。
【0105】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−WT転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表13】
これらの配列を使用し、264bpのフラグメントを増幅してよい。
【0106】
TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のためにNKp30 RNA LONG−DEL転写物を増幅する特異的プライマーの例を本明細書において提供する:
【表14】
これらの配列を使用し、261bpのフラグメントを増幅してよい。
【0107】
ハイブリダイゼーション検出方法は、特定の配列、特にNCR3核酸配列突然変異又は特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームを検出する役割を果たす相補的な核酸配列の間での特定のハイブリッドの形成に基づく。
【0108】
特定の検出技術は、野生型の又は突然変異したNCR3遺伝子又はNKp30 RNA転写物アイソフォームに特異的な核酸プローブの使用を含み、ハイブリッドの存在の検出が続く。プローブは、浮遊状態に、又は、基材もしくは支持体に固定してよい(核酸アレイ技術と同様に)。プローブは典型的には標識され、ハイブリッドの検出を容易にする。そのような核酸プローブを本明細書において開示する。
【0109】
典型的なハイブリダイゼーション検出方法は、以下の、被験者からのサンプルを、NCR3核酸(好ましくは遺伝子座)、特に突然変異したNCR3核酸に特異的な核酸プローブと接触させ、そしてハイブリッドの形成を評価する工程を含む。
特に好ましい実施態様において、この方法は、同時に、サンプルを、野生型NCR3遺伝子座及びその種々の異常な又は突然変異した形態にそれぞれ特異的であるプローブのセットと接触させることを含む。この実施態様において、サンプル中でNCR3遺伝子座における種々の形態の突然変異の存在を直接的に検出することが可能である。また、種々の被険者からの種々のサンプルを並行して処理してよい。
【0110】
突然変異したNCR3核酸の存在を、このように、本明細書において開示する方法において、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームにハイブリダイズする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする、少なくとも1つの核酸プローブ、特に、浮遊状態の又はヌクレオチドアレイ上に存在する核酸プローブとの選択的ハイブリダイゼーションにより検出してよい。
【0111】
本明細書において開示する特定の方法は、その目的が、癌の処置に対する被験者の感受性/反応を評価すること、又は、被験者における癌の予後を評価することであり、被験者から、DNAの試験サンプル、好ましくはNCR3配列を含むことが疑われる又は公知であるDNAのサンプルを得る工程を含みうる。この方法は、好ましくは、以下の工程を含む:(a)被験者からの試験DNAサンプルを、少なくとも1つの核酸プローブと接触させ、それにおいて、前記核酸プローブは、突然変異したNCR3配列(例えば本明細書において記載するものの1つ)と相補的であり、それに特異的にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションサンプルを形成し、(b)ハイブリダイゼーションサンプルを、NCR3配列と少なくとも1つの核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションが生じることを可能にするのに適した条件下で維持し、及び(c)NCR3配列と少なくとも1つの核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションが存在するか否かを検出する。
【0112】
NCR3配列と核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションを使用し、被験者における好ましくない、又は逆に、好ましい癌の予後を示してよい。
【0113】
NCR3配列と核酸プローブとの特異的なハイブリダイゼーションをさらに使用し、被験者に施された処置に対する癌の反応(耐性又は感受性)を特定してよい。
【0114】
前に説明した通り、特定の突然変異したNCR3配列、特に非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異を含むNCR3配列は、癌の好ましくない予後、及び特定の癌の処置に対する耐性、ならびに他の突然変異したNCR3配列、特にNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異を含むNCR3配列に関連する。
【0115】
この処置は、好ましくは、化学療法、特に、アルキル化剤又はアントラサイクリン、例えばDOX、及び/又はオキサリプラチンもしくはシスプラチン(PLAT)などの投与を含む化学療法;TKI、例えばイマチニブメシレート(STI571)及びスニチニブマレート(SU11248)などの投与を含む治療;FTIの投与を含む治療;及び好ましくはX線(XR)を含む放射線療法より選択される。
【0116】
典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、30℃を上回る、好ましくは35℃を上回る、より好ましくは42℃を超過する温度、及び/又は約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩度を含む。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩度、及び/又は他の試薬、例えばSDS、SSCなどの濃度を改変することにより、当業者により調整されうる。
本開示の目的について、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション分子と標的配列の間に25%未満のミスマッチがある場合にだけハイブリダイゼーションが生じる条件を包含する。
【0117】
本発明の関連内で、プローブは、NCR3遺伝子又はRNA(の標的部分)と相補的であり、それとの特異的なハイブリダイゼーションが可能であるポリヌクレオチド配列を指し、それは前に記載したNCR3対立遺伝子に関連するポリヌクレオチド多型の検出に適する。プローブは、好ましくは、NCR3遺伝子、RNA、又はその標的部分に完全に相補的である。プローブは、典型的には、15〜100ヌクレオチドの長さ、好ましくは20〜50ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸を含む。より長いプローブを使用してもよいことを理解すべきである。本発明の好ましいプローブは、20〜30ヌクレオチドの長さの一本鎖核酸分子であり、それは、変化を持つNCR3核酸の領域(例えば、遺伝子又はRNA)に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0118】
異常な(例、突然変異した)NCR3配列(特に、遺伝子又はRNA)に特異的な核酸プローブ、即ち、前記の異常なNCR3配列に特異的にハイブリダイズし、正常な(参照)NCR3配列にはハイブリダイズしない核酸プローブを、本明細書において使用可能である。特異性は、標的配列に対するハイブリダイゼーションが、特異的なシグナルを生成することを示し、それは非特異的なハイブリダイゼーションを通じて生成されたシグナルから区別できる。完全に相補的な配列が本明細書において好ましい。しかし、特異的なシグナルが非特異的なハイブリダイゼーションから区別されうる限り、特定のミスマッチを許容してよいことを理解すべきである。
【0119】
プローブの配列は、癌の処置に対する被験者の感受性、又は被験者における癌の好ましい予後に関連する、突然変異、特に点突然変異、例えばSNPなどを持つNCR3遺伝子又はRNAの任意の配列に基づいて容易に調製することができる。
また、これらの核酸分子のフラグメント又は部分、例えばNCR3配列における上で特定された多型を包含する領域に基づいてプローブ及びプライマーを生成することが適切である。
【0120】
本明細書において記載する方法において実際に使用可能な典型的な突然変異したNCR3配列は、NCR3の野生型配列及び点突然変異、好ましくは前に記載した一塩基多型(SNP)を含む。
【0121】
ヌクレオチド置換、ならびにプローブの化学修飾を実施してよい。そのような化学修飾を達成し、ハイブリッドの安定性を増加させる(例、挿入基)、又はプローブを標識してよい。標識の典型的な例は、限定なしに、ラジオアイソトープ、酵素基質、補助因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン、及び酵素を含む。標識のための方法及び種々の目的に適切な標識の選択におけるガイダンスが、例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning. A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1989)及びAusubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1998)において考察されている。
【0122】
本発明は、また、癌の処置に対する被験者の感受性を評価する方法、又は、被験者における癌の予後を評価する方法における、本明細書において記載する核酸プローブ又はプライマーの使用に関する。
【0123】
癌の処置に対する被験者の感受性を評価し、癌の処置の有効性を評価し、又は被験者における癌の予後を評価する本明細書において開示する方法を、さらに、上に示す通りに、先天的又は獲得された少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を、被験者からのサンプルにおいて、そのような異常なNKp30タンパク質に対する結合について同定されたリガンドを使用して検出することにより実施してよい。
【0124】
本発明の好ましい方法は、被験者からのサンプルを、NKp30タンパク質アイソフォーム(正常なNKp30、例、野生型NKp30、又は異常なNKp30)に対する結合について同定されたリガンドと接触させ、結合が被験NKp30と前記NKp30リガンドの間で生じるか否かを、例えば、前記被験NKp30と前記NKp30リガンドの間での複合体の形成を決定することにより評価する工程を含む。
【0125】
本明細書において開示する特に好ましい方法は、被験者からのサンプルを、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドと接触させることにより、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの存在を決定する工程を含む。
【0126】
リガンドは、定義された標的に対して特異的に結合する薬剤である。
「特異的に」という用語は、薬剤の10%未満、好ましくは5%未満が、前記の定義された標的とは異なる標的に結合することを意味する。このように、NKp30タンパク質アイソフォーム特異的リガンドは、NKp30タンパク質だけに、即ち、本発明に関連して、NKp30タンパク質アイソフォームに実質的に結合する。異なる型のリガンド、例えばNKp30タンパク質アイソフォームだけに実質的に結合する特異的な抗体及び他の薬剤(及びその機能的フラグメント)などを使用してよい。
【0127】
本明細書において開示する好ましいリガンドは、特定の正常なNKp30タンパク質アイソフォーム又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドである。
【0128】
抗NKp30タンパク質抗体、特に、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに特異的な抗体が本明細書において開示されており、Harlow and Lane(Antibodies, A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1988)を含む、多くのテキストに記載される標準手順を使用して産生されうる。特定のリガンドが、NKp30タンパク質アイソフォーム又は特定のNKp30スプライシングバリアント、スプライシング形態又はNKp30 RNA転写物アイソフォームだけに実質的に結合することは、通常の手順を使用又は適応することにより容易に決定されうる。1つの適したインビトロアッセイではウエスタンブロッティングの手順を使用する(Harlow and Lane (Antibodies, A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1988)を含む、多くの標準的なテキストに記載されている)。ウエスタンブロッティングを使用し、所定のNKp30タンパク質結合剤、例えば抗NKp30タンパク質モノクローナル抗体などが、特定のNKp30タンパク質、即ち、本発明に関連して、特定のNKp30タンパク質アイソフォームだけに実質的に結合することが決定されうる。
【0129】
本発明の関連内で、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびに実質的に同じ抗原特異性を有するそのフラグメント又は派生物を指す。
抗体のより短いフラグメントも特異的な結合剤としての役割を果たすことができる。例えば、特定のNKp30に結合するFAb、Fv、及び一本鎖Fv(scFv)は、NKp30特異的な結合リガンドでありうる。
【0130】
これらの抗体フラグメントを以下の通りに定義する:(1)FAb(無傷な軽鎖及び1つの重鎖の部分を産生するための酵素パパインを用いた全抗体の消化により産生される抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むフラグメント);(2)FAb’(無傷な軽鎖及び1つの重鎖の部分を産生するためのペプシンを用いた全抗体の処理、続く還元により得られる抗体分子のフラグメント);2つのFAb’フラグメントが1つの抗体分子当たり得られる;(3)(FAb’)2(続く還元なしに、酵素ペプシンを用いた全抗体の処理により得られる抗体のフラグメント);(4)F(Ab’)2(2つのジスルフィド結合により一緒に保持された2つのFAb’フラグメントの二量体);(5)Fv(2つの鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む遺伝子操作されたフラグメント);及び(6)一本鎖抗体(「SCA」)(適したポリペプチドリンカーにより連結された、遺伝的に融合された一本鎖分子としての、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子)。これらのフラグメントを作る方法は通常通りである。
【0131】
本明細書において提示する特定の抗体は、前に定義され、本明細書において例示される、NKp30タンパク質又はポリペプチド、典型的にNKp30ポリペプチドに特異的である。
【0132】
本発明において使用可能な特定の抗体は、また、各々の特定の野生型NKp30ポリペプチドアイソフォームに特異的でありうる。好ましくは、抗体は、NKp30(配列番号38及び39)の細胞外ドメイン及びNKp30(配列番号40〜42)の細胞内ドメインより選択される配列の全て又は特有の部分を含む。NKp30可変Ig様細胞外ドメインを配列番号38に描写する。特異的な抗NKp30可変Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号43に描写する。NKp30定常Ig様細胞外ドメインを配列番号39に描写する。特異的な抗NKp30定常Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号44に描写する。NKp30の短い細胞内ドメインを配列番号40に描写する。特異的な抗NKp30の短い細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号45に描写する。NKp30の中間細胞内ドメインを配列番号41に描写する。特異的な抗NKp30の中間細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号46に描写する。NKp30の長い細胞内ドメインを配列番号42に描写する。特異的な抗NKp30の長い細胞内ドメイン抗体を得るために使用されるアミノ酸ペプチドを配列番号47に描写する。
そのような配列を、さらに、担体ペプチドとしてKLHに抱合してよい。
【0133】
このように、特定の実施態様において、サンプルを、異常なNKp30タンパク質又はポリペプチドに特異的な抗体と接触させ、免疫複合体の形成を決定する。免疫複合体を検出するための種々の方法、例えばELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)などを使用することができる。
【0134】
特定のNKp30タンパク質に対する結合について同定された他のリガンドは、例えば、ヘパラン硫酸及びBAT3である。
【0135】
リガンドは、特に、プローブを使用して検出されうる。プローブには好ましくはタグが付けられる。
【0136】
特定の実施態様において、本発明は、このように、本明細書において、NKp30経路を介した腫瘍細胞の免疫原性の欠如を検出するための方法を開示し、この方法は、TKI、アントラサイクリン、シスプラチン、オキサリプラチン、又はX線で処理された、NKp30リガンドを発現する自己腫瘍細胞の接触を含み、前記リガンドの結合の非存在は腫瘍細胞の免疫原性の欠如と相関している。
【0137】
当業者に周知の技術、例えばELISA結合アッセイ又はウエスタンブロット(WB)などを、上に記載する方法において適用してよい。
【0138】
非特異的な結合が起こりうるが、標的NKp30ポリペプチドアイソフォームに対する結合が、より高い親和性で起こり、非特異的な結合から確実に識別することができる。
【0139】
サンプルの核酸又はタンパク質と前に記載したリガンド又はプローブの間での接触を、任意の適したデバイス、例えばプレート、チューブ、ウェル、ガラスなどにおいて実施してよい。特定の実施態様において、接触は、核酸アレイ上又は特定のプローブ又はリガンドアレイ上で実施する(例えばヌクレオチドアレイ上に存在する核酸プローブなど)。
【0140】
リガンドは、前に記載したプローブとちょうど同じように、浮遊状態で又は基材もしくは支持体上に固定してよい。
基材は、固形又は半固形の基材、例えばガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどを含む任意の支持体でよい。基材は、種々の形態及びサイズ、例えばスライド、メンブレン、ビーズ、カラム、ゲルなどでよい。
接触は、複合体が、試薬(リガンド又はプローブ)とサンプルの核酸又はポリペプチドの間で形成されるために適した任意の条件の下で行ってよい。
サンプルは、このように、同時に、又は並行して、又は連続的に、NCR3核酸、NKp30 RNA転写物、又はNKp30タンパク質もしくはポリペプチドの異なる形態、例えば野生型の正常なアイソフォーム及びその種々の異常な形態に特異的な種々のリガンド又はプローブと接触させてよい。
【0141】
本発明では、さらに、NKp30活性を決定する工程を含む方法を開示する。
【0142】
NKp30は、主に、3つの可能な発現レベルを考慮することにより、NK細胞においてインビボで発現される:(i)クローンレベル、(ii)亜集団レベル、及び(iii)全末梢血集団のレベル。NKp30シグナル伝達は、炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFα及びIFNγ)の分泌の誘発及びDC成熟の加速のために不可欠である。
【0143】
本願において、異常なNKp30タンパク質活性は、このように、例えば、TNFα及びIFNγより選択される化合物の分泌の非存在又は存在、又はその細胞レベルにおける変化とも相関しうる。そのような細胞レベル、特にナチュラルキラー(NK)細胞レベルを、NKp30タンパク質活性を決定する工程を含む、本明細書において開示する方法において本発明者により測定してよい。そのような測定を、さらに、正常レベルと比較してよい。
異常なNKp30活性を、NK細胞及びコーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を含む培養において、IL−2の存在又は非存在において、IFNγ(精製されたNK細胞に由来する)の細胞レベルを測定することにより検出してよい。測定レベルを、好ましくは、IL−2の存在又は非存在において、PBS(リン酸緩衝食塩水)中のNK細胞の培養から測定された参照レベルと比較する。
【0144】
異常なNKp30活性を、さらに、TKIにより条件付けられた未熟な樹状細胞(DC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む共培養中の(精製されたNK細胞に由来する)IFNγの細胞レベルを測定することにより検出してよい。DCは、試験される被験者からの自己細胞又は同種細胞である。NK細胞は、好ましくは、自己細胞である。共培養は、並行して、NKp30リガンド及びモノクローナル抗体抗NKp30より選択される少なくとも1つの化合物の存在において、及び前記化合物のいずれかの非存在において実現されうる。
【0145】
異常なNKp30活性を、さらに、抹消血単核細胞(PBMC)及びコーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を含む培養中の(PBMCに由来する)IFNγ又はTNFαの細胞レベルを測定することにより検出してよい。測定レベルを、好ましくは、コーティングされたモノクローナル抗体抗NKp30を伴わないPBMCの培養から測定された参照レベルと比較する。
被験IFNγ又はTNFαの測定レベルを、さらに、それぞれの参照レベルと比較してよい。
本発明者らは、実際に、異常なIFNγ又はTNFαレベル(特に、公知の標準と比較した減少値)が、異常なNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームプロファイル、特に、NKp30の中間アイソフォームの相対的な高発現及びNKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの減少した発現と相関することを発見した。
【0146】
TNFα及びIFNγ分泌を、当技術分野において周知の技術、例えばELISA、フローサイトメトリーにおける細胞内サイトカイン染色、又はサイトカイン分泌アッセイにより決定してよい。
【0147】
異常なNKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性は、また、正常なNKp30転写物アイソフォームの異常転写に相関しうる。異常転写は、コントロール又は標準の量もしくはレベルと比較して増加した発現でありうる。それは、また、例えば、癌処置により又は癌自体により誘導された、コントロール又は標準の量もしくはレベルと比較して増加した発現でありうる。
本発明は、NKp30をコードするmRNAの細胞のレベルを測定することによるNKp30タンパク質発現又は活性の決定を含む方法を提供し、コントロールレベルと比較した増加レベルは、異常なNKp30タンパク質発現と相関する。mRNAレベルは、エクスビボで又はインビトロで、例えば、患者の単離PBMCで、又は患者の単離NK細胞で測定してよい。
そのような方法は、RT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖転写)の使用を含む工程を含むことができる。
【0148】
本願に記載されている方法は、このように、前に示す通り、好ましくは、正常状態においてNKp30を発現する細胞(好ましくは、自己PBMC及び/又はNK細胞より選択される)を含むサンプルで実施する。
【0149】
本発明者らは、さらに、本明細書において、潜在的なNK細胞、幹細胞、又は骨髄のドナーの被験者であり、そのためNKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する必要がある被験者のNCR3突然変異状態及び/又はNKp30アイソフォーム状態又はプロファイルの決定を含む診断方法を記載する。
そのような診断方法は、また、NK細胞、幹細胞、又は骨髄移植のための候補において実施してよい。
【0150】
前に定義した、癌の処置に対する被験者の感受性又は被験者における癌の処置の有効性を評価する方法において使用される、又は被験者における癌の予後を評価する方法において使用されるキットが、さらに、本明細書において提供される。キットは、前に記載した、核酸プローブ、プライマー、及び/又はリガンド、例えば抗体などを含む。
キットは、また、ハイブリダイゼーション、増幅、又は結合反応、例えば、抗原−抗体免疫反応を実施するための容器又は支持体、試薬、及び/又はプロトコールを含みうる。
【0151】
本明細書において記載する方法は、インビボ、インビトロ、又はエクスビボで実施してよい。それらは、好ましくは、インビトロ又はエクスビボで実施される。
【0152】
スクリーニング方法
本願は、また、特に、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において、癌を予防又は処置するために有用な、化合物又は物質、好ましくは薬物候補又はリードをスクリーニングするための新規方法を提供し、試験化合物又は物質が、NCR3遺伝子の発現、及び/又は特定のNKp30タンパク質アイソフォームの発現又は活性を調節する能力を決定することを含む。
【0153】
上に記載する方法を使用してスクリーニングされる好ましい試験化合物又は物質は、NCR3遺伝子の機能的な転写及び/又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォーム、特に、少なくとも1つの突然変異した又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復又は増強することが可能である。
【0154】
NKp30中間(INTER)タンパク質アイソフォーム発現を減少させる、好ましくは、NKp30の短い(SHORT)及び/又は長い(LONG)タンパク質アイソフォーム発現をさらに増強又は増加させる化合物が好ましい。換言すると、NKp30中間アイソフォームの相対的発現が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの発現よりも低い、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームプロファイルを支持する化合物が、特に好ましい。
【0155】
本明細書において開示するスクリーニング方法では、好ましくは、NCR3核酸又はNKp30ポリペプチドもしくはタンパク質アイソフォーム、ならびにNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子を、新たな標的として使用する。そのような成熟は、CD83、CD86、及びHLADRの上方調節により特定されうる。この方法は、結合アッセイ及び/又は機能アッセイを含み、インビトロ、細胞系、又は動物などにおいて実施してよい。
【0156】
本発明者らは、特に、生物学的に活性な化合物又は物質、特に、癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質を選択する方法を開示し、前記方法は、インビトロで試験化合物又は物質を、NCR3核酸(例えば、遺伝子又はRNA)、NKp30タンパク質又はポリペプチドアイソフォーム、NKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子、及び、その任意のフラグメントより選択される産物と接触させること、及び前記化合物又は物質が前記産物に結合する能力を決定することを含む。
【0157】
さらなる特定の実施態様において、この方法は、本発明のNKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子を発現する組換え宿主細胞を、試験化合物又は物質と接触させること、及び、前記化合物又は物質がそれぞれ前記NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回する前記分子に結合し、その活性を調節する能力を決定することを含む。
特定の実施態様において、前記NKp30タンパク質アイソフォームは、NKp30の異常な状態又はプロファイルに関与する、異常な、好ましくは突然変異したNKp30タンパク質アイソフォーム又はそのフラグメントでありうる。
【0158】
前記核酸、ポリペプチド、又は分子に対する結合は、試験化合物又は物質が前記標的の活性を調節し、このようにして被験者において癌に導く経路に影響を与える能力としての指標を提供する。
【0159】
結合の決定は、当業者に公知の種々の技術により実施してよく、その一部は、本明細書において前に記載しており、例えば試験化合物又は物質の標識により、特定のNKp30タンパク質又はポリペプチド(野生型又は異常なNKp30)、例えば特にNKp30アイソフォーム、又は特にNKp30タンパク質又はポリペプチドなどに対する結合について公知である、又は同定されている標識されたコントロール又は参照リガンドとの競合による。
【0160】
本明細書において記載するさらなる目的は、生物学的に活性な化合物又は物質、特に癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法にあり、前記方法が、インビトロで、試験化合物又は物質を、本明細書において記載するNCR3遺伝子、特に野生型又は突然変異したNCR3遺伝子と接触させること、及び、前記化合物又は物質が前記NCR3遺伝子の発現を調節する、特にその選択的スプライシングを調節する能力を決定することを含む。
【0161】
生物学的に活性な化合物又は物質は、NCR3の機能的な転写及び/又は特定のNCR3タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である化合物でありうる。
【0162】
本明細書において、本発明者らにより(実験セクションを参照のこと)、特にトリコスタチンA(TSA)及び5−アザシチジン(5AZA)が、参照値又は平均発現値と比較し、NKp30 SHORT及びLONGアイソフォームの過少発現量に関連するNKp30 INTERアイソフォームの有意な(相対的な)過剰発現量を誘導するために、野生型NCR3遺伝子スプライシングを調節することができることが実証されている。
本発明者らは、さらに、本明細書において、特に、組み合わせで使用される配列番号49〜51に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド53が、参照値又は平均発現値と比較し、NKp30 SHORT及びLONGアイソフォームの相対的な過剰発現量に関連するNKp30 INTERアイソフォームの有意な(相対的な)過少発現量を誘導するために、野生型NCR3遺伝子スプライシングを調節することができることを開示する。
【0163】
生物学的に活性な化合物又は物質を選択する別の方法が、さらに提供され、それにおいて、前記方法は、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く分子と接触させること、及び、前記化合物又は物質がそれぞれ前記NKp30タンパク質アイソフォーム又はNKp30シグナル伝達経路を迂回する前記分子の活性を調節する能力を決定することの工程を含む。
【0164】
本明細書で開示する方法において使用可能であるNKp30シグナル伝達経路を迂回し、DC成熟に導く特定の分子は、TLR3リガンド、例えば二本鎖RNA(例えば、ポリA:U及びポリI:C)及び/又は低メチル化C及びGに富むオリゴヌクレオチド(CpGオリゴヌクレオチド)などより選択してよい。
【0165】
本明細書の別の特定の目的は、癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法にあり、前記方法が、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30の活性の調節に関与するポリペプチド、例えばIL−15、sushi IL−15Rα−IL−15ポリペプチド、又はその結合部位を含むフラグメントと接触させること、及び、前記化合物又は物質が前記ポリペプチド又はそのフラグメントに結合する能力を決定することを含む。
【0166】
さらなる特定の実施態様において、方法は、NKp30タンパク質アイソフォームの活性の調節に関与するポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を、試験化合物又は物質と接触させること、及び、前記試験化合物又は物質が前記タンパク質に結合し、前記タンパク質の活性を調節する能力を決定することを含む。
【0167】
本明細書において開示するさらなる方法は、生物学的に活性な化合物又は物質、特に癌の予防又は処置において活性である化合物又は物質を選択する工程を含み、前記方法は、インビトロで、試験化合物又は物質を、NKp30の活性の調節に関与する遺伝子と接触させること、及び、前記試験化合物又は物質が前記遺伝子の発現を調節する能力を決定することを含む。
【0168】
スクリーニングの方法の特定の実施態様において、調節は活性化である。スクリーニングの方法の別の特定の実施態様において、調節は阻害である。
【0169】
本発明の方法は、多くの化合物又は物質のスクリーニングに適する。これらの化合物又は物質は、種々の由来、性質、及び組成でありうる。試験化合物又は物質は、単離された又は他の物質との混合物中の、任意の有機又は無機物質、例えば脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子などでありうる。化合物又は物質は、例えば、産物のコンビナトリアルライブラリーの全て又は部分でありうる。
【0170】
特定の実施態様において、本発明は、また、癌の処置のために有用な化合物又は物質、好ましくは突然変異した又は異常なNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現及び/又はNCR3遺伝子の機能的な転写を回復することが可能である化合物又は物質をスクリーニング又は選択する方法を開示し、前記方法は、試験化合物又は物質が、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで、特定のNKp30タンパク質アイソフォーム又はそのリガンドの発現又は活性を調節する、特に誘導もしくは増加させる、又は逆に、減少させる能力を決定することを含む。
【0171】
本発明者らは、特定のNKp30タンパク質アイソフォームのリガンドならびにNKp30シグナル伝達経路を迂回する分子が、前に定義した通りに、癌治療に対する被験者の感受性を増加することができることを実証している。
【0172】
好ましいリガンドを使用して、正常な又は保護的なNKp30タンパク質の長い及び短いアイソフォームプロファイル発現を、比較的に、中間アイソフォームプロファイルb発現まで上方調節する、及び/又は、前に定義した通りに、癌治療に対する被験者の感受性を増加させてよい。
【0173】
本明細書において特定される、正常な又は保護的なNKp30タンパク質アイソフォーム発現を上方調節する、及び/又は、癌治療に対する被験者の感受性を増加させるために使用できる、NKp30シグナル伝達経路を迂回する好ましい分子は、NKp44、NKp46、NKG2D、NKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する被験者のNK細胞、幹細胞、又は骨髄上のTRAILに対する抗体より選択されうる。
【0174】
上のスクリーニング方法を、任意の適したデバイス、例えばプレート、例えば、マルチウェルプレート、チューブ、ディッシュ、フラスコなどにおいて実施してよい。いくつかの試験化合物又は物質を、並行してアッセイすることができる。
【0175】
組成物及び使用
公知の、又は、前に記載したスクリーニング方法を用いて単離され、機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は活性を回復又は増強、即ち、増加又は支持することが可能である、被験者において癌、特に小児癌、例えば神経芽細胞腫、又は肉腫、特にGIST、又は白血病、特にAMLを処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、本明細書に記載されている。
【0176】
被験者は、好ましくは、前に説明した、突然変異したNCR3核酸、異常(相対)量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は、少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者である。
【0177】
機能的NKp30発現は、典型的には、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルに関連しており、被験者において、参照値又は平均値と比較した場合、NKp30中間アイソフォームの相対量が減少しており、そして、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの相対的な発現が増加していることが、本発明者らにより本明細書において実証されている。
特定の実施態様において、正常な又は保護的なNKp30アイソフォームの状態又はプロファイルは、NKp30中間アイソフォームの(相対)量が、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの量よりも低いプロファイルである。
【0178】
記載したスクリーニング方法により得られる物質を使用して、前に定義した通り、癌治療に対する被験者(前に定義した)の感受性を増強するための医薬的組成物を調製することもできる。
【0179】
化合物又は物質は、公知の化合物もしくは物質又は本発明のスクリーニング方法を使用して選択される化合物又は物質でありうる。
【0180】
被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するために使用可能な本明細書における化合物の例は、さらに、機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物アイソフォーム、機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム、NKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸、そのような核酸を含むベクター、又はそのようなベクター又は核酸を含む組換え宿主細胞より選択することができる。
【0181】
機能的なNKp30 RNA転写又はNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現もしくは活性を回復することが可能である化合物又は物質をさらに使用して、前に定義した通りに、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製してよい。
【0182】
そのような化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばバルプロ酸(VPA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、MS−275、アクラルビシン、バナジン酸ナトリウム;DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン(デシタビン)など;PKC阻害剤、例えばGo6983など;イマチニブメシレート(STI571);サイトカイニンキネチン;シクロヘキシミド;デキサメタゾン;オレイン酸ナトリウム;エストロゲン;プロゲステロン;オンコスタチンM(OSM);FK506;サイクロスポリンA;スタウロスポリン及びその任意の組み合わせからなる群において選択してよい。
【0183】
配列番号49−51のアンチセンスオリゴヌクレオチドも、前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するために組み合わせで使用可能な化合物の例である。
【0184】
正常なNKp30タンパク質発現又はNKp30タンパク質アイソフォームの活性を有する被験者のNK細胞、骨髄、及び幹細胞は、そのような被験者において癌を処置又は予防するために使用することができる物質の例である。
【0185】
前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するためのNKp30シグナル伝達経路を迂回し、樹状細胞(DC)の成熟に導く生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、本明細書において開示される。
【0186】
そのような化合物は、好ましくは、IFNγ、TNFα、及びその組み合わせからなる群において選択される。
【0187】
前に定義した通り、被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するためのNKp30シグナル伝達経路を迂回し、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化に導く生物学的に活性な化合物又は物質の使用が、さらに本明細書において開示される。
そのような化合物は、好ましくは、NKp44、NKp46、CD16(FcγRIIIA)、NKG2D、及びTLR3リガンドからなる群より選択される。
TLR3リガンドは、好ましくは、例えばポリA:U及びポリI:Cより選択してよい二本鎖RNAである。
【0188】
本発明者らは、さらに本明細書において、公知の又は本発明の方法を用いて選択される、及び、機能的なNKp30タンパク質アイソフォームの発現を回復又は増強することが可能である上に記載する化合物又は産物の少なくとも1つを含む医薬的化合物を提供する。
【0189】
医薬的組成物は、本明細書において、さらに有利には、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、例えばイマチニブメシレート(STI571)及び/又はスニチニブマレート(SU11248);ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)及びアントラサイクリン、例えばDOX、オキサリプラチン、及び/又はシスプラチン(PLAT)などを、組み合わせ調製物として、前記癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含んでよい。
【0190】
本明細書において記載する特定の組成物は、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、PKC阻害剤及び/又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤を、単独で又は組み合わせ調製物として、前記癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含む。
【0191】
本明細書において開示する医薬的組成物は、さらに、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む。
【0192】
好ましい実施態様において、本明細書において記載する医薬的組成物、特に、化学療法産物を含まない医薬的組成物を、NKp30が突然変異した個人において、化学療法又は放射線療法の施行を含む任意の処置前に投与する。医薬的組成物の投与は、単回投与又は反復投与において、任意の続く処置の前及び/又は間に、例えば、任意の続く処置の1日前及び前記処置の間の3週間おきに実施してよい。
【0193】
TLR3リガンドを含む医薬的組成物は、好ましくは、任意の化学療法又は放射線療法の前及び/又は間に投与される。
【0194】
本明細書において提供する医薬的組成物の投与は、当業者に公知の任意の方法により、好ましくは経口経路により又は注射により(全身経路を介して)実施してよい。投与用量は、当業者により適応されうる。
【0195】
典型的には、処置の観点で、投与用量は例えば以下でありうる:
− 4−エピルビシン(アントラサイクリン)について:3週間おきに100mg/m2;
− オキサリプラチンについて:3週間おきに約600−1000mg/m2;
− 核酸化合物について、用量は、例えば、ポリA:Uについて、6週間で30−50mg/週に及ぶ。
【0196】
予防的処置に関連して、本発明の医薬的組成物は、好ましくは、3週間おきに投与される。
【0197】
反復処置は、恐らくは他の活性薬剤、治療、又は任意の医薬的に許容可能な賦形剤(例、バッファー、等張生理食塩水、安定化剤の存在においてなど)との組み合わせで実施してよいことが理解される。
【0198】
本発明は、また、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性の活性化を通じた、被験者において癌を処置又は予防する方法にある。
【0199】
特に、NCR3遺伝子の突然変異した対立遺伝子を持ち、異常なNKp30タンパク質アイソフォームを発現し、又は異常なNKp30タンパク質アイソフォーム活性を示す被験者を処置する方法(併用療法を含む)が本明細書において提供される。
被験者は、このように、例えば、遺伝子治療、タンパク質置換治療を通じて、又は、NKp30タンパク質アイソフォーム模倣剤及び/又は正常な又は保護的なNKp30タンパク質アイソフォーム状態又はプロファイルのアクチベーターの投与を通じて処置してよく、それにおいてNKp30中間アイソフォームの相対的発現は、NKp30の短い及び/又は長いアイソフォームの(相対的)発現より低い。前記方法の少なくとも1つを、さらに、前に定義した通りに、癌治療に組み合わせてよい。
【0200】
本発明は、また、本明細書において前に記載した通り、少なくとも1つのNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性の活性化を通じた、被験者において癌を処置又は予防する方法にある。
【0201】
診断方法は、本明細書において記載する通り、癌の処置に対する被験者の感受性を評価し、又は、癌患者において先天的な又は獲得されたNKp30の定性的又は定量的な欠損を検出することを目的とし、そのような処置のために選択可能な被験者、特に、癌処置、特に化学療法処置、及び/又は同種骨髄移植の候補である、又は、それを受けるであろう被験者に適用してよい。同種骨髄移植の候補である、又は、それを受けるであろう被験者に関して、NKp30アイソフォーム発現の状態又はプロファイルに関して適切な骨髄ドナー被験者を選択することが好ましい。適切な骨髄ドナー被験者は、実際には、本明細書において定義するNKp30アイソフォームの機能的な又は正常な発現又は活性を有する被験者である。
【0202】
本発明の他の特徴及び利点を、以下の実験セクション(図1〜24を参照のこと)において与えており、それは例示的であり、本願の範囲を限定しないと見なすべきである。
【0203】
実験セクション
A.予備アッセイ(41人の患者/37人の健常ボランティアのコホート)
本発明者らは、本明細書において、NCR3遺伝子の転写調節(NK細胞表面でのNKp30アイソフォームの発現の定量的及び定性的な調節)における欠損が、長期間のT細胞依存的な抗腫瘍反応の確立に必要である、NKp30及びIFNγの産生を通じたNK細胞によるDC活性化の減少を介した腫瘍増殖の制御に影響を与えることを実証している41。
本発明者らは、最初に、41人のGIST患者及び37人の健常ボランティアにおいてNCR3遺伝子中に分布する21の一塩基多型(SNP)を遺伝子型決定している。予備結果は、NCR3遺伝子中の2つの突然変異がGISTの制御に関連することを明らかにした。
【0204】
材料及び方法
患者及び健常ボランティア(HV)
コホートは、最初に、TKI(チロシンキナーゼ阻害剤)により処置された41人のGIST患者から成り、Institut Gustave Roussy(IGR)において経過観察された。GIST患者は、EORTC第III相試験62005又はFrench Sarcoma Group(大半がIGR及びCLB)第III相臨床試験(BFR14)に登録され、それぞれイマチニブメシレート(IM)の用量及び持続時間を評価した。BRF14は、再発中の転移性又は切除不能な悪性GISTを伴う患者における、3年後に(実際には最初の1年間)処置介入対継続を無作為化した非盲検多施設試験であった54。EORTC62005試験は、GIST患者におけるIMの1日400mg対800mgを比較する無作為化試験であった55。
書面のインフォームドコンセントが、臨床試験及び免疫学的試験のための地域倫理委員会(Comite Consultatif de Protection des Personnes se pretant a la Recherche Biomedicale, Kremlin-Bicetre)に従って患者から得られた。
ヘパリン添加血液を、イマチニブメシレート(IM)治療から2、6、12ヶ月後に患者から採取した。約37人の健常ボランティアを、免疫学的パラメーターについてのコントロールとして使用した。
年齢、性別、リンパ球及びNK細胞の数、IMを用いた治療での用量及び持続時間を含む患者の特徴が記載されている(Menard et al.42)。
腫瘍反応をコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより評価し、そして反応を処置の開始から3ヶ月後ごとにRECIST基準に従って分類した。非進行性疾患には、安定疾患及び客観的な部分的又は完全な反応が包含された。患者の経過観察の中央値は47ヶ月(範囲6−75ヶ月)であった。
IGR、Center Leon Berard及び周辺の抗癌センターで管理された19人の神経芽細胞腫患者の予備コホートは、転移性腫瘍及び限局性腫瘍から成った。良好な又は不良な臨床予後を伴う患者の分類は、疾患の病期、年齢、及びMYCNオンコジーン増幅に基づいた12。
【0205】
RNA抽出及びRT−PCR
全細胞RNAを、RNeasyキット(Qiagen)を用いてPBMC及びNK細胞株から単離した。第1鎖cDNAを、5μgの全RNAから、SuperScript(商標)II Reverse Transcriptase及びランダムプライマー(Promega)を使用し、Invitrogenの取扱説明書に従って合成した。
【0206】
「GIST患者及び健常ボランティア」コホートについて、リアルタイム定量的PCR増幅を、FastStart DNA Master SYBRGreen I Mixを使用し、製造業者の取扱説明書に従って、0.3μMのプライマー、2mMのMgCl2、及びcDNAを用いて、20μlの最終反応容積中で行った。サーマルサイクリングをLightCycler(Roche Molecular System)を使用して実施し、95℃での10分間のインキュベーションにより開始し、38サイクル(95℃、1秒;65℃、10秒;72℃、20秒)が続いた。NKp30 mRNA発現レベルを、対応するGAPDH mRNA量を用いて、その相対的mRNA量を割ることにより標準化した。
リアルタイム定量的PCRにおいて使用される特異的プライマーは、Primer3(v.0.4.0)ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/)を用いてデザインした。
以下のプライマーを使用した:NKp30Fex2:5’−GTGAGGAATGGAACCCCAGAGT−3’(配列番号20);NKp30Fex2del:5’−GTGGTTCCAGGGAAGGAGGC−3’(配列番号21);NKp30Rex4I:5’−TTCCCATGTGACAGTGGCATT−3’(配列番号22又は27);NKp30Rex4II:5’−CCGGAGAGAGTAGATTTGGCATATT−3’(配列番号23);NKp30Rex4III:5’−TGGACCTTTCCAGGTCAGACATT−3’(配列番号24)。プライマー対”NKp30Fex2/NKp30Rex4II”を使用し、NKP30 SHORT−WT転写物を増幅した;SHORT−DEL転写物については”NKp30Fex2del/NKp30Rex4II”;INTER−WT転写物については”NKp30Fex2/NKp30Rex4I”;INTER−DEL転写物については”NKp30Fex2del/NKp30Rex4I”;LONG−WT転写物については“NKp30Fex2/NKp30Rex4III”;LONG−DEL転写物については“NKp30Fex2del/NKp30Rex4III”。
パートBにおいて以下に説明される通り、本発明者らは、後に、使用されているプライマー対(上で特定される)は、NKp30特異的であるが、LONG、SHORT、及びINTERMEDIATEアイソフォーム(即ち、それらのそれぞれの細胞内ドメインに従って区別されるNKp30アイソフォーム)間だけを識別でき、定常(”DEL”)と可変(”WT”)アイソフォーム(即ち、それらのそれぞれの細胞外ドメインに従って区別されるNKp30アイソフォーム)間はできない。明らかな通り、上の結果によって、特に被験者における癌の予後を評価するための重要なアイソフォームとしてのNKp30中間アイソフォームの特定が可能になる。上に記載した試験(パートA)は、しかし、二回目に(パートB)、患者数を二倍にし、前記NKp30中間アイソフォームの戦略的価値を確認するコホートで、本発明者らにより完成されている。TagMan方法を使用して加えた記載結果は、しかし、より具体的であり、パートBにおいて以下で説明する通りである。
【0207】
神経芽細胞腫コホートについて、より実用的な定量化システムを使用した。6つのNKP30転写物及びβ2Mハウスキーピング転写物のためのPCRプライマー及びTaqManプローブをPrimer Expressソフトウェアv1.0(Applied Biosystems)を用いてデザインした。
以下のプライマー及びプローブを使用した:NKP30 EC−WT:5’−TTTCCTCCATGACCACCAGG−3’(配列番号25);NKP30 EC−DEL:5’−GGTTCCAGGGAAGGAGGCT−3’(配列番号26);NKP30 EX4I:5’−TTCCCATGTGACAGTGGCATT−3’(配列番号27又は22);NKP30EX4II:5’−CGGAGAGAGTAGATTTGGCATATT−3’(配列番号28);NKP30EX4III:5’−GGACCTTTCCAGGTCAGACATT−3’(配列番号29);NKP30Probe(6−FAM/TAMRA):5’−AGCTGCACATCCGGGACGTGC−3’(配列番号30);B2MFor:5’−GATGAGTATGCCTGCCGTGT−3’(配列番号31);B2MRev:5’−AATTCATCCAATCCAAATGCG−3’(配列番号32);B2MProbe(6−FAM/TAMRA):5’−AACCATGTGACTTTGTCACAGCCCAA−3’(配列番号33)。
1マイクロリットルの第1鎖cDNAを、12.5μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)及び0.75μLのNKP30プライマー(10μM)及びプローブ(5μM)又は0.5μLのβ2Mプライマー(10μM)及びプローブ(5μM)と最終容積25μL中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、ABI prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用して行った。PCR条件は以下の通りであった:最初のインキュベーション50℃で2分、変性95℃で10分、続いて95℃で15秒、そして60℃(NKP30 SHORT−、INTER−、及びLONG−WT、ならびにβ2M転写物について)又は62℃(NKP30 SHORT−、INTER−、及びLONG−DEL転写物について)で1分間の45サイクル。リアルタイムPCR(RT−PCR)データを、2-ΔΔCT方法を使用し、製造業者の指示に従って分析した。
【0208】
本発明者らは、さらに、シグナル出現を可能にする別のNKP30Probe(6−FAM/TAMRA)を産生しており、前記プローブは、上に記載する配列番号30に対応するプローブよりも特異的であり、即ち、上に記載した適用されるRT−PCR方法に関連して、潜在的なDNA混入物とcDNAの間で識別できることに注目すべきである。前記の新たなプローブが、本明細書において配列番号48として特定されており、拡大コホートで使用されており、下の実験パートの記載から明らかである(パートB)。
【0209】
クローニング
合成された第1鎖NK92 cDNAを、PCRにより、HotStarTAQ DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いて50μl反応中で、Hybaid装置を使用して増幅した。
クローニングシステムのために使用されるHPLC精製プライマーを、Primer3 v0.4.0ソフトウェアを用いてデザインした:SHORT−WT及びSHORT−DEL用:KPNI−NKp30 5’−GGGGTACCCCGACATGGCCTGGATGCTGTT−3’(配列番号34)及びEcoRI−SHORT 5’−GGAATTCCTGGTGGAAGGGAAAGTTCAG−3’(配列番号35);INTER−WT及びINTER−DEL用:KPNI−NKp30及びEcoRI−INTER 5’−GGAATTCCTTTTGAAGAGGACTAGGGACATC−3’(配列番号36);LONG−WT及びLONG−DEL用:KPNI−NKp30及びEcoRI−LONG 5’−GGAATTCCATTTCTCAGGACAATCAGG−3’(配列番号37)。
下線を引いた配列は、発現プラスミドベクター中のDNAクローニング用の制限酵素認識部位である。サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で15分)で開始し、変性(95℃で40秒)、SHORT、INTER、及びLONGプライマーについてアニーリング(67℃で30秒)、及び伸長(72℃で1分)の30サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。PCR産物をアガロースゲルで単離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を使用して精製し、そして制限酵素KpnI及びEcoRI(Ozyme)を用いて消化した。消化されたフラグメントを、pcDNA3.1哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)に、そして後にpIRES2哺乳動物バイシストロニック発現ベクター(CLONTECH)にも連結した。ヌクレオチド配列をABI PRISM 310遺伝子アナライザー(Applied Biosystems)により分析した。
【0210】
遺伝子型決定
DNAを、Ficoll−Hypaque密度勾配により分離された抹消血単核細胞(PBMC)から抽出した。NCR3突然変異を同定するために、本発明者らは3つの定義されたPCR産物のシークエンシング分析を実施した。
3つのプライマー対を、PRIMER3プログラムを用いてデザインした:NCR3Frag1:5’−GATGGGTCTGGGTACTGGTG−3’(配列番号14)及び5’−GGGATCTGAGCAGTGAGGTC−3’(配列番号15);NCR3Frag2:5’−ATCCTGTGCTCTCTGGGTGT−3’(配列番号16)及び5’−CTGTACCAGCCCCTAGCTGA−3’(配列番号17);NCR3Frag3:5’−CTGAACTTTCCCTTCCACCA−3’(配列番号18)及び5’−GGTCCAGCCAGTAAAAACCA−3’(配列番号19)。
PCR増幅を、AmpliTaq(PE Biosystems)を用いて、50μl反応中で、Hybaid装置を使用して行った。サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で5分)で開始し、変性(95℃で40秒)、アニーリング30秒(NCR3Frag1プライマーについて64℃、NCR3Frag2プライマーについて60℃、及びNCR3Frag3プライマーについて64℃)、及び伸長(72℃で10秒)の40サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。シークエンシング反応を開始する前に、PCR産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、そして2%アガロースゲル電気泳動により定量化した。シークエンシング反応を、CEQ8000キット及びCEQ8000自動化蛍光シークエンサー(Beckman Coulter)を用いて実施した。
【0211】
クラスタリング分析
研究された教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した56。
【0212】
HDAC及び脱メチル化剤によるNCR3選択的スプライシングの調節
NK92細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、5−アザシチジン(2μM)及びIL−2(50UI/ml)と37℃で36時間インキュベートした。
YTS細胞を96ウェルプレート中に播種し(5.105個NK/ウェル)、トリコスタチンA(100nM)と37℃で45時間インキュベートした。
【0213】
NK細胞フローサイトメトリー分析
NK細胞を以下の抗体を用いて染色した:BD Pharmingenから購入したCD3−APC(クローンUCHT)、MiltenyiからのNKp30−PE(クローンAF29−4D12)、Beckman-CoulterからのCD56−PC5(クローンN901)。蛍光をFACScaliburサイトメーターで取得し、そして続いてCellQuest Proソフトウェアを用いて分析した。
【0214】
インビトロNK細胞エフェクター機能の評価
NKp30架橋実験では、NK細胞を、ヒトNK細胞Easy Sepキット(Stem Cell Technologies, Paris, France)を用いて精製し(純度>95%)、2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30(クローン210847、R&D Systems、Lille、France)又はアイソタイプコントロールを用いて7時間コーティングした96ウェル−Maxisorpプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)中に播種した。20時間のNKp30架橋後、上清を回収し、−80℃で保存し、そして次に市販のELISAキットを使用し、製造業者の取扱説明書(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)に従って評価した。あるいは、NK細胞を、10μMモネンシンを添加したAIMV中で2μlの抗CD107a−PE(クローンH4A3,Pharmingen)と7時間インキュベートし、CD3/CD56染色を架橋の終わりに実施した。
【0215】
統計分析
ノンパラメトリックなマン−ホイットニー検定を異なる群の比較のために使用した。結果は、p<0.05の場合、95%の信頼で有意であると考えられた。全ての統計分析を、GraphPad Prismソフトウエアバージョン5を用いて実施した。
【0216】
予備試験での特定の目的
目的1:GIST患者における処置に対する反応におけるNKp30アイソフォームの保有率及び予測値。
イマチニブメシレートで処置された一連の>40人の消化管肉腫(GIST)を持つ患者及び>30人の年齢及び性別を一致させた健常ボランティア(HV)を、個々のNKp30アイソフォームの各々の発現のそれらの転写パターンについて検証した。
【0217】
並行して、精製された抹消血単核細胞(PBMC)上でのNKp30発現レベル及び機能(抗NKp30抗体を用いた架橋時での脱顆粒及びIFNγ/TNFα産生)をアッセイしている。
NKp30のmRNAプロファイリング、タンパク質発現、及び機能の間の相関を、i)HV患者及びGIST患者の間、ii)イマチニブメシレートを用いて処置された患者における進行性及び非進行性の間で検証した。
【0218】
目的2:神経芽細胞腫患者におけるNKp30アイソフォームの予後値
特定のヒト悪性腫瘍(例えば神経芽細胞腫など)が、NK細胞により制御されうる。この仮定に基づき、本発明者らは、GIST患者において立証されたNKp30 mRNA発現の保護的パターンも、従来の処置で処置された他の悪性腫瘍に適用されるか否かを研究している。19人の神経芽細胞腫患者の予備コホートを試験した(良好な臨床予後を伴う患者対不良な臨床予後を伴う患者におけるPBMC細胞中のNKp30 mRNAのプロファイリング)。
【0219】
目的3:NKp30アイソフォームの薬理学的調節
エピジェネティック調節によって選択的スプライシングの調節が可能になる。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤を使用し、本発明者らは、定義されたパターンを伴うNK細胞株で、インビトロでの種々の割合の各々の個々のNKp30スプライシングバリアントにおける潜在的な変化を試験している。
【0220】
結果
1.GIST患者における処置に対する反応におけるNKp30アイソフォームの保有率及び予測値
利用可能なデータベースに従い、ヒトNCR3遺伝子は、6つの異なってスプライシングされる転写物として発現される:2つの型の細胞外ドメインが存在する(可変Ig様ドメイン及び定常Ig様ドメイン)、それらの各々が3つの別々の細胞内ドメイン(短い、中間、及び長いテール)の1つに連結されている24(図1)。
6つのNKp30アイソフォームの臨床的及び機能的関連性を研究するために、本発明者らは、最初に、41人のGIST患者(全員が少なくとも2ヶ月間にわたりイマチニブメシレートを用いて処置される−標準的ケア−)及び37人のHVのNKp30転写プロファイルを分析した。
特異的プライマーを、RT−PCR方法を使用して6つの転写物を定量化するために、各NKp30アイソフォームについて設計した(SHORT−WT:可変Ig様ドメイン/短いテール;INTER−WT:可変Ig様ドメイン/中間テール;LONG−WT:可変Ig様ドメイン/長いテール;SHORT−DEL:定常Ig様ドメイン/短いテール;INTER−DEL:定常Ig様ドメイン/中間テール;LONG−DEL:定常Ig様ドメイン/長いテール)(図2)。上で説明した通り、2回目において、SYBRGreenアッセイにおいて使用される上に記載したプライマーは、実際に、3つの別々の細胞内ドメインに特異的であるが、しかし、可変及び定常細胞外ドメインアイソフォームの間を識別することはできないと思われた。以下に加えた結果によって、LONG、SHORT、及びINTERMEDIATEアイソフォームの間を識別するための第1の使用したプライマーの関連性が確認される。本発明者らは、また、第1の使用した抗体が、NKp30特異的であるが、定常ドメインアイソフォームを確実に特定することができず、しかし、可変細胞外ドメインアイソフォームを確実に検出することができることを発見した。以下に加えた結果は、本明細書においてより関連している。なぜなら、それらは、配列番号25、27(又は22)、28、29、31、32、33、及び48により特定される上に記載するプライマーを使用して得られ、それらは、SHORT、LONG、及びINTERMEDIATE可変細胞外ドメイン(“WT”)アイソフォームを特異的に特定することができる。それらは非常に重要な(二重)患者コホートで使用されたため、それらは本明細書で、特に被験者における癌の予後を評価するために、各アイソフォームの正確な相対量を制御するために使用可能である。
NKp30アイソフォームの発現を、PBMCのcDNAから評価した。GIST患者及びHVにおける6つのNKp30アイソフォームの割合の比較によって、41人の患者の第1コホートで、GIST患者におけるINTER−DELアイソフォームの過少発現量に関連するSHORT−DELアイソフォームの過剰発現量が明らかになった(図3A)。
細胞内ドメイン[3つのSHORT、INTER、及びLONG細胞内ドメインについてのWT(可変Ig様ドメイン)バリアント及びDEL(定常Ig様ドメイン)バリアントの合計]を考慮することにより、GIST患者プロファイルは、最初に、HVと比較した、SHORTアイソフォームの過剰発現量及びINTERアイソフォームの過少発現量により特徴付けられた(図3B)。
処置の経過中での4人のGIST患者におけるNKp30転写プロファイルの安定性を制御した(図4)。患者の大半が、安定なNKp30プロファイルを示した。
6つのNKP30アイソフォームに基づく階層的クラスタリングアプローチを使用し、本発明者らは、最初に、2群における患者のコホートを分離した(図5)。B群の患者は、進行までの加速時間(45ヶ月で35%の再発)を示した。対照的に、A群の患者のわずか16%がイマチニブメシレートの45ヶ月後に再発した。興味深いことに、HVの50%が、好ましくないB群において分離された。
本発明者らは、A群及びB群に関連するNKP30転写プロファイルを特徴付けた(図6):A群は、この特定の例において、INTER高/SHORT低/LONG低プロファイル(「プロファイルA」と呼ぶ)により特徴付けられ、B群は、GIST患者(図6A−B)についてと同様に健常ボランティアについて、INTER低/SHORT高/LONG高プロファイル(「プロファイルB」と呼ぶ)により特徴付けられた(図6C−D)。
【0221】
2.GIST患者及びHVにおけるNKp30アイソフォームの転写プロファイルの機能的関連性
HV及びGIST患者から精製されたNK細胞でのFACS分析におけるNKp30細胞表面発現の比較では、プロファイルA対プロファイルBを示し、有意差は明らかにならなかった(図7)。興味深いことに、これらの2つのプロファイルの機能的な特徴付けによって、INTER低/SHORT高/LONG高プロファイルBと、インビトロでのNKp30架橋時のNK細胞による(精製NK細胞上での)IFNγの低産生の間の関連が明らかになった(図8)。
関連性は、これらのNK細胞の細胞毒性機能とNKp30プロファイルの間で検出されなかった(データ示さず)。
【0222】
3.GIST患者及びHVにおけるNCR3突然変異とNKp30アイソフォームの転写プロファイルの間での関連性
B群のNKp30 INTER低/SHORT高/LONG高転写プロファイルは、非同義のNCR3*3571 G/T(R174S − rs3179003)突然変異に関連する(B群の突然変異した個人の13%対A群の0%)。
A群のNKp30 INTER高/SHORT低/LONG低プロファイルは、NCR3遺伝子の3’非翻訳領域中に位置付けられるNCR3*3790 T/C(rs986475)突然変異に関連する(A群の突然変異した個人の58%対B群の3%)(図9)。興味深いことに、NCR3*3790 C突然変異は、NCR3遺伝子中のポリアデニル化部位を破壊する(図10)。NCR3*3790 CC患者での結果は、INTERアイソフォームの排他的な転写である(データ示さず)。
【0223】
4.神経芽細胞腫患者におけるNKp30アイソフォームの予後値
神経芽細胞腫における6つのNKp30アイソフォームの臨床的な関連性を研究するために、本発明者らは、良好な又は不良な臨床予後を伴う診断時の19人の患者でのNKp30転写プロファイルを分析した。
NKp30アイソフォームの発現を、PBMCのcDNAから評価した。神経芽細胞腫患者における6つのNKp30アイソフォームの割合の比較によって、良好な予後を伴う神経芽細胞腫患者と比較し、不良な予後を伴う神経芽細胞腫患者におけるINTERアイソフォームの過少発現量に関連するSHORT及びLONGアイソフォームの過剰発現量の傾向が明らかになった(図11)。
6つのNKP30アイソフォームに基づく階層的クラスタリングアプローチを使用し、本発明者らは、2群における患者のコホートを分離した(図12)。良好な臨床予後を伴う7人の患者の5人が、NKp30 INTER高/SHORT低/LONG低プロファイルにより特徴付けられる2群において分離された(図13)。この特定の例において、非進行性GIST患者(プロファイルA)において立証されたNKp30 mRNA発現の保護的パターンが、良好な臨床予後を伴う神経芽細胞腫患者に適用されると思われた。
【0224】
5.薬物を用いたNCR3遺伝子の選択的スプライシングの調節
選択的スプライシングを調節するいくつかのアプローチを使用し、NKp30 INTER低/SHORT高/LONG高(本試験(パートA)において得られた最初の結果後にプロファイルBとして特定された)からNKp30 INTER高/SHORT低/LONG低(本試験(パートA)において得られた最初の結果後にプロファイルAとして特定された)へのスイッチを操作してよい。
本発明者らは、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤に属する薬物のいくつかのファミリーを試験している。
YTS細胞株及びNK92 NK細胞株をモデルとして使用した。なぜなら、両方がNKp30 INTER低/SHORT高/LONG高(パートAにおいてプロファイルBとして特定された)を示すからである。予備結果によって、トリコスタチンA(TSA)及び5−アザシチジン(5AZA)が、YTS細胞株及びNK92細胞株においてそれぞれSHORT及びLONGアイソフォームの過少発現量に関連するINTERアイソフォームの有意な過剰発現量を誘導できることが示された(図14)。
【0225】
B.追加試験(80人の患者/56人の健常ボランティアのコホート)
材料及び方法
発現ベクターにおけるスプライセオソームのクローニング及びトランスフェクション
合成された第1鎖NK92 cDNAを、PCRにより、HotStarTAQ DNAポリメラーゼ(Qiagen)を用いて50μl反応中で、Hybaid装置を使用して増幅した。クローニングシステムのために使用されるHPLC精製プライマーを、Primer3 v0.4.0ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/)を用いてデザインした:NKp30b用:KPNI−NKp30 5’−GGGGTACCCCGACA TGGCCTGGATGCTGTT−3’(配列番号34)及びEcoRI−NKp30b 5’−GGAATTCCTGGTGGAAGGGAAA GTTCAG−3’(配列番号35);NKp30c用:KPNI−NKp30及びEcoRI−NKp30c 5’−GGAATTCCTTTTGAA GAGGACTAGGGACATC−3’(配列番号36);NKp30a用:KPNI−NKp30及びEcoRI−NKp30a 5’−GGAATTCCATTTCTCAGGACAATCAGG−3’(配列番号37)。下線を引いた配列は、発現プラスミドベクター中のDNAクローニング用の制限酵素認識部位である。
【0226】
サーマルサイクリングは1回の変性工程(95℃で15分)で開始し、変性(95℃で40秒)、NKp30a、b、及びcプライマーについてアニーリング(67℃で30秒)、及び伸長(72℃で1分)の30サイクルが続く。1回の最終伸長工程(72℃で10分)を加えた。PCR産物をアガロースゲルで単離し、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を使用して精製し、そして制限酵素KpnI及びEcoRI(Ozyme)を用いて消化した。消化されたフラグメントをpIRESバイシストロニック哺乳動物発現ベクター(Clontech)に連結した。ヌクレオチド配列をABI PRISM 310遺伝子アナライザー(Applied Biosystems)により分析した。
【0227】
NKLクローンを使用した機能試験
DC/NKクロストーク。GM−CSF+IL−4中で培養された0.5×105個の未熟単球由来DCを、前に記載された通りに17、NKp30a(LONG)、b(SHORT)、又はc(INTERMEDIATE)アイソフォームのいずれかを発現する1.5×105個のNKLクローンと24時間、1:3の比率で混合した。上清を収集し、市販のELISAヒトIFNγ、ヒトTNFαキット(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)を使用してサイトカインレベルをモニターした。腫瘍/NK混合培養。105個のHEK 293(E. Vivier, CIML, Marseille, Franceの好意により提供)又はGIST 882(J. A. Fletcher, Harvard Medical School, Boston, MAの好意により提供)又はMel 888を、NKp30a(LONG)、b(SHORT)、又はc(INTERMEDIATE)アイソフォームのいずれかを発現する105個のNKLクローンと24時間、1:1の比率で混合した。上清を収集し、市販のELISA(上に記載)を使用してサイトカインレベルをモニターした。架橋NKp30及び脱顆粒測定及びサイトカイン産生。以下の説明を参照のこと。
【0228】
患者及び健常ボランティアのコホート
NK細胞反応の免疫モニタリング試験によって、EORTC Phase III試験62005に登録されたGIST患者及びFrench Sarcoma Group Phase III臨床試験(BFR14)に含まれたGIST患者が前向きに検証され、IMの用量及び持続時間がそれぞれ評価された(n=80)。書面のインフォームドコンセントが、臨床試験及び免疫学的試験のための地域倫理委員会に従って患者から得られた。ヘパリン添加血液を処置中に(IM治療の2−94ヶ月の間、平均=28±3ヶ月)患者から採取した。患者の特徴を表1に描写している。
【0229】
【表15】
【0230】
腫瘍反応をコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより評価し、そして反応を処置の開始から3ヶ月後ごとにRECIST基準に従って分類した。非進行性疾患には、安定疾患及び部分的又は完全な反応が包含された。
N=56の健常ボランティア(性別及び年齢を一致させたGIST患者)を免疫学的パラメーターのためのコントロールとして使用した。
【0231】
AML患者のコホート
標準的FAB57及びWHO基準58に従いデノボAMLを伴う年齢45歳(±12.6)の218人の患者について、利用可能なFLT3突然変異状態を分析した。腫瘍の突然変異状態を、前に記載した通りに決定した51。全てを、ダウノルビシン又はイダルビシン及びアラシチン(aracytin)と組み合わせた導入化学療法により処置した。60歳以下の患者(n=193)を自己幹細胞移植(ASCT)又は高用量のアラシチンを用いた集中化学療法に、他(n=25)を中間用量のアラシチンを用いた化学療法に割り当てた。
【0232】
NKp30依存的サイトカイン分泌及びバルクNK細胞上での脱顆粒の評価
GIST患者及びHVのPBMCをFicoll-Hypaque(Amersham Pharmacia, Orsay, France)密度緩衝遠心分離により得た。NKp30架橋実験では、NK細胞を、ヒトNK細胞Easy Sepキット(Stem Cell Technologies, Paris, France)を用いて精製し(純度>95%)、2.5μg/mlのマウスIgG2a抗NKp30(クローン210847、R&D Systems、Lille、France)又はアイソタイプコントロールを用いて7時間コーティングした96ウェル−Maxisorpプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)中に播種した。別の方法では、NK細胞を1000IUのrIL−2(Chiron, USA)を用いて40時間活性化した。次に、NK細胞の上清を、市販のELISAキット(BD Biosciences/Pharmingen, Le Pont de Claix, France)を使用し、それらのTNFaレベルについて評価した。脱顆粒を、前に記載した通りに、フローサイトメトリーにより評価した17。簡単に説明すると、NK細胞を、10μMモネンシンを添加したAIMV中で2μlの抗CD107a−PE(クローンH4A3,Pharmingen)と7時間インキュベートし、CD3/CD56染色を架橋の終わりに実施した。
【0233】
アイソフォームのRT−PCR及び非階層的クラスタリング
全細胞RNAを、RNeasyキット(Qiagen)を用いてPBMC及びNK細胞株から単離した。第1鎖cDNAを、5μgの全RNAから、SuperScript(商標)II Reverse Transcriptase及びランダムプライマー(Promega)を使用し、Invitrogenの取扱説明書に従って合成した。6つのNKP30転写物及びβ2Mハウスキーピング転写物のためのPCRプライマー及びTaqManプローブをPrimer Expressソフトウェアv1.0(Applied Biosystems)を用いてデザインした。以下のプライマー及びプローブを使用した:
【表16】
1マイクロリットルの第1鎖cDNAを、12.5μLの2×TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)及び0.75μLのNKP30プライマー(10μM)及びプローブ(5μM)又は0.5μLのβ2Mプライマー(10μM)及びプローブ(5μM)と最終容積25μL中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、StepOnePlus System(Applied Biosystems)を使用して行った。PCR条件は以下の通りであった:最初のインキュベーション50℃で2分、変性95℃で10分、続いて95℃で15秒、そして60℃(NKP30a(LONG)、b(SHORT)、及びc(INTERMEDIATE)、ならびにβ2M転写物について)で1分間の45サイクル。リアルタイムPCRデータを、2−ΔCT方法を使用し、製造業者の指示に従って分析した。別々のNKp30アイソフォームの割合を、各アイソフォームの相対量と3つのa、b、及びcアイソフォームの総量の比率として決定した。教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラム(類似性の測定基準としてピアソン中央相関を使用した平均連結法クラスタリング)を使用して対数変換し、中央値で合わせた(median−centered)データに適用した56。
【0234】
NCR3エクソン4の3’UTR領域の遺伝子型決定
TAQMAN遺伝子型決定アッセイID:C_7514908_10を使用し、3790 T/C多型を遺伝子型決定することができる。簡単に説明すると、10ngのゲノムDNAを、5μlの2×TaqMan Genotyping Master Mix(Applied Biosystems)及び0.25μlの40×genotyping assayと最終容積10μl中で混合した。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光測定を、StepOnePlus System(Applied Biosystems)を使用して行った。
【0235】
統計分析。フィッシャー直接確率法及びノンパラメトリックなマン−ホイットニー検定を異なる群の比較のために使用した。全ての統計分析を、GraphPad Prismソフトウエアバージョン5を用いて実施した。生存曲線をカプラン−マイアー方法に従ってプロットし、そしてログランク検定を使用して比較した。全生存率及び無増悪生存率についての独立危険因子を、Cox比例ハザード回帰モデルを使用して決定した。生存分析のために、SPSS17.0ソフトウェアを使用した。
【0236】
結果
3つのNCR3/NKp30エクソン4アイソフォームの発現クローニング
NCR3/NKp30エクソン4によりコードされる別々のアイソフォームの潜在的な機能を解明するために(図1)、本発明者らは、pIRES発現ベクター中に3つの別々のNCR3/NKp30スプライスバリアントをクローニングした(図15)。これらの3つの転写物は、エクソン4I、4II、及び4IIIを使用し、それぞれNKp30c(INTERMEDIATE)、NKp30b(SHORT)、及びNKp30a(LONG)と名付けられている23(配列番号8、9、及び10)。NKp30a及びNKp30bの転写物は3’末端に276ntを共有し、しかしながら、それらの最後のエクソンの5’スプラス部位で分岐し、NKp30bの4番目のエクソン(エクソン4II)がNKp30aのイントロン3に55ntだけ伸びている。NKp30a及びNKp30bの転写物は、それぞれ位置31664825及び31664952に終止コドンを持ち、そしてNCBI Reference Sequence:NC_000006.10(配列番号1)を使用し、位置31664690に共通のポリアデニル化シグナル(ポリアデニル化シグナル2)及び位置31664671に共通のポリアデニル化部位を共有する。NKp30cの4番目のエクソン(エクソン4I)は、NKp30a及びNKp30bのイントロン3に伸び、そして位置31665070に別個の終止コドンを、そして位置31665049及び31665031にそれぞれポリアデニル化シグナル及び部位を持つ24。3つの別々のNKp30スプライスバリアントをコードするcDNA構築物(配列番号8、9、及び10で示す)を、Jurkat細胞株又はNKL細胞株に、緑色蛍光タンパク質GFPをコードするポリシストロニックレポーター遺伝子の5’に安定的にトランスフェクトした。G418中での選択後、表面NKp30発現を免疫蛍光法及び細胞蛍光測定により決定し、それをGFP蛍光又は非トランスフェクト細胞と比較した。全てのトランスフェクト細胞が、同程度のレベルのGFP及びNKp30を発現した(図16)。また、3つのNKp30トランスフェクト細胞株は、他のNK細胞受容体(NKG2D、NKp44、NKp46、KIR、CD25、図17)の発現において親細胞とは異ならず、それらの続く機能比較を可能にした。
【0237】
各NKp30アイソフォームの異なる機能を分析するために、本発明者らは、NKp30会合後にトランスフェクトJurkat細胞及びNKL細胞からのサイトカイン放出をモニターした。NKp30a及びNKp30bのいずれかを発現する細胞が、それぞれ多量のIL−2(図18A)及びIFNγ(図18B)を産生したのに対し、NKp30cアイソフォームを発現する細胞はNKp30誘発に反応してサイトカインを分泌しなかった(図18A及びB)。NKL−NKp30c細胞は、また、未熟樹状細胞(DC)を認識しなかった。それは、DCとの共培養において容易にIFNγ及びTNFαを分泌したNKL−NKp30a細胞又はNKL−NKp30b細胞とは対照的である39(図18C)。同様の結果が、可変レベルのNKp30リガンドを発現するHEK293、Mel888、及びGIST882腫瘍細胞を使用して得られた(データ示さず)(図18D)。細胞毒性アッセイによって、NKL−NKp30a(しかし、NKL−NKp30bやNKL−NKp30cではない)細胞が直接的な又は再指令された殺傷アッセイにおいて脱顆粒を示すことが明らかになった(図19)。このように、NKp30aが、細胞毒性レベルでNKエフェクター機能を誘発すことができる唯一のアイソフォームであると思われる。全体で、発現クローニングによって、このように、NKp30アイソフォームがインビトロでそれらのエフェクター機能において有意に異なること、及び、NKp30cが機能的に欠損したアイソフォームを構成することが、この後者の分子が細胞表面で安定に見え、正確に発現されることができるという事実にもかかわらず、明らかになった。
【0238】
80人のGIST患者のコホートにおけるNCR3/NKp30遺伝子の異なる発現パターン
末梢NK細胞における3つのNKp30アイソフォームの異なる発現プロファイルを研究するために、本発明者らは、GIST患者又は健常ボランティア(HV)からのバルク抹消血単核細胞(PBMC)上のβ2ミクログロブリンに対して標準化された、NKp30a、b、又はc用の特異的プライマーを使用した定量的RT−PCRを実施した。教師なしの階層的クラスタリングを、Cluster及びTreeViewプログラムを使用して対数変換し、中央値で合わせたデータに適用した。図20において、各列は1つのNKp30アイソフォームを表し、そして各カラムは1人のGIST患者を表す。赤色及び緑色はそれぞれ中央値を上回る、下回る発現レベルを示す。GIST患者の80人中44人(55%)が、NKp30a及びNKp30bが最も主なアイソフォームである転写プロファイルを示した(<<プロファイルA>>と指定)(図20A及び20B)。逆に、<<プロファイルB>>の個人は、高い割合のNKp30cアイソフォームを提示した(図20A及び20B)。NKp30発現の細胞分布の高い特異性から予測される通り26、各NKp30アイソフォームの異なる発現プロファイルを明らかにするRT−PCRの結果が、PBMC対バルクNK細胞において同程度であった(図21)。経時的な個人内変動が有意に思われなかったことは注目に値する(4人の代表的な個人での疾患経過中の3〜4の異なる時間点で示されている、図4)。
【0239】
患者において得られた2つのプロファイルを解釈するために、本発明者らは、それらを、性別、年齢、及び地理的由来において一致された56人のHVのコホートにおいて得られた各アイソフォームの相対的な転写収量と比較した。明らかに、HVからのPBMC又はNK細胞が、プロファイルA GISTのような、NKp30a及びbアイソフォームを主に発現する(図20B)。
【0240】
さらに、プロファイルA及びプロファイルBの個人が、同程度のレベルのNKp30膜発現を示し、NKp30の共通する細胞外部分に特異的な抗体を用いて染色されたNK細胞の比較細胞蛍光分析により決定された通りである(図20C)。
【0241】
GIST患者について確立されたクラスタリングを使用した56人のHVからのNKp30発現プロファイルの分類は、GIST患者とHVが、主なNKp30c発現を伴う個人の割合において異なることを示す。GIST患者の53%がプロファイルBを持ち、わずか30%のHVがこのカテゴリーに入る(フィッシャー直接確率法:p=0.02)(図22A)。
【0242】
全体で、これらの結果は、NKp30の優先的なエクソン4の使用における安定した表現型の存在、及び、非機能的なNKp30cアイソフォーム(プロファイルB)の主な発現が、コントロールコホートよりもGISTにおいてより高頻度であることを示す。
【0243】
プロファイルB(NKp30c)GIST患者からのNK細胞によるTNFαの分泌欠損
次に、本発明者らは、NKp30のインビトロ架橋後に、<<プロファイルA>>(n=76)対<<プロファイルB>>(n=60)を示す個人からの精製NK細胞によるTNFα放出を比較的に評価した。プロファイルBを伴うGIST患者及びHVからのNK細胞は、NKp30cを過剰発現するトランスフェクトNKL細胞株において観察される機能的な欠損に従い、プロファイルAの個人と比較し(図22B)、TNFα産生における有意な減少を示す(上を参照のこと)。この異なる反応は、IL−2の非存在又は存在の両方において、NKp30の誘発時に得られた(図22B)。しかし、それらのNK細胞をIL−2単独で刺激し(NKp30特異的抗体の非存在において)、TNFα分泌を測定した場合、プロファイルAとプロファイルBの個人の間で差は存在しなかった(図22B)。NKp30依存的な反応における同様の差が、HVを分析から除き、プロファイルA及びBを伴うGIST患者だけを互いに比較した場合に得られた(図22C)。重要なことに、プロファイルBの患者からのNK細胞が、プロファイルAの患者と比較し、低下したNKp30促進性の脱顆粒を示した(図22D)。故に、NKp30スプライシングにおける個人内変動は、TNFα分泌及びNK細胞脱顆粒に影響を与える。非機能的NKp30cアイソフォームを主に発現するプロファイルBを伴う個人は、NKp30駆動性のNKエフェクター機能における明白で、しかしながら選択的な欠損を示す。
【0244】
プロファイルB(NKp30c)GIST患者の不良な予後
本発明者らは、GIST患者での全生存率の前向き分析を実施し、それらは全てKITチロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブメシレート(IM)を用いて処理された。80人のGIST患者での臨床経過観察の平均は51ヶ月(±24)であった。プロファイルA及びBは、GIST予後を決定する古典的なパラメーターのいずれかにおいて有意に異ならなかった(表1)。このように、長期生存に関連するc−KITプロトオンコジーンのエクソン11突然変異を持つ腫瘍を伴う患者の割合は、プロファイルA及びプロファイルBにおいてそれぞれ55%及び53%であった(フィッシャー直接確率法:p=ns)8。プロファイルBの患者は、単変量解析において最初のIM処置から劣る全生存率を有することが見出された(生存の中央値:プロファイルBにおける80ヶ月対プロファイルAにおいて中央値に達せず、ログランク検定:p=0.001)(図23A)。Coxモデルを使用した多変量解析において、プロファイルBが、全生存率についての唯一の独立予後因子として保持された(RR=13.1、95% CI[4.9−36.1]、p=0.01)。対照的に、NK細胞のNKp30発現レベルが同じコホートの患者内での全生存率に影響を有した(図23B)。全体で、これらデータは、機能異常NKp30cアイソフォーム(プロファイルB)の優先的な発現がGIST患者における憂うつな治療の転帰を予測することを示す。
【0245】
プロファイルB(NKp30c)患者に関連するNCR3*3790T/C(rs986475)
次に、本発明者らは、NKp30スプライスバリアントの優先的な発現をこの遺伝子の一塩基多型(SNP)遺伝子型に関連付けることを試みた。スプライシング変異は、NKp30a/bの転写を可能にするポリアデニル化シグナル2の喪失を導き、選択的NKp30c転写を駆動することが提示されている。実際に、NCR3遺伝子のポリアデニル化シグナル2における位置するSNP(NCR3*3790 T/C、rs986475)(図1)が、AAUAAAモチーフ内の一塩基置換に起因するNKp30a/bの転写を除去しうる。それは次にポリアデニル化及び切断効率に影響を与える59。従って、本発明者らのデータは、NCR3*3790がNKp30エクソン4の選択的スプライシングを制御することができることを示す。実際に、プロファイルBパターン(NKp30c過剰発現)を提示するそれらの患者の51%が、NCR3*3790 TC又はCC遺伝子型を示した(対プロファイルAを示すGIST患者における0%、フィッシャー直接確率法:p<0.0001)(図24A)。同様に、プロファイルBパターンを提示するHVの約58%が、NCR3*3790 TC又はCC遺伝子型を持った(図24B)。結論として、NCR3*3790 T/Cは、欠損NKp30cアイソフォームの発現を上昇させるエクソン4Iの異常な使用に導くことができる因子の1つである。
【0246】
c−KIT及びFLT3における機能獲得突然変異は、GIST及びAML患者においてNCR3*3790 T/Cに関連する
オンコジーン駆動性のDNA損傷反応は、NK細胞認識のために要求されるNCRリガンドの膜発現を誘発し、そしてこれは免疫媒介性の腫瘍抑制の機構を構成しうる60。従って、欠損したNK細胞機能が、特定の悪性腫瘍の発生の素因となりうる。軽微なNK細胞機能障害を、定義されたオンコジーン駆動性の悪性腫瘍と一致させる試みにおいて、本発明者らは、別々のc−kit/PDGFRα突然変異を持つGIST患者(GIST患者の約14%がc−kit/PDGFRαにおける突然変異を持たないことに注意すること)ならびにFLT3内部タンデム重複遺伝子バリアント(FLT3−ITD)を持つ急性骨髄白血病(AML)を伴う患者(AMLの約15%において発癌を駆動させる)におけるNCR3*3790 T/C SNPの頻度を決定することを選んだ61。本発明者らは、AMLにおいてNCR3*3790 T/C SNPの存在とFLT3−ITDの間に有意な関連性を見いだした。NCR3*3790突然変異バリアントを提示するFLT3−ITDを持つAMLの34.6%(18/52)対FLT3−ITDオンコジーンを欠くAMLにおける18.7%(31/166)(フィッシャー直接確率法:p=0.01)(図24C)。GISTについては、検出可能なc−kit又はPDGFRα突然変異を持つGISTの21%(n=43)がNCR3*3790SNPを提示したが、検出可能なc−kit又はPDGFRα突然変異を欠くGIST患者の0%(n=6)がこのNCR3*3790SNPを示した(図24D)。これらの結果は、NKp30アイソフォーム発現(及び、拡大すると、NK細胞機能)に影響を与える多型が、オンコジーン受容体チロシンキナーゼの活性化突然変異により駆動される2つの悪性腫瘍において遺伝的に相互作用しうることを示唆する。
【0247】
考察
1999年に記載されたが24、NKp30のスプライセオソーム(spliceoform)は決して研究の題材になることはなかった。本明細書において、本発明者らは、初めて、80人の患者及び56人の健常ボランティアの重要なコホートで、消化管肉腫の発生中でのNCR3/NKp30エクソン4スプライセオソームの病理生理学的関連性を記載しており、標的処置の経過中でのNKp30a/bアイソフォームの保護機能を強調している。
【0248】
選択的スプライシングが、ヒトゲノムにおいて、具体的には神経遺伝子及び免疫関連遺伝子についての機能調節の主要な機構として現れている。選択的スプライシングの使用は、発生、組織特異的、又は病理依存的な方法で細胞により制御されることができる。細胞は、公知のリン酸化経路、選択的スプライシングパターンを調節するためのスプライシング因子の再局在化及び合成を使用する62、63。ヒトNCR3遺伝子は、少なくとも3つのユニークなカルボキシ末端を伴うタンパク質をコードしうるいくつかの選択的スプライシング形態を有する。
cDNA選択、それに続くヒト脾臓cDNAライブラリースのクリーニングによって、ヒトNCR3/NKp30エクソン4の3つの選択的形態が明らかになり、そのcDNAがシークエンシングされ、GenBankに提出された(受入番号AF031136−38)24、25。初期の試験によって、NKp30 mRNAが脾臓、扁桃腺、B細胞株、及びNK細胞株において、そして肝臓における異なるスプライシングパターンを伴い発現されることが明らかになった。実際に、NCR3/NKp30の全ての3つの主なスプライス形態、即ち、hNKp30c(INTERMEDIATE)(AF031137)、hNKp30b(SHORT)(AF031136)、hNKp30a(LONG)(AF031138)がヒト扁桃腺及びNK細胞において発現され、完全なエクソン2を含んだ。しかし、ヒト肝臓でのRT−PCRによって、エクソン2(完全なエクソン2又は75bp欠失エクソン2)のレベルでの2つのアイソフォームにおけるhNKp30aの非存在、しかし、hNKp30bの存在を示すユニークなパターンが明らかになった。抗NKp30ペプチド抗体を用いた免疫染色を使用し、Sivakamasundari et al.(2000)は、ヒトNK細胞と適合性がある扁桃腺中でのリンパ濾胞の胚中心におけるNKp30タンパク質の存在を明らかにすることができた25。2005年に、ヒトNKp30遺伝子の6つのアイソフォームの詳細な転写分析が、胎児及び成人の両方の組織において実施されている32。V型Igドメイン含有形態(NKp30a、b、及びc)がより高度に発現されている形態であり、NKp30cが最も遍在し、豊富な形態である(胎児脳を除く)ことは注目に値する。興味深いことに、NKp30a及びbが、脳の主なスプライセオソームであった32。
【0249】
NK細胞における種々のNKp30アイソフォームの協調発現を制御する機構は不明確なままである。興味深いことに、この発現パターンは、CD56発現レベル及びCD27に基づいて区別される異なるNK細胞サブセットにおいて同様であることが見出された(ND、示さず)。さらに、イマチニブメシレートを用いたGIST治療が、ある場合において、数年に及び、経時的にNKp30発現のパターンを調節するようには思われなかった(図4)。薬理学的化合物、例えばヒストンデアセチラーゼ阻害剤(トリコスタチンA、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸)、配列番号49〜51に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチド(前に説明した)、又はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン)は、遺伝子の選択的スプライシングにおいて干渉することが公知であり、NK細胞の欠損機能に関連するパターンを制御する/切り替える貴重なツールを表わしうる。
【0250】
目的の配列
− NCR3遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号1)
>ref|NC_000006.10|NC_000006:c31668933−31664651ホモサピエンス染色体6、参照アセンブリー、完全配列
【表17】
注意:エクソン配列はボールド体である。開始コドン及び終止コドンに下線を引いている。エクソン2における欠失はイタリック体である。
【0251】
− 6つのNKP30アイソフォームのペプチド配列:
「短いテール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(SHORT−WT)−配列番号2(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029163)
【表18】
「中間テール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(INTER−WT)−配列番号3(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029164)
【表19】
「長いテール−可変Ig様ドメイン」アイソフォーム(LONG−WT)−配列番号4(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029162)
【表20】
「短いテール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(SHORT−DEL)−配列番号5(VegaペプチドIDなし)
【表21】
「中間テール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(INTER−DEL)−配列番号6(VegaペプチドID:OTTHUMP00000029165)
【表22】
「長いテール−定常Ig様ドメイン」アイソフォーム(LONG−DEL)−配列番号7(VegaペプチドIDなし)
【表23】
注意:太字のアミノ酸は以下のドメインに隣接する:(左から右へ)シグナルペプチド、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン。
可変Ig様ドメインを含むアイソフォームにおいて、定常Ig様ドメインを特徴とする欠失した細胞外領域に下線を引いている。
【0252】
− 6つのNKP30転写物のヌクレオチド配列:
「短いテール−可変Ig様ドメイン」転写物(SHORT−WT)−配列番号8
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076211)
【表24】
「中間テール−可変Ig様ドメイン」転写物(INTER−WT)−配列番号9
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076212)
【表25】
「長いテール−可変Ig様ドメイン」転写物(LONG−WT)−配列番号10
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076210)
【表26】
「短いテール−定常Ig様ドメイン」転写物(SHORT−DEL)−配列番号11
(VegaペプチドIDなし)
【表27】
「中間テール−定常Ig様ドメイン」転写物(INTER−DEL)−配列番号12
(VegaペプチドID:OTTHUMT00000076213)
【表28】
「長いテール−定常Ig様ドメイン」転写物(LONG−DEL)−配列番号13
(VegaペプチドIDなし)
【表29】
注意:開始コドンに下線を引いている。元の終止コドンはボールド体である。
【0253】
プライマー配列
− 3571G/T及び3790T/Cの多型を含むNCR3遺伝子の3つの領域を増幅し、シークエンシングによる遺伝子型決定を可能にする特異的プライマー:
【表30】
【0254】
− SYBRGREEN検出に基づく定量化のための6つのNKp30 RNA転写物を増幅する特異的プライマー:
【表31】
【0255】
− TAQMAN PROBE検出に基づく定量化のための6つのNKp30 RNA転写物を増幅する特異的プライマー:
【表32】
【0256】
− 6つのNKP30アイソフォームのクローニングのために使用したHPLC精製プライマー:
【表33】
【0257】
− 特異的な抗NKp30抗体を得るために使用したNKp30細胞外及び細胞内ドメインならびにアミノ酸ペプチドのペプチド配列:
NKp30アイソフォームの可変Ig様細胞外ドメイン−配列番号38
【表34】
NKp30アイソフォームの定常Ig様細胞外ドメイン−配列番号39
【表35】
NKp30アイソフォームの短い細胞内ドメイン−配列番号40
【表36】
NKp30アイソフォームの中間細胞内ドメイン−配列番号41
【表37】
NKp30アイソフォームの長い細胞内ドメイン−配列番号42
【表38】
特異的な抗NKp30可変Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号43
【表39】
特異的な抗NKp30定常Ig様細胞外ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号44
【表40】
特異的な抗NKp30短いIg様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号45
【表41】
特異的な抗NKp30中間Ig様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号46
【表42】
特異的な抗NKp30長いIg様細胞内ドメイン抗体を得るために使用したペプチド−配列番号47
【表43】
注意:定常Ig様ドメインを特徴とする欠失した細胞外領域を、可変Ig様ドメインにおいて下線を引く。特異的な抗NKp30抗体を得るために使用したペプチドの配列は、NKp30細胞外及び細胞内ドメインの配列においてボールド体である。
NKP30プローブ(6−FAM/TAMRA):
【表44】
配列(標的:ポリアデニル化シグナル1)
【表45】
配列(標的:ポリアデニル化部位1)
【表46】
配列INTERを遮断するアンチセンスオリゴヌクレオチド
【表47】
【0258】
【表48】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における癌の予後を評価する方法であって、(i)突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、(ii)異常量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、突然変異した該NCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在が、該被験者における癌の好ましくない予後を示している方法。
【請求項2】
方法が、NKp30 RNA転写物又はタンパク質の中間、短い、及び/又は長いアイソフォームの相対量を測定する及び参照値又は平均値と比較することによるNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は活性を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
参照値又は平均値と比較した相対的な増加量のNKp30中間アイソフォーム及び相対的な減少量のNKp30短い及び/又は長いアイソフォームが、被験者における癌の好ましくない予後を示している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
突然変異したNCR3核酸の存在が、NCR3核酸の全て又は部分のシークエンシングにより又は特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームとハイブリダイズする、又は、長い、中間、及び短いNKp30 RNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメインNKp30転写物アイソフォーム間の識別を可能にする、核酸プローブとの選択的ハイブリダイゼーションを使用することにより検出される請求項1記載の方法。
【請求項5】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの存在が、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする核酸プライマーを用いた選択的増幅を使用することにより検出される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
方法が、サンプルを、特定のNKp30アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドと接触させることにより、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの存在を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
リガンドが、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに特異的な抗体である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
方法が、ナチュラルキラー(NK)細胞のIFNγ及び/又はTNFαのレベルを測定することによるNKp30タンパク質アイソフォーム活性を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
癌が、肉腫、白血病、小児腫瘍、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、子宮頸癌、前立腺癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、ORL癌、リンパ腫、ミエローマ、セミノーマ、ホジキン及び悪性血液疾患からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
癌を処置するために有用な化合物をスクリーニングするための方法であって、NCR3の転写、又は特定のNKp30タンパク質アイソフォームの発現もしくは活性を調節するための試験化合物の能力を決定することを含む方法。
【請求項11】
試験化合物が、NCR3の機能的な転写を回復することが可能である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
試験化合物が、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
癌を処置するために有用な化合物をスクリーニングするための方法であって、特定のNKp30タンパク質アイソフォームのリガンドの発現又は活性を誘導又は増加させるための試験化合物の能力を決定することを含む方法。
【請求項14】
被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための(i)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物、(ii)機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム、及び/又は(iii)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸の使用。
【請求項15】
突然変異したNCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、機能的なNKp30 RNA転写又はNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現もしくは活性を回復することが可能である化合物又は物質の使用。
【請求項16】
物質が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばバルプロ酸(VPA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、MS−275、アクラルビシン、バナジン酸ナトリウム;DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば5−アザシチジン及び5−アザ−2’−デオキシシチジン(デシタビン)など;PKC阻害剤、例えばGo6983など;イマチニブメシレート(STI571);サイトカイニンキネチン;シクロヘキシミド;デキサメタゾン;オレイン酸ナトリウム;エストロゲン;プロゲステロン;オンコスタチンM(OSM);FK506;サイクロスポリンA;スタウロスポリン及びその任意の組み合わせから選択される、請求項15記載の使用。
【請求項17】
物質が、NKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する被験者のNK細胞、骨髄、及び幹細胞より選択される、請求項15記載の使用。
【請求項18】
組成物が、さらに、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、及び/又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を、組み合わせ調製物として、癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含む、請求項14〜17のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする核酸プライマー。
【請求項20】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームにハイブリダイズする核酸プローブ。
【請求項21】
請求項19又は20のいずれか一項記載のプライマー及び/又はプローブをそれぞれ含むキット。
【請求項1】
被験者における癌の予後を評価する方法であって、(i)突然変異したナチュラル細胞傷害誘発受容体3(NCR3)核酸、(ii)異常量の少なくとも1つの特定のナチュラルキラーp30(NKp30)RNA転写物アイソフォーム、及び/又は(iii)少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在を被験者からのサンプルにおいて検出することを含み、突然変異した該NCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性の存在が、該被験者における癌の好ましくない予後を示している方法。
【請求項2】
方法が、NKp30 RNA転写物又はタンパク質の中間、短い、及び/又は長いアイソフォームの相対量を測定する及び参照値又は平均値と比較することによるNKp30タンパク質アイソフォーム発現又は活性を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
参照値又は平均値と比較した相対的な増加量のNKp30中間アイソフォーム及び相対的な減少量のNKp30短い及び/又は長いアイソフォームが、被験者における癌の好ましくない予後を示している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
突然変異したNCR3核酸の存在が、NCR3核酸の全て又は部分のシークエンシングにより又は特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームとハイブリダイズする、又は、長い、中間、及び短いNKp30 RNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメインNKp30転写物アイソフォーム間の識別を可能にする、核酸プローブとの選択的ハイブリダイゼーションを使用することにより検出される請求項1記載の方法。
【請求項5】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの存在が、特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする、又は、NKp30の長い、中間、及び短いRNA転写物アイソフォーム間及び/又は定常及び可変Ig様ドメイン転写物アイソフォーム間の識別を可能にする核酸プライマーを用いた選択的増幅を使用することにより検出される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
方法が、サンプルを、特定のNKp30アイソフォームに対する特異的な結合について同定されたリガンドと接触させることにより、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの存在を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
リガンドが、特定のNKp30タンパク質アイソフォームに特異的な抗体である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
方法が、ナチュラルキラー(NK)細胞のIFNγ及び/又はTNFαのレベルを測定することによるNKp30タンパク質アイソフォーム活性を検出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
癌が、肉腫、白血病、小児腫瘍、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、子宮頸癌、前立腺癌、直腸癌、結腸癌、肺癌、ORL癌、リンパ腫、ミエローマ、セミノーマ、ホジキン及び悪性血液疾患からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
癌を処置するために有用な化合物をスクリーニングするための方法であって、NCR3の転写、又は特定のNKp30タンパク質アイソフォームの発現もしくは活性を調節するための試験化合物の能力を決定することを含む方法。
【請求項11】
試験化合物が、NCR3の機能的な転写を回復することが可能である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
試験化合物が、特定のNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現又は活性を回復することが可能である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
癌を処置するために有用な化合物をスクリーニングするための方法であって、特定のNKp30タンパク質アイソフォームのリガンドの発現又は活性を誘導又は増加させるための試験化合物の能力を決定することを含む方法。
【請求項14】
被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための(i)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードするNKp30 RNA転写物、(ii)機能的なNKp30タンパク質アイソフォーム、及び/又は(iii)機能的なNKp30タンパク質アイソフォームをコードする核酸の使用。
【請求項15】
突然変異したNCR3核酸、異常量の少なくとも1つの特定のNKp30 RNA転写物アイソフォーム、又は少なくとも1つの特定のNKp30タンパク質アイソフォームの異常な発現又は活性を有する被験者において癌を処置又は予防するための医薬的組成物を調製するための、機能的なNKp30 RNA転写又はNKp30タンパク質アイソフォームの機能的な発現もしくは活性を回復することが可能である化合物又は物質の使用。
【請求項16】
物質が、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばバルプロ酸(VPA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、MS−275、アクラルビシン、バナジン酸ナトリウム;DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば5−アザシチジン及び5−アザ−2’−デオキシシチジン(デシタビン)など;PKC阻害剤、例えばGo6983など;イマチニブメシレート(STI571);サイトカイニンキネチン;シクロヘキシミド;デキサメタゾン;オレイン酸ナトリウム;エストロゲン;プロゲステロン;オンコスタチンM(OSM);FK506;サイクロスポリンA;スタウロスポリン及びその任意の組み合わせから選択される、請求項15記載の使用。
【請求項17】
物質が、NKp30タンパク質アイソフォームの正常な発現又は活性を有する被験者のNK細胞、骨髄、及び幹細胞より選択される、請求項15記載の使用。
【請求項18】
組成物が、さらに、化学療法剤、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、及び/又はファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を、組み合わせ調製物として、癌の予防又は処置における同時、別々、又は連続使用のために含む、請求項14〜17のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームの増幅を可能にする核酸プライマー。
【請求項20】
特定のNKp30 RNA転写物アイソフォームにハイブリダイズする核酸プローブ。
【請求項21】
請求項19又は20のいずれか一項記載のプライマー及び/又はプローブをそれぞれ含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図10】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2011−524743(P2011−524743A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512095(P2011−512095)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056741
【国際公開番号】WO2009/147137
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(599029545)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056741
【国際公開番号】WO2009/147137
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(599029545)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT GUSTAVE ROUSSY
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【Fターム(参考)】
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