説明

ナビゲーションシステム、経路探索サーバおよびプログラム

【課題】 渋滞を考慮して過去の統計に基づく道路ネットワークデータを用いて経路探索する際に、道路ネットワークデータの切り換えなしに、経路探索を行うことができる車載用ナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】 ナビゲーションシステム10は経路探索サーバ20とナビゲーション端末30とからなる。経路探索のための道路ネットワークデータは過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータからなり、経路探索サーバ20は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、ネットワークデータ選択手段23が推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する道路ネットワークデータを選択して経路探索に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のナビゲーションシステム、経路探索サーバおよびプログラムに関するものであり、特に、渋滞を考慮して過去の統計に基づく道路ネットワークデータ(リンクコストデータ)を用いて経路探索する車載用のナビゲーションシステムにおいて、道路ネットワークデータの切り換えなしに、経路探索を行うことができるようにしたナビゲーションシステム、経路探索サーバおよびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車の運転者に出発地から目的地までの最適な経路を案内する車載用のナビゲーション装置が提供されている。従来のナビゲーション装置は、地図データを記録したCD−ROM又はICカード等の地図データ記憶装置と、ディスプレイ装置と、ジャイロ、GPS(Global Positioning System )及び車速センサ等の車両の現在位置及び現在方位を検出する車両移動検出装置等を有し、車両の現在位置を含む地図データを地図データ記憶装置から読み出し、該地図データに基づいて車両位置の周囲の地図画像をディスプレイ装置上に描画すると共に、車両位置マーク(ロケーション)をディスプレイ画面に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させたりして、車両が現在どこを走行しているのかを一目で判るようにしている。
【0003】
通常、このような車載用ナビゲーション装置には、運転者が所望の目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるようにした経路案内機能が搭載されている。この経路誘導機能によれば、地図データを用いて出発地から目的地までを結ぶ最もコストが小さい経路をダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って経路探索し、その探索した経路を案内経路として記憶しておき、走行中、地図画像上に案内経路を他の道路とは色を変えて太く描画して画面表示したり、車両が案内経路上の進路を変更すべき交差点に一定距離内に近づいたときに、地図画像上の進路を変更すべき交差点に進路を示す矢印を描画して画面表示したりすることで目的地までの最適な経路を運転者が簡単に把握できるようにしている。
【0004】
上記の車載用のナビゲーション装置は、経路探索機能や地図データを持つスタンドアロン型のナビゲーション装置であるが、このようなナビゲーション装置はナビゲーションに必要な全ての機能を備えている必要があり、装置が大型化し価格も高いものとなっていた。近年の通信、情報処理技術の発展により車載用のナビゲーション装置にネットワークを介した通信機能を付加し経路探索サーバとデータ通信して案内経路データや地図データを取得するいわゆる通信型のナビゲーションシステムも普及してきている。更には、歩行者用のナビゲーションシステムとして携帯電話をナビゲーション端末としたシステムも実用化されている。
【0005】
ところで、車載用のナビゲーションシステムで経路探索に使用されるリンクコストはそのリンクを通過する標準的な速度に基づいて算出した所要時間を採用するのが一般的である。このようなリンクコストを用いた経路探索においては、実際に自動車で走行している時に遭遇する渋滞の状況が経路探索に反映されることはない。従って、運転者は別途ラジオ等により交通情報センターからアナウンスされる道路情報、渋滞情報を聴取してナビゲーションシステムから案内された案内経路から別の経路に走行経路を変更し、あるいは、到着予定時刻の遅れを把握したりする必要があった。
【0006】
しかしながら、車載用のナビゲーションシステムにおいても、前述のような通信型のナビゲーションシステムが普及しつつあり、また、道路交通情報通信システム(VICS)においては、例えば5分間隔でVICSリンクの所要時間コストが測定されているのでこれを、道路別、時間帯別、曜日別などに統計処理して実際のリンクコストを道路ネットワークデータとして蓄積し、経路探索サーバにこれらの過去の実績データに基づくネットワークデータを蓄積して経路探索に利用することができる環境が整ってきている。
【0007】
このような背景から交通渋滞を加味したナビゲーションを行う試みもなされており、例えば、下記の特許文献1(特開平10−19593号公報)に開示された車載用ナビゲーション装置が知られている。この特許文献1に開示された車載用ナビゲーション装置は、図5に示すように、マイクロコンピュータにより構成されたナビゲーション装置本体1は、液晶モニタ(ディスプレイ装置)2、地図データを記憶したCD−ROM3、車両方位、車両速度等を衛星航法により検出するGPS受信器4、ビーコン受信器5、FM多重受信ユニット6、車両の回転角度を検出するジャイロ7、車速パルス検出部8、交通情報データ用メモリ9を備えている。
【0008】
ナビゲーション装置本体1は、液晶モニタ2に車両の現在位置の近傍の地図を表示し、出発地から目的地までの誘導経路や車両位置マーク及びその他の案内情報を表示する。また、CD−ROM3には、縮尺別の道路レイヤ、背景レイヤ、文字・記号レイヤなどから構成された地図データが記憶されている。ビーコン受信器5、FM多重受信ユニット6は、交通情報を受信する受信器であり、ビーコン受信器に比較的狭いエリアの交通情報を、FM放送に多重化された比較的広いエリアに関する交通情報を受信する。受信した交通情報は交通情報データ用メモリ9に記憶され、過去の交通情報データとなる。このデータは、例えば、過去4週間分のリンクコストの平均値が10分毎に分けて記憶されている。
【0009】
そしてナビゲーション装置本体1は、CD−ROM3に格納されている地図データや、ビーコン受信器5又はFM多重受信ユニット6を介して取得した交通情報を基に、ユーザが指定する出発地から目的地までの最もコストが小さい経路を探索して案内経路とし、CD−ROM3に格納されている地図データを用いてモニタ2に車両の現在位置近傍の地図画像を表示するとともに、車両位置マーク及び誘導経路を地図画像に合わせて表示し、更に車両の移動に合わせて各種案内情報をユーザに提供する。
【0010】
経路探索に際して、ナビゲーション装置本体1は、ビーコン受信器5又はFM多重受信ユニット6を介して受信した最新の交通情報を基に目的地までの所要時間を計算し、例えば1時間以下の場合は最新の交通情報を使用して誘導経路を探索し、1時間を超える場合は、1時間を超える分の案内経路について、交通情報データ用メモリ9に記憶しているデータを使用して誘導経路を探索する。すなわち、このナビゲーション装置は、最新の交通情報に基づくリンクコストのデータベースを用いて探索した案内経路の所要時間を算出し、時間が1時間を超える経路探索には過去のリンクコストのデータベースに切り換え、同時間におけるリンクコストを使用して案内経路を求めるようにして渋滞を考慮した経路案内を行うように構成している。
【0011】
また、下記の特許文献2(特開平11−325937号公報)には、位置検出手段と、地図、道路データが格納された記憶再生手段と、渋滞情報取得手段とを備えた車載用ナビゲータにおいて、渋滞状況の変化を考慮したルート探索を行って、より精度の高いルート探索結果を得ることができるようにした車載用ナビゲータが開示されている。この車載用ナビゲータは、渋滞情報取得手段で取得された渋滞情報に基づいて時間軸に対して道路コストを予測する関数(予想道路コストを時間の関数で表現したもの)を求め、この関数と地図、道路データとに基づいて次のようにルート探索を行う。すなわち、出発地点から目標地点までの間の複数の未確定地点について、前記複数の未確定地点のうち、出発地点からの前記関数に基づく経路長が最小である地点を選択して確定地点に設定する確定処理と、前記確定処理で設定された第1の確定地点を経由した場合の、該確定地点に接続された第1の未確定地点から出発地点までの第1の経路長に対して行う経路長更新処理とを、目標地点が前記確定地点に設定されるまで繰り返して実行するようにしたものである。
【0012】
【特許文献1】特開平10−19593号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−325937号公報(図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ナビゲーションシステムにおける渋滞を考慮した経路探索の難しい点は、出発地から経路探索を進めるうちに、渋滞の状態が変化する点にある。例えば、過去の統計に基づく道路ネットワークデータ(リンクコストデータ)を用いたとしても、そのネットワークデータ自体はある特定の時刻におけるネットワークデータであり、目的地まで経路探索が進んだ時にナビゲーション装置が位置するであろう道路位置が渋滞の発生時刻になっていることもある。逆に、渋滞中に出発したが、そのうちに渋滞が解消しており、出発時点を同じくする過去の渋滞状態におけるネットワークを用いて経路探索すると、到着予測が実際の予定時刻に対して遅くなりすぎる案内データを探索してしまうことになるといった問題点があった。
【0014】
このような問題点に対して、上記特許文献1に開示された車載用ナビゲーション装置は、所定時間経路探索が進んだ(案内経路のリンクコストが1時間になった)ところで、過去のリンクネットワークのうち、同じ時間帯の過去のリンクネットワークデータにデータベースを切り換えてそれ以降の経路探索を行うものである。しかしながら、特許文献1の車載用ナビゲーション装置においては、案内経路のリンクコストが1時間経過したところでデータベースを切り換えており、1時間経過した時にはその地点の渋滞が急激に進んでいるということもあり得る。これを回避するためには、データベース切り換えの間隔を短くすれば良いのであるが、それでは探索中に頻繁に探索のためのネットワークデータの入れ換えを行わなければならず、経路探索サーバの処理負荷が大きくなってしまうという問題点がある。
【0015】
また、上記特許文献2に開示された車載用ナビゲータは、経路探索サーバが関数演算するための処理負荷が増大してしまう。すなわち、経路探索サーバが、例えば、ダイクストラ法で経路探索を行う場合、ダイクストラ法で拡散していくリンクの1本毎に時間の関数でリンクコストを演算して求めていかなければならず、経路探索サーバの処理負荷が大きくなってしまうという問題点がある。
【0016】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、過去の時間帯毎の渋滞状況を加味したネットワークデータを蓄積したデータベースから特定の時間帯における1つのネットワークデータを選択して経路探索を行うよう構成し、出発地から目的地までの推定所要時間を基にその中間時間を前記特定の時間帯として選択すれば、渋滞状況の時間による変化の影響を受けにくい経路探索が可能で、従来の経路探索時間より処理が遅くなることがなく、経路探索サーバの処理負荷を増大させることもないという点に着目して本発明を完成するに至ったものである。
【0017】
すなわち、本発明は、前記の問題点を解決することを課題とし、渋滞を考慮して過去の統計に基づく道路ネットワークデータ(リンクコストデータ)を用いて経路探索する車載用のナビゲーションシステムにおいて、道路ネットワークデータの切り換えなしに、経路探索を行うことができるようにしたナビゲーションシステム、経路探索サーバおよびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
経路探索サーバとナビゲーション端末がネットワークを介して通信するナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーション端末は、少なくとも出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備え、
前記経路探索サーバは、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備え、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択し、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索することを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記経路探索サーバは、更に、ネットワークデータ統計種別検索手段を備え、
前記道路ネットワークデータは、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなり、
前記ネットワークデータ統計種別検索手段は、経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定することを特徴とする。
【0020】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、前記統計種別が、日付けおよび曜日と天候の組み合わせによるものであることを特徴とする。
【0021】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項3にかかる発明において、前記統計種別は、更に、特定の特異日または特異日群を独立した統計種別としたことを特徴とする。
【0022】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項1または2にかかる発明において、前記概算距離は、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離であることを特徴とする。
【0023】
また、本願の請求項6にかかる発明は、
出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、
前記経路探索サーバは、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備え、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択し、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索することを特徴とする。
【0024】
また、本願の請求項7にかかる発明は、請求項6にかかる発明において、前記経路探索サーバは、更に、ネットワークデータ統計種別検索手段を備え、
前記道路ネットワークデータは、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなり、
前記ネットワークデータ統計種別検索手段は、経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定することを特徴とする。
【0025】
また、本願の請求項8にかかる発明は、請求項6にかかる発明において、前記統計種別は、日付けおよび曜日と天候の組み合わせによるものであることを特徴とする。
【0026】
また、本願の請求項9にかかる発明は、請求項8にかかる発明において、前記統計種別は、更に、特定の特異日または特異日群を独立した統計種別としたことを特徴とする。
【0027】
また、本願の請求項10にかかる発明は、請求項6または7にかかる発明において、前記概算距離は、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離であることを特徴とする。
【0028】
また、本願の請求項11にかかる発明は、出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備えた経路探索サーバを構成するコンピュータに、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出する推定時間算出手段としての処理と、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択するネットワークデータ選択手段としての処理と、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索する経路探索手段としての処理と、を実行させることを特徴とするプログラムである。
【0029】
また、本願の請求項12にかかる発明は、出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなる道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、ネットワークデータ統計種別検索手段と、を備えた経路探索サーバを構成するコンピュータに、
経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定するネットワークデータ統計種別検索手段としての処理と、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出する推定時間算出手段としての処理と、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択するネットワークデータ選択手段としての処理と、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索する経路探索手段としての処理と、を実行させることを特徴とするプログラムである。
【0030】
また、本願の請求項13にかかる発明は、請求項11または12にかかる発明において、前記プログラムは更に前記コンピュータに、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離を出発地から目的地までの概算距離とする前記推定時間算出手段としての処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本願の請求項1にかかる発明においては、経路探索サーバは、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段とを備えている。そして、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、推定所要時間の所定割合いの時間を出発時刻に加えた時刻を算出し、または、推定所要時間の所定割合いの時間を到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する道路ネットワークデータを選択する。経路探索手段は、ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索する。
ネットワークデータの切り換えを必要とせず、経路探索サーバの負荷を増加させることがない。また、推定所要時間の長短により選択する時刻が変化し、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用することができ、実際の走行時間帯に近いネットワークデータで経路探索することになり、最適な案内経路を探索できる確率が高いナビゲーションシステムを提供することができるようになる。
【0032】
また、本願の請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、経路探索サーバは、更に、ネットワークデータ統計種別検索手段を備え、道路ネットワークデータは、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなる。そして、ネットワークデータ統計種別検索手段は、経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定する。
従って、過去の道路ネットワークデータの中から、経路探索時点に最も近似する道路ネットワークデータを経路探索の道路ネットワークデータとして利用することにより渋滞状況を考慮した経路探索を行えるナビゲーションシステムを提供することができるようになる。
【0033】
また、請求項3ないし4にかかる発明においては、統計種別は、日付けおよび曜日と天候の組み合わせによるものであり、また、特定の特異日または特異日群を独立した統計種別とした。従って、過去の渋滞状況を反映した経路探索を可能とするナビゲーションシステムを提供することができるようになる。
【0034】
また、本願の請求項5にかかる発明においては、出発地と目的地との概算距離を出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離とするため、推定所要時間を容易に算出することができるようになる。
【0035】
また、本願の請求項6ないし10にかかる発明においては、請求項1ないし5にかかるナビゲーションシステムを構成する経路探索サーバを提供することができるようになる。
【0036】
また、本願の請求項11ないし12にかかる発明においては、請求項5ないし6にかかる経路探索サーバを実現するためのプログラムを提供することができるようになる。また、本願の請求項13にかかる発明においては、請求項10にかかる経路探索サーバを実現するためのプログラムを提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。図2は、本発明において使用される道路ネットワークデータの概念を示す模式図である。図3は、本発明の実施例におけるナビゲーションシステムの動作手順を示すフローチャートであり、図4は、図3のフローチャートにおける道路ネットワークデータの統計種別を決定するためのサブルーチンを示すフローチャートである。
【実施例】
【0038】
本発明の実施例にかかる車載用のナビゲーションシステム10は、図1に示すようにネットワークを介して通信する経路探索サーバ20とナビゲーション端末30とから構成されている。ナビゲーション端末30は出発地と目的地を含む経路探索要求を経路探索サーバ20に送り、経路探索サーバ20は、ナビゲーション端末30から受信した経路探索要求に基づいて、道路ネットワークデータを参照して最適な経路を探索し、探索の結果により得た最適経路を案内経路データとしてナビゲーション端末30に配信する。
【0039】
道路ネットワークデータ(以下、単にネットワークデータという)は、道路の端点、分岐点、屈曲点などをノードとし、各ノードを結ぶ線(道路)リンクとし、各リンクの距離やリンクを走行する場合の所要時間をリンクコストとして蓄積したデータである。道路は一般的には上りと下りがあるため、各リンクは方向を持った有向リンクであり、自動車(ナビゲーション端末30)の走行方向に沿った有向リンクを経路探索に使用して道路の上り、下りを区別した探索が可能である。経路探索においては、出発地からノード、リンクを順次たどり目的地に到達するまでのリンクコストの累積が最小となる経路を求めることによって最適経路を求める。この探索方法としては、例えば、周知のダイクストラ法と呼ばれる手法が用いられるのが一般的である。
【0040】
ナビゲーション端末30は、GPS処理手段31、通信手段32、操作/表示手段33、経路探索要求処理手段34、記憶手段35から構成されている。GPS処理手段31はGPS衛星信号を受信、処理してナビゲーション端末30の現在位置(緯度・経度)を測位する。車載用のナビゲーション端末の場合、図示していないが、山間部、トンネル内などGPS衛星信号を受信できない場所での測位を補完するため、車両に搭載された加速度センサや舵角センサなどの信号を受信して移動速度、移動方向を検出して位置を算出する手段を備えている場合もある。
【0041】
通信手段32は無線通信ユニットを含み、経路探索サーバ20と通信するためのものである。操作/表示手段33は、キー、ダイヤル、液晶表示装置等からなりナビゲーション端末30を操作するための入力、出発地、目的地などの入力、経路探索サーバ20から配信された案内経路、地図の表示に使用されるものである。経路探索要求処理手段34は、操作/表示手段33を使用して入力された出発地、目的地、あるいは、GPS処理手段31で測位したナビゲーション端末30の現在位置を出発地として、これらの情報に基づいて、経路探索サーバ20に送信する経路探索要求を作成するものである。
【0042】
記憶手段35は、経路探索サーバ20から配信された経路探索結果である案内経路データ、地図データなどを記憶するものであり、これらのデータは必要に応じて記憶手段35から読み出され、操作/表示手段33に表示される。一般的には、GPS処理手段31で測位したナビゲーション端末30の現在位置を含む一定の縮尺、一定の範囲の地図に、案内経路と、ナビゲーション端末30の現在位置を示すマークを重ね合わせて該現在位置マークが表示画面の中心になるように表示する。測位した位置情報には誤差が含まれるため、現在位置が案内経路からずれている場合には現在位置を案内経路上に補正するルートマッチング処理が行われる。また、経路探索サーバ20から配信される案内経路データに音声ガイド(例えば、「この先、300m交差点です。左折して下さい」などの音声メッセージ)のデータが付加されている場合は、スピーカを介して音声メッセージを再生出力して運転者をガイドする。
【0043】
一方、経路探索サーバ20は、主制御部21、推定時間算出手段22、ネットワークデータ選択手段23、経路探索手段24、案内経路データ作成手段25、通信手段26、ネットワークデータ統計種別検索手段27、ネットワークデータDB(データベース)28を備えている。主制御部21は、マイクロプロセッサを中心に構成され、一般的なコンピュータ装置と同様にRAM、ROMなどの記憶手段を備えており、これらの記憶手段に蓄積されたプログラムによって各部を制御する。通信手段26は、ナビゲーション端末3から経路探索要求を受信し、また、経路探索の結果である案内経路データをナビゲーション端末30に配信するための通信手段である。
【0044】
ネットワークデータDB28には、経路探索のための地図データ、ネットワークデータが蓄積されるものであるが、本実施例においては、道路交通情報通信システム(VICS)から収集した過去の統計に基づくネットワークデータが複数蓄積されており、経路探索手段24は、この複数のネットワークデータから1つのネットワークデータを参照して前述したダイクスラ法などの探索手法によって目的地までの最適経路を探索する。本実施例におけるネットワークデータの詳細、経路探索に用いる1つのネットワークデータの決定方法については後に詳細に説明する。
【0045】
案内経路データ作成手段25は、経路探索手段24が探索した最適な案内経路のデータを作成するものであり、ナビゲーション端末がたどるべきノードとリンク番号、および、リンクの方向、長さをベクトルデータで表現した案内経路データを作成するものである。この案内データ中に、ナビゲーション端末30に音声案内を提供すべきポイント(地点)、当該ポイントで再生すべき音声メッセージのパターン等のデータを付加することにより、交差点の手前などで所定の音声案内を提供することができる。
【0046】
ここで、本実施例におけるネットワークデータについて説明する。通常、道路ネットワークのリンクコストをリンクの長さ(距離)で表した場合、ネットワークデータは単一である。同様にリンクコストを所要時間で表す場合であっても、リンクの距離を自動車の平均速度(法定速度あるいは実際の走行時の平均値)で除して所要時間を定め、リンクコストとすればネットワークデータは単一である。通常のナビゲーションシステムはこのネットワークデータに基づいて経路探索を行う。しかしながら、本実施例においては、渋滞の状況を加味した経路探索を行うため、過去の実際の交通情報から統計処理して作成したネットワークデータを蓄積して経路探索に使用する。
【0047】
すなわち、本実施例においては、道路交通情報通信システム(VICS)が測定した道路交通データから後述の統計処理によって作成した複数のネットワークデータが蓄積されている。すなわち、上記VICSには、例えば5分間隔でVICSリンクの所要時間コストが測定されているので、これを用いて、曜日(平日/休日)、祝祭日、天候、や月末、五十日(ごとおび)、連休明け、年末年始、お盆等の特異日などの条件で統計処理して、各条件および時刻毎の統計種別を定めて道路ネットワークデータ(以下、前述の統計処理条件を統計種別ということとする)が作成されて、ネットワークデータDB28に蓄積してある。本実施例においてはこの統計処理条件を統計種別ということとする。
【0048】
図2は、このネットワークデータの概念を示す模式図である。図2にはネットワーク(NW)データ統計種別Aと統計種別Bの2つのネットワークデータの概念を代表的に示している。統計種別Aのネットワークデータは、例えば、特異日でない月曜日で天候が晴れの場合の時間毎のネットワークデータであり、統計種別Bのネットワークデータは、例えば、特異日である連休(休日祝祭日)で天候が晴れの場合の時間毎のネットワークデータである。ネットワークデータは先に述べたように道路の端点、交差点、屈曲点のノードNと、各ノードNを結ぶリンクL(ノードN、リンクLにはそれぞれユニークな識別番号が付されている)と、各リンクLのリンクコストとして当該各リンクの所要時間を蓄積したものである。ここでは、時刻毎、例えば、5分毎に、過去の実際の交通情報からその時刻における各リンクLの所要時間を蓄積したものである。従って、図2におけるDT1〜DTNのように統計種別Aのネットワークデータは、単一でなく、時刻別の複数のネットワークデータが蓄積され、同様に、統計種別Bのネットワークデータも同様に時刻別の複数のネットワークデータが蓄積される。図2においては、16:55から5分おきに17:50までの時刻別のネットワークデータが模式的に示されている。
【0049】
このように、本実施例におけるネットワークデータは、複数の統計種別毎のネットワークデータ群がネットワークデータDB28に蓄積されたものであり、経路探索サーバ20は、先ず、経路探索に使用するネットワークデータの統計種別を決定し、その後、決定した統計種別のネットワークデータのうち、どの時刻のネットワークデータを使用するかを決定する。これらの決定を行うために動作するのが、ネットワークデータ統計種別検索手段27、推定時間算出手段22、ネットワークデータ選択手段23である。
【0050】
先ず、経路探索サーバ20は、ナビゲーション端末30から経路探索要求があった場合、ネットワークデータ統計種別検索手段27は、カレンダー機能や特異日テーブル(図示せず)、当日の気象情報データから出発地から目的地までの天候状況等に基づいて、経路探索に使用するネットワークデータ種別を決定する。次に、推定時間算出手段22は出発地から目的地までの推定所要時間を算出する。この算出は、例えば、出発地から目的地までの直線距離を求めて、概略の道のりを直線距離の1.2倍ないし1.3倍と見積もる。これは、道路にはカーブなど存在するためである。
【0051】
この概略の道のりを平均移動速度、たとえば市街地なら20km/h、郊外なら40km/h、また直線距離が長い場合は途中に高速道路などを利用するので、平均速度を60km/hと見積もって、推定の所要時間(推定時間ということとする)を求める。例えば出発地と目的地が直線距離で30km離れていて郊外の場合には、
直線距離30km×1.3÷40km/h≒1時間
というように推定時間を算出する。
【0052】
次いで、ネットワークデータ選択手段23は、推定時間算出手段22で求めた推定時間(概略の所要時間)を1/2した時間を出発時刻に加え、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用するように選択する。例えば、上記のように推定時間が1時間であった場合、出発時刻を17:00とすれば、推定時間1時間を1/2した30分を出発時刻に加え、出発時刻から30分経過後のネットワークデータ、すなわち、17:30のネットワークデータを使用して経路探索を行うことになる。その結果、実際の走行時間帯に近いネットワークデータで経路探索することになり、最適な案内経路を探索できる確率が高くなる。なお、出発時刻はナビゲーション端末30において入力され、経路探索要求に出発時刻が含まれるようになされており、ナビゲーション端末30において出発時刻が入力されなかった場合には、現在時刻を出発時刻とするようにされている。
【0053】
これを、特許文献1に開示された車載用ナビゲーション装置と比較すると次のようになる。特許文献1に開示されたナビゲーション装置においては、出発時刻を17:00とすれば、先ず、17:00のネットワークデータを使用して経路探索を行い、経路探索が時間分進んだ時点で、その時刻のネットワークデータに経路探索用のデータを切り換え(入れ換え)て、以降の経路の経路探索を行うようにしている。従って、経路探索の途中でネットワークデータの切り換え処理が必要になっていた。また、出発地から目的地までの所要時間にかかわらず経路探索が1時間分経過した時点でネットワークデータを切り換えるため、目的地まで5時間かかるような道のりであった場合にも1時間経過後のネットワークデータを経路探索に使用することになり、過去の渋滞状況を反映したネットワークデータをもちいているにもかかわらず、渋滞状況変化の影響を受け易い経路探索となり最適経路を探索できる確率が低下してしまう。
【0054】
本実施例によれば、過去の道路ネットワークデータ(リンクコスト)を統計処理する条件を統計種別として設定し、かつ、統計種別毎に時刻別道路ネットワークデータを蓄積し、統計種別を選択することによって経路探索当日に最も近似する道路ネットワークデータを経路探索の道路ネットワークデータとして利用することにより、実際に近い渋滞状況を考慮した経路探索を行えるナビゲーションシステムを提供することができるようになる。
【0055】
また、時刻別の道路ネットワークデータのうち、出発地から目的地までの推定所要時間の1/2経過後のネットワークデータを1つ選択して経路探索するため、ネットワークデータの切り換えを必要とせず、経路探索サーバの負荷を増加させることがない。また、推定所要時間の長短により選択する時刻が変化し、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用することができ、実際の走行時間帯に近いネットワークデータで経路探索することになり、最適な案内経路を探索できる確率が高くなる。
【0056】
次に、本実施例にかかるナビゲーションシステム10における処理の手順を説明する。図3は、図1に示すナビゲーションシステム10における処理手順を示すフローチャートであり、図4は、図3のフローチャートにおいてネットワークデータの統計種別を決定するためのサブルーチンを示すフローチャートである。先ず、ステップS10において、ナビゲーション端末30が出発地、目的地を含む経路探索要求を作成して経路探索サーバ20に経路探索要求を送信し、経路探索サーバ20が経路探索要求を受信する。
【0057】
次に、経路探索サーバ20は、ステップS11において、ネットワークデータ統計種別検索手段27が当日の月日、天候状況等から経路探索に使用するネットワークデータの統計種別を決定する。すなわち、図4のサブルーチンにおいて、ネットワークデータ統計種別検索手段27は、カレンダー機能を用いてステップS20で当日の月日を特定する。次いで、ステップS21で当日の曜日を特定し、祝祭日、休日の識別を行う。次に、ステップS22で五十日(ごとおび)、連休明け、年末年始、お盆等などの特異日にあたるか否かを特定する。この特異日はネットワークデータの統計処理において採用した特異日の一覧データを作成しておくことにより容易に特定できる。
【0058】
そして、ステップS23において当日の天候(出発地から目的地周辺の天候)を特定する。天候の特定は、経路探索サーバ20が各地の気象情報を提供するサーバから気象情報を取得しておくことで容易に特定することができる。次いでネットワークデータ統計種別検索手段27は、ステップS24でステップS20〜23で特定した情報に基づいて、該当する統計種別(図2における統計種別Aや統計種別B、他の統計種別)を決定する。例えば、当日が6月10日の平日で天候が晴れである場合、該当する統計種別Xのネットワークデータを決定して処理を終了し、図3のステップS12の処理に戻る。
【0059】
図3のステップS12の処理において、推定時間算出部22が前述したように、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する。この算出は、例えば、先に述べたように出発地から目的地までの直線距離を求めて、概略の道のりを直線距離の1.2倍ないし1.3倍と見積もる。この概略の道のりを平均移動速度、たとえば市街地なら20km/h、郊外なら40km/h、また直線距離が長い場合は途中に高速道路などを利用するので、平均移動速度を60km/hと見積もって、推定の所要時間(推定時間ということとする)を求める。
【0060】
次いで、ステップS13でネットワークデータ選択手段23は、前のステップS12で算出した推定時間(概略の所要時間)を1/2した時間を出発時刻に加え、出発時刻からからの経過時刻とし、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用するように選択する。前述した例のように、推定所要時間が1時間であった場合、出発時刻を17:00とすれば、推定時間1時間を1/2した30分経過後のネットワークデータ、すなわち、17:30のネットワークデータを選択する。
【0061】
ステップS14で、経路探索手段24は、上記選択されたネットワークデータ(前述の例では、17:30のネットワークデータ)を経路探索用のネットワークデータとして経路探索を行い、最適経路を探索する。そして、探索した最適経路を案内経路として案内経路データ作成手段25は、ステップS15で案内経路データを作成する。この際、案内経路の各ノードへの到達時刻等は、出発時刻からの経過時刻としてデータを作成する。そして、ステップS16で案内経路データをナビゲーション端末30に通信手段26を介して配信する。
【0062】
経路探索サーバ20から案内経路データの配信を受けたナビゲーション端末30は、先に述べたように案内経路データを記憶手段35に記憶し、必要に応じて記憶手段35から案内経路データを読み出し、操作/表示手段33に表示する。
【0063】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかるナビゲーションシステム10によれば、出発地から目的地までの推定時間の1/2経過後のネットワークデータを1つ選択して経路探索するため、ネットワークデータの切り換えを必要とせず、経路探索サーバの負荷を増加させることがない。また、推定所要時間の長短により選択する時刻が変化し、その時刻に対応するネットワークデータを経路探索に使用することができ、実際の走行時間帯に近いネットワークデータで経路探索することになり、最適な案内経路を探索できる確率が高くなる。
【0064】
なお、上記実施例の説明においては、出発時刻と出発地から目的地までの推定所要時間をもとに時刻別ネットワークデータから特定のネットワークデータを選択する例を説明したが、目的地への到着予定時刻(到着希望時刻)を基準に経路探索サーバに経路探索要求する場合がある。この場合は、推定所要時間の1/2の時間(所定の割合の時間)を到着予定時刻から差し引いた時刻を算出し、この時刻に対応する時刻別ネットワークデータを選択して経路探索すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、特に経路探索サーバ20と多くの通信型のナビゲーション端末30を結んで経路探索を行うシステムに適しており、データ量の多い道路ネットワークは経路探索サーバ20側に記憶し、ナビゲーション端末30にはネットワークデータを記憶しておかなくても、常に最新の統計データに基づいた渋滞状況を考慮したナビゲーションサービスを受けられるという利点を持ったナビゲーションシステム10を提供することができる。また、本出願人が先に出願した特願2002−371483などの技術と組み合わせることにより、再度経路探索を要求した場合においても経路途中において同じ経路を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明において使用される道路ネットワークデータの概念を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例におけるナビゲーションシステムの動作手順を示すフローチャートであり、
【図4】図3のフローチャートにおける道路ネットワークデータの統計種別を決定するためのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】従来の車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
10・・・・ナビゲーションシステム
20・・・・経路探索サーバ
21・・・・主制御部
22・・・・推定時間算出手段
23・・・・ネットワークデータ選択手段
24・・・・経路探索手段
25・・・・案内経路データ作成手段
26・・・・通信手段
27・・・・ネットワークデータ統計種別検索手段
28・・・・ネットワークデータDB
30・・・・ナビゲーション端末
31・・・・GPS処理手段
32・・・・通信手段
33・・・・操作/表示手段
34・・・・経路探索要求処理手段
35・・・・記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索サーバとナビゲーション端末がネットワークを介して通信するナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーション端末は、少なくとも出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備え、
前記経路探索サーバは、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備え、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択し、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記経路探索サーバは、更に、ネットワークデータ統計種別検索手段を備え、
前記道路ネットワークデータは、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなり、
前記ネットワークデータ統計種別検索手段は、経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記統計種別は、日付けおよび曜日と天候の組み合わせによるものであることを特徴とする請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記統計種別は、更に、特定の特異日または特異日群を独立した統計種別としたことを特徴とする請求項3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記概算距離は、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離であることを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、
前記経路探索サーバは、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備え、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出し、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択し、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索することを特徴とする経路探索サーバ。
【請求項7】
前記経路探索サーバは、更に、ネットワークデータ統計種別検索手段を備え、
前記道路ネットワークデータは、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなり、
前記ネットワークデータ統計種別検索手段は、経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定することを特徴とする請求項6に記載の経路探索サーバ。
【請求項8】
前記統計種別は、日付けおよび曜日と天候の組み合わせによるものであることを特徴とする請求項6に記載の経路探索サーバ。
【請求項9】
前記統計種別は、更に、特定の特異日または特異日群を独立した統計種別としたことを特徴とする請求項8に記載の経路探索サーバ。
【請求項10】
前記概算距離は、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離であることを特徴とする請求項6または7に記載の経路探索サーバ。
【請求項11】
出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、過去の道路リンクコストのデータから所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別の道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、を備えた経路探索サーバを構成するコンピュータに、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出する推定時間算出手段としての処理と、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択するネットワークデータ選択手段としての処理と、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索する経路探索手段としての処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
出発地、目的地、出発時刻または到着予定時刻を含む経路探索要求を経路探索サーバに送信する経路探索要求処理手段を備えたナビゲーション端末とネットワークを介して通信する経路探索サーバであって、過去の道路リンクコストを複数の所定の統計種別に従って蓄積した道路ネットワーク群からなり、1つの統計種別にかかる道路ネットワークデータは、所定の時刻毎の道路リンクコストを蓄積した時刻別道路ネットワークデータからなる道路ネットワークデータを蓄積したネットワークデータDBと、経路探索手段と、出発地から目的地までの推定所要時間を算出する推定時間算出手段と、前記推定所要時間と出発時刻とから前記道路ネットワークデータの1つを選択するネットワークデータ選択手段と、ネットワークデータ統計種別検索手段と、を備えた経路探索サーバを構成するコンピュータに、
経路探索要求時の日付けおよび曜日に基づいて該当する前記道路ネットワークデータ群から対応する統計種別の道路ネットワークデータを決定するネットワークデータ統計種別検索手段としての処理と、
前記推定時間算出手段は、出発地から目的地までの概算距離と所定の平均移動速度から出発地から目的地までの所要時間を推定所要時間として算出する推定時間算出手段としての処理と、
前記ネットワークデータ選択手段は、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記出発時刻に加えた時刻を算出し、または、前記推定所要時間の所定割合いの時間を前記到着予定時刻から減じた時刻を算出し、該算出した時刻に対応する前記道路ネットワークデータを選択するネットワークデータ選択手段としての処理と、
前記経路探索手段は、前記ネットワークデータ選択手段が選択した道路ネットワークデータを用いて経路探索する経路探索手段としての処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のプログラムにおいて、前記プログラムは更に前記コンピュータに、出発地と目的地との間の直線距離を所定倍数した距離を出発地から目的地までの概算距離とする前記推定時間算出手段としての処理を実行させることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−71390(P2006−71390A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253690(P2004−253690)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】