説明

ナビゲーション装置と関心地点情報提示方法

【課題】 関心地点情報を乗員の負担を軽減して検索、提示するナビゲーション装置とその関心地点情報提示方法を提供する。
【解決手段】 ナビゲーション装置50は、地図情報記憶部3、ディスプレイ4a、車両挙動監視センサ5、走行軌跡記憶部6、マイク7、録音部8、現在位置検出部11、計時部12、車両挙動監視センサの信号にもとづき急激な車両操作を検出する急激操作検出部13、収録された音声から所定の言葉を検出する音声認識部14、音声認識部を制御する音声認識制御部15、関心領域設定部16、近傍地理検索部17から構成されている。音声認識部は、急激操作検出部が検出した急激な車両操作前後における乗員の所定の言葉の発話を検出し、時刻を特定し、関心領域設定部はその時刻の自車両の位置を走行軌跡から特定し、近傍地理検索部は特定された自車両の位置にもとづいて、所定領域内に存在するPOI情報を地図情報記憶部から検索して提示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置と関心地点情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、車室内での乗員の通常の会話の発声内容を音声認識し、音声認識した言葉を手がかりに、乗員の希望する行き先などを推定し、その推定結果にもとづいてディスプレイに推定目的地を提案表示するナビゲーション装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−289661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、ナビゲーション装置は、いつ発話されるか予測できない不意の音声に備えて、常にいつでも音声認識できるように音声入力待ち受け状態オンで待機している必要がある。その場合、ナビゲーション装置における音声認識処理の負担が過大になり、場合によってはディスプレイへの地図表示など他のナビゲーション機能の迅速な処理に支障をきたすことになる。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するために、音声認識のための音声入力待ち受け状態オンによるナビゲーション装置への情報処理の負担を軽減し、効率的な音声認識を行って、乗員が関心のある地点の情報(以下、POI(Point of Interest、関心地点)情報と称する)を検索し、提示できるナビゲーション装置と、POI情報提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、自車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、地図情報を表示するディスプレイを備えるナビゲーション装置において、車室内の音声を少なくとも所定時間分の過去に遡って読み出し可能に時刻データとともに収録し、自車両の位置を時刻データとともに走行軌跡として記録し、車両挙動から急激な車両操作を検出し、その検出時刻にもとづいて、収録された音声から所定の言葉を検出し、検出された所定の言葉を発した時刻における走行軌跡の自車両の位置にもとづいて、所定領域内に存在する関心地点情報を検索し、提示するものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、収録された音声から、急激な車両操作の検出前後の時間に絞って音声認識処理を行うことで、効率よく所定の言葉を認識抽出できる。その結果、ナビゲーション装置を不意の発話を受け付けるために常に音声入力待ち受け状態オンとする必要がないので、通常時のナビゲーション装置の情報処理の負担が減じられ、他のナビゲーション機能の迅速な処理に対する支障が防止できる。
その結果、乗員がナビゲーション装置に入力操作を行わなくても、絞り込まれた数の関心地点情報を自動的にディスプレイに提示することができ、乗員のPOI(関心地点)情報検索、提示の操作負担が軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を実施例により説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は第1の実施例のナビゲーション装置の構成図である。
ナビゲーション装置50は、地図情報記憶部3、ディスプレイ4a、スピーカ4b、車両挙動監視センサ5、走行軌跡記憶部6、マイク7、録音部8、現在位置検出部11、計時部12、急激操作検出部13、音声認識部14、音声認識制御部15、関心領域設定部16、近傍地理検索部17、ナビゲーション処理部21とから構成されている。
【0009】
地図情報記憶部3は、例えばハードディスク駆動装置からなり地図情報を格納している。地図情報としては、ディスプレイ4aに表示する道路地図データと、道路地図データの座標と関係付けられ、所在地、名称、電話番号などから検索可能としたPOI情報をその位置座標(以下、POI情報位置と称する)とともに含んでいる。
【0010】
車両挙動監視センサ5は、例えば車両の前後方向の加速度を検知する前後方向加速度センサからなる。前後方向加速度センサからの信号は急激操作検出部13に入力される。
マイク7は車室内の乗員の発する音声を取得可能な位置に設置され、ナビゲーション装置50がオンのとき、取得した音声を録音部8に常時入力する。
録音部8は、マイク7で取得した音声を、計時部12からの時刻信号をインデックスとして収録する。録音部8は所定の録音時間が定められ、所定の録音時間を過ぎてさらに音声が入力された場合、古い音声情報から順に上書きされ、常に最新の所定時間分の音声情報が収録されている。
なお、録音部8は録音と再生を並行して行うことができ、前述の所定録音時間は、後述する車両の急激操作検知前後に設定する音声認識のための所定の時間t、tよりも十分長い時間である。
【0011】
計時部12は、現在時刻を時々刻々刻み、時刻データを走行軌跡記憶部6、録音部8、音声認識制御部15に入力する。
現在位置検出部11は、例えば、車速を検出する車速センサ、車両の走行方位を検出する地磁気センサまたはジャイロなどの方位センサ、GPS衛星からの電波信号を受信して自車両の位置座標を算出するGPS装置からの信号にもとづき、自車両の現在位置の位置座標を算出し、さらに走行方向を算出する。
走行軌跡記憶部6は、現在位置検出部11で算出された自車両の位置座標を時刻データとともに時系列的に走行軌跡として記録する。
【0012】
ナビゲーション処理部21は、ナビゲーション装置50全体を制御する部分であり、ソフトウェアの作用によって処理し、現在位置、走行方向を算出する機能以外の通常のナビゲーション装置が有する、例えば目的地を検索・設定する機能、現在位置から目的地までの経路を探索・設定する機能、高頻度に目的地設定に使用する地点を予め登録する地点登録機能、現在位置にもとづき現在位置周辺の地図をディスプレイ4aに表示させる機能、地図情報記憶部3に格納されているPOI情報をディスプレイ4aに表示させる機能、設定された経路に沿った道路案内をディスプレイ4aとスピーカ4bを用いて行う機能を有している。
ディスプレイ4aはナビゲーション処理部21が情報処理した画像情報または文字情報を提示し、スピーカ4bはナビゲーション処理部21が情報処理した音声情報を提示する。
【0013】
急激操作検出部13は、車両挙動監視センサ5からの信号にもとづき、急激なブレーキ操作による車両の所定以上の減速を検出したとき、車両の急激操作を検出したと判定する。
音声認識制御部15は、急激操作検出部13から急激操作の検出信号を受けたとき、計時部12からの時刻データにより急激操作の時刻を特定し、急激操作時刻を基点として前後所定の時間t、tずつの録音部8に収録された音声情報を音声認識部14において音声認識させる。
【0014】
音声認識部14は、音声認識制御部15に制御されて、急激操作時刻を基点として前後所定の時間t、tずつ、例えば30秒間の録音部8に収録された音声情報から、例えば「見つけた」、「あれだ」、「あったあった」など、目的地またはPOI情報位置の目印となる目標物を見出したときに自然と発せられる所定の言葉を、例えばワードスポッティング技術を適用して音声認識して検出する。音声認識部14は、上記所定の言葉を検出したとき、録音部8に音声情報とともに収録されたインデックスの時刻データから、所定の言葉の発話が開始された時刻Tを特定する。
なお、この音声認識における所定の言葉は、従来技術のように会話の中で用いられる「遊びニーズ」、「食事ニーズ」、「休憩ニーズ」、「宿泊ニーズ」などPOI情報のジャンルを判定し、POI情報をさらに絞り込むための多数の単語である必要はなく、上記例に示したようにごく限定された数の言葉で十分である。
【0015】
関心領域設定部16は、音声認識部14により特定された時刻Tにおける位置座標を、走行軌跡記憶部6に記録された時系列の位置座標から内挿して求め、求めた位置座標を中心として、所定距離の半径の円内に含まれる地域を、乗員の関心があると思われる地域領域(以下、関心領域と称する)として設定し、近傍地理検索部17に入力する。
近傍地理検索部17は、関心領域のPOI情報を地図情報記憶部3から検索し、ナビゲーション処理部21に出力し、ディスプレイ4aに表示させる。
【0016】
なお、本実施例では、走行軌跡記憶部6と録音部8は、例えばRAMまたは不揮発メモリを含む。また、現在位置検出部11、計時部12、急激操作検出部13、音声認識部14、音声認識制御部15、関心領域設定部16、近傍地理検索部17、ナビゲーション処理部21は、1つのCPUにより構成される。
【0017】
図2、図3は、本実施例における乗員の音声にもとづくPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
図示省略のキースイッチをオンするとナビゲーション装置50が起動する。本実施例においては、運転者は、ナビゲーション装置50に対して目的地設定、経路設定を行わず、現在位置周辺地図表示機能で、通りの名称などを目標に目的の建物の看板などを探しながら走行しているものとする。
音声認識部14は通常音声入力待ち受け状態オフであり、ナビゲーション処理部21の情報処理に影響を与えない。
【0018】
ステップ101では、現在位置検出部11は、自車両の現在位置の位置座標、進行方向を所定の周期で算出する。
ステップ102では、走行軌跡記憶部6が、現在位置検出部11で算出された位置座標を、計時部12からの時刻データとともに時系列的に走行軌跡として記録する。
ステップ103では、ステップ101、102の処理と並行して急激操作検出部13が、車両の急激な操作を検出したかどうか判定する。急激な操作を検出したと判定した場合、ステップ104に進み、そうでない場合はステップ115に進む。
車両の急激な操作の検出判定は、ここでは前後方向加速度センサからの加速度信号が所定値g以上の減速を示すことで判定する。
ステップ104では、音声認識制御部15は、急激操作時刻を計時部12から取得する。
【0019】
ステップ105では、音声認識制御部15は、音声認識部14に急激操作前後の音声情報を録音部8から取得させる。つまり、録音部8に収録された音声情報は時刻データをインデックスに検索可能に記録されているので、音声認識制御部15は、急激操作時刻にもとづき、例えば前後30秒間ずつの音声情報を、音声認識部14に取得させる。
ステップ106では、音声認識部14は、音声認識を行い、所定の言葉を検索し、検出の有無、検出した場合は、所定の言葉の発話開始の時刻Tを音声認識制御部15に出力する。
なお、このステップに入った時点で、まだ急激操作終了後、所定の30秒を経過していない場合は、録音部8に収録される音声情報が急激操作終了後30秒経過するまで、適宜音声認識処理を待ち、最終的に急激操作終了後30秒経過までの音声情報に対して音声認識処理を行う。
【0020】
ステップ104から106の制御を図4にもとづいて説明する。(a)は、縦軸に加速度を、横軸に時刻を表した自車両の加速度信号の時間推移を示す。(b)は縦軸に音声の強度を、横軸に時刻を表した音声信号の時間推移を示す。
急激操作検出部13は、所定値g以上の減速開始を示す時刻pと、減速の終了を示す時刻qを取得する。
音声認識制御部15は、時刻pを基準に所定時間t1(ここでは30秒)遡った時刻rから、時刻qを基準に所定時間t2(ここでは30秒)経った時刻sまでの期間の音声を、音声認識部14に音声認識させる。
その結果、例えば(b)では時刻Tから始まる「ミツケタ」という言葉を検出することになる。
【0021】
ステップ107では、音声認識制御部15は、目的地または目標物を見出したときに自然と発せられる所定の言葉の発話があったかどうかをチェックする。なかった場合は、ステップ115に進み、あった場合はステップ108に進む。
ステップ108では、音声認識制御部15は、所定の言葉の発話があった時刻Tを関心領域設定部16に出力し、関心領域設定部16が取得する。
ステップ109では、関心領域設定部16は、所定の言葉の発話があった時刻Tにおける自車両の位置を特定する。つまり、走行軌跡記憶部6に記録された時系列の位置座標データを内挿して、所定の言葉の発話が開始された時刻Tにおける自車両の位置座標を算出する。
【0022】
ステップ110では、関心領域設定部16は、特定された時刻Tにおける位置座標を中心として、所定距離、例えば200mの半径の円内に含まれる関心領域を設定し、その領域を近傍地理検索部17に出力する。
ステップ111では、近傍地理検索部17は、関心領域内のPOI情報を地図情報記憶部3から検索し、検索結果をナビゲーション処理部21に出力する。
ステップ112では、ナビゲーション処理部21は、検索されたPOI情報を乗員の目的地候補としてディスプレイ4aに表示させる。
【0023】
ステップ113では、図示しない入力部を用いて乗員がディスプレイ4aに表示されたPOI情報の中から特定のPOI情報を選択する操作を受けて、ナビゲーション処理部21は、選択されたPOI情報を特定する。
入力部は、例えばディスプレイ4a設けられたタッチセンサでもよい。
ステップ114では、ナビゲーション処理部21は、現在位置検出部11から得られる現在位置と、ステップ113で特定されたPOI情報のPOI情報位置を含む周辺地図をディスプレイ4aに表示させる。
この結果、乗員は周辺地図を見て、現在位置とPOI情報位置との位置関係を確認できる。
ステップ114の後、ステップ115に進む。
【0024】
ステップ115では、ナビゲーション処理部21は、キースイッチがオフされてナビゲーション機能終了かどうかをチェックする。ナビゲーション機能が継続している場合は、ステップ101に戻り、ナビゲーション機能が終了している場合は、本制御は終了する。
なお、危険を回避するために自車両の急激な操作をステップ103において検出しても、そのときに自然に発せられる言葉は、例えば「危ない」とか、他車両を罵る言葉などであり、ステップ106において所定の言葉が検出されないので、ステップ115に進み、乗員の目的地のPOI情報を検索することはない。
【0025】
本実施例の車両挙動監視センサ5は本発明の車両挙動検出手段を構成する。また、本実施例のフローチャートにおけるステップ102は本発明の走行軌跡記録手段を、ステップ103は急激操作検出手段を、ステップ106は音声認識手段を、ステップ104、105、107、108は音声認識制御手段を、ステップ109〜111は近傍地理検索手段を構成する。
【0026】
以上のように本実施例によれば、自車両の急激な操作を検出するまでは、音声認識部14は音声入力待ちうけ状態オンではないので、通常時にCPUの情報処理の負荷が大きくなりすぎて、ナビゲーション処理部21において、例えば現在位置周辺の地図表示が迅速に行われなくなるという支障が無い。
また、従来技術に比して限定された少数の所定の言葉の発話を検出して、その言葉の発せられた時の自車両の位置を特定し、その位置を基準に所定の領域内に含まれるPOI情報を検索するので、POI情報の絞り込みのために明示的な音声入力または乗員による手動操作を行わずともPOI情報の数が関心領域内に含まれるものに絞り込まれる。したがって、目的のPOI情報候補の検索が簡単に効率よく行え、乗員の入力操作の負担が減じられる。
特に、従来技術におけるような乗員のニーズを判定して、さらにPOI情報を絞り込むために、多数の単語をキーワードとして認識させる場合よりも格段に高速な音声認識が可能である。
【0027】
なお、本実施例において急激操作検出部13は、車両の急激操作の検出を前後方向加速度センサからの信号にもとづいて判定したがそれに限定されるものではない。
例えば車両挙動監視センサ5が、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサを有し、急激操作検出部13はアクセル解放後の急速なブレーキ操作を検出したとき、車両の急激操作を検出したと判定しても良い。
また、車両挙動監視センサ5が、操舵角を検出する操舵角センサを有し、急激操作検出部13は左右の所定角度以上の急速なステアリング操作を検出したとき、車両の急激操作を検出したと判定しても良い。
【実施例2】
【0028】
次に本発明の第2の実施例を説明する。
図5は第2の実施例のナビゲーション装置のブロック構成図である。第1の実施例と同じ構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
ナビゲーション装置50’は、地図情報記憶部3、ディスプレイ4a、スピーカ4b、走行軌跡記憶部6’、マイク7、現在位置検出部11、計時部12、タイマ部12a、音声認識部14、音声認識制御部15’、関心領域設定部16’、近傍地理検索部17、迷走状態判定部18、ナビゲーション処理部21とから構成されている。
【0029】
本実施例では、地図情報記憶部3は、道路地図データ、POI情報に加えて、道路を所定の長さの道路リンクのつながりで表した道路情報を含んでいる。この道路情報は、道路リンクデータとして個々の道路リンクに対して、リンクID、道路リンクの起点と終点であるノードの位置座標とノードID、ノードにおいて接続している隣接道路リンクのリンクID、道路リンクの長さ、道路リンクの接続方向などの情報を含んでいる。
【0030】
走行軌跡記憶部6’は、例えばRAMまたは不揮発メモリを含む。走行軌跡記憶部6’は、現在位置検出部11で算出された自車両の位置にもとづき、地図情報記憶部3から自車両の走行している道路リンクデータを抽出し、所定の周期で自車両の現在位置の位置座標と、計時部12からの時刻データとともに時系列的に走行軌跡として記録する。
なお、道路リンクデータの記録は、現在走行中の道路リンクが新しい道路リンクに移行したときにのみ新しい道路リンクデータを記録し、同一道路リンク上を走行中は、同一道路リンクデータは繰り返して記録しないこととする。
【0031】
タイマ12aは、リセット、カウントの開始、カウントの停止を音声認識制御部15’に制御され、時間を計測する。
迷走状態判定部18は、走行軌跡記憶部6’に記録された走行軌跡を監視し、自車両が迷走状態かどうかを判定する。迷走状態かどうかの判定は、例えば特開平10−122881号公報に示されているように、走行軌跡記憶部6’に記録された道路リンクが、所定の時間内で近接、または交差するのを検出した場合、また所定の時間内で所定の距離内の平行な道路リンクを自車両が走行していることを検出した場合は、迷走状態と判定する。
【0032】
音声認識制御部15’は、迷走状態判定部18からの迷走状態との判定信号を受けたとき、タイマ部12aを制御し、所定の時間を経過するまで音声認識部14を音声入力待ち受け状態オンに制御し、マイク7が取得した車室内の音声情報から、例えば「見つけた」、「あれだ」、「あったあった」など目的地またはPOI情報位置の目印となる目標物を見出したときに自然と発せられる所定の言葉を、音声認識部14に検出させる。
音声認識制御部15’は、迷走状態と判定されてから所定時間経過後、音声認識部14を音声入力待ち受け状態オフに戻す。
音声認識部14は、上記所定の言葉を検出したとき、音声認識制御部15を介して関心領域設定部16’に検出信号を出力する。
【0033】
関心領域設定部16’は、所定の言葉を発生したタイミングに、自車両の現在位置の位置座標を現在位置検出部11から取得し、現在位置を中心として、所定距離の半径の円内に含まれる地域を関心領域として設定し、近傍地理検索部17に入力する。
なお、現在位置検出部11、計時部12、タイマ部12a、音声認識部14、音声認識制御部15’、関心領域設定部16’、近傍地理検索部17、迷走状態判定部18、ナビゲーション処理部21は、1つのCPUにより構成される。
【0034】
図6、図7は、本実施例における乗員の音声にもとづくPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
図示省略のキースイッチをオンにするとナビゲーション装置50’が起動する。本実施例においては、運転者は、ナビゲーション装置50’に対して目的地設定、経路設定を行わず、現在位置周辺地図表示機能で、通りの名称などを目標に目的の建物の看板などを探しながら走行しているものとする。
音声認識部14は通常音声入力待ち受け状態オフであり、CPUの情報処理の負荷にはなっていない。
【0035】
ステップ201では、現在位置検出部11は、自車両の現在位置の位置座標、進行方向を所定の周期で算出する。
ステップ202では、走行軌跡記憶部6’が、現在位置検出部11で算出された位置座標にもとづき、現在走行中の道路リンクを特定し、特定された道路リンクデータと、道路リンク内での位置座標と、計時部12からの時刻データを時系列的に走行軌跡として記録する。
ステップ203では、ステップ201、202の処理と並行して迷走状態判定部18が、走行軌跡記憶部6’に記録された走行軌跡を監視し、自車両が迷走状態かどうか判定する。
迷走状態と判定したときは、ステップ204に進み、迷走状態と判定されなかったときは、ステップ206に進む。
【0036】
ステップ204では、音声認識制御部15’は、音声認識部14を音声入力待ち受け状態オンでない場合にオンとし、音声認識部14がマイク7からの音声を音声認識する状態にする。
ステップ205では、音声認識制御部15’は、タイマ部12aがタイマカウントをしていない場合、タイマをリセットし、カウントをスタートさせる。ステップ205の後、ステップ206へ進む。
ステップ206では、音声認識制御部15’は、タイマ部12aがタイマカウントをしているかどうかチェックする。タイマカウントしている場合はステップ207に進み、タイマカウントしていない場合は、ステップ216へ進む。
ステップ207では、音声認識制御部15’は、タイマカウントtが所定時間T以下かどうかをチェックする。タイマカウントtがT以下の場合はステップ208へ進み、Tを超える場合はステップ214へ進む。
【0037】
ステップ208では、音声認識制御部15’は、音声認識部14が音声認識をして、所定の言葉の発話が合ったかどうかをチェックする。所定の言葉の発話があった場合は、関心領域設定部16’に検出信号を出力し、ステップ209へ進む。所定の言葉の発話がなかった場合はステップ216へ進む。
ステップ209では、関心領域設定部16’は、検出信号を受けた時点の自車両の位置座標を現在位置検出部11から取得し、取得した位置座標を中心として、所定距離、例えば200mの半径の円内に含まれる地域を関心領域として設定し、その領域を近傍地理検索部17に出力する。
【0038】
ステップ210では、近傍地理検索部17は、関心領域内のPOI情報を地図情報記憶部3から検索し、検索結果をナビゲーション処理部21に出力する。
ステップ211では、ナビゲーション処理部21は、検索されたPOI情報を乗員の目的地候補としてディスプレイ4aに表示させる。
ステップ212では、第1の実施例と同様に、図示しない入力部を用いて乗員がディスプレイ4aに表示されたPOI情報の中から特定のPOI情報を選択する操作を受けて、ナビゲーション処理部21は、選択されたPOI情報を特定する。
【0039】
ステップ213では、ナビゲーション処理部21は、現在位置検出部11から得られる現在位置と、ステップ212で特定されたPOI情報のPOI情報位置を含む周辺地図をディスプレイ4aに表示させる。
この結果、第1の実施例と同様に、乗員は周辺地図を見て、現在位置とPOI情報位置との位置関係などを確認できる。
ステップ213の後、ステップ216に進む。
【0040】
ステップ207においてステップ214に進んだ場合、音声認識制御部15’は、タイマ部12aのカウントをストップさせる。
ステップ215では、音声認識制御部15’は、音声認識部14を音声入力待ち受け状態オフでない場合に、音声入力待ち受け状態オフとする。ステップ215の後、ステップ216へ進む。
ステップ216では、ナビゲーション処理部21は、キースイッチがオフされてナビゲーション機能終了かどうかをチェックする。ナビゲーション機能が継続している場合は、ステップ201に戻り、ナビゲーション機能が終了している場合は、本制御は終了する。
【0041】
なお、迷走状態判定部18において一度迷走状態と判定されると、当初タイマカウントtは、Tに達していないので、ステップ207からステップ208へ進むが、タイマカウントt≦Tの状態において、ステップ203で迷走状態と判定されなくなっても、タイマカウントt≦Tの間は迷走状態と見なして音声認識を続けるようにしている。
本実施例のフローチャートにおけるステップ202は本発明の車両挙動検出手段を、ステップ203は迷走状態判定手段を、ステップ208は音声認識手段を、ステップ204、205、206、207、214、215は音声認識制御手段を、ステップ209、210は近傍地理検索手段を構成する。
【0042】
以上のように本実施例によれば、自車両の迷走状態を判定検出するまでは、音声認識部14は音声入力待ちうけ状態オンではないので、通常時にCPUの情報処理の負荷が大きくなりすぎて、ナビゲーション処理部21において、例えば現在位置周辺の地図表示が迅速に行われなくなるというような支障が無い。
また、従来技術に比して限定された少数の所定の言葉の発話を検出して、その言葉の発せられた時の自車両の位置を特定し、その位置を基準に所定の領域内に含まれるPOI情報を検索するので、POI情報の絞り込みのために明示的な音声入力または乗員による手動操作を行わずともPOI情報の数が関心領域内に含まれるものに絞り込まれる。
したがって、目的のPOI情報候補の検索が簡単に効率よく行え、乗員の入力操作の負担が減じられる。
特に、従来技術におけるような乗員のニーズを判定して、さらにPOI情報を絞り込むために、多数の単語をキーワードとして認識させる場合よりも格段に高速な音声認識が可能である。
【0043】
なお、本実施例において、迷走状態判定部18は、車両の迷走状態の判定を走行軌跡記憶部6’の走行軌跡にもとづいて判定したがそれに限定されるものではない。
例えば特開平10−122881号公報に示されているように、図示しないRAMまたは不揮発メモリに計時部12からの時刻データとともにターンシグナルスイッチのオン、オフ信号を記録し、迷走状態判定部18は、記録された時系列のターンシグナルスイッチのオン、オフ信号を監視し、ターンシグナルの頻繁なオン、オフ操作のような不安定な走行状態を検出した場合、迷走状態と判定しても良い。
【0044】
また、第1の実施例および第2の実施例において、関心領域設定部16、16’は、所定の言葉の発話を検知して取得した自車両の位置から所定の距離の半径、例えば200mの距離の円内の地域を関心領域として設定するとしたが、これは乗員からの看板などの視認距離として定めたものであり、この数値に限定されない。
また、車両が走行している時間(昼間と夜、)または車外の照度、走行地域の状況(都心部、郊外、田舎など)、土地の形状(高台、谷部など)に応じて自動的に距離を切り替えるようにしても良い。
【0045】
また、関心領域設定部16、16’は、所定の言葉の発話者が、運転者と同乗者のいずれであるかを判定して、運転者である場合は、所定の言葉の発話を検知して取得した自車両の位置から所定の距離の半径の、車両の進行方向に向かって左右90°の半円内の地域を関心領域として設定し、所定の言葉の発話者が同乗者の場合は、所定の距離の半径の円内の地域を関心領域として設定するとしても良い。
これは、運転者が「あれだ」、「見つけた」などの所定の言葉を発話するのは、通常左右から前方方向に限られると思われるためである。
【0046】
さらに、関心領域設定部16、16’は、所定の言葉の発話を検知して特定した1点を中心とした円内または半円内の地域を関心領域と設定しているがそれに限定されるものではない。所定の言葉の発話を検知して特定した第1の車両位置から所定の時間遡った第2の車両位置を走行軌跡記憶部6、6’から取得し、第2の車両位置から第1の車両位置までの走行区間にもとづき走行方向を考慮して、その間に乗員が視認できる可能性のある領域を幾何学的に求めて関心領域として設定しても良い。
【0047】
また、地図情報記憶部3に格納されている道路地図データが3次元データで、沿道の建造物の輪郭データをも有している場合は、近傍地理検索部17は、関心領域として設定された地域のPOI情報でも、車両の位置からは手前の建物などによって遮られている施設、店舗などは提示の順位を後ろにするように提示順位を制御するとか、周辺地図表示におけるPOI情報の位置表示のマーカを、視認できるものと遮られているものとで異ならせて表示するように制御してもよい。
このようにすることで、例えば視認した建物の地図上での特定がより容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例のナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施例におけるPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施例におけるPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】車両挙動監視センサからの信号の推移と、収録された音声信号の時間推移を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例のナビゲーション装置の構成を示す図である。
【図6】第2の実施例におけるPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2の実施例におけるPOI情報の検索、提示の制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
3 地図情報記憶部
4a ディスプレイ
4b スピーカ
5 車両挙動監視センサ
6、6’ 走行軌跡記憶部
7 マイク
8 録音部
11 現在位置検出部
12 計時部
12a タイマ部
13 急激操作検出部
14 音声認識部
15、15’ 音声認識制御部
16、16’ 関心領域設定部
17 近傍地理検索部
18 迷走状態判定部
21 ナビゲーション処理部
50、50’ ナビゲーション装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、
車室内の音声を、少なくとも所定時間分の過去に遡って読み出し可能に時刻データとともに収録する録音部と、
自車両の位置を時刻データとともに走行軌跡として記録する走行軌跡記録手段と、
車両挙動を検出する車両挙動検出手段と、
前記車両挙動にもとづいて急激な車両操作を検出する急激操作検出手段と、
音声から所定の言葉を検出する音声認識手段と、
前記音声認識手段の音声認識処理の開始と停止を制御する音声認識制御手段と、
前記音声認識手段で検出された所定の言葉を発した時刻における前記走行軌跡の自車両の位置にもとづいて、所定領域内に存在する関心地点情報を検索する近傍地理検索手段と、
前記検索された関心地点情報を提示するディスプレイとを備え、
前記音声認識制御手段は、前記急激操作検出手段が検出した急激な車両操作の検出時刻にもとづいて、前記音声認識手段に前記録音部に収録された音声から前記所定の言葉を検出させることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記車両挙動検出手段は、操舵角、ブレーキペダルの踏み込み量、加速度のうち少なくともいずれか1つを検出することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
自車両の現在位置を検出する現在位置検出部と、
車両挙動を検出する車両挙動検出手段と、
前記車両挙動にもとづき自車両が迷走状態かどうかを判定する迷走状態判定手段と、
音声から所定の言葉を検出する音声認識手段と、
前記音声認識手段の音声認識処理の開始と停止を制御する音声認識制御手段と、
前記音声認識手段で検出された所定の言葉を発した時刻における自車両の位置にもとづいて、所定領域内に存在する関心地点情報を検索する近傍地理検索手段と、
前記検索された関心地点情報を提示するディスプレイとを備え、
前記音声認識制御手段は、前記迷走状態判定手段が迷走状態と判定したときから所定時間経過するまでの間、前記音声認識手段を音声入力待ち受け状態にし、車室内の音声から所定の言葉を検出させることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両挙動検出手段は、ターンシグナルスイッチの操作を監視、または自車両の位置を時刻データとともに走行軌跡として記録し、監視することを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記所定領域は、前記所定の言葉を発した時刻における自車両の位置から所定の半径距離内の円形領域であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記所定領域は、前記所定の言葉を発した時刻における自車両の位置から所定の半径距離内の進行方向前方の半円形領域であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記所定の言葉は、乗員が前記関心地点に関係する目標物を見出したときに自然と発する可能性が高い言葉にのみ限定していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
ナビゲーション装置における関心地点情報提示方法において、
車室内の音声を、少なくとも所定時間分の過去に遡って読み出し可能に時刻データとともに収録し、
自車両の位置を時刻データとともに走行軌跡として記録し、
車両挙動から車両の急激操作を検出し、急激操作を検出した時刻にもとづく所定時間だけ、収録された音声から所定の言葉を検出し、
前記検出された所定の言葉を発した時刻における前記走行軌跡の自車両の位置にもとづいて、所定領域内に存在する関心地点情報を検索し提示することを特徴とするナビゲーション装置における関心地点情報提示方法。
【請求項9】
前記所定の言葉は、乗員が前記関心地点に関係する目標物を見出したときに自然と発する可能性が高い言葉にのみ限定されていることを特徴とする請求項8に記載のナビゲーション装置における関心地点情報提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10551(P2006−10551A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189473(P2004−189473)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】