説明

ナノ粒子捕捉球状複合体、それらの製造プロセスおよび使用

金属酸化物または半金属酸化物および疎水性ポリマーから成る新規ナノ粒子捕捉球状複合体が開示される。球状複合体は、明確な球形、狭いサイズ分布、ならびに様々なタイプのナノ粒子との高い併用可能性を特徴とする。更に、ナノ粒子捕捉球状複合体を製造するためのプロセス、およびそれらの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料科学の分野、より詳細には、新規ナノ粒子捕捉複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、当該技術分野では量子ドットおよび/またはロッドとも呼ばれており、化合して直径約1〜100ナノメートルのクラスターになる数百から数万の原子を有する分子凝集体である。ナノ粒子は、分子より大きいが、粉粒体より小さく、従って、それらのサイズ、格子秩序および総合形態(形状)に起因してユニークな物理的および化学的特性を示すことが多い。ナノ粒子は、非晶質形態、半結晶形態または結晶形態を有することがある。結晶形態を有するナノ粒子は、ナノ結晶として知られている。ナノ結晶は、最もユニークな分光および半導電特性を示すナノ粒子である。
【0003】
ナノ粒子が、単一分子と固体の間の中間的状態であり、特に、すべて表面であり、内部がないとすれば、ナノ結晶の物理的、化学的および機械的特性は、そのサイズの成長および形態の変化につれて微細に制御することができる。例えば、ナノ結晶のサイズおよび表面を微細に制御することにより、バンドギャップ、伝導性、結晶格子および対称性ならびに融解温度などの特性をチューニングすることができる。
【0004】
ナノスケールで、材料の物理的特性と化学的特性の両方を大いに変化させる。各々の裸のナノ粒子の比較的大きな表面積は、ナノ粒子が非常に反応性であることを示唆している。親水性ナノ粒子および特にナノ結晶は、あまり安定でない傾向があり、従って、それらの光電特性の不安定性を示す。ナノ結晶は、例えばそれらの製造プロセスへの界面活性剤分子の追加により、安定化することができる。結果として生じるナノ結晶は疎水性であり、高い安定性、および従って、改善された品質特性を示す。界面活性剤は、ナノ結晶の表面をキャップし、安定化する。界面活性剤を適用しない場合、新たに作られたナノ結晶は、互いに合体して、重度に双晶化したより大きなナノ結晶またはより大きな高モザイク微結晶を形成する。界面活性剤を添加すると、ナノ結晶は、それらのナノスケールのサイズおよび形状を維持することができ、これは、より安定した光電挙動に表れる。別の言い方をすると、無機ナノ結晶を高密度に充填された界面活性剤分子単層で被覆すると、ナノ結晶の表面が疎水性になり、形成されるナノ結晶は安定であり、非極性溶媒に懸濁可能であって、安定なコロイドを形成する。溶媒を蒸発させるか、または除去すると、不動態化されたナノ結晶は、同じ格子を共有しようとして互いに融合するのではなく、再配列して集合体を形成する。これは、界面活性剤分子の離隔性薄層に起因する。
【0005】
近年、半導電性、金属、磁性および酸化物材料のナノ結晶の成長を制御するための方法に大きな進歩があった。形状制御成長法が、ドット、ロッド、テトラポッドおよびそれ以上のものなどの様々な形態のナノ粒子の製造を可能にした。こうしたナノ結晶のサイズ、組成および形状依存特性が、生体蛍光標識、医療用具および治療薬から発光ダイオード、レーザーおよび化学触媒に及ぶ分野の様々な用途に活用することができることは認知されている。
【0006】
しかし、これらの用途におけるナノ結晶の効率的な利用は、ナノ結晶の取り扱いに付随する難しさにより制限されることが多い。ナノ結晶は、特にそれらの均一な分布が所定域にわたって求められるとき、位置確認、固定および追跡が難しい。加えて、ナノ結晶の光電特性は、それらの形状および表面に依存し、従って、あらゆる化学および物理変化がそれらの特性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
安定した光学特性を獲得するため、ならびに半導体ナノ結晶の光学的および電子的応用を実現するために有意な課題は、ナノ結晶の望ましい特性に影響を及ぼさない適切な透明ホストマトリックスによるナノ結晶の固定および保護である。これらの要件が、これらの取り扱いが難しいエンティティーを成長させるか、でなければ処理が容易な様々な担体マトリックスに組み込むための手段の開発を求めた。更に、このアプローチは、低毒性が求められる生物医学用途などの用途における、別の毒性のナノ結晶の利用を可能にする。
【0008】
このために、様々なマトリックス内にナノ結晶を捕捉するための多数の方法論が開発された。
【0009】
こうして、例えば、ポリスチレン−co−ビニルピリジン、ポリスチレン、シリカゲルまたはポリラウリルメタクリレートを使用する様々なナノサイズの粒子の封入が、Zhaoら(Chem.Mater.Vol.14,1418,2002)、Hanら(Nature Biotech.,Vol.19,631,2001)、Correa−Duarteら(Chem.Phys.Letters,Vol.286,497,1998)、Changら(J.Am.Chem.Soc,Vol.116,6739,1994)およびLeeら(Adv.Mater.,Vol.12,1102,2000)により説明された。
【0010】
近年、多くの注目を集めているナノ結晶の捕捉のための担体マトリックスは、セラミックおよび酸化物−ガラスゾル−ゲル材料である。こうしたマトリックス内へのナノ結晶の捕捉は、非常に有益である。これらの永続性マトリックスが、一方では、高品質ナノ結晶に保護および様々な環境への適合性をもたらし、他方で、担体マトリックスにナノ結晶の特性を付与するからである。サブミクロン疎水性または親水性複合ゾル−ゲル球体内への半導電性および他のナノ結晶の封入および捕捉は、ナノ結晶を保護する方法として、例えば、Correa−Duarte,M,AらがChem.Phys.Lett.,1998,286,497−501に記載している。
【0011】
ゾル−ゲルマトリックス内にナノ結晶を捕捉する初期の試みは、ガラス状マトリックス内でのナノ粒子の直接成長を含んでいた。この戦略によると、ゾル−ゲル溶液をカドミウムイオンによってドープし、得られたゲルをHS中で熱処理して、CdSナノ結晶を形成した[Lifshitz,E.ら,Chem.Phys.Lett.1998,288,188]。更にもう1つのアプローチでは、硫黄含有Cd+錯体の熱分解を用いて、マトリックス内でナノ結晶を生成した[Mathieu,H.ら,J.Appl.Phys,1995,77,287]。しかし、得られた材料は、低制御の表面不動態化(これは、表面をあまり化学反応性でなくさせる)、低充填率、ならびに大きなサイズ格差および分散度に悩まされ、一般に、これらのアプローチは、高品質ナノ結晶含有材料に対する要求に合わない。
【0012】
ゾル−ゲルマトリックス内へのナノ結晶の組み込みを目的とする別のアプローチは、その焦点を主として親水性、水溶性ナノ結晶に合わせていた。例えば、CdSおよびPbS粒子を水溶液中で製造し、その後、それらをゾルに添加した[Pellegri,N.ら,J.Sol−Gel ScL Tech.,1997,8,1023;Martucci,A.ら,J.Appl.Phys.1999,86,79]。最近、更なるタイプの水溶性半導体ナノ結晶が、ゾル−ゲルプロセスによりシリカ粒子内に捕捉され、それによって「レーズンバン」タイプの粒子分散物が形成された[Rogach,A.L.ら,Chem.Mater.,2000,12,p.2676]。公開番号20050147974の米国特許出願には、シリカゲルマトリックス内に半導電性ナノ結晶などの発光物質を封入する、発光性、球状、透明シリカゲル粒子が開示されている。これらの粒子は、封入発光物質を含有する三次元架橋真珠形ポリマー担体が生成されるように、シリカゾルと発光物質の混合物を水不混和性有機相に分散させることによって製造される。
【0013】
残念なことに、これらの方法論は、水溶性ナノ結晶の組み込みに限定され、上で詳述したように高品質ナノ結晶として広く認知されている疎水性ナノ結晶には合わない。
【0014】
ゾル−ゲルマトリックス内に疎水性ナノ結晶を組み込むための現在知られている方法は、疎水性に改質したゾル−ゲル材料(ORMOSILとしても知られている)の使用を含み、これらの材料は、それらの品質および性能を低下させ得る更なる処理を伴わずに疎水性ナノ結晶を自然に捕捉することができる。しかし、このアプローチを用いると、ナノ結晶の完全な捕捉ではなく、ナノ結晶がドープされたモノリスが得られる。このアプローチは、得られるマトリックスの品質によって更に限定され、今までのところ、高品質で形状が制御された結果を生じていない。
【0015】
ゾル−ゲルマトリックスに疎水性ナノ結晶を組み込むためのもう1つのアプローチは、そのナノ結晶の表面の改質である。コア/シェル型半導体ナノ結晶がドープされ、疎水性表面リガンドによってオーバーコートされた、ハイブリッド有機−無機モノリスの合成が、最近の報告に記載された[Epifani,M.et al,J.Sol−Gel Sci.Tech.,2003,26,441−446]。急速な一体ガラス成形を触媒するために塩基としてアルキルアミンを使用して、半導体ナノ結晶がドープされたゾル−ゲルガラスを、それらの有効な発光を維持しつつ形成することも、報告されている[Selvan,T.et al,Adv.Mater.2001,13,985−988]。
【0016】
ゾル−ゲルマトリックスにナノ結晶を組み込むための更にもう1つのアプローチは、ゾル−ゲル/ナノ結晶反応混合物への両親媒性ポリマーの添加による、ナノ結晶の表面の改質を利用している。例えば、公開番号20050107478の米国出願、WO2005/049711およびWO2005/047573には、ゾル−ゲルマトリックス内に分散されたコロイド状ナノ結晶を有する固体複合体の製造方法が開示されており、この方法は、コロイド状ナノ結晶と両親媒性ポリマーを混合し、得られたアルコール可溶性コロイド状ナノ結晶−ポリマー複合体とゾル−ゲル前駆体を混合することによって行われる。従って、結果として生じる材料は、それらのナノ結晶が、その両親媒性ポリマーの疎水性領域によって捕捉され、そのポリマーの親水性領域が、外部ゾルゲルマトリックスと相互作用する多層球状構造に適合する。
【0017】
WO2005/067524には、リガンドによって改質されたナノ結晶が開示されており、それらのリガンドによって、ナノ結晶を様々なマトリックス材料と混合できるようになる。前記ナノ結晶のリガンドは、ナノ結晶表面に対して親和性を有するヘッド基、例えばリン酸、アミン、カルボン酸またはチオール部分と、チタニアゾル−ゲルマトリックスにナノ結晶を繋ぎ留めることができる末端ヒドロキシル基を含有するテイル基とを有する分子に由来する。
【0018】
WO2003/025539、および公開番号20030142944の米国特許出願は、ゾル−ゲル固体マトリックス内にナノ結晶を捕捉する一般概念を教示している。これらの特許出願の教示によると、親水性溶媒中でナノ結晶を安定させ、更にそれらの縛られたナノ結晶をゾル−ゲルマトリックスで繋ぎ留めることができるリガンドに、疎水性ナノ結晶の表面不動態化リガンドを換える。しかし、結果として生じる複合体は、大部分が層形態である嵩高い一体型複合体として得られる。
【0019】
米国特許第6544732号、公開番号20030175773の米国出願および欧州特許第1181534号には、離散性部位(場合によってはゾル−ゲルプロセスにより製造された、ナノ結晶含有小球体の集団が、これらの部位上に分散している)を含む表面を有する基板を含む構成が開示されている。これらの構成は、生体活性物質および/または識別子結合リガンドを更に含むことができ、従って、例えば、アレイセンサーの暗号化および複号化のための一意的光学サインを作るために、使用することができる。しかし、これらの特許出願は、ゾル−ゲル小球体内へのナノ結晶の封入プロセスを教示していない。
【0020】
ゾル−ゲルマトリックス内へのナノ結晶の組み込みを教示している他の開示としては、例えば、WO2004066346、WO2005024960、WO2002071013、WO2003062372、米国出願第20030082237号、欧州特許第1578173号、米国出願第20050206306号、米国特許第5866039号、WO2004092324、米国出願第20040142344号および米国特許第6139626号が挙げられる。これらの開示のうちの幾つかは、複合マトリックスおよびナノ結晶の層の製造に限定されており、一方、他のものは、特定のマトリックス材料または特定のナノ結晶に限定されており、更に、これらのすべての方法が、より広い範囲の用途および材料に対する解決をもたらすことができない。
【0021】
従って、先行技術は、粒子状ゾル−ゲルマトリックス内に疎水性ナノ粒子を捕捉するための十分な方法論を教示できていない。
【0022】
それ故、上記の制限がない、ナノ粒子、特に疎水性ナノ粒子、および更に特に疎水性ナノ結晶をゾル−ゲル球状粒子内に捕捉するための方法の必要性は広く認識されており、そうした方法を有することは非常に有利なことであろう。
【0023】
ゾル−ゲル球状粒子内にナノ粒子を捕捉するための効率的な方法を捜す中、本発明者らは、ポリマーおよびシリカで作った複合ゾル−ゲルサブミクロン粒子を利用しながら、ナノ粒子、特に疎水性ナノ粒子、および更に特に、高品質疎水性ナノ結晶の効率的な捕捉を行うことができると考え、そうするうちに本発明を思いついた。
【0024】
ポリマーおよびシリカで作った複合ゾル−ゲルサブミクロン粒子は、様々な用途に関して教示されている。これらには、例えば、触媒、クロマトグラフィー、制御放出、光学素子、および材料としての添加剤(充填剤)が挙げられる。
【0025】
最近、ゾル−ゲルプロセスによりサブミクロンサイズの複合ポリスチレン/シリカ球体を製造するための特異的な方法が記載された[Sertchook,H.およびAvnir,D.Chem.Mater.,2003,15,1690−1694]。
【0026】
かくして、そうしたゾル−ゲル法を利用することにより、疎水性ナノ粒子を効率的に捕捉するサブミクロンサイズの粒子を得ることができると考えた。
【発明の開示】
【0027】
本発明の実施に際し、驚くべきことに、疎水性ポリマーおよびシリカで作った、特定のゾル−ゲル法により製造した球状複合体は、様々なタイプのナノ粒子、特に疎水性ナノ結晶を効率的に捕捉し、その結果、得られるナノ粒子捕捉球状複合体は、明確な球形、サイズ分布および離散性を特徴とし、チューニング可能な光学的機能性を示すことが判明した。
【0028】
従って、本発明の1つの態様によると、複数の球状複合体を含む組成物を提供し、この場合、前記球状複合体の各々が、少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーを含み、更に、前記球状複合体の少なくとも1つが、その中に捕捉された少なくとも1つのナノ粒子を含む。
【0029】
下記の本発明の好ましい実施形態における更なる特徴によると、前記球状複合体の少なくとも1つは、それに取り付けられている少なくとも1つの機能性付与基を更に含む。
【0030】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記機能性付与基は、化学部分および生物活性部分から成る群より選択される。
【0031】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーは、互いに絡み合っている。
【0032】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体の平均サイズは、直径で約0.01μmから約100μmの範囲である。
【0033】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体の平均サイズは、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である。
【0034】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体の少なくとも60%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有する。
【0035】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体の少なくとも90%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有する。
【0036】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体は、互いに離散している。
【0037】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、SiO、TiO、ZrO、Al、ZnO、SnO、MnO、これらの有機修飾誘導体、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される。
【0038】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、シラザンモノマー、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、Pは、非重合性置換基であり、mは、0から6の整数である)のモノマー、これらの部分加水分解および部分縮合ポリマー、ならびにそれらの任意の混合物から成る群より選択されるゾル−ゲル前駆体から製造される。
【0039】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つの金属酸化物は、シリカである。
【0040】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシラン、ポリジエン、ポリラクトン(ラクチド)、これらのコポリマー、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される。
【0041】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリスチレンなどの芳香族ポリマーである。
【0042】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのナノ粒子は、発色性ナノ粒子、半導電性ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ナノ粒子、酸化物ナノ粒子、蛍光ナノ粒子、発光ナノ粒子、リン光ナノ粒子、光学活性ナノ粒子および放射性ナノ粒子から成る群より選択される。
【0043】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのナノ粒子は、ドット、ロッド、ディスク、トリポッドまたはテトラポッド形状を有する。
【0044】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのナノ粒子は、疎水性ナノ粒子である。
【0045】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性ナノ粒子は、コアおよびシェルを含む。
【0046】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記ナノ粒子は、CdSeナノ結晶、CdSe/ZnSナノ結晶、InAsナノ結晶、InAs/ZnSeナノ結晶、Auナノ結晶およびPbSeナノ結晶から成る群より選択される。
【0047】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:10から約5:1の範囲である。
【0048】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:2から約3:1の範囲である。
【0049】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つの金属酸化物または半金属酸化物と前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの重量比は、約2:1から約50:1の範囲である。
【0050】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体中の前記少なくとも1つの金属酸化物または半金属酸化物と前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約5:1から約20:1の範囲である。
【0051】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体は、ナノ粒子の機能特性を示す。
【0052】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記機能特性は、発色活性、光学活性、分光活性、半導電性、光電的反応性、磁性および放射活性から成る群より選択される。
【0053】
本発明のもう1つの態様によると、複数の球状複合体の製造プロセスを提供し、この場合、各球状複合体は、本明細書で記載されるような少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および本明細書で記載されるような少なくとも1つの疎水性ポリマーを含み、更に、それらの球状複合体の少なくとも1つは、その中に捕捉された、本明細書で記載されるような少なくとも1つのナノ粒子を含む。このプロセスは、少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体、少なくとも1つの疎水性ポリマーおよび少なくとも1つのナノ粒子を含む疎水性溶液を提供すること、および前記疎水性溶液を親水性溶液と混合して、複数の球状複合体を含有する混合物を得ることを含む。
【0054】
下で記載される本発明の好ましい実施形態における更なる特徴によると、前記ゾル−ゲル前駆体および疎水性ポリマーが機能性付与基を含むので、前記球状複合体は、それに取り付けられた少なくとも1つの機能性付与基を更に含む。
【0055】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体は、それに取り付けられた少なくとも1つの機能性付与基を更に含み、ならびに前記プロセスは、前記球状複合体を機能性付与部分と反応させて、その結果、機能性付与基が取り付けられた球状複合体を得ることを更に含む。
【0056】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、疎水性溶液は、疎水性溶媒を更に含む。
【0057】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記親水性溶液は、親水性溶媒を更に含む。
【0058】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記親水性溶液は、触媒を更に含む。
【0059】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記親水性溶液は、界面活性剤を更に含む。
【0060】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記プロセスは、前記複合小球体をその混合物から分離することを更に含む。
【0061】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:10から約5:1の範囲である。
【0062】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:2から約3:1の範囲である。
【0063】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの濃度は、約10mgから約100mgの範囲である。
【0064】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの濃度は、約30mgから約70mgの範囲である。
【0065】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つのナノ粒子の濃度は、約10mgから約50mgの範囲である。
【0066】
本発明の更にもう1つの態様によると、本明細書で記載されるような少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および本明細書で記載されるような少なくとも1つの疎水性ポリマーを含む捕捉マトリックスを含み、本明細書で記載されるような少なくとも1つのナノ粒子がそのマトリックス内に捕捉されている、球状複合体を提供する。
【0067】
下で記載される本発明の好ましい実施形態における更なる特徴によると、前記複合体は、それに取り付けられている、本明細書で記載されるような少なくとも1つの機能性付与基を更に含む。
【0068】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーは、互いに絡み合っている。
【0069】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体のサイズは、直径約0.01μmから約100μm、好ましくは直径約0.01μmから約10μmの範囲である。
【0070】
記載される好ましい実施形態における、なお更なる特徴によると、前記球状複合体は、本明細書で記載されるようなナノ粒子(単数または複数)の機能特性を示す。
【0071】
本発明の更にもう1つの態様によると、本明細書に記載の組成物を含む機能性薄層を提供する。
【0072】
本発明の更なる態様によると、本明細書に記載の組成物を含む製品を提供する。
【0073】
前記製品は、例えば、親和性標識物質、アレイセンサー、バーコードタグおよびラベル、発色/ラジオ/蛍光イムノアッセイ剤、薬物送達剤、光増幅器、電子ペーパー、充填剤および潤滑剤、発光ダイオード、固体状態照明構造、光学記憶装置、動的ホログラフィー装置、光情報処理システム、光スイッチ装置、固体状態レーザー、フローサイトメトリー剤、遺伝子マッピング剤、撮像プローブ、免疫組織化学的染色剤、スクリーニングプローブ、トレーシングプローブ、位置検出プローブおよび/またはハイブリダイゼーションプローブ、インク組成物、磁気および/または親和性クロマト剤、光空洞共振器、フォトニックバンドギャップ構造、磁性液体、光学フィルターおよびペイントであり得る。
【0074】
本発明は、疎水性ナノ粒子、特に疎水性ナノ結晶を十分に捕捉する、微細に制御された球状複合体を提供することにより、現在知られている構造の欠点にうまく対処しており、本球状複合体は、それらの製造の単純化および可制御性、様々なナノ結晶とのそれらの併用可能性、それらのチューニング可能な機能特性、およびそれらの球状複合体を効率的に利用できる広範な用途により、現在知られているナノ結晶捕捉ゾル−ゲルおよびポリマーマトリックスよりはるかに優れている。
【0075】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0077】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0078】
用語「方法(method)」または「プロセス(process)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0079】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0080】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0081】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0082】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0083】
図1a〜dは、ゾル−ゲルシリカ/ポリスチレン小球体に捕捉されたCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッド(15nm/3.8nmのロッド形状を有するナノ結晶)について得られた分析結果を提示する図であり、ナノ結晶のTEM像(図1a)、暗色スポットとして見える、ナノ結晶を捕捉している直径約100nmの単一小球体のTEM像(図1b)、Si、Cd、Se、ZnおよびSが十分に顕著なピークで検出されている、小球体/ナノ結晶複合体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(EDS)(図1c)ならびに直径約500〜600nmの3つのゾル−ゲル/ポリスチレン/ナノ結晶複合球体の高解像度走査型電子顕微鏡写真(図1d)を示す。
【0084】
図2a〜bは、金属ナノ結晶を捕捉する能力を実証する、ケイ素、鉛およびセレンについてのピークが顕著である、直径約10nmのPbSeナノ結晶を捕捉している直径約0.5μmの複合小球体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(図2a)、ならびにケイ素および金が顕著である、直径約6nmのAuナノ結晶を捕捉している直径約0.75μmの複合小球体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(図2b)を提示する図である。
【0085】
図3a〜dは、CdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッド(15nm/3.8nmのロッド形状を有するナノ結晶)を捕捉している、例示的な複合小球体のTEM像を提示する図であり、サンプルを超音波処理にかける前の区別不能な粒子の塊(図3a)、超音波処理にかけた後のよく区別できる球体(図3b)、炭素被覆TEMグリッド上で形成する小球体の凝集体(図3c)および炭素−ホルムバール被覆TEMグリッド上で得られたよく離隔した小球体(図3d)を示す。
【0086】
図4a〜dは、様々な製造条件での最終的な小球体のサイズに対する制御を実証する、24.5nm/4.9nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉している直径0.25μmの複合小球体のTEM像(図4a)、直径3.5nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノドッドを捕捉している直径0.5μmの複合小球体のTEM像(図4b)、直径6nmのCdSeナノドッドを捕捉している直径0.78μmの複合小球体のTEM像(図4c)および11nm/3nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉している直径1μmの複合小球体のTEM像(図4d)を提示する図である。
【0087】
図5a〜cは、発光CdSe/ZnSコア/シェル型半導電性ナノ結晶を捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体で作ったUV照射フィルムのカラー画像を提示する図であり、この場合、緑色発光は、11nm/3nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものであり(図5a)、黄色発光は、3.6nm CdSe/ZnSナノドッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものであり(図5b)、および赤色発光は、25nm/4.5nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものである(図5c)。
【0088】
図6a〜dは、直径3.8nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノドッドを捕捉している直径約500nmの3つの例示的な複合小球体から異なる組み込み時間で得られた走査型蛍光顕微鏡像およびフォトルミネッセンススペクトルを提示する図であり、これらの小球体の遠視野光学図(図6a)、これらの小球体の二次元(図6b)および三次元(図6c)フォトルミネッセンス分布マップ、ならびにこれらの3つの小球体について観察された対応するフォトルミネッセンス強度スペクトル(図6d)を示す。
【0089】
図7は、サイズが11nm/3nmである捕捉されたコア/シェル型ナノロッドに関する556nmでのピーク(Aを指す)、直径が3.8nmであるコア/シェル型ナノドッドに関する586nmでのピーク(Bを指す)、サイズが25nm/4nmであるコア/シェル型ナノロッドに関する605nmでのピーク(Cを指す)を示す、CdSe/ZnS ナノ結晶を捕捉している3つの例示的な複合小球体のフォトルミネッセンススペクトル;ならびに直径が4.3nmであるコア/シェル型ナノドッドに関する1100nmでのピーク(Dを指す)、および直径が6.3nmであるコア/シェル型ナノロッドに関する1450nmでのピーク(Eを指す)を示す、InAs/ZnSeコア/シェル ナノドットを捕捉している2つの例示的な複合小球体のフォトルミネッセンススペクトルを提示する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
本発明は、金属酸化物または半金属酸化物および疎水性ポリマーから成る新規ナノ粒子捕捉球状複合体に関する発明である。本球状複合体は、明確な球形、狭いサイズ分布、ならびに様々なタイプのナノ粒子、特に疎水性ナノ粒子、更に特に、疎水性ナノ結晶および/または疎水的被覆処理されたナノ結晶との高い併用可能性を特徴とする。更に、本発明は、前記ナノ粒子捕捉球状複合体を製造するためのプロセス、および無数の用途におけるそれらの使用に関する発明である。
【0091】
本発明によるプロセスおよび装置の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解することができる。
【0092】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行されることができる。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0093】
上で論じたように、ナノ粒子、特にナノ結晶は、それらの化学組成、三次元形状およびナノスケールのサイズに直接由来するユニークな光電特性を示す材料の重要な系統群を構成する。実際にすべての表面である、これらの化学物質は、高反応性であり、従って不安定であり、故に、操作および利用が困難である。
【0094】
上で更に論じているように、本発明者らは、例えばSertchookおよびAvnirによって記載されたもの[Chem.Mater.,2003,15,1690−1694、上記]などの、シリカおよび様々なポリマーで作った複合ゾル−ゲルサブミクロン粒子へのナノ粒子、特に疎水性ナノ粒子、更に特に、高品質疎水性ナノ結晶の捕捉を、効率的に行うことができると考えた。
【0095】
ゾル−ゲルプロセスは、半金属アルコキシドおよび/または金属アルコキシド前駆体(例えば、オルガノアルコキシシラン化合物など)の加水分解によって金属酸化物のポリマーを製造するための公知の技法である。このプロセスでは、本質的に水性のゾル(固体が液体に懸濁している連続液相を有するコロイド)が、先ず形成される。そのプロセス中にそのゾル中のコロイド状金属酸化物の粒子は、粘稠で本質的に水性の液体が先ず形成され、その後、酸化物網目構造の固体コロイド状ゲル構造(分散相が網目構造に相互接続している、ならびに分散媒と化合して、半固体物質を生成したコロイド)が形成されるまで、集まってクラスターまたは塊になる。このプロセスは、一般には室温で行われ、多くの場合、触媒の存在下で行われる。得られる組成物は、本質的に水性の金属酸化物ゾル−ゲル組成物であり、これを乾燥し、硬化させて、無機酸化物網目構造を形成することができ、その酸化物網目構造全体にわたって半金属および金属原子が比例分散されている。
【0096】
この技法は、一成分金属酸化物ガラスおよびセラミックの製造、ならびに多成分多金属酸化物ガラスおよびセラミックの製造に幅広く適用されている。そのプロセスを行う条件に依存して、得られる金属/メタロイド酸化物ポリマーが、一体品の形態である場合もあり、多数の粒子の形態である場合もあり、または被覆組成物として基板の表面に塗布して、ガラス被膜を形成することができる。加えて、結果として生じるポリマーの化学的、物理的および形態学的特性は、そのプロセスにおいて使用される前駆体、そのプロセスに関与する触媒および/または他の成分、ならびにそのプロセスを行う条件を変更することにより、容易に調整することができる。得られるポリマーの特性、およびそのプロセスを行う穏やかな条件を微細に制御できることにより、ゾル−ゲルポリマーは、無数の成分のマトリックスを捕捉する場合に非常に適するようになる。
【0097】
上で更に論じているように、ゾル−ゲルポリマーの製造に必要とされる水性環境のため、ゾル−ゲルマトリックスにナノ粒子を捕捉するための現在知られている技法の大部分は、親水性ナノ粒子に限定される。
【0098】
それ故、ゾル−ゲル由来の捕捉マトリクスに疎水性ポリマーを組み込むことにより、そのポリマーによって形成される疎水性環境のため、疎水性ナノ粒子の捕捉を行うことができ、その結果、得られる複合体は、必要な保護をナノ粒子にもたらす一方で、その捕捉マトリックスを形成するゾル−ゲル金属酸化物のため、それらの光電効果および他の効果を不明瞭にしないと考えた。
【0099】
本発明の実施に際し、各々が、ゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および疎水性ポリマーから成る捕捉マトリックスを含み、そして更に、ナノ結晶を捕捉している球状複合体の製造プロセスを設計し、実施に成功した。後続の実施例セクションで実証するように、様々な疎水性ナノ結晶の捕捉をこの方法により首尾よく且つ容易に行い、その結果、得られたナノ結晶捕捉複合球体は、明確な球形およびナノスケールのサイズを有すること、単分散性であること、ならびに互いに離散していることを特徴とするものであった。従って、制御可能な均一サイズの離散性ナノ結晶捕捉複合球体であって、ナノ結晶を取り扱うおよび使用するために便利で持続可能な形態として役立つことができ、更に、機能化ゾル−ゲル由来複合体として役立つことができる球体を製造した。
【0100】
それ故、本発明の1つの態様によると、複数の球状複合体を含む組成物を提供し、この場合、前記球状複合体の各々が、1つまたはそれ以上のゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および1つまたはそれ以上の疎水性ポリマーを含み、そして更に、前記球状複合体の少なくとも1つは、その中に捕捉された1つまたはそれ以上のタイプのナノ粒子を含む。本明細書全体を通して、これらの球状複合体をナノ粒子捕捉球状複合体とも呼んでいる。上で論じた、これらの球状複合体の好ましい微小サイズのため、本明細書では、これらの球状複合体をナノ粒子捕捉複合小球体および/または単に複合小球体とも呼んでいる。
【0101】
用語「捕捉する」およびその文法上の変化形は、本発明に関連して用いられる場合、マトリックス(ここでは球状複合マトリックス)内への物質(ここではナノ粒子)のあらゆる形態の収容を指す。好ましくは、球状複合体へのナノ粒子の捕捉は、本発明に関連しての場合、捕捉されたナノ粒子が周囲の環境から完全に隔離されるように、その複合体の中にナノ粒子を完全に組み込むことを述べている。
【0102】
用語「球状」は、本明細書で用いられる場合、本質的に完全な丸い球形である、球、グローブまたはボールに近い形を有する物体の三次元的特徴を指す。
【0103】
用語「複合体」は、本明細書で用いられる場合、異なる特徴を有する2つまたはそれ以上の物質から成り、各物質がその個性を保持しながら望ましい特性を全体に与える固形物を述べている。
【0104】
用語「半金属」は、同義で本明細書および当該技術分野において「メタロイド」とも呼ばれており、これは、金属特性と非金属特性の間の中間的な特性を有する非金属元素、例えばケイ素を述べている。メタロイドと真の金属を区別する一意的な方法はないが、メタロイドが、通常、導体ではなく半導体であることは、最も一般的である。金属同様、メタロイドの伝導帯および価電子帯はオーバーラップするが、メタロイドは、金属に比べて低い担体密度を有する。メタロイドの例としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)およびポロニウム(Po)が挙げられる。好ましくは、半金属は、本実施形態によると、ケイ素である。
【0105】
用語「ゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物」は、本明細書では「ゾル−ゲル酸化物」と略書きされていることもあり、これは、本明細書で用いられる場合、上で詳細に説明したようなゾルゲルプロセスによって得られる金属酸化物または半金属酸化物を述べている。当該技術分野では周知であるように、特異的なプロセスによるその製造のため、ゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、このプロセスに特有の特性を特徴とする。これらとしては、例えば、その酸化物の微細に制御された三次元網目構造が挙げられる。
【0106】
本発明に関連して使用することに適するゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物の代表例としては、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化スズ(SnO)、酸化マンガン(MnO)およびこれらの任意の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくは、前記半金属酸化物は、シリカである。
【0107】
あるいは、球状複合体を構成する1つまたはそれ以上の、場合によっては唯一のゾル−ゲル半金属酸化物または金属酸化物は、当該技術分野においてORMOSILS(有機修飾ケイ酸塩)またはORMOCERS(有機修飾セラミック)としても知られており、そうとも呼ばれている、有機修飾半金属酸化物または金属酸化物である。こうしたゾル−ゲル酸化物は、ゾルおよびゲルの形成につながる加水分解反応に関与しない1つまたはそれ以上の非重合性有機置換基を含むゾル−ゲル前駆体から一般に製造される。
【0108】
更に、あるいは、本球状複合体を構成するゾル−ゲル半金属酸化物または金属酸化物の1つまたはそれ以上は、下で詳述するような機能化半金属酸化物または金属酸化物である。
【0109】
本明細書に記載の球状複合体の中に組み込むことができる様々なゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、一括して、ゾル−ゲル前駆体、例えば、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、シラザンモノマー、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、Pは、非重合性置換基であり、mは、0から6の整数である)のモノマー、これらの部分加水分解および部分縮合ポリマー、ならびにそれらの任意の混合物(これらに限定されない)から、ゾル−ゲルプロセスによって製造されると説明することができる。
【0110】
非修飾金属酸化物または半金属酸化物は、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、mは、0である)を有するゾル−ゲル前駆体から一般に製造される。
【0111】
有機修飾ゾル−ゲル酸化物は、式M(R)(P)(式中、「M」は、金属または半金属元素であり、「R」は、加水分解性置換基であり、「n」は、2から5の整数であり、「P」は、非重合性置換基であり、「m」は、0から6の整数である)のゾル−ゲル前駆体から一般に製造される。
【0112】
機能化ゾル−ゲル酸化物は、式M(R)(P)(式中、「M」は、金属または半金属元素であり、「R」は、加水分解性置換基であり、「n」は、2から5の整数であり、「P」は、非重合性置換基であり、「m」は、1から6の整数であり、前記非重合性置換基のうちの少なくとも1つは、本明細書において記載されるような機能性付与基である)のゾル−ゲル前駆体から得ることができる。
【0113】
ゾル−ゲル酸化物を製造することができ、かつ本球状複合体の中に用いることができる、一般に用いられているゾル−ゲル前駆体の代表例としては、テトラエトキシチタネート、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(シアノメチルフェニエチル)トリエトキシシラン、(シアノメチルフェネチル)トリメトキシシラン、1,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−プロピルトリエトキシシラン、塩酸3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MEMO)、塩酸3−[2−N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル]トリメトキシシラン、3−シアノプロピルジメチルメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチル−n−オクタデシルジエトキシシラン、メチル−n−オクタデシルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシチタネート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)アセチル−グリシンアミド、塩化N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−N−メチル−N,N−ジアルキルアンモニウム、N−ドデシルトリエトキシシラン、N−ドデシルトリメトキシシラン、N−ヘキシルトリエトキシシラン、n−イソブチルトリエトキシシラン、塩化N−オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、N−オクタデシルジメチルメトキシシラン、N−オクタデシルトリエトキシシラン、N−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、N−オクチルトリエトキシシラン、N−オクチルトリメトキシシラン、N−オクチルジイソブチルメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−プロピルトリメトキシシラン、塩化N−テトラデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウム、塩化N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、臭化N−トリメトキシシリルプロピルトリ−N−ブチルアンモニウム、フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシチタネート、ポリエトキシジシロキサン(PEDS)、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラプロピルオルトシリケート(TPOS)、Ti(IV)−ブトキシド、塩化トリメトキシシリルプロピルチオウロニウム、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)およびZr(IV)−プロポキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
最も一般的に使用されている半金属酸化物ゾル−ゲル前駆体の1つは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。
【0115】
ゾル−ゲルシリカを得るためのゾル−ゲル前駆体としてTEOSの使用は、ナノ粒子の捕捉のために非常に適する、耐久性がある透明なシリカガラスを生じさせる。それ故、本発明の好ましい実施形態によると、ゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、シリカ、好ましくは、TEOSから製造したシリカである。
【0116】
上で論じたように、本明細書に提示する球状複合体中への追加成分を構成するポリマーは、結果として生じる複合球体に疎水性ナノ粒子または疎水的被覆処理されたナノ粒子を組み込み、その後、捕捉することを可能にするように、疎水性のものが選択される。更に、このポリマーは、ゾル−ゲル酸化物と共に複合体を形成するのに適するようなものが選択される。
【0117】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリマー」は、繰り返し単位から成る大きな分子を述べている。ポリマーは、それらの繰り返し単位の構造によって分類することができ、線状ポリマー、分枝ポリマー、またはあまり一般的はないが環状ポリマーであり得る。コポリマーは、そのポリマー構造の中に、ランダムにまたは反復配列ブロックで配置することができる2つまたはそれ以上の異なるモノマーを含有する。溶液中では、絡み合ったポリマー鎖が、複雑な粘性挙動をもたらす網目構造を作り得る。一般に、用語「ポリマー」は、様々な分子量の、ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマーおよび交互コポリマーなど)、ターポリマー、ならびにこれらのブレンドおよび修飾体(これらに限定されない)を包含する。更に、特に別の指定がない限り、用語「ポリマー」は、その分子のすべての可能な立体化学的配置および配座を包含する。これらの配置および配座としては、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチック、シスおよびトランス、ならびにRおよびS配座が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
用語「疎水性」は、本明細書で用いられる場合、一般にはその物質を水不溶性にする物質の特徴を述べている。
【0119】
疎水性ポリマーは、本実施形態によると、例えば、ポリオレフィン、芳香族ポリマー(例えば、ポリスチレン)、ポリアルキルアクリレート、ポリカーボネート、ポリオキシラン、ポリジエン、ポリラクトン(ラクチド)、これらのコポリマーおよびそれらの任意の混合物などの、任意の系統の疎水性ポリマーから選択することができる。
【0120】
好ましくは、疎水性ポリマーは、芳香族ポリマーであり、更に好ましくはポリスチレンである。ポリスチレンポリマーは、ポリスチレンそれ自体であってもよいし、または例えばポリ(4−アセトキシスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(4−t−ブチルスチレン)、ポリ(4−クロロスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、スチレン二量体のオリゴマー、ブタジエンを末端に有するポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンおよび/またはアタクチックポリスチレンなどの誘導体化ポリスチレンであってもよい。
【0121】
本発明に関連して使用するのに適する、更なる疎水性ポリマーとしては、ポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリアルキルアクリレートならびに光学的に適当なポリカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本球状複合体を構成する1つもしくはそれ以上、または唯一の疎水性ポリマーは、場合によっては、および結果として生じる組成物の所期の用途に依存して、本明細書において定義するとおりの、1つまたはそれ以上の機能性付与基がそれに取り付けられている機能化ポリマーであり得る。
【0123】
本球状複合体を構成するゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物と疎水性ポリマーとが相互作用して、ナノ粒子のための捕捉マトリックスとして役立つ複合網目構造を形成する。本発明の好ましい実施形態において、疎水性ポリマーとゾル−ゲル酸化物は、各成分の分子レベルでのドメインをその複合体内に形成するように、互いに絡み合っているか、またはもつれ合っている。
【0124】
この実施形態によると、その複合体中の疎水性ポリマーとゾル−ゲル酸化物との間に形成される構造を、叢に似ていると述べることもできる。
【0125】
本明細書で用いられる場合、一般には神経学の分野で用いられる用語「叢」は、相互接続した、からみ合った鎖とハブの網目構造の形態の構造を指す。好ましくは、叢は、疎水性ポリマーおよびゾル−ゲル酸化物のナノサイズのドメインから成る。
【0126】
後続の実施例セクションで実証するように本明細書に記載の球状複合体は、ナノ粒子を効率的に捕捉し得る。
【0127】
それ故、本発明のもう1つの態様によると、球状複合体を提供する。本球状複合体は、本明細書で記載されるような1つまたはそれ以上のゾル−ゲル酸化物および1つまたはそれ以上の疎水性ポリマーを含む捕捉マトリックスと、そのマトリックスに捕捉されるナノ粒子とで作られる。
【0128】
本明細書で用いられる場合、用語「ナノ粒子」は、その最長軸が1ミクロン未満であり、好ましくは約1から100ナノメートル(nm)である、固体粒子の1つまたはそれ以上のナノサイズの離散している塊を述べている。
【0129】
ナノ粒子は、それらの結晶性によって類別することができ、それ故、結晶質ナノ粒子(ナノ結晶としても知られており、本明細書ではナノ粒子とも呼んでいる)、半結晶質ナノ粒子または非晶質ナノ粒子であり得る。
【0130】
用語「結晶(質)の」または「結晶」は、構成原子、分子またはイオンの正規の内部規則配列または格子の外面的表現である自然平面によって拘束される固体を指す。
【0131】
用語「非晶質」は、本明細書で用いられる場合、正規の内部規則配列を欠くこと、または結晶形態の正反対の形態を指す。
【0132】
本発明の好ましいナノ粒子は、ナノ結晶である。
【0133】
一般に、ナノ結晶は、狭いサイズ分布を有する結晶集団の構成員である。ナノ結晶の形状は、球状、ロッド、ディスク、トリポッド、テトラポッドなどであり得る。
【0134】
あるいは、ナノ粒子は、それらを作る原料物質によって類別することもでき、それ故、有機ナノ粒子または無機ナノ粒子であり得る。
【0135】
最も一般的に使用されているナノ粒子は、液体媒体に懸濁可能な性質から、無機ナノ粒子である。有機ナノ粒子は、液体媒体に可溶性であることが多く、それ故、扱いにくい。従って、好ましいナノ粒子は、本実施形態によると、無機ナノ粒子、および液体媒体に懸濁可能な有機ナノ粒子である。
【0136】
懸濁可能な有機ナノ粒子の代表例としては、染料および顔料ならびに白化剤などのナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明の好ましい実施形態において、本明細書に記載の球状複合体内に捕捉されるナノ粒子は、疎水性ナノ粒子であり、更に好ましくは、前記ナノ粒子は、疎水性ナノ結晶である。
【0138】
上で述べたように、本質的に疎水性のナノ粒子および疎水的被覆処理されたナノ粒子(外面の適するリガンドにより疎水性にされたもの)は、高い品質および安定性を特徴とするナノ結晶の系統群の構成要素である。
【0139】
疎水性ナノ粒子またはナノ結晶は、本実施形態によると、1つの物質(例えばCdSe)のコアと、もう1つの物質(例えばZnS)のシェルを含むことができる。
【0140】
従って、本発明の更なる実施形態において、疎水性ナノ粒子は、コア/シェル型構造を有する。
【0141】
1つの実施形態において、ナノ粒子は、二元半導体材料のコア、例えば、式MX(式中、Mは、カドミウム、亜鉛、水銀、アルミニウム、鉛、スズ、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅およびこれらの混合物または合金であり、Xは、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、砒素、アンチモンおよびこれらの混合物または合金である)のコアを含む。
【0142】
もう1つの実施形態において、ナノ粒子は、三元半導体材料のコア、例えば、式MX(式中、MおよびMは、カドミウム、亜鉛、水銀、アルミニウム、鉛、スズ、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅およびこれらの混合物または合金であり、Xは、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、砒素、アンチモンおよびこれらの混合物または合金である)のコアを含む。
【0143】
もう1つの実施形態において、ナノ粒子は、四元半導体材料のコア、例えば、式MX(式中、M、MおよびMは、カドミウム、亜鉛、水銀、アルミニウム、鉛、スズ、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅およびこれらの混合物または合金であり、Xは、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、砒素、アンチモンおよびこれらの混合物または合金である)のコアを含む。
【0144】
他の実施形態において、ナノ粒子は、四元半導体材料のコア、例えば、M、M、M、M、MまたはM(式中、M、MおよびMは、カドミウム、亜鉛、水銀、アルミニウム、鉛、スズ、ガリウム、インジウム、タリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅およびこれらの混合物または合金であり、X、XおよびXは、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、砒素、アンチモンおよびこれらの混合物または合金である)などの式のコアを含む。
【0145】
本発明に関連して使用するのに適するナノ粒子の非限定的な例としては、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、硫化アルミニウム(AlS)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)、砒化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、砒化インジウム(InAs)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、アンチモン化インジウム(InSb)、砒化タリウム(TlAs)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、アンチモン化タリウム(TlSb)、セレン化亜鉛カドミウム(ZnCdSe)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、砒化インジウムガリウム(InGaAs)、リン化インジウムガリウム(InGaP)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)、リン化アルミニウムインジウム(InAlP)、砒化アルミニウムインジウム(InAlAs)、砒化アルミニウムガリウム(AlGaAs)、リン化アルミニウムガリウム(AlGaP)、砒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaAs)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)など、およびこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0146】
もう1つの実施形態において、ナノ粒子は、金属材料、例えば金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、これらの合金ならびに前述のものの任意の組み合わせ、のコアを含む。
【0147】
本実施形態の球状複合体内に捕捉されるナノ粒子、特にナノ結晶は、それらの特性により、更に細かく分類することができる。従って、ナノ結晶は、例えば、半導電性ナノ結晶、発色性ナノ粒子、金属ナノ結晶、磁性ナノ結晶、酸化物ナノ結晶、蛍光ナノ結晶、発光ナノ結晶、リン光ナノ結晶、光学活性ナノ結晶および放射性ナノ結晶であり得る。
【0148】
用語「半導電性」および「半導電性の」は、本明細書で用いられる場合、室温での導電性が、導電要素の導電性と絶縁要素の導電性の間である、固形物の特徴を指す。熱、電場または離散波長光に暴露されたとき、半導電性ナノ粒子は、そのタイプに依存して、それらの導電性を、導電物質の導電性から絶縁物質の導電性に、またはその逆に変える。半導電性物質の場合、その物質を構成する材料の結晶構造に依存して、電子の移動が制限される。半導電性物質の格子への一定の不純物の組み込みは、その導電特性を強化する。不純物は、自由電子を加えるか、電子求引によりホスト物質の結晶構造内に正孔(電子不足)を作る。従って、半導電性物質には2つのタイプがある:電流キャリア(電子)が負であるN型(負)、および正電荷の正孔が移動し、電流を運ぶP型(正)。これらの不純物を添加するプロセスは、ドーピングと呼ばれ、不純物それら自体は、ドーパントと呼ばれる。移動電子に寄与するドーパントは、ドナー不純物として知られており、正孔を形成させるものは、アクセプター不純物として知られる。ドープされていない半導電性材料は、真性半導体材料と呼ばれる。例えば、ケイ素、砒化ガリウム、アンチモン化インジウムおよびリン化アルミニウムをはじめとする、一定の化合物および元素は、半導電性要素である。半導電性要素は、電子装置、例えばダイオード、トランジスタおよびコンピュータ記憶装置を構成するために使用されることが多い。
【0149】
フレーズ「磁気(の)」は、本明細書で用いられる場合、磁場を生じさせ、その結果、鉄などの強磁性物質を引き付ける傾向を示すことによりおよび外部電場において整列することによりそれ自身を示す物質の物理的特性を指す。本発明に関連して、磁性ナノ粒子は、ナノサイズの磁石であり、例えばこの磁気特性を利用する用途において利用することができる。
【0150】
フレーズ「光学活性」は、本明細書で用いられる場合、入射直線偏光面を回転する物質の特徴を指す。本発明の実施形態の光学活性ナノ粒子は、電場を時計回りに回転させる(右旋性)ナノ粒子、および逆時計回りの回転を生じさせる(左旋性)ナノ粒子を含み、鏡像異性体としても知られている。ナノ粒子の光学活性は、溶融ナノ粒子も、非晶質ナノ粒子も、光学活性を示さないことによって証明されるように、一般に、その結晶構造と関係がある。
【0151】
用語「発光性(の)」は、すべての形態の冷光、すなわち、熱い白熱体以外の源により放射される光を放射することができる、物質の特徴を指す。発光は、高いエネルギー状態から低いエネルギー状態への物質内の電子の移動によって生じる現象を述べるために用いられる総称的用語である。低温での一定の化学反応、主に酸化、によって生じる化学発光;例えば絹もしくは毛皮をなでたとき、または接着面を分離したときに発生し得る放電によって生じるエレクトロルミネッセンス;および結晶を摩擦または分解することによって一般に生じる摩擦発光をはじめとする、多数のタイプの発光がある。発光が、何らかの形態の放射エネルギー、例えば紫外線またはX線の吸収によって(または何らかの他の形態のエネルギー、例えば機械的圧力によって)生じ、その放射エネルギーがそれを止めるとすぐに(または止めた直後に)その発光が終わる場合には、それは、蛍光として知られている。発光を生じさせる放射エネルギーが停止した後、発光が続く場合には、それは、リン光として知られている。
【0152】
本明細書で用いられる場合、用語「発色性(の)」は、多数の波長の光と相互作用したとき特定の波長(単数または複数)の光を差別的に吸収、透過および/または反射し、そのようにして、目視および/または様々な分光光度測定を適用したときにその物質を色づかせる、物質の物理的特徴を指す。例えば、染料および顔料は、発色物質である。
【0153】
例示的な半導電性ナノ結晶としては、InAs、CdS、Ge、Si、SiC、Se、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、CdSe/ZnSまたはInAs/ZnSeコア−シェル型ナノ結晶が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な金属ナノ結晶としては、Au、Cu、Pt、AgおよびPbSeが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な磁性ナノ結晶としては、Fe、Co、Mnなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
本明細書に記載の球状複合体に捕捉されたナノ結晶は、その球状複合体の容積全体にわたってランダムに分散している。本発明の好ましい実施形態において、ナノ結晶は、結果として生じる組成物にそれらのそのユニークな特性を付与する。従って、それらの複合体内に捕捉されるナノ結晶は、結果として生じる組成物に望まれる用途に従って選択することができ、そして球状複合体の中からそれらのユニークな特性を発揮することができる。
【0155】
本発明の実施に際し、本発明者らは、後続の実施例セクションにおいて実証および例示するように、例えばCdSeナノ結晶、CdSe/ZnSナノ結晶、InAsナノ結晶、InAs/ZnSeナノ結晶、Auナノ結晶およびPbSeナノ結晶などの半導電性金属被覆および未被覆疎水性ナノ結晶を捕捉する様々な球状複合体の製造に成功した(下の表1参照)。
【0156】
色調可変微粒子は、インク、塗料、光学におけるラベルおよびタグ標識(labelingおよびtagging)、触媒、光学的マイクロキャビティー内のセンシング、ならびにフォトニックバンドギャップ構造の構成単位などの様々な用途において非常に興味深いものである。例えば、図5でわかるように、および後続の実施例セクションにおいて例示するように、可視スペクトルバンドをカバーする、およびそれらのサイズおよび形状に強く相関する、捕捉されるCdSe/ZnSコア/シェル型半導電性ナノ結晶の特徴的な発光パターンは、本明細書に記載の球状複合体への捕捉後、保存され、維持される。
【0157】
従って、本明細書に記載の組成物は、保護されたナノ粒子の提供に加えて、ナノ粒子、特にナノ結晶によってもたらされる広帯域可変吸収および放出特性、磁性および/または放射性の特性を利用することにより、捕捉する球状複合体に光学的、化学的および/または物理的機能性を導入するために利用することができる。従って、本実施形態の球状複合体の機能的特徴は、本球状複合体に例えば半導電性、発色活性、光電的反応性、光学活性、分光活性、磁性および放射性をもたらし、その結果、例えば光学活性、半導電性、発色性、磁性および放射性球状複合体を生じさせるナノ粒子の特徴に従う。
【0158】
フレーズ「発色活性」は、物質の発色特性(これらは、本明細書において定義するとおり)に関係する現象を述べている。発色活性は、色(一般には可視領域の色)の出現によって示され得る。
【0159】
フレーズ「光学活性」は、光学活性物質(これらは、本明細書において定義するとおり)によって示される現象を指す。
【0160】
本明細書で用いられる場合のフレーズ「分光活性」は、発色活性、蛍光活性、リン光活性、発光活性および光学活性(これらは、本明細書において定義するとおり)を連帯的に指す。
【0161】
フレーズ「半導電性」は、半導電性物質(これらは、本明細書において定義するとおり)によって示される現象を指す。
【0162】
用語「放射活性」は、本明細書で用いられる場合、不安定な原子核からの直接的な、または核反応の結果としての、放射線の自然放出を指す。放射性物質によって放出される放射線としては、アルファ粒子、核子、電子、陽電子およびガンマ線が挙げられる。
【0163】
フレーズ「光電反応性」は、本明細書で用いられる場合、半導電性と、分光活性と、光電効果として知られている現象とを連帯的に指す。光電効果は、入射電磁放射線により、特に可視光により引き起こされる物質からの電子の放出によって表される。
【0164】
フレーズ「磁性」は、磁性物質(これらは、本明細書において定義するとおり)によって示される現象を指す。
【0165】
本明細書に提示するような光学活性、半導電性球状複合体は、インクおよびペイント、光学および光電標識、光濾過、電子ペーパーおよびバーコードタグ(しかし、これらに限定されない)などの多数の用途において効率的に利用することができる。
【0166】
本明細書において提示するような磁性球状複合体は、磁性液体、ならびに様々な細胞、DNA/RNA断片、蛋白質、小分子などの磁気分離および標識など(しかし、これらに限定されない)の用途において効率的に利用することができる。
【0167】
本明細書において提示するような放射性球状複合体は、目的のエンティティーの追跡および検出が求められる用途、例えば、クロマトグラフィー、診断用および治療用核医学など(しかし、これらに限定されない)において利用することができる。
【0168】
本明細書において提示するような様々なナノ粒子捕捉球状複合体のこれらおよび更なる用途を下で詳述する。
【0169】
本明細書に記載の球状複合体の製造を設計、実施および研究する過程で、本発明者らは、これらの球状複合体のサイズ、サイズ分布、均一性、形状、離散性および他の特性を微細に制御できることを発見した。
【0170】
良く規定された離散性のナノ粒子捕捉球状複合体は、操作の点、およびその複合体に望まれる用途の点で非常に有益である。球形は、様々な見地から理想的であるが、主として、球状の物体からのエネルギー放射および球状の物体へのエネルギー吸収の等方性、ならびに高密度に充填された二次元および三次元格子に球体を配列することができる、すなわち、1つもしくはそれ以上の層の均一な被膜で表面を覆うことができ、ギャップおよび隙間を満たすことができる、または任意の他のより大きな形状に成形することができる点で理想的である。従って、大部分の用途には、その複合体の予想できる所望の化学的および物理的特性を利用することができるように、均一な形状およびサイズが求められる。
【0171】
球状複合体が、一般に、直径で望ましくは数十ナノメートルから数十ミクロンの範囲である平均粒径の制御されたサイズを有することが、更に望まれる。この特徴は、流体、塗膜および被膜としての、生体標識、光学塗料などの用途における、および光学的マイクロキャビティーにおける、ならびに粒子の分離可能性、塗布性および再配列が妨げられてはならない他の用途における球状複合体の適用可能性に重要である。
【0172】
球状複合体が単分散性である、すなわち狭いサイズ分布を有することが、更に望まれる。
【0173】
更に、それらの球体が、互いに十分離隔されており、離散性であり、従って、連続被膜を形成しないことは、非常に望ましい。
【0174】
後続の実施例セクションにおいて実証するように、本発明者らは、ナノ粒子を捕捉する球状複合体を首尾よく、再現可能に製造し、同時にそれらの球状複合体のサイズ、形状、均一性および離散性に関する高い制御度を達成した。
【0175】
従って、本発明の好ましい実施形態によると、本実施形態の球状複合体は、平均サイズが直径約0.01μmから約100μm、好ましくは、直径約0.01μmから約10μmの範囲である。更に好ましくは、本球状複合体の平均粒径は、直径約0.1μmから約10μmの範囲であり、更にいっそう好ましくは、平均粒径は、直径約0.2μmから約5μmの範囲である。
【0176】
本発明の更に好ましい実施形態によると、本球状複合体は、有利に狭いサイズの単峰性分布を特徴とする単分散性である。従って、好ましくは、本球状複合体の少なくとも60%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有し、更に好ましくは、本球状複合体の少なくとも90%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有する。
【0177】
本発明の更に好ましい実施形態によると、本球状複合体は、互いに離散している。
【0178】
本明細書に記載の球状複合体の製造を設計、実施および研究する過程で、本発明者らは、生産プロセス中に特定のパラメータを変更することにより、これらの球状複合体の望ましい特性の制御を行うことができることを発見した。従って、下で詳述するように、および後続の実施例セクションにおいて実証するように、単分散能力および離散性などの特性は、疎水性ポリマーとナノ結晶の間の重量比、金属酸化物または半金属酸化物とナノ結晶の間のモル/重量比および疎水性ポリマーと金属酸化物または半金属酸化物の間の重量比/モル比などのパラメータを操作することにより、制御できることが判明した。
【0179】
上で説明した所望の特性を有する球状複合体を得る条件を最適化する過程で、本実施形態の好ましい複合体は、それらの球状複合体中の疎水性ポリマーとナノ粒子の間の重量比が、約1:10から約5:1、好ましくは約1:2から約3:1の範囲であるものであることが判明した。
【0180】
本実施形態の好ましい複合体は、金属酸化物または半金属酸化物と疎水性ポリマーの重量比が、約2:1から約50:1、好ましくは約5:1から約20:1の範囲であるものであることが判明した。
【0181】
保護をもたらすこと、ならびにナノ粒子の取り扱いおよび利用に適する形態に加えて、ゾル−ゲル由来の捕捉マトリックスは、それらの球状複合体に取り付けられている化学基により、多種多様な機能性付与部分へのナノ粒子の直接コンジュゲートを可能にする。
【0182】
従って、本発明の実施形態によると、本明細書に提示する球状複合体は、それらに取り付けられている1つまたはそれ以上の機能性付与基を更に含む。
【0183】
フレーズ「機能性付与基」は、本明細書で用いられる場合、それが取り付けられるエンティティーに一定の機能性を付与すことができる、または機能性部分へのその反応性を増大させることにより、そのエンティティーに一定の機能性をもたらすことができる部分を指す。
【0184】
機能性付与基は、好ましくは、本球体の外部に取り付ける。
【0185】
本明細書で用いられる場合、用語「機能的」、「機能性」およびそれらの文法上の変化形は、一定の用途に利用することができる、および/または一定の用途へのエンティティー(例えば、基、部分、複合体、組成物)の利用を可能にする特性を指す。本発明のこの文脈における「用途」とは、例えば、化学的相互作用、物理的相互作用、機械的過剰反応、薬理学的相互作用、光学相互作用、分光相互作用などを意味する。
【0186】
本明細書に記載の球状複合体に取り付けることができる例示的な機能性付与基は、下で詳細に定義するような化学的部分および生物学的部分として類別することができる。
【0187】
ここで用いる場合、フレーズ「化学的部分」は、例えば、懸濁化能力、分散能力、反応性、部分または完全電荷、放射性、疎水性などのような化学的機能性を本複合体にもたらす部分、一般には化学基を述べている。
【0188】
本複合体に反応性を付与する化学部分は、一般に、化学反応性基を含む。
【0189】
フレーズ「化学反応性基」は、本明細書で用いられる場合、一般には結合形成に至る化学反応を受けることができる化学基を述べている。この結合は、共有結合、イオン結合、水素結合などであり得る。結合形成に至る化学反応としては、例えば、求核および求電子置換、求核および求電子付加反応、脱離反応、付加環化反応、転位反応、芳香族相互作用、疎水性相互作用、静電相互作用、および2つまたはそれ以上の成分間の相互作用を結果的に生じさせる任意の他の公知の反応が挙げられる。従って、本複合体への化学反応性基の取り付けは、化学反応による本複合体への任意の望ましい部分の様々な相互作用および/または結合によって、その取り付けを可能にすることができる。
【0190】
本複合体に懸濁化能力または分散能力を付与する化学部分としては、一般に、荷電基、すなわち、正の電荷を有する基および/または負の電荷を有する基が挙げられる。こうした化学部分の例としては、負の電荷を有する基、例えばスルホン、スルホネート、ホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
本複合体に分散能力を付与する更なる化学部分としては、分散媒と相互作用することができる化学基が挙げられる。こうした化学部分の具体例としては、シリル化基が挙げられるが、これに限定されず、このシリル化基は、例えばヒドロキシ基を含有するポリマーと相互作用することができ、従って、そのポリマー内に球状複合体が分散したものを作ることができる。
【0192】
本球状複合体に放射性を付与する化学部分としては、1つまたはそれ以上の放射性同位元素を含む化学基が挙げられる。
【0193】
本球状複合体に電荷を付与する化学部分を用いて、上で述べたように本複合体を液体媒体に懸濁できるようにすることができ、および/または膜透過性などの特性を本複合体にもたらすことができる。こうした化学部分の例としては、例えば、正の電荷を有する基、例えばアミン、グアニジンなどが挙げられる。
【0194】
本球状複合体に疎水性を付与する化学部分としては、例えば、長鎖アルキル、アルケニル、アリールおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0195】
本明細書に記載の球状複合体に取り付けることができる化学部分の代表例としては、アミン、アルコキシ、アリールオキシ、アゾ、C−アミド、カルバメート、カルボキシレート、シアノ、グアニジン、グアニル、ハライド、ヒドラジン、ヒドロキシ、N−アミド、ニトロ、ホスフェート、ホスホネート、シリル、スルフィニル、スルホンアミド、スルホネート、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオカルバメート、チオヒドロキシ、チオ尿素および尿素(これらの用語は、後で定義するとおり)、ならびにオキシラン(エポキシ)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ニトリロ三酢酸(NTA)およびエチレンジアミン四酢酸(バーサイン、EDTA)が挙げられるが、これらに限定されず、これらの基は、電荷を有することもあり、電荷を有さないこともあり、ならびに1つまたはそれ以上の放射性同位元素を更に含むことがある。
【0196】
本明細書中に使用される場合、用語「アミン」は−NR′R″基(式中、R′およびR″は、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下で定義される)を示す。
【0197】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルフィニル、ホスホネート、ホスフェート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボキシレート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、およびヒドラジンであり得る。
【0198】
用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルフィニル、ホスホネート、ホスフェート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボキシレート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、およびヒドラジンであり得る。
【0199】
「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルフィニル、ホスホネート、ホスフェート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボキシレート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジン、およびヒドラジンであり得る。
【0200】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0201】
用語「C−アミド」は、−C(=O)−NR′R″基(式中、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0202】
用語「N−アミド」は、R′C(=O)−NR″基(式中、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0203】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0204】
用語「アゾ」は、N=NR′基を示し、R′は本明細書中で定義される通りである。
【0205】
用語「カルバメート」は、O−カルバメート基については−OC(=O)−NR′R″−基、N−カルバメート基についてはR″OC(=O)−NR′−基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0206】
用語「カルボキシレート」は、−C(=O)−OR′基を示し、R′は本明細書中で定義される通りである。
【0207】
用語「シアノ」は、−C≡N基を示す。
【0208】
用語「グアニル」は、R′R″NC(=N)−基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0209】
用語「グアニジン」は、−R′NC(=N)−NR″R″′基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りであり、R″′はR′またはR″のいずれかについて定義されるのと同様である。
【0210】
用語「ハライド」基は、フッ素、塩素、臭素、または沃素を示す。
【0211】
用語「ヒドラジン」は、−NR′−NR″R″′基を示し、R′、R″、およびR″′は本明細書中で定義される通りである。
【0212】
用語「ヒドロキシ」は、−OH基を示す。
【0213】
用語「ニトロ」は、−NO基を示す。
【0214】
用語「ホスフェート」は、−O−P(=O)(OR′)(OR″)基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0215】
用語「ホスホネート」は、−P(=O)(OR′)(OR″)基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0216】
用語「シリル」は、−SiR′R″R″′基(式中、R′、R″、およびR″′は本明細書中で定義される通りであるか、または代替的に、R′、R″、およびR″′のうちの少なくとも1つは、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、またはハライドである)を示す。
【0217】
用語「スルホネート」は、−S(=O)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0218】
用語「スルホンアミド」は、S−スルホンアミド基については−S(=O)−NR′R″、N−スルホンアミド基については−NR′S(=O)−NR″を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0219】
用語「スルフィニル」は、−S(=O)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0220】
「スルホン」は、−S(=O)−OR′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0221】
用語「チオカルバメート」は、O−チオカルバメートについては−SC(=O)−NR′R″、N−チオカルバメート基についてはR″SC(=O)−NR′を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0222】
用語「チオ尿素」および/または「チオウレイド」は、−NR′−C(=S)=NR′R″基を示し、R′およびR″は本明細書中で定義される通りである。
【0223】
用語「チオヒドロキシ」は、−SH基を示す。
【0224】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0225】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0226】
用語「尿素」および/または「ウレイド」は、−NR′C(=O)−NR″R″′基(式中、R′およびR″は本明細書中で定義される通りであり、R″′はR′またはR″のいずれかについて定義されるのと同様である)を示す。
【0227】
本明細書に提示する球状複合体の表面上の化学部分は、他の形態の化学部分に更に変更することができる。例えば、マイクロ流体デバイスにおいて用いられるような液体媒体への本球状複合体の懸濁を助長する荷電化学部分、および生物活性因子の特殊なケースにおけるような様々な材料および物体への結合に至る化学反応を本球状複合体が受けやすくなるようにする他の反応性基など、化学部分は、本質的に、本球状複合体に機能性をもたらす。
【0228】
本明細書で用いられる場合、フレーズ「生物活性部分」は、1つまたはそれ以上の生物および/または薬理活性を発揮する分子、化合物、錯体、付加体および/または複合体を述べている。
【0229】
本明細書に提示する球状複合体の表面への化学部分による生物活性部分の取り付けは、例えば分子ターゲッティング、撮像技術、免疫学的研究、細胞、核酸および蛋白質の分離および精製、DNAチップ、生物医学の研究に用いられる小型バイオセンサー、遺伝子発現プロファイリング、創薬および臨床診断などの用途に本球状複合体を適するようにするであろう。
【0230】
本明細書に記載の球状複合体に有益に取り付けることができる生物活性部分の代表例としては、蛋白質、アゴニスト、アミノ酸、アンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗体、抗原、抗うつ薬、降圧薬、抗炎症薬、抗酸化物質、抗増殖薬、アンチセンス、抗ウイルス薬、化学療法薬、補因子、脂肪酸、成長因子、ハプテン、ホルモン、阻害剤、リガンド、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、標識オリゴヌクレオチド、核酸構築物、ペプチド、ポリペプチド、酵素、糖類、多糖類、放射性同位元素、放射性医薬品、ステロイド、毒素、ビタミン、ウイルス、細胞およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。これらの生物活性部分は、上記のもののビオチン化誘導体を更に含むことができる。
【0231】
機能性付与基は、ゾル−ゲル酸化物および/または疎水性ポリマーの一部を形成する反応性基により、本球状複合体に導入することができる。こうした反応性基の存在および性質は、その球状複合体を構成するために使用されるゾル−ゲル前駆体および/またはポリマーによって決定され得る。あるいは、ゾル−ゲル前駆体および/または疎水性ポリマーを選択して、結果として生じる複合体がそれらに取り付けられた機能性付与基を固有に有するようにそれらの機能性付与基を含めることができる。
【0232】
機能性付与基を含むゾル−ゲル前駆体の例としては、金属または半金属原子上の置換基の1つが機能性付与基を含む、修飾ゾル−ゲル前駆体が挙げられる。機能性付与基は、直接、またはスペーサー(例えばアルキル)により、金属または半金属原子に取り付けることができる。
【0233】
従って、本球状複合体の表面上の機能性付与化学部分は、ゾル−ゲル金属酸化物前駆体および/もしくは半金属酸化物前駆体の一部を形成する化学部分に;有機修飾ゾル−ゲル前駆体の一部を形成する化学部分に;ならびに/または疎水性ポリマーの一部を形成する化学部分に由来し得る。あるいは、機能性付与化学部分は、本明細書に提示する球状複合体を形成した後、それらの複合体の上述の成分に由来し、複合体の表面上に固有に存在する基を改変および修飾することによって、それらの複合体の表面に導入することができる。
【0234】
本明細書に提示する球状複合体を様々な機能性付与基で更に機能化できることは、本球状複合体の用途および使用の範囲を広げる。従って、こうした機能化ナノ粒子捕捉球状複合体は、例えば、ターゲッティング系、懸濁可能物質、フィルターおよび潤滑剤、撮像プローブとして、タグおよびラベル標識剤として、磁気および親和性クロマトグラフィーによる生体分子の単離および精製において、親和性ペアのカップリングにおいて、免疫組織化学染色において、多数の標識を組織に導入するために、ホルモン結合部位を局在決定するため、フローサイトメトリーにおいて、インサイチュー局在決定およびハイブリダイゼーション、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイおよび蛍光イムノアッセイにおいて、ニューロントレーサーとして、遺伝子マッピングにおいて、ハイブリドーマのスクリーニングにおいて、細胞表面抗原の精製において、抗体および抗原を固体支持体にカップリングさせるために、ならびに膜小胞配向の試験のために役立つ。
【0235】
上で述べたように、本発明者らは、本明細書に記載のナノ粒子捕捉球状複合体を首尾よく、再現可能に製造するためのプロセスを設計した。このプロセスは、ゾル−ゲル由来のプロセスであり、従って、こうしたプロセスに付随する利点、すなわち、原価効率、高度に制御されたパラメータ、穏やかで、有害でない条件およびその他多数を享受する。
【0236】
ゾル−ゲルプロセス中の金属酸化物鎖および網目構造の成長は、穏やかで適度の条件での化学重合およびゲル化を十分に制御することができ、これは、捕捉されるエンティティーの団結性を維持する側面から、および更には工業的および環境的側面から、大きな恩恵をもたらす。化学重合の制御、例えばアルコール溶液中での酸および塩基を触媒とするゾル−ゲル前駆体の加水分解により、結果として生じるポリマーの形態を制御することができる。従って、このように広く実施され、十分に研究されているゾル−ゲルプロセスは、球状ナノ粒子捕捉複合体の製造に適用するのに非常に適している。
【0237】
球状複合体のサイズを制御できるように、かつ、それらの狭いサイズ分布を達成できるように、このプロセスを更に設計し、最適化した。上で述べたように、こうしたサイズ制御は、生体標識、光学塗料などの用途、ならびに光学的マイクロキャビティーのために重要である[Cha,J.N.ら,Nano Lett.,2003,3,907]。
【0238】
それ故、本発明のもう1つの態様によると、各球状複合体が、少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーを含み、更に、これらの球状複合体のうちの少なくとも1つが、その中に捕捉された少なくとも1つのナノ粒子を含む球状複合体を製造するプロセスを提供する。
【0239】
本発明のこの態様のプロセスは、本明細書に記載するような少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体と、本明細書に記載するような少なくとも1つの疎水性ポリマーと、本明細書に記載するような少なくとも1つのタイプのナノ粒子とを含む疎水性溶液を親水性溶液と混合して、その結果、複数の球状複合体を含有する混合物を得ることによって行われる。
【0240】
本発明のこの態様の好ましい実施形態によると、前記疎水性溶液は、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、塩化メチレン、キシレン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテルおよび二硫化炭素などの疎水性溶媒を更に含む。好ましくは、前記有機溶媒は、トルエンであり、これは、水と不混和性であり、上述の好ましいゾル−ゲル前駆体および疎水性ポリマーを溶解するのに適する。
【0241】
本発明のこの態様の更に好ましい実施形態によると、前記親水性溶液は、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリルなどのような親水性溶媒を更に含む。好ましくは、前記親水性溶媒は、エタノールである。
【0242】
ゾル−ゲル前駆体の加水分解に使用される触媒(例えば、酸または塩基触媒)、および金属酸化物または半金属酸化物と前記前駆体との反応性断面積を増加させ、更に、本球体の形成中の界面特性に影響を及ぼす界面活性剤の添加などの追加要因により、ゾル−ゲルプロセスが高い制御可能度を得ることは、当該分野で十分に確立されている。
【0243】
それ故、好ましくは、前記親水性溶液は、触媒、更に好ましくは塩基触媒、例えば水酸化アンモニウムを更に含む。しかし、他の任意の塩基または酸触媒を利用できることは、理解されるであろう。
【0244】
更に好ましくは、前記親水性溶液は、1つまたはそれ以上の界面活性剤を更に含む。この界面活性剤は、Sertchook,H.およびAvnir,D.(本発明者のうちの1人)がChem.Mater.,2003,15,1690〜1694において論じているように、シリカ/オリスチレン小球体の形成に対して重要な影響を及ぼすことが判明した。
【0245】
本明細書で用いられる場合、用語「界面活性剤」は、それを溶解する液体の表面張力を修飾することができる物質を述べている。
【0246】
本実施形態の球状複合体の製造における使用に適する界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、カチオン性または両性イオン性界面活性剤であり得る。
【0247】
本発明のこの状況における使用に適する界面活性剤の代表例としては、Tween 80、Triton X−100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0248】
後続の実施例セクションにおいて実証するように、および上で更に論じているように、本明細書に提示する球状複合体のサイズおよび離散性は、本プロセスにおける3つの主要反応体間の量の比、すなわち、疎水性ポリマーの相対量、ナノ粒子の相対量およびゾル−ゲル前駆体の相対量、によって決定され得る。後続の実施例セクションの実施例1に例示するように(例えば、表1参照)、本球状複合体の平均サイズ、サイズ分布、形状および離散性は、これら3つのパラメータにより、再現性のある影響を受ける。しかし、これらの特性は、他のパラメータ、例えばナノ粒子のタイプ、サイズおよび形状、反応のpH、エネルギー投入量および混合手順の継続時間、による影響を更に受けることが判明した。
【0249】
それ故、本発明の好ましい実施形態によると、疎水性溶液中の疎水性ポリマーとナノ粒子の重量比は、約1:10から約5:1、好ましくは約1:2から約3:1の範囲である。
【0250】
従って、疎水性溶液中の疎水性ポリマーとゾル−ゲル前駆体の濃度比は、好ましくは1mLのゾル−ゲル前駆体につき約10mgのポリマーから1mLのゾル−ゲル前駆体につき約100mgのポリマー、更に好ましくは1mLのゾル−ゲル前駆体につき約30mgのポリマーから1mLのゾル−ゲル前駆体につき約70mgのポリマーの範囲である。
【0251】
更に、疎水性溶液中のゾル−ゲル前駆体とナノ粒子の濃度比は、1mLのゾル−ゲル前駆体につき約10mgのナノ粒子から1mLのゾル−ゲル前駆体につき約50mgのナノ粒子の範囲である。
【0252】
反応が完了すると、実質的にすべてのゾル−ゲル前駆体が消費され、その反応混合物中の唯一の固体として球状複合体が得られる。従って、本発明の球状複合体を得るプロセスは、残留溶媒の濾過および/または蒸発による小球体の単離を更に含む。
【0253】
上で論じたように、本発明の球状複合体は、化合物、細胞または任意の他の物の表面を機能化し、その結果、それに捕捉されているナノ粒子から生じるユニークな分光特性、磁性および放射性などの効果をもたらすことに役立てるのに非常に適する。
【0254】
本明細書に提示する球状複合体を利用して、機能性薄層を形成することができる。従って、本発明のもう1つの態様によると、本明細書に提示するナノ粒子捕捉球状複合体を含む組成物を含む機能性薄層を提供する。
【0255】
この機能性薄層は、本球状複合体によって形成することができ、すなわち、本複合体は、その薄層を構成する構成単位として役立つ。こうした機能性薄層は、例えばディップコーティングまたはスピンコーティングにより、様々な物質の表面に塗布することができ、ならびに例えば光学塗料、光学フィルター、着色塗料、半導電塗料などとして役立つ。
【0256】
あるいは、この機能性薄層は、例えば被膜で覆ったマトリックスに、本球状複合体を埋め込むことによって形成することができる。
【0257】
本明細書に記載の球状複合体は、様々な製品に更に組み込むことができる。
【0258】
従って、本発明の更にもう1つの態様によると、本明細書に提示するような球状複合体の組成物を含む製品を提供する。
【0259】
この製品は、ナノ粒子自体、従って、球状複合体自体によって示される特性、または1つもしくはそれ以上の機能性付与基によりナノ粒子、従って、球状複合体によって示される特性を一定の用途において有効に利用することができる任意の装置または材料であり得る。
【0260】
こうした製品の例としては、親和性標識システム、アレイセンサー、バーコードタグおよびラベル、イムノアッセイ用の発色性/放射性/蛍光性の系、光増幅器、電子ペーパー、フィルターおよび潤滑剤、発光ダイオード、固体状態照明構造、光学記憶装置、動的ホログラフィー装置、光情報処理システム、光スイッチ装置、固体状態レーザー、フローサイトメトリーシステム、遺伝子マッピングシステム、撮像プローブ、免疫組織化学的染色剤、インビボ、インサイチューおよびインビトロスクリーニングプローブ、トレーシングプローブ、位置検出プローブおよびハイブリダイゼーションプローブ、インク組成物、磁気および親和性クロマト剤、磁性液体、ペイント、光学フィルター、光空洞共振器、フォトニックバンドギャップ構造、懸濁化系およびターゲッティング系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0261】
機械で読み取ることができる記号での様々な表面のマーク付けおよび標識付けは、よく用いられており、急ピッチで開発されている技術である。この技術は、人間の目には見えず、他の光学技術では検出できない隠蔽マークを付けることを含む。固有波長範囲における光電応答などの物理的特性に基づく、または磁気および半導電特性に基づくインクは、ほぼいずれの他の検出手段にも不可視であり得る機械読み取り可能なマークを付けることで表面に標識するために、使用することができる。従って、本発明の実施形態によると、光電性、発色性、磁性および/または半導電性ナノ粒子がその中に捕捉されている、本明細書に提示する球状複合体は、自動および機械認識および読み取り、例えばバーコードタグに、ならびに暗号化用途および目的に適する特別なインク、ペイントおよび染料を製造するために、使用することができる。
【0262】
ページが印刷された本は、それらが数百ページの情報の同時的高解像度表示を具現する点でユニークである。物理的に裏返し、書くことができる多数の物理的ページ上の情報の表示は、情報相互作用の非常に好ましい手段の構成要素である。しかし、印刷されたページの1つの明白な欠点は、一旦活字が組まれると変えることができないことである。従って、本発明の実施形態によると、光電性、発色性および/または半導電性ナノ粒子がその中に捕捉されている、本明細書に提示する球状複合体を使用して、多層論理を用いる本物の紙および他の物質をベースにした、電子的にアドレス可能な紙−ページ対比メディアディスプレイを構成することができる。
【0263】
基本的には一定の周波数範囲の光の伝搬を妨げるバンドギャップを有する構造であるフォトニック結晶の開発は、レーザー、オプトエレクトロニクスおよび通信における重要な用途のための多数の新規デバイスの提案につながった。これらのデバイスには、High−Q 光ファイバー、ロスの少ないきつい曲げを可能にする導波管、チャネルドロップフィルタ、効率的LEDおよび強化されたレーザーキャビティーなどがある。これらの用途およびデバイスのすべてに、三次元で光を閉じ込めることができるガラス捕捉フォトニックナノ結晶を利用することができ、この場合、構造内の機構の長さスケールは、オプトエレクトロニクスおよび他の用途において一般的な波長の光を制御するために、数ミクロンのオーダーのスケールでなければならない。従って、本発明の実施形態によると、光電性および/または半導電性ナノ結晶がその中に捕捉されている、本明細書に提示する球状複合体を使用して、フォトニックバンドギャップ構造を構成することができる。
【0264】
固く、なめらかな小球体から作られる潤滑剤および充填剤は、当該技術分野では公知である。本明細書に提示する球状複合体は、特定のゾル−ゲル前駆体(例えば、酸化チタンへのもの)およびポリマー(例えばテフロン)の使用により、潤滑剤および充填剤における粒子として適するようにする特性を示すように設計することができる。
【0265】
本球状複合体は、適する表面機能性付与基を含むように設計することができ、または更に、表面に荷電化学部分などの化学部分を有するように製造した後に機能化することができ、これは、それらの球状複合体を、液体媒体に、より懸濁および/または分散できるようにするであろう。
【0266】
光増幅器は、光ファイバー回路素子を使用する長距離電気通信網およびケーブルテレビ配信システムにおける重要な構成要素である。半導電性ナノ結晶を捕捉する球状複合体は、エルビウムをドープした光ファイバー増幅器で現在得ることができるものより大きなファイバー帯域幅を提供することができる。選択した半導電性ナノ結晶、例えばPbSe、のサイズ分布を制御することにより、帯域幅を拡張するように、それらの粒子のスペクトル幅、位置およびプロフィールを調整することができる。更に、PbSeコロイド状ナノ粒子は、様々な異なる波長により励起させることができ、その結果、励起が単一波長に限られるシステムに付随するコストを最小にすることができる。
【0267】
本明細書に提示する球状複合体は、例えば発光ダイオードおよび固体状態照明構造において使用するためのリン光物質としても有用であり得る。ゾル−ゲル溶液の処理性および得られるナノ粒子捕捉球状複合体の光安定性が、光学記憶装置をはじめとする光学デバイスにおける活性媒体としてのそれらの使用を可能にする。これらのタイプの固体複合体は、光通信および光情報処理において使用される動的ホログラフィー装置における活性媒体としての用途を有することができる。例えば、全光スイッチと光学撮像の相関を本発明の固体複合体によって助長することができる。また、本球状複合体は、固体状態レーザーにおける活性媒体になり得る。
【0268】
親和性ペアは、多数の基礎研究努力、工業ツール、ならびに化学、生物学および医学などの分野における技術の開発のベースとして役立つ。現在最も利用されている親和性ペアの一例は、アビジン−ビオチン親和性ペアである。一般に、場合によっては別の機能性部分との組み合わせで、1つまたはそれ以上の生物活性因子が取り付けられている親和性ペアは、例えば、生物活性因子のラベルおよびタグ標識、分離技術(例えば、親和性クロマトグラフィー)、薬物送達ならびに生物活性スクリーニングに使用することができる。本発明に関連して、本明細書に提示する機能化球状複合体は、単一または複数の様々な分子(例えば生物活性因子)に取り付けると、検出可能な部分またはプローブとなり得る標識部分として使用することができ、前記検出可能部分またプローブとしては、例えば、発色性および半導電性ナノ粒子、蛍光ナノ粒子、リン光ナノ粒子、金属ナノ粒子、放射性ナノ粒子、磁性ナノ粒子、ならびに任意の他の公知の検出可能なナノ粒子が挙げられる。従って、本発明の実施形態によると、検出可能なナノ粒子がその中に捕捉されている、本明細書に提示する球状複合体は、生物活性因子などの分子を親和性ペア系の一部として間接的にラベルおよびタグ標識するために使用することができる。間接的標識は、親和性ペアによって行うことができ、この場合、その親和性ペアの一方の要素を、本明細書に提示する検出可能な球状複合体に取り付け、その親和性ペアのもう一方を、目的の分子に取り付ける。
【0269】
先進分離技術の増え続ける使用および要求は、バイオテクノロジー研究および産業において益々重要になっている。単離した細胞、細菌、DNA/RNA断片、蛋白質、小分子などを取り扱うための経済的で、再現性があり、自動化可能な方法が、大いに必要とされている。それ故、常磁性ナノ粒子を捕捉している本明細書に提示するような球状複合体は、磁気分離および精製法に使用することができる。この実施形態の分離および精製法は、例えば、分離すべき分子または生物活性物質に、本明細書に提示するような常磁性ナノ粒子を捕捉している球状複合体を取り付け、それらに磁気分離法を適用することによって行うことができる。
【0270】
本発明の製品のもう1つの例示的な実施形態では、機能化球状複合体を免疫組織化学的染色において使用する。当該技術分野では周知であるように、免疫組織化学的染色による組織および他のサンプル中の蛋白質の同定成功の鍵は、蛋白質特異的抗体の注意深い選択、および検出可能物質、例えばピグメント(色素)に変換され得る物質、への抗体の効率的なカップリングを含む。この実施形態の免疫組織化学的染色は、例えば、本明細書に提示するような光学活性、発色性または別の方法で検出可能なナノ粒子を捕捉している球状複合体を特に望ましい抗体に取り付けて、その結果、免疫組織化学的染色に有益に使用することができる特異的抗体に取り付けられた検出可能な球状複合体を生じさせることによって、行うことができる。
【0271】
本発明の製品のもう1つの例示的な実施形態では、機能化球状複合体をフローサイトメトリーにおいて使用する。十分に確立された技術として、フローサイトメトリーは、集束光に露光されたとき検出可能なシグナルを放出する細胞または他の粒子を含有する液体流により投射されるレーザー光の束に使用を含む。その後、これらのシグナルをコンピュータ記憶装置およびデータ分析用に変換し、様々な細胞特性についての情報を提供することができる。目的の生物物理学的または生物化学的特性の測定を可能にするために、通常、細胞は、特定の細胞成分に特異的に結合する蛍光物質で染色する。この蛍光物質は、レーザービームによって励起され、異なる波長で光を放出する。この実施形態のフローサイトメトリー実験は、例えば、本明細書に提示するような蛍光ナノ粒子を捕捉している球状複合体を特定の細胞成分にコンジュゲートして、その結果、一定のタイプの細胞に取り付けられた蛍光球状複合体を生じさせることによって、行うことができる。
【0272】
本発明の製品の更にもう1つの例示的な実施形態では、機能化球状複合体を蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)において使用する。FISHは、蛍光物質で標識したヌクレオチドプローブの相補鎖に目的の配列をハイブリダイズすることによる、細胞質内のmRNAの、または細胞核の染色体内のDNAの局在決定方法である。この方法は、染色体着色法とも呼ばれる。この技法の感度は、閾検出レベルが細胞1個当たりmRNAまたはDNAコピー数10〜20の範囲内であるような感度である。プローブは、目的の特定のRNAまたはDNA配列に対する相補核酸塩基配列である。これらのプローブは、20〜40塩基対ほどの小さいものから1000塩基対までであり得る。プローブのタイプは、蛍光物質で標識されている、オリゴヌクレオチド、1本鎖または2本鎖DNAおよびRNA鎖であり得る。この実施形態のFISH手順は、例えば、本明細書に提示する蛍光ナノ粒子を捕捉している球状複合体をヌクレオチドプローブにコンジュゲートして、その結果、ヌクレオチドプローブに取り付けられた蛍光球状複合体を生じさせることによって、行うことができる。
【0273】
免疫組織化学的染色、フローサイトメトリーおよび蛍光インサイチューハイブリダイゼーションと同様に、他の分子、例えば生物活性物質および薬物を、1つもしくはそれ以上の検出可能な球状複合体によって直接および間接的に(親和性ペアにより)標識することができ、または逆に、1つもしくはそれ以上の分子を検出可能な球状複合体に取り付けることができる。こうしたラベルおよびタグ標識分子は、親和性標識剤、遺伝子マッピング剤、造影剤、スクリーニングおよび局在因子ならびにクロマト剤として使用することができる。
【0274】
本発明のこの態様の更なる実施形態では、本製品は、磁性液体である。磁性液体は、キャリア液と、界面活性層により懸濁状態で保持されている(これは界面活性剤によって行われる)小さな磁性粒子とから成る。キャリア液は、個々の用途の必要に応じて選択され、多くの場合、ちょうど炭化水素油のような液体を用いる。この実施形態によると、磁性ナノ粒子を捕捉している球状複合体は、懸濁化能力を補助する機能性付与基により、すべての条件下、キャリア液に懸濁した状態で安定化される。こうした磁性液体は、多くの場合、永久磁石によって作られる磁場により、重力などの力に逆らって適所に保持することができる。磁性液体の代表的な使用としては、高真空、ガス、ダストおよびミストシステムにおける回転軸シール;(強力スピーカーにおけるような)磁場において粘度が増加する、ダンパーおよび伝熱装置;磁場で流体の浮力を変えることによる浮沈分離;LCD(液晶ディスプレイ)におけるような流体の複屈折率が磁場に従う磁気光学装置が挙げられる。
【0275】
発色性ナノ粒子を捕捉している、本明細書に提示する球状複合体は、液体ビヒクルを形成する溶媒で一般には薄められた、結合媒体で懸濁させた、ペイント中の固体顔料として更に使用することができる。好ましくは、ペイントにおいて使用される球状複合体の捕捉マトリックスは、そのペイントの液体ビヒクルへのその球状複合体の懸濁を補助するように機能化される。本明細書に提示する球状複合体を用いて作ったペイントは、輝き、艶、ラジアンス、まぶしさ、きらめき、光輝および光彩などの特別な効果を生じさせるために使用することができる。
【0276】
光学活性、金属および他のナノ粒子を捕捉している、本明細書に提示する球状複合体は、光学および放射線フィルターにおいて更に使用することができ、この場合は、ガラスまたはプレキシガラスのシートなどのフィルター担体に層として塗布される。光学活性ナノ粒子を捕捉する場合、そうしたフィルターは、偏光子として使用することができ、発色性ナノ粒子を捕捉する場合、そうしたフィルターは、一定の波長の光を遮断するために使用することができ、ならびに磁性ナノ粒子を捕捉する場合、放射線フィルター/スクリーンとして使用することができる。
【0277】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0278】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0279】
材料および実験方法
ナノ結晶を製造するための試薬:
トリ−n−ブチルホスフィン(TBP、99%)は、Stremから入手した。
【0280】
ジメチルカドミウム(Cd(CH)は、Stremから入手し、その元の容器から真空下で移して不純物を除去し、グローブボックス内の冷蔵器の中で保管した。
【0281】
テトラデシルホスホン酸(TDPA)は、Alfaから入手した。
【0282】
ヘキシルホスホン酸二塩化物(C13ClPO、95%)は、Aldrichから入手した。
【0283】
トリオクチルホスフィン(TOP、90%)は、Aldrichから入手し、減圧蒸留により精製し、グローブボックスの中に入れておいた。
【0284】
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO、純度90%)は、Aldrichから入手した。
【0285】
セレン(Se)、三塩化インジウム(InCl)は、Aldrichから入手した。
【0286】
砒化トリス(トリ−メチルシリル)((TMS)As)は、Aldrichから入手し、Becker,G.らがAnorg.Allg.Chem.,1980,462,113に詳述しているとおり取り扱った。
【0287】
ヘキサメチルジスルチアン(Hexamethyldislthiane)((TMS)S)は、Aldrichから入手した。
【0288】
ジエチル亜鉛(Zn(CH)は、Aldrichから入手し、ヘキサンに1M濃度で溶解した。
【0289】
テトラクロロ金・三水和物(HAuCl:3HO)は、Aldrichから入手した。
【0290】
1−ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)、C1225SH、98%)は、Aldrichから入手した。
【0291】
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、95%)は、Aldrichから入手した。
【0292】
臭化テトラオクチルアンモニウム(N(C7)Br、98%)は、Aldrichから入手した。
【0293】
ヘキシルホスホン酸(HPA)は、ヘキシルホスホン酸・二塩化物を水と反応させ、その後、ジエチルエーテルで抽出し、そのエーテルを蒸発させることにより単離した。
【0294】
複合小球体を製造するための試薬:
1つのヒドロキシを末端に有するポリスチレン(PS−10000、MW 10,000)は、Scientific Polymer Productsから購入した。
【0295】
テトラエトキシシラン(TEOS)は、Aldrichから入手した。
【0296】
Tween 80(カタログ番号27,436−4)は、Aldrichから入手した。
【0297】
粒子の特性付け:
単一ナノ結晶捕捉複合小球体の電子顕微鏡および蛍光顕微鏡像を、Ebenstein,Y.らがAppl.Phys.Lett.,2002,80,4033に記載しているとおり、測定した。すべての光学試験は、周囲条件下で行った。
【0298】
低解像度透過型電子顕微鏡(TEM)像は、Phillips Tecnai 12 顕微鏡を使用し、120kVで操作して得た。サンプルは、非晶質炭素または炭素/ホルムバールの薄膜を支持する銅グリッド上に、複合粒子を含有する1滴のエタノール溶液を堆積させることによって製造した。濾紙による吸い上げで過剰な液体を除去し、そのグリッドを空気乾燥させた。
【0299】
低解像度走査型電子顕微鏡(SEM)像は、FEIの分析用Quanta 200 ESEMによって撮影した。
【0300】
エネルギー分散型X線分析(EDS)による分析は、JEOL−JAX 8600 Superprobeで行った。サンプルは、グラファイト基板の上に堆積させた。
【0301】
蛍光スペクトルは、スペクトロメータ/CCD装置(StellarNet モデルEPP2000)を使用して記録した。ナノ結晶捕捉球体の被膜を、ガラス基板上にそれらの球体を分散させることにより製造し、その放射を、光電子倍増管(PMT)を使用するモノクロメータの検出において直角(90°)で検出した。すべての蛍光測定は、励起に473nmレーザー線を使用して行った。
【0302】
実施例1
ナノ結晶を捕捉しているゾル−ゲル/ポリマー複合小球体の製造および特性付け
化学合成
ナノ結晶の製造:
本複合体内に捕捉するための例示的なナノ結晶として、複合球体に光学的機能性を付与することができる半導電性ナノ結晶を選択し、それらのナノ結晶によって示される広帯域可変バンドギャップ吸収および放出を利用した。
【0303】
すべてのナノ結晶は、以下の出版物に掲載されている手順に従って、製造し、および/または有機リガンドで被覆した:
CdSeナノ結晶ドットは、Murray,C.B.らがJ.Am.Chem.Soc,1993,115,8706−8715に記載しているとおり、製造した。
CdSe/ZnS(コア/シェル、CS)ナノ結晶ドットは、Dabbousi,B.O.らがJ.Phys.Chem.,1997,8,101,9463−9475に、およびTalapin,D.V.らがNano Lett.,2001,1,207−211に記載しているとおり、製造した。
CdSeナノ結晶ロッドは、Peng,Z.A.およびPeng,X.がJ.Am.Chem.Soc,2001,123,1389−1395に、ならびにManna,L.らがJ.Am.Chem.Soc,2000,122,12700−12706に記載しているとおり、製造した。
CdSe/ZnSコア/シェル型ナノ結晶ロッドは、Mokari,T.およびBanin,U.がChem.Mater.,2003,15,3955に記載しているとおり、製造した。
InAsナノ結晶ドットは、Guzelian,A.A.らがAppl.Phys.Lett.,1996,69,432に記載しているとおり、製造した。
InAs/ZnSeコア/シェル型ナノ結晶ドットおよびAuナノ結晶は、Cao Y.W.およびBanin,U.がJ.Am.Chem.Soc.,2000,122,9692に記載しているとおり、製造した。
【0304】
ナノ粒子を捕捉しているゾル−ゲル/ポリマー複合小球体の製造 − 一般手順:
疎水性ナノ結晶が捕捉される(一般に連続被膜を形成する連結した球体とは対照的に)明確な、離隔した小球体を製造するプロセスを次のように設計し、実施した:
このプロセスは、離隔した球体内にナノ結晶を捕捉することができる疎水性環境をもたらすポリスチレン成分と併せて、ゾル−ゲルシリカ粒子の複合体特性を利用する。
【0305】
単分散球体を再現可能に得ることができる程度までこのプロセスを最適化した。
【0306】
本明細書に提示するナノ結晶を捕捉するためのプロセスは、Petrovicova,E.らがJ.Appl.Polm.Sci,2000,77,1684−99に;Mousa,W.F.らがJ.Bio.Mater.Res.,1999,47,336に;Brechet,Y.J.らがAdv.Eng.Mater.,2001,3,571−577に;およびBokobza,L.らがChem.Mater.,2002,14,162−167に記載しているようなシリカ−ポリスチレン複合小球体の製造に基づく。
【0307】
代表的な例では、エタノール(12.5mL)、水酸化アンモニウム水溶液(2.5mL、25容量%)およびTween 80(0.5mL)を100mLフラスコの中で混合して、親水性溶液を得た。
【0308】
同時に、トルエン(1.0mL)中の被覆(疎水性)ナノ結晶(NC、20mgから60mg)とTEOS(1.0mL)と様々な量のポリスチレン(PS、20〜150mg)との溶液を別のバイアルの中で製造して、疎水性溶液を得た。
【0309】
その疎水性溶液をその親水性溶液に一度に添加し、得られた混合物を、一晩、激しく攪拌した。実験の過程で、本発明者らは、攪拌に最適な時間が5から7時間であることを発見した。この時間の間、ゾル−ゲル重縮合触媒の濃度を制御することにより10.5〜11.5のpHを維持して、狭い小球体サイズ分布を達成した。
【0310】
その後、それらの形成された球体を5分間、遠心分離に付し、その後、減圧下で溶媒を除去した。
【0311】
幾つかのサンプルは、溶媒除去の前に30分間、超音波処理して、凝集した粒子を離散した(分散された)小球体に離隔した。
【0312】
上の一般手順を用いて、様々な濃度のポリスチレンおよびナノ結晶から成り、様々な形状およびサイズの様々な半導電性および他の金属ナノ結晶を捕捉している、様々な複合ゾル−ゲル小球体を製造した。すべての合成手順において、エタノール、トルエン、TEOSおよび水酸化アンモニウムの量は同じであり、ポリスチレンの量ならびにナノ結晶の量、サイズ、形状および組成は変えた。
【0313】
下の表1は、ナノ結晶捕捉複合体を製造するための様々な手順において使用した成分および条件をまとめたものであり、それらによって形成された、結果として生じた小球体のサイズを提示するものである。
【表1】

【0314】
実験および分析結果
ゾル−ゲル/ポリマー複合体内へのナノ結晶の捕捉:
幾つかのタイプの光学的測定を先ず行って、ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体内へのナノ結晶の捕捉を評価した。
【0315】
捕捉反応後、その成功の第一の証拠は、特定の捕捉されたナノ結晶のタイプおよびサイズに特有である、複合体を含有する沈殿物の明瞭な色の出現、および同時に、その溶液からのその色の消失によって提供された。
【0316】
シリカ球体内へのナノ結晶の捕捉についてのより多くの証拠が、図1に提示するようなTEM像およびエネルギー分散型X線分析(EDS)スペクトルから得られた。
【0317】
図1aは、表1のエントリー5に対応する、長さ15nm/直径3.8nmの寸法を有する、CdSe/ZnSコア/シェル型量子ロッドを捕捉しているゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のTEM像を提示するものである。
【0318】
図1bは、図1aについて説明したような、CdSe/ZnSコア/シェル型量子ロッドを捕捉している単離されたゾル−ゲル/ポリスチレン小球体全体のTEM像を提示するものである。図1bからわかるように、約100nmの直径を有する単一の複合球体には、この三次元球体の内部にランダムな配向で位置する暗色の細長い形態のナノ結晶が点在する。
【0319】
図1cは、表1のエントリー2に対応する、CdSe/ZnSコア/シェル型ナノ結晶を捕捉しているシリカ/ポリスチレン複合小球体のEDS測定によって得られたスペクトルを提示するものである。図1cからわかるように、その複合体のシリカ成分と区別されるケイ素ピーク、捕捉されたナノ結晶コアとは区別されるカドミウムおよびセレンピーク、ならびに捕捉されたナノ結晶シェルとは区別される亜鉛および硫黄ピークが検出された。これは、それらの複合球体内へのナノ結晶の捕捉の直接的な証拠となる。
【0320】
図1dの挿入部は、CdSe/ZnSコア/シェル型ナノ結晶を捕捉している3つの複合小球体のHRSEM(高解像度SEM)像を提示するものである。図1dからわかるように、これら3つの明瞭に離散している複合小球体は、直径が500〜600nmの完全球状形態を示す。
【0321】
シリカ/ポリスチレン小球体の保護機能に関して示された、ナノ結晶の封入についての更なる直接的な証拠は、サンプルが1年間にわたって空気および周囲条件に暴露された後、それらのフォトルミネッセンスが、依然として観察されたとき、実証された。
【0322】
様々なタイプのナノ結晶の捕捉の概論
上で説明した方法論を用いる疎水性ナノ結晶の捕捉を、金(Au)およびPbSeナノ結晶を用いて更に実行した(表1のエントリー6および9をそれぞれ参照)。図2aおよび2bは、これらのナノ結晶を捕捉する複合シリカ/ポリスチレン小球体のEDS測定において得られたデータを提示するものであり、これらは、複合小球体内へのそれらのナノ結晶の捕捉の堅実な証拠となる。
【0323】
図2aからわかるように、ケイ素、鉛およびセレンのピークは、明瞭に区別される。
【0324】
図2bからわかるように、ケイ素および金のピークは、明瞭に区別される。
【0325】
これらの結果は、本明細書に記載の複合小球体内に様々なナノ結晶を捕捉するための本明細書に提示する方法の適性および一般性の明瞭な証拠となる。
【0326】
ナノ結晶捕捉複合球体の離散性:
離散している(および単分散した)複合小球体を得るために、合成および製造プロセスの様々なパラメータの効果を検査した。異なる条件で製造した様々な複合小球体サンプルを電子顕微鏡で分析した。ポリスチレン(PS):TEOS比は、小球体離散性に関する重要なパラメータであることが判明した。従って、ナノ結晶を捕捉している明確な離散性の複合小球体を形成するプロセスを、十分に離隔された単分散のシリカ球体を再現可能に得ることができる程度まで、さらに最適化した。
【0327】
例えば、高収量の離散性複合小球体を得るのに適するPS:TEOS濃度比は、約30mgポリスチレン/1mL TEOSから約70mgポリスチレン/1mL TEOSの範囲であることが判明した。
【0328】
上で述べたように、TEMグリッド上への堆積前の半時間の超音波処理は、溶液中で製造後に互いに融合した小球体の凝集物の破壊に有益であることも判明した。
【0329】
TEMグリッド表面を炭素被覆グリッドから、より親水性である炭素−ホルムバール被覆グリッドに変えてみると、TEMグリッド表面が、離散性球体への凝集物の離隔に寄与する追加要因であることも判明した。炭素−ホルムバール被覆グリッド表面は、その上にシリカ球体が一端堆積されると、より強くシリカ球体を引き付け、それらの可動性を低減した。
【0330】
図1ならびに下で論じる図3および図4からわかるように、十分に離隔された離散している小球体をこれらの条件下で獲得した。
【0331】
図3は、更なるTEM像を提示するものである。
【0332】
TEMグリッド上に塗布する前の超音波処理の効果は、上で説明したとおり製造した15nm/3.8nmの寸法を有するCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉しているシリカ/ポリスチレン小球体のTEM像を提示する、図3aおよび3bからわかる。図3aは、超音波処理を適用しなかったときに形成された凝集した複合体の像を提示するものであり、それによって、図3bは、これらの小球体に対して30分間適用した超音波処理の効果を明瞭に実証する。
【0333】
TEMグリッド表面の効果は、炭素被覆グリッド上に塗布された小球体のTEM像(図3c)が、炭素−ホルムバール被覆グリッド上に塗布された小球体(図3d)と比較してあまり区別できない小球体を示す、図3cおよび3dからわかる。
【0334】
ナノ結晶捕捉複合球体のサイズおよびサイズ分布:
本明細書に提示するナノ結晶を捕捉している複合小球体を製造するプロセスにおけるもう1つの有意な目的は、それらのサイズを制御できることおよびそれらの総合的なサイズの狭い分布(単分散性)を達成できることである。
【0335】
(制御された狭いサイズ分布を有する)複合小球体の単分散集団を得るために、これらの特性に対する様々なパラメータの効果を試験した。例えば、異なる条件で製造した様々な複合小球体を電子顕微鏡によって分析した。
【0336】
これらの複合小球体の離散性についての研究の場合のように、ポリスチレン(PS):TEOS比は、小球体のサイズを決定する主要パラメータであることが判明した。
【0337】
図4a〜dは、様々なナノ結晶捕捉複合シリカ/PS小球体のTEM像を提示するものである。図4a〜dからわかるように、サイズおよびサイズ分布を制御できることは、主として、その製造手順の中でポリマーの濃度を変更することによって改善された。
【0338】
図4aは、上の表1のエントリー1に対応する、24.5nm/4.9nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉しているシリカ/PS小球体のTEM像を提示するものである。図4aからわかるように、これらの小球体は、0.25μmの直径および実質的に狭いサイズ分布を有する。
【0339】
図4bは、上の表1のエントリー2に対応する、直径が3.5nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノドットを捕捉しているシリカ/PS小球体のTEM像を提示するものである。図4bからわかるように、これらの小球体は、0.5μmの直径および実質的に狭いサイズ分布を有する。
【0340】
図4cは、上の表1のエントリー3に対応する、直径が6nmのCdSeナノドットを捕捉しているシリカ/PS小球体のTEM像を提示するものである。図4cからわかるように、これらの小球体は、0.78μmの直径および実質的に狭いサイズ分布を有する。
【0341】
図4dは、上の表1のエントリー4に対応する、11nm/3nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉しているシリカ/PS小球体のTEM像を提示するものである。図4dからわかるように、これらの小球体は、1μmの直径および実質的に狭いサイズ分布を有する。
【0342】
複合球体の光学特性:
ナノ結晶の更に望まれる特性の1つは、例えばそれらのフォトルミネッセンス応答において表される、微細にチューニングできる光電挙動である。この目的を達成するために、幾つかのタイプの光学測定を行って、複合シリカ/ポリスチレン小球体内へのナノ結晶の捕捉の効果を研究した。
【0343】
例えば、様々なタイプおよびサイズのナノ結晶を捕捉しているUV照射複合シリカ/ポリスチレン小球体の蛍光の目視検査を行った。結果を図5〜7に提示する。
【0344】
図5a〜cは、発光CdSe/ZnSコア/シェル型半導電性ナノ結晶を捕捉している複合シリカ/ポリスチレン小球体のUV照射フィルムのカラー画像を提示するものである。図5aからわかるように、緑色発光が、表1のエントリー4に対応する11nm/3nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合シリカ/ポリスチレン小球体から観察された。図5bからわかるように、黄色発光が、表1のエントリー2に対応する3.6nm CdSe/ZnSナノドットを捕捉している複合シリカ/ポリスチレン小球体から観察された。図5cからわかるように、赤色発光が、表1のエントリー1に対応する25nm/4.5nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合シリカ/ポリスチレン小球体から観察された。
【0345】
単離小球体の光学特性の詳細な研究は、走査型蛍光顕微鏡を使用して行った。単離小球体の発光スペクトルは、各小球体の上に走査型蛍光顕微鏡のレンズを配置し、モノクロメータ−CCD測定システムへの光線を検出することによって測定した。
【0346】
図6a〜dは、直径3.8nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉している直径約500nmの3つの複合シリカ/ポリスチレン小球体の走査型蛍光顕微鏡像検査の結果を提示するものである。
【0347】
図6aは、ランプ照明のもと、100倍油浸対物レンズを備えた倒立顕微鏡に連結したデジタルカメラで得られた、小球体の遠視野光学像を提示するものである。励起光を退けるためにロングパスフィルターを使用して、514nm励起および1μwの強度でArイオンレーザの照明のもとで収集した、顕微鏡カバーガラスの上に堆積させた3つの小球体のフォトルミネッセンスフォトン分布マップを、図6b(二次元投影図)および3c(三次元投影図)に提示する。これらの像の左にある強いピークは、少なくとも2つの複合小球体の凝集物に対応する。図6dは、走査型蛍光顕微鏡を用いて異なる組み込み時間で収集し、測定したときの、これら3つの小球体について観察された対応するフォトルミネッセンス強度スペクトルを提示するものである。
【0348】
図7は、CdSe/ZnSナノ結晶を捕捉している3つの例示的なシリカ/PS小球体のフォトルミネッセンススペクトルであって、11nm/3nmの捕捉されたコア/シェル型ナノロッドについての556nm(Aを指す)から、直径が3.8nmのコア/シェル型ナノドットについての586nm(Bを指す)を通って、サイズが25nm/4nmのコア/シェル型ナノロッドについての605nmのピーク(Cを指す)までの可視領域にわたるスペクトルを提示するものである。異なるサイズのInAs/ZnSeコア/シェル型ナノドットを捕捉している例示的なシリカ/PS小球体のスペクトルであって、表1のエントリー7に対応する直径4.3nmのInAs/ZnSeナノ結晶についての1100nm(Dを指す)から、表1のエントリー8に対応する直径が6.3nmのInAs/ZnSeナノ結晶についての1450nm(Eを指す)までの近IR範囲にわたるスペクトルも、図7に示す。
【0349】
加えて、近赤外領域で蛍光を生じさせるInAs系ナノ結晶を複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体内に捕捉した(データは示さない)。
【0350】
図7に提示した観察は、異なる化学組成および形状を有する様々なナノ結晶に、本明細書に提示する捕捉方法を適用できることを、明瞭に実証している。図7からわかるように、この捕捉は、蛍光量子収量(QY)の増大につながる。これは、このプロセス中に水にナノ結晶を暴露することで生じた表面トラップの効果に起因し得る。
【0351】
最後に、前もって製造した疎水性ナノ結晶をミクロンおよびサブミクロンシリカ/ポリスチレン球体に捕捉するための一般的な方法を上に例示した。詳細には、本複合小球体に光学的機能性を付与する半導電性ナノ結晶の捕捉と、捕捉された半導体ナノ結晶のサイズ、組成および形状に左右される非常に広いスペクトルカバー範囲を実証した。この方法論は、球形および/またはロッド形を有する様々なナノ結晶に適用することができる。これらの複合小球体のサイズは、高レベルの単分散性で約100nmから数ミクロンまでチューニングすることができる。この方法は、本明細書において金について実証しているように、金属のナノ結晶の捕捉に明らかに拡大することができる。本明細書に提示する方法論の使用が、半導体、金属、磁性または酸化物ナノ結晶のいずれかの疎水性ナノ結晶タイプの捕捉に限定されることは、明らかにない。この方法は、近年立証されたナノ結晶の制御の有意な進歩を直接利用している。
【0352】
実施例2
放射性ナノ結晶を捕捉しているゾル−ゲル/ポリマー複合小球体の製造
上で説明した手順に従って、放射性ナノ結晶(例えば、放射性金)の封入を行う。
【0353】
198Auの放射性ナノ結晶は、Cao Y.W.およびBanin,U.がJ.Am.Chem.Soc.,2000,122,9692に記載しているとおり、製造する。
【0354】
代表的な例では、エタノール(12.5mL)、水酸化アンモニウム(2.5mL、25容量%)およびTween 80(0.5mL)を100mLフラスコの中で混合して、親水性溶液を得る。
【0355】
同時に、トルエン(1.0mL)中の198Auの被覆(疎水性)ナノ結晶(40mg)と、TEOS(1.0mL)とポリスチレン(55mg)との溶液を別のバイアルの中で製造して、疎水性溶液を得る。
【0356】
その疎水性溶液をその親水性溶液に一度に添加し、得られた混合物を、一晩、激しく攪拌した。この時間の間、pH11を維持する。
【0357】
その後、それらの形成された球体を5分間、遠心分離に付し、その後、減圧下で溶媒を除去する。
【0358】
この方法により、放射性シリカ/PS小球体を獲得する。
【0359】
同様の方法を用いて、111InAx/ZnSeナノ結晶および放射性同位元素を含有する他のナノ結晶を捕捉している放射性複合小球体を得る。
【0360】
実施例3
機能性薄層の製造
上の表1のエントリー4に対応する11nm/3nm CdSe/ZnS ナノロッドを捕捉している複合シリカ/ポリスチレン小球体を使用して、ガラス棒およびガラス板を被覆する機能性薄層を製造する。
【0361】
ディップコーティング法によるガラス棒上の機能性薄層の製造
丸い断面を有するガラス棒(長さ5cm)をディップコーティング装置に配置し、5mLの複合小球体サンプルをその円筒レザバーに入れる。
【0362】
その装置を始動させてガラス棒ホルダーを、その棒の3cmがそのサンプルに浸漬するまで、1分に1cmの速度で下降させ、その後、その棒がもはやそのサンプルに浸漬していなくなるまで、1分に0.5cmの速度でそのホルダーを上昇させるように設定する。その棒を放置して室温で2時間、乾燥させる。
【0363】
スピンコーティング法によるガラス板上の機能性薄層の製造:
丸いガラス板(直径4cm、厚さ0.5cm)をスピンコーティング装置に配置し、0.05mLの複合小球体サンプルをそのガラスプレートの上面の中心に置く。
【0364】
その装置を2000〜3000rpmで10分間回転するように設定し、その後、そのプレートを放置して室温で1時間、乾燥させる。
【0365】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0366】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0367】
【図1】ゾル−ゲルシリカ/ポリスチレン小球体に捕捉されたCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッド(15nm/3.8nmのロッド形状を有するナノ結晶)について得られた分析結果を提示する図であり、ナノ結晶のTEM像(図1a)、暗色スポットとして見える、ナノ結晶を捕捉している直径約100nmの単一小球体のTEM像(図1b)、Si、Cd、Se、ZnおよびSが十分に顕著なピークで検出されている、小球体/ナノ結晶複合体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(EDS)(図1c)ならびに直径約500〜600nmの3つのゾル−ゲル/ポリスチレン/ナノ結晶複合球体の高解像度走査型電子顕微鏡写真(図1d)を示す。
【図2】金属ナノ結晶を捕捉する能力を実証する、ケイ素、鉛およびセレンについてのピークが顕著である、直径約10nmのPbSeナノ結晶を捕捉している直径約0.5μmの複合小球体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(図2a)、ならびにケイ素および金が顕著である、直径約6nmのAuナノ結晶を捕捉している直径約0.75μmの複合小球体のエネルギー分散型X線分析スペクトル(図2b)を提示する図である。
【図3】CdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッド(15nm/3.8nmのロッド形状を有するナノ結晶)を捕捉している、例示的な複合小球体のTEM像を提示する図であり、サンプルを超音波処理にかける前の区別不能な粒子の塊(図3a)、超音波処理にかけた後のよく区別できる球体(図3b)、炭素被覆TEMグリッド上で形成する小球体の凝集体(図3c)および炭素−ホルムバール被覆TEMグリッド上で得られたよく離隔した小球体(図3d)を示す。
【図4】様々な製造条件での最終的な小球体のサイズに対する制御を実証する、24.5nm/4.9nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉している直径0.25μmの複合小球体のTEM像(図4a)、直径3.5nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノドッドを捕捉している直径0.5μmの複合小球体のTEM像(図4b)、直径6nmのCdSeナノドッドを捕捉している直径0.78μmの複合小球体のTEM像(図4c)および11nm/3nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノロッドを捕捉している直径1μmの複合小球体のTEM像(図4d)を提示する図である。
【図5】発光CdSe/ZnSコア/シェル型半導電性ナノ結晶を捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体で作ったUV照射フィルムのカラー画像を提示する図であり、この場合、緑色発光は、11nm/3nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものであり(図5a)、黄色発光は、3.6nm CdSe/ZnSナノドッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものであり(図5b)、および赤色発光は、25nm/4.5nm CdSe/ZnSナノロッドを捕捉している複合ゾル−ゲル/ポリスチレン小球体のものである(図5c)。
【図6】直径3.8nmのCdSe/ZnSコア/シェル型ナノドッドを捕捉している直径約500nmの3つの例示的な複合小球体から異なる組み込み時間で得られた走査型蛍光顕微鏡像およびフォトルミネッセンススペクトルを提示する図であり、これらの小球体の遠視野光学図(図6a)、これらの小球体の二次元(図6b)および三次元(図6c)フォトルミネッセンス分布マップ、ならびにこれらの3つの小球体について観察された対応するフォトルミネッセンス強度スペクトル(図6d)を示す。
【図7】サイズが11nm/3nmである捕捉されたコア/シェル型ナノロッドに関する556nmでのピーク(Aを指す)、直径が3.8nmであるコア/シェル型ナノドッドに関する586nmでのピーク(Bを指す)、サイズが25nm/4nmであるコア/シェル型ナノロッドに関する605nmでのピーク(Cを指す)を示す、CdSe/ZnS ナノ結晶を捕捉している3つの例示的な複合小球体のフォトルミネッセンススペクトル;ならびに直径が4.3nmであるコア/シェル型ナノドッドに関する1100nmでのピーク(Dを指す)、および直径が6.3nmであるコア/シェル型ナノロッドに関する1450nmでのピーク(Eを指す)を示す、InAs/ZnSeコア/シェル ナノドットを捕捉している2つの例示的な複合小球体のフォトルミネッセンススペクトルを提示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球状複合体を含む組成物であって、前記球状複合体の各々が、少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーを含み、更に、前記球状複合体の少なくとも1つが、その中に捕捉された少なくとも1つのナノ粒子を含む、組成物。
【請求項2】
前記球状複合体の少なくとも1つは、それに取り付けられている少なくとも1つの機能性付与基を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記機能性付与基は、化学部分および生物活性部分から成る群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物および前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、互いに絡み合っている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記球状複合体の平均サイズは、直径で約0.01μmから約100μmの範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記球状複合体の平均サイズは、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記球状複合体の少なくとも60%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記球状複合体の少なくとも90%は、直径で約0.01μmから約10μmの範囲である平均サイズを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記球状複合体は、互いに離散している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、SiO、TiO、ZrO、Al、ZnO、SnO、MnO、これらの有機修飾誘導体、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、シラザンモノマー、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、Pは、非重合性置換基であり、mは、0から6の整数である)のモノマー、これらの部分加水分解および部分縮合ポリマー、ならびにそれらの任意の混合物から成る群より選択されるゾル−ゲル前駆体から製造される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの金属酸化物は、シリカである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシラン、ポリジエン、ポリラクトン(ラクチド)、これらのコポリマー、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリスチレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、発色性ナノ粒子、半導電性ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ナノ粒子、酸化物ナノ粒子、蛍光ナノ粒子、発光ナノ粒子、リン光ナノ粒子、光学活性ナノ粒子および放射性ナノ粒子から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、疎水性ナノ粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、CdSeナノ結晶、CdSe/ZnSナノ結晶、InAsナノ結晶、InAs/ZnSeナノ結晶、Auナノ結晶およびPbSeナノ結晶から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
球状複合体中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:10から約5:1の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
球状複合体中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:2から約3:1の範囲である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの金属酸化物または半金属酸化物と前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの重量比は、約2:1から約50:1の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記球状複合体中の前記少なくとも1つの金属酸化物または半金属酸化物と前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約5:1から約20:1の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記球状複合体は、前記少なくとも1つのナノ粒子の機能特性を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記機能特性は、発色活性、光学活性、分光活性、半導電性、光電的反応性、磁性および放射活性から成る群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体、少なくとも1つの疎水性ポリマーおよび少なくとも1つのナノ粒子を含む疎水性溶液を提供すること;および
前記疎水性溶液を親水性溶液と混合し、それによって複数の球状複合体を含有する混合物を得ること
を含む、複数の球状複合体の製造プロセスであって、各球状複合体は、少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーを含み、更に、前記球状複合体の少なくとも1つは、その中に捕捉された少なくとも1つのナノ粒子を含む、プロセス。
【請求項25】
前記球状複合体が、それに取り付けられた少なくとも1つの機能性付与基を更に含み、前記ゾル−ゲル前駆体および前記疎水性ポリマーの少なくとも1つが前記機能性付与基を含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記球状複合体がそれに取り付けられた少なくとも1つの機能性付与基を更に含む、請求項24に記載のプロセスにおいて、前記球状複合体を機能性付与部分と反応させ、それによって前記機能性付与基が取り付けられた前記球状複合体を得ることを更に含む、プロセス。
【請求項27】
前記疎水性溶液は、疎水性溶媒を更に含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項28】
前記親水性溶液は、親水性溶媒を更に含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項29】
前記親水性溶液は、触媒を更に含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記親水性溶液は、界面活性剤を更に含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
複合小球体を前記混合物から分離することを更に含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:10から約5:1の範囲である、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つの疎水性ポリマーと前記少なくとも1つのナノ粒子の重量比は、約1:2から約3:1の範囲である、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの濃度は、約10mgから約100mgの範囲である、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つの疎水性ポリマーの濃度は、約30mgから約70mgの範囲である、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記疎水性溶液中の前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体1ml当たりの前記少なくとも1つのナノ粒子の濃度は、約10mgから約50mgの範囲である、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項37】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、発色性ナノ粒子、半導電性ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ナノ粒子、酸化物ナノ粒子、蛍光ナノ粒子、発光ナノ粒子、リン光ナノ粒子、光学活性ナノ粒子および放射性ナノ粒子から成る群より選択される、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、疎水性ナノ粒子である、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシラン、ポリジエン、ポリラクトン(ラクチド)、これらのコポリマー、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項40】
前記疎水性ポリマーは、ポリスチレンである、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項41】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、シラザンモノマー、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、Pは、非重合性置換基であり、mは、0から6の整数である)のモノマー、これらの部分加水分解および部分縮合ポリマー、ならびにそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体は、シリコーンアルコキシドである、請求項24〜26のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項43】
少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物および少なくとも1つの疎水性ポリマーを含む捕捉マトリックスを含み、少なくとも1つのナノ粒子が前記マトリックス内に捕捉されている、球状複合体。
【請求項44】
更に少なくとも1つの機能性付与基を取り付けられて含む、請求項43に記載の球状複合体。
【請求項45】
前記少なくとも1つの機能性付与基は、化学部分および生物活性部分から成る群より選択される、請求項44に記載の球状複合体。
【請求項46】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物および前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、互いに絡み合っている、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項47】
直径で約0.01μmから約100μmの範囲であるサイズを有する、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項48】
直径で約0.01μmから約10μmの範囲であるサイズを有する、請求項47に記載の球状複合体。
【請求項49】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、SiO、TiO、ZrO、Al、ZnO、SnO、MnO、これらの有機修飾誘導体、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項50】
前記少なくとも1つのゾル−ゲル金属酸化物または半金属酸化物は、金属アルコキシドモノマー、半金属アルコキシドモノマー、金属エステルモノマー、半金属エステルモノマー、シラザンモノマー、式M(R)(P)(式中、Mは、金属または半金属元素であり、Rは、加水分解性置換基であり、nは、2から6の整数であり、Pは、非重合性置換基であり、mは、0から6の整数である)のモノマー、これらの部分加水分解および部分縮合ポリマー、ならびにそれらの任意の混合物から成る群より選択されるゾル−ゲル前駆体から製造される、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項51】
前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリオレフィン、芳香族ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシラン、ポリジエン、ポリラクトン(ラクチド)、これらのコポリマー、これらの機能化誘導体およびそれらの任意の混合物から成る群より選択される、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項52】
前記少なくとも1つの疎水性ポリマーは、ポリスチレンである、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項53】
前記少なくとも1つのナノ粒子は、発色性ナノ粒子、半導電性ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ナノ粒子、酸化物ナノ粒子、蛍光ナノ粒子、発光ナノ粒子、リン光ナノ粒子、光学活性ナノ粒子および放射性ナノ粒子から成る群より選択される、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項54】
前記少なくとも1つのナノ粒子の機能特性を示す、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項55】
前記機能特性は、発色活性、光学活性、分光活性、半導電性、光電的反応性、磁性および放射活性から成る群より選択される、請求項43〜45のいずれか1項に記載の球状複合体。
【請求項56】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含む機能性薄層。
【請求項57】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含む製品。
【請求項58】
親和性標識物質、アレイセンサー、バーコードタグおよびラベル、発色/ラジオ/蛍光イムノアッセイ剤、薬物送達剤、光増幅器、電子ペーパー、充填剤および潤滑剤、発光ダイオード、固体状態照明構造、光学記憶装置、動的ホログラフィー装置、光情報処理システム、光スイッチ装置、固体状態レーザー、フローサイトメトリー剤、遺伝子マッピング剤、撮像プローブ、免疫組織化学的染色剤、スクリーニングプローブ、トレーシングプローブ、位置検出プローブおよび/またはハイブリダイゼーションプローブ、インク組成物、磁気および/または親和性クロマト剤、光空洞共振器、フォトニックバンドギャップ構造、磁性液体、光学フィルターおよびペイントから成る群から選択される、請求項57に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−533214(P2008−533214A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545109(P2007−545109)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001319
【国際公開番号】WO2006/061835
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502275425)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (10)
【Fターム(参考)】