説明

ニューロキニン−1アンタゴニストの静脈内用製剤

式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物またはプロドラッグを含む静脈内投与のための薬学的組成物が本明細書に記載されている。この薬学的組成物を調製する方法、および、この薬学的組成物を用いて悪心および/または嘔吐を処置する方法も、本明細書に記載されている。本発明は、概して、処置の必要な患者に静脈内投与することに適した製剤に関し、この製剤は、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物と、水溶性有機溶媒、非イオン系界面活性剤、水不溶性脂質、有機脂質/半固体およびリン脂質からなる群から選択されるビヒクルとを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロキニン−1アンタゴニストおよびそのプロドラッグの静脈内投与用薬学的組成物、この薬学的組成物の製造および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(5S,8S)−8−[{(1R)−1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザスピロ[4.5]デカン−2−オン(式Iの化合物、本明細書では、化合物1と呼ばれることもある)およびその塩は、2006年5月23日に登録された特許文献1(’320号特許)に記載されている。化合物1の合成プロセスは、特定的には、特許文献1の実施例72a(特許文献1の第43欄第55行〜第45欄第20行、第75欄第55行〜第80欄第21行;第90欄第35〜63行、第98欄第1行〜第99欄第24行に例示されており、本明細書に参考として組み込まれる。また、本明細書に参考として組み込まれる、WO2008/11833の実施例1−6も参照)。特許文献2は、NK−1アンタゴニストを含む特定の薬学的組成物を開示している。この明細書に記載の製剤は、約1〜7個のスルホン酸ナトリウム基が、少なくとも1個のブチルエーテルスペーサー基によって脂溶性の空洞から分離されている多価アニオン性β−シクロデキストリン誘導体を必要とする(すなわち、Captisol(登録商標))。この文献には、溶血を最低限にする静脈内用製剤は述べられていない。それに加えて、式Iの化合物の種々の塩形態は、例えば、特許文献3に記載されており、この内容も、本明細書に参考として組み込まれる。
【0003】
【化1】

式Iの化合物は、タキキニン化合物に分類され、神経ペプチドであるニューロキニン−1(NK−1)受容体のアンタゴニストである。式Iの化合物は、遊離塩基の形態であってもよく、または、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。この遊離塩基または塩は、アモルファス形態であってもよく、本明細書で使用される薬学的に許容される塩は、結晶形態または結晶水和物または溶媒和物の形態であってもよい。溶液の場合、溶液のpHによっては、式Iの化合物は、遊離アミン/塩形態を混合した形態であってもよい。また、式Iの化合物のプロドラッグを、非経口投与に適した製剤で利用してもよい。式Iの化合物中のいずれかの遊離アミン(または両方のアミン)が、−Yから選択される基と交換する水素をもつプロドラッグおよびその塩(Yが、−P(O)(OH)、−S(O)n1、−C(O)(C1〜6アルキル)X、−C(O)(C1〜6アルキル)(アリール)、−C(O)ORから選択され;Xが、−NR、−P(O)(OH)または−S(O)n1から選択され;Rが、HまたはC1〜6アルキルであり;Rが、HまたはC1〜6アルキルであり;Rが、HまたはC1〜6アルキルであり;Rが、HまたはC1〜6アルキルであり;n1が、0〜4である)が、本明細書で用いるのに適している。プロドラッグのイオン化形態に適切なカチオンまたはジカチオンとしては、金属塩またはメグルミン塩など(N−メチル D−グルカミン)を含む有機アミンカチオンが挙げられる。このようなプロドラッグを、処置の必要な患者を処置するのに適した液体製剤中で、すでに記載されている非経口送達用ビヒクルを用いるか、または用いない状態で利用してもよい。このようなプロドラッグを患者に非経口投与すると、薬物(またはその塩)のプロドラッグではない形態に変換される。このようなプロドラッグは、アモルファス形態であってもよく、または結晶および/または結晶溶媒和物/水和物の形態であってもよい。
【0004】
NK−1受容体アンタゴニストは、例えば、疼痛、炎症、片頭痛、悪心,嘔吐(emesis)(嘔吐(vomiting))、痛覚の処置に有用な治療薬剤であることがわかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,049,320号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/063243号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0244142号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、概して、処置の必要な患者に静脈内投与することに適した製剤に関し、この製剤は、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物と、水溶性有機溶媒、非イオン系界面活性剤、水不溶性脂質、有機脂質/半固体およびリン脂質からなる群から選択されるビヒクルとを含む。水溶性有機溶媒は、例えば、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドから選択されてもよい。非イオン系界面活性剤は、Cremophor EL、Cremophor RH 40、Cremophor RH 60、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000サクシネート、ポリソルベート80、Solutol HS 15、ソルビタンモノオレエート、ポロキサマー407、Labrifil M−1944CS、Labrafil M−2125CS、Labrasol、Gellucire 44/14、Softigen 767、およびPEG 300、400または1750のモノ−脂肪酸エステルおよびジ−脂肪酸エステルから選択されてもよい。水不溶性脂質は、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、ヤシ油またはパーム核油の中鎖トリグリセリドから選択される。有機液体および半固体は、蜜ろう、d−α−トコフェロール、オレイン酸および中鎖モノグリセリドおよび中鎖ジグリセリドから選択されてもよい。リン脂質は、レシチン、水素化大豆ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン、L−α−ジミリストイルホスファチジルグリセロール、およびその他の本明細書に開示されているものから選択される。製剤は、十分な溶解度および化学安定性をもつように製造され、十分な化学安定性は、特定の製剤、場所などによって変わる特定の貯蔵条件下で、1年間(好ましくは2年間)の分解が5〜10%未満であると定義される。好ましくは、製剤は、静脈内用製剤として有用である。また、必要な場合、または処方される場合、製剤は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)または皮下(SC)投与を含む当該技術分野で既知の手段によって送達するのに適した非経口製剤として広く用いられてもよい。プロドラッグは、上に引用した任意成分の送達ビヒクルを用いる状態、または用いない状態で、水系/食塩水送達系を含む経口形態または非経口製剤として用いられてもよい。
【0007】
本発明は、特に、悪心および/または嘔吐の処置に使用するための化合物1およびその薬学的に許容される塩の薬学的組成物および製剤を記載し、権利を請求する。静脈内用製剤を含む本明細書に引用した組成物を配合するために用いられる化合物1の好ましい形態は、結晶塩酸塩一水和物としての形態である。権利を請求している製剤の開発には、以下に記載するように、薬物の溶解度が低いという問題、特に、実験哺乳動物へのボーラス経路によって静脈内投与された場合、化合物1のある形態の局所的な一過性の遊離濃度によって生じると考えられる溶血(赤血球細胞が改変、溶解または破壊され、血液が尿に漏れてしまう)の問題を克服するための実施例では、かなりの実験と努力が必要であった。血液の溶血は、化合物1を従来の経口投薬形態で投与すると起こらない。また、溶血は、ほとんどの場合、哺乳動物に経口投与するか、または非常にゆっくりと投与すると起こらないが、特定の製剤をゆっくりと注入、および/またはボーラス投与したときに起こった。
【0008】
化合物1の製剤を静脈内投与用に開発するときに最初に直面する困難は、生理学的pHである7.4では化合物1の溶解度が低く(<4mcg/ml)、したがって、予想される投薬量である100mgで、体内で治療のための血漿濃度レベルに達するには溶解度を高める必要があった。それに加えて、患者に投与される注入容積を減らすことに役立つように、製剤中の薬物濃度および投薬量を高めることが望ましかった。
【0009】
生理学的pHで化合物1の溶解度が低いという問題を解決するために、化合物1の溶解度を高めるであろう溶媒系を確かめるために研究を行った。Captisol(登録商標)(β−シクロデキストリン誘導体は、本明細書ではCaptisolとも呼ばれる)および共溶媒系製剤は、化合物1の溶解度を顕著に高めるプロピレングリコールとエタノールとを含む。しかし、この共溶媒系製剤は、静脈内投与すると、予測できない溶血を引き起こすことがあった。溶血の発生を減らす/最低限にするためのさらなる試みから、化合物1のCaptisol製剤の静脈内投与を用いて観察される場合、Captisolの濃度、容積、投与速度、バッファの添加、またはエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール400の種々の組み合わせを変えることによって、いくつかの場合で成功した。例えば、投薬量10mg/kgおよび5mg/kg、投薬容積10ml/kg(投薬濃度は、それぞれ1mg/mLおよび0.5mg/mL)でラットに15分間かけて注入することによって投与されるCaptisol製剤は、溶血の頻度が低くなった(1/5)。それに加えて、投薬量10mg/kg、投薬容積5ml/kg(投薬濃度2mg/ml)のCaptisol製剤をボーラス投与すると、5匹中2匹のラットで溶血が発生した。もっと低い濃度(例えば、注入濃度1mg/mlおよび0.5mg/mlに相当する)でCaptisolをボーラス投与すると、さらに溶血が低くなると思われる。注入部位に化合物1が局所的に高い遊離濃度で存在することが、溶血を引き起こす主因であるという仮説がたてられた。
【0010】
上の仮説を検証するために、マクロゴール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15、本明細書ではSolutolとも呼ばれる)を含むミセル製剤(10mg/薬物mL、22%Solutol HS15、20mM リン酸バッファ、pH7.0)をラットに静脈内投与(手にゆっくりと1〜2分間ボーラス投与)し、投薬後に、種々の時間間隔および種々の投薬量(10mg/kg;20mg/kg;30mg/kg)で溶血の発生を調べることによって試験を行った。投薬期間が15分間の場合と比べ、投薬から30〜60分後に、ラットでの溶血の発生は顕著に低下することが観察された。この結果を、化合物1が高い経口アベイラビリティを持っているという事実と組み合わせ、化合物1の局所的な遊離濃度が高いことが、静脈内投薬から最初の30分以内に起こる一過性の溶血の原因であるという結論が導き出された。
【0011】
化合物1に関連する溶血を最低限にする/減らすために、薬物の投与速度をゆっくりにすると溶血の発生率が低くなるだろうという仮説に基づいて戦略をたてた。この戦略は、化合物1のミセル状(7.5% Solutol、25mg/kg;5ml/kg;5mg/ml))溶液を、ラットに15分かけてゆっくり投与することによって、また、ボーラス態様で投与することによって投与する実験を含んでいた。ミセル製剤をボーラス態様で投与すると、溶血がかなりの頻度で発生することがわかり(5/5)、注入経路で投与すると、溶血はみられなかった(0/10)。
【0012】
したがって、化合物1のミセル製剤中のSolutolの濃度を22%から例えば7.5%まで下げ、この製剤をラットにゆっくりと注入することによって投与すると、溶血の発生率が低下した。しかし、7.5%Solutol製剤(例えば、低濃度のSolutol)をボーラス経路で投与すると、上に示したように溶血が認められた。したがって、本明細書で引用した、権利を請求している製剤の中には、ゆっくりとした注入には適しているが、ボーラス投与には適していないものもある。以下にさらに記載するように、他の製剤は、ゆっくりとした注入にもボーラス投与にも適している。
【0013】
種々の種類の油の添加、組み込まれた油の割合、Solutol製剤のpH範囲、ラットでの溶血の発生率を評価するために、Solutol製剤を用いた追加実験を行った。ミセル溶液に油を加えてマイクロエマルション(すなわち、油が含まれるミセル)を作製すると、化合物1が疎水性コアから放出されるのを遅らせ、化合物1が赤血球細胞にすばやく分配/移動するのを防ぐのにも役立つだろうと考えられる。
【0014】
本発明は、
(a)式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、
【0015】
【化2】

(b)薬学的に許容されるビヒクルとを含む非経口製剤に関する。
【0016】
用語「薬学的に許容されるビヒクル」は、標的であるNK−1受容体部位に、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を治療濃度で非経口送達するのを促進するために、このような化合物またはその塩の溶解度を高める任意の適切な成分を意味する。ビヒクルは、本明細書でさらに記載されるように、クレモホール、エマルション、マイクロエマルション、ミセル、負に荷電したミセル、油が含まれるミセル、イントラリピッド、HSA、リポソーム、負および正に荷電したアミノ酸などからなる群から選択される。薬学的に許容されるビヒクルは、β−シクロデキストリン製剤を含まない。リポソーム、エマルション、ミセル、油が含まれるミセルの場合、このようなビヒクルは、薬物をコアの中に保護しつつ、薬物の保持率を高めるために親油性コアの内側に薬物を保持していると考えられる。ヒト血清アルブミン系製剤は、化合物1に対するHSAの強力な結合に関し、遊離薬物が赤血球細胞に分配されてしまうのを最小限に抑えると思われる。このような製剤は、Solutol、Myglyol、ビタミンEと一緒に配合されてもよい。負に荷電したアミノ酸は、正電荷を保持する化合物1の一部分と錯体を形成し、化合物1の一部分を中和し、これによって、化合物1が赤血球細胞に分配されるのを防ぐ。正に荷電したアミノ酸は、化合物1の負に荷電した部分と錯体を形成し、この部分を中和し、この化合物が赤血球細胞にさらされにくくなるだろう。負に荷電したミセルは、負に荷電した赤血球と反発し、化合物1が赤血球細胞と接触するのを防ぐだろう。
【0017】
用語「ミセル製剤」は、製剤がミセルの形態であり、薬学的に許容される送達系(例えば、水、食塩水、デキストロース水など)中でミセルを形成するか、または形成する可能性がある任意の成分から誘導されるか、またはこのような成分から作られることを意味する。
【0018】
用語「エマルション製剤」は、製剤がエマルションの形態であり、薬学的に許容される送達系(例えば、水、食塩水、デキストロース水など)中に存在するとき、および/または薬学的に許容される送達系と合わせたときにエマルションを形成するか、または形成する可能性がある任意の成分から誘導されるか、またはこのような成分から作られることを意味する。ボーラス投与またはゆっくりとした注入による投与のときに溶血効果を抑えるのに好ましいエマルション製剤は、油の含有量が約10%以下である。薬物の濃度は、約1mg/mL〜約30mg/mLまでさまざまであってもよく、静脈内送達には、容積は少なく、濃度は大きいことが好ましい。薬学的組成物は、NK−1アンタゴニストの溶解度を増やすか、または高めるために調製されてもよく、任意のあり得る溶血結果を防ぐために、かなり希釈してもよいが、処置の必要な患者に投与するには、現実的ではない希釈容積もあるだろう。
【0019】
本発明のエマルション製剤またはミセル製剤は、式Iまたは式Iaの化合物および/またはその薬学的に許容される塩、水和物、多形体または物理形態から選択される活性医薬成分をさらに含む。このような薬物を含むエマルションまたはミセル製剤は、送達を容易にし、および/または溶血のような因子を予防または緩和する賦形剤をさらに含有していてもよい。したがって、このようなさらなる賦形剤としては、例えば、任意のあり得る溶血効果を緩和しつつ、溶解度を高めるか、またはさらに高める油または他の成分が挙げられる。
【0020】
このようなエマルション製剤またはミセル製剤をさらに処理し、もっと安定な物理形態または溶液を得てもよく、例えば、滅菌非経口溶液を得るために、さらに処理してもよい。
【0021】
また、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩をナノ粒子の形態で含む非経口製剤に関する。次いで、式Iの化合物またはその塩のナノ粒子を溶液に組み込み、このようなナノ粒子を静脈内手段によって送達する。化合物1およびその薬学的に許容される塩のナノ粒子は、さらに、薬学的に許容されるビヒクルを含んでいてもよい。このようなナノ粒子(約200nm)をゆっくりと溶解させると、可溶化したフラクションに溶解する薬物が少ないため、溶血が起こりにくくなると考えられる。
【0022】
また、本発明は、(a)式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるビヒクルとを合わせ、静脈内用製剤を作製することと、(b)処置が必要な患者に非経口製剤を送達することとを含む、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩を患者に送達する方法に関する。
【0023】
本願発明者らは、Solutolを含有する製剤に関する上述の問題を解決すべくかなりの試行錯誤を繰り返した後、中鎖の油および長鎖の油を特定の比率でSolutolに加えることによって、可溶化した安定な(化学的および物理的に)化合物1のマイクロエマルション製剤を得ることができ、実験哺乳動物に静脈内投与したときに溶血が最低限になることを発見した。
【0024】
ある局面では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0025】
【化3】

またはその薬学的に許容される塩と、
(b)油が含まれるミセルまたはマイクロエマルションからなる群から選択される溶解剤とを含む、非経口投与に適した薬学的組成物に関する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、
(a)式Iの化合物
【0027】
【化4】

またはその薬学的に許容される塩と、
(b)乳化剤とを含む静脈内医薬製剤を含む。
【0028】
また、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、ヒト血清アルブミン(HSA)とを含む静脈内用製剤を含む。
【0029】
また、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、この化合物またはその塩がナノ粒子の形態である静脈内用製剤を含む。
【0030】
本発明は、さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、Cremophorから選択される送達ビヒクルとを含む静脈内用製剤を含む。
【0031】
本発明は、さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、ミセルから選択される送達ビヒクルとを含む静脈内用製剤を含む。
【0032】
本発明は、さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、リポソームから選択される送達ビヒクルとを含む静脈内用製剤を含む。
【0033】
本発明は、好ましくは、ボーラス投与および注入投与の両方に適した静脈内エマルション製剤に関する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種類の乳化剤とを含み、エマルションが形成され、これにマイクロ流体化(microfluidization)を行い、中位径が500nm未満、および/またはD90が約600nm以下の液滴が生成する、静脈内用製剤を含む。
【0035】
本発明は、さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、負または正に荷電したアミノ酸とを含む静脈内用製剤に関する。
【0036】
本発明は、さらに、凍結乾燥された式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む静脈内用製剤を含む。
【0037】
本発明は、さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を粉末の形態で含む静脈内用製剤を含む。粉末は、再構成されるか、または液体に加えられ、式Iの化合物またはその塩を含む液体静脈内用製剤が作られ、この製剤を処置が必要な患者に投与する。乳化剤(例えば、ポリソルベート80(Tween 80)など)を、他の不活性成分(例えば、pH調整剤、保存料(EDTA)など)とともにこの製剤に加えてもよい。
【0038】
上のそれぞれの実施形態では、製剤に加えられる式Iの化合物またはその塩の好ましい形態は、固体結晶塩酸塩一水和物の形態である。
【0039】
上のそれぞれの実施形態では、式Iの化合物またはその塩の代替的な形態は、式Iの化合物のプロドラッグから選択される。このようなプロドラッグは、経口経路または静脈内投与を介する手段を含む任意の送達手段によって投与されてもよい。
【0040】
このようなプロドラッグは、式Iaの化合物およびその薬学的に許容される塩から選択されてもよく、
【0041】
【化5】

式中、ZおよびYは、独立して、H、−PO(OH)O、−PO(O2M、−PO(O2+、−[C(R)(R)]−PO(OH)O、−[C(R)(R)]−PO(O2M、−[C(R)(R)]−PO(O2+、−C(O)[C(R)(R)]−OPO(O2M、−C(O)[C(R)(R)]NR、−C(O)[C(R)(R)]CO2−、−SO3−、−[C(R)(R)]SO3−、−[C(R)(R)]OC(O)ORからなる群から選択され、Rは、
【0042】
【化6】

からなる群から選択され;但し、ZおよびYは、ともにHであることはできず;Mは、一価カチオンから選択され;Dは、二価カチオンから選択され;RおよびRは、独立して、HまたはC1〜6アルキルから選択され;nは、1〜4であり;m、o、pは、独立して、0〜4から選択され;Rは、C1〜6アルキルから選択される。
【0043】
プロドラッグの好ましい実施形態では、ZはHから選択され、Yは、ZおよびYについて上に示したH以外のいずれかの基から選択される。さらに好ましい実施形態では、このようなプロドラッグは、
【0044】
【化7】

から選択される。
【0045】
好ましいM塩は、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、N−メチル−D−グルカミンまたはジシクロヘキシルアミンのような有機塩基との塩、またはアミノ酸塩(例えば、アルギニンまたはリジン)などから選択される。
【0046】
プロドラッグは、アミンまたは適切に保護されたアミンを、活性化した基Z−XまたはY−Xと反応させるか、または、任意の従来の手段によって、式Iの化合物のプロドラッグ改変体を作製することによって製造される。
【0047】
本発明のプロドラッグは、親薬物よりも溶解度が高くなっており、したがって、静脈内投与に有用であり、適切である。
【0048】
本発明の好ましい実施形態は、
(a)式Iの化合物
【0049】
【化8】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)組成物全体の約0.10重量%〜約2.5重量%の量の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量の長鎖トリグリセリドと;
(e)少なくとも1種類のバッファとを含み、
この組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比が、約5〜100:1〜5:1であり、組成物のpHが約6.5〜約8.0である、薬学的組成物である。
【0050】
上の製剤は、油が含まれるミセルまたはマイクロエマルションの形態であってもよい。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、マクロゴール15−ヒドロキシステアレートを組成物全体の約0.50重量%〜約7.5重量%の量で、中鎖トリグリセリドを組成物全体の約0.15重量%〜約1.5重量%の量で、長鎖トリグリセリドを組成物全体の約0.10重量%〜約1.2重量%の量で含む薬学的組成物を提供する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、マクロゴール15−ヒドロキシステアレートを組成物全体の約0.88重量%〜約4.84重量%の量で、中鎖トリグリセリドを組成物全体の約0.20重量%〜約1.20重量%の量で、長鎖トリグリセリドを組成物全体の約0.10重量%〜約0.75重量%の量で含む薬学的組成物を提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0054】
【化9】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約4.4重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)組成物全体の約1.1重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.66重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、前記組成物のpHが約7.5である、薬学的組成物を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0056】
【化10】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.88重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)組成物全体の約0.22重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.12重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、前記組成物のpHが約7.5である、薬学的組成物を提供する。
【0057】
別の局面では、本発明は、薬学的組成物を製造するプロセスを提供し、このプロセスは、
(a)(i)融解したマクロゴール15−ヒドロキシステアレート、(ii)中鎖トリグリセリド、(iii)長鎖トリグリセリドを加熱して組成物を作製することと;
(b)この組成物に水を加え、マイクロエマルション組成物を作製することと;
(c)このマイクロエマルション組成物に、式Iの化合物
【0058】
【化11】

またはその薬学的に許容される塩を加えることと;
(d)少なくとも1種類のバッファを加え、pHを約6.5〜約8.0に調整して薬学的組成物を作製することとを含み、ここで、マクロゴール15−ヒドロキシステアレートは、薬学的組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量で存在し、中鎖トリグリセリドは、薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約2.5重量%の量で存在し、長鎖トリグリセリドは、薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量で存在し、薬学的組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比は、約5〜100:1〜5:1である。
【0059】
別の局面では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0060】
【化12】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.88重量%〜約5重量%の量のペグ化したヒドロキシステアレートとを含み、前記ペグ化したヒドロキシステアレートは、遊離ポリエチレングリコールを実質的に含まず、組成物のpHが約6.5〜約8である、薬学的組成物を提供する。
【0061】
別の局面では、本発明は、処置の必要な患者の悪心および/または嘔吐を処置する方法を提供し、この方法は、本発明の有効量の薬学的組成物を患者に注入することによって静脈内投与することを含み、患者の溶血が最低限である。
【0062】
別の局面では、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩
【0063】
【化13】

を静脈内投与した後の患者の溶血を最低限にする方法を提供し、この方法は、本発明の有効量の薬学的組成物を患者に注入することによって静脈内投与することを含む。
【0064】
別の実施形態では、引用した静脈内用製剤を、他の吐き気止め薬および悪心防止薬、抗炎症剤またはステロイド薬(例えば、デキサメタゾン)と組み合わせて使用してもよく、化学療法剤と組み合わせて使用してもよい。引用した静脈内用製剤は、医師によって与えられる処方および計画書にしたがって患者に与えられてもよい。このような他の医薬としては、オンダンセトロンおよび他の既知の5HTアンタゴニストが挙げられる。したがって、注射用の式Iの化合物およびその塩を、催吐性の高い癌化学療法(例えば、シスプラチンを用いた治療を含む)の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を予防するために、他の吐き気止め薬とともに利用してもよい。注射用の式Iの化合物およびその塩を、中程度の催吐性がある癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を予防するために、他の吐き気止め薬とともに利用してもよい。シスプラチンを用いた処置に加えて、この組み合わせ投薬計画で投与される他の抗癌剤としては、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ビノレルビン、パクリタキセル、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ドセタキセルが挙げられ、さらに、テモゾロマイドを含んでいてもよい。式Iの化合物を用いた処置は、このような処置の1日目に、化学療法による処置の30分前に始めるとよい。静脈内用製剤は、製剤に依存して、15分間かけたゆっくりとした注入によって、またはボーラス注射によって投与されてもよい。
【0065】
別の実施形態では、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩の静脈内用製剤は、単独で投与されてもよく、術後の悪心および嘔吐を処置および/または予防するために、他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。このような組み合わせ薬剤は、他の吐き止め治療薬(例えば、オンダンセトロン)および他の5HTアンタゴニストを含む。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、化合物1の静脈内マイクロエマルション製剤の調製の図である(模式的なフローチャート)。
【図2】図2は、pHの関数として、20% Solutol製剤中の化合物1の平衡溶解度(ひし形)および16% Captisol製剤中の化合物1の平衡溶解度(四角)の図である。
【図3】図3は、化合物1のエマルション製剤を製造する方法の模式的な図である。
【図4】図4は、未処理製剤BOL15SO、およびH30Z Interaction Chamberを用いて2000psiで3回通す処理を行った製剤の粒度分布である。
【図5】図5は、未処理製剤INFWSO、およびH30Z Interaction Chamberを用いて2000psiで3回通す処理を行い、H20Y Interaction Chamberを用いて4,100psiで処理した製剤の粒度分布である。
【図6】図6は、未処理製剤BOL10WS、およびH30Z Interaction Chamberを用いて2000psiおよび4,100psiで2回および3回通す処理を行った製剤の粒度分布である。
【図7】図7は、マイクロ流体化中のBOL 15SO製剤およびINFWSO製剤の光学顕微鏡画像である。
【図8】図8は、マイクロ流体化中のBOL 10WSO製剤の光学顕微鏡画像である。
【図9】図9は、マイクロ流体化中のINFSO製剤の光学顕微鏡画像である。
【図10】図10は、マイクロ流体化中のBOL 10SO製剤の光学顕微鏡画像である。
【図11】図11は、滅菌後のINFWSOのPSD曲線である。
【図12】図12は、滅菌後のBOL 10WSOのPSD曲線である。
【図13】図13は、種々の投薬量で静脈内投与によって投与した化合物1の血中濃度(ng/ml)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する場合、以下の用語は、他の意味であると示されていない限り、以下の意味をもつと理解される。
【0068】
用語「ミセル」または「ミセルの」は、本明細書で使用する場合、臨界ミセル濃度と喚ばれる十分に定義された濃度以上で生じる、両親媒性分子(界面活性剤)のコロイド状凝集物を指す。Macrogol 15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15、BASF Ludvigshafen、ドイツから入手可能)は、臨界ミセル濃度が0.005%〜0.02%の範囲である界面活性剤の特定の例である。
【0069】
用語「マイクロエマルション」は、本明細書で使用する場合、油、水、界面活性剤の透明で安定で等方性の液体混合物を指す。この用語は、油が含まれるミセルという意味もある。
【0070】
用語「溶血」は、本明細書で使用する場合、赤血球細胞が破壊され、赤血球細胞内部から血漿にヘモグロビンが放出されることを意味する。溶血は、当該技術分野で周知の方法、例えば、尿内の血液を検出するHemastix(登録商標)試薬片(Bayer Corp.、エルクハート、IN)によって測定することができる。Hemastix(登録商標)試薬片は、尿中に存在するヘモグロビンの量に依存して、黄色から暗緑色に変化する。Hemastix(登録商標)のスケールは、以下のとおりである。0=陰性、1=溶血の痕跡なし、3=溶血の痕跡あり、4=小+、5=中++、6=大+++。
【0071】
句「最低限の溶血」および「溶血が最低限である」は、本明細書で使用する場合、実験哺乳動物に化合物1の製剤を投与すると、その実験哺乳動物でまったく溶血が認められないか、または、10匹の実験哺乳動物のうち痕跡量の溶血を示すのが2匹以下の実験動物であり、例えば、Hemastix(登録商標)スケールで測定すると、3以下であることを意味する。
【0072】
用語「安定な」は、本明細書で使用する場合、化学的にも物理的にも安定であることを指す。
【0073】
物理的な安定性は、粒径/液滴の大きさが顕著に変化せず、相分離も起こさないミセルおよびマイクロエマルションを指す。
【0074】
化学的な安定性は、本明細書で使用する場合、化合物1の有効効力が許容可能な範囲に維持されていること(ラベルに記載されている強度の90%より大きい)に関する。
【0075】
用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、患者(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類、イヌまたはネコのようなコンパニオンアニマルといった哺乳動物の悪心および/または嘔吐を予防するか、改善するか、または減らすと思われる化合物1またはその薬学的に許容される塩の量を指す。
【0076】
用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、本明細書で使用する場合、悪心および/または嘔吐の予防または改善または低減を指す。
【0077】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、当業者には、特定の用語のプラスマイナス10%までを意味すると理解されるだろう。
【0078】
本発明は、式Iの化合物(本明細書では、化合物1とも呼ばれる)
【0079】
【化14】

を含む、静脈内投与のためのマイクロエマルションの形態の薬学的組成物、この薬学的組成物を調製する方法、この薬学的組成物を利用して悪心および/または嘔吐を処置する方法に関する。
【0080】
実験動物で試験した場合に溶血を生じた化合物1の共溶媒製剤とは対照的に、化合物1の静脈内投与によって生じる溶血の問題は、約0.50%〜約10.0%のSolutol、約0.10%〜約2.5%の中鎖トリグリセリド、約0.10%〜約1.5%の長鎖トリグリセリドを含み、組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比が約5〜100:1〜5:1である本発明の薬学的組成物によって、実験動物では首尾良く解決された。溶媒系の任意の特定の作用機序に束縛されないが、薬学的組成物の静脈内投与によって、化合物1がミセルコアから赤血球細胞に移動する速度を下げることによって、溶血が顕著に低下すると思われる。好ましい濃度は、1〜15mg/mLの範囲であった。
【0081】
また、化合物1の静脈内投与によって生じる溶血の問題は、ペグ化したヒドロキシステアレートを特定の濃度範囲で単独に含み、このペグ化したヒドロキシステアレートが、遊離ポリエチレングリコールを実質的に含まない製剤を利用することによって解決した。
【0082】
ある局面では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0083】
【化15】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)と;
(c)組成物全体の約0.1重量%〜約2.5重量%の量の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量の長鎖トリグリセリドと;
(e)少なくとも1種類のバッファとを含み、
この組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比が、約5〜100:1〜5:1であり、組成物のpHが約6.5〜約8.0である、薬学的組成物を提供する。
【0084】
本発明の組成物は、患者に注入によって静脈内投与したときに、驚くべきことに、最低限の溶血に関係がある。
【0085】
式Iの化合物は、有機酸および無機酸と薬学的に許容される塩を形成していてもよい。塩を形成するのに適切な酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、および当業者がよく知っている他の鉱物酸およびカルボン酸である。ある種の実施形態では、式Iの化合物は、塩酸塩として存在する。塩は、遊離塩基形態と、従来の様式で塩を生成するのに十分な量の望ましい酸とを接触させることによって調製される。
【0086】
ある種の実施形態では、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物中に、組成物全体の1mg/ml〜15mg/ml、2.0mg/ml〜10mg/ml、または2.0mg/mlの量で存在する。
【0087】
マクロゴール 15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15、BASF Ludvigshafen、ドイツから入手可能)は、臨界ミセル濃度が0.005%〜0.02%の範囲にある界面活性剤である。任意の特定の作用機序に限定されることを意図しないが、本願発明者らは、臨界ミセル濃度よりも高い濃度でミセルが生成し、化合物1が封入された疎水性環境が得られ、化合物1が赤血球細胞にさらされることが減ると考えられる。Solutol(登録商標)HS15は、薬学的組成物中に、組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量で存在する。
【0088】
適切な中鎖トリグリセリドとしては、限定されないが、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート−SASOL North Americaによる、MIGLYOL(登録商標)812またはMIGLYOL(登録商標)810として販売されるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;CAPTEX 300/CAPTEX 850(登録商標)としてAbitech Corpによって販売されるヤシ油由来のトリグリセリド(trigylceride);CAPTEX 355(登録商標)としてAbitech Corpによって販売されるカプリル酸/カプリル酸トリグリセリド;CAPTEX 350(登録商標)としてAbitech Corpによって販売されるカプリル酸/カプリル酸/ラウリン酸トリグリセリド;CAPTEX 810(登録商標)としてAbitech Corpによって販売されるカプリル酸/カプリル酸/リノール酸トリグリセリド;CAPTEX SBE(登録商標)としてAbitech Corpによって販売されるカプリル酸/カプリル酸/ステアリン酸トリグリセリド、およびその2種類以上の組み合わせが挙げられる。中鎖トリグリセリドは、薬学的組成物中に、組成物全体の約0.1重量%〜約2.5重量%の量で存在する。
【0089】
適切な長鎖トリグリセリド(triglyerceride)および/または長鎖脂肪酸としては、限定されないが、SUPER−REFINED SOYBEAN OIL USP(登録商標)としてCrodaによって販売される大豆油;SUPER−REFINED CORN OIL NF(登録商標)としてCrodaによって販売されるトウモロコシ油;SUPER−REFINED COTTONSEED OIL NF(登録商標)としてCrodaによって販売される綿実油;SUPER−REFINED OLIVE OIL NF(登録商標)としてCrodaによって販売されるオリーブ油;SUPER−REFINED PEANUT OIL BF(登録商標)としてCrodaによって販売されるピーナッツ油;SUPER−REFINED SAFFLOWER USP(登録商標)としてCrodaによって販売されるベニバナ油;SUPER−REFINED SESAME NF(登録商標)としてCrodaによって販売されるゴマ油;SUPER−REFINED SHARK LIVER(登録商標)としてCrodaによって販売されるサメ肝油;Crodamol EO(登録商標)としてCrodaによって販売されるオレイン酸エチル、ヒマシ油、オレイン酸としてCrodaによって販売される一不飽和ω−9脂肪酸、およびその2種類以上の組み合わせが挙げられる。長鎖トリグリセリドまたは長鎖脂肪酸、またはこれら両者は、薬学的組成物中に、組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量で存在する。
【0090】
一実施形態では、本発明は、組成物全体の約0.50重量%〜約7.5重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;組成物全体の約0.15重量%〜約1.5重量%の中鎖トリグリセリドと;組成物全体の約0.10重量%〜約1.2重量%の量の長鎖トリグリセリドとを含む薬学的組成物を提供する。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、組成物全体の約0.88重量%〜約4.84重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;組成物全体の約0.20重量%〜約1.20重量%の中鎖トリグリセリドと;組成物全体の約0.10重量%〜約0.75重量%の量の長鎖トリグリセリドとを含む薬学的組成物を提供する。
【0092】
別の実施形態では、中鎖トリグリセリドは、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート−MIGLYOL(登録商標)810またはMIGLYOL(登録商標)812としてSASOL North America(ヒューストン、テキサス)によって販売されるカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、長鎖トリグリセリドは、超精製形態の大豆油である。
【0093】
また、薬学的組成物は、少なくとも1種類のバッファも含む。薬学的組成物中に含まれてもよい適切なバッファの非限定的な例としては、リン酸バッファ(pH7〜8)、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムバッファ、コハク酸バッファ(pH4〜6)、クエン酸バッファ(pH2〜6)、5〜20mMのトリス(pH7〜8)、これらの混合物が挙げられる。
【0094】
薬学的組成物中のバッファの量は、バッファの種類および濃度に依存して変わってもよい。例えば、pH6.5〜8.0に調整するには、10〜20mMのリン酸バッファが推定され、ホスフェートは、組成物全体の0.01重量%〜0.5重量%、または、約0.05重量%〜約0.02重量%、または0.4重量%〜0.2重量%の量で組成物に加えられてもよい。一例として、リン酸ナトリウム二塩基性無水物/一塩基性脱水物(monobasic dehydrate)系は、約0.2重量%の一塩基性リン酸ナトリウムと、約0.284重量%二塩基性リン酸ナトリウム(無水)とを組成物に加える。
【0095】
必要な場合、水酸化ナトリウムのようなアルカリを用いることによって、本発明の組成物のpHを約6.5〜約8.0に調整する。ある種の実施形態では、組成物のpHは、約7.0〜約8.0、pH約7.5、またはpH7.5である。
【0096】
所望な場合、本発明の薬学的組成物は、他の賦形剤、例えば、酸化防止剤(保存料)、抗微生物剤、キレート化剤、アルブミン、張度調節剤、増量剤などをさらに含んでいてもよい。例として、抗微生物剤は、BAC(0.1%〜0.025%)、安息香酸(0.1〜0.2%)、ベンジルアルコール(0.0001〜1.5%)であり;酸化防止剤は、BHT、BHA(0.0001〜0.001%)、ヒスチジン、メチオニン、グリシン、亜硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム(0.01〜0.2%)、アスコルビン酸(0.02〜0.2%)であり;キレート化剤は、EDTA(0.01〜1.0%)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)であり;アルブミン(0.05〜1.2%);張度調節剤(NaCl、マンニトール(1〜10%)、グリセロール(0.2〜2.5%);増量剤は、マンニトール(1〜10%)、ショ糖、グリシン(0.1%〜2.5%)、トレハロース、ラクトース(0.1〜3.0%)である。
【0097】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0098】
【化16】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約4.4重量%または4.4重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS 15)と;
(c)組成物全体の約1.1重量%または1.1重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.66重量%または0.66重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、組成物のpHが約7.5である薬学的組成物を提供する。
【0099】
さらなる実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0100】
【化17】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.88重量%または0.88重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS 15)と;
(c)組成物全体の約0.22重量%または0.22重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)組成物全体の約0.12重量%または0.12重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、組成物のpHが約7.5である薬学的組成物を提供する。
【0101】
中鎖トリグリセリドの例は、上述のとおりである。
【0102】
本発明の薬学的組成物は、濾過滅菌、オートクレーブによる滅菌を含む種々の滅菌技術のいずれかによって滅菌されてもよい。一実施形態では、薬学的組成物は、例えば、孔径が0.01〜約0.45μm、例えば、0.22μmのフィルタを利用する濾過方法によって滅菌される。
【0103】
適切には、本発明の薬学的組成物は、5℃〜40℃/75%RH(相対湿度)で1〜6ヶ月間、典型的には3ヶ月間、化学的かつ物理的に安定である。
【0104】
別の局面では、本発明は、薬学的組成物を製造するプロセスを提供し、
(a)(i)融解したマクロゴール15−ヒドロキシステアレート、(ii)中鎖トリグリセリド、(iii)長鎖トリグリセリドを混合し、加熱し、組成物を作製する工程と;
(b)この組成物に水を加え、マイクロエマルション組成物を作製する工程と;
(c)このマイクロエマルション組成物に、式Iの化合物
【0105】
【化18】

またはその薬学的に許容される塩を加える工程と;
(d)少なくとも1種類のバッファを加え、pHを約6.5〜約8に調整し、薬学的組成物を作製する工程とを含み、マクロゴール15−ヒドロキシステアレートが、薬学的組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量で存在し、中鎖トリグリセリドが、薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約2.5重量%の量で存在し、長鎖トリグリセリドが、薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量で存在し、薬学的組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比が、約5〜100:1〜5:1である。
【0106】
中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドの例および化合物1の濃度は、上述のとおりである。
【0107】
薬学的組成物を製造する本発明のプロセスの一例として、Solutol(登録商標)HS15を60℃〜65℃、または約65℃の温度で加熱することによってSolutol(登録商標)HS15を融解する。融解したSolutol(登録商標)HS15、中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドを、50℃〜65℃、または約60℃で約5分間〜約15分間混合し、組成物を作製する。次いで、注射用水を加え、マイクロエマルション組成物を作製した後、化合物1を加え、薬学的組成物を作製する。次いで、一塩基性/二塩基性リン酸ナトリウムを薬学的組成物に加える。薬学的組成物のpHを、例えば、水酸化ナトリウムを利用して7.5に調整し、組成物の張度を、張度剤(塩化ナトリウム)を用いて約290mMに調節する。次いで、所望の容積になるまで水を加えた後、0.22μMフィルタによって組成物を濾過して滅菌する(以下の実施例5を参照)。
【0108】
化合物1を調製するプロセスは、実施例72aの調製法として‘320号特許に記載されており、市販の出発物質から18段階の個々の工程で行われる(本明細書に参考として組み込まれる、’320号特許の第43欄第55行〜第45欄第20行、第75欄第55行〜第80欄第21行、第90欄第35行〜第63行、第98欄第1行〜第99欄第24行を参照。また、本明細書に参考として組み込まれる、WO2008/11833の実施例1〜6も参照)。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0110】
【化19】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)組成物全体の約0.88重量%〜約5重量%の量のペグ化したヒドロキシステアレートとを含み、ペグ化したヒドロキシステアレートが、遊離ポリエチレングリコール(PEG)を実質的に含まず、組成物のpHが、約6.5〜約8.0である薬学的組成物を提供する。用語「実質的に含まない」は、ペグ化したヒドロキシステアレートの組成物に含まれる遊離PEGが2%を超えないことを意味する。
【0111】
遊離PEGを実質的に含まないペグ化したヒドロキシステアレートを調製するために、ペグ化したヒドロキシステアレート(例えば、Solutol(登録商標)HS15)に含まれる遊離PEGを、当該技術分野で既知の技術によって、例えば、透析によって除去してもよい(以下の実施例5、リン酸緩衝化食塩水中で透析したSolutolの調製、および表9を参照)。
【0112】
本発明の薬学的組成物は、悪心および/または嘔吐の処置に有用である。したがって、別の局面では、本発明は、処置の必要な患者(例えば、ヒト、またはサルのような非ヒト霊長類、イヌまたはネコのようなコンパニオンアニマル)の悪心および/または嘔吐を処置する方法を提供する。この方法は、有効量の本発明の薬学的組成物を患者に注入することによって静脈内投与することを含み、この薬学的組成物を静脈内投与するときに、溶血は、最低限である。薬学的組成物は、化学療法を行った24時間後〜数日後に経験するような、遅発性の嘔吐発生を処置するのに有用である。Gonzalesら、Oncology Special Edition、Vol.5(2002)、p.53〜58を参照。また、薬学的組成物は、化学療法、放射線、運動およびアルコール(例えば、エタノール)、高投薬量の経口抗生物質、ウイルス性または細菌性の胃腸炎によって誘発される急性の悪心および/または嘔吐を処置するのにも有用である。また、薬学的組成物は、少なくとも1種類の他の吐き気止め剤、例えば、デキサメタゾンまたはオンダンセトロンHClを含むように一緒に配合されていてもよい。また、本明細書の薬学的組成物は、医師によって処方されるように、このような他の悪心防止薬および/または吐き気止め剤および/または化学療法剤と組み合わせて与えられてもよい。
【0113】
薬学的組成物を、投与前に適切な水系希釈剤(例えば、通常の食塩水、デキストロース、デキストロース濾過水、マンニトール)を用いて希釈し、Solutol(登録商標)HS15が組成物全体の約0.88重量%〜約4.4重量%である中間組成物を得てもよい。
【0114】
本発明の薬学的組成物に利用される投薬計画は、処置の必要な患者の種、年齢、体重、性別、医学的状態、患者が経験している悪心および/または嘔吐の重篤度を含む種々の因子を考慮して選択される。通常の技術常識を有する医師は、悪心および/または嘔吐を予防するか、改善するか、または減らすのに有効な化合物1の量を簡単に決定し、処方することができる。例えば、式Iの化合物の成人の1日合計投薬量は、患者の体重1kgあたり1mg〜9mg、または患者の体重1kgあたり約1mg〜3mgである(70kgの患者で投薬量は200mgと推定される)。
【0115】
薬学的組成物は、15〜90分間、15〜60分間、または15〜30分間かけて注入することによって静脈内投与されてもよい。ある製剤では、組成物は、ボーラス注射によって投与されてもよい。
【0116】
別の局面では、本発明は、有効量の本発明の薬学的組成物を患者に注入することによって静脈内投与することを含む、式Iの化合物
【0117】
【化20】

またはその薬学的に許容される塩を静脈内投与した後に患者(例えば、ヒト、または非ヒト霊長類、またはイヌもしくはネコのようなコンパニオンアニマルなどの哺乳動物)の溶血を最低限にする方法を提供する。
【0118】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む静脈内用製剤を用い、処置の必要な患者を処置する方法に関し、このような化合物の投薬範囲は100〜200mgであり、製剤は、化学療法または放射線サイクルの前に1回だけ単回投薬するか、または、CINV(化学療法によって誘発される悪心および嘔吐)、PONV(術後の悪心および嘔吐)またはRINV(放射線によって誘発される悪心および嘔吐)を治療するための術前または術後に1回単回投与するように、患者に投与される。
【0119】
Solutolを含有する上述の製剤に加えて、本発明は、ボーラスおよびゆっくりとした注入による静脈内投与の両方に適したエマルション製剤にも関する。そのような製剤に有用な化合物は、式IおよびIaの化合物およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0120】
中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドに基づき、さらなる賦形剤(例えば、卵レシチン)を含む非経口エマルションを配合した。これらの製剤のいくつかを卵PCおよびLipoid E80Sを用いて調製し、哺乳動物(ラット)にボーラス経路および注入経路で投与した場合に、優れた(例えば、溶血がほとんどないか、まったくない)製剤が得られた。好ましい製剤にマイクロ流体化を行い、液滴の粒径が小さく、粒度分布が比較的狭いエマルションが得られた(中位径が500nm未満、D90が約600nm未満)。また、このような製剤は、121℃でオートクレーブによって滅菌した後も物理的に安定であった。
【0121】
したがって、別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0122】
【化21】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)リン脂質とを含む薬学的組成物を提供する。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0124】
【化22】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)長鎖脂肪酸および/または長鎖トリグリセリドとを含む薬学的組成物を提供する。
【0125】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0126】
【化23】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドとを含む薬学的組成物を提供する。
【0127】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0128】
【化24】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)リン脂質とを含む薬学的組成物を提供する。
【0129】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0130】
【化25】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリド(triclyceride)および/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)リン脂質と、
(d)グリセリンとを含む薬学的組成物を提供する。
【0131】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0132】
【化26】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリド(tirglyceride)と;
(c)リン脂質と;
(d)グリセリンと、
(e)エタノールとを含む薬学的組成物を提供する。
【0133】
好ましい実施形態では、含まれる油(例えば、成分b)の重量パーセントは、組成物全体の重量を基準として、約10%(wt/wt)である。
【0134】
別の実施形態では、本発明は、
(a)式Iの化合物
【0135】
【化27】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)10%の中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)1.2%のリン脂質と、
(d)2.25%のグリセリンとを含む薬学的組成物を提供する。
【0136】
本発明の別の実施形態では、本明細書に引用した有効量の1つ以上の製剤を、さらなる活性成分を投与する前または投与した後に(または一緒に同時に)別個の投薬で他の活性成分と組み合わせて用いてもよく、または、NK−1アンタゴニストをこのような他の活性成分と固定量で組み合わせた組み合わせ状態で用いてもよい。鬱病または不安神経症を処置するために、本発明の製剤を、1つ以上の選択的なセロトニン再取り込み阻害剤(「SSRI」)と組み合わせて投与してもよい。代表的なSSRIとしては、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、およびこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。別の局面では、本発明は、化学療法を受けた数時間〜数日後に経験するような嘔吐または遅発性の嘔吐の発生を処置する方法に関する。本発明の静脈内用製剤を別の吐き気止め剤(例えば、セロトニン5−HT受容体アンタゴニスト、コルチコステロイドまたは置換ベンズアミド)を用い、化学療法、放射線、運動および/またはアルコール(エタノール)によって誘発される急性の嘔吐、術後の悪心および嘔吐を含む他の形態の嘔吐を処置してもよい。5−HTアンタゴニストの例としては、パロノセトロン(palosetron)、ドラセトロン、オンダンセトロン、グラニセトロン、またはこれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。適切なコルチコステロイドの例は、デキサメタゾンである。適切なベンズアミドの例は、メトクロプラミドである。好ましい組み合わせとしては、上述のいずれか2種の組み合わせ、または上述のいずれか1つとNK−1静脈内用製剤の組み合わせ、(またはNK−1静脈内用製剤内の)上述のいずれか1つの組み合わせが挙げられる。
【0137】
本発明は、式Iの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、催吐性の高い癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法に関する。
【0138】
本発明は、式Iの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、中程度の催吐性がある癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法に関する。
【0139】
本発明は、式Iaの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、催吐性の高い癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法に関する。
【0140】
本発明は、式Iaの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、中程度の催吐性がある癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法に関する。
【0141】
以下の実施例は、実施者に対するガイドとして記載されているが、本発明の範囲をいかなる様式にも限定することを意味していない。
【実施例】
【0142】
実施例1〜4は、化合物1の特定の静脈内用製剤の開発または他の溶血に関する研究を記載する。実施例5は、本発明の化合物1の静脈内マイクロエマルション(油を含むミセル)製剤の開発を記載する。実施例6は、さらなる製剤を提示する。実施例7は、ボーラス投与およびゆっくりとした注入による静脈内投与に適したエマルション製剤を記載する。実施例8は、プロドラッグの例を提示する。
【0143】
(実施例1.シクロデキストリン系および他の共溶媒系中の化合物1の溶解度評価)
16% Captisol(登録商標)(β−シクロデキストリンのスルホブチルエーテル誘導体、オーバーランドパーク、カンザスのCydex Inc.から入手可能)中、およびプロピレングリコール:エタノール(PG:EtOH、40%:10%)共溶媒系中の化合物1の溶解度を、これらの溶媒系の中で化合物1の平衡溶解度を決定することによって評価した。化合物1の濃度を、実施例5に記載されているように、平衡溶解度を決定するために異なる時間点で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によってアッセイし、平衡溶解度は、溶解度が、時間がたっても一定の状態になったときに(感知できるほど変化しなくなったときに)得られた。化合物1の溶解度の最適値は、16% Captisolを用いたときであることがわかった(データは示していない)。
【0144】
(実施例2.Captisol(登録商標)および他の共溶媒系を含むNK−1製剤をラットに静脈内投与する試験)
16% Captisol(登録商標)およびPG:EtOH 40%:10%共溶媒系をラットに静脈内投与した。
【0145】
ラットから取った尿サンプルについて、Hemastix(登録商標)試薬片(No.2190、Bayer Corp.、エルクハート、IN)を用いて溶血を評価した。尿内の血の存在をHemastix(登録商標)試薬片(No.2190、Bayer Corp.、エルクハート、IN)を用いて検出した。Hemastix(登録商標)試薬片は、ヘモグロビンの過酸化物様活性を検出する。この試験片は、尿中に存在するヘモグロビンの量に依存して、黄色から暗緑色に変化する。Hemastix(登録商標)のスケールは、以下のとおりである。0=陰性、1=溶血の痕跡なし、3=溶血の痕跡あり、4=小+、5=中++、6=大+++。
【0146】
シクロデキストリン製剤および共溶媒製剤は、首尾よく化合物1の溶解度を高めているが、共溶媒製剤は、静脈内注入投与のときに、予測できないほどひどい溶血を引き起こした(Hemastix(登録商標)スケールでスケール6)。Captisol製剤を用いて15分間かけてゆっくりと注入する経路は、溶血の発生率が低かった(表1)。
【0147】
【表1】

注入部位で化合物の局所的な遊離濃度が一時的に高いことが、溶血の主要因であるという仮説がたてられた。Captisol(登録商標)の種々の濃度、容積、送達速度、またはバッファの添加を利用することによって、ボーラス投与中の溶血発生率を下げることができるかどうかをラットの実験によってさらに評価したが、うまくいかなかった。
【0148】
(実施例3.22% Solutolを含む製剤をボーラス投与したときに、ラットで溶血の発生を評価する試験)
次いで、遊離化合物1の局所的な高濃度を低下させる目的で、(1)Solutol(登録商標)HS15(マクロゴール15−ヒドロキシステアレート、本明細書ではSolutolとも呼ばれる)を利用するミセルの疎水性コアに化合物1を組み込み、(2)Solutolに組み込まれた化合物1をボーラス経路によって注射し、(2)種々の時間間隔(15〜60分)で、溶血の発生を試験する(Hemastix(登録商標)試薬片を用いる)ことによって、雄および雌のラットで試験を行った。
【0149】
この試験は、雄雌両ラットで、溶血の発生が時間ととともに顕著に減ることが示されており(表2)、局所的な遊離化合物1の濃度が高いことが、静脈内投薬から最初の数分以内に起こる一過性の溶血の原因であるという結論に達した。
【0150】
【表2】

(実施例4.静脈内投与の種類を変えることによって、ラットの溶血の発生を評価する試験)
溶血の発生を減らすために、薬物の注入速度が溶血に影響を及ぼすかどうかを調べるための実験を含む戦略を使用した。この戦略は、注入およびボーラス経路の両方によって、化合物1をミセル溶液(HS Solutol(登録商標)15)でラットに投与する実験を含んでいた。ミセル溶液をボーラス経路で投与した場合、高い頻度で溶血の発生がみられ、一方、同じ投薬量を15分かけてゆっくりと静脈内注入すると、溶血はみられなかった(表3)。
【0151】
【表3】

(実施例5.本発明の化合物1の静脈内マイクロエマルション製剤の開発)
(材料および方法)
(マイクロエマルション製剤を開発するための材料)
この試験で使用する材料を表4にまとめている。
【0152】
【表4−1】

(ラットの溶血試験)
この試験の方法論は、注入ポンプを用いて静脈内注入によって15分間かけてそれぞれの製剤を(ラットの尾の静脈に)投与するか、またはシリンジを用いたボーラス経路によって、2分以内に製剤を投与することであった。6時間間隔でプールしておいた尿を集める方法を用いて遊離ヘモグロビンの存在について尿を調べた。6時間プールしておいた尿を集めるために、ラットに投薬し、代謝ケージに入れた。投薬から6時間後、二酸化炭素を過剰に吸入させることによってラットを安楽死させ、尿サンプルを集めた。各製剤について最低でも5被検体を試験し、比較例2に示されるようにHemastix(登録商標)試薬片を用い、溶血について尿サンプルを分析した。
【0153】
15分と1時間のサンプルの場合、ラットに投薬し、次いで、寝かせずにホームケージに戻した(個々に収容した)。ケージの中でラットが排尿したら、Hemastix(登録商標)試薬片を用いて尿を分析し、血色素尿症の存在を見きわめた。ラットがケージ内で排尿しなかったが、安楽死させたときに排尿した場合には、安楽死チャンバ内の尿を分析した。
【0154】
(リン酸緩衝化食塩水/蒸留水中で透析Solutolの調製)
Solutolは、両親媒性分子であり、分子中に約30%の遊離ポリエチレングリコール(PEG)を含む。透析試験の目的は、分子中の親水性部分を最低限にする/除外することであった。遊離PEGを含まないSolutolを得るために、50mlのプラセボ製剤(リン酸バッファ中、20%のSolutolで構成される)を調製し、0.22μmフィルタによって濾過した。透析バッグをpH7.0のリン酸バッファで濡らした。濡れたバッグの重量を記録した。次いで、透析したバッグを50mlの上のプラセボ製剤で満たし、このバッグに、pH7.0の750ml以上のリン酸バッファを入れ、撹拌棒を用いて媒体を撹拌した。透析バッグの外側にあるバッファを日に2回交換し、このプロセスを合計72時間繰り返し、72時間の間に合計で少なくとも6回交換した。72時間たった後、透析したバッグの重量を、バッグの内側にあるプラセボ溶液とともに記録した。また、プラセボ製剤をHPLCによって分析し、溶液中のPEG濃度を確認した。
【0155】
(Solutol中の遊離ポリエチレングリコール(PEG)の含有量を決定するための分析試験方法)
Solutol分子中の遊離PEGを試験するためのHPLC条件は以下のとおりである。
カラム:Nucleosil CIS Sum 150×4.6mm
移動相A:0.025%リン酸溶液
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:30℃ サンプル温度:20℃ 注入容積:20μl
流速:1ml/分 UV波長:190nm 実行時間:60分
サンプル希釈剤:メタノール
【0156】
【表4−2】

(化合物1のマイクロエマルション製剤の調製方法)
以下は、化合物1のマイクロエマルション組成物を製造するプロセスである。マイクロエマルション製剤を製造する方法の模式的なフロー図を図1に示す。
(i)空のガラスビーカーの重さを測る。
(ii)元々の容器で65℃でほぼ15分間かけてあらかじめ融解させておいたSolutolを、上のガラスビーカーに秤量して入れる。
(iii)上のビーカーに大豆油を秤量して入れる。
(iv)上のビーカーにMiglyolを秤量して入れる。
(v)撹拌棒を用い、約5分間かけて上の成分を十分に混合する。
(vi)上のビーカーの重さを測った後、上のビーカーに注射用水を加え、マイクロエマルションを作製した後、化合物1を入れ、混合する。
(vii)マイクロエマルション製剤を、磁気撹拌棒を用いて15分間均一に混合する。
(viii)一塩基性および二塩基性のリン酸ナトリウムを秤量し、上の製剤に入れる。
(ix)製剤のpHを調べ、1N NaOHを用いてpHを7.5に調整する。
(x)溶液の浸透圧を調べ、飽和食塩水(NaCl)を用い、張度を約290mM±30mMに調節する。
(xi)生成物の最終的な容積になるまで、必要な水を加える。
(xii)層流フードで、Millipore Durapore−GVフィルタを用い、0.22umフィルタによって溶液を濾過する。
(xiii)製剤を、最終用途のための10または20mlのガラスバイアルに滅菌状態で密閉する。
【0157】
(式Iの化合物を含むサンプルを分析するための分析試験方法)
化合物1を分析するためのHPLC条件は以下のとおりである。
カラム:Prodigy ODS (3)150×4.6mm 3μm
移動相A:0.1%リン酸溶液
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:30℃ サンプル温度:5℃ 注入容積:10μl
流速:1ml/分 UV波長:215nm 実行時間:60分
サンプル希釈剤:メタノール
【0158】
【表4−3】

(A.Solutol 対 Captisol(登録商標)中の化合物1の溶解度評価)
20% Solutol中の化合物1の平衡溶解度曲線をpHの関数として構築した。図2に示されるように、化合物1の平衡溶解度は、16% Captisol(登録商標)のシクロデキストリン製剤を用いて得られた6μg/ml未満(pH7.0で化合物1の水への溶解度と近い)と比較して、pH7.0、20% Solutol中でかなり高かった(約50mg/ml)。したがって、Captisol(登録商標)系製剤と比較して、Solutolミセル製剤では、化合物1の溶解度が顕著に高まっていることは明らかであった。
【0159】
(B.化合物1を含むSolutol製剤を静脈内投与したラットの溶血発生を評価)
22% Solutolを含み、化合物1が10mg/mlであり、pH8.0のミセル溶液を、化合物1の製剤のための出発点として用いた。製剤のpHは、化合物1のpKaである6.9よりも上になるように、製剤のpHとして8.0を選択し、その結果、化合物1は、イオン化せず、ミセルの疎水性コアの中に大部分が残るだろう。しかし、22% Solutolを含むミセル製剤をラットで試験し、in vivoできわめて予想できない結果が得られた。化合物1の全投薬範囲10〜30mg/kgで、ボーラス注入によってラットに製剤を投与すると、重篤な溶血がみられた(表5)。
【0160】
【表5】

適切な大きさの針およびシリンジを用い、尾の静脈に1〜2分かけてゆっくりと手で、22% Solutol HS15、10mg/mL薬物、20mM リン酸バッファ製剤を1回静脈内ボーラス投与した後の溶血結果。上の観察は、投薬から15〜60分後に行った。
【0161】
高濃度のSolutolは、ボーラス注射として投与した上のミセル製剤を用いた溶血活性の原因であるだろうという仮説をたてた。Solutolは、薬物分子の約70%を構成する親油性部分(12−ヒドロキシステアリン酸)と、遊離PEGの30%を構成する親水性部分とを含む両親媒性薬物分子である。また、Solutol分子中に遊離PEGが存在すると、最終的な親水性が高まり、親油性コアから水相への移動が促進され、薬物が赤血球細胞にさらされる頻度が増えるという仮説もたてた。
【0162】
製剤中のSolutol含有量を減らし、それによって、分子中の遊離PEG含有量を減らすことによって、上の仮説を調べた。Solutol濃度を下げると、22%Solutol製剤(注入による投薬20mg/kg)を用いて試験すると、10ラットのうち6で溶血が発生していたが、7.5% Solutol製剤を用いてもっと高投薬量の25mg/kgで試験すると、10ラットのうち溶血の発生は0まで顕著に減った。6% Solutol濃度で、溶血の発生は、2個の別個の試験で、1/10および2/10まで顕著に低下した(表6)。最も低い濃度のSolutolでみられた溶血の発生は、バックグラウンドの発生に起因するものであり、ラットの溶血試験中にみられた変動であった。
【0163】
【表6】

上の仮説をさらに確認するために、Solutol分子から透析によって遊離PEGを除去した。遊離PEGの含有量を8.5%から0%に減らすと、溶血の発生が顕著に減った。溶血の発生は、遊離PEGを8.5%含む15% Solutol製剤を投与したラットでは、発生率が10/10であったが、2%および0%の遊離PEGを含む6%および8%のSolutolの場合、それぞれ、10ラットのうち1および10ラットのうち2と低下した(表7)。
【0164】
【表7】

平衡溶解度曲線に基づき、化合物1を50mg/ml溶解させることができる22% Solutolの現行の鉛製剤より5分の1低い濃度で、化合物1を10mg/ml溶解させ得ることがわかった。したがって、化合物1が10mg/ml、pH8.0である4.4% Solutolのミセル製剤(22% Solutolの5分の1の濃度)を、すべてのさらなる試験のための製剤として選んだ。しかし、この製剤を、化合物1が10mg/ml、投薬量が20mg/kgの状態でラットに用い、それぞれの群が10ラットの2群で試験した20ラットのうち、溶血発生が14と高い溶血の発生がみられた(表8)。pH8.0の4.4% Solutol製剤を繰り返し試験し、8被検体のうち7が溶血するという同様の結果が得られた(表8)。
【0165】
【表8】

(C.化合物1のマイクロエマルション製剤を静脈内投与されたラットの溶血発生評価)
高濃度での溶血の発生を防ぐためにミセル自体が制限されるので、油をミセルに入れ(マイクロエマルションを作製し)、疎水性コアの内側に薬物が保護され、トリグリセリドを含むことによってミセルの最終的な疎水性を高め、化合物1が赤血球細胞に分配されるのを遅らせた。トリグリセリドを含むと、短い寿命を有するその他の高度に動的な構造であるミセルの寿命を延ばすのに役立つだろうという仮説が得られた。ミセルは、個々の界面活性剤分子/モノマーを用いて平衡状態であり、塊とミセルとの間で一定量が交換され、さらに、ミセル自体が連続的な崩壊および再整列を受ける。
【0166】
種々の短鎖、中鎖、長鎖トリグリセリドを、カプリオール、トウモロコシ油、大豆油、MIGLYOL(登録商標)812(本明細書でMiglyolとも呼ばれる)を含むミセルに入れ、油保持量が高い物理的に安定なマイクロエマルション製剤を得た。20% Solutol濃度で、最も油の量が多いのは、中鎖トリグリセリド、Miglyolを入れたものであろう。製剤の物理的安定性を損なうことなく、この中鎖トリグリセリドを5%も多く20% Solutol溶液に入れることができる。
【0167】
したがって、10mg/mlの化合物1、20% Solutol、4.4% Miglyolを含む製剤を、投薬量20mg/kgの化合物1を注入することによって、ラットで溶血を試験した。この製剤は、試験した8匹のラットでまったく溶血が発生しなかった。この結果は、化合物1が10mg/mlで、SolutolおよびMCTの濃度を4.4% Solutolおよび1.1% Miglyolまで減らすと、試験した8被検体で、溶血の発生は、同様にたった1であった(表9)。
【0168】
【表9】

油を増やした製剤を用いて得られた正の結果を確認するために、溶血の発生について、これらの製剤を別個の試験で、ラットで再び試験した。驚くべきことに、20% Solutol、4.4% Miglyolの製剤は、この時点で、試験した8被検体で4例が溶血し、高い溶血発生率であった。しかし、4.4% Solutolおよび1.1% Miglyolを用いた結果は、以前の結果と匹敵するものであり、この製剤を投与した7被検体で溶血はたった1例であった(表10)。
【0169】
上の製剤を用いて観察した溶血発生を減らすために、ミセル中の油保持量をさらに増やすために、長鎖トリグリセリド(LCT)を含むようにさらに改変し、薬物保持量を増やすために疎水性がさらに大きくなった。Solutol製剤、Miglyol製剤の油保持量を増やすために、大豆油、長鎖トリグリセリドを使用した。20% Solutolおよび5% Miglyolに含まれていてもよい大豆油の最大量は、ほぼ3%であった。また、おそらく長鎖炭化水素鎖を、中鎖トリグリセリド、Miglyolに含ませ、さらに圧縮した構造を形成することによってミセル構造を再配置することによって、大豆油は、上の製剤の物理的な安定性を高めるのにも役立つ。
【0170】
その結果は、化合物1が10mg/mlであり、大豆油を含まない同様の製剤と、20% Solutol、4.4% Miglyol、3%大豆油とでまったく差がなかった。上の製剤は、この製剤を用いて試験した8匹のラットのうち、5例が溶血した。これとは対照的に、4.4% Solutol、1.1% Miglyol、0.66%大豆油は、化合物1が10mg/mlであり、8被検体で試験した場合に、完全にきれいな結果が得られた(表10)。しかし、20% Solutol、4.4% Myglyol、1.5%ビタミンEは、化合物1が10mg/mlであり、投薬量20mg/kgを注入によって8被検体に試験すると、溶血は生じなかった(表10)。
【0171】
上の試験から誘導される結論は、(a)Solutolの割合が低いと、良好な結果が得られ、そのため、Solutol分子中の遊離PEGの割合が少なくなり、(b)油を含むと、ミセルコア中の薬物保持量が高まり、単純なミセル溶液と比較した場合、溶血の発生が減るという観点で良好な結果が得られ、(c)Solutolの割合が高いと、20% Solutol、Miglyolを単独で含む場合、Miglyolおよび大豆油の組み合わせを含む場合、4.4% Solutolを上の油と組み合わせた場合と比較して、油が存在した状態でさえ、もっとさまざまな結果が得られた。油を加えると、ある程度Solutolの割合が多い製剤も明らかに改良される(例えば、ビタミンEを含むもの)。
【0172】
【表10】

したがって、化合物1の油の量を増やした静脈内用製剤を用いると、溶血しないという結果の推定を合理的なレベルの確信にまで高めるために、鉛製剤の選択を助けるために3種類の基準を示した。
【0173】
(a)信頼性を試験/再試験すること(製剤は、2回以上の試験で優れた結果を得ることができなければならない)
(b)バッチ間で一致した性能を有すること(製剤は、2回以上のバッチで優れた結果を得ることができなければならない)
(c)耐久性が高くなければならない(製剤は、少なくともn=10の被検体で優れた結果を得ることができなければならない)
上のガイドラインに基づいて試験した製剤は、4.4% Solutol、1.1% Miglyolおよび0.66%大豆油、2mg/mlの化合物1、pH8.0で0.88% Solutol、0.2% Miglyolおよび0.12%大豆油を含んでいた。Solutolの濃度を、上の場合で4.4%から0.88%まで5分の1に減らすと、溶血が発生する機会がさらに減り、以前のデータによって確認されるように、Solutolの濃度が低い状態でもっと一致する再現性のある結果が得られた。
【0174】
【表11】

化合物1が2mg/mlであり、4.4% Solutol、1.1% Miglyol、0.66%大豆油を注入によって投与し、この製剤を用いて試験した59匹のラットのうち、ほんの3例で溶血が生じた。この試験は、(a)3箇所の異なる部位で行われた4種類の別個の試験から得られた結果、(b)少なくとも4種類の異なるバッチを用いて行われて得られた結果、(c)このような1つの試験で20匹のラット(n=20)による多数の被検体で行って得られた結果を含んでいた(表11)。したがって、この製剤は、上の基準(a〜c)をうまく満たしている。
【0175】
この結果は、2mg/mlの化合物1を含み、pH8.0の0.88% Solutol、0.2% Myglyol、0.12%大豆油製剤を用いた結果よりもわずかに良い結果であり、この製剤を摂取した50匹のラットのうち、溶血はたった1例であった。さらに、これらの結果は、(a)3種類の別個の試験から得られたデータ、(b)3種類の異なるバッチを用いて行って得られたデータ、(c)このような2つの試験で多数のラット(n=20)に行って得られたデータを含んでいた(表12)。
【0176】
【表12】

(D.化合物1のマイクロエマルション製剤を静脈内投与したサルの溶血発生評価)
油を含む1.5%、3.5%、5.0%の濃度のSolutolを含む製剤(Solutol:Miglyol:大豆油を6.67:1.67:1で)のpH7.5(製剤の化学安定性およびイオン化した化合物1(pKa 6.9)のフラクションを減らすためにpH7.5を選んだ)製剤、赤血球細胞に対して利用可能)を3匹のサルで試験し、溶血の発生を観察した。1.5% Solutol製剤によって、試験した3匹のサルのうち、1匹で溶血がみられた。溶血に対して試験陽性であったサルは、溶血の重篤度という観点で、6までのスケールで+1のランクであった。同様に、2.5% Solutolも、この製剤を摂取した3匹のサルのうち、1匹で溶血が見られた(溶血が陽性であった試験サルの重篤度は+2)(表18)。しかし、5.0% Solutolは、この製剤を投与した3匹のサルすべてで溶血が発生せず、優れた結果が得られた(表13)。
【0177】
【表13】

(実施例6−さらなる製剤を用いた試験)
表14は、すでに述べたSolutol、共溶媒、シクロデキストリン製剤に加えて、溶血の結果を得るために調製し、試験した他の製剤のリストを提供する。
【0178】
【表14】

それに加えて、以下に示すように複数の他の/同一の製剤を調製し、試験した。それぞれの場合に、薬物化合物1は、HCl一水和物の塩の形態であった。
【0179】
製剤1:
化合物1+シクロデキストリン(Captisol);
送達方法(合計1日投薬量)(投薬容積)(投薬濃度)−溶血の結果
ボーラス(TDD 5mg/kg)(DV 5mL/kg)(DC 1mg/mL)−5/5
ゆっくりとした注入(TDD 10mg/kg)(DV 10mL/kg)(1mg/mL)−1/5 。
【0180】
製剤2:
化合物1+共溶媒(PEG/EtOH)
B−
SI(TDD 2.5mg/kg)(1.5mL/kg)(1.5mg/mL)−3/5 。
【0181】
製剤3:
化合物1+ポリエチレングリコール−660−
ヒドロキシステアレート、Solutol(登録商標)HS 15(22%)、20mM リン酸バッファ;pH 7 Solutol HS 15はミセルを形成する
10mg/mL薬物;10、20、30mg/雄の溶血kg;ゆっくりとしたボーラス注入の初期段階では、もっと頻繁にみられる。
【0182】
製剤4:
ボーラスまたは注入の投薬量(mg/kg) 投薬容積(mL/kg) 投薬濃度(mg/mL) 発生+hb−uria/ sex
7.5% Solutol I 25 5 5 0 / 10 M
7.5% Solutol B 25 5 5 5 / 5 M 。
【0183】
以下の配合物の場合、この投薬量を15分間かけてラットの尾の静脈に注入により投与した。表14のいくつかの製剤のデータを、以下のように製剤5〜10で繰り返す。このデータは、投薬量(mg/kg);投薬容積(ml/kg);投薬濃度(mg/ml)、溶血の発生としてあらわされる。
【0184】
製剤5:10ml イントラリピッド(20%大豆油、1.2%卵リン脂質、2.25%グリセロール);100ul NK−1/エタノール 1mg/mL;80ul 0.1N NaOH、pH 6.07
Intralipid 5 5 1 0/2
(エマルション) 。
【0185】
製剤6:(イントラリピッドと同様)
エマルション 5 5 1 0/4 。
【0186】
製剤7:10ml HAS(20%);100ul NK−1/エタノール溶液(1mg/ml) pH6.66
HSA 5 5 1 0/2 。
【0187】
製剤8:45g solutol 15 HS;15g プロピレングリコール、250mg NK−1;2gm NK−1 Solutol溶液で希釈した8gr PBS(1×)、pH6.5、またはSolutol:PG(3:1w/w)中、50mg/mlの薬物を、使用前に1または5mg/薬物mlになるように食塩水で希釈した。
ミセル 7.5% Solutol
5 5 1 0/5
25 5 5 0/5
ミセル=直径25nm未満 。
【0188】
製剤 9:
ナノサイズ
5 5 1 0/5 。
【0189】
製剤10
22% Solutol;pH 7;リン酸バッファ10mg/mL ラットの尾の静脈にゆっくりとしたボーラスのときの溶血。
【0190】
製剤11
6% Solutol 20 7 2.86 1/10
20 7 2.86 2/10 。
【0191】
製剤12
7.5% Solutol 5 5 1 0/5
25 5 5 0/5 。
【0192】
製剤13
15% Solutol 25 2.5 10 1/5
11−13−15分かけて尾の静脈にゆっくりとした注入 。
【0193】
製剤14
8.5% Solutol;0% PEG(除去した)
20 2 10 2/10 。
【0194】
製剤15
6% Solutol; 2% PEG
20 7 2.86 1/10 。
【0195】
製剤16
油を増やしたミセル(Solutol HS 15+Miglyol H12N(中鎖トリグリセリド油)/大豆油)
大豆油トリグリセリド中の主要な不飽和脂肪酸は、7% α−リノレン酸(C−18:3);51% リノール酸(C−18:2);23% オレイン酸(C−18:1)である。また、飽和脂肪酸4%ステアリン酸および10%パルミチン酸も含む。
4.4% Solutol(1.45%遊離PEG)/1.1%Miglyol(pH8)
20 2 10 1/8
20% Solutol (6.6% 遊離PEG)/5% Miglyol (pH8)
20 2 10 0/8 。
【0196】
製剤17
4.4% Solutol/1% Miglyol (pH8)
20 2 10 1/7(1=痕跡量) 。
【0197】
製剤18
4.4% solutol/1% Miglyol/.66% 大豆油 (pH8)
20 2 10 0/8 。
【0198】
製剤19
20% Solutol/5% Miglyol (pH8)
20 2 10 4/8 (3+,3+, 痕跡量 痕跡量) 。
【0199】
製剤20
20% Solutol/5% Miglyol/3%大豆(pH8)
20 2 10 5/8 (1+,2+,3+,1+,痕跡量)。
【0200】
製剤21
20% Solutol/5% Miglyol/1.5%α−トコフェロール(pH8)
20 2 10 0/8 。
【0201】
製剤21A
4.4% Solutol/1% Miglyol/1.5%α−トコフェロール
20 10 2 2/10 。
【0202】
製剤21B
4.4% solutol/1% Miglyol/1.5%α−トコフェロール/.6% 大豆油
20 10 2 0/8 。
【0203】
製剤22
化合物1 2mg/mL .88% Solutol/.2% Miglyol/.12%大豆15分注入
20 10 2 0/8
20 10 2 0/2
20 10 2 1/20
10 5 2 0/20 。
【0204】
製剤23
化合物1 2mg/mL 4.4% Solutol/1% Miglyol/.6%大豆Ph 7.5、15分注入
20 2 10 0/8
20 10 2 1/7
10 5 2 0/10
20 10 2 1/6
10 5 2 1/20 。
【0205】
製剤24〜26:
−Cremophor RH40 1.25%;投薬量−20mg/kg;薬物濃度−2mg/ml;溶血−0/8;15分注入
−Cremophor EL 1.25%;投薬量−20mg/kg;薬物濃度−2mg/ml;溶血−1/6;15分かけてゆっくりと注入
Cremophor EL 6%;投薬量−20mg/kg;薬物濃度−2mg/ml;溶血−4/4;ボーラスモードの投与 。
【0206】
製剤27(混合ミセル):
960μl POPC/エタノール混合物(240mg POPC)
200mg Na−グリコール酸
15mg 化合物1(HCl一水和物)
3ml PBS(1×)
目標濃度:5mg/mL
pH:6.6 。
【0207】
希釈する前に十分に振り混ぜる。ストック溶液を、PBS(pH7.4)を用いて望ましい濃度に希釈する。希釈してから2時間以内に注射を終えるべきである。
POPC:パルミチン酸およびオレイン酸ホスファチジルコリン
注釈−この製剤は、5mg/kgを15分かけてゆっくりと注入する経路(5ml/kg、投薬濃度が1mg/mL)では、溶血の発生率が高かった。さらなる情報がないので、この製剤は、利用する特定の投与経路で、静脈内用製剤として適していない。もっと長い時間をかけた注入では適切な場合もあり、および/または溶血を最低限にする必要がある場合もある。
【0208】
製剤28
6.7% Solutolおよび13.3% Intralipid Drug 2mg/mL 。
【0209】
好ましい実施形態では、化合物1の製剤を、15〜30分間かけて静脈注入によって投与し、100mg/瓶を有する瓶中に、薬物濃度が2mg/mLの50mL溶液を含む状態で存在していてもよい。投薬量および容積を、さらなる目的の投薬量(例えば、100〜200mgの目的投薬量)になるように調節してもよい。
【0210】
化合物1のある特定の利点は、半減期(T1/2)が180時間であることであり、このことは、CINVを処置する処置サイクル計画ごとに1投薬量を投薬するのに特に便利であり、投薬量が5〜200mgの範囲のときのT1/2は、異なる投薬量での時間あたりのapi(ng/mL)としてあらわされ、直接投与したときの時間点でのng/mlは、850ng/mL(200mg);430ng/mL(100mg);280ng/mL(50mg)であり、投与からほぼ180時間の時点で、全投薬量について濃度が半分になった。
【0211】
静脈内用製剤を、2mg/mLになるようにあらかじめ混合しておいてもよく、または、希釈するための濃縮物であってもよい(2mg/mLに希釈するための10mg/mLおよび20mg/mLの強度)。
【0212】
Intralipid(登録商標)製剤は、10mlのIntralipid(登録商標)(20%)(20%大豆油、1.2%卵の黄身のリン脂質、2.25%グリセリン、注射用水);100ulの化合物1/エタノール溶液(1mg/ml);80ulの0.1N NaOHを含んでおり、pHが6.07となった。Intralipid製剤は、エマルションである。
【0213】
エマルション製剤(製剤6)は、パルミトイル−オレオイル−ホスホチジルコリン(POPC)、オレイン酸、グリセロール、Tween 80で構成されていた。
【0214】
ミセルの粒径は、典型的には、100nm未満であり、15〜100nmの範囲内にある。ミセル製剤は、45g Solutol HS;15g プロピレングリコール;250mg 化合物1(結晶塩酸塩一水和物として);2g 化合物1で希釈した8g PBS(1×)、Solutol 15S、プロピレングリコール溶液;10mg/mLに対し、pH6.5であり、使用前に希釈するか、またはSolutol:PG(3:1、w:w)中に薬物を含む50mg/mL溶液として調製し、使用前に食塩水を用いて1mg/mlまたは5mg/mlに希釈した。
【0215】
HSA製剤は、10ml HSA 20%;100ul 化合物1/エタノール溶液(1mg/ml);pH 6.66であった。
【0216】
(実施例7−ボーラス投与およびゆっくりとした注入による投与に適したエマルション製剤)
中鎖および長鎖のトリグリセリド(triglyercide)に基づき、乳化剤(例えば、卵レシチンおよびオレイン酸ナトリウム)を適切に使用した非経口エマルション製剤も配合した。以下に引用されるような製剤のいくつかは、ボーラス経路およびゆっくりとした注入によって投与した場合、いずれも優れた結果が得られた。それに加えて、エマルションによって、非常に高い投薬量である30mg/kgの場合であっても溶血が低減した。製剤に、液滴の大きさが小さく、粒度分布が狭い(psd)エマルションを得るように処理条件が最適化されたマイクロ流体化を行った。全製剤を、H30Z(200ミクロン)相互作用チャンバを用い、2000psiで処理し、中位径が500nm、およびD90が600nm未満の液滴が生成した。また、特定の製剤は、オートクレーブによって、121℃で20分間のサイクルで1回滅菌した後でも物理的に安定であることがわかった。このような製剤は、滅菌プロセスの後でも、液滴の大きさが検知できるほど増大していなかった。したがって、化合物1を含む物理的に安定な製剤(配合されると、結晶性の塩酸塩一水和物の形態である)は、ボーラス投与にもゆっくりとした注入による静脈内投与にも適しており、試験した動物で溶血は生じなかった。
【0217】
以下に記載するエマルション製剤は、疎水性コア中の薬物の保持率が高く、ミセル製剤と比較して液滴が大きく、油の液滴からRBCに薬物が移動/分配していくのが遅くなり、天然に存在する脂質を乳化剤として利用することによって、配合の柔軟性が増し、それによって、例えば、Solutol中に存在する遊離ポリエチレングリコールを避けることができ、したがって、疎水性環境からRBCへの薬物の移動をさらに防ぐという利点がある。非経口エマルションを用い、水溶性が低い薬物(典型的には、水溶液中の小さな油液滴を構成する)を運ぶ。好ましい乳化剤は、非経口投与に用いるのに安全であると考えられる乳化剤から選択される。本発明の製剤では、レシチンが好ましい乳化剤である。精製卵レシチンが最も好ましい。例えば、オレイン酸またはオレイン酸ナトリウムのようなさらなる安定化剤を加えてもよい。また、中鎖(Myglyol)トリグリセリドおよび長鎖(大豆油)トリグリセリドを加えてもよい。卵ホスファチジルコリンや、Lipoid E 80(77.7% PC、7.8% PE、2.5% LPC、3.0% SPM)(PC=ホスファチジルコリン;PE=ホスファチジルエタノールアミン;LPC=lyso−PC;SPM=スフィンゴミエリン)またはLipoid E80Sを安定化剤として使用してもよい。グリセリンを張度調節剤として用いてもよく、エタノールを、レシチンおよび薬物(式Iの化合物またはその塩−例えば、化合物1)のための共溶媒/溶解剤として用いてもよい。
【0218】
この実施例で使用する以下の材料を表15にまとめている。
【0219】
【表15】

(動物での溶血試験)
この実施例の方法論は、注入ポンプを用いて静脈内注入することによって、15分かけてそれぞれの製剤を投与するか、または、シリンジを用い、製剤をラットの尾の静脈に送達してボーラス注射することによって、製剤を2分以内に投与することであった。プールしておいた尿を集める方法を用い、6時間間隔で遊離ヘモグロビンの存在について試験紙によって尿を試験した。各製剤について最小で4被検体を試験し、このような動物の溶血の頻度を観察した。
【0220】
(未処理エマルション製剤の調製)
エマルションを調製する一般的な手順は、以下のとおりであった(図3)。
(1)必要量のMyglyolおよび大豆油をビーカーに秤量し、
(2)上のあらかじめ混合したものを5分間均質化し、2成分をブレンドし、混合し、
(3)上のビーカーに必要量のLipoid E80(登録商標)/Lipoid E80Sを加え、
(4)200〜250mcg/mlの化合物1を塩酸塩一水和物として含む必要量のエタノールを加え、
(5)必要量の滅菌水を別個のビーカーに秤量し、
(6)上の水相に所定量のグリセリンを加え、2〜3分間混合し、
(7)式中に存在する場合、この水相に所定量のオレイン酸ナトリウムを加え、
(8)油相と水相とを約65〜70℃で15〜20分間、別個に加熱し、
(9)油相に、滅菌水を用いて最終容積にするのに適切な量の水相を加え、この分散物を約1〜2分間均質化し、
(10)この分散物を室温まで冷却してからバイアルに充填する。
【0221】
(マイクロ流体化を用いて処理したエマルション製剤の調製)
上述の未処理のエマルションまたは本発明の範囲の未処理のエマルションを、次いで、マイクロフルイダイザーに通し、液滴の粒度分布が狭い、安定性の増したエマルションを得てもよい。マイクロ流体化プロセスは、生成物流に対し、一定速度で生成物に望ましい圧力を供給するように設計されたマイクロフルイダイザーの使用を含む。その結果、生成物流は、正確に設計された所定の形状を有する微細チャネル(相互作用チャンバ)を高速で通るように加速され、生成物流に、任意の他の従来方法よりもかなり高いせん断速度を作り出す。これにより、液滴が小さな粒径に破壊され、物理的安定性を高めるために、もっと均一で、液滴の粒度分布が狭い製剤が得られる。
【0222】
(マイクロフルイダイザーを用いる、製剤の処理/特性決定のための手順)
4,100〜10,000psiの圧力範囲でF20Y(75ミクロン)相互作用チャンバ、または2000〜5000psiの圧力範囲でH30Z(200ミクロン)のいずれかを用い、コロイドエマルションを処理した。通過させる数は、1〜3回の範囲であった。相互作用チャンバを囲む水浴を用い、マイクロ流体化工程中に生成物の温度が上がるのを防いだ。分析は、光学顕微鏡および粒径分析機の使用を含んでいた。処理後に集めた各サンプルについて、画像を撮った。未処理サンプルと、マイクロ流体化の各サイクル終了時に粒径分析を行った。
【0223】
(蒸気による滅菌)
ガラスバイアルに製剤を充填し、密閉し、121℃で20分かけて1回最終滅菌するために、オートクレーブに入れた。Malvern Zetasizer Nano−ZSを用いて粒径を測定し、滅菌プロセス後の液滴の粒度分布の変化を観察した。この装置は、動的光散乱の原理に基づいて動く。
【0224】
(製剤および結果)
卵PCと、中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドの組み合わせとを用い、2種類のエマルション製剤を配合した。このエマルション製剤は、それぞれ4匹および6匹のラットに注入およびボーラス投与したときに、溶血を引き起こさなかった(表16)。しかし、これらの特定の製剤は、十分な分散のためにせん断力を与えて振り混ぜなければ、24時間を超える安定性はなかった。
【0225】
【表16】

ラットでさらに試験するために、20% w/wの油を含むエマルション製剤を配合し、乳化剤としてLipoid E80Sを用い、物理的に安定化させた。疎水性コア内に化合物1を保持するために、油の含有量が多いことが望ましかった。Lipoid E80Sは、ホスホチジエタノールアミン(PE)の含有量が大きく、アニオン性乳化剤として作用する。この製品は、Lipoid KG(ルートウィヒスハーフェン、ドイツ)から市販されている。Lipoid E80S中のPE含有量は、約20%であり、一方、卵ホスファチジルコリンは、約80%のこの基質から構成されている。これらの製剤について、ボーラスおよび注入によって、化合物1の投薬量20mg/kgで試験した。溶血の発生率は、表17からわかるように、この油保持量で高かった。
【0226】
【表17】

製剤中の油の保持量を20%から10%に減らすと、ボーラス経路でも、ゆっくりとした注入経路でも、優れた溶血結果が得られた(表18)。
【0227】
【表18】

したがって、好ましいエマルション製剤は、保持量が10%の油を含んでいた。オレイン酸ナトリウムをさらなる成分として加えたが、すべての送達経路で、好ましい溶血結果は得られなかった(表19)。
【0228】
【表19】

オレイン酸ナトリウムを含まず、高濃度の薬物(30mg/kg)を含む製剤も試験した(表20)。
【0229】
【表20】

以下に列挙した5種類のエマルション製剤を、マイクロ流体化技術を用いて処理した。これらの製剤を処理した後に得られる最終粒径(D10、D50、D90)を、含まれる通過回数、液体を相互作用チャンバに強制的に通すために用いられる圧力、使用される相互作用チャンバの種類とともに、表21に一覧にしている。
【0230】
【表21−1】

【0231】
【表21−2】

INFWSOは、バッチ番号85266−M/L10%infと同じ製剤組成物である。
INFSOは、バッチ番号85266−M/L10%SOinfと同じ製剤組成を有する。
BOL10WSOは、バッチ番号85266−M/L10%と同じ製剤組成を有する。
BOL10SOは、バッチ番号85266−M/L10%SObolと同じ製剤組成を有する。
BOL15SOは、バッチ番号85266−M/L10%bol3と同じ製剤組成を有する。
【0232】
処理した全製剤で、狭く、もっと均一な粒度分布(psd)が得られた。図4からわかるように、BOL15SOのpsd曲線は、未処理製剤と比較して、2,000psiの圧力で未処理製剤を3回通したマイクロ流体化の後に、顕著に左側にシフトしていた。未処理BOL15SOのD50およびD90の値は、それぞれ、4.505umおよび10.745umであり、H30Z(200ミクロン)相互作用チャンバを用い、2000psiの圧力で製剤を3回通した後、それぞれ、410nmおよび569nmにシフトしていた。顕微鏡画像から、製剤をマイクロ流体化に2000psiで1回通した場合と比較して、2000psiで3回通した後に得られた油液滴のpsdが均一であることを確認している(図7)。
【0233】
図7は、マイクロ流体化中のBOL15SO製剤およびINFWSO製剤の光学顕微鏡画像を示す。光学顕微鏡は、BOL 15SO製剤(上の2つの画像)およびINFWSO製剤(下の4つの画像)に行ったマイクロ流体化のサイクル数の影響を明確に示している。右側の画像は、非常に大きな油の球がないことが観察され、もっと均一で狭い粒度分布を有する。
【0234】
INFWSOに関し、同様の観察を行った。D50およびD90の値は、未処理製剤の場合の2.643umおよび4.848umから、H30Z相互作用チャンバを用いて2,000psiで3回通すと、442nmおよび578nmに変化した。psd曲線は、さらに左側にシフトし、D50およびD90の値を、75ミクロンの微細な孔チャネルを備えるF20Y相互作用チャンバを用い、4,100psiの圧力で製剤を3回通した後にそれぞれ318nmおよび437nmで記録した(図5)。2000および4,100psiで1回通した後の処理製剤の顕微鏡画像は、大きな油の球がみられ、psdが不均一であり、製剤をさらに処理した後には、明らかにもっと均一になった(図7)。
【0235】
BOL10WSOは、マイクロ流体化の後に顕著に左側にシフトした油液滴のpsdに関する曲線をもち、処理したときに同様の結果が得られた。D50およびD90の値を、75ミクロンの微細な孔チャネルを備えるH30Z相互作用チャンバを用い、2,000psiの圧力でこれらのエマルションを3サイクル処理し、それぞれ422umおよび595umで記録し、これをD50およびD90の値が3.892umおよび6.873umである未処理製剤と比較した。同じ相互作用チャンバを用い、もっと高い圧力である5,000psiを用い、3回通過させると、曲線はさらに左にシフトし、D50およびD90の値は、それぞれ341nmおよび482nmになった(図6)。サイクル数に対するマイクロ流体化の影響および製剤にもっと高い圧力をかけた後に得られる油の液滴が小さくなっていることが、顕微鏡画像から明らかに観察された(図8)。図8は、マイクロ流体化中のBOL10WSO製剤の光学顕微鏡画像を示す。
【0236】
光学顕微鏡の結果は、マイクロ流体化の圧力およびサイクル数がBOL10WSO製剤に及ぼす影響を明らかに示している。右側の画像は、非常に大きな油の球がなく、もっと均一で狭い粒度分布を有することが観察されている。さらに、油の液滴は、予想どおり、高い圧力で製剤にマイクロ流体化を行うと、小さくなる。
【0237】
INFSO製剤およびBOL10SO製剤を用い、同様の結果が認められた(図9および図10)。図9は、マイクロ流体化中のBOL15SO製剤およびINFWSO製剤の光学顕微鏡画像を示す。光学顕微鏡の結果は、マイクロ流体化のサイクル数がINFSO製剤に及ぼす影響を明らかに示している。サイクル数が多いほど、均一な粒度分布が得られる。図10は、マイクロ流体化中のBOL10SO製剤の光学顕微鏡画像を示す。光学顕微鏡の結果は、マイクロ流体化のサイクル数がBOL10SO製剤に及ぼす影響を明らかに示している。サイクル数が多いほど、均一な粒度分布が得られる。
【0238】
このようなマイクロ流体化処理によって、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩を含む、物理的に安定なエマルション製剤が得られた。また、本発明は、中位径が約500nm以下であり、D90が約600以下である液滴を含む式Iおよびその塩のエマルション製剤に関する。製剤をさらに通過させ、さらに高い圧力をかけると、もっと小さな粒径が達成された。次いで、製剤をオートクレーブにかけ、静脈内投与用の製剤を滅菌した。オートクレーブの結果生じる目に見える安定性の問題はなかった。INFWSOおよびBOL10WSOをオートクレーブにかけ、視覚的に観察した後、1サイクル後に得られた平均粒径が、それぞれ353.4nmおよび336.7nmであると決定した(図11および図12)。したがって、ボーラス投与およびゆっくりとした注入による投与の両方で、リン脂質系エマルション製剤を用いると、溶血のない結果が再現性よく達成された。
【0239】
上に示したように、製剤は、癌治療のための放射線治療;癌処置のための化学療法に関連する悪心および嘔吐、術後に関連する悪心および嘔吐の予防および処置に有用である。一連の治療は、化学療法を開始する前に式Iの化合物またはその塩を含む1投薬量の製剤を1日に1回投与した後、2日目または3日目に1日に1回投与することを含む。また、一連の治療は、1日目に1投薬量を投与することを含む。静脈内用溶液は、処置の必要な患者に100mgを送達するのに必要な50mlを含む、2mg/mlの溶液の形態であってもよい。製剤は、あらかじめ混合した溶液を作る準備ができていてもよく、使用前に希釈してもよい濃縮物であってもよい。本明細書に開示の凍結乾燥した製剤は、使用前に食塩水または適切なバッファと混合する粉末の形態であってもよい。
【0240】
(実施例8−プロドラッグ)
以下に示す2種類のプロドラッグを、活性化したカルボニル化合物と式Iの化合物とを反応させることによって調製した。以下に示すグルカミンホスフェート塩は、尿および血漿の両方で、異なる2つの時間点で測定した場合、溶解剤を含まないデキストロース水溶液で、優れた溶血結果が得られた。
【0241】
プロドラッグ:
【0242】
【化28】

デキストロース/水中のグルカミンホスフェート塩プロドラッグの溶血データ
20mg/kg投薬量 2 mL/kg 10 mg/mL 0/4 尿;1/4結晶 .25時間の時間点
20 2 10 0/3尿; 0/3血漿 1時間の時間点 。
【0243】
ビヒクル(10% Solutol)を用いて作製したアミンのデータ .25hr 3/3溶血

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式Iの化合物
【化29】

またはその薬学的に許容される塩と、
(b)薬学的に許容されるビヒクルとを含む、静脈内投与に適した薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容されるビヒクルが、クレモホール、エマルション、マイクロエマルション、ミセル、負に荷電したミセル、油が含まれるミセル、イントラリピッド、HSA、リポソーム、および、負および正に荷電したアミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容されるビヒクルが、水溶性有機溶媒、非イオン系界面活性剤、水不溶性脂質、有機脂質/半固体およびリン脂質からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容されるビヒクルが、油が含まれるミセルの形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記油が含まれるミセルが、長鎖トリグリセリドと中鎖トリグリセリドとを組み合わせたSolutolを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容されるビヒクルが、エマルションの形態である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記エマルションが、長鎖トリグリセリドと短鎖トリグリセリドとを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物
【化30】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)該組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)該組成物全体の約0.10重量%〜約2.5重量%の量の中鎖トリグリセリドと;
(d)該組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量の長鎖トリグリセリドと;
(e)少なくとも1種類のバッファとを含み、
該組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比が、約5〜100:1〜5:1であり、組成物のpHが約6.5〜約8.0である、薬学的組成物。
【請求項9】
前記中鎖トリグリセリドが、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ヤシ油由来のトリグリセリド(trigylceride)、カプリル酸/カプリル酸/ラウリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリル酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリル酸/ステアリン酸トリグリセリド、およびその2種類以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記長鎖トリグリセリドが、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、サメ肝油、オレイン酸エチル、ヒマシ油、一不飽和ω−9脂肪酸およびその2種類以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の薬学的組成物であって、
前記マクロゴール15−ヒドロキシステアレートが、該組成物全体の約0.5重量%〜約10.0重量%の量で存在し;前記中鎖トリグリセリドが、組成物全体の約0.15重量%〜約1.5重量%の量で存在し;前記長鎖トリグリセリドが、該組成物全体の約0.10重量%〜約1.2重量%の量で存在する、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項8に記載の薬学的組成物であって、
前記マクロゴール15−ヒドロキシステアレートが、該組成物全体の約0.88重量%〜約4.84重量%の量で存在し;前記中鎖トリグリセリドが、該組成物全体の約0.20重量%〜約1.20重量%の量で存在し;前記長鎖トリグリセリドが、該組成物全体の約0.10重量%〜約0.75重量%の量で存在する、薬学的組成物。
【請求項13】
前記中鎖トリグリセリドが、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、前記長鎖トリグリセリドが、精製大豆油である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される塩が、塩酸塩である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記式1の化合物が、1mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記式Iの化合物が、2mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在する、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記式Iの化合物が、2mg/mlの濃度で存在する、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記組成物の前記pHが、約7〜約8である、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記組成物の前記pHが約7.5である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記組成物が、張度調整剤および/またはpH調整剤をさらに含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種類のバッファが、リン酸バッファである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記リン酸バッファが、リン酸ナトリウムバッファである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物
【化31】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)該組成物全体の約4.4重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)該組成物全体の約1.1重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)該組成物全体の約0.66重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、該組成物のpHが約7.5である、薬学的組成物。
【請求項24】
前記式Iの化合物が、1mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物
【化32】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)該組成物全体の約0.88重量%の量のマクロゴール15−ヒドロキシステアレートと;
(c)該組成物全体の約0.22重量%の量の少なくとも1種類の中鎖トリグリセリドと;
(d)該組成物全体の約0.12重量%の量の精製大豆油と;
(e)リン酸バッファとを含み、該組成物のpHが約7.5である、薬学的組成物。
【請求項26】
前記式Iの化合物が、1mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
薬学的組成物を製造するプロセスであって、
(a)(i)融解したマクロゴール15−ヒドロキシステアレート、(ii)中鎖トリグリセリド、(iii)長鎖トリグリセリドを加熱して組成物を作製することと;
(b)該組成物に水を加え、マイクロエマルション組成物を作製することと;
(c)該マイクロエマルション組成物に、式Iの化合物
【化33】

またはその薬学的に許容される塩を加えることと;
(d)少なくとも1種類のバッファを加え、pHを約6.5〜約8.0に調整して薬学的組成物を作製することとを含み、ここで、該マクロゴール15−ヒドロキシステアレートは、該薬学的組成物全体の約0.50重量%〜約10.0重量%の量で存在し、該中鎖トリグリセリドは、該薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約2.5重量%の量で存在し、該長鎖トリグリセリドは、該薬学的組成物全体の約0.10重量%〜約1.5重量%の量で存在し、組成物中のマクロゴール15−ヒドロキシステアレート:中鎖トリグリセリド:長鎖トリグリセリドの重量比は、約5〜100:1〜5:1である、プロセス。
【請求項28】
前記中鎖トリグリセリドが、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ヤシ油由来のトリグリセリド(trigylceride)、カプリル酸/カプリル酸/ラウリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリル酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリル酸/ステアリン酸トリグリセリドおよびその2種類以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記長鎖トリグリセリドが、大豆油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、サメ肝油、オレイン酸エチル、ヒマシ油、一不飽和ω−9脂肪酸およびその2種類以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
前記中鎖トリグリセリドが、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドであり、前記長鎖トリグリセリドが大豆油である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項31】
前記融解したマクロゴール15−ヒドロキシステアレートが、該マクロゴール15−ヒドロキシステアレートを60℃〜65℃の温度に加熱することによって得られる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項32】
工程(b)で、前記混合物を約60℃の温度で加熱する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項33】
前記式Iの化合物が、前記薬学的組成物中に、1mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項34】
工程(c)で、前記pHが約7.5に調整される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項35】
前記マイクロエマルション組成物に張度調整剤を加えることをさらに含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項36】
薬学的組成物であって、
(a)式Iの化合物
【化34】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)該組成物全体の約0.88重量%〜約5重量%の量のペグ化したヒドロキシステアレートとを含み、該ペグ化したヒドロキシステアレートは、遊離ポリエチレングリコールを実質的に含まず、該組成物のpHが、約6.5〜約8.0である、薬学的組成物。
【請求項37】
処置の必要な患者の悪心および/または嘔吐を処置する方法であって、該方法は、請求項1、8、23、25または36に記載の有効量の薬学的組成物を該患者に注入することによって静脈内投与することを含み、該患者の溶血が最低限である、方法。
【請求項38】
前記悪心および/または嘔吐は、化学療法によって誘発されるか、または、術後の悪心および/または嘔吐である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記患者が、霊長類またはコンパニオンアニマルである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記霊長類が、ヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩が、1mg/ml〜15mg/mlの濃度で存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、15〜90分間注入することによって静脈内投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の1日合計投薬量が、患者の体重1kgあたり1mg〜9mgである、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩
【化35】

を静脈内投与した後の患者の溶血を最低限にする方法であって、該方法が、請求項1、8、23、25または36に記載の有効量の薬学的組成物を該患者に注入することによって静脈内投与することを含む、方法。
【請求項45】
前記患者が、霊長類またはコンパニオンアニマルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記霊長類が、ヒトである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(a)式Iの化合物
【化36】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)リン脂質とを含む、薬学的組成物。
【請求項48】
(a)式Iの化合物
【化37】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)長鎖脂肪酸または長鎖トリグリセリドとを含む、薬学的組成物。
【請求項49】
(a)式Iの化合物
【化38】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドまたは脂肪酸とを含む、薬学的組成物。
【請求項50】
(a)式Iの化合物
【化39】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)リン脂質とを含む、薬学的組成物。
【請求項51】
(a)式Iの化合物
【化40】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)リン脂質と、
(d)グリセリンとを含む、薬学的組成物。
【請求項52】
(a)式Iの化合物
【化41】

またはその薬学的に許容される塩と;
(a)中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(b)リン脂質と;
(c)グリセリンと、
(d)エタノールとを含む、薬学的組成物。
【請求項53】
前記組成物の合計重量を基準として、成分(b)の重量パーセントが約10%である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
(a)式Iの化合物
【化42】

またはその薬学的に許容される塩と;
(b)10%の中鎖トリグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸またはトリグリセリドと;
(c)1.2%のリン脂質と、
(d)2.25%のグリセリンとを含む、薬学的組成物。
【請求項55】
薬学的に有効な量の請求項1に記載の製剤と、抗鬱薬、悪心防止薬または吐き気止め薬、化学療法剤または抗炎症剤からなる群から選択される少なくとも1種類のさらなる活性医薬成分とを含む組み合わせ。
【請求項56】
前記抗鬱薬が、SSRIから選択される、請求項55に記載の組み合わせ。
【請求項57】
前記悪心防止薬/吐き気止め薬が、5−HT受容体アンタゴニストから選択される、請求項55に記載の組み合わせ。
【請求項58】
式Iの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、催吐性の高い癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する、急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法。
【請求項59】
式Iの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、中程度の催吐性がある癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する、急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法。
【請求項60】
請求項53に記載の薬学的に有効な量の組成物を投与することを含む、嘔吐の処置が必要な患者の嘔吐を処置する方法。
【請求項61】
前記組成物が、ボーラス投薬として投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
式Iaの化合物
【化43】

〔式中、ZおよびYは、独立して、H、−PO(OH)O、−PO(O2M、−PO(O2+、−[C(R)(R)]−PO(OH)O、−[C(R)(R)]−PO(O2M、−[C(R)(R)]−PO(O2+、−C(O)[C(R)(R)]−OPO(O2M、−C(O)[C(R)(R)]NR、−C(O)[C(R)(R)]CO2−、−SO3−、−[C(R)(R)]SO3−および−[C(R)(R)]OC(O)ORからなる群から選択され、Rが、
【化44】

からなる群から選択され;但し、ZおよびYは、ともにHであることはできず;Mは、一価カチオンから選択され;Dは、二価カチオンから選択され;RおよびRは、独立して、HまたはC1〜6アルキルから選択され;nは、1〜4であり;m、o、pは、独立して、0〜4から選択され;Rは、C1〜6アルキルから選択される。〕
およびその薬学的に許容される塩。
【請求項63】
Zが、Hから選択され、Yが、ZおよびYについて上に示したH以外のいずれかの基から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
が、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)、N−メチル−D−グルカミンまたはジシクロヘキシルアミンのような有機塩基との塩、またはアミノ酸塩(例えば、アルギニンまたはリジン)から選択される、請求項62に記載の化合物。
【請求項65】
式Iaの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、催吐性の高い癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する、急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法。
【請求項66】
式Iaの化合物を、少なくとも1種類のさらなる吐き気止め薬と組み合わせた静脈内用製剤を投与することを含む、中程度の催吐性がある癌化学療法の初期段階および一連の繰り返しに関連する、急性および遅発性の悪心および嘔吐を処置する方法。
【請求項67】
以下の式
【化45】

を有する、請求項62に記載の化合物。
【請求項68】
請求項62に記載の式Iaの化合物を含む、静脈内用製剤。
【請求項69】
請求項1に記載の静脈内用製剤を投与することを含み、該製剤が、1回の化学療法処置サイクルごとに1投薬量投与される、CINVについて処置が必要な患者を処置する方法。
【請求項70】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、活性成分のT1/2が約180hrであり、投与したときに、約50〜約200mgの範囲の投薬量を直接投与した後の血中濃度(ng/mL)が、約280ng/mL〜約850ng/mLの範囲である、静脈内医薬製剤。
【請求項71】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む静脈内投与に適したミセル製剤。
【請求項72】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む静脈内投与に適したエマルション製剤。
【請求項73】
式Iの化合物
【化46】

またはその薬学的に許容される塩と、非イオン系溶解剤とを含む、薬学的組成物。

【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−501806(P2013−501806A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524868(P2012−524868)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/045317
【国際公開番号】WO2011/019911
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510087760)オプコ ヘルス, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】