説明

ヌクレオチド除去修復調節因子のスクリーニング方法

【課題】 ヌクレオチド除去修復、特に紫外線損傷DNAの修復において、DNA上の損傷部位を認識する機構を解明し、これを調節する因子をスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】 哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、(a)候補化合物の存在下でXPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる工程、及び(b)前記XPCタンパク質がDDB2タンパク質と結合するか否かを検出する工程を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を阻害するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復阻害剤と推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオチド除去修復能を調節する因子のスクリーニング方法に関し、さらに詳細には、紫外線によるDNA損傷を修復する哺乳動物細胞内の機構を抑制又は促進する因子のスクリーニング方法及びその調節因子の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含めたすべての生物は、外的又は内的要因により生じたゲノムDNA上の構造的異常を見つけて修復する多様な機構を進化の過程で獲得してきた。これらの機構がゲノムに関わる広範な病気の発生を防御している。なかでもヌクレオチド除去修復(Nucleotide excision repair:NER)の機構は、極めて広範なゲノム損傷に対応する重要な経路であり、DNAの二重らせん構造にひずみを生じる種々の塩基障害、例えば、紫外線誘導シクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)、(6−4)光産物、及び多くの化学物質によって誘導されるかさ高い付加物などを除去する。このヌクレオチド除去修復能の欠損は、色素性乾皮症(XP)やコケイン症候群(CS)等のいくつかのヒト常染色体劣性遺伝疾患と関連している(例えば、非特許文献1及び2参照)。色素性乾皮症の患者は、臨床的に紫外線に対する皮膚の過敏症と、皮膚がんにかかりやすい特徴を有する。ヌクレオチド除去修復に欠損を示す色素性乾皮症の7つの遺伝的相補性群(XP−A〜G群)及びコケイン症候群の2つの遺伝的相補性群(CS−A及びCS−B群)が同定され、これらに対するすべての責任遺伝子(XPA〜XPG、CSA及びCSB)はクローン化されている(例えば、総説として非特許文献3参照)。
【0003】
哺乳動物のヌクレオチド除去修復は、2つの異なる副経路からなる。1つは「ゲノム全体の修復」(global genome NER:GG−NER)であり、他の1つは「転写と共役したDNA修復」(transcription-coupled NER:TC−NER)である。これら2つの副経路の主な違いは、損傷を受けた塩基を検出する機構にあると考えられる。TC−NERにおいては、RNAポリメラーゼIIが損傷部位で立ち止まり、修復反応の引き金を引く(例えば、非特許文献4参照)。一方、GG−NERにおいては、タンパク質因子が特異的に損傷部位に結合する。XP−C群の責任遺伝子産物であるXPCタンパク質は、GG−NER特異的な損傷認識において不可欠な役割を果たしている(例えば、非特許文献5〜7参照)。
【0004】
このXPCタンパク質は、細胞内においてセントリン2、及び酵母Rad23pに相同な2種類の哺乳類ホモローグのいずれか(HR23A,又はHR23B)と結合し、ヘテロ3量体複合体として存在している(例えば、非特許文献8〜10参照)。この複合体は、インビトロにおいて、紫外線誘起(6−4)光産物をはじめ、ヌクレオチド除去修復の対象となる種々の損傷部位に結合する(例えば、非特許文献11及び12参照)。しかしながら、生化学的な研究によれば、XPC複合体は、損傷そのものよりも、むしろ損傷によりDNAに誘起されたある種の二次的な構造を認識する構造特異的なDNA結合因子であることが明らかになっている(例えば、非特許文献13参照)。XPC複合体のこれらの生化学的特徴は、GG−NERが構造的に共通性を持たない様々な損傷を検出できることの説明にもなる。また、細胞に紫外線照射するとXPCの一部が損傷特異的な翻訳後修飾を受け、高分子量領域でラダー状のバンドとして検出されることが見出され、その分子量からマルチユビキチン化と考えられている。しかしながら、このXPCタンパク質のユビキチン化がどのような働きをしているかについては未だ明らかではない。
【0005】
紫外線損傷DNA結合タンパク質(UV−DDB)もまたGG−NERによる損傷認識と関係すると思われる。UV−DDBは、DDB1(p127)とDDB2(p48)とからなるヘテロ2量体複合体であり、損傷DNA、特に紫外線誘発(6−4)光産物に対してXPCよりもはるかに高い結合力を有することが知られている(例えば、非特許文献11、14〜16参照)。正常なDDB2遺伝子は、色素性乾皮症(XP)E群の遺伝的相補性を有し、この群に属する患者は、UV−DDBの損傷結合能力を失っている(例えば、非特許文献17参照)。
【0006】
DNA損傷を検出できる極めて高い感受性にもかかわらず、UV−DDBは必ずしも全てのタイプのGG−NERにとって必要ではない。例えば、無細胞NER反応は、UV−DDBなしでもうまく再構成されるが(例えば、非特許文献18及び19参照)、ある条件下では促進効果を有する(例えば、非特許文献20及び21参照)。しかしながら、UV−DDB活性を欠失するXP−E群細胞では、(6−4)光産物のGG−NERは中程度に害されるだけであるが、ゲノム全体からのCPDの除去は著しく低下する(例えば、非特許文献22参照)。さらに、げっ歯類細胞における機能的なヒトDDB2の異所性発現はCPDのGG−NERを増強し、紫外線誘発突然変異を抑制する(例えば、非特許文献23参照)。これらの知見はGG−NERのためのCPDの認識においてUV−DDBが重要な役割を果たすことを示唆する。核への局所的な紫外線照射において、UV−DDBはXPCが存在しなくても損傷領域へ局在する(例えば、非特許文献24参照)。しかしながら、GG−NERのための損傷認識において、XPCとUV−DDBが機能的に関連しているかについては明らかではない。UV−DDBが(6−4)光産物に極めて高い結合力を持つことの正確な役割についても不明である。
【0007】
興味深いことに、UV−DDBは、ユビキチンリガーゼ(E3)の構成要素であるキュリン4A、Roc1及びCOP9シグナロソームと共に大きな複合体を形成することが最近明らかとなった(例えば、非特許文献25参照)。UV−DDBが結合したE3は細胞への紫外線照射によって活性化されると思われるが、このユビキチンリガーゼ活性の生理的な基質は未だ知られていない。
【0008】
【非特許文献1】Friedberg, E.C. (2001). Nat. Rev. Cancer 1, 22-33
【非特許文献2】Hoeijmakers, J.H.J. (2001). Nature 411, 366-367
【非特許文献3】Bootsma, D., Kraemer, K. H., Cleaver, J.E., and Hoeijmakers, J.H.J. (1997). The metabolic basis of inherited disease, C.R. Scriver, A.L. Beaudet, W.S. Sly, and D. Valle, eds. (New York, NY, McGraw-Hill Book Co.), pp.245-274.
【非特許文献4】Tornaletti, S., and Hanawalt, P.C. (1999). Biochimie 81, 139-146
【非特許文献5】Riedl, T., Hanaoka, F., and Egly, J.-M. (2003). EMBO J. 22, 5293-5303.
【非特許文献6】Sugasawa, K., Ng, J.M.Y., Masutani, C., Iwai, S., van der Spek, P.J., Eker, A.P.M., Hanaoka, F., Bootsma, D., and Hoeijmakers, J.H.J. (1998). Mol. Cell 2, 223-232.
【非特許文献7】Volker, M., Mone, M.J., Karmakar, P., van Hoffen, A., Schul, W., Vermeulen, W., Hoeijmakers, J.H.J., van Driel, R., van Zeeland, A.A., and Mullenders, L.H.F. (2001). Mol. Cell 8, 213-224.
【非特許文献8】Araki, M., Masutani, C., Takemura, M., Uchida, A., Sugasawa, K., Kondoh, J., Ohkuma, Y., and Hanaoka, F. (2001). J. Biol. Chem. 276, 18665-18672.
【非特許文献9】Masutani, C., Sugasawa, K., Yanagisawa, J., Sonoyama, T., Ui, M., Enomoto, T., Takio, K., Tanaka, K., van der Spek, P.J., Bootsma, D., et al., (1994). EMBO J. 13, 1831-1843.
【非特許文献10】Shivji, M.K.K., Eker, A.P.M., and Wood, R.D. (1994). J. Biol. Chem. 269, 22749-22757.
【非特許文献11】Batty, D., Rapic'-Otrin, V., Levine, A.S., and Wood,R.D. (2000). J. Mol. Biol. 300, 275-290.
【非特許文献12】Sugasawa, K., Okamoto, T., Shimizu, Y., Masutani, C., Iwai, S., and Hanaoka, F. (2001). Genes Dev. 15, 507-521.
【非特許文献13】Sugasawa, K., Shimizu, Y., Iwai, S., and Hanaoka, F. (2002). DNA Repair 1, 95-107.
【非特許文献14】Fujiwara, Y., Masutani, C., Mizukoshi, T., Kondo, J., Hanaoka, F., and Iwai, S. (1999). J. Biol. Chem. 274, 20027-20033.
【非特許文献15】Reardon, J.T., Nichols, A.F., Keeney, S., Smith, C.A., Taylor, J.S., Linn, S., and Sancar, A. (1993). J. Biol. Chem. 268, 21301-21308.
【非特許文献16】Treiber, D.K., Chen, Z., and Essigmann, J.M. (1992). Nucleic Acids Res. 20, 5805-5810.
【非特許文献17】Chu, G., and Chang, E. (1988). Science 242, 564-567.
【非特許文献18】Araujo, S.J., Tirode, F., Coin, F., Pospiech, H., Syvaoja, J.E., Stucki, M., Hubscher, U., Egly, J.-M., and Wood, R.D. (2000). Genes Dev. 14, 349-359.
【非特許文献19】Mu, D., Park, C.H., Matsunaga, T., Hsu, D.S., Reardon, J.T., and Sancar, A. (1995). J. Biol. Chem. 270, 2415-2418.
【非特許文献20】Aboussekhra, A., Biggerstaff, M., Shivji, M.K.K., Vilpo, J.A., Moncollin, V., Podust, V.N., Protic, M., Hubscher, U., Egly, J.-M., and Wood, R.D. (1995). Cell 80, 859-868.
【非特許文献21】Wakasugi, M., Shimizu, M., Morioka, H., Linn, S., Nikaido, O., and Matsunaga, T. (2001). J.Biol. Chem. 276, 15434-15440.
【非特許文献22】Hwang, B.J., Ford, J.M., Hanawalt, P.C., and Chu, G. (1999). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 424-428.
【非特許文献23】Tang, J.Y., Hwang, B.J., Ford, J.M., Hanawalt, P.C., and Chu, G. (2000). Mol. Cell 5, 737-744.
【非特許文献24】Wakasugi, M., Kawashima, A., Morioka, H., Linn, S., Sancar, A., Mori, T., Nikaido, O., and Matsunaga, T. (2002). J.Biol. Chem. 277, 1637-1640.
【非特許文献25】Groisman, R., Polanowska, J., Kuraoka, I., Sawada, J., Saijo, M., Drapkin, R., Kisselev, A.F., Tanaka, K., and Nakatani, Y. (2003). Cell 113, 357-367.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、ヌクレオチド除去修復機構、特に紫外線損傷DNAの修復機構において、XPC複合体及びUV−DDB複合体が重要な役割を果たしていることが示唆されているが、これらのタンパク質複合体がどのような調節機構によってDNA上の損傷部位を迅速に認識するかは未だ明らかではない。また、上記XPC複合体のユビキチン化が、DNA修復機構においてどのような意義を有するかも知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決することによってなされたものであり、第一に、ヌクレオチド除去修復機構、特に紫外線によるDNA損傷が発生した場合において、UV−DDBがまずこれを認識して結合し、その後タンパク質間相互作用を介してXPCをリクルートすることを明らかにした。さらに、損傷部位でUV−DDBがXPCによって置き換えられて修復反応が進行するが、このときユビキチン付加反応が重要な役割を果たすことを見出し、このような損傷DNAの認識機構の解明に基づいて本発明のスクリーニング方法を完成した。
【0011】
すなわち、第一の視点において、本発明は、哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、(a)候補化合物の存在下でXPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる工程、及び(b)前記XPCタンパク質がDDB2タンパク質と結合するか否かを検出する工程を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を阻害するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復阻害剤と推定することを特徴とする。
【0012】
別の視点において、本発明は、哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、(a)ユビキチン化反応条件下でXPC複合体と、UV−DDB複合体と、候補化合物とを接触させる工程、及び(b)前記複合体中のXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質のユビキチン化反応を検出する工程を含み、前記候補化合物がXPCタンパク質、及び/又は前記DDB2タンパク質のユビキチン化を抑制するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復阻害剤と推定することを特徴とする。
【0013】
また、異なる視点において、本発明は、哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を促進する化合物のスクリーニング方法であって、(a)候補化合物の存在下において、XPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる工程、及び(b)前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合速度を検出する工程を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を促進するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することを特徴とする。
【0014】
さらに異なる視点において、本発明は、哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を促進する化合物のスクリーニング方法であって、(a)ユビキチン化反応条件下において、XPC複合体と、UV−DDB複合体と、候補化合物とを接触させる工程、及び(b)前記複合体中のXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質のユビキチン化反応を検出する工程を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質、及び/又は前記DDB2タンパク質のユビキチン化を促進するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、紫外線照射を受けた哺乳動物細胞内でXPCタンパク質がUV−DDB複合体との相互作用を介してユビキチン化されること、そしてこれらの反応がNERにおける紫外線損傷DNAの認識に重要な役割を果たしているという発見に基づいてなされたものである。従って、本発明のスクリーニング方法を用いることにより損傷DNAの認識機構を阻害又は促進するために有効な新規な調節因子を取得することができる。さらに、本発明の方法により得られた調節因子は、ポリユビキチン化されたXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質による細胞内のシグナル伝達機構をも制御できる可能性があり、紫外線照射に対する細胞のDNA修復機構を理解し、これに関連する病気の予防や治療への応用に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(定義)
本明細書において、用語「ヌクレオチド除去修復(NER)」とは、紫外線によって誘起されるピリミジン2量体をはじめ、広範なDNAの塩基損傷を対象とする修復機構をいう。NERはさまざまなタイプの損傷をDNAから取り除くことができるが、その中でも生物が日常的に受ける可能性が最も高いものとしてシクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)や(6−4)光産物といった紫外線による損傷があげられる。この他に、シスプラチンに代表されるDNA鎖内架橋、アセチルアミノフルオレン(AAF)などによるかさの大きい塩基付加体などがNERの対象となることが知られている。NER反応が開始されるためには、まずDNA損傷の存在が何らかの形で認識される必要がある。TCRにおいては、損傷によってRNAポリメラーゼの進行が妨害されること自体が、損傷認識であると考えられているが、GG−NER経路は非転写鎖の損傷も修復することから、TCRとは異なる損傷認識機構が働いているはずである。DNA損傷が認識された後は、TFIIHなどによって損傷周辺の二本鎖DNAが一本鎖状態に巻き戻され、続いて2種類のエンドヌクレアーゼXPF−ERCC1複合体とXPGタンパク質によって損傷の両側で一本鎖切断が起こり、損傷塩基を含むオリゴヌクレオチドが切り出される。さらに、DNAポリメラーゼ(δ又はε)、PCNAやRF−CによるDNA修復合成及びDNAリガーゼIによるDNA鎖の再結合が行われて完了する。
【0017】
本発明において、この損傷認識の初期過程は、図7に示した紫外線誘起UV−DDB依存性のXPCタンパク質のユビキチン化によって説明される。図7を参照すると、紫外線が照射されない細胞ではUV−DDBと会合したE3はCOP9シグナロソーム(CSN)との相互作用によって不活性化されている。従って、XPCはUV−DDBと相互作用してもユビキチン化されない。続いて、紫外線が照射されるとUV−DDBは、損傷、特に(6−4)光産物に結合することによって傷を受けたクロマチンに移行し、CSNが解離してキュリン4AがNEDD8付加(neddylation)を受けることによってE3が活性化される。UV−DDBの損傷結合はさらにE3活性を促進する。活性化されたUV−DDB−E3複合体は、続いてタンパク質−タンパク質相互作用を介してXPCをリクルートし、XPC、DDB2及びキュリン4Aを損傷部位でユビキチン化する。ポリユビキチン化されたUV−DDBは損傷DNAへの結合能を失うが、XPCのDNA結合能はユビキチン化によって増強される。ユビキチン化されたDDB2はプロテアソームにより分解されるが、ユビキチン化されたXPCは脱ユビキチン化を通じて非修飾型に復帰する。本明細書においてこのような機構を「損傷DNAの認識」という。
【0018】
用語「XPC]又は「XPCタンパク質」とは、公知のヒトXPCタンパク質(Masutani C. et al., EMBO J. 13(8):1831-1843, 1994; GenBnk Accession No. NM_004628)又は哺乳動物におけるそのホモローグのことをいう。ヒトXPCタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示すが、この遺伝子配列情報には複数の一塩基多型(SNPs)が知られており、その結果アミノ酸置換の生じた変異体タンパク質も本発明のXPCタンパク質に含まれる。すなわち、配列番号2に示したアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該アミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつヌクレオチド除去修復における損傷DNAの認識能を有するタンパク質である。XPCタンパク質の損傷DNA認識能は、例えば、損傷DNAとの結合アッセイにより測定することができる。
【0019】
本明細書において、用語「XPC複合体」とは、少なくともXPCタンパク質とHR23A、又はHR23Bを含み、任意にセントリン2を含んでいてもよい複合体をいう。HR23A、及びHR23Bは、酵母のRad23のヒトホモローグタンパク質(非特許文献9;GenBnk Accession No. NM_005053、NM_002874)又は哺乳動物におけるそのホモローグのことをいう。セントリン2とは、カルシウム結合タンパク質ファミリーに属し、染色体のセントロソームの構成成分である。藍藻からヒトまで高度に保存されており、染色体の複製や分離に重要な役割を果たすと考えられている。ヒトセントリン2のアミノ酸配列は、例えば、GenBnk Accession No. NM_004344に開示されている。また、本発明においてXPC複合体は、これらの各タンパク質の一部分であって、その機能的なドメインから構成されてもよい。
【0020】
用語「UV−DDB]又は「UV−DDB複合体」とは、2つのサブユニットDDB1及びDDB2からなるDNA損傷結合タンパク質複合体をいい、ヒトの場合、大サブユニット(127kDa)のDDB1タンパク質(GenBnk Accession No. NM_001923)と、小サブユニット(48kDa)のDDB2タンパク質(GenBnk Accession No. NM_000107)からなる。ヒトDDB2タンパク質は配列番号4に示したアミノ酸配列からなり、直接DNA、及びXPCタンパク質との結合に関与すると考えられる。また、DDB2遺伝子は癌抑制遺伝子産物であるp53による発現制御を受けていることも知られている。
【0021】
用語「ユビキチン化」又は「ユビキチン付加反応」とは、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)による一連の反応でATP依存的にユビキチンを標的タンパク質に付加する反応をいう。ユビキチンは真核細胞中に存在する76アミノ酸からなる高度に保存されたタンパク質である。ユビキチン化には3種の異なる酵素の作用が必要である。ユビキチン活性化酵素(E1)がユビキチンに結合し、それをユビキチン結合酵素(E2)に転移し(Haas and Rose,1982;Pickart and Rose,1985)、この酵素が続いてユビキチンリガーゼ(E3)の助けをかりてユビキチン残基を基質のリシン残基に共有結合させる。基質タンパク質のリシン残基に共有結合した各ユビキチンは、ユビキチン配列自体のリシン残基においてさらにユビキチン化される。マルチユビキチン化は、タンパク質分解酵素の複合体であるプロテアソームによる迅速分解のために基質をターゲティングするソーティング(選別)シグナルとして作用する(Chauら,1989)。このユビキチンシステムにおける基質特異性は、ユビキチンリガーゼ(E3)に依存している。典型的なRING型E3は、RINGフィンガータンパク質、アダプタータンパク質、基質認識サブユニット及びキュリンを含む。最もよく知られているRING型E3はSCF(Skp1、Cdc53/キュリン、Fボックスタンパク質)である。哺乳動物のキュリンファミリーは6種類(キュリン1、2、3、4A、4B及び5)が存在し、SCFSkp2の構成要素であるキュリン1が最もよく研究されている。本発明において使用されるユビキチンリガーゼ(E3)は、UV−DDB複合体と相互作用しDDB2タンパク質及びXPCタンパク質を基質とするものであれば特に制限されないが、好ましくは、キュリン4A及びRoc1を用いることができる。
【0022】
(ヌクレオチド除去修復調節因子のスクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、まず、GG−NERの初期段階、すなわち、損傷DNAの認識機構において、XPCタンパク質と、UV−DDB複合体との相互作用が重要な役割を果たし、特にXPCタンパク質とDDB2タンパク質が直接相互作用してこれらを含むタンパク質複合体が損傷を受けたDNA上で結合することによってXPCタンパク質が損傷部位にリクルートされるという知見に基づくものである。すなわち、まず候補化合物の存在下でXPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる。ここで、候補化合物とは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド様物質、多糖、脂質、又はその他の有機化合物若しくは無機化合物でありうる。これらは化学合成された化合物ライブラリー又は細菌、カビ、放線菌などの培養物中の化合物からなる生物学的混合物であってもよい。次に、前記XPCタンパク質がDDB2タンパク質と結合するか否かを検出する(結合する場合にはその結合速度を測定する)。この検出手段は、XPCタンパク質とDDB2タンパク質との相互作用を調べるようにデザインされた、どのような適切なアッセイ系で実施してもよい。例えば、免疫沈降法若しくはイムノブロット法と呼ばれる特異的な抗体を用いる方法、ファージディスプレイ法(Smith, G.P., Science (1985) Vol.228, pp.1315-1317)、酵母のツーハイブリッド法(米国特許第5283173号、及びFields, S., Song, O., Nature (1989) Vol. 340, p.245)又はプロテインチップ法(特開2001−242116、及び米国特許第6365418号)などを用いることができる。
【0023】
典型的な1つのアッセイ方法としてGST−プルダウンアッセイがあり、例えば、GSTと融合したXPCタンパク質をコードする遺伝子を動物細胞や大腸菌細胞内で発現し、グルタチオン−アガロースビーズ等を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。UV−DDB複合体は、精製されたものでも、あるいは細胞のライセートの何れでもよく、また、放射性同位元素で標識されていてもよい。このGST融合XPCタンパク質と、UV−DDB複合体とを、候補化合物の存在下、グルタチオンアガロースビーズと共にインキュベートし、ビーズから回収したUV−DDB複合体をSDS−PAGEで分離し、ウエスタンブロッティング、オートラジオグラフィー、又はレポータータンパク質の酵素活性等により検出する。
【0024】
他の1つの方法としては、レポータータンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)類似性の蛍光タンパク質との融合タンパク質を用いるFRET(fluorescence resonance energy transfer)法により、候補化合物の存在下でXPCタンパク質とUV−DDB複合体との相互作用を検出することができる。FRETは励起されたフルオロフォア供与体から、その約60Å以内にある受容体フルオロフォアへのエネルギー移行現象である。第一のフルオロフォアの励起後に、適当なフィルターを用いて第二のフルオロフォアからの発光を検出するか、または供与体の蛍光半減期を変えることで検出できる(Tsien RY, Annu. Rev. Biochem. 1998, 67, 509-544)。通常用いられている2つのフルオロフォアは、GFPの変異体であるシアン蛍光タンパク質(cyan fluorescent protein:CFP)及び黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein:YFP)である(Miyawaki, A., Dev. Cell Vol. 4, pp.295-305)。
【0025】
このようなアッセイ系において、前記候補化合物が前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を阻害するときは、損傷DNAの認識機構が阻害されるためNERの進行が抑制される。その結果、該候補化合物はヌクレオチド除去修復阻害剤と推定される。反対に、前記候補化合物が前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を促進するときは、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することができる。
【0026】
1つの実施形態において、前記XPCタンパク質は、HR23A、又はHR23Bと複合体を形成した形態にあるもの、すなわち、XPC−HR23A、又はXPC−HR23B複合体であってもよい。XPCタンパク質は、好ましくは配列番号2に示したアミノ酸配列からなるタンパク質又は当該アミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、80%、85%、90%、97%、98%以上の相同性を有するタンパク質であり、かつ損傷DNAの認識能を有するタンパク質である。また、前記DDB2タンパク質はDDB1タンパク質と複合体を形成した形態にあるもの、すなわち、UV−DDB複合体であってもよい。DDB2タンパク質は、好ましくは配列番号4に示したアミノ酸配列からなるタンパク質又は当該アミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは70%、80%、85%、90%、97%、98%以上の相同性を有するタンパク質であり、かつ損傷DNAの認識能を有するタンパク質である。タンパク質の相同性(ホモロジー)の程度は、2つのタンパク質のアミノ酸配列同士を適切に整列(アライメント)したときの同一性のパーセント値で表わすことができ、当該配列間の正確な一致の出現率を意味する。同一性比較のための配列間での適切な整列は種々のアルゴリズム、例えば、BLASTアルゴリズムを用いて決定することができる(Altschul SF J Mol Biol 1990 Oct 5; 215(3):403-10)。
【0027】
他の実施形態においては、まず、ユビキチン化反応条件下において、XPC複合体と、UV−DDB複合体と、候補化合物とを接触させる。次に、前記複合体中のXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質のユビキチン化反応を検出する。この検出手段は、XPCタンパク質及びDDB2タンパク質がユビキチン化されているか否かを検出できるようにデザインされた、どのような適切なアッセイ系で実施してもよい。例えば、インビトロ無細胞系で実施することができ、この系には、前記各タンパク質複合体と候補化合物とユビキチンが、ユビキチン化付加反応に必要とされる他のタンパク質成分や低分子化合物と共に供給される。あるいは、前記タンパク質複合体をユビキチン化しうる哺乳動物細胞抽出液を用いてユビキチン付加反応を行うこともできる。
【0028】
さらに、このアッセイ系は、XPC複合体及びUV−DDB複合体中の各タンパク質を発現させることができる発現ベクターを含有する宿主細胞において実施してもよい。
【0029】
好ましい実施形態において、前記XPC複合体は、XPCタンパク質及びHR23A、若しくはHR23B又はこれらの機能的なドメインを含み、任意にセントリン2を含んでもよい。また、前記UV−DDB複合体は、DDB1及びDDB2からなるか、又はそれらの機能的なドメインから構成されてもよい。前記ユビキチン付加反応条件は、少なくともE1、E2、E3、及びユビキチン又はその類似物を含み、その他にATPなどのエネルギー源及び適切な緩衝液成分を含むことができる。前記E3は、キュリン4A、及びRoc1を含むことが好ましく、又はそれらのタンパク質は、ユビキチン化反応に必要な機能的なドメインから構成されてもよい。
【0030】
このようなアッセイ系において、前記候補化合物がXPCタンパク質、及び/又は前記DDB2タンパク質のユビキチン化を抑制するときは、損傷DNA認識の初期過程が阻害されるためNERの進行が抑制される。例えば、XPCタンパク質のユビキチン化が抑制されると損傷DNAへの結合性が弱く、一方、DDB2タンパク質のユビキチン化が抑制されるとDNA上の損傷部位から遊離されず、UV−DDB複合体が損傷部位に留まることによってNERの進行を阻害すると考えられる。従って、該候補化合物はヌクレオチド除去修復阻害剤と推定される。逆に、前記候補化合物がXPCタンパク質とDDB2タンパク質のユビキチン化を促進するときは、ユビキチン化されたXPCタンパク質のDNA結合能が向上する。一方、ユビキチン化されたDDB2が速やかに分解を受けて損傷DNA部位から遊離しNERの進行速度が向上するため、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することができる。
【0031】
(ヌクレオチド除去修復阻害剤の利用)
本発明のスクリーニング方法によって得られたヌクレオチド除去修復阻害剤は、細胞のヌクレオチド除去修復機構を阻害することが有効となる種々の用途に使用することができる。例えば、1つの用途として、抗腫瘍剤との併用薬が挙げられる。腫瘍、特に悪性固形腫瘍に対する治療、抑制、予防等の薬剤として、現在種々の化学療法剤が用いられているが、何れの薬剤においても腫瘍の縮小効果は認められるものの、薬剤耐性や再発などの問題があり、また副作用を軽減するために相乗効果を有する併用薬の開発が期待されている。シスプラチンに代表される白金配位化合物はDNA鎖内架橋作用により抗腫瘍活性を示す化合物として知られており、本発明の方法により得られたヌクレオチド除去修復阻害剤との併用によりその抗腫瘍活性が増強されることが期待される。シスプラチン又はシス−ジクロロジアンミン白金(II)は、長年、種々のヒト悪性腫瘍の治療において化学療法剤として使用されてきた。さらに近年、他のジアミノ−白金錯体(例えば、スピロプラチナムやカルボプラチナムなど)も、種々のヒト悪性腫瘍の治療における化学療法剤としての有効性を示している。これらはヒトにおける化学療法剤として広く使用されているが、全ての患者において、また全てのタイプの腫瘍に対して治療学的に有効であるというわけではない。その有効性の増大を期待して他の化学療法剤との併用、例えば、肺癌に対してはシスプラチンとビンデシンの併用(Garalla, R.J.et al., Ann. Intern. Med., 95, 414-420, 1980)、シスプラチンとVP−16との併用(Congeval, E. et al., Cancer, 51, 2751-2756, 1982)等数多く試みられているが、何れも有効率の改善は認められるものの完全に満足できるものではない。このような白金配位化合物としては、シスプラチン、シス−ジアンミンジコア白金(II)−イオン、ジアンミン(1,1−シクロブタンカルボキシラト)白金(II)(カルボプラチン)、スピロプラチン、イソプラチン等を含むがこれらに限定されない。
【0032】
(ヌクレオチド除去修復促進剤の利用)
一方、本発明のスクリーニング方法によって得られたヌクレオチド除去修復促進剤は、細胞のヌクレオチド除去修復機構を促進することが有効となる種々の用途に使用することができる。例えば、紫外線による障害を予防するための紫外線防護剤として使用することができる。現在種々の紫外線防護効果を持つ製品が開発されているが、これらは主に紫外線を散乱させる紫外線散乱剤や紫外線吸収剤であり、例えばこれらを化粧料中に分散させて使用している。化粧料中に配合される紫外線散乱剤としては、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、オクチルシンアメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート等が挙げられる。これらの紫外線防護剤は皮膚の表面に塗布して紫外線による皮膚の損傷を防護する。本発明の紫外線防護剤は、化粧料に含有させて皮膚細胞の持つヌクレオチド除去修復機能を高めて紫外線障害に対する皮膚の抵抗性を高めると考えられるため、XPやCS等の遺伝的疾患の患者のみならず、一般正常人にとっても有用であろう。
【実施例1】
【0033】
以下、実施例として、細胞の紫外線照射に応答してUV−DDB−E3複合体がXPC複合体をユビキチン化することを示す実験例を示す。これらの実施例は、ヌクレオチド除去修復の分子論的機構について、上記2つの認識因子が機能的に関連するという知見を提供し、よって本発明の新規な技術的思想を基礎付けるものであるが、本発明は実施例に記載された具体的な事項によって何ら限定されるものではない。
【0034】
1 方法
[細胞株及び細胞培養方法]
WI38 VA13細胞、並びにXP及びCS患者由来のその他のヒト線維芽細胞株は、10%牛胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地中、37℃にて培養した。種々のチャイニーズハムスター細胞は、CHO−K1細胞にL−プロリンを添加すること以外は同じ条件下で培養した。ヒトDDB2を発現する安定な形質転換細胞はV79細胞を親株として確立され(非特許文献23)、500μg/mlのG418(インビトロジェン社)の存在下で培養した。XP−E群患者由来のリンパ芽球腫細胞株(GM01646)は、コリエル細胞バンク(Coriell Cell Repository)から入手し、15%非働化牛胎児血清を含むRPMI1640培地で懸濁培養した。マウス乳癌細胞FM3A及びその温度感受性変異株ts85細胞は10%牛血清を含むRPMI1640培地で浮遊させ33℃で維持した。
【0035】
[細胞ライセートの調製]
ヒト線維芽細胞からのNER因子のイムノブロット解析のため、60mmシャーレで培養した細胞を2回リン酸緩衝食塩水で洗浄し、そのままの位置で0.25mlの0.3Mの塩化ナトリウムを含む氷冷したNP溶解バッファー[25mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1mMのEDTA、10%グリセリン、1%ノニデットP−40、10mMのN−エチルマレイミド、0.25mMフェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(コンプリート、ロッシュ・ダイアグノスティクス社)]により溶解した。氷上で30分間インキュベーションした後、細胞溶解液を遠心チューブにかきとり、20000×gで10分間遠心分離して上清画分を得た。沈殿は同量の0.3Mの塩化ナトリウムを含むNP溶解バッファーに超音波処理により溶解した。上清画分のタンパク質濃度は、Schaffner及びWeissmann(1973)の方法(Schaffner, W. and Weissmann, C. (1973) Anal. Biochem. 56, 502-514)によりBSAを標準として決定した。
【0036】
マウス及びチャイニーズハムスター細胞内のXPC及びFLAG−DDB2を検出するために、最初に細胞をNP溶解バッファーで処理した。抗XPC抗体(FL)はマウス及びチャイニーズハムスターの内在XPCを認識しない。ほとんどのXPCとFLAG−DDB2はこの抽出条件では可溶化しないことはあらかじめ確認した。イムノブロット解析のために不溶性ペレットを0.3Mの塩化ナトリウムを含むNP溶解バッファーに超音波処理により溶解した。
【0037】
[FLAG−XPCの安定発現]
FLAG−XPCをコードするcDNAは、複数シストロンの発現ベクターであるpIREShyg(クロンテック社)に挿入した。得られたDNA構築物は、直鎖化し、ジーンパルサーII(バイオラッド社)を用いてエレクトロポレーション法によりXP4PASV細胞に導入した。安定な形質転換体を最初は200μg/mlのハイグロマイシンB(インビトロジェン社)の存在下で培養することによって選択した。培養液中のハイグロマイシンBの濃度を徐々に減少させるとFLAG−XPCの発現レベルも減少した。典型的には、10μg/mlのハイグロマイシンBの存在下で維持した形質転換体は生理的レベルのFLAG−XPCの発現を示した。
【0038】
[組換えUV−DDB複合体の精製]
pFastBacデュアルベクター(インビトロジェン社)とHighFive細胞を用いてポリヘドリンプロモータの制御下でFLAG−DDB1を、及びp10プロモータの制御下でタグなしDDB2をそれぞれ同時に発現する組換えバキュロウイルスを作製した。感染細胞を27℃で3日間培養後回収し、8倍容量の氷冷した0.3M塩化ナトリウムを含むNP溶解バッファーに再懸濁した。20000×g、15分間の遠心分離により可溶性抽出液を取得し、0.1M塩化ナトリウムを含む緩衝液A[20mMリン酸ナトリウム(pH7.8)、1mMのEDTA、10%グリセリン、1mMDTT、0.25mMのPMSF]に対して透析した。抽出液は、0.1M塩化ナトリウムを含む緩衝液B[緩衝液Aに0.01%トリトンX−100を添加]で平衡化されたHiPrep16/10ヘパリンFFカラム(アマシャムバイオサイエンス社)に負荷した。同じ緩衝液でカラムを洗浄した後、結合したタンパク質を0.45M及び1M塩化ナトリウムをそれぞれ含む緩衝液Bにて段階的に溶出した。FLAG−DDB1/DDB2ヘテロ2量体は0.45M塩化ナトリウム画分に回収され、一方、遊離のFLAG−DDB1はヘパリンカラムを素通りした。両方の画分を別々に抗FLAG M2アガロースを含むカラムに0.3M塩化ナトリウムを含む緩衝液Bで負荷した。0.3M及び1Mの塩化ナトリウムをそれぞれ含む緩衝液Bで引き続き洗浄した後、カラムに保持されたタンパク質を、1M塩化ナトリウム及び0.1mg/mlのFLAGペプチドを含む緩衝液Bで溶出した。一定量の溶出液を、0.1M塩化ナトリウムを含む緩衝液C[25mMトリス塩酸(pH7.5)、1mMのEDTA、10%グリセリン、0.01%トリトンX−100、1mMDTT、0.25mMのPMSF]で平衡化されたMiniQ PC3.2/3カラム(アマシャムバイオサイエンス社)にさらに負荷した。同じ緩衝液で洗浄後、タンパク質を0.1〜0.6M塩化ナトリウムの濃度勾配をつけた緩衝液Cで溶出した。UV−DDBを含む画分はSDS−PAGEとCBB染色で確認し、XPCとの結合実験に用いた。
【0039】
UV−DDB−E3複合体を精製するために、タグなしDDB2の代わりにHisタグ付加DDB2を用いた。キュリン4A−HA及びT7−Roc1をそれぞれ発現する2種類の組換えバキュロウイルスもまた作製した。これら3種類のバキュロウイルスでHighFive細胞を共感染し(m.o.i.約5)、上述した方法にて抽出液を調製した。0.45Mの代わりに0.5M塩化ナトリウムを含む緩衝液BでUV−DDB−E3複合体を溶出した以外は上述した方法と同様に最初のヘパリンカラムクロマトグラフィーを行った。この画分を0.3M塩化ナトリウムを含む緩衝液D[20mMリン酸ナトリウム(pH7.8)、10%グリセリン、1mM2−メルカプトエタノール、0.25mMのPMSF]で平衡化した抗FLAG M2アガロースカラムに負荷した。カラムに保持されたタンパク質を、0.3M塩化ナトリウム及び0.1mg/mlのFLAGペプチドを含む緩衝液Dで溶出し、あらかじめNi2+を結合させ、0.1M塩化ナトリウム及び5mMイミダゾールを含む緩衝液Dで平衡化したHiTrapキレートHPカラム(1ml;アマシャムバイオサイエンス社)に負荷した。同じ緩衝液で洗浄後、タンパク質を5〜100mMイミダゾールの濃度勾配をつけた緩衝液D+0.1M塩化ナトリウムで溶出した。混在する亜複合体と分離するために、さらに0.1M塩化ナトリウムを含む緩衝液Bで平衡化したMonoS PC1.6/5カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に負荷し、結合タンパク質を0.1〜0.5M塩化ナトリウムの濃度勾配をつけた緩衝液Bで溶出した。4量体のUV−DDB−E3複合体は0.23M塩化ナトリウム付近で溶出された。
【0040】
[種々のタンパク質因子の精製]
ヒトXPCタンパク質及びHisタグ付加HR23B(HR23B−His)タンパク質はそれぞれ別々に発現させ精製し、XPC−HR23Bヘテロ2量体として再構成した(非特許文献12参照)。セントリン2(Centrin2)は、大腸菌で発現し、精製した(非特許文献8参照)。TFIIHを除くその他のNER因子はバキュロウイルスシステムを用いて昆虫細胞で発現させた。ヒトTFIIH複合体はプロテインワン(ProteinOne)社から購入した。ウサギE1及びヒトUbcH5a(E2)酵素、並びにユビキチン(野生型、リジン欠損型、又はGST−タグ型)はボストンバイオケム(Boston Biochem)社から購入すると共に野生型ユビキチンはシグマ社からも購入した。
【0041】
[インビトロにおけるユビキチン化アッセイ]
標準的な反応混合物(15μl)は50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、10mM塩化マグネシウム、0.2mM塩化カルシウム、4mMのATP、1mMジチオスレイトール(DTT)、ウシ血清アルブミン(BSA;1.5μg)、E1(0.1μg)、E2(0.4μg)、ユビキチン(5μg)、精製UV−DDB−E3(20ng)及びXPC−HR23B−Hisを含む。この反応溶液を37℃、1時間インキュベートした後、0.5MのEDTAを1μl添加して反応を停止し、SDS−PAGEを行った後、適切な抗体を用いてイムノブロット解析を行った。
【0042】
[損傷DNA結合アッセイ]
単一の紫外線誘起損傷(CPD又は(6−4)光産物)部位を含む30塩基長のオリゴヌクレオチドは文献(非特許文献12)記載の方法に従って調製した。これらの損傷オリゴヌクレオチド及び非損傷対照オリゴヌクレオチド(各200pmol)を、相補的なオリゴヌクレオチド(5'-GAGCACTGACTGTATGATGAAGATGCTGAC-3':配列番号5)とアニールし、各5’末端が3塩基突出した二重鎖DNAを調製した。このDNAは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社製)により5’末端をリン酸化し、T4DNAリガーゼ(宝酒造社製)により直列に連結した。その後、ビオチン−14−dCTP(インビトロジェン社製)存在下でクレノーフラグメント(宝酒造社製)により3’末端を充填して平滑末端とした。このビオチン化DNAは、次いでダイナビーズキロベースバインダーキット(ダイナルバイオテック社)を用いてストレプチアビジン被覆磁気ビーズに固定化した。ビーズに固定化されたDNA量を定量するために、このDNAビーズの一定量をマイクロコッカスヌクレアーゼ(宝酒造社製)で完全に処理し、ビーズから遊離されたヌクレオチドの260nmの吸光度を測定した。
【0043】
このようにして調製したDNAビーズを用いて結合反応を30℃で30分間行った。反応混合物(15μl)は、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、5mM塩化マグネシウム、0.2mM塩化カルシウム、2mMのATP、1mMDTT、0.1M塩化ナトリウム、BSA(1.5μg)、変動量のXPC−HR23B−His(モル比で4倍量のセントリン2と共に)、及び1pmolの紫外線誘起損傷を含むDNA磁気ビーズ(又は対照として同量の非損傷DNAビーズ)を含む。表示された場合にはUV−DDB−E3(20ng)、E1(0.1μg)、E2(0.5μg)、及びユビキチン(野生型又はメチル化体;10μg)もまた反応液中に含まれる。0.5MのEDTAを1μl加えて反応を停止させた後、上清画分を「非結合」画分として保存した。その後、ビーズを50μlの氷冷したバッファー[50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)、5mM塩化マグネシウム、0.2mM塩化カルシウム、0.1M塩化ナトリウム、1mMDTT]で2回洗浄し、SDSサンプルバッファー中に懸濁した。一定量の非結合及び結合画分を用いてSDS−PAGEを行った後、イムノブロット解析を行った。
【0044】
[NER二重切断アッセイ]
単一の部位特異的(6−4)光産物又はCPDを含み、32Pで内部標識された環状二重鎖DNA基質、及びXP−E群患者由来のリンパ芽球腫細胞(GM01646)の全細胞抽出液は、文献記載の方法により調製した。標準的な反応混合溶液(25μl)は、40mMのHepes−KOH(pH7.8)、5mM塩化マグネシウム、2mMのATP、0.5mMのDTT、70mM塩化ナトリウム、5%グリセリン、BSA(5.4μg)、XP−E群細胞抽出液(100μgタンパク質)、22.5mMクレアチンリン酸(シグマ)、クレアチンリン酸キナーゼ(0.5μg;シグマ、タイプI)及び32P標識DNA基質((6−4)光産物について約1×10cpm、CPDについて約4×10cpm)を含む。再構成NERのためには、反応液容量を15μlに低減し、XP−E群細胞抽出液を精製したFLAG−XPA(25ng)、RPA(100ng)、XPF−ERCC1−His(12ng)、XPG(12ng)、TFIIH(134ng)、XPC−HR23B−His(20ng)及びセントリン2(5ng)に置換し、さらに塩化ナトリウム濃度を100mMに調整した。表示した場合には、E1(0.1μg)、E2(0.5μg)、ユビキチン(野生型、リジン欠損型、又はメチル化型)及び変動量のUV−DDB又はUV−DDB−E3複合体もまた含んだ。30℃にて1時間インキュベーションした後、DNAを精製し、10%変性PAGEにて分離しオートラジオグラフィーにて検出した。
【0045】
2 結果
[紫外線によるXPCタンパク質の翻訳後修飾と生体内ユビキチン化]
紫外線照射に対するXPC複合体の生体内での応答を調べるため、一連のイムノブロット解析を行った。SV40で形質転換された正常ヒト線維芽細胞株WI38 VA13を紫外線照射(10J/m)又は偽照射し、37℃で1時間インキュベートした後、0.3M塩化ナトリウム及び1%ノニデットP−40を含むバッファーで溶解した。この可溶化された画分(3μgタンパク質)又は不溶化画分を、抗XPC抗体を用いてイムノブロット解析したところ、移動度の遅い不均一なバンド(150〜300kDa)が紫外線照射した細胞から得られた可溶性画分に認められた(図1Aのレーン2参照)。移動度の小さいこれらのバンドは、異なる特異性を有する2つの抗XPC抗体で検出されたが、XPC欠損細胞株であるXP4PASVからの同様の画分(図1Aのレーン5〜8)には認められなかった。これらの知見は、細胞の紫外線照射への応答としてXPCタンパク質が翻訳後の修飾を受けることを示している。
【0046】
このXPCバンドの変化の時間経過を調べるために、WI38 VA13細胞を紫外線照射し、次いで細胞分画まで種々の時間インキュベートした。この実験では、紫外線照射後のデノボ(de novo)タンパク質合成を阻害するために0.1mMシクロヘキシミド存在下において細胞を培養した。0.1mMのシクロヘキシミドで細胞を処理後1時間以内にほとんど完全にトリチウム標識ロイシンの取り込みが阻害されることが確認されている。図1Bに示したように、移動度の遅いXPC分子種は照射5分後には早くも現れ、60分程度経過後にピークに達し、その後減少した。同様の細胞抽出液中で、HR23B、XPA、XPB又はDDB1(図1B)又はセントリン2のバンドのシフトは認められなかった。
【0047】
紫外線以外の種々のDNA損傷薬剤で処理された細胞のXPC応答についても調べた。X線や、しばしば紫外線類似薬剤と称される4−ニトロキノリン1−オキシド(4−NQO)などの薬剤で処理した時のXPCの分子量変動は、紫外線により誘発された場合と比べて検出できないか又は極めて弱いものであった。従って、上記で認められたXPCの修飾は紫外線照射に特異的なものであることが分かった。
【0048】
紫外線照射により観察されたXPCの移動度変化は見かけ上20〜100kDaの大きさの変化で不均一であった。このパターンは、バンドの変化にユビキチン化が関与している可能性を示唆した。この可能性を検証するために、紫外線誘導XPC修飾をユビキチン活性化酵素E1の温度感受性型を発現するマウスFM3Ats85変異体細胞(Finley et al., (1984) Cell 37, 43-55; Matsumoto et al., (1983) FEBS Lett. 151, 139-142)を用いて調べた。この細胞を33℃又は39.5℃で16時間培養し、図1Dに示した各線量で紫外線照射した後、同一の温度でさらに培養した。細胞抽出液をイムノブロットし、抗XPC抗体(CT)で検出した。同じ抽出液についてラミンB1及びモノユビキチン化ヒストンH2A(uH2A)についてもイムノブロットで解析した。39℃以上の非許容温度で培養すると、この細胞内では新規の(de novo)ユビキチン化は著しく減少する。これに一致して39.5℃で培養したts85細胞ではモノユビキチン化されたヒストンH2A(uH2A)の量が大きく減少する(図1D、レーン10〜12)が、許容温度(33℃)で維持した変異体細胞(レーン7〜9)又は両方の温度で培養した野生型親株のFM3A細胞(レーン1〜6)では減少しない。紫外線で誘起されたXPCバンドの移動は、39.5℃で培養したts85細胞では認められなかった。従って、紫外線で誘起されたXPCの修飾は、E1活性に依存している。
【0049】
XPCタンパク質のユビキチン化をさらに直接的に立証するために、FLAG−タグ付加XPCを発現するXPC欠損細胞株XP4PASVの安定な形質転換体を樹立した。このFLAG−XPCタンパク質は、紫外線照射したWI38 VA13細胞内の内因性XPCと同様な紫外線照射後の分子量変動を示した。さらに、(6−4)光産物のGG−NERは、この形質転換体において正常細胞レベルに回復しており、この細胞内で発現するFLAG−XPCが正常に機能することを確認した。ヘマグルチニン(HA)タグ付加ユビキチンをこの形質転換体内で一過性過剰発現させ、FLAG−XPCタンパク質を免疫沈降させた。沈殿したサンプルを抗HA抗体によりイムノブロッティング解析したところユビキチン化されたFLAG−XPCタンパク質が検出された。特に、抽出液を調製する前に紫外線照射した形質転換細胞では顕著であった(図1E、レーン8)。紫外線照射なしの細胞においても低レベルのユビキチン化が起こっていたが(レーン7)、これはHA−ユビキチンの過剰発現による非特異的なユビキチン化と思われる。これらの結果より、紫外線照射はXPCタンパク質のユビキチン化を誘起することが分かった。
【0050】
新規の(de novo)タンパク合成を阻害した条件下でも紫外線照射後のXPCタンパク質の全量は有意に減少しなかった(図1B)。図1Bにおいて正常な125kDaのXPCタンパク質のバンドの量をhHR23Bの量と比較して測定すると、紫外線照射によって一度減少するが、その後シフトしたバンドが消失するに伴って元に戻ることが分かった(図1C)。従って、XPCタンパク質のユビキチン化は可逆的であり、分解シグナルとはならないと思われる。
【0051】
[XPC修飾におけるUV−DDB要求性]
XPC修飾とNERプロセスとの関係を探索するために、XP及びCSの異なる遺伝的相補性群に属するヒト細胞株におけるXPCの紫外線誘導分子量変化について調べた。図2Aは、種々のXP及びCSの遺伝的相補性群由来の細胞を紫外線照射(10J/m)し、37℃で0.1mMシクロヘキシミド存在下にて種々の時間培養した。細胞抽出液の可溶化画分(3μgタンパク質)を抗XPC(FL)抗体を用いてイムノブロット解析した。図2Aに示したように、ほとんどの変異体細胞は紫外線照射に対して正常なXPCバンドの移動を示した。しかしながら、興味深いことに、2つの独立したXP−E群細胞株ではXPCバンドの移動が起こらなかった(図2A)。これらの両方の細胞は何れもDDB2遺伝子に変異を有し、UV−DDB活性を消失している(Nichols et al., (1996) J. Biol. Chem. 271, 24317-24320)。さらにXPC修飾におけるUV−DDBの関与を調べるために、チャイニーズハムスター細胞株を用いた。チャイニーズハムスター由来の多くの株化細胞及び初代リンパ系細胞はUV−DDB活性を欠損している(Hwang et al., (1998) Mol. Cell. Biol. 18, 4391-4399; 非特許文献23参照)。図2Bに示したように、2つの細胞株V79とCHO−K1は、XPCの紫外線誘起分子量変化を示さなかった。ヒトDDB2遺伝子を安定発現させるとV79細胞にUV−DDB活性が付与される(非特許文献23参照)。面白いことに、ヒトDDB2(タグなし、又はFLAG−タグ付き)をV79細胞で発現させると紫外線照射に際してもXPC修飾が回復した(図2C)。また、野生型ヒトDDB2の一過性発現はXP2ROSV細胞における紫外線誘起XPCバンドの移動を起こさせたが、XP−E群患者で同定された2種の変異体(K244E及びR273H)では起こらなかった。これらの結果は、UV−DDB活性が紫外線誘起XPC修飾に必須であることを示す。
【0052】
[UV−DDB複合体とXPC複合体との物理的結合]
XPCとUV−DDBとの間の何らかの機能的相互作用を示す上記知見は、これらのタンパク質複合体が物理的に相互作用するかどうかという強い疑問を呈した。そこで、FLAG−DDB2を発現するV79細胞に紫外線を照射し、37℃、1時間培養後、細胞抽出液を調製してイムノブロット解析を行った(図3A、レーン2〜4)。安定なV79形質転換体におけるFLAG−DDB2を可溶性細胞抽出液から免疫沈降させると、DDB1だけでなく内因性XPCも同時に共沈殿した(図3A)。これは、UV−DDBが生体内でXPCと相互作用することを示唆する。この相互作用は紫外線照射及び非照射の両方の細胞で起こるが、紫外線照射は沈殿したUV−DDB及びXPCの量を有意に減少させた。これは、おそらくUV−DDBが紫外線誘起損傷に強く結合し、抽出操作によって可溶化しなかったためと考えられる(Otrin et al., (1997) J. Cell. Sci. 110, 1159-1168)。
【0053】
XPCとUV−DDBとの間の直接的な相互作用を示すために、精製した組換えタンパク質を用いて結合実験を行った。FLAG−DDB1及びDDB2タンパク質をバキュロウイルスシステムを用いて昆虫細胞内で共発現させた。この系ではFLAG−DDB1がDDB2よりも大量に発現するのでFLAG−DDB1/DDB2複合体と遊離FLAG−DDB1を同一の感染細胞抽出液から分離して精製することができた(図3B)。精製したUV−DDB複合体又はFLAG−DDB1を抗FLAG抗体ビーズに結合させ、精製したXPC−HR23B−His複合体とインキュベートした。具体的には、抗FLAG抗体結合ビーズ(20μl)にあらかじめFLAG−DDB1(1.3μg)又はFLAG−DDB1/DDB2(1.8μg)を結合させ、XPC−HR23B−His(150ng)、XPC単独(103ng)、又はHR23B単独(47ng)とインキュベートした。非結合成分を洗浄後、ビーズに結合したタンパク質を図3Cに表示した抗体を用いてイムノブロット解析した。有意な量のXPC−HR23B−HisがUV−DDB複合体と共に沈殿したが、FLAG−DDB1単独に対する結合はバックグラウンドに近いレベルであった(図3Cレーン6とレーン4及び5を比較せよ)。XPCとHR23Bを別々にUV−DDBヘテロ2量体に添加すると、XPCのみが結合画分に見出された(レーン7と8)。これらのデータはXPCタンパク質とUV−DDBとの間の直接的な物理的結合を証明する。
【0054】
[UV−DDB−E3複合体によるXPCのインビトロでのユビキチン化]
UV−DDB−E3複合体がXPCのユビキチン化反応を担っているかどうか調べるために無細胞ユビキチン化アッセイを行った。4つのサブユニット(DDB1、DDB2、キュリン4A及びRoc1)を同時に昆虫細胞内で発現させ、ヘテロ4量体複合体を精製した(図4A参照)。図4Aは精製したUV−DDB−E3複合体をSDS−PAGE(4〜20%グラジエントゲル)で分離し、銀染色したものである。図4Bに示したタンパク質成分のセットを用いて無細胞ユビキチン化反応を行ったところ、E1、E2(UbcH5a)、ユビキチン及びATPの存在下においてXPC−HR23B−HisをUV−DDB−E3複合体とインキュベートしたとき、XPCの分子量変化が検出された(図4B)。この変化は、各タンパク質成分に依存していた(レーン2〜7参照)。正常なユビキチンの代わりにGSTタグ付ユビキチンを使用すると移動したXPCバンドのパターンが変化し(レーン9)、観察されたバンドの移動がユビキチンとの接合のためであることを強く示唆した。さらに、全てのリジン残基がアルギニンに置換された変異体ユビキチン(リジン欠損型と表示)を反応に使用したときは、バンドの移動は有意に減少し(レーン8)、レーン7で認められた遅い移動度の分子種がポリユビキチン鎖の生成の結果であることを示唆した。同じ反応において、XPC−HR23B−Hisの存在の有無にかかわらず、DDB2及びキュリン4Aもまた高度にユビキチン化されることが分かった(図4B、レーン2及び7)。
【0055】
このインビトロでのユビキチン化の特異性を調べるために、XPC−HR23B−His及びFLAG−XPAを共存させて反応を行った。XPC及びDDB2が高度にユビキチン化されるのに対し、同じ反応液中におけるFLAG−XPA(図4C)及びDDB1のバンドの移動はほとんど認められなかった。低い割合でHR23B−Hisが1又は2分子のユビキチンと結合すると思われる(図4Cのドットで示されたバンド参照)が、このバンドの移動はXPCやDDB2よりもはるかに少量であった。従って、インビトロでのユビキチン化システムは、紫外線照射細胞内で見られたのと同様な基質特異性(図1B)を有すると思われる。
【0056】
XPCとDDB2はインビトロでE3複合体によってユビキチン化されるので、紫外線照射後の2つのタンパク質の生細胞内での運命を比較した。このため、FLAG−DDB2を発現するV79形質転換体を使用した。この細胞を紫外線照射し、シクロヘキシミド存在下においてインキュベートしたところ、WI38 VA13細胞内で観察されたのと全く同様に、XPCは可逆的な修飾を受けた。一方、FLAG−DDB2のバンドは経時的に減少し、照射後4時間でほとんど完全に消失した。このFLAG−DDB2の消失は、細胞をプロテアソーム阻害剤であるMG132で同時に処理するとブロックされた(レーン7〜12)。従って、DDB2は紫外線照射後、ユビキチン/プロテアソームシステムによって分解されることが分かった。
【0057】
[XPC及びUV−DDBのユビキチン化によるDNA結合性変化]
NERにおけるユビキチン化の役割を解明するために、ユビキチン化されたXPC及びUV−DDBのDNA結合性を調べた。このため、単一の紫外線損傷部位(CPD又は(6−4)光産物)を含むか、又は対照として非損傷配列を含む合成オリゴヌクレオチドを相補鎖とアニールし、直列に連結し、そして常磁性ビーズに固定化した。これらのDNAビーズの1つの存在下において、無細胞ユビキチン化反応を行った。非結合画分を保存した後、ビーズを洗浄し、DNAによって保持されたタンパク質をイムノブロット解析した(図5A参照)。図5Aは、XPC−HR23B−His(8ng)を非損傷DNA(N)又はCPD(C)若しくは(6−4)光産物(6)を含む磁性ビーズと共にインキュベートした。UV−DDB−E3(20ng)及びユビキチン化反応に必要な他の因子も、表示に従って添加した。DNAに結合しなかったタンパク質(非結合)及びDNAに保持されたタンパク質(結合)をそれぞれイムノブロットにより表示された抗体を用いて解析した。
【0058】
XPC単独でDNAビーズとインキュベートした時は、投入したタンパク質の一部のみが結合画分に検出された(レーン1〜3)が、非損傷DNAと損傷DNAの間で結合量に顕著な差は認められなかった。XPCタンパク質は(6−4)光産物に特異的に結合することが知られているが、この特異的結合を検出するためには損傷DNAに対して過剰量のXPCタンパク質を添加し、かつ競合DNA(competitor DNA)を加えて非特異的結合を吸収する必要がある(非特許文献12)。UV−DDB−E3複合体の存在は、ユビキチン化が起こらないときはXPCのDNA結合性に影響を与えなかった(レーン4〜6)。同じ反応において、DDB1及びDDB2は共にほぼ定量的に(6−4)光産物ビーズに結合した(レーン6)が、非損傷DNAビーズには少し結合しただけである(レーン4)。(6−4)光産物に対するUV−DDBの結合の親和性及び特異性は何れもXPCのそれよりもはるかに大きいと思われる。CPDに対するUV−DDBの結合も認められたが、(6−4)光産物に対する結合に比べるとはるかに低かった。さらに、(6−4)光産物ビーズの存在下においても有意な量のキュリン4Aが非結合画分に残存した(レーン6)ことはUV−DDBコアとE3サブユニットとの相互作用の不安定性を示唆する。
【0059】
興味深いことに、ユビキチン化に必要な全ての因子が存在したときは、非結合画分に依然として有意な量のXPCが修飾されずに残存していた(レーン7〜9)にもかかわらず、ユビキチン化されたXPCのみがDNA結合画分に検出された。XPC及びキュリン4Aのバンドが、非損傷DNA又はCPDビーズを用いた時と比べて(6−4)光産物の存在下においてより高分子量領域に移動したことも注目すべき結果である(レーン9とレーン7、8を比較せよ)。従って、DNAの添加はE3活性に必須ではない(図4)が、(6−4)光産物の存在はUV−DDB依存性ユビキチン化を促進するように思われる。これらの反応において、DDB2は顕著にユビキチン化され、何れのDNAビーズとの結合画分にもDDB1又はDDB2は殆ど検出されなかった(レーン7〜9)。このことはUV−DDBがユビキチン化されるとDNA結合能をほとんど完全に失うことを意味する。対照的に、正常なユビキチンの代わりにメチル化ユビキチンが含まれると、DDB2は有意なバンドの移動を示すが、UV−DDBはなおDNA結合能及びUV損傷への特異性を保持していた(レーン10〜12)。ユビキチンのリジン残基の還元的メチル化はポリユビキチン鎖の伸長を阻止する(レーン7〜9のバンド移動パターンとレーン10〜12のそれを比較せよ)。これらのデータは、ある長さ以上のポリユビキチン鎖の形成がUV−DDBの損傷結合活性を抑止するが、ポリユビキチン化されたXPCはそのDNA結合能を維持することを示している。
【0060】
XPCのDNA結合に対するユビキチン化の効果を定量的に調べるために、XPC−HR23B−Hisの含量を(2.4、8及び24ngに)変化させて、ユビキチン化反応を行い、非損傷DNAビーズ(ND)又は(6−4)光産物ビーズ(6−4PP)との結合反応を行った(図5B参照)。すべてのXPC含量において、DNAビーズに保持されたXPCはユビキチン化によって約2倍に増加した。しかしながら、この効果は、(6−4)光産物やCPDビーズを用いた場合だけでなく非損傷DNAビーズを用いた場合にも認められた(図5Cの定量データ参照)。従って、ユビキチン化はXPCのDNAに対する損傷特異性よりも結合力を増大させると思われる。
【0061】
[無細胞NER切断におけるユビキチン化の役割]
最後に、無細胞NER切断反応に対するUV−DDB−E3複合体によるユビキチン化の影響を調べるため、XP−E群患者由来のヒトリンパ芽球腫細胞株GM01646から全細胞抽出液を調製した。単一の(6−4)光産物を含み、32Pで内部標識された環状二重鎖DNA基質を、まず種々の量(10、20及び40ng)のUV−DDB(FLAG−DDB1/DDB2ヘテロ2量体)と30℃で10分間プレインキュベーションした。この混合物を次にXP−E群細胞抽出液(100μgタンパク質)とインキュベートし、損傷部位を含む二重切断標識産物を変性PAGEによって分離及び検出した。図6Aに示したように、UV−DDBとのプレインキュベーションは被験条件下(レーン1〜4)細胞抽出液中の(6−4)光産物周辺の二重切り込みにほとんど影響を与えなかった。しかしながら、20μgのメチル化ユビキチンを添加すると、UV−DDBは(6−4)光産物の修復を用量依存的に阻害した(レーン9〜12、図6Bの定量データ参照)。この阻害作用は、同量の野生型ユビキチン存在下ではほとんど認められないが(レーン5〜8)、メチル化ユビキチンに代えてリジン欠損ユビキチンを用いたときは同様に阻害が見られた。定量的イムノブロット解析から、0.5μg以上の内因性非結合ユビキチンが反応に含まれる抽出液中に存在していないと推定された。従って、このような大量のリジン欠損又はメチル化ユビキチンの添加は、ポリユビキチン鎖の伸長を競争的に阻害するであろう。この結果は、UV−DDBが(6−4)光産物に結合したとき、比較的長いポリユビキチン鎖の生成が、NERによる損傷のその後の処理に重要であることを示唆する。(6−4)光産物の代わりにCPDを含むDNA基質を用いて同様の実験を行った。UV−DDBと共にCPD基質を前処理した場合は、かなり大量のUV−DDBを必要としたが、XP−E群細胞抽出液による二重切断反応について、弱いが検出可能な促進が起こった。
【0062】
NERにおけるユビキチン化の直接的な関与を調べるために、精製したタンパク質を用いた再構成NER反応系を構築した。6種類の精製されたNER必須因子(すなわち、XPC−HR23B−セントリン2、XPA、XPF−ERCC1、XPG、転写因子IIH[TFIIH]及び複製タンパク質A[RPA])を用いることにより、内部放射性標識(6−4)光産物の二重切り込み反応が有意なレベルで検出できた(図6C、レーン2)。UV−DDB−E3複合体の添加は、他のユビキチン化因子(E1、E2及びユビキチン)非存在下では用量依存的に二重切り込み反応を阻害する結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】各種細胞内においてXPCタンパク質が紫外線照射に応答してユビキチン化されることをイムノブロットにより解析した結果である。図A、B及びCの星印は、抗XPC抗体と交差反応する非特異的なバンドを示し、図A、D、Eの矢印は標準非修飾XPCタンパク質のバンドを示す。図Bの矢印は標準非修飾NERタンパク質を示す。図B、D及びEの括弧(])はXPCタンパク質の修飾されたタイプを示す。なお、抗XPC抗体は、全長タンパク質に対する抗体(FL)とC末端に対応する合成ペプチドに対する抗体(CT)の2種類を用いた。
【図2】各種細胞内において紫外線によるXPCタンパク質の修飾は、機能的なUV−DDB複合体の存在に依存していることをイムノブロットにより解析した結果である。星印は、抗XPC抗体と交差反応する非特異的なバンドを示し、矢印及び括弧は、それぞれ非修飾型及び修飾型のXPCタンパク質を示す。
【図3】XPCタンパク質がUV−DDB複合体と物理的に結合することを、表示したそれぞれの抗体を用いてイムノブロットにより解析した結果(A及びC)である。BはSDS−PAGEを銀染色したものである。
【図4】UV−DDB−E3複合体によるXPCタンパク質のユビキチン化を無細胞NER反応によって解析した結果である。Aは精製したUV−DDB−E3複合体をSDS−PAGEで分離し銀染色した結果を示し、B及びCは表示されたそれぞれの抗体を用いてイムノブロット解析した結果である。
【図5】XPC及びUV−DDBのユビキチン化によるDNA結合性変化損傷DNA結合アッセイにより解析した結果である。
【図6】無細胞NER切断反応に対するユビキチン化の影響をイムノブロットにより『解析した結果である。+noUb:ユビキチン無添加、+wtUb:野生型ユビキチン添加、+MeUb:メチル化ユビキチン添加
【図7】ヌクレオチド除去修復反応の初期段階において、損傷DNAの認識に紫外線誘起UV−DDB複合体依存性のXPCタンパク質のユビキチン化が関与していることを示すモデル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)候補化合物の存在下において、XPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる工程、及び
(b)前記XPCタンパク質がDDB2タンパク質と結合するか否かを検出する工程、
を含み、前記候補化合物がXPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を阻害するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復阻害剤と推定することを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項2】
前記XPCタンパク質がHR23Bと複合体を形成し、及び/又は前記DDB2タンパク質がDDB1タンパク質と複合体を形成した形態にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)ユビキチン化反応条件下において、XPC複合体と、UV−DDB複合体と、候補化合物とを接触させる工程、及び
(b)前記複合体中のXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質のユビキチン化反応を検出する工程、
を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質、及び/又は前記DDB2タンパク質のユビキチン化を抑制するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復阻害剤と推定することを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項4】
前記XPC複合体は、少なくともXPCタンパク質と、HR23A若しくはHR23B、又はこれらの機能的なドメインを含み、任意にセントリン2を含んでもよい請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヌクレオチド除去修復は、紫外線照射により生じたDNA損傷を修復する機構である請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記UV−DDB複合体は、DDB1及びDDB2、又はそれらの機能的なドメインからなる請求項3〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ユビキチン付加反応条件は、少なくともE1、E2、E3、及びユビキチン又はその類似物を含む請求項3〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記E3は、キュリン4A、及びRoc1、又はそれらの機能的なドメインを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の方法によりスクリーニングされた阻害剤と、薬理学的に許容される塩とを含むことを特徴とする抗腫瘍剤との併用薬。
【請求項10】
前記抗腫瘍剤が白金配位化合物である請求項9に記載の併用薬。
【請求項11】
哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を促進する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)候補化合物の存在下において、XPCタンパク質と、DDB2タンパク質とを接触させる工程、及び
(b)前記XPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合速度を測定する工程、
を含み、前記候補化合物がXPCタンパク質とDDB2タンパク質との結合を促進するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項12】
前記XPCタンパク質がHR23Bと複合体を形成し、及び/又は前記DDB2タンパク質がDDB1タンパク質と複合体を形成した形態にある請求項11に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物細胞においてヌクレオチド除去修復を促進する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)ユビキチン化反応条件下において、XPC複合体と、UV−DDB複合体と、候補化合物とを接触させる工程、及び
(b)前記複合体中のXPCタンパク質、及び/又はDDB2タンパク質のユビキチン化反応を検出する工程、
を含み、前記候補化合物が前記XPCタンパク質、及び/又は前記DDB2タンパク質のユビキチン化を促進するとき、該候補化合物をヌクレオチド除去修復促進剤と推定することを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項14】
前記XPC複合体は、少なくともXPCタンパク質と、HR23A若しくはHR23B、又はそれらの機能的なドメインを含み、任意にセントリン2を含んでもよい請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ヌクレオチド除去修復は、紫外線照射により生じたDNA損傷を修復する機構である請求項11〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記UV−DDB複合体は、DDB1及びDDB2、又はそれらの機能的なドメインからなる請求項11〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ユビキチン付加反応条件は、少なくともE1、E2、E3、及びユビキチン又はその類似物を含む請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記E3は、キュリン4A、及びRoc1、又はそれらの機能的なドメインを含む請求17に記載の方法。
【請求項19】
請求項11〜18の何れか一項に記載の方法によりスクリーニングされたヌクレオチド除去修復促進剤を含むことを特徴とする紫外線防護用組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物を含むことを特徴とする化粧料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−296256(P2006−296256A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120878(P2005−120878)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】