説明

ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターとして有用な新規の1,2,3−トリアゾール誘導体

本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターであることが見出されている新規の1,2,3−トリアゾール誘導体に関する。その薬理学的プロファイルのために、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の中止によって起こる離脱症状などの多様な疾患又は障害の治療のために有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーターであることが見出されている新規の1,2,3−トリアゾール誘導体に関する。その薬理学的プロファイルのために、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の中止によって起こる離脱症状などの多様な疾患又は障害の治療のために有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
内在性コリン作動性神経伝達物質であるアセチルコリンは、二種類のコリン作動性受容体、すなわちムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を通じて、その生物学的効果を発揮する。
【0003】
ムスカリン性アセチルコリン受容体が、記憶及び認知に重要な脳の領域において、ニコチン性アセチルコリン受容体より量的に優勢であることは十分に確立されているので、記憶に関連する障害の治療のための薬剤の開発を目的とする多くの研究は、ムスカリン性アセチルコリン受容体モジュレーターの合成に焦点を当ててきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最近、nAChRモジュレーターの開発に対する関心が起きている。いくつかの疾患、すなわちアルツハイマー型老年性認知症、血管性認知症、及びアルコール依存症に直接関連する器質性脳損傷疾患に起因する認知機能不全は、コリン作動系の変性に関連している。
【0005】
本発明は、新規のニコチン性受容体モジュレーターの提供を対象とし、そのモジュレーターは、コリン作動性受容体、特にニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプに関連する疾患又は障害の治療に有用である。
【0006】
本発明の化合物はまた、様々な診断法における診断ツール又はモニタリング剤として、特にインビボ受容体画像法(神経画像法)のために有用であり得るし、標識又は非標識形態で使用し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その第1の態様において、本発明は、式Iの1,2,3−トリアゾール誘導体、
【化1】


その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する
(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、並びに
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表し、又は、
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ若しくはアルコキシを表し、並びに
及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、又は
及びRのうちの1つは、ハロを表し、R及びRのうちの他の1つは、トリフルオロメチルを表し、R及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表す。)。
【0008】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩の治療有効量を含む、医薬組成物を提供する。
【0009】
別の態様から見れば、本発明は、コリン作動性受容体のモジュレーションに反応する、ヒトを含む哺乳動物の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための医薬組成物/薬剤の製造のための、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体、又はその薬学的に許容される付加塩の使用に関する。
【0010】
さらに他の態様において、本発明は、コリン作動性受容体のモジュレーションに反応する、ヒトを含む生動物体の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法を提供し、その方法は、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体の治療有効量を、その必要のあるそのような生動物体に投与するステップを含む。
【0011】
本発明のその他の目的は、以下の詳細な記載及び実施例から、当業者にとって明白であろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1,2,3−トリアゾール誘導体
第1の態様において、本発明は、式Iの1,2,3−トリアゾール誘導体、
【化2】


その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する
(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表し、又は、
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ若しくはアルコキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、又は
及びRのうちの1つは、ハロ、特にフルオロを表し、R及びRのうちの他の1つは、トリフルオロメチルを表し、R及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表す。)。
【0013】
好ましい実施形態において、1,2,3−トリアゾール誘導体は、式Iの化合物、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩である
(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、若しくはシアノを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、若しくはアルコキシを表し、又は、
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、若しくはアルコキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表す。)。
【0014】
他の好ましい実施形態においては、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、式Iの化合物、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩である(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はスルファモイルを表す。)。
【0015】
より好ましい実施形態においては、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ又はアルコキシを表す。
【0016】
他のより好ましい実施形態においては、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表し、Rは水素を表し、並びにRは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表す。
【0017】
第3のより好ましい実施形態においては、R及びRは共に、ハロ又はトリフルオロメチルを表し、Rは水素を表し、並びにRは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表す。
【0018】
第4のより好ましい実施形態においては、R及びRは共に、ハロ、特にクロロを表し、並びにRは水素を表し、並びにRは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表す。
【0019】
第3の好ましい実施形態においては、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、式Iの化合物、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ又はアルコキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表す。
【0020】
より好ましい実施形態においては、Rは、水素を表し、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表す。
【0021】
他のより好ましい実施形態においては、Rは、水素を表し、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ又はトリフルオロメチルを表す。
【0022】
第3のより好ましい実施形態においては、Rは、水素を表し、Rは、ヒドロキシ又はアルコキシ、特にメトキシを表し、並びにR及びRは共に、ハロ、特にクロロを表す。
【0023】
第4の好ましい実施形態においては、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、式Iの化合物、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩であり、式中、R及びRのうちの1つは、ハロ、特にフルオロを表し、R及びRのうちの他の1つは、トリフルオロメチルを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はスルファモイルを表す。
【0024】
より好ましい実施形態においては、R及びRのうちの1つは、ハロ、特にフルオロを表し、R及びRのうちの他の1つは、トリフルオロメチルを表し、並びにR及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ又はスルファモイルを表す。
【0025】
最も好ましい実施形態においては、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、
5−(2,4−ジクロロ−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、
3−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、
4−[5−アミノ−1−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール、
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール、
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド、
5−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、又は
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール、
その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0026】
本明細書に記載の、2つ以上の実施形態のいかなる組合せも、本発明の範囲内であると考えられる。
【0027】
置換基の定義
本発明の文脈において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0028】
本発明の文脈においては、アルキル基は、1価で、飽和の、直鎖又は分岐の炭化水素鎖を指す。炭化水素鎖は、好ましくは、1から18個の炭素原子(C1〜18アルキル)、より好ましくは、1から6個の炭素原子(C1〜6アルキル、低級アルキル)を含み、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルを含む。好ましい実施形態においては、アルキルは、C1〜4アルキル基を表し、ブチル、イソブチル、s−ブチル、及びt−ブチルを含む。本発明の他の好ましい実施形態においては、アルキルは、C1〜3アルキル基を表し、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであってもよい。
【0029】
本発明の文脈においては、アルコキシ基は、「アルキル−O−」を指す(式中、アルキルは、上記で定義した通りである。)。本発明の好ましいアルコキシ基の例としては、メトキシ及びエトキシが挙げられる。
【0030】
薬学的に許容される塩
本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、意図した投与に適切な形態ならばいかなる形態で提供されてもよい。適切な形態としては、本発明の化合物の、薬学的に(すなわち、生理学的に)許容される塩、及びプレドラッグ又はプロドラッグ形態が挙げられる。
【0031】
薬学的に許容される付加塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、誘導ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩等などの、非毒性の無機及び有機の酸付加塩が含まれるがこれらに限られるわけではない。そのような塩は、当業界に周知で記載されている手順で形成し得る。
【0032】
本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体の金属塩としては、カルボキシ基を含む本発明の化合物のナトリウム塩などのアルカリ金属塩を含む。
【0033】
立体異性体
当業者ならば理解するであろうが、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、エナンチオマー、ジアステレオマー、並びに幾何異性体(シス−トランス異性体)を含み、種々の立体異性体の形態で存在し得る。本発明は、そのような立体異性体を全て及びラセミ混合物を含んでこれらのいかなる混合物をも含む。
【0034】
ラセミ体は、既知の方法及び技法により光学対掌体に分割し得る。エナンチオマー化合物(エナンチオマー中間体を含んで)を分離する1つの方法は、化合物がキラル酸である場合、光学活性アミンを使用し、酸で処理することによりジアステレオマーに分割された塩を発生させることである。ラセミ体を光学対掌体に分割するための他の方法は、光学活性マトリックス上でのクロマトグラフィーに基づいている。本発明のラセミ化合物は、例えば、D−又はL−塩(酒石酸塩、マンデル酸塩、又はカンファースルホン酸塩)の部分結晶化により、その光学対掌体に分割し得る。
【0035】
光学異性体を分割するための他の方法は、当業界で知られている。そのような方法としては、Jaques J、Collet A、及びWilen Sにより、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons、New York(1981年)に記載されているものを含む。
【0036】
光学活性の化合物はまた、光学活性の出発物質又は中間体から調製し得る。
【0037】
1,2,3−トリアゾール誘導体の製造方法
本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、化学的合成のための通常の方法、例えば、実施例に記載されたものにより調製し得る。本出願に記載した方法のための出発物質は既知であり、市販の化学薬品から通常の方法により容易に調製し得る。
【0038】
また、本発明のある化合物は、通常の方法を用いて、本発明の他の化合物に変換し得る。
【0039】
本明細書に記載の反応の最終生成物は、通常の技法、例えば、抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィー等により単離し得る。
【0040】
生物学的活性
本発明は、コリン作動性受容体、特にニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に関連する疾患又は障害の治療のために有用である、新規のニコチン受容体モジュレーターの提供を対象とする。本発明の好ましい化合物は、ニコチン性アセチルコリンα7受容体サブタイプの正のモジュレーターとしての活性を示す。
【0041】
その薬理学的プロファイルのために、本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)のコリン作動系に関連する疾患又は障害、平滑筋収縮に関連する疾患又は障害、内分泌疾患又は障害、神経変性に関連する疾患又は障害、炎症に関連する疾患又は障害、疼痛、及び化学物質の乱用の中止によって起こる離脱症状などの多様な疾患又は障害の治療のために有用であり得る。
【0042】
本発明の化合物はまた、様々な診断法における診断ツール又はモニタリング剤として、特にインビボ受容体画像法(神経画像法)のために有用であり得るし、標識又は非標識形態で使用し得る。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明によって想定されており、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、不安、認知障害、学習障害、記憶障害若しくは機能不全、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動性障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ジルドラトゥレット症候群、うつ病、躁病、躁うつ病、精神障害、統合失調症、強迫性障害(OCD)、パニック障害、神経性拒食症及び過食症及び肥満などの摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、AIDS認知症、老年性認知症、末梢性ニューロパチー、自閉症、失読症、遅発性ジスキネジー、運動過多、てんかん、外傷後症候群、社会恐怖症、睡眠障害、仮性認知症、ガンザー症候群、月経前症候群、黄体期後期症候群、慢性疲労症候群、無言症、抜毛癖、時差ぼけ、高血圧、不整脈、痙攣障害を含む平滑筋収縮障害、狭心症、早産、痙攣、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動過多、早漏症及び勃起困難、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫を含む内分泌系障害、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害、疼痛、軽度の、中等度の及び重度の疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、再発性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛によって起こる疼痛、術後痛、幻肢痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢性疼痛、糖尿病性ニューロパチー関連疼痛、ヘルペス後神経痛関連疼痛、又は末梢神経損傷関連疼痛、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢を含む炎症性障害、ニコチンの離脱症状、ヘロイン、コカイン及びモルヒネを含むオピオイドの離脱症状、ベンゾジアゼピン様薬物及びアルコールを含むベンゾジアゼピンの離脱症状を含む常習性薬物の使用中止によって起こる離脱症状に伴う障害である。
【0044】
より好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、認識障害、精神病、失調統合症又はうつ病である。
【0045】
他のより好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、痙攣障害、狭心症、早産、痙攣、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動過多、早漏症及び勃起困難を含む、平滑筋収縮に伴うものである。
【0046】
なお他のより好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫などの内分泌系に関連している。
【0047】
さらに他のより好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害である。
【0048】
さらにより好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、急性、慢性又は再発性の軽度の、中等度の及び重度もの疼痛を含んで、疼痛、並びに片頭痛によって起こる疼痛、術後痛及び幻肢痛である。疼痛は、特に神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢性疼痛、糖尿病性ニューロパチー関連疼痛、ヘルペス後神経痛関連疼痛、末梢神経損傷関連疼痛であり得る。
【0049】
さらにより好ましい実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患、障害又は状態は、ざ瘡及び酒さなどの炎症性皮膚障害、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢である。
【0050】
最後に、本発明の化合物は、常習性薬物の使用中止によって起こる離脱症状の治療のために有用であり得る。そのような常習性薬物としては、タバコなどのニコチン含有製品、ヘロイン、コカイン及びモルヒネなどのオピオイド、ベンゾジアゼピン及びベンゾジアゼピン様薬物、並びにアルコールが挙げられる。常習性薬物からの離脱は、一般に、不安及び欲求不満、怒り、不安、集中困難、焦燥感、心拍数の減少、並びに食欲増加及び体重増を特徴とする外傷的体験である。
【0051】
この文脈において、「治療」という用語は、離脱症状及び禁断の治療、予防(prevention)、予防策(prophylactics)、及び軽減、並びに常習性薬物の自発的な摂取量の低下という結果をもたらす治療をも包含する。
【0052】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体の治療有効量を含む、新規の医薬組成物を提供する。
【0053】
治療に使用するための本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、化合物そのままの形態で投与され得る一方で、1種又は複数のアジュバント、添加剤、担体、緩衝剤、賦形剤、及び/又はその他の慣用の医薬補助剤と共に、場合により生理学的に許容される塩の形態で、医薬組成物中に、活性成分を導入することが好ましい。
【0054】
好ましい実施形態態において、本発明は、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、このための1種又は複数の薬学的に許容される担体、並びに、場合により、当技術分野において既知で使用されるその他の治療の及び/又は予防の(prophylactic)成分と共に含む、医薬組成物を提供する。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分に適合し、その受容者にとって有害ではないという意味において「許容される」ものでなければならない。
【0055】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適したいかなる便宜な経路によっても投与され得る。好ましい投与経路としては、経口投与、特に錠剤、カプセル剤、糖衣錠、散剤、又は液剤の形態で、及び非経口投与、特に皮膚内、皮下、筋肉内、又は静脈内注射が挙げられる。本発明の医薬組成物は、当業者により、所望の製剤に適した標準的方法及び従来技術を使用して製造し得る。所望ならば、活性成分の徐放を行うように適合させた組成物も使用し得る。
【0056】
製剤及び投与に関する技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版に見ることができる。
【0057】
実際の投薬量は、治療される疾患の性質及び重症度に依存し、医師の裁量の範囲内であり、及び所望の治療効果を生むための本発明の特定の状況に対する投薬量の用量設定により、多様であり得る。しかし、個々の用量当たり、活性成分が約0.1から約500mg、好ましくは約1から約100mg、最も好ましくは約1から約10mgを含む医薬組成物が、治療的処置に適切であると現在考えられている。
【0058】
活性成分は、1日当たり1回又は数回の用量で投与され得る。特定の場合には、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.程度の少量の投薬量で満足な結果を得ることができる。投薬量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると現在考えられている。好ましい範囲は、約0.1μg/kgから約10mg/kg/1日i.v.及び約1μg/kgから約100mg/kg/1日p.o.である。
【0059】
治療の方法
本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体は、価値あるニコチン性受容体モジュレーターであり、それゆえコリン作動性機能不全を含む様々な不快症状、並びにnAChRモジュレーターの作用に反応する様々な障害の治療に有用である。
【0060】
別の態様において、本発明は、コリン作動性受容体のモジュレーションに反応する、ヒトを含む生動物体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法を提供し、この方法は、本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体の有効量を、その必要のあるヒトを含む、そのような生動物体に投与するステップを含む。
【0061】
本発明の文脈においては、「治療」という用語は、治療、予防(prevention)、予防策(prophylaxis)又は軽減を含み、「疾患」という用語は、問題となっている疾患に関係する疾病、疾患、障害及び状態を含む。
【0062】
本発明によって考えられている好ましい適応症は、上述したものである。
【0063】
適切な投薬量の範囲は、正確な投与法、投与の形態、投与が意図している適応症、治療する対象、治療する対象の体重、さらに、担当医又は担当獣医の好み及び経験に、通常通り依存して、1日当たり0.1から1000ミリグラム、1日当たり10から500ミリグラム、特には、1日当たり30から100ミリグラムであると現在考えられている。
【0064】
特定の場合には、0.005mg/kg i.v.及び0.01mg/kg p.o.の低投薬量で満足できる結果が得られ得る。投薬量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.である。好ましい範囲は、約0.001から約1mg/kg i.v.及び約0.1から約10mg/kg p.o.である。
【0065】
本発明を附属の図を参照してさらに例示するが、図1A及び図1Bは、ツメガエル(Xenopus)卵母細胞中で発現したnAChRα7受容体中に誘発されるアセチルコリン電流に与える、化合物4(すなわち、4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール)のモジュレーション効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】化合物4の不存在及び0.01から31.6μMの存在下で、100μMのアセチルコリンにより誘発される電流の軌跡を示す図である。
【図1B】化合物4により誘発される、100μMのアセチルコリン反応の正のモジュレーションに対する濃度−反応の関係、すなわち、log[c](M)に対する対照のモジュレーション(%)を示す図である。算出されたEC50値は、1.1μMであり、アセチルコリン反応の最大モジュレーションは、277%である。
【実施例】
【0067】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに例示するが、本実施例は、特許請求されている本発明の範囲を少しも制限することを意図していない。
【0068】
(例1)
調製実施例
一般的な実験手順
本発明の1,2,3−トリアゾール誘導体の化学的な合成は、適切に置換されたベンジルアジドを用いて想定されている。これらは、対応する市販の塩化ベンジル又は臭化ベンジルからアジ化ナトリウムとの反応によって調製できる。この合成法の例として、中間体1(INT−1)の合成の詳細な実験手順を述べる。適切な塩化ベンジル又は臭化ベンジルが市販されていなかった時には、それらは対応するベンジルアルコールから、塩化オキサリルとの周知の処理で調製した。その他の市販されていない塩化ベンジル又は臭化ベンジルは、文献に記載されている既知の方法により得ることができる。これらの後者の方法の例として、INT−2の合成を報告されている。得られたベンジルアジドは最終的に、適切な活性メチレン化合物、すなわち、(置換又は非置換の)市販のフェニルアセトニトリル誘導体との塩基触媒で位置特異的な縮合反応にかけた。メチルエーテル置換基(単数又は複数)が存在する場合には、ルイス酸である三臭化ホウ素での穏やかな求核置換反応で、環化付加反応の後にエーテル結合の解裂が続いた。
【0069】
1−アジドメチル−4−メトキシ−ベンゼン(中間体化合物、INT−1)
エタノール(50ml)及び水(4ml)の混合物中の、市販の4−メトキシベンジルクロリド(2.50g、15.963mmol、1当量)の溶液に、過剰のアジ化ナトリウム(10.3g、159.63mmol、10当量)を加え、懸濁液を24時間還流させた。得られた反応混合物をろ過(無機の塩を除くため)し、回収した固体をエタノールで洗浄する。ろ液を濃縮し、エタノール溶液残渣を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出する。合一した有機層を塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過し、乾燥するまで蒸発させ、無色の液体2.7gを得、それをそのまま次のステップに用いる。赤外線スペクトル(cm−1)(N3):2096。
【0070】
4−アジドメチル−ベンゼンスルホンアミド(INT−2)
N,N−ジメチルホルムアミド(30ml)中の、4−ブロモメチル−ベンゼンスルホンアミド(4.500g、17.9917mmol)((Journal of Medicinal Chemistry、1990、第33巻(9)、2437−2451頁に、Yee YKらにより記載されているように)4−ブロモメチル−ベンゼンスルホニルクロリドからアンモニアでの処理で調製した)の撹拌された溶液に、アジ化ナトリウム(11.696g、179.917mmol)を加え、反応混合物を窒素雰囲気下で14時間90℃で加熱する。懸濁液をろ過し、過剰のアジ化ナトリウムを除去し、固体の残渣を酢酸エチル(50mlで4回)で洗浄する。母液を濃縮し、粗黄色液体(3.820g、100%物質収支)を得、それをそのまま次のステップに用いる。IR:2098.8cm−1
【化3】

【0071】
5−(2,4−ジクロロ−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(化合物1)
エタノール(30ml)中の、1−アジドメチル−4−メトキシ−ベンゼン(0.500g、3.064mmol、1当量)及び市販の2,4−ジクロロベンジルシアニド(0.684g、3.677mmol、1.2当量)の撹拌冷氷溶液に、エタノール(15ml)中のナトリウムメトキシド(0.248g、4.596mmol、1.5当量)の冷氷溶液を滴加する。反応混合物を室温になるまで放置し、一晩撹拌する。得られた混合物を乾燥するまで蒸発させ、粗残渣をジクロロメタンに溶解し、塩水で洗浄して、MgSO上で乾燥し、ろ過し、再び乾燥まで蒸発させ、茶色がかった樹脂として粗化合物1.1gを得る。この粗物質を、ヘキサン中26%の酢酸エチルで溶出させるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、白色固体として表題化合物0.225gを得る(収率:約24%)。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+349.061Da。計算値、349.062292Da、差、−3.7ppm。融点134.4〜136.8℃。
【0072】
3−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(化合物2)
エタノール(15ml)中の、1−アジドメチル−2,4−ジクロロ−ベンゼン(0.500g、2.4747mmol、1当量)及び4−メトキシフェニルアセトニトリル(0.4506g、2.9696mmol、1.2当量)の撹拌冷氷溶液に、メタノール(15ml)中の、ナトリウムメトキシド(0.200g、3.712mmol、1.5当量)の新しく調製した冷氷溶液を、20分間かけて滴加する。得られた反応混合物を室温になるまで放置し、一晩撹拌する。乾燥まで蒸発させ、茶色の半固体の残渣0.940gを得る。この粗残渣をカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中5〜30%の酢酸エチルで溶出して精製し、茶色がかった固体として表題化合物0.175gを得る(収率:20%)。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+349.0605Da。計算値、349.062292Da、差、−5.1ppm。融点156.5〜159℃。
【0073】
4−[5−アミノ−1−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール(化合物3)
無水ジクロロメタン(10ml)中の、3−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(0.200g、0.5727mmol、1当量)の、撹拌氷冷溶液に、−78℃に冷却し窒素雰囲気下に置かれた、無水ジクロロメタン(10ml)中の三臭化ホウ素(1.00g、4.0089mmol、7当量)の溶液を滴加する。反応混合物が自然に室温になるまで放置し、一晩撹拌する。次いで混合物を氷−塩浴中で再び冷却し、メタノール(5ml)で、続いて水(10ml)で処理して過剰の試薬を分解する。有機層を水で洗浄し、10%NaOHで抽出する。アルカリ性抽出液を酸性化して、ろ過で回収した沈殿物(0.220g)を得る。後者の生成物を、カラムクロマトグラフィーで、ヘキサン中30%の酢酸エチルで溶出して精製し、薄茶色の固体として表題化合物(0.120g)を得る(収率:62%)。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+335.0481Da。計算値、335.046642Da、差、4.4ppm。
【0074】
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール(化合物4)
無水ジクロロメタン(20ml)中の、5−(2,4−ジクロロ−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(0.500g、1.4318mmol、1当量)の溶液に、−78℃に冷却し窒素雰囲気下に置かれた、無水ジクロロメタン(10ml)中の三臭化ホウ素(2.51g、10.0226mmol、7当量)の溶液を滴加する。反応混合物が自然に室温になるまで放置し、一晩撹拌する。次いで混合物を氷−塩浴中で再び冷却し、メタノール(10ml)で、続いて水(15ml)で処理して過剰の試薬を分解する。有機層を水で洗浄し、10%NaOHで抽出する。アルカリ性抽出液を酸性化して、ろ過で回収した沈殿物(0.430g)を得る。後者の生成物を、カラムクロマトグラフィーで、ヘキサン中40%の酢酸エチルで溶出して精製し、白色固体として表題化合物(0.300g)を得る(収率:62%)。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+335.0478Da。計算値、335.046642Da、差、3.5ppm。融点、172.5〜174.1℃。
【0075】
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド(化合物5)
メタノール(20ml)中の、市販の2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルアセトニトリル(2.297g、11.3083mmol)及び4−アジドメチル−ベンゼンスルホンアミド(INT−2)(2.000g、9.4236mmol)の撹拌氷冷溶液に、ナトリウムメトキシド(0.7636g、14.1354mmol)を、少しずつ加え、反応混合物が自然に室温になるまで放置し、この温度でさらに70時間撹拌する。得られた反応混合物を乾燥まで蒸発させ、粗残渣を分取溶出カラムクロマトグラフィーにより精製し、0.055g(収率1.5%)の表題化合物を得る。融点、180.1〜181.3℃。
【0076】
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド(化合物6)
メタノール(20ml)中の、市販の2,4−ジクロロベンジルシアニド(1.893g、10.1776mmol)及び4−アジドメチル−ベンゼンスルホンアミド(INT−2)(1.800g、8.4813mmol)の撹拌氷冷溶液に、ナトリウムメトキシド(0.7636g、14.1354mmol)を、少しずつ加え、反応混合物が自然に室温になるまで放置し、この温度でさらに54時間撹拌する。得られた反応混合物を乾燥まで蒸発させ、粗残渣を分取溶出カラムクロマトグラフィーにより精製し、0.447g(収率12%)の表題化合物を得る。融点、204〜205.6℃。
【0077】
5−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(化合物7)
メタノール(40ml)中の、2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニルアセトニトリル(1.494g、7.3538mmol)及び1−アジドメチル−4−メトキシ−ベンゼン(1.000g、6.1282mmol)(Heterocycles、2007年、第71巻(1)、27〜38頁に、Compain−Batissou Mによって記載されているようにして調製した)の撹拌氷冷溶液に、ナトリウムメトキシド(0.497g、9.1922mmol)を、少しずつ加え、反応混合物が自然に室温になるまで放置し、さらに60時間撹拌する。得られた反応混合物を濃縮し、水を加え、ジクロロメタン(80mlで3回)で抽出する。合一した有機層を塩水(15ml)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過し、茶色の粗液体残渣(2.240g、100%物質収支)を得るまで濃縮する。この粗物質を、カラムクロマトグラフィーにより、シリカゲル(60〜120メッシュ)上、ヘキサン中25%の酢酸エチルで溶出して精製し、オフホワイト色の固体として表題化合物を得る(1.010g、収率45%)。融点、153.2〜154.4℃。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+367.1174Da。計算値、367.118198Da、差、−2.2ppm。
【0078】
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール(化合物8)
無水ジクロロメタン(35ml)中の、5−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン(化合物7)(0.450g、1.2284mmol)の撹拌溶液に、−78℃に冷却し窒素気流下で、5mlの無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素(2.154g、約0.81ml、8.5988mmol)の溶液を滴加する。混合物が自然に室温になるまで一晩放置し、混合物を氷−塩浴中で再び冷却し、メタノール10ml及び水15mlを滴加して過剰の試薬を分解する。5分間撹拌した後、10%の水酸化ナトリウム溶液(15ml)を加え、水層を一度分離し、10%の塩酸溶液で酸性化し、クロロホルム(80mlで3回)で抽出する。合一した有機層をMgSO上で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、固体残渣(0.410g)を得る。これを、カラムクロマトグラフィーにより、シリカゲル(60〜120メッシュ)上、ヘキサン中35%の酢酸エチルで溶出して精製し、オフホワイト色の固体として表題化合物(0.255g、収率57%)を得る。融点、168.2〜169.5℃。LC−ESI−HRMSの測定値、[M+H]+353.1021Da。計算値、353.102548Da、差、−1.3ppm。
【0079】
(例2)
生物学的活性
この実施例では、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞において異種発現したnAChRα7受容体を用いて、化合物4(すなわち、4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール、図1A及び1B)による野生種nAChRα7受容体の正のモジュレーションを測定した。
【0080】
通常の二電極電圧クランプを用いて、nAChRα7チャネルを通る電流を測定し、アゴニスト含有溶液のパルスをnAChRα7を発現している卵母細胞上に適用することにより、nAChRα7電流が活性化された。
【0081】
簡潔に言えば、卵母細胞を記録チャンバー内に置き、90mMのNaCl、2.5mMのKCl、2.5mMのCaCl、1mMのMgCl及び5mMのHEPES(pHを7.4に調整した)を含む、卵母細胞リンゲル(OR)液で、連続的に表面灌流した。卵母細胞を−60mVでクランプし、OR中に溶解した100μMのアセチルコリンの20秒パルスを適用して、電流を誘発させた。アセチルコリン適用の間隔は5分であり、その間に、卵母細胞をORで洗った。最初の3回の適用は、100μMのアセチルコリンの一定の反応水準を得るようにするための対照適用であった。続く8回の試験適用の間、化合物4の濃度を増加させ(0.01〜31.6μM)て、アセチルコリン(100μM)の適用の30秒前及び適用間に与えたが、それはアセチルコリン誘発電流強度において確かな増加を引き起こした。
【0082】
化合物4の存在下での正のモジュレーションを、(試験−対照)/対照×100%として計算し、この正のモジュレーションに対する濃度反応曲線を、S字型ロジスティック式:I=Imax/(1+(EC50/[化合物]))にカーブフィッテイングした。上式中、Imaxは、対照の反応の最大モジュレーション、EC50は、最大反応の半分を引き起こす濃度、及びnは、傾き係数である。
【0083】
化合物4に対して計算されたEC50値及びImax値は、それぞれ1.1μM及び277%であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによって表される1,2,3−トリアゾール誘導体、
【化1】


その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩
(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、並びに
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表し、又は、
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ若しくはアルコキシを表し、並びに
及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、又は
及びRのうちの1つは、ハロを表し、R及びRのうちの他の1つは、トリフルオロメチルを表し、R及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ若しくはスルファモイルを表す。)。
【請求項2】
請求項1に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩
(式中、R及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ若しくはシアノを表し、並びに
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はスルファモイルを表す。)。
【請求項3】
請求項1に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩
(式中、R及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ又はアルコキシを表し、並びに
及びRは共に、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ又はシアノを表す。)。
【請求項4】
請求項1に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩
(式中、R及びRのうち1つは、ハロを表し、並びに
及びRのうち他の1つは、トリフルオロメチルを表し、並びに
及びRは、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はスルファモイルを表す。)。
【請求項5】
5−(2,4−ジクロロ−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、
3−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、
4−[5−アミノ−1−(2,4−ジクロロ−ベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェノール、
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール、
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−[5−アミノ−4−(2,4−ジクロロ−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−ベンゼンスルホンアミド、
5−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−3H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルアミン、又は
4−[5−アミノ−4−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)−[1,2,3]トリアゾール−1−イルメチル]−フェノール
である請求項1に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の、1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩、又はそのプロドラッグの治療有効量を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬物としての使用のための、請求項1から5までのいずれか一項に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩。
【請求項8】
ヒトを含む哺乳動物の、ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患又は障害又は状態の、治療、予防又は軽減のための医薬組成物の製造のための、請求項1から5までのいずれか一項に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される付加塩の使用。
【請求項9】
ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する疾患又は障害又は状態が、不安、認知障害、学習障害、記憶障害若しくは機能不全、アルツハイマー病、注意欠陥、注意欠陥多動性障害、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ジルドラトゥレット症候群、うつ病、躁病、躁うつ病、精神障害、統合失調症、強迫性障害(OCD)、パニック障害、神経性拒食症及び過食症及び肥満などの摂食障害、ナルコレプシー、侵害受容、AIDS認知症、老年性認知症、末梢性ニューロパチー、自閉症、失読症、遅発性ジスキネジー、運動過多、てんかん、外傷後症候群、社会恐怖症、睡眠障害、仮性認知症、ガンザー症候群、月経前症候群、黄体期後期症候群、慢性疲労症候群、無言症、抜毛癖、時差ぼけ、高血圧、不整脈、痙攣障害を含む平滑筋収縮障害、狭心症、早産、痙攣、下痢、喘息、てんかん、遅発性ジスキネジー、運動過多、早漏症及び勃起困難、甲状腺中毒症及び褐色細胞腫を含む内分泌系障害、一過性無酸素症及び誘発性神経変性を含む神経変性障害、疼痛、軽度の、中等度の及び重度の疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、再発性疼痛、神経因性疼痛、片頭痛によって起こる疼痛、術後痛、幻肢痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中枢性疼痛、糖尿病性ニューロパチー関連疼痛、ヘルペス後神経痛関連疼痛、又は末梢神経損傷関連疼痛、炎症性皮膚障害、ざ瘡、酒さ、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及び下痢を含む炎症性障害、ニコチンの離脱症状、ヘロイン、コカイン及びモルヒネを含むオピオイドの離脱症状、ベンゾジアゼピン様薬物及びアルコールを含むベンゾジアゼピンの離脱症状を含む常習性薬物の使用中止によって起こる離脱症状に伴う障害である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ニコチン性アセチルコリン受容体のモジュレーションに反応する、ヒトを含む生動物体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減の方法であって、請求項1から5までのいずれか一項に記載の1,2,3−トリアゾール誘導体、その立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその薬学的に許容される塩の治療有効量を、その必要のあるそのような生動物体に投与するステップを含む上記方法。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2011−514906(P2011−514906A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550157(P2010−550157)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052729
【国際公開番号】WO2009/112459
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】