説明

ナノ構造を備えた超疎水性の複合材料

ナノ構造疎水性表面を有する複合材料は、第一の組成物を有する支持層と、同支持層上に配置されるとともに同支持層表面から突出する複数の離間したナノ構造特徴部と、を含む。ナノ構造特徴部は疎水性材料から形成されるか、或いは疎水性コーティング層でコーティングされている。ナノ構造特徴部は第一の組成物とは異なる第二の組成物を使用して形成される。表面は超疎水性であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性及び超疎水性の複合材料と、ディフェレンシャルエッチング(differential etching)を用いて同材料を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性表面は水との結合が非常に弱く、水滴を同表面にて連ならせる。疎水性表面は、一般的に、本明細書においては、水滴との間に90°より大きい接触角を与える表面として定義される。疎水性材料は、周知の市販されている多くのポリマーを含む。
【0003】
超疎水性表面は、一般的に、及び本明細書においては、水滴との間に150°より大きい接触角を与える表面として定義される。例えば、蓮の葉の表面は、そのロウの様な表面テクスチャにより天然由来の超疎水性として周知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はナノ構造を備えた超疎水性の複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ナノ構造を備えた疎水性表面を有する複合材料は、第一の組成物を有する支持層と、同支持層に配置されるとともに同支持層表面から突出する複数の離間したナノ構造特徴部と、を含む。ナノ構造特徴部は、疎水性材料から形成されるか、又は疎水性コーティング層でコーティングされている。ナノ構造特徴部は、第一の組成物とは異なる第二の組成物を使用して形成される。第一の組成物は通常、第一の材料(例えば、化合物)と、同第一の材料とは組成的に異なる少なくとも第二の材料(例えば、化合物)とを含み、複数の離間した突状ナノ構造特徴部は本質的には第二の材料から構成されている。
【0006】
支持層は、ガラス、金属、セラミック、ポリマー又は樹脂からなる。疎水性コーティングを含む実施形態において、同疎水性コーティングは、少なくとも一つのフルオロカーボンポリマーを含む。ナノ構造特徴部は、鋭尖な表面特徴部を有する。好ましい実施形態において、複合材料の表面は超疎水性表面である。一実施形態において、複合材料はその厚み全体にわたり連続した空隙を提供する。
【0007】
疎水性表面を形成する方法は、第一の材料と、同第一の材料とは成分的に異なる少なくとも第二の材料とを含む組成物を有する表面を提供する工程を含み、同第一の材料は、同第二の材料と比較して、予め選択されたエッチング剤にてより高い除去率を与える。次に、表面は予め選択されたエッチング剤にてエッチングされ、本質的に第二の材料から構成される複数の離間した突状ナノ構造特徴部が新たに形成された支持層表面から突出して形成される。第二の材料は疎水性材料を含むか、或いは疎水性コーティング層でコーティングされている。同方法は、第一の材料及び第ニの材料が混合した前駆体材料を提供する工程と、第一の材料を第二の材料から分離する工程とを含む。前駆体表面中の第一及び第二の材料は分離工程の後には相互貫入している(interpenetrating)。分離工程はスピノーダル分解を含む。
【0008】
同方法は更に、突状ナノ構造特徴部に疎水性コーティングを適用する工程を含む。同方法は更に、エッチング工程の前に、複合材料で基板をコーティングする工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ナノ構造を備えた疎水性表面を有する複合材料は、第一の組成物を有する支持層と、同支持層上に配置されるとともに同支持層表面から突出した、複数の離間したナノ構造特徴部を有する。ナノ構造特徴部は疎水性材料から形成されるか、又は疎水性コーティング層でコーティングされている。ナノ構造特徴部は第一の組成物とは異なる第二の組成物を使用して形成される。第一の組成物は一般的には、第一の材料(例えば、化合物)と、同第一の材料とは組成的に異なる少なくとも第二の材料(例えば、化合物)を含み、かつ複数の離間した突状ナノ構造特徴部は本質的には第二の材料から構成されている。
【0010】
好ましい実施形態において、第一の材料(本明細書においては「凹状相(recessive phase)材料」と称される)と、同第一の材料とは異なる第二の材料(「突状相(protrusive phase)材料」と称される)と、を含む前駆体が提供される。それぞれの材料は異なるエッチング能(etchability)/溶解度を提供し、凹状材料は突状材料よりも大きなエッチング能/溶解度を有する。突状材料と比較して、凹状材料のより多くを除去するエッチング液/溶媒に前駆体表面をさらすことにより、突状材料は、例えば、スパイク及び/又はリッジ及び/又は粗面のような複数の突状表面特徴部からなるナノ構造表面を形成する。
【0011】
突状材料は、多くの場合、同突状材料が工程時に幾分エッチングされたとしても、凹状材料よりも更にゆっくりとエッチングされるので、尖状に形成される。「鋭尖な表面特徴部」なる用語は、本明細書中においては、好ましくは鋭尖末端部、理想的には原子的に鋭尖な点又はリッジにて終了するほぼテーパ状の突状構造体を意味するように定義されている。従って、「鋭尖な表面特徴部」は第一の横断面を有するベース部と、同第一の横断面の30%未満である低減した横断面を有するとともに同ベース部に対向する先端部とを有する特徴部として参照され、例えば、同先端部の横断面は、第一の横断面の25%、20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は1%未満である。ベース部から先端部までの横断方向の断面の低減は好ましくは単調減少である。
【0012】
所望の効果を作出するために、任意の組み合わせにてディフェレンシャルエッチングが可能である/溶解可能である任意の凹状材料及び突状材料を使用することは、本発明の範囲内であると考えられる。更に、ナノ構造表面特徴部のサイズ、形状及び配置の変更は制限されるものではない。例えば、支持層表面から測定されたナノ構造表面特徴部の高さは、例えば、100乃至900nmのような数百ナノメータ又は1乃至40μmのようなミクロンのスケールであり得る。ナノ構造表面特徴部の配置は整列されているか、又はランダムであり得る。複合ベース材料は任意の周知の一つ又は複数のエッチング法により別々にエッチング可能な任意の材料から形成され得る。
【0013】
複合ベース材料は上記のように、適切なエッチング特性及び相分離特性を有する任意の材料から形成され得る。例えば、適切な材料は、ガラス、金属(合金を含む)、セラミック、ポリマー、樹脂等を含む。ある材料は、化学的抵抗性、コーティングの容易さ及び/又は必要性、強度、剛性、可撓性、弾性、可塑性等のような製品の特性に影響を与える。
【0014】
本発明に従って複合材料を形成する一つの方法は、第一の温度ではより混和しやすく、第二の温度ではあまり混和しない、少なくとも二つの異なる材料(例えば、化合物)を含む「前駆体」材料を用いて開始される。この場合、前駆体材料は、上昇した温度(例えば、それぞれの材料が混和される温度)にて、均一な混和された材料(典型的には溶融されたもの)として生成される。次に、前駆体材料は、例えばエッチングにより二つ以上の材料に分離される。分離は、同前駆体材料の冷却時に起こるか、又は同材料が柔らかくなるが、それぞれの材料が混和しない温度まで同前駆体材料を加熱処理することにより起こる。分離は、スピノーダル分解を介して起こる。スピノーダル分解は、二つの化合物の均質な(例えば高温の)混合物に作用し、より低い温度への急激な冷却により突然の相分離を生ずる。即ち、混合物が不均質となり、多かれ少なかれ二つの成分が交互になった構造体を形成する。材料の分離に続いて、それぞれの材料は多くの場合、接触し(contiguous)、かつ相互貫入している。
【0015】
複合ベース材料はまた、少なくとも二つの微粒子状のディファレンシャルエッチングが可能な材料を共に焼結する、又は溶融することにより生成される。材料はディフェレンシャルエッチングが可能であるべきであり、その結果、エッチングにより、支持部を含む材料から突状材料が出現する。
【0016】
複合材料表面は、通常、同複合材料の表面に突状材料の突状ナノ構造体を作出するためにエッチングされる。本実施形態において、複合材料表面は、突状材料よりも凹状材料をより速くエッチングするエッチング液と接触される。エッチングは、表面から突出する突状材料の幾らかを残した状態にて、凹状材料が所望の深さにエッチングされるまで続けられる。突状相材料はまた、鋭尖な、及び/又は粗い特徴部を形成するために工程時にエッチングされる。鋭尖な特徴部又は粗面のアスペクト比は、突状材料及び凹状材料のエッチング率の比に依存する。
【0017】
エッチング液は、複合材料表面に適用した場合、異なるエッチングコントラスト比を与える複数のエッチング液の混合物からなる「混合エッチング液系」であり得る。例えば、一方のエッチング液は一方の材料を優先的にエッチングする一方で、他方のエッチング液は他方の材料を優先的にエッチングする。混合エッチング液系は、エッチング液の組成及び/又は相対濃度を変更することによりエッチング工程のコントラスト比を修正することができるので特に有用である。混合エッチング液系の例としては、HFとHClとの混合物がある。適切な混合エッチング液系の可能な組成は実質的には制限されることはない。
【0018】
更に、複数のエッチング液は二段階以上の連続するエッチング工程にて使用され得る。例えば、HFは第一のエッチング工程にて複合材料表面に適用され、洗浄され、その後HClが第二のエッチング工程にて複合材料表面に適用される。適切なエッチング液及びエッチング工程の可能な組み合わせは実質的には制限されることはない。
【0019】
所望の表面特徴部が達成される限り、エッチングが実施されることによる方法に本発明が制限されることはない。例えば、プラズマエッチング又はその他の一般的に等方性のエッチング技術のようなその他の非溶液エッチング技術が使用可能である。
【0020】
本発明の幾らかの実施形態において、複合材料は、表面をコーティングするためのタイル(tile)にて好ましくは形成される。タイルは、複合材料の薄片として形成される。タイルは、例えば、船体のような種々の表面に結合され得る。同タイルを不規則な形状の表面に適用するために、未エッチングタイルを非常に薄く切断するか、同タイルを不規則な形状に成形するのに十分に可撓性となるように加熱するか、のうちの少なくとも一方を実施する。同タイルを適切な形状としたら、それらは結合され、かつ加工される(エッチング及び選択的なコーティング)。代替的に、タイルは最初に加工され、その後に所望の表面に結合され得る。
【0021】
複合材料は、ディフェレンシャルエッチング可能な材料相に分解される前に、表面をコーティングするために使用され得る。材料は蒸発され、スパッタリングされ、粉末から溶融され、プラスマ噴霧され、粉末として接着剤とともに付着され得る等である。幾らかの実施形態において、表面を複合材料の分離した材料成分で同時にコーティングして、フィルムとして同複合材料を形成することが好ましい。各々の場合において、材料は、次いで、加熱され、エッチングされ、そしてコーティングされて超疎水性表面が形成される。
【0022】
少なくとも突状材料は疎水性であり得るか、或いはその表面がコーティング等により疎水性に形成されるべく処理される。凹状材料も同様に疎水性であることが多くの場合有利であるが、必ずしも必要ではない。複合材料の表面を超疎水性にするのは、地形的構造と疎水性材料との組み合わせである。
【0023】
突状材料或いは突状材料と凹状材料の両方が本来疎水性である場合にはコーティングは必要ではないかもしれない。突状相或いは両方の相が、非常に疎水性であるとともに通常いかなる疎水性コーティングも必要としないフッ素化ポリマーであることは超疎水性表面にとっては特に有利である。
【0024】
超疎水性表面を作製するために、ナノ構造表面が例えばフッ化炭素のような疎水性材料でコーティングされ得る。疎水性コーティングは例えば、PTFE又は類似のポリマーのコーティング剤を含み、CF末端基を有するポリマーが特に適している。コーティングは、溶液中のPTFE用途のように、均一な厚みを得るためにスピンコーティングされ得る(材料を回転させながら液体として適用される)。コーティングはまた、真空蒸着法によっても堆積され得る。例えば、PTFE又はその他のフッ化炭素はスパッタリング又は熱フィラメント化学蒸着法(HFCVD)によっても適用され得る。自己集合単分子層は、例えば単に材料を適切な溶液に浸漬することによって、或いは同材料を表面に注入若しくは噴霧することによって適用されるので、ガラスを含む種々の材料に対する特に簡単かつ効果的な疎水性コーティングである。ポリマー表面は、フッ素化されて、より疎水性の表面が形成され得る。その他のコーティング剤は材料を疎水性にするために使用されるとともに複合材料中にて使用される材料に依存する。得られたものは、水(種々の水溶性流体を含む)をはじくナノ構造を有し、かつコーティングされた超疎水性表面である。
【0025】
複合ベース材料の微細構造は二つの相の分離又は溶融時或いはその後に、延伸又は押出しすることにより伸張され得る。これは、材料が相分離を維持しながらも一方向に塑性変形するように好適には実施され得る。次に同材料は延伸方向とは垂直に切断され、切断面はこれまでのようにエッチング及びコーティングされる。延伸は、表面特徴部の鋭さを増大させることにより、或いはより大きなアスペクト比である特徴部を与えることにより、超疎水性特性を改善する。例示的な複合材料の断面におけるコンピュータにより生成された画像を図1に示す。複合材料の選択は、同材料が延伸される場合には特に重要である。仮に二つの材料相が過度に混和される場合、それらは延伸時に混合されて、均質な混合物を形成する。仮に材料相の混和が不十分である場合、水中の油のように、一方が他方の内部にて小球に壊れる傾向にある。適切な材料系はホウ酸ケイ酸ナトリウムリチウムガラスであり、ナトリウムのリチウムに対する比率は二つの材料相の混和性を調整するために調節され得る。
【0026】
多段階加熱処理は、引き続き、複合材料を含む一つ以上の材料において、よりサイズの小さい材料の分離を生成し、より小さな特徴部を有するより複雑なナノ構造体が得られる。
【0027】
複合材料は、表面をコーティング及び/又はラミネートするために、(例えば粉砕により)粒子に縮小され得る。エッチング及び/又は疎水性コーティングの適用は、例えば船体又は水中翼のような表面に粒子を適用する前若しくは後のいずれかにおいて実施され得る。
【0028】
本発明の複合ベース材料は、特に同複合ベース材料がスピノーダル分解により形成される場合には、別の、一般的には、より大きな構造体の一部として組み合わせにて使用され得る。例えば、前駆体複合材料は、上記参照された関連した発明に従ってスパイク状複合材料のような整列された系にて材料相の少なくとも一つとして使用され得る。対応する材料の相分離は延伸の前又は後であるが、エッチングの前に実施され、凹状材料及び/又は突状材料は、下位凹状材料相及び下位突状材料相を含む下位構造体(sub−structure)を有する二重スケール構造を生ずる。
【0029】
これらの二重スケール構造は、本発明のナノ構造体と、上記参照される関連した発明に従う尖状表面特徴部との組み合わせを含む表面下位特徴部により特徴付けられる。そのような組み合わせは、更により大きな超疎水性を有する材料を提供する。特徴部の粗さは、上昇した水圧下にて、超疎水性材料の濡れを阻止するのに特に役立つであろう。
【0030】
図2を参照して、二重スケール構造は、整列された系において突状相材料として使用され、突状表面下位特徴部(スパイクの粗い面を指す)を備えた複数の鋭尖な表面特徴部(スパイク)32と、ほぼ滑らかな凹状相材料34とを生ずる。この構造は加工されていなかった。寸法は任意であるが、滑らかなスパイクと同じである。
【0031】
更に、二重スケール構造は、整列された系において凹状相材料として使用され得る。図3を参照すると、得られたものは、滑らかな鋭尖表面特徴部(スパイク)42と、突状表面下位特徴部(粗面)を備えた凹状相44である。
【0032】
更に、ディフェレンシャルエッチングが可能な二重スケール構造は、整列された系において突状材料相及び凹状材料相の両方として使用され得る。図4を参照すると、得られたものは、突状表面下位特徴部(スパイクの粗面に当たる)を備えた粗い鋭尖表面特徴部(スパイク)52と突状表面下位特徴部(粗面)をまた備えた凹状相54とである。この構造は加工されていなかった。寸法は任意であるが、滑らかなスパイクと同じである。
【0033】
幾らかの場合において、例えばフィルタとして使用されるために、溶解された気体を種々の水性流体から除去するために、そして種々の水性流体における表面気体層を加圧するために、複合材料の厚み全体にわたって多孔構造を形成するために同凹状材料の大部分又は全てをエッチングにより除去されると有利である。
【0034】
本発明に従う複合材料のナノ構造表面は、仮に損傷を受けても容易に再生され得る。一般的に、必要とする全ては、(必要に応じて)古い疎水性コーティングを剥ぎ取ることと、鋭尖な、若しくは粗い特徴部を再生するために表面を再びエッチングすることと、(必要に応じて)疎水性コーティングを再び適用することである。ベース材料(複合材料)はその厚みを通して複合材料パターンを含んでおり、それが完全にエッチングにて除去されるまで置き換える必要はない。これは、小さな鋭尖な又は粗い特徴部が擦り取りにより損傷を受けるので、特に有利である。
【0035】
本発明の上記実施形態の幾らかの利点を挙げると:
1.表面の構築に使用される材料は殆ど不活性であるか、若しくは少なくとも非反応性である点。
2.簡単な酸及び/又は溶媒がエッチング工程にて使用される点。
3.大量の材料を製造する際のスケールアップが、大部分の場合において簡単かつ容易である点。
4.ナノ構造表面特徴部が、必要に応じて、その場にて迅速かつ安価に再生できる点、にある。
【0036】
本発明の応用、特にその超疎水性実施形態の応用は以下のものを含むが、それらに限定されるものではない。
上述の超疎水性多孔構造体を使用することにより、本発明は、溶解した気体の抽出装置/監視装置として使用され得る。材料は水の浸透、或いは濡れに対してさえも強い抵抗性を有する。圧力又は真空が水を材料に対して押圧するために使用された場合(通常、室温にて)、液体にかかる増大したエネルギーは、同液体の局所的な、微視的な沸騰(蒸発)をもたらすのに十分となる。任意の溶解した気体は構造体を容易に貫通するが、水は通さない。従って、本発明は水から溶解した危険な気体(例えば、有毒な化学的及び/又は生物学的な活性剤)を除去及び/採取する手段を提供し、溶解した気体は透過させるが水は透過させないフィルタとして作用する。本発明のこの特殊な用途は、自国防衛及び反テロ対策の一環に特に適用される。
【0037】
船体、水中翼等に本発明を使用すると、水に対する摩擦抵抗を顕著に低減でき、同じ出力でありながらより高スピード及び/又はより長い走行距離を可能にする。コーティング/ラミネートは、船が水中に残すかく乱又は航跡(形跡)を小さくするために使用され得る。コーティング/ラミネートは、フジツボ及び泥等による船体の汚れを低減又は除去するために使用され得る。コーティング/ラミネートはまた、塩水による腐食を大いに低減するために使用され得る。従って、コーティング/ラミネートは、小さな船体、水上艦、潜水艦、魚雷、無人水上艦又は無人潜水艦及び海洋グライダーを含む任意の水中の乗物又は装置にとっては有用であろう。
【0038】
本発明は、プロペラ、タービン、舵、操縦飛行機等の移動部分及び固定子に使用して、抵抗及びキャビテーションを低減し、その効率を改善する。
本発明は、危険な液体及び/又は高価な液体を取り扱うためのガラス器具を形成するために使用され得る。同材料から形成されたガラス器具又は同材料でコーティングされたガラス器具から水及びその他の水性溶液が注ぎ出される場合、それらは同ガラス器具内には全く残らず、同ガラス器具から完全に除かれる。実験と実験の間の不純物が除去できるので有利である。
【0039】
本発明は、自浄式ガラス器具、窓、レンズ等を形成するために使用され得る。超疎水性材料はいかなる残渣をも残さないが、水及び多くの水性溶液が表面からこぼれる際に接触している大部分の塵及び汚れを濡らし、かつ洗い流し、同材料を自身にて洗浄する。
【0040】
本発明は凝結防止器具として使用され得る。水蒸気が表面にて凝結すると、液滴はナノ構造の先端に移動し、同表面から非常に容易に転落する。この転落は一般的には、表面にある任意の視認可能な材料が霧及び霜で覆われる前に、ミクロンからサブミクロンのレベルにて起こる。湿気又は氷の形成が排除される。同器具は、例えば、メガネ、安全メガネ、マスク、フロントガラス、窓等のような透明な器具を含むが、それらに限定されるものではない。構造化された材料が透明となるかどうかは光回折の法則による。ナノ構造体のサイズが光学波長よりはるかに小さい場合、同構造体は光学的に透明となるであろう。更に、同器具は、それらに限定されるものではないが、例えば冷蔵庫、熱ポンプ、除湿機の冷却コイル等のような熱交換器を含み、それらのエネルギー効率を増大し、除霜サイクルの必要性を低減するか、排除さえもする。
【0041】
本発明は、航空機の翼、プロペラ等をコーティングして氷晶雨が付着又は蓄積するのを回避するために使用され得る。そのようなコーティングは、水滴が氷を形成する前に表面からこぼれ落ちるので、氷結を防止する。
【0042】
本発明は、結晶化の媒体として使用され得る。水性溶液が表面上に存在すると球形の液滴を形成する。同液滴が蒸発すると、それは表面にピン止めされることなく均一に縮むであろう(ピン止めは大部分のその他の表面上に「コーヒーのしみ」状の環を形成する)。これは、微小重力環境にてこれまで実施していたものと同様の超純粋タンパク質を結晶化するために特に有用である。
【0043】
本発明は、例えばパイプ、チューブ、ホース等のような管のコーティング剤として使用され得る。粘性抵抗の低減は、通常、管を貫通する層流及び乱流に伴うせん断力を非常に低減するか、又は排除する。これは、乱流を殆ど若しくは全く伴うことなく、水の全量を一つのユニットとして移動させ、よって流体を貫通させるのに必要なエネルギーの量を大きく低減するであろう。これは、推進力が弱い対流循環系では特に当てはまる。表面特性はまた、流れが乱流である場合の状態を変化させるであろう。水は表面とは最小限に接触しているので、熱的接触が低減され、加熱及び冷却された水性流体の熱的損失を低減し、パイプ内にコーティングを戦略的に配置することによりその管理を可能にする。
【0044】
本発明は、例えば、水と油のような混和しない液体の分離に使用され得る。超疎水性材料は油及びその他の有機液体を吸引する。
適切な鋭尖表面特徴部及び表面特性を選択することにより、本発明は血液の抗凝固面として使用され得、血液は通常、同表面には付着しないであろう。従って、同材料は血液がその表面にて凝固することを回避し、ステント、心臓弁、人工心臓表面、外科器具のような人工インプラント及び血液を循環させるために使用される外部機器のコーティング剤として使用され得る。表面における粘性抵抗の低減は血液に対するせん断力を低減し、よって血液に対する損傷を低減し得る。
【0045】
導電性の基板は本発明の超疎水性材料でコーティングされ得る。超疎水特性は、例えば、誘電体上の電気湿潤(EWOD)により、或いは電気的に切換可能な表面コーティングで、オン及びオフに電気的に切り替えられる。
【0046】
以下の実施例は例示のみの目的にて提供されたものであり、本発明の範囲を制限するものではないことは理解されるべきであろう。
【実施例1】
【0047】
本発明に従って、65モル%のSiOと、25モル%のBと、10モル%のNaOとからなるホウ酸ケイ酸ナトリウムガラスを700℃にて6時間加熱処理し、スピノーダル分解により相分離を生じた。次に同材料の表面をHF水溶液にてエッチングし、突状相材料としてのSiOと凹状相材料としてのB及びNaOとを得た。次に、同材料を(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシランのヘキサン溶液中に浸漬することにより、同表面を疎水性自己集合単分子層でコーティングした。得られたものは、図5に示される超疎水性ナノ構造複合材料表面である。
【実施例2】
【0048】
本発明に従って、突状相材料として材料相A及び材料相Bからなるコアガラス複合材料と、凹状相材料として材料相C及び材料相Dのクラッディングと、を有するガラスロッドを束ねて、同ロッドを軟化させるのに十分な温度まで加熱し、その直径を低減するために延伸した。得られたロッドを、再び束ねて、かつ再び延伸された断面に分断した。コアガラスの直径が5μmとなり、約7μm離間されるまで上記工程を繰り返した。ロッドを断面に分断し、束ねて、約1.5cmの直径を有するより短く厚みのあるロッドを形成するために融合した。同ロッドは700℃にて6時間熱処理し、スピノーダル分解により、材料相A及び材料相Bの相分離と、材料相C及び材料相Dの相分離とを得た。ロッドの端部から薄い板となるように横断面にて切断し、研磨し、室温にて20分間HFを用いてエッチングし、図4に示されるようにディスク上に二重スケールの、ナノスパイクを備えた粗い面を形成した。ナノスパイクは約12μmの高さである。
【0049】
実施例2において、材料相A及び材料相Bの複合材料のエッチング能は、材料相C及び材料相Dの複合材料のエッチング能より小さく、材料相Aのエッチング能は材料相Bのエッチング能より小さく、かつ材料相Cのエッチング能は材料相Dのエッチング能より小さい。
【0050】
本発明の現在のところ好ましい実施形態として考慮されているものを図示し、かつ記載してきたが、以下に添付された特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更及び修正がなされることは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に従う、長尺状かつディフェレンシャルエッチングされた表面を有する複合ガラスの走査型写真である。
【図2】本発明に従う、粗いスパイクを備えたスパイク状表面の走査型写真である。
【図3】本発明に従う粗いベース材料を備えたスパイク状表面の走査型写真である。
【図4】本発明に従う粗いスパイク及びベース材料を備えたスパイク状表面の走査型写真である。
【図5】本発明に従って形成された、ディフェレンシャルエッチングされた表面を有する複合ガラスの走査型顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造疎水性表面を有する複合材料において、
第一の組成物を有する支持層と、
前記支持層上に配置されるとともに同支持層の表面から突出する複数の離間したナノ構造特徴部と、を備え、
前記ナノ構造特徴部は、疎水性材料からなるか、又は疎水性コーティング層にてコーティングされており、前記ナノ構造特徴物は前記第一の組成物とは異なる第二の組成物を有する、複合材料。
【請求項2】
前記第一の組成物は、第一の材料と、前記第一の材料とは組成的に異なる少なくとも第二の材料と、を含み、前記複数の離間した突状ナノ構造特徴部は前記第二の材料から本質的に構成されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記支持層は、ガラス、金属、セラミック、ポリマー及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記疎水性コーティングは少なくとも一つのフッ化炭素ポリマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ナノ構造特徴部は鋭尖な表面特徴部を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記表面は超疎水性表面である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料はその厚み全体にわたり連続した空隙を提供する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
疎水性表面を形成する方法において、
第一の材料と、前記第一の材料とは組成的に異なる少なくとも第二の材料と、を含む組成物を有する表面を提供する工程と、
前記表面を予め選択されたエッチング液にてエッチングする工程と、
を含み、
前記第一の材料は、前記第二の材料と比較した場合に前記予め選択されたエッチング液中にて実質的により大きな除去率を提供し、
前記第二の材料から本質的に構成される複数の離間した突状ナノ構造特徴部は、新たに形成された支持層から突出して形成され、かつ前記第二の材料は疎水性材料を含むか若しくは疎水性コーティング層でコーティングされている、方法。
【請求項9】
前記第一の材料及び第二の材料が混合されている前駆体材料を提供する工程と、
前記第一の材料を前記第二の材料から分離する工程と、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体表面の前記第一及び第二の材料は前記分離工程の後に相互貫入している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分離工程はスピノーダル分解を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記突状ナノ構造特徴部に疎水性コーティングを適用する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記表面は超疎水性表面である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記エッチング工程の前に前記表面で基板をコーティングする工程を更に含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−508181(P2008−508181A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523749(P2007−523749)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026569
【国際公開番号】WO2006/091235
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(301027074)ユーティ―バテル エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】