説明

ナノプリント方法、ナノプリント装置およびスタンパの製造方法

【課題】精度良く高い再現性をもってナノプリントを実行することができるナノプリント方法を提供する。
【解決手段】下ステージ11の載置面11aに枠体Rと、マスタ版Aとを載置する。次に下ステージ11に対して上ステージ15を降下させ、上ステージ15の吸着面15aを枠体Rに当接させ、エアスイベル機構20によって上ステージ15を3次元空間で移動させて、下ステージ11と上ステージ15の平行出しを行なう。次にマスタ版A上に液状のシリコンゴムSを流し込み、上ステージ15の吸着面15aに保持されたスタンパ保持基板Cと、下ステージ15の載置面11a上のマスタ版Aとの間でシリコンゴムSを狭持する。シリコンゴムSが自然硬化してスタンパDが形成され、上ステージ15を上昇させることにより、スタンパDが上ステージ15のスタンパ保持基板Cにより保持される。スタンパDにインクGが塗布され、スタンパD上のインクGが被印刷基板Hに転写される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロコンタクトプリントの技術、とりわけナノプリント方法、ナノプリント装置およびスタンパの製造方法に係り、とりわけ精度良くかつ高い再現性をもってナノプリントを実行することができるナノプリント方法、ナノプリント装置およびスタンパの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノプリント技術はナノテクノロジーの範疇に入る。プロセスの観点からは、ナノプリントは印刷技術の基本的要素を備えている。しかしながら、通常の印刷技術と最も異なる点は、通常の印刷技術では及ぶことができないナノ領域の界面で、材料の自己組織化を活用する点にある。すなわち、ナノプリント技術によって自己組織化単層膜(SAM)の形成に寄与できる。
【0003】
自己組織化は原子レベルでは通常発現しているが、原子はこの世の中にせいぜい130種ぐらいしか周期律表からは見つけることができない。これが分子のレベルになるとその組合わせは5000万種にまで及ぶ。これらの分子の中には、自己組織化すると新しい組織体・構造が作り出される可能性を有する種類があり、また、新しい機能の発現が期待できる。そのような意味では、自己組織化は単なる結晶化やアモルファス的な集合といった自己集合ではない点とも異なる。
【0004】
スケールの観点からすると、単一原子を操作する立場では分子の自己組織化は大き過ぎる対象であり、一方、現在主流になっているリソグラフィーから見ると、分子の自己組織化は小さすぎる領域である。
【0005】
エネルギー的には、自己組織化は分子が最も低い自由エネルギー、すなわち結合とエントロピーによって決まる低いエネルギーのところで配列するため、理論的には最も欠陥が少ない完成度の高い構造体ができると予想される。
【0006】
分子の自己組織化をもたらすナノプリント技術を実用化するためには、一般に4大主要技術が必要である。すなわち、ナノプリント技術の構成要素としては、(1)パターン設計技術、(2)版材料技術、(3)転写材料技術、(4)被転写材料技術、である。
【0007】
しかしながら、従来より、精度良くかつ高い再現性をもってナノプリントを実行することができるナノプリント技術は未だ開発されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−60979
【特許文献2】特開2002−294469
【特許文献3】特開2002−353436
【特許文献4】特開2003−218498
【特許文献5】特開2004−6790
【特許文献6】特開2004−233505
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような点を考慮してなされたものであり、精度良くかつ高い再現性をもってナノプリントを実行することができるナノプリント方法、ナノプリント装置およびスタンパの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備えたナノプリント装置を用いたナノプリント方法において、下ステージの載置面に枠体と、枠体内に位置し微細凹凸パターンを有する面を備えるマスタ版とを載置する工程と、枠体内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む工程と、上ステージの吸着面にスタンパ保持基板を吸着し、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させて当該スタンパ保持基板を枠体内のシリコンゴムに当接させ、シリコンゴムを自然硬化させてスタンパを形成する工程と、上ステージを相対的に下ステージから離間させてスタンパをマスタ版から離型し、スタンパを加熱硬化させてスタンパ下面にプリントパターンを形成する工程と、下ステージの載置面から枠体およびマスタ版を除去し、当該載置面に被印刷基板を載置する工程と、スタンパ下面のプリントパターンにインクを設ける工程と、上ステージを相対的に下ステージ側に接近させ、下ステージ上の被印刷基板に、スタンパ下面に形成されたプリントパターンのインクを転写する工程と、を備えたことを特徴とするナノプリント方法である。
【0011】
本発明は、マスタ版の微細凹凸パターンは多数の溝を含み、溝の深さをhとし、溝の幅をW1とし、溝間の距離をW2とした場合、h≧10nm、W1≧10nm、W2/h=1となることを特徴とするナノプリント方法である。
【0012】
本発明は、枠体は開口部がマスタ版の微細凹凸パターンを有する面の面積より大きくなっており、枠体の外周縁と内周縁との間の幅は1mm以上となっており、枠体の上面に内周縁から外周縁に向って放射線状に延びる多数の溝が形成されていることを特徴とするナノプリント方法である。
【0013】
本発明は、マスタ版の厚みをAhとし、スタンパ保持基板の厚みをChとし、枠体の厚みをRhとしたとき、Rh>Ah+Chとなることを特徴とするナノプリント方法である。
【0014】
本発明は、環状の枠体の開口部内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む際、シリコンゴムは予め吐出容積Vが以下のように計量されていることを特徴とするナノプリント方法である。
【0015】
<(マスタ版の微細凹凸パターンを有する面の面積)×(Rh−(Ah+Ch))
本発明は、マスタ版に微細凹凸パターンと、位置合せマークが形成され、これによりスタンパにプリントパターンおよび位置合せマークが形成され、被印刷基板に予め位置合せマークが形成され、被印刷基板とスタンパとの間に三角プリズムが挿入され、当該三角プリズムを介してスタンパの位置合せマークおよび被印刷基板の位置合せマークを読み取り、スタンパと被印刷基板の位置合せを行なうことを特徴とするナノプリント方法である。
【0016】
本発明は、ナノプリント装置の一側に光源を設け、他側にCCDカメラを設け、下ステージ上の被印刷基板にスタンパのプリントパターンのインキを転写する工程において、下ステージと上ステージの間の空間を通して、光源からの光をCCDカメラで受光し、CCDカメラで受光した画像に基づいて上ステージを相対的に下ステージ側へ移動させることを特徴とするナノプリント方法である。
【0017】
本発明は、下ステージの載置面に枠体とマスタ版を載置した後、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させ、上ステージの吸着面を枠体に当接させ、エアスイベル機構によって上ステージと下ステージの平行出しを行なうことを特徴とするナノプリント方法である。
【0018】
本発明は、下ステージの載置面に被印刷基板を載置した後、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させ、スタンパを被印刷基板に当接させ、エアスイベル機構によってスタンパと被印刷基板の平行出しを行なうことを特徴とするナノプリント方法である。
【0019】
本発明は、第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備えたナノプリント装置を用いたスタンパの製造方法において、下ステージの載置面に枠体と、枠体内に位置し微細凹凸パターンを有する面を備えるマスタ版とを載置する工程と、枠体内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む工程と、上ステージの吸着面にスタンパ保持基板を吸着し、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させて当該スタンパ保持基板を枠体内のシリコンゴムに当接させ、シリコンゴムを自然硬化させスタンパを形成する工程と、上ステージを相対的に下ステージから離間させてスタンパをマスタ版から離型し、スタンパを加熱硬化させてスタンパ下面にプリントパターンを形成する工程とを備えたことを特徴とするスタンパの製造方法である。
【0020】
本発明は、第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備え、上ステージと下ステージとの間に三角プリズムが挿着され、三角プリズムを介してスタンパの位置合せマークと被印刷基板の位置合せマークを読み取る読み取り部を設けたことを特徴とするナノプリント装置である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、同一のナノプリント装置を用いてスタンパを製造し、かつこのスタンパを用いて被印刷基板に対してインクを転写するので、精度良く、かつ高い再現性をもってナノプリントを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図2】図2は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図3】図3は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図4】図4は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図5】図5は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図6】図6は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図7】図7は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図8】図8は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図9】図9は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図10】図10は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図11】図11は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図12】図12は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図13】図13は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図14】図14は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図15】図15は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図16】図16は、ナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図。
【図17】図17(a)は被印刷基板を示す図であり、図17(b)はナノプリント方法によって得られた被印刷基板上のパターンを示す図。
【図18】図18(a)はマスタ版を示す断面図、図18(b)はスタンパを示す断面図。
【図19】図19(a)はリング状枠体を示す図であり、図19(b)はリング状枠体内にマスタ版とスタンパ保持基板とが配置された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1乃至図19(a)(b)により本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
ここで図1乃至図16は本発明によるナノプリント装置を用いたナノプリント方法を示す工程図であり、図17(a)(b)は各々被印刷基板と、ナノプリント方法により得られた被印刷基板上のパターンを示す図であり、図18(a)(b)は各々マスタ版およびスタンパを示す断面図であり、図19(a)(b)は各々リング状の枠体、およびリング状の枠体内に配置されたマスタ版およびスタンパ保持基板を示す図である。
【0025】
まず図3によりナノプリント装置について説明する。
【0026】
図3に示すように、ナノプリント装置10は真空チャックからなる第1吸着機構12と、この第1吸着機構12に連通する載置面11aとを有する下ステージ11と、下ステージ11上方に配置され、真空チャックからなる第2吸着機構16と、この第2吸着機構16に連通するとともに、下ステージ11の載置面11aに対向する吸着面15aとを有する上ステージ15と、上ステージ15を保持するエアスイベル機構20とを備えている。
【0027】
このうち、下ステージ11の第1吸着機構12は外部の真空機構(図示せず)と真空ライン12aを介して連通している。また下ステージ11の載置面11aには、エア噴出孔14が形成され、このエア噴出孔14は加圧ライン14aを介してコンプレッサ(図示せず)に連通している。
【0028】
さらに下ステージ11は、載置面11aの下方に形成された段差面11cを有し、この段差面11cにOリング25が設けられている。
【0029】
また下ステージ11の載置面11aには、後述するマスタ版Aと当接してこのマスタ版Aの位置決めを行なう位置決めピン11bが設けられている。
【0030】
他方、上ステージ15は、上述のようにエアスイベル機構20によって保持されており、このエアスイベル機構20は上ステージ15に固定された球面体21と、球面体21を収納する凹部(座部)22aを有する吸着保持体22とからなる。吸着保持体22はその凹部22aに吸着空間22bが形成され、この吸着空間22bは外部の真空/圧縮機構(図示せず)に連通ライン23を介して連通している。
【0031】
ところで下ステージ11は、駆動機構26によって上下方向へ移動することができ、かつ回転方向へも移動することができる。このような駆動機構26としては、例えば楔型の台座を有し、楔型の台座に対して移動体を上下方向へ移動させる駆動機構が考えられる。
【0032】
また同様に上ステージ15を保持するエアスイベル機構20も、エアスイベル機構20を上下方向へ移動させる駆動機構(図示せず)を有している。
【0033】
次にこのようなナノプリント装置を用いたナノプリント方法について図1乃至図16により説明する。
【0034】
ナノプリント方法はナノプリント装置を用い、マスタ版Aによりシリコンゴム製のスタンパDを製造し、次にこのスタンパDにより、インキGを被印刷基板H上に転写するものである。
【0035】
すなわち、まず図1に示すように、下ステージ11の載置面11a上に円板形状をもつマスタ版Aを載置する。この場合、マスタ版Aは載置面11aの位置決めピン11bに当接してその位置決めが行なわれ、次に真空チャックからなる第1吸着機構12による真空引きによって載置面11a上でマスタ版Aが固定される。
【0036】
なお、下ステージ11の載置面11a上にマスタ版Aを第1吸着機構12による真空引きによって吸着して固定する例を示したが、これに限らず第1吸着機構12の代わりに静電チャックによりマスタ版Aを載置面11a上に固定してもよい。
【0037】
次に図2に示すように、下ステージ11の載置面11a上に、マスタ版Aを囲むようにしてリング形状をもつ枠体Rを載置する。
【0038】
この場合、枠体Rはマスタ版Aを囲むように載置面11a上に載置され、マスタ版Aは載置面11a上の位置決めピン11dに当接して載置面11a上で位置決めが行なわれる。また枠体Rは載置面11a上で第1吸着機構12による真空引きにより吸着されて固定され、このようにしてこの枠体R内にマスタ版Aが配置される。
【0039】
ところでマスタ版Aは、図18(a)に示すようにシリコン基材、ガラス基材、および石英基材のうち少なくとも2つの基材を積層してなり、その上面に予めCVD法により多数の溝からなる微細凹凸1Aおよび後述する位置合せマーク41Aが形成されている。なお、マスタ版Aをシリコンウエハから作製してもよい。
【0040】
また、微細凹凸1Aの溝1の幅をW1、溝1間の距離をW2、溝1の深さをhとした場合、h≧10nm、W1≧10nm、W2/h=1となっている。これにより、シリコンゴムに対する賦形性が優れたものになる。W2/h<1の場合は、シリコンゴムからなるスタンパに形成されるプリントパターンが変形してしまう確率が高くなり、高精度なパターン転写がされにくくなる。W2/h>1の場合には、スタンパに形成される微細凹凸のプリントパターンの凸部だけでなく、溝の底部も被印刷面に接触してしまう確率が高くなるためである。また、h<10nm、W1<10nmの場合も、スタンパに形成される微細凹凸のプリントパターンの凸部以外の部分も転写されてしまう確率が高くなる。マスタ版の微細凹凸パターンの溝の幅、深さ、溝間の距離の測定方法は、電子顕微鏡で観察された画像により測定することができる。
【0041】
次にリング状の枠体Rを、図19(a)(b)に示す。この場合、図19(a)は枠体Rを示す平面図、図19(b)は枠体Rを示す側断面図であり、枠体R内にマスタ版Aと後述するスタンパ保持基板Cとが配置された状態を示す図である。
【0042】
図19(a)(b)に示すように、枠体Rはマスタ版Aの外径より大きな内径をもち、このため、枠体は開口部の面積がマスタ版Aの微細凹凸パターンを有する面の面積より大きくなっている。また枠体Rの外径と内径との差、すなわち外周縁と内周縁との間の幅は1mm以上となっており、枠体Rの上面に中心から外周縁に向って、すなわち内周縁から外周縁に向って放射状に延びる多数の溝5が形成されている。枠体の外径と内径との差は1mm以上となっているのは、リング状の枠体Rを加工する際に、枠体に応力歪みを与えないために必要な精度を得るためである。リング状の枠体に歪が発生するとリングの平面性が保てず、精度の良いナノプリントができなくなるためである。また、枠体Rの上面に中心から外周縁に向って放射状に延びる多数の溝5が形成されていることは、リング状の枠体内の空気を逃がすためである。
【0043】
なお、リング状の枠体Rは基準リングともいい、後述のようにステージ11と上ステージ15の平行出しを行なう基準リングとなる。
【0044】
また、ここでは枠体Rはリング状の枠体Rで説明しているが、マスタ版Aを囲むようにした形状をもつ開口部を有していればよく、枠体Rの形状はリング状に限られず、マスタ版Aの形状により楕円形状、正方形、長方形、多角形等の形状が適宜選択され得る。
【0045】
次に図3に示すように、下ステージ11を駆動機構26により上昇させ、下ステージ11に対して相対的に上ステージ15を接近させる。
【0046】
このとき、枠体Rの厚みをRh、マスタ版Aの厚みをAh、スタンパ保持基板Cの厚みをChとしたとき、Rh>Ah+Chとなっているので(図19(b)参照)、上ステージ15を下ステージ11に対して接近させると、上ステージ15と下ステージ11との間で枠体Rが狭持される。この場合、予めエアスイベル機構20の吸着保持体22に形成された吸着空間22b内の真空が解除されており、エアスイベル機構20により保持された上ステージ15が自由に3次元空間内で移動して、下ステージ11に対する上ステージ15の平行出しが実行される。このようにして下ステージ11と上ステージ15の平行出しが終了した後、吸着保持体22の吸着空間22b内が再び真空状態となって、上ステージ15がエアスイベル機構20によりロックされる。
【0047】
次に上ステージ15が下ステージ11に対して上昇して、下ステージ11と上ステージ15との間の隙間10aが拡大する。
【0048】
その後、下ステージ11と上ステージ15との間にスタンパ保持基板Cが挿入され、上ステージ15の第2吸着機構16が作動して、上ステージ15の吸着面15aにシリコンウエハ製のスタンパ保持基板Cが吸着保持される。
【0049】
次に図4に示すように、下ステージ11の枠体R内に配置されたマスタ版A上に予め脱泡処理された液体のシリコンゴムS、例えば液状のPDMS樹脂が流し込まれる。上述のように下ステージ11上のマスタ版A上には予め微細凹凸パターン1Aが形成されており、シリコンゴムSはマスタ版A上の微細凹凸パターン1A上に流し込まれる。
【0050】
なお、液状のシリコンゴムSは、予め必要量が計量されて、ディスペンサ30内に収納されており、押出部31を押出してディスペンサ30内を加圧することにより、ディスペンサ30内の液状シリコンゴムSがマスタ版A上に流し込まれる。
【0051】
このとき、予め計量されたディスペンサ30内のシリコンゴムSの吐出容積Vは、以下のようにして求められる。
<π(As/2)×(Rh−(Ah+Ch))
【0052】
このように吐出容積Vを設定することにより、枠体R内に100%シリコンゴムが充填されることはなく、枠体R内にシリコンゴムが付着することを防ぐことができる。
【0053】
ここでVはシリコンゴムの吐出容積、Asはマスタ版Aの外径、Rhは枠体Rの厚み、Ahはマスタ版Aの厚み、Chはスタンパ保持基板Cの厚みである。
【0054】
また、ここでは枠体Rはリング状の枠体Rで説明しているが、上述したように枠体Rの形状はリング状に限られず、楕円形状、正方形、長方形、多角形等の形状が適宜選択され得るため、例えば、枠体Rが正方形の場合(図示しない)には、予め計量されたディスペンサ30内のシリコンゴムSの吐出容積Vは、以下のようにして求められる。
<(As´)×(Rh−(Ah+Ch))
ここでVはシリコンゴムの吐出容積、As´は正方形状のマスタ版Aの一辺の長さ、Rhは枠体Rの厚み、Ahはマスタ版Aの厚み、Chはスタンパ保持基板Cの厚みである。
【0055】
次に下ステージ11上のマスタ版A上に流し込まれたシリコンゴムSに対して、脱泡処理が施される。
【0056】
すなわち、図5に示すように、排気管33aを有する脱泡フード33が準備され、この脱泡フード33が下ステージ11の段差面11c上に載置される。このとき脱泡フード33の下面は、段差面11cに設けられたOリング25に当接して脱泡フード33内の気密性が保たれる。脱泡フード30は透明の材質で作ることもでき、その際は、脱泡の状況が目視で確認できる利点がある。
【0057】
次に排気管33aを介して脱泡フード30内が減圧され、マスタ版A上のシリコンゴムSに対する更なる脱泡処理が行なわれる。
【0058】
その後、下ステージ11の段差面11cから脱泡フード30が取外され、図6に示すように、マスタ版A上のシリコンゴムSに対して、上ステージ15により吸着されたスタンパ保持基板Cを降下させる。
【0059】
次に図7に示すように、下ステージ11と上ステージ15との間でマスタ版A上のシリコンゴムSを狭持し、この状態でシリコンゴムSを自然硬化(一次硬化)させる。自然硬化は、例えば、常温(20℃から25℃程度の範囲)、湿度は50%から70%で、硬化時間は8時間から24時間で行われる。
【0060】
このとき、シリコンゴムSの下面に、マスタ版A上の微細凹凸パターン1Aが転写され、このようにしてシリコンゴムSによって、マスタ版Aの微細凹凸パターン1Aに対応するプリントパターン2Aおよび位置合せマーク41が下面に形成されたスタンパDが得られる(図18(b))。
【0061】
そしてプリントパターン2Aが形成されたスタンパDは、上ステージ15に吸着保持されたスタンパ保持基板Cにより保持される。
【0062】
次にコンプレッサから加圧ライン14aを通ってエア噴出孔14に加圧エアが噴出され、スタンパDをマスタ版Aの上面から徐々に引離すようにして、下ステージ11に対して上ステージ11を徐々に上昇させる。
【0063】
次に下ステージ11に対して上ステージ11を更に上昇させ、下ステージ11と上ステージ15との間の隙間(空間)10aを拡大させる。
【0064】
その後、第1吸着機構12の真空引きを解除して、下ステージ11の載置面11上から枠体Rを取外すとともに、載置面11上からマスタ版Aを取外す。
【0065】
次に上ステージ15側のスタンパ保持基板Cにより保持されたスタンパDを加熱することにより二次硬化処理が行なわれる。
【0066】
すなわち、図8および図9に示すように、まず発熱体35が発熱体搬送アーム36によって支持される(図8)。
【0067】
次に発熱体搬送アーム36によって支持された発熱体35が下ステージ11と上ステージ15との間の隙間10a内に挿入される。このようにしてスタンパ保持基板Cに保持されたスタンパDが発熱体15によって約150℃で1時間加熱され、シリコンゴム製のスタンパDが二次硬化し、下面に形成されたプリントパターン2Aの形状が定まったスタンパDが得られる(図9)。
【0068】
その後、図10に示すように、シリコンウエハ製の被印刷基板Hが下ステージ11の載置面11a上に載置される。まず図10に示すように下ステージ11の載置面11a上に、シリコンウエハ製の被印刷基板Hが載置され、被印刷基板Hが載置面11aの位置決めピン11bに当接して、被印刷基板Hの位置決めが行なわれる。
【0069】
次に第1吸着機構12による真空引きによって下ステージ11の載置面11a上に被印刷基板Hが吸着固定される。
【0070】
次に図11に示すように、下ステージ11に対して相対的に上ステージ15が降下し、下ステージ11上の被印刷基板Hに対して上ステージ11のスタンパ保持基板Cに保持されたスタンパDが当接する。
【0071】
この場合、被印刷基板Hに対してスタンパDが当接する直前に、上ステージ15の降下が一旦停止し、エアスイベル機構20の吸着空間22b内にわずかにエアが供給され、上ステージ15がわずかに三次元空間内で移動可能となる。そしてエアスイベル機構20により保持された上ステージ15が3次元空間内でわずかに移動して、下ステージ11側の被印刷基板Hと、上ステージ11側のスタンパDとの平行出しが実行される。このようにして被印刷基板HとスタンパDとの平行出しが実行された後、吸着保持体22の吸着空間22b内が再び真空状態となって、上ステージ15がエアスイベル機構20によりロックされる。
【0072】
次に下ステージ11に対して相対的に上ステージ15が上昇する。
【0073】
次に下ステージ11上の被印刷基板Hに対してスタンパDの水平方向の位置決めが以下のように行なわれる。
【0074】
この場合、図18(a)(b)に示すようにスタンパDには、マスタ版Aに形成された位置合せマーク41Aに対応する位置合せマーク41が形成されている。
【0075】
同様にして、被印刷基板Hにも、予めCVD法により位置合せマーク41が形成されている。
【0076】
次に被印刷基板HとスタンパDとの間に三角プリズム38が挿入され、この三角プリズム38を介して被印刷基板Hの位置合せマーク41とスタンパDの位置合せマーク41が同時に読み取り部40により読み取られる。図12において、読み取り部40は被印刷基板HおよびスタンパDの位置合せマーク41を読み取る顕微鏡からなり、読み取り部40によって被印刷基板HとスタンパDの位置合せマーク41を読み取りながら、下ステージ15を駆動機構26によって水平方向(X方向およびY方向)に移動させ、かつ下ステージ15を駆動機構26によって水平方向でθ方向に回動させて、被印刷基板Hに対するスタンパDの位置合せを行なう。通常のアライメントは、位置を合わせたい面のどちらか一方の面から覗き込みアライメントマークを合わせるが、本発明のナノプリント装置では、下ステージ11または上ステージ15に穴を開けることができず、その原理上、通常のアライメント方法が採用できないため、三角プリズム38を介して被印刷基板Hの位置合せマーク41とスタンパDの位置合せマーク41を同時に読み取ることにより行っている。
【0077】
次に下ステージ11および上ステージ15との間から三角プリズム38および読み取り部40を退避させる。
【0078】
次に上ステージ15に保持されたスタンパDに対してインクを塗布する。
【0079】
この場合、図13に示すように、まずインクステージ43を準備するとともに、インクステージ43上にインクトレー45を載置する。
【0080】
次にインクトレー45上に、インク供給部46によりインクGを供給する。次にインクステージ43上に、脱泡フード33を載置し、脱泡フード33内を排気管33aによって排気し、脱泡フード33内を真空に保つ。
【0081】
この場合、インクステージ43上にOリング43aが設けられ、脱泡フード33の下端がOリング43aに当接して脱泡フード33内が気密に保たれる。
【0082】
次に図14に示すように脱泡フード33がインクステージ43上から取外され、脱泡フード33は下ステージ11の段差面11cに載置される。
【0083】
次に脱泡フード33上に、予めインクGが供給されたインクトレー45が載置される。
【0084】
その後、図15に示すように、下ステージ11に対して相対的に上ステージ15が降下し、インクトレー45内に供給されたインクGに上ステージ15側のスタンパDが接触し、スタンパDのプリントパターン2Aに対してインクGが塗布される。
【0085】
その後、下ステージ11に対して相対的に上ステージ15が上昇する。次に下ステージ11から脱泡フード33およびインクトレー45が取外され、下ステージ11の載置面11a上に載置された被印刷基板Hが外方へ露出する(図16)。
【0086】
この状態で下ステージ11に対して相対的に上ステージ15が降下し、下ステージ11上に載置された被印刷基板Hに対してスタンパDのプリントパターン2Aに塗布されていたインクGが転写される。
【0087】
この場合、ナノプリント装置10の一側に光源47が設けられ、他側にCCDカメラ48が設けられている。
【0088】
そして下ステージ11に対して上ステージ15を相対的に降下させる場合、下ステージと上ステージの間の空間を通して、光源47からの光を顕微鏡48aを介してCCDカメラ48により撮影する。このようにCCDカメラ48によって、下ステージ11と上ステージ15との間の空間の10aの状態を確認しながら、上ステージ15を降下させることができ、スタンパDのプリントパターン2Aを徐々に被印刷基板Hに当接させることができる。このためスタンパDのプリントパターン2Aに塗布されていたインクGを精度良く確実に被印刷基板Hに転写させることができる。
【0089】
以上のように本実施の形態によれば、同一のナノプリント装置を用いて、プリントパターン2Aを有するスタンパDを製造することができ、かつ被印刷基板Hに対してインクGを転写させることができる。このように同一のナノプリント装置を用いてスタンパDを製造し、かつ被印刷基板Hに対してインクGを転写するナノプリント方法を実行することができるため、精度良く高い再現性をもってナノプリントを実行することができる。
【0090】
また被印刷基板Hに対して同時にスタンパDの下面が、全面に渡って接触することができる。
【0091】
さらにナノプリント装置10はエアスイベル機構20を有するため、下ステージ11に対して上ステージ15が絶えず平行になり、次にエアスイベル機構20が固定され、その後の平行精度を維持することができる。
【0092】
また、スタンパDと被印刷基板H位置合せを三角プリズム38を用いて行い、その後、光の直進性を利用して、下ステージ11と上ステージ15の接触近傍を、光源47からの光を顕微鏡48aで拡大し、CCDカメラ48で接触点を観察することができる。このため通常の圧力センサーでは達成できない、ほとんど無圧に近い印刷を可能にすることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【0094】
(1)マスタ版Aの準備
シリコン(PDMS)を賦形するマスタ版Aとしては、6インチシリコンウエハ(信越化学製)を使用した。当該シリコンウエハの厚さは1.5mmであった。まず、シリコンウエハを洗浄した。乾燥後、このシリコンウエハの上にポジレジストを塗布し、プリベークを行った。プリベーク条件は180℃、1時間であった。常温冷却後、電子線描画装置にてレジストを露光し、その後スピン現像を行った。凹凸パターンが刻まれたレジストをポストベーク処理200℃、2時間を行った。常温冷却後、CVD装置でシリコンウエハのエッチング処理を行い、1μmピッチの凹凸パターンおよびアライメントマークを刻んだマスタ版Aを得た。
【0095】
(2)スタンパの作製
当該シリコンウエハ(マスタ版A)を下ステージ11の中央に載置し、位置決めピン11bによって位置決めした後、真空チャック(第1吸着機構)12によって固定した。次に枠体(基準リング)Rを当該下ステージ11上に、位置決めピン11dに合わせて載置した。基準リングRの厚さRhは4.0mmとなっており、基準リングRの表面を平面研削盤を使用して全面を均一にした。次に上ステージ15を100μm/秒で降下させた。この際、上ステージ15を支持しているエアスイベル機構20内を大気圧に開放し、上ステージ15が外力により自在に動くようにした。上ステージ15が基準リングR上面に接触し、十分に基準リングRと平行になった段階で、エアスイベル機構20の内部を減圧し、上ステージ15をエアスイベル機構20に固定した。この工程により、下ステージ11と上ステージ15とが平行に設定された。
【0096】
次に、十分に洗浄した6インチシリコンウエハ(スタンパ保持基板)Cを用意し、上ステージ15に真空チャック(第2吸着機構)16により固定した。
【0097】
次にシリコンゴムSとして信越化学製PDMS(ポリメチルシロキサン)を準備した。液状のPDMSを200g取り出し、ポリカップに移し、簡易減圧オーブンで常温にて脱泡を確認した。この脱泡したPDMSが精密ディスペンサ30に移され、18ccの液状PDMSをマスタ版Aの表面に中央から滴下した。この時、マスタ版Aはすでに下ステージ11上の、基準リングR内の中央に、真空チャック(第1吸着機構)12により固定されている。
【0098】
次に透明なアクリル樹脂で形成した脱泡フード33が下ステージ11上に載置され、小型真空ポンプを用いてマスタ版A上のPDMSの脱泡を行った。この場合、飛散しないように脱泡の状態を目視で確認しながら、真空バルブを調整して脱泡した。
【0099】
PDMSの脱泡終了後、脱泡フード33を外し、スタンパ保持基板Cを吸着している上ステージ15を降下させて、当該PDMSを下ステージ11上のマスタ版Aとスタンパ保持基板Cとの間で挟んだ。この状態を3時間保持して、当該PDMSを1次硬化させ、賦形した。
【0100】
その後、下ステージのエア噴出孔14から加圧エアを吹き出しながら、上ステージ15を上昇させ、当該PDMSをマスク版Aから離形し、上ステージ15に固定されているスタンパ保持基板Cにより賦形されたPDMSを保持させた。
【0101】
次に、上ステージ15に固定された賦形されたPDMSに対して加熱した。すなわち上ステージ15と下ステージ11との間に面状ヒータ(発熱体)35を挿入し、当該PDMSを熱硬化した。熱硬化には150℃で30分間を要した。
【0102】
以上のようにしてスタンパDが作製された。
【0103】
(3)インクの準備
インクGとして、ローダミンB(Rhodamine B)染料を使用した。ローダミンBはエタノールに可溶であり、調合しやすいインクである。また、このインクは540nm近傍に吸収波長があり、レーザー照射により発光する。またこのインクは調合後のインクとしての保存期間も長く、かつ、無害である。この場合、東京化成工業株式会社製のローダミンBを使用し、エタノール50mlに対してローダミンBを0.1g溶解させてインクとした。
【0104】
このように調合したローダミンBインクGをインクトレー45上に供給した。
【0105】
(4)スタンピングの準備
上ステージ15を降下して、インクトレー415にスタンパDを1時間接触させた。その後、上ステージ15を上昇させて、スタンパDの表面に付着した当該ローダミンBインクを室温、大気中で15分間乾燥した。
【0106】
(5)被印刷基板とスタンパの位置合せ
被印刷基板Hとして十分に洗浄された新たな6インチシリコン基板を準備し、この被印刷基板Hを下ステージ11に設けられている位置決めピン11bに合わせて設置した。被印刷基板Hにはあらかじめ当該シリコン基板の切欠きに合わせてアライメントマーク(位置合せマーク)をCVDで形成しておいた。
【0107】
上ステージ15を降下させ、上ステージ15と下ステージ11との間隔が10mmになった時点で、三角プリズム38を上ステージ15と下ステージ11との間に挿入し、上下のアライメントマークを読み取り部(CCDカメラ)40で読み取りながら、被印刷基板HとスタンパDの位置合せを行なった。
【0108】
なお、被印刷基板HとスタンパDの位置合せをスタンパDの表面にインクを塗布する前に行なってもよい。
【0109】
(6)スタンピングの開始
次に、三角プリズム38を後退させ、上ステージ15をさらに降下させ、上ステージ15と下ステージ11との間の間隔が100μmになった段階でバックライト(光源)47を点灯した。当該バックライト47と上ステージ15および下ステージ11を挟んで丁度180度反対側に倍率10倍の顕微鏡48aおよびCCDカメラ48が設置され、被印刷基板H表面位置に光軸を合わせた。スタンパーDと被印刷基板Hとの間の間隔から透過してくる光を顕微鏡48aを介してCCDカメラ48で撮像し、LCDモニターにて拡大した。このとき、100nmピッチで上ステージ15を降下させ、透過光が感知できなくなった段階で、さらに50nm手動にて上ステージ15を降下させた。この状態で1時間、室温で保持した。
【0110】
その後、上ステージ15を最初100μm/分で上昇させ、1分間後、1mm/分で上昇させた。
【0111】
(7)印刷の確認
印刷が終了した被印刷基板Hをオリンパス社製蛍光顕微鏡にて観察したところ図17(b)に示すようなパターンが観察された。なお印刷前の被印刷基板Hを図17(a)に示す。
【符号の説明】
【0112】
10 ナノプリント装置
11 下ステージ
11a 載置面
11b 位置決めピン
11c 段差面
11d 位置決めピン
12 第1吸着機構
15 上ステージ
15a 吸着面
16 第2吸着機構
20 エアスイベル機構
21 球状体
22a 凹部
22 吸着保持対
26 駆動機構
30 ディスペンス
33 脱泡フード
35 発熱体
38 三角プリズム
40 読み取り部
43 インクステージ
45 インクトレー
47 光源
48 CCDカメラ
A マスタ版
C スタンパ保持基板
D スタンパ
H 被印刷基板
S シリコンゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、
下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、
上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備えたナノプリント装置を用いたナノプリント方法において、
下ステージの載置面に枠体と、枠体内に位置し微細凹凸パターンを有する面を備えるマスタ版とを載置する工程と、
枠体内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む工程と、
上ステージの吸着面にスタンパ保持基板を吸着し、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させて当該スタンパ保持基板を枠体内のシリコンゴムに当接させ、シリコンゴムを自然硬化させてスタンパを形成する工程と、
上ステージを相対的に下ステージから離間させてスタンパをマスタ版から離型し、スタンパを加熱硬化させてスタンパ下面にプリントパターンを形成する工程と、
下ステージの載置面から枠体およびマスタ版を除去し、当該載置面に被印刷基板を載置する工程と、
スタンパ下面のプリントパターンにインクを設ける工程と、
上ステージを相対的に下ステージ側に接近させ、下ステージ上の被印刷基板に、スタンパ下面に形成されたプリントパターンのインクを転写する工程と、
を備えたことを特徴とするナノプリント方法。
【請求項2】
マスタ版の微細凹凸パターンは多数の溝を含み、溝の深さをhとし、溝の幅をW1とし、溝間の距離をW2とした場合、
h≧10nm、
W1≧10nm、
W2/h=1 となることを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項3】
枠体は開口部の面積がマスタ版の微細凹凸パターンを有する面の面積より大きくなっており、枠体の外周縁と内周縁との間の幅は1mm以上となっており、
枠体の上面に内周縁から外周縁に向って放射線状に延びる多数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項4】
マスタ版の厚みをAhとし、スタンパ保持基板の厚みをChとし、枠体の厚みをRhとしたとき、
Rh>Ah+Chとなることを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項5】
枠体の開口部内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む際、シリコンゴムは予め吐出容積Vが以下のように計量されていることを特徴とする請求項4記載のナノプリント方法。
<(マスタ版の微細凹凸パターンを有する面の面積)×(Rh−(Ah+Ch))
【請求項6】
マスタ版に微細凹凸パターンと、位置合せマークが形成され、これによりスタンパにプリントパターンおよび位置合せマークが形成され、
被印刷基板に予め位置合せマークが形成され、
被印刷基板とスタンパとの間に三角プリズムが挿入され、当該三角プリズムを介してスタンパの位置合せマークおよび被印刷基板の位置合せマークを読み取り、スタンパと被印刷基板の位置合せを行なうことを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項7】
ナノプリント装置の一側に光源を設け、他側にCCDカメラを設け、
下ステージ上の被印刷基板にスタンパのプリントパターンのインキを転写する工程において、下ステージと上ステージの間の空間を通して、光源からの光をCCDカメラで受光し、CCDカメラで受光した画像に基づいて上ステージを相対的に下ステージ側へ移動させることを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項8】
下ステージの載置面に枠体とマスタ版を載置した後、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させ、上ステージの吸着面を枠体に当接させ、エアスイベル機構によって上ステージと下ステージの平行出しを行なうことを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項9】
下ステージの載置面に被印刷基板を載置した後、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させ、スタンパを被印刷基板に当接させ、エアスイベル機構によってスタンパと被印刷基板の平行出しを行なうことを特徴とする請求項1記載のナノプリント方法。
【請求項10】
第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、
下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、
上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備えたナノプリント装置を用いたスタンパの製造方法において、
下ステージの載置面に枠体と、枠体内に位置し微細凹凸パターンを有する面を備えるマスタ版とを載置する工程と、
枠体内のマスタ版の微細凹凸パターンを有する面に液状のシリコンゴムを流し込む工程と、
上ステージの吸着面にスタンパ保持基板を吸着し、上ステージを相対的に下ステージ側へ接近させて当該スタンパ保持基板を枠体内のシリコンゴムに当接させ、シリコンゴムを自然硬化させスタンパを形成する工程と、
上ステージを相対的に下ステージから離間させてスタンパをマスタ版から離型し、スタンパを加熱硬化させてスタンパ下面にプリントパターンを形成する工程とを備えたことを特徴とするスタンパの製造方法。
【請求項11】
第1吸着機構と、この第1吸着機構に連通する載置面とを有する下ステージと、
下ステージ上方に配置され、第2吸着機構と、この第2吸着機構に連通するとともに下ステージの載置面に対向する吸着面とを有する上ステージと、
上ステージに固定された球面体と、この球面体を収納する凹部を有する吸着保持体とを有するエアスイベル機構とを備え、
上ステージと下ステージとの間に三角プリズムが挿着され、三角プリズムを介してスタンパの位置合せマークと被印刷基板の位置合せマークを読み取る読み取り部を設けたことを特徴とするナノプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−240596(P2011−240596A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114575(P2010−114575)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】