説明

ノズルの洗浄方法

【課題】ノズルを塗装装置から外すことなく、しかも少ない洗浄液で容易に洗浄することができるノズルの洗浄方法を提供する。
【解決手段】予め洗浄液が溜められているディップ槽Pにスリットノズル8の先端部を浸漬し、次に、バルブを開、バルブ13を閉とした状態で再びポンプ23を駆動する。すると、ポンプ23の駆動でスリットノズル8は吐出口から洗浄液を吸い上げ、スリットノズル8内を洗浄し、排出ライン20を介し排液タンクなどに排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板や半導体ウェーハなどの被処理物の表面に塗布液を塗布するノズルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板や半導体ウェーハ表面に、レジスト液などの塗布液を塗布する塗布装置おいて、塗布液の種類を替えるときや、長時間にわたって装置を停止するときには、配管、フィルタ、バルブ、ポンプ及びノズルを含む経路内部に残っている塗布液を排出して内部を洗浄する必要がある。このうち、ノズルについては、その汚れは塗膜の特性に多大な影響を与えるため、頻繁に洗浄を行う必要がある。
【0003】
ノズルを洗浄するために、従来はノズルを塗布装置から数十本のネジを緩めて取外した後に洗浄し、再度、正確に組み立てて取り付けるという作業を行っている。しかし、被塗布物である基板の大型化に伴い塗布ヘッド自体も数10kgの大型物となり、洗浄作業が重労働となっている。
【0004】
上記を改善するため、塗布ヘッドを塗装装置に取り付けたままで洗浄することが考えられている。例えば、特許文献1には、塗布ノズル(スリットノズル)と、この塗布ノズルへの塗布液供給配管と、塗布ノズルからの塗布液戻し配管とを備えた塗装装置を洗浄する方法として、前記塗布液供給配管にフィルタ、バルブ及びポンプを、また、塗布液戻し配管にはバルブを設けておき、先ず配管、フィルタ、バルブ、ポンプ及び塗布ノズルを含む経路内の塗布液を排出した後、低揮発性の洗浄液で前記経路内を洗浄し、この後、高揮発性の洗浄液で前記経路内を洗浄する内容が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スリットノズルから塗布液を吐出させつつ塗布を行う形式の塗布ヘッドの内部を洗浄するに際して、該塗布ヘッドにつながる塗布液供給管から塗布ヘッド内へ洗浄液を供給すると共に、この塗布液供給管を通過する洗浄液内に不活性ガスを吹き込み、これら洗浄液と不活性ガスとの混合液をスリットノズルから排出させることによって塗布ヘッド内部を洗浄する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−66487号公報
【特許文献2】特開平7−132267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の洗浄方法では、塗布液配管(供給管)や塗布液供給用ポンプ内も同時に洗浄することを目的としているため、洗浄液使用量が多くなりスリットノズルを頻繁に洗浄するには適していない
【0008】
また、特許文献2の洗浄方法では、塗布液供給管から洗浄液を供給するため、塗布液供給管内の塗布液を空にする必要があり、塗布を再開するためのアイドル・タイムが長くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、
本発明に係るノズルの洗浄方法は、ノズルには塗布液の供給ラインと塗布液の排出ラインが接続され、前記供給ラインに設けたバルブを閉とし、前記排出ラインに設けたバルブを開とした状態で、ノズル先端を洗浄槽に浸漬し、前記排出ラインに設けたポンプを駆動して洗浄槽内の洗浄液を吸引し、洗浄液でノズル内を洗浄する。
【0010】
更に、本発明に係るノズルの他の洗浄方法は、ノズルには塗布液の供給ラインと塗布液の排出ラインが接続され、前記供給ラインに設けたバルブを閉とし、前記排出ラインに設けたバルブを開とした状態で、ノズル先端を洗浄槽に浸漬し、前記排出ラインに設けたポンプを駆動して洗浄槽内の洗浄液を吸引し、洗浄液でノズル内を洗浄する。更にこの後ノズルを洗浄槽から引き上げるか、洗浄槽内の洗浄液を抜いて、エアを吸引することで、ノズル内を乾燥せしめることも可能である。
【0011】
上記の各洗浄方法において、ノズル内に塗布液が残っている場合には、ノズル先端を洗浄槽に浸漬する前に、ノズル内に残っている塗布液を排出ラインを介して排出することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布液の供給管および送液ポンプ内に満たされた塗布液を洗い流すことがないため、迅速に塗装作業を再開することができる。
また、洗浄液による洗浄後に空気を吸引することで、ノズル内を効果的に乾燥せしめることができる。
更に、スリットノズル内の塗布液を排出した後に洗浄を行えば、より効率的な洗浄を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る塗装装置の一例を示す側面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3(a)はノズルが洗浄液を吸引している状態を示す図、(b)はノズルが洗浄液を吸引している状態を示す図である。
【0014】
塗装装置(コーター)Cはベース1の上面にテーブル2を設け、テーブル2上に被処理基板Wを載置している。またベース1の上面でテーブル2から離れた箇所に洗浄液を満たしたディップ槽Pを配置し、更に、ベース1の上面には左右方向に伸びるレール3、3を平行に2本設け、このレール3、3に沿って移動部材4を移動可能に配置している。
【0015】
また移動部材4には支柱5を立設し、この支柱5に上下方向のガイドレール6を設け、前後のガイドレール6に門型をなす昇降フレーム7を係合し、昇降フレーム7の下面にはスリット状の吐出口を備えたスリットノズル8を取り付けている。
【0016】
前記スリットノズル8には、チューブ或いは配管からなる塗布液の供給ライン10と塗布液の排出ライン20が接続され、供給ライン10には送液ポンプ11、バルブ12、13が設けられ、排出ライン20にはバルブ21、トラップタンク22、排出ポンプ23が設けられ、排出ライン20の後端は廃液タンクにつながっている。
【0017】
また、トラップタンク22と前記供給ライン10の送液ポンプ11よりも上流側箇所との間にはバイパスライン30が設けられ、このバイパスライン30にもバルブ31を設けている。
【0018】
以上において、被処理基板Wの表面に塗布液を塗布するには、バルブ31を閉とし、バルブ12,13、21を開として、移動部材4をレール3から浮上せしめた状態でレール3に沿って移動させつつ、送液ポンプ11を駆動する。これにより供給ライン10を介して塗布液がスリットノズル8内に供給され、吐出口から被処理基板Wの表面に一定の幅で塗布される。
【0019】
このとき、スリットノズル8内に供給された塗布液のうち、吐出口から吐出されなかった塗布液は、排出ライン20を介しトラップタンク22に送られ、ポンプ23を駆動することで排液タンクなどに排出される。
【0020】
排出ライン20はスリットノズル内の気泡を抜くときに使用する。バルブ13を開いた状態でポンプ11を駆動すると供給ライン10を介してスリットノズル8へ塗布液を供給する事が出来るが、その時同時にバルブ21を開くと、スリットノズル8内に溜まった気泡が若干の塗布液と共に排出ライン20を通りトラップタンク22に送られ、スリットノズル8内を塗布液で完全に満す事が出来る。
トラップタンク22内へ排出された塗布液は、その量が一定量に達したらポンプ23を駆動することで、廃液タンクに排出される。
【0021】
また、バルブ12、バルブ31を開としバルブ13を閉とした場合には、バイパスライン30を介してポンプ11内の余分な塗布液が排出される。
【0022】
次に、スリットノズル8を洗浄する場合について説明する。先ず、バルブ12、13、31を閉としバルブ21を開としてポンプ23を駆動してスリットノズル8内に残っている塗布液を排出ライン20を介して排出する。
【0023】
そして、スリットノズル8の軌道の延長線上に配置されたディップ槽Pにスリットノズル8を移動させる。ディップ槽Pには予め洗浄液が溜められている。このディップ槽Pにスリットノズル8の先端部を浸漬し、次に、バルブ21を開、バルブ12,13,31を閉とした状態で再びポンプ23を駆動する。
【0024】
すると、図3(a)に示すように、ポンプ23の駆動でスリットノズル8は吐出口から洗浄液を吸い上げ、スリットノズル8内を洗浄し、排出ライン20を介し排液タンクなどに排出される。
【0025】
上記洗浄でスリットノズル8内には洗浄液が残っており、この状態で直ちに塗布を開始すると塗布液が希釈されるなどの問題が生じる。そこで、図3(b)に示すように、スリットノズル8をディップ槽Pから引き上げ、この状態でポンプ23を駆動するなどして吐出口からエアを吸引することで、スリットノズル8内を乾燥せしめる。
【0026】
スリットノズル8内を乾燥させる手段としては、スリットノズル8をディップ槽Pから引き上げる代わりに、ディップ槽P内の洗浄液を抜いて前記同様、ポンプ23を駆動して吐出口からエアを吸引してもよい。
【0027】
また、当分装置を使用しない時などにはバルブ12を閉じ、バルブ11,21,31を開とした状態で、ポンプ11を逆転、ポンプ23を正転駆動することで、供給ライン10、排出ライン20及びバイパスライン30内を洗浄液で置換してもよい。また、上記に加えて、更にポンプ23を駆動して吐出口からエアを吸引して乾燥させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のノズルの洗浄方法は、ガラス基板や半導体ウェーハの表面に所定幅でフォトレジスト液、SOG液或いはカラーフィルター用の塗布液を塗布するスリットノズルに適用でき、特にメンテナンスが容易であるため大型基板用として有用である
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る塗装装置の一例を示す側面図
【図2】図1のA−A線に沿った断面図
【図3】(a)はノズルが洗浄液を吸引している状態を示す図、(b)はノズルが洗浄液を吸引している状態を示す図
【0030】
1…ベース、2…テーブル、3…レール、4…移動部材、5…支柱、6…ガイドレール、7…昇降フレーム、8…スリットノズル、10…供給ライン、11…送液ポンプ、12,13,21,31…バルブ、20…排出ライン、22…トラップタンク、23…排出ポンプ、30…バイパスライン、C…塗装装置、W…被処理基板、P…ディップ槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液の供給ラインと塗布液の排出ラインが接続されたノズルの洗浄方法であって、前記供給ラインに設けたバルブを閉とし、前記排出ラインに設けたバルブを開とした状態で、ノズル先端を洗浄槽に浸漬し、前記排出ラインに設けたポンプを駆動して洗浄槽内の洗浄液を吸引し、洗浄液でノズル内を洗浄するようにしたことを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項2】
塗布液の供給ラインと塗布液の排出ラインが接続されたノズルの洗浄方法であって、前記供給ラインに設けたバルブを閉とし、前記排出ラインに設けたバルブを開とした状態で、ノズル先端を洗浄槽に浸漬し、前記排出ラインに設けたポンプを駆動して洗浄槽内の洗浄液を吸引し、洗浄液でノズル内を洗浄し、更にこの後ノズルを洗浄槽から引き上げ、この状態でエアを吸引することで、ノズル内を乾燥せしめることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項3】
塗布液の供給ラインと塗布液の排出ラインが接続されたノズルの洗浄方法であって、前記供給ラインに設けたバルブを閉とし、前記排出ラインに設けたバルブを開とした状態で、ノズル先端を洗浄槽に浸漬し、前記排出ラインに設けたポンプを駆動して洗浄槽内の洗浄液を吸引し、洗浄液でノズル内を洗浄し、更にこの後洗浄槽の洗浄液を排出し、この状態でエアを吸引することで、ノズル内を乾燥せしめることを特徴とするノズルの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のノズルの洗浄方法において、前記ノズル先端を洗浄槽に浸漬する前に、ノズル内に残っている塗布液を排出ラインを介して排出することを特徴とするノズルの洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−149273(P2008−149273A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340774(P2006−340774)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】