説明

ノズル噴出口成形

第1の表面、第1の表面と表裏をなす第2の表面及び、半導体材料体を貫通して形成された、第1と第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体を有し、第2の表面のノズル噴出口を通して液体を射出するようにノズルが構成され、噴出口が丸められたコーナーで連結された直辺を有する、ノズル層が説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は液体射出デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの液体射出デバイスにおいて、液滴が1つ以上のノズルから媒体上に射出される。ノズルは液体ポンピングチャンバを含む液路に液体流通可能な態様で連結される。液体ポンピングチャンバは、液滴の射出をおこさせる、アクチュエータによって作動され得る。媒体は液体射出デバイスに対して移動させることができる。特定のノズルからの液滴の射出は媒体上の所望の場所に液滴が着くように媒体の移動にタイミングが合わせられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような液滴射出デバイスにおいては通常、媒体上に一様な液滴被着を与えるために、寸法及び速度が一様な液滴を同じ方向に射出することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、第1の表面、第1の表面と表裏をなす第2に表面、及び材料体を貫通して形成された、第1の表面と第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体を含むノズル層が説明され、ノズルは第2の表面上のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成され、噴出口は丸められたコーナーで連結された直辺を有する。
【0005】
別の態様において、丸められたコーナーで直辺が連結されたノズル噴出口を有するように半導体材料体を成形する工程を含む、ノズル層を作製するための方法が説明される。
【0006】
別の態様において、第1の表面、第1の表面と表裏をなす第2に表面、及び材料体を貫通して形成された、第1の表面と第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体を含むノズル層が説明され、ノズルは第2の表面上のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成され、噴出口は複数の丸められたエッジを有する。
【0007】
別の態様において、エッジが丸められたノズル噴出口を有するように半導体材料体にノズルを成形する工程を含む、ノズル層を作製するための方法が説明される。
【0008】
別の態様において、第1の表面、第1の表面と表裏をなす第2に表面、及び材料体を貫通して形成された、第1の表面と第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料を含むノズル層が説明され、ノズルはノズル層の外表面上のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成され、保護層がノズル噴出口の近傍の、ただしノズル内部ではない、ノズル層の外表面上に施され、保護層は約70°以上の接触角を有する。
【0009】
実施形態は以下の特徴の内の1つ以上を有することができる。ノズル噴出口は実質的に正方形または多角形とすることができる。ノズル噴出口の丸められたコーナーは約1μm以上の曲率半径を有することができる。ノズル層は第2の表面上で噴出口を囲み、少なくともある程度はノズル内部に入る、保護層を有することができる。保護層は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、ダイアモンド様炭素、金属、金属ドープ酸化物及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことができる。保護層は、無機材料、非金属材料または導電性材料を含むことができる。導電性材料は接地することができる。保護層は丸められたコーナーの曲率半径を縮小することができる。ノズルは第1の表面と第2の表面を連結する直壁を有することができる。噴出口は丸められたエッジを有することができ、丸められたエッジは約1μm以上の曲率半径を有することができる。ノズルは第1の表面と第2の表面を連結するテーパ壁を有することができる。保護層はノズル噴出口が丸められたエッジを有するように成形することができる。ノズルの成形工程は第2の表面上の複数のコーナーに、また少なくともある程度はノズルの内部に、無機酸化物層を成長させる工程、及び無機酸化物層を除去する工程を含むことができる。酸化物層は約1μmから約10μmの間の厚さを有することができる。無機酸化物層を除去する工程は、フッ酸を用いて酸化シリコンをウエットエッチングする工程を含むことができる。ノズルはKOHエッチングを用いて半導体材料体に形成することができる。半導体材料体はシリコンを含むことができる。ノズル噴出口の丸められたコーナーは約1μm以上の曲率半径を有することができる。方法は、コーナーが丸められた噴出口を囲み、少なくともある程度はノズル内部に入る、保護層を施す工程を含むことができる。保護層は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、ダイアモンド様炭素、金属、金属ドープ酸化物及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことができる。保護層が導電層を含む場合、方法は導電層を接地する工程を含むことができる。方法はノズル層を液流路体に固着させる工程を含むことができる。ノズル噴出口の丸められたエッジは約0.5μm以上の曲率半径を有することができる。ノズル噴出口は丸められたコーナーで連結された直辺を有することができる。エッジが丸められたノズル噴出口を有するノズルを成形する工程は噴出口の複数の辺に、また少なくともある程度はノズルの内部に、無機酸化物層を成長させる工程、及び無機酸化物層を除去する工程を含むことができる。方法はエッジが丸められた噴出口を囲み、少なくともある程度はノズル内部に入る、保護層を施す工程を含むことができる。方法は丸められたコーナーで連結された直辺を有するように成形することもできる。保護層は金を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、デバイスは以下の利点の内の1つも有していないか、1つ以上を有ることができる。丸められたエッジ及び/または丸められたコーナーを有するようにノズル噴出口を成形することにより、エッジが鋭い噴出口にともなう問題を軽減することができ、ノズルを詰まりにくくすることができ、ジェット流の直進性を向上させることができ、ノズルの耐久性を高めることができ、液滴の一様性を高めることができる。
【0011】
いかなる特定の理論にも拘泥せずに、ノズルの鋭いエッジは刃先のような作用をして保守用具(例えばワイパー)の一部をそぎ落とし、この屑がワイパーの拭き取り作業によってノズルに押し込まれ、ノズルを詰まらせ得る。丸められたエッジを有するようにノズル噴出口を成形すれば、ノズルが屑をつくって取り込む傾向を弱めることができる。
【0012】
いかなる特定の理論にも拘泥せずに、実質的に正方形のノズル噴出口は、あるいは鋭いかまたは尖ったコーナーを有するいかなる噴出口も、コーナーにおける液体の高表面張力のため、液滴を直進で射出することは困難であり得る。鋭いコーナーにおける高表面張力は液滴をコーナーに向けて引張り、ある角度をなして液滴を射出させる。丸められたコーナーを有するように噴出口を成形することで、コーナーに向けて液滴を引っ張る傾向が弱められ、ジェットの直進性が向上する、さらに、液体射出中、液滴が跳ねかえり、ノズルプレートの外表面上に溜まると、その液体が以降に射出される液滴を妨害し得る。例えば、表面上の液体はノズル噴出口近傍に凝集することができ、液滴が射出されるときに、ノズル表面上の液滴が射出された液滴を一方の側に引張り、液滴の直進性に影響を与え、印刷媒体上の液滴布置エラーを生じさせる。エッジが鋭ければ表面上に凝集した液体をノズル内部に戻し入れることは困難であるが、エッジ及びコーナーが丸められていると、いかなる特定の理論にも拘泥せずに、液体はより容易にノズル内に戻ることができ、よって次に射出される液滴の直進性に影響することはない。
【0013】
いかなる特定の理論にも拘泥せずに、半導体材料で形成されたノズルの鋭いかまたは尖ったエッジは脆弱で、損傷を受け易く、損傷を受けると、ノズル噴出口が不規則な形状になり、液滴を直進ではなく、ある角度をなして射出することになり得る。さらに、ノズル噴出口への損傷は噴出口の諸元(例えば幅または直径)を大きくし、したがって射出される液滴の液体体積を増大させ得る。丸められたエッジ及びコーナーを有するように噴出口を成形することで、ノズルの耐久性を向上させことができる。
【0014】
対形成は、直進ではなく、ある角度をなして液滴を射出するジェットによって生じる液滴布置エラーを表すために用いられる術語である。例えば、ジェットがある角度をなして液滴を射出すると、この液滴は所望の位置よりも隣の液滴の近くに着地し得る。2つの液滴は合体することができ、合体した液滴の表面張力は、液滴が完全に拡がることを妨げて、印刷された媒体上に無地のスペースを残し得る。例えば丸められた形態を有するようにノズルを成形することでジェットの直進性を向上させることにより、対形成を防止することができる。
【0015】
ノズル噴出口の周りにも、ある程度ノズル内部にも、無機非金属材料層または金属材料層を施すことによって、ノズル噴出口を損傷に対して強化することができ、及び/またはノズル表面に化学的耐性をもたせることができる。ノズル層の下層材料より耐久性が高い1つ以上のそのような層を施すことにより、及びエッジ及びコーナーにおける曲率半径を大きくすることにより、ノズルを強化することができる。金属層または金属ドープ酸化物層はノズル表面層の電場集中を弱めることができ、及び/またはプリントヘッドの電気化学的適合性を向上させることができる。エッジ及び/またはコーナーが丸められているかまたは丸められていないノズル噴出口に、1つ以上の層を施すことができる。
【0016】
1つ以上の実施形態の詳細が添付図面に示され、以下の説明で述べられる。その他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、また添付される特許請求の範囲から、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は液滴射出のための装置の側断面図である。
【図2A】図2Aはテーパ壁をもつノズルを有するノズル層を備える装置の側断面図である。
【図2B】図2Bはノズル層に形成されたノズル噴出口の底面図である。
【図2C】図2Cは直壁をもつノズルの側断面図である。
【図3】図3は損傷を受けたノズル噴出口の底面像を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】図4はノズル層作製方法のフローチャートである。
【図5A】図5Aは直壁をもつノズル層の側断面図である。
【図5B】図5Bはノズル層に酸化物層が施されている図である。
【図5C】図5Cはノズル層から酸化物層が除去されている図である。
【図5D】図5Dは図5Cのノズル層の底面図である。
【図5E】図5Eはノズル層に保護層が施されている図である。
【図5F】図5Fは液路体にノズル層が固着されている図である。
【図6A】図6Aはテーパ壁をもつノズル層の側断面図である。
【図6B】図6Bは図6Aのノズル層の底面図である。
【図6C】図6Cはノズル壁及びノズル噴出口の周りに施された金属層の側断面図である。
【図6D】図6Dは図6Cのノズル層の底面図である。
【図7A】図7Aはテーパ壁及びノズルの表面上に成長させた無機酸化物層をもつノズルの側断面像を示すSEM写真である。
【図7B】図7Bは、酸化物層を除去して別の酸化物層を再成長させた後の、ノズルの右側だけの斜視断面像を示すSEM写真である。
【図7C】図7Cは酸化物層をもつノズルの斜視断面図であり、ノズルはテーパ壁並びに丸められたエッジ及びコーナーを有する。
【図7D】図7Dは、丸められたコーナーをもつノズル噴出口を示す、ノズル層の底面図である。
【図7E】図7Eは、曲率半径が縮小された丸められたコーナーをもつノズル噴出口を示す、保護層を有するノズル層の底面図である。
【図8】図8はディセンダー層に固着されたノズル層の側断面像を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0019】
液滴射出は、液流路体を有する基板、例えば微小電気機械システム(MEMS)、メンブラン及びノズル層によって実施することができる。流路体は液流路が内部に形成されており、液流路は、液体充填通路、液体ポンピングチャンバ、ディセンダー及び、噴出口を有する、ノズルを有することができる。液体ポンピングチャンバに近接してメンブランの流路体とは逆の側の表面上にアクチュエータを配置することができる。アクチュエータを作動させると、アクチュエータは液体ポンピングチャンバに圧力パルスを与えて、噴出口を通る液滴の射出を生じさせる。流路体は複数の液流路及びノズルを有することが多い。
【0020】
液滴射出システムは上述の基板を備えることができる。システムは基板への液体源も備えることができる。射出のために液体を供給するため、液体貯槽を液体流通可能な態様で基板に連結することができる。液体は、例えば、化合物、生体物質またはインクとすることができる。
【0021】
図1を参照すれば、一実施形態におけるプリントヘッドのような、微小電気機械デバイスの一部の簡略な断面図が示されている。プリントヘッドは基板100を備える。基板100は、液路体102,ノズル層104及びメンブラン106を有する。液体貯槽が液体充填通路108に液体を供給する。液体充填通路108はアセンダー110に液体流通可能な態様で連結される。アセンダー110は液体ポンピングチャンバ112に液体流通可能な態様で連結される。液体ポンピングチャンバ112はアクチュエータ114に極めて近接している。アクチュエータ114は駆動電極と接地電極の間に挟み込まれた、チタン酸鉛ジルコニウム(PZT)のような、圧電材料を有することができる。アクチュエータ114の駆動電極と接地電極の間に電圧を印加してアクチュエータに電圧を印加し、よってアクチュエータを作動させることができる。メンブラン106はアクチュエータ114と液体ポンピングチャンバ112の間にある。接着剤層(図示せず)でアクチュエータ114をメンブラン106に固着させることができる。
【0022】
液路体102の底面に、厚さを約1〜100μm(例えば約5〜50μmまたは約15〜35μm)とすることができる、ノズル層104が固着される。噴出口をもつノズル117がノズル層104の外表面120に形成される。液体ポンピングチャンバ112はディセンダー116に液体流通可能な態様で連結され、ディセンダー116はノズル117に液体流通可能な態様で連結される。図1は、液体充填通路、ポンピングチャンバ及びディセンダーのような様々な通路を示すが、これらのコンポーネントは必ずしも共通の平面にあるとは限らない。いくつかの実施形態において、液路体、ノズル層及びメンブランの内の2つ以上は一体として形成することができる。
【0023】
図2Aは液路体210に取り付けられたノズル層201を有するモジュール200を示す。ノズル層201は第1の表面207の流入口206を第2の表面209の噴出口208に連結するテーパ壁204を有する。噴出口208は流入口206より狭くすることができる。ノズル層201の第1の表面207は(例えば、陽極接合形成、シリコン−シリコン直接ウエハ接合またはベンゼンシクロブテン(BCB)のような接着剤による接合形成のような、接合形成により)液路体210に固着させることができる。陽極接合形成及び陽極接合形成に用いられる材料の例は米国特許第7052117号明細書に説明されており、この明細書の全内容は本明細書に参照として含まれる。ノズル層及び液流路体は、シリコン、例えば単結晶シリコンのような、半導体材料で作製することができる。第2の表面209に形成された噴出口208を通して液滴を射出することができる。図2Bは、幅212,Wが約1μm〜約100μm、例えば、約1〜10μm、約10〜30μmまたは約5〜50μmのような、辺を有する正方形の噴出口208を示す。
【0024】
また、図2Cはノズル流入口216をノズル噴出口218に連結する直壁214を有するノズル202を示す。一般に、噴出口のエッジはノズル層の外表面の平面から測定して約90°以下(例えば45°)の角度を有することができる。図2Aは約54°の角度222をもつ噴出口エッジ220を有するノズルを示し、一方、図2Cは約90°の角度226を有する噴出口エッジ224を示す。
【0025】
図2A及び2Cに示される噴出口208及び218は、(図2Bに示されるような)正方形、円形、楕円形、多角形または液滴射出に適するその他のいかなる形状もとることができる。噴出口が正方形以外の場合、最長寸法を、例えば、約1〜10μm、約10〜30μmまたは約5〜50μmのように、約1μm〜約100μmとすることができる。この噴出口寸法により、いくつかの実施形態に有用な寸法の液滴を形成することができる。ノズル層は、シリコンのような、半導体材料体に形成することができ、ノズルは半導体材料体に、プラズマエッチング(例えば深掘り反応性イオンエッチング)、ウエットエッチング(例えばKOHエッチング)またはその他のプロセスで形成することができる。複数のノズル層を一枚のシリコンウエハに形成することができ、一緒に処理することができる。複数のノズル層を有するシリコンウエハは、複数の液流路体を有するウエハのような、別のウエハに接合させることもできる。複数の流路体を有するウエハは複数のメンブランを有する別のウエハに接合させることもできる。
【0026】
図2A〜2Cのノズルには、例えばプリントヘッドの保守作業中またはハンドリング中に割れるかまたは欠けることがあり得る、鋭いエッジを有する噴出口がある。鋭いエッジには、曲率半径が0.1μmより小さいエッジが含まれる。保守作業中、ノズル層の外表面から過剰な液体を拭き取るためにワイパーが用いられ得る。噴出口が鋭いエッジを有しているから、エッジは刃先のように作用し、ワイパーの一部をそぎ落として、実質的に、ノズル内に屑を残すことがあり、及び/またはノズル噴出口のエッジが損傷を受け得る。他に、射出される液体がノズル層の材料を侵し、噴出口のエッジをエッチングして取り去り得る場合もある。
【0027】
図3は損傷を受けた正方形ノズル噴出口302をもつノズル層300を示すSEM写真である。例えば、ノズル噴出口の右側は、欠け及び割れがあり、今は不規則な形状になっている。そのような不規則な形状ではもはや液滴が直線で射出されることはない。むしろ、液滴はある角度をなして射出され、印刷媒体上に布置エラーを生じさせるであろう。テーパ壁をもつノズルの場合、ノズル噴出口のエッジが欠け落ちると、噴出口の幅がかなり大きくなり、飛跡エラー及び速度低下による布置エラーだけでなく、液滴体積の望ましくない増大も生じさせ得る。
【0028】
図4は、図2A〜2Cのノズル層のような、ノズル層を作製する方法のフローチャート400である。図5A〜5Eは、例えばプリントヘッド用の、ノズル層の作製を示す図である。図5A〜5Eは液流路体、例えば図2Aの液流路体210から分離されたノズル層500を示す。初め、図5Aの断面図に示されるように、深さ501,Dを有するノズル層500及び噴出口504を有するノズル502が作製される。ノズル層500及びノズル502は通常の手法を用いて作製することができ、図2A〜2Cに関して上で論じた特徴を有することができる。特に、噴出口504は鋭いエッジ506を有する。図5Bに示されるように、無機酸化物層508をノズル層500の露出表面に熱成長させる(ステップ402)。いくつかの実施形態において、無機酸化物層508は、外表面510上の噴出口504の周り及びノズル502内部の少なくとも一部のような、ノズル層の一部だけの上に成長させることができる。次に、図5Cに示されるように、無機酸化物層508を、例えばフッ酸を用いて、除去する(ステップ404)。
【0029】
無機酸化物(例えば二酸化シリコン)層の厚さは、約1μm以上、例えば約1〜10μmまたは約2〜5μmのように、約0.5μm以上とすることができる。
【0030】
いかなる特定の理論にも拘泥せずに、半導体(例えば、単結晶シリコンのような、シリコン)表面上に熱酸化膜を成長させる場合、酸化物は、酸化物厚の約46%が下のシリコン表面の下にあり、54%が上にあるように、シリコン表面上及びシリコン表面下のいずれにも成長する。熱酸化物の成長時に、酸化性物質(例えば水蒸気または酸素)はシリコン表面においてシリコン原子と結合して、シリコン表面上にシリコン酸化物層を形成する。シリコン酸化物層が厚くなるにつれて、酸化性物質がシリコン表面に到達するために進むべき距離が長くなる。やはりいかなる特定の理論にも拘泥せずに、ノズル噴出口のコーナー及びエッジにおいて酸化性物質が進むべき距離は、丸められていないまたは平坦な表面において酸化性物質が進むべき距離よりさらに長くなる。コーナー及びエッジでは酸化性物質が進むべき距離が長くなるから、コーナーにおけるシリコン表面の侵食の進行は遅くなり、コーナー及びエッジは丸まるかまたは丸められる。コーナーとともに、噴出口のシリコンエッジも平坦表面とは異なるレートで侵食されて、コーナーほどの大きさにはならないが、エッジも丸められる。図5Cは丸められたエッジ512を示し、図5Dは丸められたコーナーを示す。一実施形態において、約800℃〜1200℃の温度において(例えば30μm厚の)シリコンノズル層上に(例えば5μm厚の)酸化シリコン層を熱成長させ、続いて、フッ酸浴に(例えば7分間)入れてシリコン酸化物を除去する。いくつかの実施形態において、酸化物層除去後、続けて酸化物層を再成長させて、除去することができる。酸化物層を成長させて除去する毎に、エッジ及びコーナーの曲率半径は大きくなっていくことができる。
【0031】
あるいは、鋭いエッジ及びコーナーを丸められた形状にするためエッチング剤(例えばKOH)を用いて、例えば、ノズル層をKOH浴にあらかじめ定められた時間入れることにより、半導体ノズル層の鋭い構造形状をエッチングし、丸められたエッジ及びコーナーを形成することができる。
【0032】
図5Cは、酸化物層508が除去された後の、今ではエッジ512が丸められている噴出口504を有するノズル502が残されている、ノズル層500の断面図を示す。丸められたエッジの曲率半径は0.1μm以上、例えば0.4μm以上とすることができる。酸化物が除去されるときにノズル流入口のエッジ513も丸められる。エッジ及びコーナーの曲率半径の大きさは半導体ノズル層上に成長させる酸化物の厚さに依存する。酸化物層を厚くするにしたがって、エッジ及びコーナーの曲率半径も大きくすることができる。
【0033】
図5Dは、丸められたコーナー514を有するノズル噴出口504の底面像を示す、光学顕微鏡写真である。いかなる特定の理論にも拘泥せずに、丸められたコーナーは、コーナーにおける液体の高表面張力を低減することによって、及び/またはノズル層の外表面上の液体のノズル噴出口へのより容易な戻入を可能にすることによって、液滴飛跡の直進性を向上させることができる。図5Dの噴出口504は、1μm以上、例えば約1〜10μmまたは約2〜5μmのような、約0.5μm以上の曲率半径518を有することができる、丸められたコーナー514で連結された直辺516を有する。
【0034】
図5Eは、酸化物層除去後、ノズル層500に施された(ステップ406)保護層522(例えば、酸化物層のような無機非金属層、金属層または導電体層)を示す。保護層は半導体材料より耐久性の高い材料とすることができ、半導体材料、特に、例えば保守中またはハンドリング中に、損傷を受け易い鋭い構造形状を強化することができる。無機非金属材料には、酸化物、ダイアモンド様炭素あるいは、窒化シリコンまたは窒化アルミニウムのような、窒化物を含めることができる。保護層を施す、例えば別の酸化物を再成長させるかまたは金属層をスパッタリングで被着することにより、エッジ523の曲率半径を図5Cのシリコンエッジ512の曲率半径より大きくすることもできる。エッジ523の曲率半径は、1μm以上、例えば約1〜10μmまたは約2〜5μmのように、約0.5μm以上とすることができる。しかし、ノズル噴出口が、例えば正方形であれば、再成長させた酸化物層でコーナーの曲率を縮小することができ、酸化物層を再成長させすぎると、酸化物層はコーナーを再び直角にし得る。したがって、いくつかに実施形態において、図5Dのコーナー514の再直角化を回避するため、再成長酸化物層の厚さを図8Bの除去される酸化物層508の厚さより薄くすることができる。例えば、再成長酸化物層の厚さは除去される酸化物層の厚さの約50%ないしさらに薄くすることができる。丸められたエッジ523は欠け及び割れを受けにくくなり、丸められたエッジ523は保守用具から屑をそぎ落とすことはほとんど無いであろうから、ノズル502の詰まりを防止することができる。
【0035】
図5Eはノズル層500に表面を被覆する保護層522を示すが、保護層は、ノズル噴出口の周りの領域及びノズル504内部の一部のような、ノズル層の一部だけを被覆することができる。あるいは、保護層はノズル噴出口の周りのノズル層の外表面だけを被覆し、ノズル内部は被覆しないでおくこともできる。ノズル層の表面エネルギーが、シリコンのように、低い(例えば接触角が約20°以下である)場合、ノズル層の外表面は、低粘着テープ、シリコーン及びガス放出高分子材のような、プロセス汚染物によって汚染され得る。汚染物はノズル噴出口近傍に接触角が約70°以上の低湿潤性領域を形成し得る。汚染物と保護層がほぼ同じ表面エネルギーを有するように、金のような、表面エネルギーが高い(例えば接触角が約70°以上である)保護層をシリコンノズル層の外表面上に施すことができる。ノズル層の外表面上に表面エネルギーが高い保護層を設けることによって、ノズル層を耐汚染性にすることができる。
【0036】
図5Fは液路体524(例えば炭素体またはシリコン体)に固着された(ステップ408)ノズル層500を示す。ノズル層は、陽極接合形成またはシリコン-シリコン直接ウエハ接合形成によるか、接着剤、例えばベンゾシクロブテン(BCB)のようなエポキシ、またはその他の固着手段を用いて、液路体に固着させることができる。
【0037】
保護層522は、高温(例えば1000℃以上)で処理される場合には、シリコンまたは酸化シリコンより強靱で耐摩耗性が高くなり得る、窒化シリコンとすることができる。高温での処理により、緻密で、ピンホールがほとんど無い、窒化物層が形成される。窒化物は酸化物より強靱であるから、一層薄い層をノズルに施すことができ、例えば、窒化物層の厚さは、約0.05〜0.2μmのように、0.5μm未満とすることができる。必要であれば、より低温(例えば350℃)で窒化シリコンを被着させることもでき、これはノズル層が、キュリー温度より高い温度にさらされると消極し得る圧電アクチュエータのような、別の温度過敏性コンポーネントに接続されている場合に重要になり得る。
【0038】
保護層(例えば非金属層または金属層)は射出される液体に対する化学的耐性に基づいて選ぶことができる。保護層は、例えば保護層が液体と反応しなければ、化学的耐性がある。この場合、液体が保護層を有意に、侵すか、エッチングするかまたは劣化させることはない。保護層は、ワイパーのような、保守作業に対する耐久性及び/またはノズル層の下層材料(例えばシリコン)に比較した頑健さに関して選ぶこともできる。
【0039】
ピンホールがほとんど無い保護層は、アルカリ性インクのような、侵食性液体による侵食から半導体材料を一層良く保護できる。保護層522の厚さは、約10nm〜20nmのように、約10nm以上とすることもできる。
【0040】
いくつかの実施形態において、保護層は、例えば導電性材料を接地することによって、ノズル表面上に蓄積する静電荷による電場集中を低減するために、(例えば、非金属または金属の)導電性材料を有することができる。導電性材料はプリントヘッドの電気化学的適合性を向上させるために用いることもできる。導電性材料は、セシウムまたは鉛のような金属をドープすることができる、酸化インジウムスズ(ITO)のような、酸化物とすることができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、保護層には金属層を含めることができる。金属層はノズル層の半導体材料(例えばシリコン)より強靱であり得る。金属層には、例えば、チタン、タンタル、白金、ロジウム、金、ニッケル、ニッケル-クロム及びこれらの組合せを含めることができる。いくつかの実施形態において、保護層は、エッジ及び/またはコーナーが丸められているかいないかにかかわらず、ノズル噴出口に施すことができる。例えば、保護層は、初めの酸化物層の成長及び除去を行わずに、ノズル噴出口に施すことができる。
【0042】
図6A〜6Dはノズル層に施されている金属層(例えばチタン層)の図を示し、ノズル噴出口は丸められたエッジまたはコーナーを有していない。図6Aはテーパ壁604をもつノズル602を有するノズル層600を示し、図6Bは、辺の長さ607がLの正方形である、ノズル噴出口606の底面図を示す。円形、楕円形または多角形のような、別のノズル噴出口形状も可能である。図6Cは、ノズル内部のテーパ壁604上、ノズル噴出口606の周り、及びノズル層600の外表面612上を含む、ノズル層600のいくつかの表面に施された金属層608を示す。ノズル内部の金属層は、被着プロセス(例えばスパッタリング)のため、外表面612上の金属層より薄くなり得る。金属層の厚さをより一様にするため、薄い(例えば約200Å以上の)金属層をスパッタリングで被着させることができ、スパッタ金属層上に(例えば980nm以上の)第2の金属層を電気メッキすることができる。図Dはノズル層の外表面612に金属層608が施されているノズル噴出口606を示す。
【0043】
いくつかの実施形態において、図6C及び6Dの金属層は、金属層の上に次の層が施されていないという意味で、露出している。金属層は外表面上及びノズル内部のいずれにおいても完全に露出させることができる。金属層表面に自然酸化膜が成長することはあり得るが、この層は数Åレベルであり、本出願の目的には、露出金属と見なされ得る。チタンのような、いくつかの金属については、自然酸化物層が金属層を化学的に不活性にし、腐食性液体に対する耐性を与える。
【0044】
いくつかの実施形態において、ノズル内部の金属層だけが露出し、外表面上の金属層には非湿潤性被覆が施される。非湿潤性被覆は、外表面上の液体にノズル噴出口近傍で液だまりをつくらせず、数珠玉状にする、疎水性表面を提供する。非湿潤性被覆は、ノズル内ではメニスカスの位置及びノズル噴出口の周りの領域を液体が適切に濡らし得る能力に影響するから、ノズル内部には施されない。非湿潤性被覆は、(2006年6月30日に出願され、2007年2月8日に公開された、名称を「流体射出器上の非湿潤性被覆(Non-Wetting Coating on a Fluid Ejector)」とする、オクムラ等の)米国特許出願公開第2007/0030306号明細書、(2007年12月18日に出願され、2008年6月26日に公開された、名称を「流体射出器上の非湿潤性被覆のパターン(Pattern of Non-Wetting Coating on a Fluid Ejector)」とする、オクムラ等の)米国特許出願公開第2008/0150998号明細書、及び(2007年11月30日に出願され、2008年6月12日に公開された、名称を「流体射出器上の非湿潤性被覆(Non-Wetting Coating on a Fluid Ejector)」とする、オクムラ等の)米国特許出願公開第2008/0136866号明細書に説明されている。上記明細書のそれぞれの内容の全体は本明細書に参照として含まれる。図6Cは全表面を覆う金属層608を示すが、ノズル層の一部だけを、例えばノズル噴出口の周りの領域及びノズル内部の少なくとも噴出口近傍の一部だけを覆うように、金属層を施すことができる。金属層は特定の液体(例えば、pHが高いアルカリ性液またはpHが低い酸性液)に対して化学的に耐性があるように選ぶことができる。化学的に耐性がある金属の例には、チタン、金、白金、ロジウム及びタンタルを含めることができる。一実施形態において、アルカリ性液滴を射出しているときにエッチングされないようにノズル噴出口を保護するために、アルカリ性液に対して化学的に耐性がある、チタンまたはタンタルの金属層をプリントヘッドのシリコンノズル層に施すことができる。
【0045】
金属層の厚さは、約0.2〜5μm(例えば2〜2.5μm)のように、約0.1μm以上とすることができる。耐久性を高めるため、金属層の厚さは、約1〜10μmのように、約1μm以上とすることができる。金属層は導電性とすることができる。ノズル層の耐久性を高めるとともに、金属層がノズル噴出口のエッジを丸められた形状にするように、真空被着(例えばスパッタリング)によるかまたは真空被着と電気メッキの組合せによって、金属層を施すことができる。電気メッキされた金属はスパッタされた金属より共形で一様な層を提供することができ、ノズル噴出口エッジの曲率半径を大きくすることができる。例えば、噴出口エッジ上の金属層は、2〜5μmのように、1μm以上の曲率半径を有することができる。
【0046】
保護層(例えば金属層)を施す際に、プリントヘッド間でノズルをさらに均一にするためにさらに材料を追加してノズルの幅を変えることができる。例えば、所望のノズル噴出口幅が10μmであり、第1のプリントヘッドの第1のノズル層の平均噴出口幅が11μmであって、第2のプリントヘッドの第2のノズル層の平均噴出口幅が12μmであれば、第1及び第2のノズル層のいずれの噴出口幅も10μmになるように、第1のノズル層のノズルの周りには1μm、第2のノズル層上には2μmの追加の材料(例えば金属)を被着することができる。個々のノズルの幅は、JMAR Technologies社またはTamar Technology社から入手できる、光学測定器を用いて測定することができる。
【0047】
無機非金属材料(例えば、酸化物、窒化シリコンまたは窒化アルミニウム)の第1の層と金属の第2の層のような、他の組合せも可能である。ノズル層をシリコンで作製することにより、例えば、フォトリソグラフィー及びドライエッチングまたはウエットエッチングによって、金属ノズル層、特に、厚い(例えば3〜100μm)ノズル層では可能にはなり得ない、精確なノズル構造形状をシリコンにエッチングでつくり込むことができる。薄い金属層をシリコン上に被着することによって、ノズル層は微細な構造形状を有し得るだけでなく、耐久性があり、化学的に不活性になることができる。
【0048】
非金属層及び金属層は、PVD、PECVDのようなCVDによるか、または熱酸化膜の場合における熱成長により、施すことができ、除去した酸化物層と同じ厚さを有することができ、あるいはより厚くも薄くもすることができ、例えば、厚さは、約1〜10μmのように、約0.1μm以上、約0.5〜20μmとすることができる。鋭いエッジに層を施す場合、層は、約1μm以上のような、また約1〜5μmのような、約0.5μm以上の曲率半径を与えることができる。コーナーをもつノズルの場合、層を付加するとコーナーの曲率半径が若干小さくなることがある。したがって、付加層はノズル噴出口のコーナーの再直角化を避けるに十分に薄くするべきである。
【0049】
図7Aは半導体(例えばシリコン)のノズル層に形成されたノズル702の側断面像を示すノズル層700のSEM写真である。ノズル702の噴出口704は写真の上部近くにあり、流入口は下部に近い。ノズル702はテーパ壁708及び、熱酸化層712の成長により若干侵食され、よってエッジ710が若干丸められている、エッジ710を有する。上で説明したように、ノズル層702の表面上の酸化物層712の成長によってエッジ及びコーナーが丸められた形状になる。
【0050】
図7Bは、酸化物層712を除去して酸化物層715をシリコン表面上に再成長させた後の、ノズル702の右側だけの斜視断面像を示すSEM写真である。エッジ713は図7Aのシリコンエッジ710の曲率半径より大きな曲率半径を有する。
【0051】
図7Cはノズル層700に形成された、第1の表面714の流入口706で始まって第2の表面716の噴出口704で終わるテーパ壁708を有する、ノズル702の、上面から見た、簡略な斜視断面図である。テーパ壁708は、KOHエッチングで形成することができる、切頭角錐形をなす。ノズルの流入口706及び噴出口704は丸められたコーナー720で連結された直辺718を有し、流入口706はテーパ壁708によって流出口704に連結される。無機非金属層及び/または金属層のような、保護層722が丸められた構造形状を有するノズル層700に施される。いくつかの実施形態において、テーパ壁は、角錐形ではなく、円錐形または多角形とすることができる。あるいは、ノズルはテーパ壁と直壁の組合せ有することができ、例えば、米国特許第7347532号明細書に説明されるノズルのように、ノズル流入口に始まるノズルの第1の部分が、ノズル噴出口に終わる直壁を有する第2の部分に連結する、テーパ壁を有することができる。
【0052】
図7A及び7Bに戻って参照すれば、一実施形態において、(図7Aに示される)酸化物層712は約5μmの厚さまで熱成長させ、続いて除去することができ、シリコンエッジ710の形状は曲率半径が約0.4μmになる。(図7Bに示される)厚さが約2μmの酸化物層715を、酸化物層エッジ713における曲率半径が約2.5μmになるように、シリコン上に再成長させる。前述したように、酸化物層の再成長はエッジ713の曲率半径を大きくするが、コーナーの曲率半径を小さくし得る。例えば、図7Dは5μm厚酸化物層712の成長(図7A)及び除去後の、コーナーの曲率半径726がシリコン表面727において約5μmのノズル噴出口702を示す。いくつかの実施形態において、コーナー724の曲率半径は除去された酸化物層712の厚さにほぼ等しくなり得る。図7Eは2μm厚酸化物層715の再成長後の、コーナー730における曲率半径が約3μmに減じている、ノズル噴出口702を示す。コーナーにおける曲率半径の減少を制限するため、再成長酸化物層を除去された酸化物層より薄くすることができる。
【0053】
ノズル層は図5A〜5Eに示されるように別個に処理することができ、あるいは処理のための別のパーツに固着させることができる。例えば、ノズル層が個別に処理するに十分には厚くなければ、ノズル層を、例えば、陽極接合形成またはシリコン-シリコン直接ウエハ接合形成によるか、あるいは接着剤(例えばBCB)を用いて、別のパーツに接合させる(例えば、メンブラン及びアクチュエータがない液路体に接合させるかまたはディセンダー層に接合させる)ことができる。図8は(例えばシリコンの)ディセンダー層802に固着された(例えばシリコンの)ノズル層801を有する複合パーツ800の側断面像を示すSEM写真である。ノズル層801は、ディセンダー層802に形成された複数のディセンダー806と位置合せされた複数のノズル804を有する。上述したプロセスと同様に、酸化物層を複合パーツ800に施し、続いて除去することができ、第2の層(例えば酸化物または金属のような保護層)を複合パーツ800に施すことができ、最後に液流路体(図示せず)に固着させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、ノズル層は、ノズル層だけである程度処理し、別のパーツにノズル層を接合した後に、完全に処理することができる。例えば、熱酸化物層をノズル層上に成長させて、ノズル層から除去し、次いでノズル層を液流路体に接合することができ、その後、ノズル層に保護層を施すことができる。別の実施形態において、ノズル層は酸化されず、液路体に既に接合されているノズル層の表面に熱酸化物以外の保護層を施すことができる。
【0055】
本明細書及び添付される特許請求の範囲における「内」と「外」及び「上」と「下」のような語句の使用は、本明細書に説明される基板の様々なコンポーネント、ノズル層及びその他の要素の間の相対位置を説明するためである。「内」と「外」及び「上」と「下」の使用は基板またはノズル層の特定の方位を意味していない。本明細書で特定の実施形態を説明したが、記述及び図面からその他の特徴、目的及び利点が明らかであろう。そのような変形は全て、添付される特許請求の範囲によって定められる本発明の意図された範囲内に含められる。
【符号の説明】
【0056】
500 ノズル層
501 ノズル層深さ,D
502 ノズル
504 噴出口
506 噴出口の鋭いエッジ
508 無機酸化物層
510 外表面
512 噴出口の丸められたエッジ
513 流入口のエッジ
514 丸められたコーナー
516 噴出口の直辺
518 丸められたコーナーの曲率半径
522 保護層
523 丸められたエッジの曲率半径
524 液路体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル層において、
第1の表面、前記第1の表面と表裏をなす第2の表面、及び前記材料体を貫通して形成された、前記第1の表面と前記第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体であって、前記ノズルが前記第2の表面のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成され、前記噴出口が丸められたコーナーで連結された直辺を有するものである半導体材料体、
を含むことを特徴とするノズル層。
【請求項2】
前記第2の表面の前記噴出口が実質的に正方形であることを特徴とする請求項1に記載のノズル層。
【請求項3】
前記第2の表面の前記噴出口が実質的に多角形であることを特徴とする請求項1に記載のノズル層。
【請求項4】
前記丸められたコーナーが約1μm以上の曲率半径を有することを特徴とする請求項1に記載のノズル層。
【請求項5】
前記第2の表面の前記噴出口の周り及び前記ノズルの内部の少なくとも一部に保護層をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のノズル層。
【請求項6】
前記保護層が、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、ダイアモンド様炭素、金属、金属ドープ酸化物及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項5に記載のノズル層。
【請求項7】
前記保護層が無機非金属材料を含むことを特徴とする請求項5に記載のノズル層。
【請求項8】
前記保護層が導電性材料を含むことを特徴とする請求項5に記載のノズル層。
【請求項9】
前記導電性材料が接地されていることを特徴とする請求項8に記載のノズル層。
【請求項10】
前記保護層が前記丸められたコーナーの前記曲率半径を縮小することを特徴とする請求項5に記載のノズル層。
【請求項11】
前記ノズルが、前記第1の表面を前記第2の表面に連結する直壁を有することを特徴とする請求項1に記載のノズル層。
【請求項12】
前記噴出口が丸められたエッジを有することを特徴とする請求項11に記載のノズル層。
【請求項13】
前記丸められたエッジが約1μm以上の曲率半径を有することを特徴とする請求項12に記載のノズル層。
【請求項14】
前記ノズルが、前記第1の表面を前記第2の表面に連結するテーパ壁を有することを特徴とする請求項5に記載のノズル層。
【請求項15】
前記保護層が、前記ノズル噴出口を丸められたエッジを有する形状にすることを特徴とする請求項14に記載のノズル層。
【請求項16】
ノズル層を作製する方法において、
丸められたコーナーで直辺が連結されたノズル噴出口を有するように、ノズルを半導体材料体に成形する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ノズルを成形する工程が、
第2の表面の前記噴出口の複数のコーナー及び前記ノズルの内部の少なくとも一部の上に無機酸化物層を成長させる工程、及び
前記無機酸化物層を除去する工程、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化物層が約1μmと約10μmの間の厚さを有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記無機酸化物層を除去する工程が、フッ酸を用いて酸化シリコンをウエットエッチングする工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ノズルがKOHエッチングによって前記半導体材料体に形成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記半導体材料体がシリコンを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記丸められたコーナーが、約1μm以上の曲率半径を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項23】
コーナーが丸められた前記噴出口の周り及び前記ノズルの内部の少なくとも一部に保護層を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記保護層が、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、ダイアモンド様炭素、金属、金属ドープ酸化物及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記保護層が導電層を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記導電層を接地する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記保護層が、丸められたエッジを有するように前記ノズル噴出口を成形することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ノズル層を液流路体に固着させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項29】
ノズル層において、
第1の表面、前記第1の表面と表裏をなす第2の表面、及び前記材料体を貫通して形成された、前記第1の表面と前記第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体であって、前記ノズルが前記第2の表面のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成され、前記噴出口が複数の丸められたエッジを有するものである半導体材料体、
を含むことを特徴とするノズル層。
【請求項30】
前記ノズルが、前記第1の表面を前記第2の表面に連結する直壁を有することを特徴とする請求項29に記載のノズル層。
【請求項31】
前記丸められたエッジが約0.5μm以上の曲率半径を有することを特徴とする請求項29に記載のノズル層。
【請求項32】
前記第2の表面の前記噴出口の周り及び前記ノズルの内部の少なくとも一部に保護層をさらに有することを特徴とする請求項29に記載のノズル層。
【請求項33】
前記保護層を含む前記丸められたエッジの前記曲率半径が約1μm以上であることを特徴とする請求項32に記載のノズル層。
【請求項34】
前記ノズル噴出口が丸められたコーナーで連結された直辺を有することを特徴とする請求項29に記載のノズル層。
【請求項35】
ノズル層を作製する方法において、
エッジが丸められたノズル噴出口を有するように、ノズルを半導体材料体に成形する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
エッジが丸められたノズル噴出口を有するようにノズルを成形する前記工程が、
前記噴出口の複数のエッジ及び前記ノズルの内部の少なくとも一部に無機酸化物層を成長させる工程、及び
前記無機酸化物層を除去する工程、
を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
エッジが丸められた前記噴出口の周り及び前記ノズルの内部の少なくとも一部に保護層を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
丸められたコーナーで連結された直辺を有するように前記ノズル噴出口を成形する工程をさらに含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
ノズル層において、
第1の表面、前記第1の表面と表裏をなす第2の表面、及び前記材料体を貫通して形成された、前記第1の表面と前記第2の表面を連結するノズルを有する半導体材料体であって、前記ノズルが前記ノズル層の外表面のノズル噴出口を通して液体を射出するように構成されたものである半導体材料体、および
前記ノズル噴出口近傍の前記外表面上にあるが、前記ノズルの内部にはない保護層であって、約70°以上の接触角を有する保護層、
を含むことを特徴とするノズル層。
【請求項40】
前記保護層が金を含むことを特徴とする請求項39に記載のノズル層。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−507417(P2012−507417A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534658(P2011−534658)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062038
【国際公開番号】WO2010/051247
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(502122794)フジフィルム ディマティックス, インコーポレイテッド (73)
【Fターム(参考)】