説明

ヌクレオチド脂質エステル誘導体

本発明の対象は、特別なハロゲン化アデニンヌクレオチドの脂質エステル及びそのような脂質エステルの腫瘍治療における使用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の対象は、以下の式I:
【化1】

{式中、
1は、場合により、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルスルフィニル又はC1〜C6アルキルスルホニル基で一置換又は多置換された、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル鎖であり;
2は、水素、或いは場合により、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、又はC1〜C6アルキルスルホニル基で一置換又は多置換された、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル鎖であり;
3は、アミノ又はOR4であり、ここで、R4はC1〜C8アルキルであり;
Xは、イオウ、スルフィニル又はスルホニル基を表し;そして
Yは、酸素原子である。}
により表される特別なヌクレオチドの脂質エステル、それらの互変異性体、生理学的に許容可能なそれらの無機及び有機の酸及び塩基の塩、並びにそれらの製造方法及びこれらの化合物を活性成分として含む医薬である。式I中のアデニン残基中のアミノ基は、周知のアミノ保護基によって保護されることもできる。
【0002】
式Iの化合物は、不斉炭素原子を含むため、これらの化合物のすべての光学活性形態及びラセミ混合物もまた、本発明の対象である。
【0003】
J. Biol. Chem. 265, 6112(1990)及びヨーロッパ特許出願第EP-A-0,350,287号は、抗ウイルス薬としてのリポヌクレオチドの調製及び使用を記載する。しかしながら、それらにおいては、それらの脂肪酸エステル構造を含む、AZT及びDDCのような周知のヌクレオシドに結合したジミリストイルホスファチジル残基及びジパルミトイルホスファチジル残基のみが開示されている。
【0004】
J. Med. Chem. 33, 1380, (1990)は、チオエーテル脂質とシチジン二リン酸とのヌクレオシド複合体を記載しており、これらは抗腫瘍活性を有し、腫瘍学において使用されるかもしれない。
【0005】
Chem. Pharm. Bull. 36, 209(1988)は、抗白血病性活性を有する5’−(3−sn−ホスファチジル)ヌクレオシド、並びに、トランスフェラーゼ活性を有するホスホリパーゼDの存在下における対応するヌクレオシド及びホスホコリンからのそれらの酵素的合成を記載する。
【0006】
PCT国際特許出願公開第WO92/03462号は、抗ウイルス活性を有する、特にHIV感染の治療のためのチオエーテル脂質複合体を記載する。
【0007】
2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニンの合成は、J. Org. Chem. 34、2632-2636(1969)、PCT国際特許出願公開第WO01/60383号及び米国特許第6,680,382号中に記載されている。
【0008】
DNA複製阻害剤としての2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−アデニンの他のヌクレオシドに比べた薬理学的活性もHematology 463(1999)に記載されている。
【0009】
抗癌活性を有する他のハロアラビノアデノシンは、米国特許出願第5,384,310号及びPCT国際特許出願公開第WO92/20347号に記載されている。
【0010】
そのようなプリン誘導体の抗ウイルス活性は、ヨーロッパ特許第0314011号中にしめされている。
【0011】
2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−アデニン(クロファラビン)は、臨床試験中の周知の開発製品である。
【発明の開示】
【0012】
2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−アデニンの化学構造を取り込んだ本発明の式Iの化合物は、それらの親ヌクレオシドとは異なる生理活性を有する。特に、本発明の化合物は、抗腫瘍活性を示し、薬理学的関連用量において、親化合物の1つ以上の毒性の副作用を改善し、及び/又は共有結合で結合した脂質部分が結合した薬物物質のバイオアベイラビリティーを改善し、そしてしたがって、化合物の亢進された選択性及び有効性に寄与するらしい。
【0013】
本発明の化合物は、貴重な薬理学的性質を有する。特に、それらは、癌腫、肉腫、又は白血病を含む悪性腫瘍の治療及び予防に適している。
【0014】
これまで悪性腫瘍の治療に使用されてきた未複合化ヌクレオシド誘導体に比べて、本発明の化合物は、特別な効能のための亢進された力価/有効性又は低い毒性を有し、その結果、より広い治療の窓を有する。本発明のいくつかの実施態様においては、これらの化合物を含む医薬組成物の投与は、長期間にわたって持続的に実施されることができる。それらの望ましくない副作用によって、化学療法剤についてはしばしば日常的である、休薬又は間歇的な投与の出来事は、本発明の化合物では親化合物に比べて少なくなることができる。さらに、腫瘍細胞毒性に関する亢進された選択性によって毒性副作用を改善することにより、より高い用量レベルが採用されることができる。
【0015】
本発明の脂質エステル化合物は、多発性硬化症、リューマチ関節炎、ループス、全身性血管炎、炎症性腸疾患、強皮症、及びシェーグレン症候群を含む、自己免疫疾患の治療にも好適である。
【0016】
脂質部分のレシチン様構造は、権利請求された式Iの化合物の改善に関して望ましい。膜及び再吸収障壁の透過は、容易化され、そして式Iの複合体はいろいろな組織において堆積効果を示す。
【0017】
脂質複合体の形成は、より良い拡散又は能動輸送プロセスにより、血液脳関門を横切ることを容易化することもできる。
【0018】
同様に、本発明の化合物及びそれらの医薬製剤は、上記の疾患の治療及び予防のための他の薬物との自由な組み合わせ又は固定した組み合わせで使用されることができる。
【0019】
これらのさらなる薬物の例は、コルヒチン、ビンブラスチンなどの有糸分裂阻害剤、シクロホスファミド、メルファラン、ミレラン又はシスプラチンなどのアルキル化細胞分裂抑制剤、葉酸アンタゴニスト(メトトレキセート)並びにプリン及びピリミジン塩基のアンタゴニスト(メルカプトプリン、5−フルオロウリジン、シタラビン)のような抗代謝剤、(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンである)アンスラサイクリンのような細胞分裂抑制活性を有する抗生物質、フォスフェストロール、タモキシフェン、タキサン、例えば、タキソールのようなホルモン、及び他の細胞分裂抑制/細胞毒性活性を有する化学療法剤及び生物学的物質などの作用物質を含む。
【0020】
本発明の実施態様は、リン酸基のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウム塩を含む、式Iの化合物の塩も含む。アルカリ金属塩の例は、リチウム、ナトリウム及びカリウム塩を含む。アルカリ土類金属塩は、マグネシウム及びカルシウムを含み、そしてアンモニウム塩は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル残基及び/又はベンジル残基のようなアリール残基で4回以下置換されることができるアンモニウムイオンを含むものとして理解される。そのような場合、置換基は同じか又は異なることができる。
【0021】
式Iの化合物は、塩基性基、特別にはアミノ基を含むことができ、これは好適な無機又は有機酸によって酸付加塩に変換されることができる。この目的のための酸として可能なのは、特に以下の:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、又はメタンスルホン酸である。
【0022】
式I中、R1は好ましくは、C1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルメルカプト基によってさらに置換されることができる、直鎖C8〜C16アルキル残基である。より具体的には、R1 は、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル又はペンタデシル残基を表す。好ましくは、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、及びヘキシロキシ基がR1残基の置換基として可能である。R1がC1〜C6アルキルメルカプト残基で置換された場合、これは、特別には、メチルメルカプト、エチルメルカプト、プロピルメルカプト、ブチルメルカプト、及びヘキシルメルカプト残基である、と理解される。
【0023】
好ましくは、R2は、C1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルメルカプト基によってさらに置換されることができる、直鎖C8〜C15アルキル基である。より具体的には、R2 は、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、又はテトラデシル基を表す。好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びヘキシロキシ基が、R2のC1〜C6アルコキシ置換基として好ましい。R2がC1〜C6アルキルメルカプト残基で置換された場合、これは、特別には、メチルメルカプト、エチルメルカプト、プロピルメルカプト、ブチルメルカプト、ペンチルメルカプト及びヘキシルメルカプト残基である、と理解される。
【0024】
好ましい脂質部分は、以下の式:
【化2】

{式中、
R1は、C12H25であり;
R2は、C10H21であり;
Xは、S、SO又はSO2であり;そして、
Yは、Oである。}
により表される基である。
【0025】
最も好ましい化合物は、以下の:[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル、[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルフィニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル、[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルホニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル、並びに[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル、[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルフィニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル、及び[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルホニル−2−デシルオキシ)プロピルエステルである。
【0026】
式Iの化合物は、以下のステップにより調製されることができる:
1.以下の式II:
【化3】

{式中、
R1、R2、X及びYは、示された意味を有する。}
により表される化合物又はその塩形態を、以下の式III
【化4】

{式中、
R3はアミノ又はOR4であり、ここで、R4は、C1〜C8アルキルであり、3’−ヒドロキシ基は、場合により当業者によく知られた酸素保護基によって保護されることができる。}
により表される化合物と反応させ、そして式IIの化合物は、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニッククロライドなどの適切な酸塩化物及びピリジン又はルチジンなどの3級窒素塩基の存在下、トルエンのような不活性溶媒中で、或いは直接に無水ピリジン中で、活性化されることができ、そして場合により、加水分解に続いて酸素保護基をヌクレオシド化学における慣用方法によって除去し、そして、R3 が式Iの化合物中のアミノである場合、場合によりプリンの6位にあるOR4基をアミノ基に変換するか、又は
上記と同じ方法によって、(式IIに対応する)脂質アルコールを(式IIIに対応する)ヌクレオシド−5’−一リン酸と反応させるか或いは、
2.以下の式IV:
【化5】

{式中、
R1、R2、X及びYは、式IIIの化合物についての上記の意味を有する。}
により表される化合物を、式III(ここで、R3は、アミノ又はOR4であり、ここで、R4は、C1〜C8アルキルであり、3'−ヒドロキシ基は場合により、当業者によく知られた酸素保護基によって保護されることができる。)により表される化合物と、クロロホルムのような不活性溶媒中でストレプトミセス(Streptomyces)由来のホスホリパーゼDの存在下、好適な緩衝液の存在下、反応させ、そして、場合により、反応に続いて、ヌクレオシド化学における慣用方法によって酸素保護基を除去し、そして、R3が式I中のアミノである場合、場合により、プリンの6位のOR4基をアミノ基に変換する。
【0027】
式II及びIVの化合物の調製は、Lipids 22, 947 (1987)及びJ. Med. Chem. 34, 1377 (1991)と類似した方法で実施される。式IIIの化合物は、2つのステップにおいてR3がアミノ基であるか又はR3=OR4である場合、J. Org. Chem. 34, 2632-2636 (1969)、J. Med. Chem. 35, 397-401(1992)又はPCT国際特許出願公開第WO01/60383号と類似した方法により調製される。最初のステップは、好適な溶媒中、立体障害されたカリウム塩基、好ましくはカリウムt−ブトキシド又はカリウムt−アミラートの存在下、2,6−ジクロロプリンをブロックされた2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−アラビノフラノシルハライドと反応させて、2,6−ジクロロ−9−(3’,5’−O−ジベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリンを調製することを含む。好適なブロッキング基は、ベンゾイル及びアセチルを含む。好適なハライドは、ブロモ及びクロロを含む。好適な不活性溶媒は、t−ブチルアルコール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、t−アミルアルコール、テトラヒドロフラン又はこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、アセトニトリル、t−ブタノール及び1,2−ジクロロエタンの混合物を含む。場合により、カルシウムハライドが反応混合物に添加される。第2のステップは、2,6−ジクロロプリンヌクレオシド誘導体を、脱保護及び芳香族求核置換反応のための条件において、所望の式IIIのC1〜C8 6−アルコキシプリンヌクレオシド化合物を提供することを含む。該条件は、水酸化ナトリウム及びC1〜C8アルコール又は、対応するC1〜C8アルコール中のナトリウムC1〜C8アルコキシド(例えば、メタノールとナトリウムメトキシド、エタノールとナトリウムエトキシド)又は他の好適な非アルコール溶媒などである。
【0028】
式中、X=スルフィニル又はスルホニルである式Iの化合物は、式中、X=イオウである式Iの対応する化合物を例えばH2O2/酢酸で酸化すること、又は好適な出発物質である式II又はIVの化合物を使用することによって調製されることができる。
【0029】
本発明の他の化合物は、以下の式V:
【化6】

{式中、
n=2そしてR1、R2、R3、X及びYが式Iと同じ意味を有する。}
により表される、二リン酸塩である。
【0030】
これらは、(式IIに対応する)リン脂質を、(式IIIに対応するヌクレオシドから調製された)ヌクレオシド−5’−一リン酸と反応させることによって調製されることができる。該リン脂質は、当業者に知られた方法によってあらかじめ活性化されることができる。
【0031】
式Iの化合物の塩は、遊離酸とアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコラート或いは酢酸塩を反応させることによって調製される。
【0032】
式Iの化合物の脂質部分中の「エナンチオマー」は、式IIの化合物の光学活性を有するC3−前駆体から出発して、脂質残基のジアステレオマー塩を介する分離又はエナンチオ選択的な合成によって調製されることができる。
【0033】
癌の治療のための、式Iの化合物を含む薬物は、液体又は固体形態で経口又は腸管外経路で投与されることができる。錠剤、カプセル、被覆錠剤、シロップ、溶液又は懸濁液のような一般的な投与形態も可能である。
【0034】
好ましくは、注射溶液にとって一般的な安定化剤、溶解剤及び緩衝剤などの付加剤を含む注射媒体として、水が使用される。そのような付加剤は、例えば、酒石酸及びクエン酸緩衝液、エタノール、エチレンジアミン四酢酸及びその無毒性の塩のような錯化剤、液体ポリエチレンオキサイドのような粘度制御のための高分子量ポリマーなどである。注射溶液のための液体ビヒクルは、滅菌される必要があり、そして好ましくはアンプルに充填される。
【0035】
固体担体は、例えば、でんぷん、ラクトース、マンニトール、メチルセルロース、タルク、高分散性ケイ酸、ステアリン酸のような高分子量脂肪酸、ゼラチン、寒天、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、動物性及び植物性脂肪、ポリエチレングリコールのような固体高分子量ポリマーなどである。所望により、経口投与に適した製剤は、フレーバー剤又は甘味料を含むことができる。用量は、投与様式、種、年齢、又は個々の状態などのような多様な因子に依存することができる。
【0036】
本発明の化合物は、経口又は静脈内(i.v.)に、体重1kg及び1日あたり0.1〜100mgの範囲、好ましくは0.2〜80mgの範囲の量で投与されることが好適である。いくつかの投与計画においては、日用量は、2〜5回分に分けられ、0.5〜500mgの範囲の活性成分含量を有する錠剤として各投与において投与される。
【0037】
同様に、錠剤は、徐放性を有し、投与回数を例えば、1〜3回/日に減らすことができる。徐放性の錠剤の活性成分含量は、2〜1000mgの範囲であることができる。活性成分はまた、i.v.ボーラス注射又は持続的輸注、によっても投与されることができ、ここで、5〜1000mg/日の量で通常は十分である。
【0038】
実施例中に示された化合物に加えて、式Iの以下の化合物及びそれらの薬理学的に許容可能な塩がさらに本発明の化合物を例示する。
【0039】
1.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル
2.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルフィニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル
3.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルスルホニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル
4.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル
5.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルメルカプト−2−ウンデシルオキシ)プロピルエステル
【0040】
6.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−デシルメルカプト−2−ドデシルオキシ)プロピルエステル
7.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−ドデシルオキシ)プロピルエステル
8.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−デシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル
9.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルスルフィニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル
10.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルスルホニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル
【0041】
11.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルスルフィニル−2−ウンデシルオキシ)プロピルエステル
12.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ウンデシルスルホニル−2−ウンデシルオキシ)プロピルエステル
13.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−トリデシルメルカプト−2−ウンデシルオキシ)プロピルエステル
14.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−トリデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル
15.[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−トリデシルスルフィニル−2−デシルオキシ)プロピルエステル
【0042】
さらに、本発明は、上記の例示された化合物のアナログを包含する。ここで、プリンの6位における置換基は、C1〜C8アルコキシ、好ましくはメトキシである。そのような化合物は、優れた医薬の性質を有し、そしてさらに上記の例示された化合物の製造における中間体として有用でもある。
【実施例】
【0043】
実施例1
2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリンの調製
最初のステップは、以下のスキームにしたがって、2,6−ジクロロ−9−α−D−(3’,5’−O−ジベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−Dアラビノフラノシル)−9H−プリンを調製することである。
【化7】

【0044】
1000mLフラスコに、2,6−ジクロロプリン(12.65g、66.9ミリモル)、カルシウムハイドライド(2.43g、57.7ミリモル)及びアセトニトリル(150mL)をいれ、そして攪拌を開始した。カリウムtert-ブトキシド(60.6mL、60.6ミリモル、tert-ブタノール中1.0M)の溶液を5分間にわたって添加し、粘ちょうであるが攪拌可能な懸濁液を得た。1,2−ジクロロエタン(200mL)中の3,5−O−ジベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−アラビノフラノシルブロミド(26.88g、63.5ミリモル)を外界温度で45分間にわたって添加した。添加が完了したら、混合物を外界温度で16時間攪拌した。混合物をCeliteを通してろ過し、そしてフラスコと固体をアセトニトリル(100mL)で洗浄した。揮発性物質をロータリーエバポレーションで除去し、黄色のゴム状物質を得た(38.1g)。酢酸エチル(100mL)を添加し、pHをチェックし、8であることがわかった。酢酸(0.5mL)を添加し、pHを再チェックし、4であることがわかった。濁った溶液をWhatman 541ろ紙を通してろ過した。フラスコ及びろ紙を酢酸エチル(100mL)で洗浄した。溶液の清澄化は観察されなかった。有機層を水(100mL)及び塩水(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、そしてロータリーエバポレーションによって濃縮し、そして高度真空ポンプによって白色の泡状物質を得た(34.0g)。粗製物質をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、230〜400メッシュ、直径14cm、高さ14.5cm、2232mL)によって精製した。ヘキサン/酢酸エチルの勾配による溶出を使用し、そして最も純粋な生成物を含む画分をロータリーエバポレーションによって濃縮し、メタノールに2回懸濁し、ろ過し、メタノールで洗浄して白色固体を得た(13.4g、92.6%AUC)。より純度の低い画分を併合し、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって再精製して、白色固体(3.85g、94.7%AUC)を得た。総回収量は、17.3g(56%)であった。特徴付けのために、一部をメタノールに再懸濁した(97.9%AUC)。
【0045】
【化8】

マススペクトロメトリー(エレクトロスプレー、陽性)m/e[M+H]+=531。C24H17Cl2FN4O5についての元素分析の計算値:C、54.25;H、3.22;Cl、13.35;F、3.58;N、10.54。実測値:C、54.19;H、3.11;Cl、13.20;F、3.49;N、10.52。
【0046】
第二のステップは、以下のスキームにしたがって、2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリンを調製することである。
【化9】

【0047】
500mLフラスコに、保護された2,6−ジクロロ−9−α−D−(3’,5’−O−ジベンゾイル−2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリン(13.33g、25.1ミリモル)及びメタノール(300mL)を入れた。NaOH溶液(2mL、H2O中1.0N)でpHを9.5に調整した。懸濁液を外界温度で16.5時間攪拌した。pHをチェックし、そして5.5であることがわかった。さらなるNaOH溶液(11.3mL)を添加し(pH=11)、そして混合物を外界温度で1.5時間攪拌した。pHをチェックし、そして6であることがわかった。TLC(10%EtOH/90%CH2Cl2、UV254)では、Rf0.28、0.72及び0.88に3つのスポットを示した。さらなるNaOH溶液(13.3mL)を添加した(pH=11)。外界温度で5分間攪拌後、反応混合物は清澄な無色溶液となり、そしてさらに2.5時間攪拌後、反応が完了したかどうかをTLCによって判定した。酢酸(0.8mL)を添加して塩基(pH=5)を中和した。ロータリーエバポレーションにより、二相性の残渣を得た。イロプロピルアルコール(100mL)を添加して、白色の懸濁液を得た。共沸ロータリーエバポレーションによって水を除去した。このプロセスをイソプロピルアルコール(100mL)でさらに2回繰り返した。約50mLがフラスコに残っているところでロータリーエバポレーションを停止し、懸濁液をろ過し、フラスコとろ過ケーキを、ろ液、そしてイソプロピルアルコール(10mL)で洗浄した。固体を乾燥した(50℃、27トル、16.5時間)。固体の重量は5.58gであった(92.4%AUC)。ろ液をロータリーエバポレーション及び高度真空ポンプで濃縮した。残渣の重量は6.79g(70.9%AUC)であった。固体及び残渣の両方を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、230−400メッシュ、10%エタノール、90%ジクロロメタン)により分離精製した。粗製固体からの精製物質の重量は、4.62g(95.5%AUC)であった。残渣からの精製物質の重量は、1.69g(98.1%AUC)。総回収量は、6.31g(79%)であった。
【0048】
【化10】

マススペクトロメトリー(エレクトロスプレー、陽性)m/e[M+H]+=319。C11H12ClFN4O4についての分析の計算値:C、41.46;H、3.80;Cl、11.12;F、5.96;N、17.58。実測値:C、41.70;H、3.36;Cl、11.12;F、5.75;N、17.54。
【0049】
実施例2
[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルの調製
最初のステップは、以下のような、[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルの調製である。
【化11】

【0050】
3.12gのリン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルを、60mlの無水ピリジンで2回処理し、蒸発によって濃縮した。残渣を60mlの無水ピリジンに室温で溶解し、窒素下、3.80gの2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロライド(トリシルクロライド)で処理し、20℃で2時間攪拌した。その後、2.00gの2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリンを一度に加え、そして窒素下で16時間攪拌した。10mlの水を加えることによって加水分解を行い、混合物を室温でさらに0.5時間攪拌し、真空下、溶媒から取り除き、20mlのトルエンを用いて2回除去した。残渣をt−ブチルメチルエーテル(160ml)中、40℃で0.5時間攪拌した。室温に冷却後、スルホン酸ピリジニウム塩をろ過して除いた。ろ液を40mlの2N塩酸で2回洗浄し、乾燥するまで蒸発させた。残ったシロップ状物質7.38gを、さらに精製することなく、次のステップに用いた。
【0051】
上記の原料物質のサンプルを、90:10のメタノール/40mM酢酸ナトリウム水溶液を溶出液とするLichrospher60RPSelectB上のカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含む画分を蒸発させ、残渣を50mlのtert−ブチルメチルエーテル及び10mlの2N塩酸の間で分配した。有機層を蒸発させ、そして残渣を、5mlのトルエンと5mlのメタノールの混合物に溶解した。ソディウムメタノラートを加えて、pHをpH7に調節した。溶媒を除去し、残渣を真空中で乾燥させた。[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルのナトリウム塩を、65〜75℃で融解する非結晶性の固体として得て、その比旋光度は、
【化12】

であった。
【0052】
【化13】

マススペクトロメトリー(FAB-):m/z=795[M‐Na+
【0053】
第二のステップは、粗製[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルをアミノ分解して、[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルを提供することである。
【化14】

【0054】
アミノ分解ステップは、80℃のステンレススチール反応器中で実施した。上記の粗製物質(7.38g)を30mlのエタノール中7M NH3(-5℃で飽和)に溶解した。20時間の加熱後、[2−クロロ−9−(2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルメトキシ誘導体反応物は検出されなかった。85:15のメタノール/40mM酢酸ナトリウム水溶液を溶出液として使用するLichrospher 60 RPSelect B上のカラムクロマトグラフィーによって、生成物を精製した。生成物を含む画分を蒸発させた。残渣を100mlのtert-ブチルメチルエーテル及び50mlの2N塩酸の間で分配した。有機層を蒸発させ、残渣を30mlのメタノールに溶解し、ソディウムメタノラート(メタノール中、30%)を加えてpHをpH7に調節する。溶媒を除去し、残ったナトリウム塩を真空中で乾燥させた。生成物(2.90g)は、2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−6−メトキシ−9H−プリンからの変換に基づいて全体で57%の回収率を達成した。HPLCによって測定した純度は、93.6面積%であった。
【化15】

【0055】
実施例3
2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロアラビノフラノシル)アデニンからの[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルの調製
0.91gのリン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルを20mlの無水ピリジンで2回処理し、蒸発によって濃縮する。残渣を20mlの無水ピリジンに室温で溶解し、窒素下、1.07gの2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニッククロライドで処理し、25℃で0.5時間攪拌する。その後、0.5gの2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロアラビノフラノシル)アデニンを一度に添加し、窒素下で20時間置く。5mlの水を添加することによって加水分解を行い、混合物を室温でさらに0.5時間攪拌し、真空下で溶媒から除き、50mlのトルエンを用いて2回除去する。Lichrospher 60 RPSelect B上のカラムクロマトグラフィーによって88:12のメタノール/40mM酢酸ナトリウム水溶液を溶出液として使用して残渣を精製する。生成物を含む画分を蒸発させる。残渣を50mlのtert-ブチルメチルエーテル及び10mlの2N塩酸の間で分配する。有機層を蒸発させる。残渣を5mlのトルエンと5mlのメタノールの混合物に溶解する。ソディウムメタノラートを加えてpHをpH7に調節する。溶媒を除去し、残渣を真空中で乾燥させる。0.82g(62%)の白色粉末が得られる。リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルをPCT国際特許出願公開第WO92/03462号中に記載されたように調製する。
【0056】
実施例4
[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−二リン酸、(3−ドデシルメルカプト−2−ドデシルオキシ)プロピルエステルの調製
最初のステップは、2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリンからの2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D−アラビノフラノシル)−9H−プリンの調製である。
【化16】

【0057】
フラスコに、窒素下で、2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)プリン及びトリエチルホスフェート(例えば、2.3mL/ ミリモルヌクレオシド))をいれる。そして、得られた混合物を冷却し(例えば、−25℃)、そしてPOCl3(例えば、3当量)を入れる。外界温度まで温めた後、混合物を攪拌した(例えば3時間)。氷(例えば、1.4g/ミリモルヌクレオシド)及び水(例えば、8.7mL/モルヌクレオシド)を攪拌しながら加え、混合物を分離用漏斗に移す。MTBE(例えば、4.4mL/モルヌクレオシド)を添加し、攪拌した後、相分離する。有機相を水で二回洗浄する(例えば、8.7mL/ミリモルヌクレオシド)。併合した水性抽出物をNaOH(約50%水溶液)で約pH2となるように酸性化し、そして活性炭(例えば、5.7g/ミリモルヌクレオシド)とともに適当な時間(例えば、2時間)攪拌する。混合物をろ過し、ろ液を捨てる。炭をMeOH(例えば、4.4mL/ミリモルヌクレオシド)、(濃)水酸化アンモニウム(例えば、0.44mL/ミリモルヌクレオシド)及び水(例えば、3.9mL/ミリモルヌクレオシド)の混合物とともに適当な時間(例えば、30分)攪拌し、ろ過する。この手順を繰り返し(例えば、5回)、ろ液を併合する。併合されたろ液の蒸発により、粗製2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D−アラビノフラノシル)−9−プリンを得る。これを水(例えば、8.7mL/ミリモルヌクレオシド)に溶解し、そして適当な時間(例えば、30分)攪拌しながら、Dowex 50WX8-100(例えば、4g/ミリモルヌクレオシド)陽イオン樹脂で処理する。混合物をろ過し、そして樹脂を水(例えば、9mL/ミリモルヌクレオシド)とともに攪拌してろ過する。水(例えば、4回)で樹脂を抽出し、併合した水ろ液を蒸発させて、2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D-アラビノフラノシル)−9H−プリンを得る(例えば、30〜100%回収率)。
【0058】
第二のステップは、以下のように、2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D-アラビノフラノシル)−9H−プリンをアミノ分解して、2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D-アラビノフラノシル)アデニンを得ることである。
【化17】

【0059】
2−クロロ−6−メトキシ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D-アラビノフラノシル)プリンを圧力容器中で無水エタノールに溶解し、窒素下で冷却する(例えば、−5℃)。飽和溶液が達成されるまで、アンモニアを溶液中に導入する。この系を適当な時間(例えば、20時間超)加熱(例えば、80℃まで)する。反応の進行をサンプリング及びHPLC分析によってモニターする。完了後、溶媒を蒸発させて粗製2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D-アラビノフラノシル)アデニンを得る。
【0060】
第三のステップは、リン酸モノ−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)−1−プロピルエステルのモルホリデートと2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D−アラビノフラノシル)アデニンを反応させることによって、(2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン−5’−二リン酸(3−ドデシルメルカプト−2−ドデシルオキシ)プロピルエステルを生成することである。
【化18】

【0061】
リン酸モノ−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)−1−プロピルエステルのモルホリデートは、Bioorg. Med. Chem., 7, 1195-1200, (1999)に類似の方法で調製され、ここで、リン酸モノ−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)−1−プロピルエステルとモルフィリンを、水とtert-ブタノールの混合物(例えば、体積比1:1)に溶解する。tert-ブタノール中のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をこの溶液に(例えば、リン酸モノ−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)−1−プロピルエステルに対してDCCが約4モル過剰)で添加し、反応液を還流(例えば、3.5時間)する。蒸発によって体積を減少させ、混合物を冷却してホスホモルホリデートの沈殿を起こさせる。
【0062】
(アデノシン誘導体1モルあたり、例えば、1.13モルの)ホスホモルホリデートを(例えば、23mL/ミリモルアデノシン誘導体の)無水ピリジンとして調製し、そして2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−5’−O−リン酸−β−D−アラビノフラノシル)アデニンをすべて窒素下で攪拌しながら添加する。この混合物を(例えば、40℃で少なくとも16時間)攪拌し、そして(例えば、4.5mL/ミリモルアデノシン誘導体で)水を加え、攪拌を続ける(例えば、1時間)。溶媒を蒸発させ、生成物を(シリカゲル、CHCl3、MeOH及びNH4OH(水溶液)の混合物で溶出する)クロマトグラフィーにかけて、[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−二リン酸,(3−ドデシルメルカプト−2−ドデシルオキシ)プロピルエステルを白色固体として(例えば、20〜100%の収率で)得る。
【0063】
実施例5
錠剤
1.50kgの[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルナトリウム塩、
1.42kgの微晶質セルロース、
1.84kgのラクトース、
0.04kgのポリビニルピロリドン、及び
0.20kgのステアリン酸マグネシウム
を乾燥形態で混合し、水で湿らせ、そして造粒した。乾燥後、上記物質を500mgの重さの錠剤に圧縮した。
【0064】
実施例6
注射用製剤
10.0gの[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸,(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステルナトリウム塩を500mlの生理食塩水に溶解し、5mlでアンプルに充填し、滅菌した。溶液は静脈内注射によって投与されることができる。
【0065】
実施例7
[2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン]−5’−リン酸−(3−ドデシルメルカプト−2−デシルオキシ)プロピルエステル(「ヌクレオチド複合体」)及び2−クロロ−9−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)アデニン(「ヌクレオシド」)のインビボでのヒト大腸癌異種移植モデル(HCT-15)における抗腫瘍活性
ヌクレオチド複合体及びその対応するヌクレオシドを、ヌードマウスにおけるヒト大腸癌異種移植HCT-15モデルにおいて比較した。
【0066】
腫瘍を有するマウスをHCT-15腫瘍細胞接種後の第7日に無作為化し、1群9匹の処置群に割り当てた。処置を第8日に開始した。動物を1日1回、5日間連続して腹腔内(ip)でヌクレオチド複合体又はヌクレオシドで処置した。用量は、50及び25%の最大耐用量(Maximum Tolerable Doses(MTD))を含んだ。対照の動物には、対応する溶媒(ビヒクル1又は2)を注射した。第28日に、原発腫瘍を外植し、腫瘍重量を測定した。腫瘍重量の中央値を表1に示す。
【0067】
【表1】

ヌクレオチド複合体の抗腫瘍有効性は、どちらの用量においても、有意に(p<0.01)対応するヌクレオシドよりも高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I:
【化1】

{式中、
R1は、置換されない、或いはハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルスルフィニル又はC1〜C6アルキルスルホニル基で少なくとも1回置換されている、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル鎖から成る群から選ばれ;
2は、水素、或いは置換されない、又はハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、若しくはC1〜C6アルキルスルホニル基で少なくとも1回置換されている、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル鎖から成る群から選ばれ;
3は、アミノ又はOR4であり、ここで、R4はC1〜C8アルキルであり;
Xは、イオウ原子、スルフィニル及びスルホニル基から成る群から選ばれ;そして
Yは、酸素であり、ここで、R3がアミノである場合には、該アミノ基は置換されない、又は知られたアミノ保護基で置換されていることができる。}
により表されるヌクレオチド誘導体、その互変異性体、その光学活性形態又はラセミ混合物、或いは生理学的に許容可能なその有機又は無機の酸又は塩基の塩。
【請求項2】
R1が、置換されない、或いはC1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルメルカプト基で置換されている直鎖C8〜C15アルキル基である、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
【請求項3】
R2が、置換されない、或いはC1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルメルカプト基で置換されている直鎖C8〜C15アルキル基を表す、請求項1に記載のヌクレオチド誘導体。
【請求項4】
R3がOCH3 である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヌクレオチド誘導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヌクレオチド誘導体であって、該化合物が、以下の式:
【化2】

{式中、
Xがイオウ、スルフィニル又はスルホニルである。}
により表される、前記ヌクレオチド誘導体。
【請求項6】
R3 がNH2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヌクレオチド誘導体。
【請求項7】
請求項1〜3及び6のいずれか1項に記載のヌクレオチド誘導体であって、該化合物が、以下の式:
【化3】

{式中、
Xがイオウ、スルフィニル又はスルホニルである。}
により表される、前記ヌクレオチド誘導体。
【請求項8】
少なくとも1つの請求項1〜7に記載の化合物を薬剤として許容可能なアジュバント又はビヒクルとともに含む、医薬組成物。
【請求項9】
悪性腫瘍の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に上記腫瘍の治療に有効な量の請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、癌腫、肉腫、及び白血病から成る群から選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
悪性腫瘍の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に、他の抗癌剤との固定した組み合わせ又は自由な組み合わせにおいて上記腫瘍の治療に有効な量の請求項8に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
以下の式Ia:
【化4】

{式中、
1は、場合により、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルスルフィニル又はC1〜C6アルキルスルホニル基で一置換又は多置換された、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル残基であり;
2は、水素、或いは場合により、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルメルカプト、C1〜C6アルコキシカルボニル、又はC1〜C6アルキルスルホニル基で一置換又は多置換された、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル鎖であり;
Xは、イオウ原子、スルフィニル基及びスルホニル基から成る群から選ばれ;そして
Yは、酸素である。}
により表される化合物の合成方法であって、以下のステップ:
(a)2,6−ジクロロアデニンを、以下の式:
【化5】

{式中、
5はブロモ又はクロロであり、そしてR6及びR7は保護基である。}
により表されるアラビノフラノシル誘導体と、立体障害されたカリウム塩基及び溶媒の存在下で反応させて、以下の式:
【化6】

により表されるジクロロプリンヌクレオシド誘導体を形成し;
(b)前記ジクロロプリンヌクレオシド誘導体を、脱保護及び芳香族求核置換反応のための条件に置き、以下の式IIIb:
【化7】

{式中、
R4はC1〜C8アルキルである。}
により表される、6−アルコキシ−2−クロロ−プリンヌクレオシド誘導体を提供し;
(c)前記6−アルコキシ−2−クロロ−プリンヌクレオシド誘導体を、以下の式:
【化8】

により表される化合物の活性化形態と、不活性溶媒中で反応させて、以下の式Ib:
【化9】

により表される、複合化された6−アルコキシ−2−クロロプリンヌクレオチド誘導体を提供し;そして、
(d)前記複合化された6−アルコキシ−2−クロロプリンヌクレオチド誘導体を、アミノ分解のための条件に置き、以下の式:
【化10】

により表される複合化された2−クロロアデニン誘導体を調製すること;
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記立体障害されたカリウム塩基が、カリウムt−ブトキシド又はカリウムt−アミラートである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2,6−ジクロロアデニンと前記アラビノフラノシル誘導体を反応させるための前記溶媒が、アセトニトリル、t−ブタノール及び1,2−ジクロロエタンの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
R4がメチルである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
R5がブロモである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
R6及びR7が独立してアセチル又はベンゾイルである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
R1及びR2が独立して、置換されない、或いはC1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルメルカプト基によって置換されている、直鎖C8〜C15アルキル基である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
R1がC12H25であり、R2がC10H21である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2006−520359(P2006−520359A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504723(P2006−504723)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002810
【国際公開番号】WO2004/083155
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505348522)ハイデルベルク ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】