説明

ナノスケール構造体を有する物品及び該物品の製法

改良された光学的特性、化学的特性及び/又は物理的特性を有する物品の製造方法を開示する。その方法は、(a)出発材料を流動化させる工程;(b)一定の温度を有する前記物品の方に向けて、前記の流動化済み出発材料を押し進める工程;及び(c)前記流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程;を包含し、しかも、前記の通す工程は、前記の押し進める工程の前;前記の押し進める工程の後であるが、前記の流動化済み材料が、前記物品の表面と接触する前;及び/又は、前記の押し進める工程の後であって、前記の流動化済み材料が、前記物品の表面と接触した後;に行うことができる。該物品は、ナノスケール構造体が該物品の表面に分布しており、及び/又は、ナノスケール構造体が該物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれているので、該物品の特性は改良される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この特許出願は、2002年7月19日に出願された米国仮出願第60/397,486号に関する利益を主張する。
(発明の分野)
本発明は、改良された光学的、機械的及び化学的な諸特性を示す物品を製造する方法;とりわけ、ナノスケール(nano−scaled)構造を有するガラス物品であって、改良された諸特性を示す該ガラス物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガラス等の物品は、現代社会では多くの目的のために使用されている。例えば、ガラス物品は、自動車用途、建築用途、航空宇宙用途等に使用されている。用途にもよるが、ガラス物品は、種々の特性を有する必要がある。次のものは、ガラス物品の多くの特性のほんの少しの例である:色、透過率、反射率、ルミネセンス、かさ電気伝導度又は表面電気伝導度、紫外吸収/赤外吸収、硬度、(光触媒を含む)触媒表面仕上げ面の品位(catalytic surface quality)、断熱、ホトクロミック挙動、等。
幾つかの特性を有するガラス物品を得るための1つの方法は、新たなガラス組成物を創り出すことである。例えば、遷移金属酸化物及び金属コロイドは、種々のガラス組成物を造るのに使用されてきた。種々の特性を得るのに新たなガラス組成物を使用することの不都合な点は、炉中のバッチ組成を変えるのに要する時間の長さ;炉中のバッチ組成を変える結果として生じる廃棄物の量;等である。また、バッチの組成を変えることによって、製造方法のコストを増大させる、いっそう溶融し難いガラスが生じることがある。
【0003】
幾つかの特性を有するガラス物品を得るための1つの方法は、該物品の上にコーティング組成物を施すことである。ガラス物品のためのコーティング組成物は、当該技術において周知である。コーティング組成物の諸例には、化学蒸着(CVD)によるコーティング、及び物理蒸着によるコーティングが包含される。例えば、フッ素ドープト(doped)酸化スズコーティング、及びインジウムドープト酸化スズコーティングを、ガラス物品上に施すことができる。ガラス物品上にコーティング組成物を施して該ガラス物品の特性を変えることに関連して、幾つかの欠点が存在する。そのような欠点には、外観の不完全性(被覆されたガラスは、異なる角度で異なって見える);化学的及び機械的な耐久性の問題;コスト;光屈折率の食い違い(mismatch);等が包含される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス等の種々の物品の諸特性を改良する新規な方法であって、従来の方法の欠点を有していない該新規方法を得る必要性が存在している。本発明は、ガラス、セラミック又はポリマーのような物品の光学特性、機械的特性及び/又は化学的特性を、その表面上にナノスケール構造体を含有させること;及び/又は、該物品中にナノスケール構造体を少なくとも部分的に埋め込むこと;によって改良するための新規方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、非制限的具体例において、
(a)出発材料を流動化させる工程;
(b)前記の流動化済み出発材料を一定の温度を有する物品の方に向けて進める(force)工程;及び
(c)前記流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程;
を包含する物品を製造する方法であって、前記の流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程は、前記の流動化済材料を物品の方に向けて進める工程の前;前記の物品の方に向けて進める工程の後であるが、流動化済み材料が物品の表面と接触する前;及び/又は、物品の方に向けて押し進める工程の後であって、流動化済み材料が物品の表面と接触した後;に行うことができ、それによって、完成した物品は、物品の表面に分布した、及び/又は、物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれたナノスケール構造体を有する上記製造方法である。
本発明は、もう1つの非制限的具体例において、物品の表面に分布した、及び/又は物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれたナノスケール構造体を含む、三次元の物品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の記述)
本明細書及び特許請求の範囲で使用する、寸法、物理的特性、成分の量、反応条件、等を表す数は全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものと理解されるべきである。従って、もしそうではないと指摘しない限り、次の明細事項及び特許請求の範囲に開示する数値は、本発明により得ようと試みられている所望の特性に依って変化することがある。少なくとも、均等論を特許請求の範囲に適用することを制限する意図としてではないが、各々の数値パラメータは少なくとも、記載される有効数字の数を考慮して;また、通常の四捨五入の方法を適用することによって;解釈すべきである。更に、本明細書及び特許請求の範囲に開示する範囲は全て、その中に包含されるあらゆる全ての部分範囲(subranges)を包含するものと解釈するべきである。例えば、「1〜10」と表示される範囲は、(最小値1と最大値10とを含めて)最小値1と最大値10の間のあらゆる全ての部分範囲(即ち、1又はそれより大きい最小値から始まり、10又はそれより小さい最大値で終わる全ての部分範囲、例えば、1〜7.8;3〜4.5;6.3〜10)を包含するものと解釈すべきである。
【0007】
以下の諸用語は、本明細書及び特許請求の範囲において次のように定義される。
「〜の上に堆積された」は、表面の上に堆積された又は与えられたを意味するが、必ずしも表面と接触していることを意味する訳ではない。例えば、物品「の上に堆積された」コーティング又は材料は、その堆積されたコーティング又は材料と該物品との間に配置されている同一組成物又は異なる組成物の、1つ以上の他のコーティング又は材料が存在することを排除しない。
「ナノスケール構造体」は、1nm〜1000nm、又は1nm〜500nm、又は1nm〜100nm、又は1nm〜40nmの範囲の寸法を有する三次元物体を意味する。
「不透明な(opaque)」は、0%の可視光線透過率を有することを意味する。
「太陽光制御材料(solar control material)」とは、ガラスの太陽光性能特性[例えば、電磁放射線(例えば、電磁スペクトルの可視領域、紫外(UV)領域、又は赤外(IR)領域)の透過率及び/又は反射率]に影響を与える材料をいう。
【0008】
「出発材料」とは、ナノスケール構造体を形成することのできる1種の材料、又は複数の材料の混合物をいう。
「透明な(transparent)」は、0%より大きく100%以下の、物品を通過する透過率を有することを意味する。
「半透明の(translucent)」は、電磁エネルギー(例えば、可視光線)が通過しているものの、反対側の物体が明瞭には目に見えないような具合に該電磁エネルギーが拡散していることを意味する。
「可視光線」は、380nm〜760nmの範囲の電磁エネルギーを意味する。
【0009】
本発明は、改良された特性を有する物品を製造する方法であって、(a)出発材料を流動化させる工程;(b)前記の流動化済み出発材料を一定の温度を有する物品の方に向けて押し進める(force)工程;及び、(c)物品の方に向けて流動化済み出発材料を押し進める(force)前又は押し進めた(force)後、前記流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程;を包含する製造方法である。
本発明の第1の工程は、出発材料を流動化させる工程を包含する。下記のものは、適切な出発材料の非制限的諸例である:有機金属若しくはそれの溶液(例えば、チタンイソプロポキシド、エタノール中のチタンイソプロポキシド、テトラエチルオルトシリケート、又は溶解状態のテトラエチルオルトシリケート);無機塩[例えば、テトラクロロ金(III)酸三水和物、水中のテトラクロレート(III)酸三水和物、硝酸コバルト、又はエタノール中の硝酸コバルト];及び、諸金属酸化物又はそれらの懸濁液(例えば、酸化セリウム、水中の酸化セリウム、酸化亜鉛、若しくはエタノール中の酸化亜鉛)。更なる非制限的諸例には、
(1)貴金属イオンを含有する水溶液。例えば、HAuCl・3HO、AgNO、銅化合物、又はそれらの混合物を含有する水溶液;
(2)チタンイオン含有する溶液。例えば、エタノールの混合物に溶解しているチタンテトライソプロポキシド0.5〜25.0重量%を含有する溶液。安定剤として、2,4−ペンタンジオンを添加することができる;
(3)アンチモン及びチタンのイオンを含有する溶液。例えば、10%のSb3+/Sn4+の比を有する、三塩化モノブチルスズ及び三塩化アンチモンを含有する溶液であって、エタノールで50重量%以下に希釈され、次いで、室温で30分間撹拌される該溶液;
が包含される。
【0010】
出発材料には、溶解状態で分散しているナノスケール構造体を含有しているものもあり、ナノスケール構造体を含有していないものもある。
非制限的具体例において、流動化を行なう前の出発材料の温度は、固体若しくは液体の出発材料からの十分な昇華若しくは蒸発が可能となる温度;又は、出発材料が、噴霧化(例えば、液体のエーロゾル化)を行うのに十分に低い粘度を有する温度;に維持することができる。非制限的具体例において、出発材料の温度は、室温から有機金属液体の沸点までの範囲に及ぶことがある。
出発材料は、当該技術で知られている方法であれば如何なる方法ででも流動化させることができる。その方法は、出発材料を噴霧化してエーロゾルにすること;出発材料を蒸発させて気相にすること;出発材料を昇華させて気相にすること;又は他の類似技術;を包含するが、それらに限定されない、
【0011】
例えば、非制限的具体例において、出発材料は、エーロゾルを造るための市販の噴霧装置[例えば、TSI社(Inc.)からのモデル9306A]の中に入れることができる。
具体的用途にも依るが、下記のエーロゾルの諸特性を変えることができる:エーロゾルの粒径;エーロゾルのキャリヤガス;平均エーロゾル粒子(粒子は、固体、液体、又はそれらの組み合せである場合がある)の径;エーロゾルの粒径分布;エーロゾル粒子の密度;エーロゾル粒子の流量(flux);及び、エーロゾルの容積出力(volume output)。
非制限的具体例において、流動化済み材料の密度は、更なる処理のために十分である場合がある。
【0012】
本発明におけるもう1つの工程は、前記物品の表面の方に向けて、前記の流動化済み材料を押し進める工程であって、該物品表面が一定の温度を有する該工程を包含する。非制限的具体例において、移動性ガス流を使用して運動量を与えることによって流動化済み材料を押し進めることができる。物品の表面の方に向けて前記の流動化済み材料を押し進めるために、例えば、圧縮空気、圧縮窒素、等を用いることができる。もう1つの非制限的具体例において、移動性ガス流の温度は、室温から2100°Fまでの範囲に及ぶことがある。
物品の表面の方に向けて前記の流動化済み材料を押し進めるために、重力場、加熱場、静電場、磁場、又は類似のものを使用することもできる。
【0013】
本発明におけるもう1つの工程は、前記流動化済み材料を高エネルギー帯域に通過させる工程を包含する。この通過させる工程は、標準的方法で(例えば、更なる力又は圧力を与えることによって)成し遂げることができる。この流動化済み材料を通過させる工程は、(a)前記の押し進める工程の前;(b)前記の押し進める工程の後であるが、前記の流動化済み材料が、前記物品の表面と接触する前;及び/又は(c)前記の押し進める工程の後であって、前記の流動化済み材料が、前記物品の表面と接触した後;に行うことができる。高エネルギー帯域において、熱、電磁放射線、高電圧、又は類似のものを使用して流動化済み材料を励起し、該流動化済み材料に、揮発分の喪失、凝結(condense)、化学的反応、分解、相変化又はそれらの組み合せを生じさせることができる。
適切な高エネルギー帯域の諸例は、ホットウォール(hot wall)反応器、化学蒸気粒子堆積(CVPD;chemical vapor particle deposition)反応器、燃焼堆積(combustion deposition)反応器、プラズマ室、レーザー光線、マイクロ波室等を包含するが、それらに限定されない。
【0014】
非制限的具体例において、ホットウォール反応器が高エネルギー帯域である場合がある。ホットウォール反応器は本質的に熱室である。出発材料を、噴霧装置(例えば、強制エーロゾル発生器)によってホットウォール反応器に送り出すことができる。該反応器の内部で、流動化済み材料は、揮発分の喪失、凝結、化学的反応、分解、相変化又はそれらの組み合せを生じることができる。
次に記述することは、本発明を制限することなく、本発明におけるホットウォール反応器を操作するための典型的な諸パラメータの幾つかを述べている。ホットウォール反応器内部の温度は典型的には、400°F〜2100°F、又は900°F〜1650°F、又は1100°F〜1400°Fの範囲に及ぶ。該反応器内部の圧力は、周囲温度であっても良いし或いは独立的に制御しても良い。該反応器内部の雰囲気は、窒素;空気;又は、水素2〜5体積%と窒素95〜98体積%の混合物;である場合がある。該反応器内の滞留時間(該材料が該反応器内に存在する時間)は、高エネルギー帯域における必要な処理を引き起こすのを可能にするのに十分でなければならない。
【0015】
もう1つの非制限的具体例において、化学蒸気粒子堆積(CVPD)反応器が高エネルギー帯域である場合がある。化学蒸気粒子堆積反応器は本質的に、熱室である。化学蒸気粒子堆積法において、出発材料は、例えば、従来の化学蒸着装置で蒸発させて、気相にすることができる。この気相は、次いで、例えば圧力勾配が生じる結果、化学蒸気粒子堆積反応器を通して押し進める(be forced)ことができる。該反応器の内部で、流動化済み材料は、揮発分の喪失、凝結、化学的反応、分解、相変化又はそれらの組み合せを生じることができる。
次に記述することは、本発明を制限することなく、本発明における化学蒸気粒子堆積反応器を操作するための幾つかの典型的なパラメータを述べている。化学蒸気粒子堆積反応器内部の温度は典型的には、400°F〜2100°F、又は900°F〜1650°F、又は1100°F〜1400°Fの範囲に及ぶことがある。該反応器内部の圧力は、周囲温度であっても良いし或いは独立的に制御しても良い。該反応器内部の雰囲気は、窒素;空気;又は、水素2〜5体積%と窒素95〜98体積%の混合物;である場合がある。該反応器内の滞留時間は、高エネルギー帯域における必要な処理を引き起こすのを可能にするのに十分でなければならない。
【0016】
更にもう1つの非制限的具体例において、燃焼堆積反応器が高エネルギー帯域である場合がある。燃焼堆積反応器において、出発材料は、例えばエーロゾル発生器によって噴霧化して、エーロゾルを作ることができる。このエーロゾルは、火炎の中に導くことができる。
エーロゾルは、如何なる位置ででも火炎の中に導くことができる。火炎に沿った異なる位置での該火炎の温度は異なっており、該火炎の化学的組成は異なっており、しかも、しかも、火炎の速度は異なっている。
代替的に、エーロゾルは、火炎をもたらすガス混合物(例えば、空気又は酸素又はガス)と混合することができる。火炎を引き起こすその混合物は、可燃材料と酸化性材料の混合物(例えば、空気と天然ガス;酸素と天然ガス;又は一酸化炭素と酸素)である場合がある。
火炎の温度範囲は典型的には、212°F〜2900°F又は400°F〜2300°Fの範囲に及ぶ場合がある。滞留時間(該材料が火炎中に存在する時間)は、高エネルギー帯域における必要な処理を引き起こすのを可能にするのに十分でなければならない。
【0017】
もう1つの非制限的具体例において、プラズマ室が高エネルギー帯域である場合がある。プラズマ室において、流動化済み材料を、ガス放電(例えば、大気圧プラズマ又は低圧プラズマ)によって押し進める(force)ことができ;また、プラズマを構成する電子又はイオンとの衝突によってエネルギーを与える(be energized)ことができる。プラズマは、酸素等の反応性ガス、アルゴン等の不活性ガス、又は諸ガスの混合物を含有することがある。
プラズマ室の圧力は、10ミリトル〜760トルの範囲に及ぶことがある。プラズマ室における滞留時間は、高エネルギー帯域における必要な処理を引き起こすのを可能にするのに十分でなければならない。
例えば、プラズマ室は、気相が励起されてプラズマを作るステンレス鋼の室である場合がある。
【0018】
更なる非制限的具体例において、レーザー光線が高エネルギー帯域である場合がある。流動化済み材料は、レーザー光線を通過して光子を吸収することができる。適切なレーザーは、10,600nmの波長を有するCOレーザーを包含するが、それらに限定されない。米国特許第6,482,374号明細書を参照。この米国特許明細書は、言及することにより本明細書に組み入れ、適切なレーザーの一例とする。
流動化済み材料は、種々の物品の表面に対して押し進めることができる。本発明のための適切な諸物品は、ポリマー、セラミック及びガラスを包含するが、それらに限定されない。該物品は、ガラス(とりわけ、フロート法によって造られた窓ガラス)である場合がある。該ガラスは、如何なる種類のもの(例えば、従来のフロートガラス又は板ガラス)であっても良く、また、如何なる光学的特性(例えば、如何なる値の可視光透過率、紫外線透過率、赤外線透過率及び/又は全太陽光エネルギー透過率)をも有する如何なる組成のものでも良い。適切なガラスの諸例には、ホウケイ酸ガラス及びソーダ石灰シリカガラスの組成物であって、当該技術において周知であるものが包含される。典型的なガラス組成物は、米国特許第5,071,796号;同第5,837,629号;同第5,688,727号;同第5,545,596号;同第5,780,372号;同第5,352,640号;及び同第5,807,417号の明細書に開示されているが、それらに限定されない。
【0019】
適切なセラミック物品には、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、及び粘土)、並びに非酸化物(例えば、炭化ケイ素、及び窒化アルミナ)が包含される。
適切なポリマーには、ポリメタクリル酸メチル;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリビニルブチラール(PVB);ポリエチレンテレフタレート(PET);又は、これらを製造するためのいずれかのモノマーのコポリマー;又は、それらの組み合わせ;が包含される。
流動化済み材料が物品の表面と接触する直前(1秒以下の前)、該物品の表面の温度は、25°F〜3000°Fの範囲に及ぶことがある。ガラス物品に関し、その温度は典型的には、700°F〜2100°F又は1100°F〜1900°F又は1500°F〜1760°Fの範囲に及ぶことがある。ポリマー物品に関し、その温度は典型的には、25°F〜600°Fの範囲に及ぶことがある。物品の温度は、ナノスケール構造体がどの程度まで該物品の中に入り込むかを決定する諸因子の1つである。
【0020】
流動化済み材料が物品の表面と物理的に接触した後、ナノスケール構造体は、該表面に存在する、及び/又は、完成した物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれる。それらナノスケール構造体は、化学的結合又は機械的結合によって、該物品の表面に結合することができる。該物品の粘度が十分に低いならば、ナノスケール構造体を、ガラスの対流流れ、拡散、又は他のプロセスによって、該物品の本体の中に組み入れることができる。
本発明の方法はまた、任意の諸工程を包含することができる。例えば、該方法の種々の時点で、種々のコーティングを該物品に施すことができる。例えば、物品がガラスである場合、流動化済み材料を該物品の表面の方に向けて押し進める前又は押し進めた後、反射防止性コーティング又は導電性膜を該物品に施すことができる。もう1つの例として、流動化済み材料を物品の表面の方に向けて押し進める前又は押し進めた後、該物品の表面の上に、チタンイソプロポキシドのアルコールベース溶液を噴霧することができる。
【0021】
本発明は更に、物品の加熱及び/又は冷却に関連する諸工程を包含することがある。例えば、物品を加熱して、ナノスケール構造体を変化させるか;又は、最終物品を形成する(例えば、曲げるか若しくは積層する);ことができる。曲げ又は焼戻しのような諸プロセスは、上述のような高エネルギー帯域の代わりとなることがある。物品を、ナノスケール構造体を少なくとも部分的に溶解させる温度、又は、該物品中にナノスケール構造体が入り込んでいる深さを増大させる温度まで加熱することができる。また、物品を、冷却して、当該技術において周知であるアニールガラス(annealed glass)を製造することができる。
【0022】
本発明の方法により、三次元物品であって、ナノスケール構造体が(a)その表面上に保持されているか若しくは該物品の中に部分的に埋め込まれている;(b)該物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれている;又は、(c)該物品の中に完全に若しくは部分的に溶融している;三次元物品が形成される結果となる。本発明によって製造した物品の例については図1を参照。ナノスケール構造体は、物品の表面の上;及び/又は、物品の表面の下100μmまで、若しくは物品の表面の下20μmまでの所;に配置することができる。ナノスケール構造体は、物品の深さの全体に渡って、様々なやり方で分布させることができる。例えば、ナノスケール構造体の100%が、物品の表面の上に存在することがある。物品は、固体のナノスケール構造体及び/又は溶融したナノスケール構造体を含有することができる。ナノスケール構造体は、次の形状:球状、多面体様立体状、三角形状、五角形状、ダイヤモンド形状、針形状、棒状、円板状、等を有することができる。ナノスケール構造体は、1:1〜1:500又は1:1〜1:100のアスペクト比を有することができる。ナノスケール構造体は、完全に非晶質の状態(結晶化度0%)から、1つの結晶軸方向に沿って完全に配向している状態までの範囲に渡る、結晶化の度合いと配向性とを有することができる。諸ナノスケール構造体は、互いに接触しているか、又は1nm〜1000nmの距離だけ離れていることができる。
【0023】
ナノスケール構造体の種類、ナノスケール構造体の配向性、物品中にナノスケール構造体が埋め込まれている程度、等によって、物品の種々の特性を、改良することができる。例えば、物品の反射率を、選択的に増大させるか又は減少させることができる。物品の硬度を、増大させることができる。物品の触媒特性を、増大させることができる。物品の色を、変えることができる。物品の紫外線/赤外線透過率を、減少させることができる。物品のための密着表面積を、増大させることができる。物品の散乱度(scattering)を、例えば、より高い量子効率の光起電デバイスにおいて使用するために、増大させることができる。
本発明の方法がオンライン製造装置の一部として使用されるであろうことが予見される。例えば、本発明の方法は、フロートガラス操作であって、該方法が従来のフロート浴のホットエンド(hot end)付近で行われる該操作の一部であることができる。本発明は、フロート法と一緒に用いるようには限定されない。例えば、本発明は、垂直延伸プロセス(vertical draw process)においても用いられる。
【0024】
本発明の方法は、幾つかの利点を有している。第1に、本発明によって諸下流工程がコスト的に削減される。なぜなら、本発明はオンライン法の一部であり得るからである。第2に、本発明は、短い切換え時間を有する。なぜなら、本発明は迅速に実施することができるからである。第3に、本発明は、高温で利用されるため、耐久性物品を生成する。第4に、本発明は、ナノスケール構造体の凝集度合を制御することができる。第5に、本発明は、化学蒸着、噴霧熱分解等の他のプロセス、及び物理蒸着法等のオフライン技術と一緒に組み合わせることができる。
【実施例1】
【0025】
(例)
本発明は次に、下記の非制限的実施例によって説明する。
次の諸例は、適切な出発材料を造る方法を示す。
【0026】
(出発材料の例)
例1:チタンイソプロポキシド5.0gを、2,4−ペンタンジオン7.0gと試薬アルコール88.0gの混合物の中に添加し、室温で30分間撹拌した。
例2:チタンイソプロポキシド5重量%濃度を有する、例1で既に製造した溶液の中に、日本の石原産業株式会社からのアナタース形二酸化チタン(ST−01、平均粒径7nm)0.084gを徐々に添加し、室温で激しく撹拌した。
例3:チタンイソプロポキシド5重量%濃度を有する、例1で既に製造した溶液の中に、日本の昭和電工株式会社からの、アルコール溶液に入っている板チタン石(brookite)二酸化チタンのナノ結晶(NTB−13)3.0重量%を徐々に添加し、室温で激しく撹拌した。
【0027】
例4:チタンイソプロポキシド5重量%濃度を有する、例1で既に製造した溶液の中に、三塩化モノブチルスズ0.05gを徐々に添加し、室温で激しく撹拌した。
例5:塩化アンチモン1g及び三塩化モノブチルスズ9gを試薬アルコール90gに添加し、室温で撹拌した。
例6:テトラクロロ金(III)酸水和物(HAuCl・3HO)0.1gを脱イオン水100gに溶解し、黄色がかった透明の溶液が得られた。得られた溶液は、使用するまで、不透明の容器に保管した。
【0028】
例7:チタンイソプロポキシド500g。
例8:テトラエチルオルトシリケート500g。
例9:テトラエチルオルトシリケート(TEOS)5gを試薬アルコール95gに添加し、撹拌した。
例10:アルタイル・ナノマテリアル社(Altair Nanomaterials Inc.)(ネバダ州リーノー)からのAltium(登録商標)TiNano40鋭錐石(anatase)のナノ粒子1gを脱イオン水99gに分散させ、室温で撹拌した。その混合物は、超音波で30分間撹拌した。
例11:ナノフェーズ・テクノロジーズ社(Nanophase Technologies Corporation)(イリノイ州ロメオヴィル)から購入したNanoTek(登録商標)ナノ粉末の酸化セリウム10gを脱イオン水90gに分散させ、室温で撹拌した。その混合物は、超音波で30分間撹拌した。
【0029】
例12:試薬アルコールの分散液状態の、15重量%のNanoTek(登録商標)ナノ粉末の酸化亜鉛を、ナノフェーズ・テクノロジーズ社(イリノイ州ロメオヴィル)から購入した。その材料は、超音波で2時間撹拌し、一般に認められている該材料の解凝集を行った(deagglomerate)。
例13:硝酸コバルト5.0gを、試薬アルコール95gに分散させた。その溶液は、室温で30分間撹拌し、次いで、超音波で10分間処理した。
例14:酢酸セリウム10.0gを試薬アルコール45g及び脱イオン水145gに分散させた。その溶液は、室温で30分間撹拌し、次いで、超音波で10分間処理した。
例15:硝酸セリウム10.0gを試薬アルコール90gに分散させた。その溶液は、室温で30分間撹拌し、次いで、超音波で10分間処理した。
【0030】
例16:ティエイエル・マテリアルズ(TAL Materials)(ミシガン州アナーバー)によって造られたアルマトラン(alumatrane)[N(CHCHO)Al、CY約10%]10gを試薬アルコール90gと、撹拌しながら混合した。
例17:例16と同様であるが、材料はティエイエル・マテリアルズ(ミシガン州アナーバー)からの、ジルコニアのナノ粒子であった。
例18:日本の昭和電工株式会社からの、アルコール溶液に入っている板チタン石二酸化チタンのナノ結晶(NTB−13)20gを、室温で撹拌しながら、試薬アルコール74.2gに入っている2,4−ペンタンジオン3.4gと混合したチタンイソプロポキシド2.4gの溶液に添加した。
【0031】
(性能の例)
次の諸例において、出発材料は、(6.6リットル/分又は9.2リットル/分の出力に対応する)25psi又は40psiの窒素ガス入力圧力を有している、ティエスアイ社(TSI Incorporated)(ミネソタ州セントポール)からの単一ジェット噴霧装置(モデル9302A)を使用して噴霧化し、エーロゾルの流れにした。場合によっては、複数の発生器を同時に使用して、より大きい出力を生じさせた。噴霧用ガスは、窒素又は圧縮空気であった。
改変すべき物品は通常、コンベア炉の窒素雰囲気の中で加熱した。コンベアの速度は、1インチ/分から10インチ/分まで変えることができた。幾つかの例において、ガラスを、炉で予熱し、ベンチトップ(benchtop)まで移動させ、次いで、一定時間の間、空気で改変(modify)した。
燃焼による改変を行うための燃焼バーナーは、水冷式の表面混合燃焼バーナーであって、その中で、エーロゾルが、天然ガスの流れと混合されることによるか;又は、バーナー表面上の複数のオリフィスを通って注入されることにより;燃焼空間の中に導入される該燃焼バーナーであった。
【0032】
表1に、ナノスケール構造体の諸特性を示す。ナノスケール構造体は、次の方法で造った。例1、5、9、10、16及び17の混合物を、窒素と一緒に噴霧化し(6.6リットル/分)、大気雰囲気中、(2.3:1の比の)酸素−ガスの燃焼火炎に添加した。ナノ粒子を、肉眼で見える火炎の先端で、銅グリットの上に1分間集めた。
ナノスケール構造体は、透過型電子顕微鏡(TEM)(加速電圧200kVのJEOL2000FX TEM)を用いて分析した。
表2は、本発明に従って造った諸物品の、改変色特性を示す。
【0033】
物品1を、次の方法で製造した:40psiの窒素ガス入力圧力で、例6の出発材料を噴霧化した。次いで、エーロゾルの流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1300°Fに設定された該反応器の中に20psiの圧力の圧縮空気によって押し進めた。PPG社製のStarphire(登録商標)ガラス物品を固定し、また、それの温度は1300°Fに設定した。押し進めたエーロゾルによる噴霧処理を、1分間続けた。ホットウォール反応器を通過した後の、PPG社製の無色Starphire(登録商標)ガラス物品の表面に、金のナノスケール構造体が堆積した。室温まで冷却した後、金のナノスケール構造体を有する、完成したPPG社製Starphire(登録商標)ガラス物品が得られた。前記の、金のナノスケール構造体を有するPPG社製Starphire(登録商標)ガラス物品の色は、ピンク(pink)であった。
【0034】
物品2を、次の方法で製造した:前述の、金のナノスケール構造体を有するガラス物品を、更に、例1からの出発材料を用いてチタニア(titania)コーティングで被覆した。堆積プロセスは、次の通りである。40psiの窒素ガス入力圧力で、例1の出発材料を噴霧化した。次いで、20psiの圧力の圧縮空気を用いて、エーロゾル流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1140°Fに設定された該反応器の中に押し進めた。前述の、金のナノスケール構造体を有するPPG社製のStarphire(登録商標)ガラス物品を固定し、また、それの温度を1140°Fに設定した。押し込んだエーロゾルによる噴霧処理を、1分間続けた。ホットウォール反応器を通過した後の、前述の、金のナノスケール構造体を有するPPG社製のStarphire(登録商標)ガラス物品の表面に、チタニアコーティングが堆積した。室温まで冷却した後、完成した、金/チタニアのナノスケール構造体を有するPPG社製のStarphire(登録商標)ガラス物品が得られた。前記の、金/チタニアのナノスケール構造体を有するPPG社製のStarphire(登録商標)ガラス物品の色は、青−緑(blue−green)であった。金のナノスケール構造体、及び金/チタニアのナノスケール構造体を、LEO1530走査型電子顕微鏡及びそれに付属するエネルギー分散形分光分析法と、パナリティカル(PANalytical)(マサチューセッツ州ナティック)からのフィリップス(philips)X’PertMPD X線回折計を用いたX線回折法とによって確認した。
【0035】
物品3を、次の方法で製造した:例13は、窒素を用いて19.8リットル/分で噴霧化し;次いで、(4.6:1の比の)酸素−ガスの火炎であって、窒素雰囲気中、約750℃に加熱されて、2インチ/分で炉を通って移動しているStarphire(登録商標)ガラスの上に投射されている該火炎の中に導いた。その結果、該ガラスの表面にコバルトが取り込まれた。派手な青色(striking blue color)が得られた。パーキン・エルマー(Perkin Elmer)により製造されたラムダ9分光光度計を用いて、透過率を測定した。色は、CIELAB色(D65、10°)を用いたL*a*b*系を使用して計算した。
表3は、本発明に従って製造した物品の改変導電性を示す。
【0036】
物品4を、次の方法で製造した:例1は、窒素を用いて6.6リットル/分で噴霧化し;次いで、(4.6:1の比の)酸素−ガスの火炎であって、窒素雰囲気中、約550℃に加熱されて、4インチ/分で移動している透明ガラスの上に投射されている該火炎の中に注入した。該ガラスを冷却した後、噴霧熱分解により厚さ約1800Åの酸化スズ膜を施して被覆した。得られた試料は導電性粗面を有しており;曇り度によって例示される粗面度は、導電性が著しく低下する結果にはならなかった。曇り度は、ビクガードナー(BykGardner)製のヘイスガードプラス(HazeGardPlus)によって測定した。
表4は、本発明に従って製造した物品の改良テキスチャーを示す。
【0037】
物品5、6、7を、次の方法で製造した:例9は、窒素又は圧縮空気を用いて19.8〜36.8リットル/分で噴霧化し;次いで、(6.1:1の比の)酸素−ガスの火炎であって、窒素雰囲気中、約650℃に加熱されて、5インチ/分又は10インチ/分で移動しているStarphire(登録商標)ガラスの上に投射されている該火炎の中に導いた。この結果、該ガラスの表面にシリカのナノ粒子が付着した。噴霧出力、噴霧ガス及びコンベア速度を変えることにより粗度を変えて、諸試料を造った。
【0038】
物品8を、次の方法で製造した:40psiの窒素ガス入力圧力で、例5からの出発材料を噴霧化した。次いで、40psiの圧力の圧縮空気によって、エーロゾルの流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1260°Fに設定された該反応器の中に押し進めた。PPG社製の透明ガラス物品を3インチ/分の速度で移動させながら、その温度を1260°Fに設定した。移動しているPPG社製の透明ガラス物品がホットウォール反応器を通過した後、該ガラス物品の表面に、アンチモンドープト酸化スズのナノスケール構造体が堆積した。室温まで冷却した後、アンチモンドープト酸化スズのナノスケール構造体を有する、PPG社製の完成した透明ガラス物品が得られた。
【0039】
物品9を、次の方法で製造した:40psiの窒素ガス入力圧力で、例1の出発材料を噴霧化した。次いで、60psiの圧力の圧縮空気によって、エーロゾルの流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1260°Fに設定された該反応器の中に押し込んだ。PPG社製の透明ガラス物品を1インチ/分の速度で移動させながら、その温度を1260°Fに設定した。移動しているPPG社透明ガラス物品がホットウォール反応器を通過した後、該ガラス物品の表面に、チタニア(titania)のナノスケール構造体が堆積した。室温まで冷却した後、チタニアのナノスケール構造体を有する、PPG社製の完成した透明ガラス物品が得られた。
RMSの画像統計データを備えたディジタルインストルメンツナノスコープ原子間力顕微鏡法(Digital Instruments NanoScope Atomic Force Microscopy)を用いて、きめの粗い(textured)表面を評価した。
表5は、本発明に従って製造した物品の改良反射率[アンチグレア(anti−glare;防眩)]特性を示す。
【0040】
物品10を、次の方法で製造した:194°Fの温度を有するガラス容器に入れた例8の出発材料を、圧縮した窒素ガスで泡立たせることによって蒸発させて、それの気相にした。該気相を、CVPD(化学蒸気粒子堆積)反応器であってその温度が1380°Fに設定された該反応器の中に送り込んだ。該気相は、10psiの圧力の圧縮空気によって、CVPD反応器内部でいっそう速く移動させた。該気相は、CVPD反応器内部で分解して白色の化学種を生成した。これらの白色化学種はその後、圧縮空気によってCVPD反応器内部を通過させて、4インチ×4インチの寸法を有するPPG社製の透明ガラス物品であってその温度を300°Fに設定した該物品の方に押し進めた。室温まで冷却した後、シリカのナノスケール構造体を有する、PPG社製の透明ガラス物品が得られた。シリカのナノスケール構造体は、加速電圧が10keVのLEO1530走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
アンチグレア(防眩)特性は、対象物の表面反射率の減少によって表される。J.A.ウォーラム社(Woollam Co.,Lnc.)(ネブラスカ州リンカーン)からのWVASE32分光偏光解析器(Spectroscopic Ellipsometer)によって、入射角65°の反射率を測定した。表5において、本発明のシリカナノスケール構造体を有するPPG社製透明ガラス物品は、シリカナノスケール構造体を有していないPPG社製透明ガラス物品と比べて、入射角65°での積分反射率の僅かに半分を有する。
表6は、本発明に従って製造した物品の改変紫外線特性を示す。
【0041】
物品11を、次の方法で製造した:例15は、窒素を用いて19.8リットル/分で噴霧化し;次いで、(4.6:1の比の)酸素−ガスの火炎であって、800℃に加熱されたガラスの上に投射されている該火炎の中に導き、その結果、該ガラスの表面の中にセリウムが取り込まれた。蛍光X線によって、セリウム約4重量%がガラスの中に取り込まれていることが分かった。紫外透過率の減少が認められ、また、スペクトルの可視部分及び赤外部分において微小変化が認められた。透過率は、パーキン・エルマーにより製造されたラムダ9分光光度計を用いて測定した。
表7は、本発明に従って製造した物品の改良親水特性を示す。
【0042】
物品12を、次の方法で製造した:例1は、窒素を用いて6.6リットル/分で噴霧化し;次いで、(2.3:1の比の)酸素−ガスの火炎であって、空気中、約1800℃で2分間透明ガラスの上に投射されている該火炎の中に注入した。その熱ガラスの表面の中に二酸化チタンのナノ粒子が堆積した。パナリティカルからのフィリップスX’PertMPD X線回折計によるX線回折法によって、ルチル型チタニアのナノ粒子が存在していることが分かった。ガラス表面に走査型電子顕微鏡法を適用することによって、直径が50nm未満の一様な寸法の多数のチタニア粒子が存在していることが分かった。ガラス表面にチタニアが取り込まれたことによって、紫外線誘導親水性が生じた。
【0043】
物品13を、次の方法で製造した:例18は、窒素を用いて36リットル/分で噴霧化し;次いで、窒素雰囲気中、約675℃に加熱されたStarphire(登録商標)ガラスの方に押出した。この試料では、火炎は存在せず;エーロゾルを生成して、該エーロゾルが該物品の上面の3インチ以内になるまで、200°F未満に維持した。
【0044】
物品14を、次の方法で製造した:40psiの窒素ガス入力圧力で、例1からの出発材料を噴霧化した。次いで、エーロゾルの流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1260°Fに設定された該反応器の中に、60psiの圧力の圧縮空気によって押し込んだ。PPG社製の透明ガラス物品を2インチ/分の速度で移動させ、その温度は1260°Fに設定した。移動しているPPG社製の透明ガラス物品がホットウォール反応器を通過した後、該ガラス物品の表面に、チタニアのナノスケール構造体が堆積した。室温まで冷却した後、チタニアのナノスケール構造体を有する、PPG社製の完成した透明ガラス物品が得られた。それらチタニアナノスケール構造体は、LEO1530走査型電子顕微鏡と、それに付属するエネルギー分散形分光分析法とによって確認した。アナターゼ型チタニア結晶相は、パナリティカル(マサチューセッツ州ナティック)からのフィリップスX’PertMPD X線回折計によって確認した。
紫外線誘導親水性は、物品表面上における水接触角の減少を、紫外線暴露時間(長波長紫外線は28W/mで340nmであり、短波長紫外線は254nmである)の関数としてモニタリングすることによって特徴付けられた。
表8は、本発明に従って製造した物品の改良光触媒活性を示す。
【0045】
物品15を、次の方法で製造した:例1からの出発材料は、ティエスアイ社(TSI Incorporated)(ミネソタ州セントポール)からの六射形噴霧装置(Six−Jet Atomizer)(モデル9306A)を用い、40psiの窒素ガス入力圧力で噴霧化してエーロゾルの流れにした。次いで、エーロゾルの流れを、長さ17インチのホットウォール反応器であってその温度が1260°Fに設定された該反応器の中に、60psiの圧力の圧縮空気によって押し込んだ。PPG社製の透明ガラス物品を2インチ/分の速度で移動させ、その温度を1260°Fに設定した。移動しているPPG社製の透明ガラス物品がホットウォール反応器を通過した後、該ガラス物品の表面に、チタニアのナノスケール構造体が堆積した。室温まで冷却した後、チタニアのナノスケール構造体を有する、PPG社製の完成した透明ガラス物品が得られた。該チタニアナノスケール構造体は、LEO1530走査型電子顕微鏡と、それに付属するエネルギー分散形分光分析法とによって確認した。アナターゼ型チタニア結晶相は、パナリティカル(マサチューセッツ州ナティック)からのフィリップスX’PertMPD X線回折計によって確認した。
【0046】
チタニアナノスケール構造体を有する本発明の諸物品による、ステアリン酸の分解に対する光触媒活性(PCA)を、−CH伸縮モデルの積分赤外線吸収量(integrated IR absorbance)の低下を28W/mでの長波長紫外線340暴露時間の関数としてモニタリングすることによって測定した。−CH伸縮モデルの赤外線吸収量は、ATIマッツオン・インフィニティ・シリーズ(Mattson Infinity Series)FTIR分光分析法を用いて測定した。これのプロットの勾配は、光触媒活性(PCA)と呼ばれる。表1に示すように、チタニアナノスケール構造体を有していないPPG社製の透明ガラス物品であって光触媒特性を全く有していない該物品と比べて、本発明のチタニアナノスケール構造体を有する諸物品は、71×10−3cm−1・分−1のレベルの光触媒活性という新たな機能を有する。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
(結果)
本発明の方法を利用することによって、試料物品の次の諸特性を変えることができた:色、導電性、紫外吸収、反射率、光触媒能、等。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】200kVのJEOL 2000FX透過型電子顕微鏡法を用いた断層技術(cross−section technique)によって分析した、ナノスケール構造体を含有するガラス物品を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)出発材料を流動化させる工程;
(b)前記の流動化済み出発材料を一定の温度を有する物品の方に向けて押し進める工程;及び
(c)前記流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程;
を包含する物品を製造する方法であって、前記の流動化済み出発材料を高エネルギー帯域に通す工程は、前記の流動化済み出発材料を物品の方に向けて押し進める工程の前;前記の物品の方に向けて押し進める工程の後であるが、流動化済み材料が物品の表面と接触する前;及び/又は、物品の方に向けて押し進める工程の後であって流動化済み材料が物品の表面と接触した後;に行うことができ、それによって、完成した物品は、物品の表面に分布した、及び/又は、物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれたナノスケール構造体を有する、上記製造方法。
【請求項2】
流動化工程は、出発材料を噴霧化してエーロゾルにすること;気相の中に該出発材料を蒸発させること;又は、気相の中に該出発材料を昇華させること;によって行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動化工程は、出発材料を噴霧化してエーロゾルにすることによって行なわれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
出発材料を、有機金属若しくはそれの溶液;無機塩;又は、金属酸化物若しくはそれの懸濁液;を包含する群から選ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
流動化済み出発材料を物品の表面の方に向けて押し進める工程は、可動性ガス流を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
物品の表面温度が25°F〜3000°Fの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
物品を、ポリマー、ガラス及びセラミックを包含する群から選ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
物品はガラスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
物品の表面温度が700°F〜2100°Fの間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高エネルギー帯域を、ホットウォール反応器、化学蒸気粒子堆積(CVPD)反応器、燃焼堆積反応器、プラズマ室及びレーザー光線を包含する群から選ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
高エネルギー帯域がホットウォール反応器である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
完成した物品に入っているナノスケール構造体の形状が球状である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
完成した物品に入っているナノスケール構造体が互いに接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ナノスケール構造体が物品の表面と接触した後、該物品にコーティング層を添加する工程を更に包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
完成した物品を加熱する工程を更に包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
物品の表面の上のナノスケール構造体及び/又は該物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれているナノスケール構造体を少なくとも部分的に溶融させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)有機金属溶液を噴霧化してエーロゾルにすることによって、該有機金属溶液を流動化させる工程;
(b)移動性ガス流を用いて、前記の流動化済み出発材料を前記物品の方に向けて押し進める工程であって、該物品が700°F〜2100°Fの間の温度を有する該工程;及び
(c)前記の押し進める工程の前、前記流動化済み出発材料をホットウォール反応器に通す工程;
を包含する物品の製造方法であって、それら工程により、完成した物品は、ナノスケール構造体が該物品の表面に分布する、及び/又はナノスケール構造体が該物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれる、上記製造方法。
【請求項18】
三次元物品において、該物品の表面に分布しているナノスケール構造体、及び/又は該物品の中に少なくとも部分的に埋め込まれているナノスケール構造体を含有している、上記物品。
【請求項19】
物品が、ポリマー、ガラス及びセラミックを包含する群から選ばれている、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
物品がガラスである、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
ナノスケール構造体が固体である、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
ナノスケール構造体が球状である、請求項18に記載の物品。
【請求項23】
ナノ構造体のアスペクト比が、1:1〜1:500である、請求項18に記載の物品。
【請求項24】
ナノスケール構造体を含有している物品の色が、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品のものと異なっている、請求項18に記載の物品。
【請求項25】
ナノスケール構造体を含有している物品が、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品よりも硬い、請求項18に記載の物品。
【請求項26】
ナノスケール構造体を含有している物品の触媒作用又は光触媒作用が、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品のものよりも優れている、請求項18に記載の物品。
【請求項27】
ナノスケール構造体を含有している物品のテキスチャーが、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品のものと異なっている、請求項18に記載の物品。
【請求項28】
ナノスケール構造体を含有している物品の導電率が、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品のものより大きい、請求項18に記載の物品。
【請求項29】
ナノスケール構造体を含有している物品の水接触角が、ナノスケール構造体を含有していない同じ物品のものと異なっている、請求項18に記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2006−502074(P2006−502074A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545217(P2004−545217)
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/022534
【国際公開番号】WO2004/035496
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】