説明

ニッケル水素蓄電池

【課題】極板の面積をある一定以上に増大しても、出力が低下することなく大きくなるニッケル水素蓄電池を提供する。
【解決手段】ニッケル水素蓄電池の電極群4は、水素吸蔵合金粒子を結着する非水溶性高分子結着剤を含み且つ単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ah以上である負極板8と、負極板8とともに渦巻き状に巻回された正極板6と、正極板6の内外面と負極板8の外内面との間にそれぞれ配置され、ポリオレフィン系繊維の不織布からなる第1及び第2セパレータ10a,10bとを有する。好ましくは、第1セパレータ10aの不織布には、フッ素ガス処理等から選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、第2セパレータ10bの不織布には、スルホン化処理が施されている。また、第2セパレータ10bの空隙率は、第1セパレータ10aの空隙率よりも大である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニッケル水素蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素蓄電池の用途は広範に渡るが、ニッケル水素蓄電池は、高出力であることから、ハイブリッド自動車や電気自動車の電源にも適用されている。ニッケル水素蓄電池の高出力化は、例えば、正極板、負極板及びセパレータを薄型化しながら、正極板と負極板との対向面積を増大することによって行われてきた。
一方、ニッケル水素蓄電池においては、自己放電特性も重要であり、自己放電を防止するための手段として、セパレータをスルホン化処理することが知られている。
【0003】
ただし、スルホン化処理されたセパレータは、フッ素ガス処理等の他の親水化処理が施されたセパレータに比べて、セパレータを構成する繊維がダメージを受け、強度が低下し易い。このため、スルホン化処理されたセパレータを用いた円筒型のニッケル水素蓄電池では、正極板と負極板とがセパレータを破って直接接触し、内部ショートが発生する虞がある。
【0004】
また、スルホン化処理されたセパレータは、他の親水化処理が施されたセパレータに比べて吸液性に劣る。特に、高出力用途電池では、正極板と負極板との間でイオンの移動経路(電導経路)を確保する必要があり、減圧注液により、セパレータ内に液を浸透させている。この点、フッ素ガス処理されたセパレータは吸液性・親水性に優れており、フッ素ガス処理されたセパレータを用いたニッケル水素蓄電池では、注液後もそれ自身の吸液性にて液浸透が行われるため電導経路が十分に確保され、高出力化が図られる。その他、プラズマ処理、界面活性剤処理などもフッ素ガス処理と同様の効果が得られる。
【0005】
そこで、自己放電抑制と耐ショート性、出力特性との関係から、2種類のセパレータを用いた円筒型のニッケル水素蓄電池が提案されている(特許文献1)。
特許文献1の電池では、2種類のセパレータのうち一方のセパレータには、強度を確保すべく例えばフッ素ガス処理が施され、他方のセパレータにはスルホン化処理が施されている。そして、フッ素ガス処理が施されたセパレータが正極板の外側に配置され、スルホン化処理されたセパレータが正極板の内側に配置される。
【特許文献1】特開2004-31293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のニッケル水素蓄電池にあっては、極板の面積をある一定の面積以上に増大すると、逆に出力が低下するという問題がある。特にこの問題は、電池の内圧上昇を防止すべく、負極板が非水溶性高分子結着剤を含む場合に顕著になる。
本発明は上述の事情に基づいてなされたものであって、その目的とするところは、極板の面積をある一定以上に増大しても、出力が低下することなく大きくなるニッケル水素蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく種々検討を重ねる過程で、上述した問題の原因を解明し、これを解決することに成功して本発明に想到した。
より詳しくは、本発明者らは、充放電させた電池を分解して負極板を観察したところ、負極板の面積がある一定の面積以上に増大すると、電解液の浸透が不十分な領域が発生することを見出した。そして、このような領域の存在から、2種類のセパレータのうち一方のセパレータには、強度を確保すべく例えばフッ素ガス処理が施され、他方のセパレータにはスルホン化処理が施されており、かつ、負極板の面積がある一定の面積以上に増大すると、正極板と負極板との間においてアルカリ電解液が不均一に分布するようになり、増大した負極板の面積が有効に活用されず、高出力化が阻害されると考えた。
【0008】
このようなアルカリ電解液の不均一な分布について発明者らは更に検討し、以下の原因を究明した。すなわち、アルカリ電解液の不均一な分布は、正極板、負極板及びセパレータの薄型化及び大型化に伴って、これら極板とセパレータとの間の隙間が減少して分散し、隙間に存在するアルカリ電解液が局在化したことに加えて、薄型化に伴ってセパレータの緻密性を向上させる必要があり、それに伴い電解液の吸収が困難になっていること、スルホン化処理セパレータとフッ素ガス処理セパレータの吸液性の違いなどからセパレータ内でもアルカリ電解液が局在化したことによると考えた。特に、負極板とセパレータとの間の隙間でのアルカリ電解液の局在化は、負極板が非水溶性高分子結着剤を含む場合、当該結着剤の撥水性に基づきより顕著になるものと考えた。
【0009】
そこで、発明者らは、正極板と負極板との間でアルカリ電解液を均一に分布させる手段を開発し、本発明に想到した。
本発明によれば、容器内にアルカリ電解液とともに収容された渦巻き状の電極群を備えるニッケル水素電池において、前記電極群は、水素吸蔵合金粒子及び当該水素吸蔵合金粒子を結着する非水溶性高分子結着剤を含み且つ単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ah以上である負極板と、前記負極板とともに渦巻き状に巻回され、正極活物質として水酸化ニッケルを含む正極板と、前記正極板の外面と前記負極板の内面との間に配置され、ポリオレフィン系繊維の不織布からなる第1セパレータと、前記正極板の内面と前記負極板の外面との間に配置され、ポリオレフィン系繊維の不織布からなる第2セパレータとを有し、前記第1セパレータ及び第2セパレータのうち一方の不織布には、フッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、他方の不織布にはスルホン化処理が施され、前記他方の不織布からなるセパレータの空隙率は、前記一方の不織布からなるセパレータの空隙率よりも大であることを特徴とするニッケル水素蓄電池が提供される(請求項1)。
【0010】
好適な態様として、前記第1セパレータの不織布に前記フッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、前記第2セパレータの不織布に前記スルホン化処理が施されている(請求項2)。
好適な態様として、前記第2セパレータの目付量は、前記第1セパレータの目付量と略同じであり、且つ、前記電極群における前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも厚い(請求項3)。
【0011】
好適な態様として、0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したとき、前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも大である(請求項4)。
好適な態様として、前記第2セパレータの目付量は、前記第1セパレータの目付量と略同じであり、且つ、前記電極群に巻回される前において、前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも厚い(請求項5)。
【0012】
好適な態様として、前記不織布は、前記ポリオレフィン系繊維として、ポリオレフィン系樹脂の芯材と、当該芯材を被覆し且つ当該芯材よりも融点が低いポリオレフィン系樹脂の鞘材とからなる芯鞘繊維を含み、前記第1及び第2セパレータの不織布は、前記芯鞘繊維を含むウェブを所定の結合温度に加熱して形成され、前記第2セパレータの不織布を形成するときの結合温度は、前記第1セパレータの不織布を形成するときの結合温度よりも高い(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1のニッケル水素蓄電池では、スルホン化処理された不織布からなるセパレータ(スルホン化処理セパレータ)は、フッ素ガス処理、プラズマ処理、界面活性剤処理から選ばれる親水化処理がなされた不織布からなるセパレータ(フッ素ガス処理セパレータ)に比べて親水性が低い。しかしながら、この電池では、スルホン化セパレータの空隙率が、フッ素ガス処理セパレータの空隙率よりも大であることによって、スルホン化セパレータの吸液性が確保される。
【0014】
このため、たとえ緻密性が高くても、スルホン化処理セパレータの内部にアルカリ電解液が略均一に分布する。また、空隙が確保されたことにより減圧注液での吸液性が向上するため、負極板が撥水性の非水溶性高分子結着剤を含んでいても、負極板とスルホン化処理セパレータとの間の隙間にアルカリ電解液が略均一に分布する。従って、この電池では、負極板の単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ahを超えていても、正極板と負極板とが対向する全領域にてアルカリ電解液が均一に分布し、この結果として、電池反応が均一に進行して高出力化が達成される。
【0015】
請求項2のニッケル水素蓄電池では、正極板の内面と負極板の外面との間に配置される第2セパレータの不織布にスルホン化処理が施されており、正極板の外面と負極板の内面との間に配置された第1セパレータは、第2セパレータよりも強度が高い。このように、第1セパレータに、より強度の高いフッ素ガス処理セパレータを適用したことで、このニッケル水素蓄電池では、内部ショートの発生が防止される。
【0016】
請求項3のニッケル水素蓄電池では、略同一の目付量にて、第2セパレータの厚さを第1セパレータの厚さよりも厚くすることによって、簡単な構成にて、第2セパレータの空隙率が第1セパレータの空隙率よりも大になる。
請求項4のニッケル水素蓄電池では、0.98MPa(1kg/cm)以上2.94MPa(3kg/cm)以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したとき、第2セパレータの厚さは第1セパレータの厚さよりも大であることによって、第2セパレータの空隙率が第1セパレータの空隙率よりも確実に大になる。
【0017】
請求項5のニッケル水素蓄電池では、巻回前において、第2セパレータが第1セパレータよりも厚いため、電極群においても、第2セパレータが第1セパレータよりも厚くなる。この結果として、この電池では、第2セパレータの空隙率が第1セパレータの空隙率よりも容易に増大される。
請求項6のニッケル水素蓄電池では第2セパレータの不織布を形成するときの結合温度が、前記第1セパレータの不織布を結合するときの結合温度よりも高いことから、第2セパレータの不織布における骨格は、第1セパレータの不織布の骨格よりも高強度である。この結果として、第2セパレータの空隙率が第1セパレータの空隙率よりも確実に大になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態のニッケル水素蓄電池を示す。
この電池は、有底円筒形状の外装缶2を備え、外装缶2の中に渦巻き状の電極群4がアルカリ電解液(図示せず)とともに収容されている。アルカリ電解液は、溶質の主体として水酸化カリウム(KOH)を含む苛性アルカリ水溶液である。アルカリ電解液は、水酸化リチウム(LiOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)のうち一方又は両方を更に含んでいてもよい。
【0019】
電極群4は、それぞれ帯状の正極板6、負極板8、第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bを渦巻き状に巻回して形成され、第1セパレータ10aは、正極板6の外面と負極板8の内面との間に位置付けられ、第2セパレータ10bは、正極板6の内面と負極板8の外面との間に位置付けられている。
外装缶2の開口端内には、リング状の絶縁性ガスケット12を介して、中央にガス抜き孔14を有する円形の蓋板16配置されている。これら絶縁性ガスケット12及び蓋板16は、かしめ加工された外装缶2の開口端縁によって固定されている。
【0020】
電極群4の正極板6と蓋板16の内面との間には、これらの間を電気的に接続する正極集電体17及び正極リード18が配置されている。一方、電極群4の負極板8と外装缶2の底面との間には、これらの間を電気的に接続する負極集電体20が配置されている。
蓋板16の外面には、ガス抜き孔14を閉塞するように弁体22が配置され、更に、弁体22を囲むようにフランジ付きの円筒形状の正極端子24が取り付けられている。弁体22の背面と正極端子24の端壁との間には、圧縮コイルばね26が配置され、圧縮コイルばね26は、所定の付勢力にて弁体を蓋板に押し付けている。
【0021】
以下、正極板6、負極板8、第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bについて詳述する。
正極板6は、焼結式ニッケル電極であり、正極基板として多孔性のニッケル焼結基板を有する。ニッケル焼結基板の細孔内には正極合剤が担持され、正極合剤は正極活物質としての水酸化ニッケル及び導電剤としての水酸化コバルトを含む。
【0022】
負極板8は、水素吸蔵合金電極であり、負極基板として、例えばパンチングメタルを有する。パンチングメタルには、その貫通孔内に負極合剤が充填されるとともに、その両面に層状の負極合剤が保持されている。負極板8の両面における負極合剤層の表面積をXとし、負極板の容量をYとしたとき、容量Yに対する表面積Xの比(単位容量当たりの有効表面積)X/Yは70cm/Ah以上である。
【0023】
負極合剤は、水素吸蔵合金粒子、結着剤及び必要に応じて導電剤を含む。水素吸蔵合金粒子は、例えばAB型、AB3.5型の水素吸蔵合金からなり、負極活物質としての水素を電気化学的に吸蔵・放出可能である。前述の負極板8の容量Yは、温度が40℃で、水素平衡圧が1MPaのときの合金の単位質量当たりの水素吸蔵量と負極板8の合金質量の積から求められる。
【0024】
導電剤としては、例えばカーボン粉末などを用いることができる。
結着剤は非水溶性高分子からなり、例えば、SBR(スチレンブタジエンラテックス)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の他、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族オレフィン、共役ジエン、オレフィンから選択される2種以上を含む共重合体から選択された1種又は2種以上を用いることができる。なお、結着剤として、必要に応じて非水溶性高分子結着剤とともに、少量の水溶性増粘剤を併用してもよく、例えば、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PEO(ポリエチレンオキシド)、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸塩等から選択された1種又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bは、それぞれ、ポリオレフィン系合成樹脂の繊維からなる不織布に、親水化処理を施したものである。
具体的には、ポリオレフィン系合成樹脂の繊維としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂を用いることができ、不織布は合成樹脂の繊維を材料として、例えば乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等によって作製される。
【0026】
また、繊維の構造については、単一構造や芯鞘型の複合構造の繊維を単独又は混合して用いることができる。芯鞘型の各繊維では、ポリオレフィン系合成樹脂からなる芯材の表面が、芯材とは異なるポリオレフィン系合成樹脂の鞘材で被覆されている。
第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bに用いられる不織布の目付量は、例えば30g/m以上60g/m以下の範囲にあり、電極群4における第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bの各厚さ(巻回厚さ)は、例えば0.04m以上0.12mm以下の範囲にある。
【0027】
第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bの不織布に施される親水化処理は相違し、第1セパレータ10aでは、不織布に対してフッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施される。別の表現をすれば、第1セパレータ10aでは、不織布に対してスルホン化処理以外の親水化処理が施される。
フッ素ガス処理は、例えば、不活性ガスで希釈したフッ素ガスに酸素ガス、二酸化炭素ガス、二酸化硫黄ガスなどを更に添加した混合ガスを用いて不織布を処理することによって行なわれる。フッ素ガス処理によって、不織布の繊維にはOH、COOH、SO3Hなどの親水基が導入される。
【0028】
界面活性剤処理では、不織布が、界面活性剤を溶解した溶液中に浸漬された後、乾燥させられる。界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルエトキシカルボン酸塩、アシル化アミノ酸塩等の飽和カルボン酸塩や硫酸エステル塩、スルホン酸塩等を用いることができる。界面活性剤処理では、不織布の繊維に界面活性剤が吸着し、親水性が向上する。
【0029】
また、プラズマ処理は、酸素ガスをプラズマ化して酸素のラジカルを発生させ、この酸素のラジカルで不織布を処理することにより行われる。プラズマ処理によって、不織布の繊維にはOH、COOH基等の親水性官能基が導入される。
なお、上記親水化処理のなかでは、フッ素ガス処理が吸液性と長期安定性に優れるため好ましい。
【0030】
一方、第2セパレータ10bの不織布には、スルホン化処理が施される。スルホン化処理は、硫酸もしくは発煙硫酸等の硫酸基を含む酸で不織布を処理することにより行われる。スルホン化処理によって不織布の繊維には、スルホン基(−SOH)などのSに起因した官能基が導入される。
ここで、電極群4において、第2セパレータ10bの空隙率は、第1セパレータ10aの空隙率よりも大である。換言すれば、電極群4における第2セパレータ10bの密度は、第1セパレータ10aの密度よりも低く、第2セパレータ10bは、第1セパレータ10aよりも疎である。
【0031】
このように、第2セパレータ10bの空隙率を第1セパレータ10aの空隙率よりも大にすべく、第1実施形態では、好適な態様として、第1セパレータ10aの目付量は、第2セパレータ10bの目付量に等しいけれども、電極群4における巻回状態の第2セレータ10bの厚さ(巻回厚さ)は、第1セパレータ10aの巻回厚さよりも厚い。
そして、第2セレータ10bの巻回厚さを第1セパレータ10aの巻回厚さよりも厚くするために、巻回前の帯状の第2セレータ10bの厚さ(元厚さ)が、第1セパレータ10aの元厚さよりも厚くされる。そのために、各親水化処理後の不織布に対して、一対の加熱ロール間を通過させることによって厚さを調整する際、第2セパレータ10bの元厚さが、第1セパレータ10aの元厚さよりも厚くなるように厚さが調整される。なお、上記の厚さ調整は、加熱ロール間を複数回通過させて行っても良い。
【0032】
なお、厚さ調整後の帯状の第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bを0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向にそれぞれ圧縮した場合、第2セパレータ10bの厚さ(圧縮厚さ)が、第1セパレータ10aの圧縮厚さよりも厚くなるのが好ましい。
上述したニッケル水素蓄電池は、負極板8の単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ah以上であり、負極板8が薄型且つ大型である。その上で、この電池は、正極板6と負極板8との間でアルカリ電解液が均一に分布するため、高出力である。理由を以下に示す。
【0033】
上述したニッケル水素蓄電池では、スルホン化処理された第2セパレータ10bは、フッ素ガス処理された第1セパレータ10aに比べて親水性が低い。しかしながら、この電池では、第2セパレータ10bの空隙率が、第1セパレータ10aの空隙率よりも大であることによって、第2セパレータ10bの吸液性が確保されている。
すなわち、電極群4の巻回前において、第2セパレータ10bの元厚さが第1セパレータ10aの元厚さよりも厚く、電極群4においても、第2セパレータ10bの巻回厚さが第1セパレータ10aの巻回厚さよりも厚くなっている。このような巻回厚さの相違にかかわらず、第1セパレータ10a及び第2セパレータ10bに用いられる不織布の目付量は略同一であるため、この電池では、電極群4における第2セパレータ10bの空隙率が第1セパレータ10aの空隙率よりも増大されている。
【0034】
このため、たとえ緻密性が高くても、第2セパレータ10bの内部にアルカリ電解液が略均一に分布する。また、吸液性が確保されたことにより、負極板8が撥水性の非水溶性高分子結着剤を含んでいても、負極板8と第2セパレータ10bとの間の隙間にアルカリ電解液が略均一に分布する。従って、この電池では、負極板8の単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ahを超えていても、正極板6と負極板8とが対向する全領域にてアルカリ電解液が均一に分布し、この結果として、電池反応が均一に進行して高出力化が達成される。
【0035】
なお、この電池では、0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したときの巻回前の第2セパレータ10bの圧縮厚さが第1セパレータ10aの圧縮厚さよりも厚いことによって、第2セパレータ10bの空隙率が、第1セパレータ10aの空隙率よりも確実に大きくなる。
以下、第2実施形態のニッケル水素蓄電池について図1を参照して説明する。
【0036】
第2実施形態のニッケル水素蓄電池は、第1セパレータ20a及び第2セパレータ20bを用いた点が第1実施形態の電池とは異なる。
第1セパレータ20a及び第2セパレータ20bは、主としてポリオレフィン系合成樹脂の繊維からなる不織布に親水化処理を施して形成され、第1セパレータ20aの親水化処理はフッ素ガス処理であり、第2セパレータ20bの親水化処理はスルホン化処理である。
【0037】
この電池でも、電極群4において、第2セパレータ20bの空隙率は、第1セパレータ20aの空隙率よりも大である。
このように、第2セパレータ20bの空隙率を第1セパレータ20aの空隙率よりも大にすべく、第2実施形態では、好適な態様として、第1セパレータ20aの目付量は、第2セパレータ20bの目付量に等しいけれども、電極群4における巻回状態の第2セレータ20bの厚さ(巻回厚さ)は、第1セパレータ20aの巻回厚さよりも厚い。
【0038】
そして、第2セレータ20bの巻回厚さを第1セパレータ20aの巻回厚さよりも厚くするために、巻回前の第1セパレータ20aの厚さ(元厚さ)は第2セパレータ20bの元厚さと略同一であるが、第2セパレータ20bの骨格強度は、第1セパレータ20aの骨格強度よりも大である。
そのために、第1セパレータ20a及び第2セパレータ20bに用いられる不織布は芯鞘型の繊維(芯鞘繊維)を含み、この芯鞘繊維は、鞘材のポリオレフィン系合成樹脂の融点が、芯材のポリオレフィン系合成樹脂の繊維よりも低い。そして、不織布は、芯鞘繊維を含むウェブを例えば110℃以上160℃以下の範囲の結合温度に加熱し、これらの繊維同士を結合して作製されるが、第2セパレータ20bに用いられる不織布の結合温度は、第1セパレータ20aに用いられる不織布の結合温度よりも高く設定される。
【0039】
この電池でも、第2セパレータ20bの空隙率が、第1セパレータ20aの空隙率よりも大であることによって、第2セパレータ20bの吸液性が確保される。この結果として、正極板6と負極板8とが対向する全領域にてアルカリ電解液が均一に分布し、電池反応が均一に進行して高出力化が達成される。
なお、第2実施形態の場合も、0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したときの第2セパレータ20bの圧縮厚さが第1セパレータ20aの圧縮厚さよりも厚いことによって、第2セパレータ20bの空隙率が、第1セパレータ20aの空隙率よりも確実に大きくなる。
【0040】
以下、第3実施形態のニッケル水素蓄電池について図1を参照して説明する。
第3実施形態のニッケル水素蓄電池は、第1セパレータ30a及び第2セパレータ30bを用いた点が第1及び第2の実施形態の電池とは異なる。
第1セパレータ30a及び第2セパレータ30bは、主としてポリオレフィン系合成樹脂の繊維からなる不織布に親水化処理を施して形成され、第1セパレータ30aの親水化処理はフッ素ガス処理であり、第2セパレータ30bの親水化処理はスルホン化処理である。
【0041】
この電池でも、電極群4において、第2セパレータ30bの空隙率は、第1セパレータ30aの空隙率よりも大である。
このように、第2セパレータ30bの空隙率を第1セパレータ30aの空隙率よりも大にすべく、第3実施形態では、好適な態様として、第1セパレータ30aの目付量は、第2セパレータ30bの目付量に等しいけれども、第2セレータ30bの巻回厚さは、第1セパレータ30aの巻回厚さよりも厚い。
【0042】
そして、第2セレータ30bの巻回厚さを第1セパレータ30aの巻回厚さよりも厚くするために、第1セパレータ30aの元厚さは第2セパレータ30bの元厚さと略同一であるが、電極群4の巻回時、第2セパレータ30bに加わるテンションが、第1セパレータ30aに加わるテンションよりも小さくされる。
この電池でも、第2セパレータ30bの空隙率が、第1セパレータ30aの空隙率よりも大であることによって、第2セパレータ30bの吸液性が確保される。この結果として、正極板6と負極板8とが対向する全領域にてアルカリ電解液が均一に分布し、電池反応が均一に進行して高出力化が達成される。
【0043】
第3実施形態の場合、当然のことながら、0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したときの第2セパレータ30bの圧縮厚さは、第1セパレータ30aの圧縮厚さに略等しい。
なお、第3実施形態のように、巻回時の第2セパレータ30bのテンションを調整した場合、巻回工程が煩雑になる。このため、第2セパレータの空隙率を第1セパレータの空隙率よりも大にするには、第1実施形態又は第2実施形態のように、第2セパレータの仕様に変更を加えるのが好ましい。すなわち、第2セパレータの元厚さを第1セパレータの元厚さよりも厚くするか、第2セパレータの不織布の骨格強度を第1セパレータの骨格強度よりも強くするか、又は、これらの両方を実施するのが好ましい。
【実施例】
【0044】
実施例1
1.負極板の作製
組成がNd0.9Mg0.1(Ni0.9Co0.03Al0.07)3.5となるように金属原料を秤量して混合し、この混合物を高周波溶解炉で溶解してインゴットを得た。このインゴットを、温度1000℃のアルゴン雰囲気下にて10時間加熱し、インゴットにおける結晶構造を調整した。この後、インゴットを不活性雰囲気中で機械的に粉砕してから、400メッシュ〜200メッシュの間に入る粒子を篩い分け、上記組成を有する希土類―Mg−Ni系水素吸蔵合金粒子を得た。なお、得られた希土類―Mg−Ni系水素吸蔵合金粒子は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量積分50%にあたる平均粒径が25μmであった。
【0045】
得られた合金粒子100質量部に対し、非水溶性高分子結着剤としてSBR(スチレンブタジエンラテックス)0.5質量部、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)0.3質量部及び適量の純水を加えて混練し、負極用スラリを調製した。そして、負極用スラリが塗着されたニッケル製のパンチングシートを、室温での乾燥を経てから圧延・裁断し、有効表面積、即ち、負極板の両面に保持された2つの負極合剤層の表面積の和(縦×横×2面)が990cmの負極板を作製した。
得られた負極板に対し、温度が40℃で水素平衡圧が1.0MPaになるまで水素を吸蔵させ、このときの水素吸蔵量から求めた負極容量は13.5Ahであった。
【0046】
2.正極板の作製
多孔度が約85%の多孔性ニッケル焼結基板を、硝酸ニッケル及び硝酸コバルトを含む比重が1.75の混合水溶液に浸漬した。この浸漬によって、その細孔内にニッケル塩及びコバルト塩を保持した焼結基板を、25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に浸漬し、ニッケル塩及びコバルト塩をそれぞれ水酸化ニッケル及び水酸化コバルトに転換させた。この後、十分に水洗することで焼結基板から水酸化ナトリウム水溶液を除去し、乾燥を経てから、多孔性ニッケル焼結基板の細孔内に水酸化ニッケル及び水酸化コバルトを保持させた。
【0047】
多孔性ニッケル焼結基板に対し、上記した混合水溶液への浸漬、水酸化ナトリウム水溶液への浸漬、洗浄及び乾燥工程からなる充填プロセスを6回繰り返した後、室温で乾燥させてから所定寸法に裁断し、細孔内での水酸化ニッケル及び水酸化コバルトの充填密度が2.5g/cmの焼結式ニッケル電極を作製した。
得られた焼結式ニッケル電極では、有効表面積、即ち、電極の両面において正極合剤を充填した領域の面積の和(縦×横×2面)が920cmであった。
【0048】
3.第1及び第2セパレータの作製
(1)不織布の作製
芯材がポリプロピレンからなり鞘材が低融点ポリエチレンからなる熱接着性を有する芯鞘型複合繊維と、高強度ポリプロピレン繊維とを材料に用い、材料を漉き上げて得たウェブを約135℃の乾燥温度(結合温度)で乾燥させる湿式法にて、目付量が50g/mの不織布を作製した。
(2)第1セパレータの親水化処理(フッ素ガス処理)
得られた不織布を、窒素ガスで希釈したフッ素ガスと二酸化硫黄ガスの混合ガスで処理して表面を改質し、親水性を付与した。
【0049】
(3)第2セパレータの親水化処理(スルホン化処理)
得られた不織布を発煙硫酸に浸漬してスルホン基を付与し、親水性を付与した。このスルホン化処理後の不織布での炭素原子に対する硫黄原子の割合(S/C)は、炭素原子1000個に対して硫黄原子が2.3個の割合であった。
(4)第1及び第2セパレータの厚さ調整
各親水化処理を施した不織布の厚さを、一対の加熱ロール間を通過させることによって調整し、巻回前の帯状の第1セパレータ及び第2セパレータを作製した。なお、この際、第1セパレータの元厚さを0.13mmに調整し、第2セパレータの元厚さを0.15mmに調整した。
【0050】
4.ニッケル水素蓄電池の組立て
得られた正極板、負極板、第1セパレータ及び第2セパレータを、加圧を調整しながら巻回し、渦巻き状電極群を作製した。この際、正極板の外面と負極板の内面との間に第1セパレータが位置付けられ、正極板の内面と負極板の外面との間に第2セパレータが位置付けられ、そして、電極群の外径が31mmになるように巻回した。また、電極群の一端部からは、正極板の基板であるニッケル焼結基板の端部が突出し、他端部からは、負極板の基板であるパンチングメタルの端部が突出するように巻回した。
【0051】
この電極群に対し、その一端部にて突出するニッケル焼結基板に、多数の開口を有する円板状の正極集電体を溶接するとともに、他端部にて突出するパンチングメタルに多数の開口を有する円板状の負極集電体を溶接した。
この後、正極集電体には、正極リードとしての筒状体を更に溶接した。より詳しくは、筒状体は、断面が長円形状のパイプ(例えば、ニッケル製で厚みが0.3mmのもの)の両端部を斜めに切り落として形成される。筒状体は正極集電体の直径上に配置され、筒状体の下底を正極集電体にスポット溶接した。
【0052】
正極リードを溶接した後、電極群を外装缶内に収納し、負極集電体を外装缶の底面に溶接した。この後、外装缶内に、電解液として濃度が30質量%の水酸化カリウム水溶液を減圧注液してから、筒状体の上底に対して別に用意した封口体を溶接した。なお、封口体は、蓋板、絶縁ガスケット、弁体、圧縮コイルばね及び正極端子を含み、その蓋板が筒状体の上底に溶接された。
それから、パンチによって封口体を電極群に向けて押圧し、筒状体を圧縮変形させるとともに、外装缶の開口端縁を内方にかしめ加工し、公称容量6.0Ahの円筒型ニッケル水素蓄電池を作製した。
【0053】
実施例2
第2セパレータに用いる不織布の乾燥温度を約145℃にし、第2セパレータの元厚さを0.13mmに調整したこと以外は実施例1の場合と同様にして、実施例2の電池を組み立てた。
実施例3
第2セパレータの元厚さを0.13mmに調整し、電極群の巻回時、第2セパレータに加えるテンションを小さくしたこと以外は実施例1の場合と同様にして、実施例3の電池を組み立てた。
【0054】
比較例1
第2セパレータの元厚さを0.13mmに調整した以外は実施例1の場合と同様にして、比較例1の電池を組み立てた。
比較例2
表1に示したように、正極板及び負極板の有効表面積を小さくするとともに、第1及び第2セパレータに用いる不織布の目付量及び元厚さを変えたこと以外は比較例1の場合と同様にして、比較例2の電池を組み立てた。
なお、比較例1と比較例2との間では、正極板の活物質充填量及び負極板の負極容量は同じである。
【0055】
5.評価方法
(1)第1セパレータ及び第2セパレータの厚さ
巻回前の帯状の第1セパレータ及び第2セパレータの厚さ(元厚さ)、電極群における第1セパレータ及び第2セパレータの厚さ(巻回厚さ)、並びに、巻回前の帯状の第1セパレータ及び第2セパレータを厚さ方向にて0.98MPa及び2.94MPaにてそれぞれ圧縮したときの厚さ(圧縮厚さ)を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0056】
なお、表1の元厚さは、巻回前の帯状の各セパレータについて、マイクロメータを用いて5点以上で測定した厚さの平均値である。
巻回厚さは、電極群を軸線方向略中央で切断して測定した。すなわち、電極群の横断面における各セパレータの巻始め端部、中間部、及び巻終わり端部の3点での厚さをマイクロスコープを用いて測定し、この3点の厚さの平均値を巻回厚さとして表1に示した。
圧縮厚さは、各セパレータを所定枚数だけ積み重ねた積層体を用いて測定した。すなわち、所定の圧力を印加した状態で積層体の厚さを測定し、積層体の厚さを積層枚数で除算した値を圧縮厚さとして表1に示した。
【0057】
(2)負極板での変色領域の面積割合
実施例1〜3及び比較例1,2の各電池について、温度が25℃の環境下において、1Itの充電電流で充電深度120%まで充電した。この後、1時間の休止時間をおいてから、各電池を温度が70℃の環境下に24時間放置(熟成)した。続けて、再び温度が25℃の環境下において、各電池を1Itの放電電流で0.3Vの終止電圧まで放電させた。それから、上述した充電、休止、放置及び放電工程からなる充放電サイクルを、更に2回繰り返した。
【0058】
かくして充放電サイクルを3回繰り返した各電池を分解して負極板を取り出し、負極板へのアルカリ電解液の浸透状態を調べた。この結果、実施例1〜3及び比較例1では、アルカリ電解液が十分に浸透していない領域があり、この領域では、水素吸蔵合金の酸化によるものと考えられる変色が認められた。そこで、変色領域が確認された負極板については、全表面積に対する変色領域の面積の割合を調べた。この結果を電池の構成とともに表2に示す。なお、変色領域の面積は、その長さ及び幅を測定し、これらの積として算出した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
6.評価結果
(1)表1から、実施例1は、比較例1と比べ、第2セパレータの元厚さ、巻回前厚さ及び、圧縮厚さのいずれもが厚いことがわかる。そして、表2から、実施例1は、比較例1に比べ、変色領域の面積割合が小さいことがわかる。
(2)表1から、実施例2は、比較例1と比べ、第2セパレータの元厚さは同じであるものの、巻回前厚さ及び圧縮厚さが厚いことがわかる。そして、表2から、実施例2は、比較例1に比べ、変色領域の面積割合が小さいことがわかる。
(3)表1から、実施例3は、比較例1と比べ、第2セパレータの元厚さ及び圧縮厚さは同じであるものの、巻回厚さが厚いことがわかる。そして、表2から、実施例3は、比較例1に比べ、変色領域の面積割合が小さいことがわかる。
(4)表1及び表2から、極板の有効表面積が実施例1〜3及び比較例1と比べて小さい比較例2では、第1セパレータ及び第2セパレータの巻回厚さが同一であっても、変色領域がそもそも発生しなかったことがわかる。
【0062】
一方、表1及び表2には示さないけれども、比較例2の電池の出力は、実施例1〜3と比較し、極板の有効表面積が狭いため小さい。これより、負極板における単位容量当たりの有効表面積が大きい電池では、第2セパレータの空隙率を第1セパレータの空隙率よりも大きくすることにより、変色が防止されて高出力化が達成されるのがわかる。
本発明は上記した実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であり、正極板の内面と負極板の外面との間に位置する第2セパレータの空隙率が、正極板の外面と負極板の内面との間に位置する第1セパレータの空隙率が高ければよい。
【0063】
また、第1〜第3実施形態では、正極板6は、焼結式ニッケル電極であったけれども、非焼結式ニッケル電極を用いてもよい。
更に、第1〜第3実施形態では、第1セパレータ10a,20a,30aの不織布に対してフッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、第2セパレータ10b,20b,30bの不織布に対して、スルホン化処理が施され、そして、第2セパレータ10b,20b,30bの空隙率が第1セパレータ10a,20a,30aの空隙率よりも大であってけれども、この逆あってもよい。ただし、内部ショートを防止するためには、第1セパレータ10a,20a,30aの不織布に対してフッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、第2セパレータ10b,20b,30bの不織布に対して、スルホン化処理が施され、そして、第2セパレータ10b,20b,30bの空隙率が第1セパレータ10a,20a,30aの空隙率よりも大であるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態のニッケル水素蓄電池を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
2 外装缶
4 電極群
6 正極板
8 負極板
10a,20a,30a 第1セパレータ
10b,20b,30b 第2セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にアルカリ電解液とともに収容された渦巻き状の電極群を備えるニッケル水素電池において、
前記電極群は、
水素吸蔵合金粒子及び当該水素吸蔵合金粒子を結着する非水溶性高分子結着剤を含み且つ単位容量当たりの有効表面積が70cm/Ah以上である負極板と、
前記負極板とともに渦巻き状に巻回され、正極活物質として水酸化ニッケルを含む正極板と、
前記正極板の外面と前記負極板の内面との間に配置され、ポリオレフィン系繊維の不織布からなる第1セパレータと、
前記正極板の内面と前記負極板の外面との間に配置され、ポリオレフィン系繊維の不織布からなる第2セパレータと
を有し、
前記第1セパレータ及び第2セパレータのうち一方の不織布には、フッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、他方の不織布にはスルホン化処理が施され、
前記第1セパレータ及び第2セパレータのうち前記他方の不織布からなるセパレータの空隙率は、前記一方の不織布からなるセパレータの空隙率よりも大である
ことを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項2】
前記第1セパレータの不織布に前記フッ素ガス処理、プラズマ処理及び界面活性剤処理のなかから選ばれる少なくとも1つの親水化処理が施され、
前記第2セパレータの不織布に前記スルホン化処理が施されている
ことを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項3】
前記第2セパレータの目付量は、前記第1セパレータの目付量と略同じであり、且つ、前記電極群における前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも厚い
ことを特徴とする請求項2に記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項4】
0.98MPa以上2.94MPa以下の範囲の圧力で厚さ方向に圧縮したとき、前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも大である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項5】
前記第2セパレータの目付量は、前記第1セパレータの目付量と略同じであり、且つ、
前記電極群に巻回される前において、前記第2セパレータの厚さは、前記第1セパレータの厚さよりも厚い
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項6】
前記不織布は、前記ポリオレフィン系繊維として、ポリオレフィン系樹脂の芯材と、当該芯材を被覆し且つ当該芯材よりも融点が低いポリオレフィン系樹脂の鞘材とからなる芯鞘繊維を含み、
前記第1及び第2セパレータの不織布は、前記芯鞘繊維を含むウェブを所定の結合温度に加熱して形成され、
前記第2セパレータの不織布を形成するときの結合温度は、前記第1セパレータの不織布を形成するときの結合温度よりも高い
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のニッケル水素蓄電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−207526(P2007−207526A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23674(P2006−23674)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】