説明

ネットワークマルチモードオペレーションのための機構

【課題】ワイヤレスネットワークにおいて信頼性の高いネットワーク通信を確実にするためのマルチモードオペレーション機構を提供する。
【解決手段】マルチモードオペレーションをサポートするために、役割変更機能を開始するための条件と、役割変更機能を初期設定するためのスキームと、役割変更機能に使用されるメッセージとから成る。役割変更機能が、移動局を中継局として動作させることにより可能となる。また、役割変更機能が、移動局を基地局として動作させるさせることにより可能となる。移動局が中継局機能をサポートする場合、集中スキームと分散スキームの二つのスキームがある。また、移動局が基地局機能をサポートする場合、予防モードと反応モードの二つのオペレーションモードがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、信頼性の高いネットワーク通信を確実にするためのマルチモードオペレーション機構を提供するワイヤレスネットワークシステムに関する。コンピュータプログラムもまた本発明に含まれる。本発明は、役割変更をサポートするワイヤレスネットワークに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
中継強化ネットワークのためのマルチモード中継を[1]に定義する。定義された中継機能は、帯域内リンクに加え、第二帯域外ワイヤレスリンクあるいはインターネットリンクを介して無線基地局と中継局間の接続実現を規定するものである。なお帯域内リンクを使用して第二リンクの作動/作動停止がコントロールされる。
【0003】
マルチモード中継の別の用途は、電力消費の削減を助けることである。端末の中継機能はソフトウェアにより定義される無線手段により可能になる。端末の中継機能の動作は送電電力あるいはネットワーク容量などの測定基準により決定される。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】 [1]国際特許公報WO/2010/060839
【0005】
【非特許文献】
【非特許文献】 [1]R.Madan,N.Mehta,A.Molisch,and J.Zhang,“Power consumption optimization in multi−mode mobile relay,”(マルチモード移動中継における電力消費の最適化)in European Wireless Technology Conference2009.
【発明の概要】
【0006】
本発明は一般的に、マルチモードオペレーションをサポートするための、ネットワークノードを持つワイヤレスネットワークシステムに関する。ネットワークインフラノードは誤動作あるいは災害のために使用できなくなるおそれがある。ネットワーク接続の信頼性を確実に高めるためには、移動局を中継局あるいは基地局の代わりに、また基地局を中継局の代わりに使用するという代替的役割をサポートしなければならない。これらのマルチモード機能および機構をサポートし、マルチモードオペレーションを可能にする能力について本発明で説明する。二つのスキーム、すなわち集中スキームと分散スキームを示し、移動局のための中継モードを初期設定するための条件および手順を説明する。移動局が提供する代替的BS機能について、予防モードと反応モードを含む二つのオペレーションモードを本発明において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、BSの中継機能を示す。
【図2】図2は、中継モードで動作する移動局のための集中スキームを示す。
【図3】図3は、集中スキームにおける中継オペレーションの初期設定のためのメッセージを示す。
【図4】図4は、中継モードで動作する移動局のための分散スキームを示す。
【図5】図5は、移動局が基地局モードオペレーションを開始するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.移動局のための中継機能の初期設定
【0009】
移動局(MS)が中継機能を開始するための方法について、二つのスキームを規定する。
【0010】
1)集中スキーム
【0011】
集中スキームの典型的使用例を図2に示す。集中スキームでは、MSは基地局(BS)からの割り当てに基づき中継モードをオンする。起点ノードAは、宛先ノードBへの中継サポートのため、リクエストメッセージREQ_RSをBSへ出す。BSは、セル内のすべての局のリストを維持し、中継機能サポートのための候補のMSを決定しなければならない。例えば、図2に示すように、ノードCが中継モードで動作するMS候補として選択され、BSは、ノードCが中継モードで動作し、メッセージをノードAからノードBへ中継するよう要請するENQ_RSメッセージをノードCへ送る。必要なメッセージを図3に定義する。ノードCからのCFM_RSメッセージがBSへ返され、リクエストが受け入れられたことを確認する。BSは、中継オペレーションの初期設定確認を受けて、CFM_RSメッセージとCFM_RS.IDパラメータを送る。
【0012】
MSが中継機能を果たすことができない場合、NK_RSメッセージがBSへ返される。BSは中継機能を果たせる別のMS候補を探す。
【0013】
起点ノードAはRS_STPメッセージをMSCへ送り、データ完了を知らせる。MSCは、RS_STPメッセージを受け取り後、中継モードをオフにする。
【0014】
2)分散スキーム
【0015】
分散スキームの使用例を図4に示す。BSが使用できない場合、ノードA(MS)は中継サポートを求めるENQ_RSメッセージを送る。MSCが対応可能であるか、またMSCが維持しているルート表の中の宛先ノードにしたがって、MSCはCFM_RSメッセージによりノードAに返事し、中継モードをオンする。データ送信完了時、起点ノードAからRS_STPメッセージを送信し、MSCは中継モードを終了する。
【0016】
以下のメッセージが中継モードオペレーションのサポートに使用される。
【0017】
ENQ_RS・・中継サポートのリクエスト、起点ノードAが出す。
【0018】
CFM_RS・・中継モードのリクエストを確認し、中継モードをオンする。
【0019】
CFM_RS.ID・・CFM_RSメッセージが持つパラメータで、中継モード引き受けに合意するノードのIDを示す。
【0020】
RS_STP・・起点モードAが出し、送信完了を示し、MSはこのメッセージ受信後中継モードをオフする。
【0021】
2.基地局モードで動作する移動局
【0022】
移動局が基地局(BS)機能をサポートする能力を持つ場合。移動局がBSモードを開始するのは、基地局が使用できない場合に限られる。
【0023】
1)BS故障の確認
【0024】
基地局の故障は以下の手順で確認される。説明を簡単にするため、MS(1)を基地局のワンホップネイバー(隣接局)として使用する。
【0025】
図5に示すように、BSが使用可能であるか確認する(ステップA2)。BSの役割は、バックボーンに接続し、定期的に通信ネットワーク情報によりネットワークを維持することである。MS(1)はBSの潜在候補である。MS(1)は、ある一定時間BSから通信メッセージを受け取らなくなるとREQ_BSを出す。REQ_BS.番号はランダムに発生し(ステップA4)、REQ_BSメッセージとともに送る。MS(1)がBSを検出できない場合、REQ_BSを送信し、また別のMS(1)からREQ_BSを受信する。受信したREQ_BS.番号とローカルREQ_BS.番号を比較し(ステップA6)、REQ_BS.番号の大きな方のMS(1)のID番号を使ってCFM_BS.IDを送信する(ステップA8−A9)。各MS(1)において、初期値1のローカルCFM_BS.カウンタは加算されていく。MS(1)がCFM_BS.IDを新たなMS(1)から受信すれば、CFM_BS.カウンタの値は増す。CFM_BS.カウンタがセル内のMS(1)の総数に等しくなるとき、MS(1)はBSとして動作を開始する。
【0026】
MS(1)あるいはMSのいずれかが、ENQ_BSあるいはREQ_BS受信時、本来のBSとの接続をまだ維持している場合、NK_BSメッセージがMSへ送信され、BSが使用可能であることを知らせる。
【0027】
2)役割変更オペレーションモード
【0028】
移動局がその役割を変更し、基地局として動作するための二つのモードを定義する。すなわち、予防モードと反応モードである。
【0029】
(1)予防モードオペレーション
【0030】
予防モードでは、基地局は、ワンホップ移動局ネイバーの候補リストを持っている必要がある。候補は、基地局で測定された信号パワーにしたがってランク付けされる。優先第一位は、基地局で受信されるパワーが最大の移動局である。基地局はこのリストを定期的に更新し、定期的に送信する。基地局が故障すると第一候補の移動局がBSモードの動作を開始する。
【0031】
(2)反応モードオペレーション
【0032】
反応モードオペレーションでは、以下のメッセージを定義している。
【0033】
ENG_BS:BSのワンホップネイバーでないMSが送信し、BSの故障を検出する。
【0034】
REQ_BS:BSモードの動作のリクエスト。BS故障時BSのワンホップネイバーが送る。
【0035】
REQ_BS.番号:BS候補選択のためのランダム発生番号。
【0036】
CFM_BS:BSモードの動作リクエストの承認。REQ_BSを受信したMSが送る。MSはBSの故障を検出している。
【0037】
CFM_BS.ID:BSに代わる望ましいMS(1)のID番号を示す。
【0038】
NK_BS:BSに変更するというMS(1)のリクエストを拒否する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスネットワークシステムで実施する方法において、役割変更機能を開始するための条件と;前記役割変更機能を初期設定するためのスキームと;前記役割変更機能に使用されるメッセージとから成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記役割変更機能が、移動局を中継局として動作させることにより可能となることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記役割変更機能が、移動局を基地局として動作させることにより可能となることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スキームが基地局によりコントロールされる集中スキームであり、(a)リクエストをBSへ送信することと;(b)BSにより許可を出すことと;(c)マルチモードMSからBSへのリクエストを確認することと;(d)BSからリクエストを初期設定するMSへのマルチモードオペレーションを確認することとから成ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記スキームが基地局の関与のない分散スキームであり、(a)ルート表を定期的に獲得することと;(b)中継モードで動作させる対象MSを決定することと;(c)対象のマルチモードMSに直接リクエストを発生、送信することと;(d)マルチモードMSから確認することとから成ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
方法が予防モードを使用し、BSとして動作させるMSの選択が、(a)ワンホップネイバーのルート表を維持することと;(b)ワンホップネイバーノードについて使用可能レシーバパワーを測定することと;(c)前記測定したパワーに基づき、BSモードで動作する候補を確認することとから成ることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
反応モードが使用され、BSとして動作させるMSの選択が、(a)BSの使用可能性を確認することと;(b)BSのワンホップネイバーについてポーリングを実施することと;(c)ランダムポール番号に基づき候補を確認することとから成ることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)がBSの故障を確認することを含み、また(a)ある一定時間BS接続が失われた後、各BSワンホップネイバーがBS問い合わせメッセージを出すことと;(b)BSあるいはいずれかのBSワンホップネイバーから何らかのBS情報を受け取っている場合、BS問い合わせをキャンセルすることと;(c)カウンタの値がBSワンホップネイバーの総数に達するとき、BSの故障を確認することとから成ることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
移動局の基地局モードを開始するためのプロセスをコントロールするためのコンピュータプログラムにおいて、基地局の存在を確認することから成ることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
基地局が検出不能であり、(a)基地局候補についてランダムなREQ_BS.番号を発生することと;(b)ローカルREQ_BS.番号と受信したREQ_BS.番号を比較することと;(c)大きなREQ_BS.番号を持つ候補のカウンタの値を増すことと;(d)基地局候補を確認することとから成ることを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−217113(P2012−217113A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−92456(P2011−92456)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】