説明

ノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法、ノズル洗浄プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、基板処理に不具合が生じないようノズル先端を効率的に洗浄し、且つ装置コストを低減することのできるノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法、ノズル洗浄プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【解決手段】ノズル30を収容し、少なくともノズル30先端周囲の内周面が漏斗状に形成された洗浄室1と、洗浄室1の漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤Tを流入する洗浄液供給手段とを備え、ノズル30が洗浄室1内に収容された際、洗浄液供給手段21が洗浄室1内に溶剤Tを所定量供給し、ノズル30の回りを旋回する溶剤Tの渦が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォトレジスト等の処理液を基板に吐出する処理液ノズルを洗浄するノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法、ノズル洗浄プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造においては、被処理基板であるウエハに所定の膜を成膜した後、フォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィ技術により回路パターンを形成する。このフォトリソグラフィ技術では、被処理基板であるウエハは、主な工程として、洗浄処理→脱水ベーク→アドヒージョン(疎水化)処理→レジスト塗布→プリベーク→露光→現像→ポストベークという一連の処理を経てレジスト層に所定の回路パターンを形成する。
【0003】
ところでフォトレジスト液(以下、単にレジストと呼ぶ)をウエハに供給してレジスト膜を形成するためのレジスト塗布装置にあっては、レジスト供給ノズルからのレジスト吐出後、ノズル先端に付着しているレジストが乾燥固化し、結晶物となる虞がある。即ち、この結晶物がノズル先端に付着したまま次のレジスト吐出処理を行うと、正常なレジスト吐出が実行できない、或いはレジストと共に結晶物がウエハ上に供給されるといった不具合が生じる。
【0004】
このような課題に対し、ノズル待機時においてノズルの周囲にシンナー等の溶剤雰囲気を形成する方法が従来から用いられている。即ち、溶剤雰囲気中にノズルを置くことにより、ノズル先端に付着したレジストの乾燥固化を抑制することができる。
【0005】
また、前記のように溶剤雰囲気中にノズルを置くだけでは、ノズル外周面において既に結晶物となったレジスト付着物等は除去できない。このため、ノズルを洗浄液により洗浄し、付着したレジストを除去する方法が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示の洗浄装置50においては、図8の断面図に示すように処理液のシリンジ(射出器)52が容器51に設けられた開口部51aに固定され、これにより処理液供給ノズル52が容器51中に保持される。容器51には、保持された処理液供給ノズル52を中央にして、洗浄液を吹き付けるための洗浄液ノズル53a、53bが対向する位置に設けられ、これら洗浄液ノズルから吐出された洗浄液により処理液供給ノズル52を前後から洗浄できるようになされている。
【特許文献1】特開平5−309309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示される洗浄装置の場合、処理液供給ノズル52先端を満遍なく洗浄するには、少なくとも前後方向から洗浄液を吹き付けなければならない。このため、少なくとも2つ、即ち複数の洗浄液ノズルが必要であった。また、特許文献1に開示の洗浄装置にあっては、容器51に処理液供給ノズル52を固定した際、ノズル52の配置位置に多少のずれが生じると、洗浄液ノズル53a、53bからの洗浄液がノズル52に適切に当たらない虞があり、精度の高い装置構成が必要となっていた。
したがって、特許文献1に開示のノズル洗浄装置のようにノズルの先端に洗浄液を吹き付ける洗浄方法では、装置構成が複雑になり、高精度な加工・組立及び制御が必要となるため、装置に掛かるコストが高くなるという課題があった。
【0007】
また、ノズル待機部においてノズル回りにシンナー等の溶剤雰囲気を形成し、レジストの乾燥固化を抑制する場合、溶剤雰囲気を高濃度に設定する必要があり、ノズル外周面に結露が生じ易いという問題があった。即ち、ノズルに溶剤の結露が生じると、レジスト塗布処理時においてその結露がウエハ等の基板上に落下する虞があり、基板処理に不具合が生じるという技術的課題があった。
【0008】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、基板処理に不具合が生じないようノズル先端を効率的に洗浄し、且つ装置コストを低減することのできるノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法、ノズル洗浄プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係るノズル洗浄装置は、基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、前記ノズルを収容し、少なくともノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成された洗浄室と、前記洗浄室の漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤を流入する洗浄液供給手段とを備え、前記ノズルが前記洗浄室内に収容された際、前記洗浄液供給手段が前記洗浄室内に溶剤を所定量供給することにより、前記ノズルの回りを旋回する溶剤の渦が形成されることに特徴を有する。
【0010】
このように構成することにより、洗浄室内に収容したノズルに対し、そのノズル先端周囲に旋回する溶剤の渦を形成することができ、その結果、ノズル先端を効率的に洗浄し、該ノズル先端への付着物を容易に除去することができる。また、このような構成により、ノズルを洗浄室に収容する毎にノズル先端位置に多少のずれが生じても、ノズル先端周囲に確実に渦を形成し、ノズル先端の洗浄を行うことができる。
さらに、洗浄室内に溶剤の渦を形成するために、ノズル先端周囲の内周面を漏斗状とし、その内周面に沿って周方向に溶剤を流入する構成とすることにより、溶剤を流入させるための吐出口は一つで足り、装置に掛かるコストを低減することができる。
尚、ここで前記漏斗状とは、逆円錐形で形成された漏斗状の構成に限らず、半球形で形成された漏斗状の構成でもよい。
【0011】
また、前記洗浄室の底部に前記溶剤を廃液する開口部が形成され、前記開口部の内直径寸法は、前記ノズル先端の外直径寸法よりも大きく形成されていることが望ましい。また、前記ノズルの洗浄時において、該ノズル先端は前記開口部上端よりも高い位置に配置されることが好ましい。
このように構成することにより、ノズル先端周りにおいて滞留することのない渦を形成することができ、より効果的にノズル洗浄を行うことができる。
【0012】
また、前記洗浄室内に溶剤雰囲気を形成する溶剤雰囲気形成部を備え、前記溶剤雰囲気形成部は、前記洗浄室の下方において該洗浄室に連通し、前記洗浄液供給手段により供給された溶剤の廃液路となる流路管と、前記流路管の下方に設けられ、該流路管の下端部よりも上方の高さ位置まで前記溶剤を貯留する第一の溶剤溜部とを有し、前記第一の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることが望ましい。
このように構成することにより、第一の溶剤溜部に貯留した溶剤が気化して洗浄室内に溶剤雰囲気を形成することができる。したがって、ノズル待機時においてノズルを溶剤雰囲気中に置くことができ、処理液の乾燥固化を防ぐことができる。
また、洗浄室において、ノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成されているため、ノズル先端ほど周囲の空間が小さくなり、ノズル待機中において溶剤雰囲気の濃度が高く溶剤の結露が発生する場合には、ノズル先端側に結露を生じさせることができる。これにより、よりレジストの乾燥をより防止することができる。一方、レジスト塗布工程に移行する際には、ノズル洗浄を行うことでノズル先端側に生じた結露を除去することができる。
【0013】
また、前記溶剤雰囲気形成部は、前記洗浄液溜部よりも上方に、前記流路管に連通する第二の溶剤溜部を有し、前記洗浄液供給手段により前記第二の溶剤溜部に溶剤を供給することが望ましい。
このように、洗浄室により近い位置に第二の溶剤溜部が設けられることによって、そこに貯留した溶剤から気化した溶剤雰囲気が洗浄室に流入し易くなり、より効率的に洗浄室内に溶剤雰囲気を形成することができる。
【0014】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係るノズル洗浄方法は、基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄方法において、前記ノズルを、少なくともノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成された洗浄室に収容するステップと、前記洗浄室の漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤を所定量流入し、前記ノズルの回りを旋回する溶剤の渦を形成することによりノズル洗浄を行うステップとを実行することに特徴を有する。
【0015】
このようなステップを実行することにより、洗浄室内に収容したノズルに対し、そのノズル先端周囲に旋回する溶剤の渦を形成することができ、その結果、ノズル先端を効率的に洗浄し、該ノズル先端への付着物を容易に除去することができる。また、このような洗浄方法により、ノズルを洗浄室に収容する毎にノズル先端位置に多少のずれが生じても、ノズル先端周囲に確実に渦を形成し、ノズル先端の洗浄を行うことができる。
さらに、洗浄室内に溶剤の渦を形成するために、ノズル先端周囲の内周面を漏斗状とし、その内周面に沿って周方向に溶剤を流入する方法を用いるため、溶剤を流入させる吐出口は一つで足り、装置に掛かるコストを低減することができる。
尚、ここで前記漏斗状とは、逆円錐形で形成された漏斗状の構成に限らず、半球形で形成された漏斗状の構成でもよい。
【0016】
また、前記ノズル洗浄を行うステップの前または後において、前記洗浄室の下方で該洗浄室に連通する流路管に、前記溶剤を廃液するステップと、前記流路管の下方に設けられた第一の溶剤溜部に、前記流路管に廃液された溶剤を該流路管の下端部よりも上方の高さ位置まで貯留するステップとを実行し、前記第一の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることが望ましい。
このようなステップを実行することにより、第一の溶剤溜部に貯留した溶剤が気化して洗浄室内に溶剤雰囲気を形成することができる。したがって、ノズル待機時にノズルを溶剤雰囲気中に置くことができ、処理液の乾燥固化を防ぐことができる。
また、洗浄室において、ノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成されているため、ノズル先端ほど周囲の空間が小さくなり、ノズル待機中において溶剤雰囲気の濃度が高く溶剤の結露が発生する場合には、ノズル先端側に結露を生じさせることができる。これにより、よりレジストの乾燥をより防止することができる。一方、レジスト塗布工程に移行する際には、ノズル洗浄を行うことでノズル先端側に生じた結露を除去することができる。
【0017】
また、前記ノズル洗浄を行うステップの前または後において、前記洗浄液溜部よりも上方に設けられ、前記流路管に連通する第二の溶剤溜部に溶剤を供給するステップを実行し、前記第二の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることが望ましい。
このように洗浄室により近い位置に設けられた第二の溶剤溜部に溶剤を供給することによって、そこに貯留した溶剤から気化した溶剤雰囲気が洗浄室に流入し易くなり、より効率的に洗浄室内に溶剤雰囲気を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、基板処理に不具合が生じないようノズル先端を効率的に洗浄し、且つ装置コストを低減することのできるノズル洗浄装置、ノズル洗浄方法、ノズル洗浄プログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係るノズル洗浄装置としてのノズル待機部を具備するレジスト塗布装置の平面図である。先ず、図1に基づき、このレジスト塗布装置COTについて説明する。
【0020】
レジスト塗布装置COTにおいては、ユニット底の中央部に環状のカップCPが配設され、その内側に図示しないスピンチャックが配置されている。スピンチャックは真空吸着によってウエハWを固定保持した状態で、駆動モータの回転駆動力で回転するように構成されている。
【0021】
また、フォトレジストを吐出し供給するためのレジスト供給ノズル30(以下、単にノズル30と称呼する)を備え、このノズル30には、バルブ37を介してレジスト供給源36からフォトレジストが供給され、図示しないノズル吐出口からフォトレジストをウエハW上に吐出するように構成されている。
【0022】
ノズル30は、ノズルスキャンアーム31の先端においてノズルホルダ35を介して保持され、待機中はカップCPの外側に配設されたノズル待機部(ノズル洗浄装置)100に位置し、待機中にノズル先端を洗浄可能になされている。ノズルスキャンアーム31は、ユニット底板の上に一方向(Y方向)に敷設されたガイドレール32上で水平移動可能な垂直支持部材33の上端部に取り付けられており、図示しないY方向駆動機構によって垂直支持部材33と一体にY方向に移動するように構成されている。
尚、このノズルスキャンアーム31は、ノズル待機部100でノズル30を洗浄するために図示しない鉛直方向駆動機構によって鉛直方向にも移動可能になされている。
【0023】
なお、図1では、図解を容易にするため、ノズル30に接続する配管を図から省いている。また、図1では、搬送アーム38がレジスト塗布装置COTに出入りするための開口部39に取り付けられているシャッタを図から省いている。
【0024】
次に、このように構成されたレジスト塗布装置COTにおけるレジスト塗布動作について説明する。
先ず、搬送アーム38によりウエハWが開口部39からレジスト塗布装置COTに搬入され、ウエハWはスピンチャックにより吸着保持される。
次いでノズルスキャンアーム31によってノズル30をノズル待機部100から移動し、ノズル30の吐出口を、ウエハWの中心直上部にウエハWと所定の距離をもって位置するように搬送する。
【0025】
その後、スピンチャックに保持されたウエハWを鉛直軸回りに回転し、バルブ37を開き、レジスト供給源36からポンプ等の手段によってフォトレジストをノズル30に供給し、これによりレジストがノズル30の吐出口からウエハW上に吐出される。このとき、ウエハWは回転しているため、ウエハW上に供給されたフォトレジストは遠心力によりウエハW全面に伸展され塗布される。
【0026】
前記ウエハW上への塗布作業が終了すると、レジスト供給源36からのレジスト供給動作が停止されると共にバルブ37が閉じられる。このときノズル30の吐出口は開放された状態となっているが、バルブ37が閉じられるため、バルブ37とノズル30の吐出口との間に残存するフォトレジストは、表面張力により吐出口から落下することはない。
【0027】
次いで、ノズルスキャンアーム31によって、ドレインカップ34上にレジスト供給ノズル30を搬送する。そして、バルブ37が再び開けられ、バルブ37とノズル30の吐出口との間に残存するレジストがドレインカップ34内に排出される。
そして、ノズル30は、ノズルスキャンアーム31によってノズル待機部100に移動され、そこで次のウエハWへのレジスト供給処理のために待機するか、或いはノズル洗浄処理が行われる。
【0028】
続いて、本発明に係るノズル洗浄装置としてのノズル待機部100について詳細に説明する。図2は、ノズル待機部100の縦断面図、図3は、図2のA−A矢視横断面図である。
図2に示すようにノズル待機部100は、ノズルホルダ35の先端が挿入されることによりノズル30を収容可能な洗浄室1を形成する洗浄容器部2と、この洗浄容器部2の下方に設けられ、溶剤雰囲気を生成する溶剤雰囲気形成部3とを備える。
【0029】
洗浄容器部2は、上部に形成された円筒形部2aと下部に形成された漏斗状(逆円錐形状)の内周面を有する漏斗部2bとからなり、図2に示すように円筒形部2aにノズルホルダ35が挿入された状態で、漏斗部2bの中心下部にノズル30の先端部が位置するようになされている。
洗浄容器部2の下端、即ち漏斗部2bの底部には、図3に示すように内直径寸法L1(例えば5mm以下)の開口部2cが形成され、その内直径寸法L1はノズル30先端の外直径寸法L2(例えば2.4mm)よりも大きく形成されている。
また、ノズル30が洗浄容器部2内に配置されたときに、図2に示すようにノズル30先端は開口部2cの上端よりも高い位置に配置され、その距離寸法H1は、0.5〜2mm以下に設定されている。
【0030】
また、漏斗部2bには、その漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤T(例えばシンナー)を流入するための洗浄液供給管4(洗浄液供給手段)が接続され、洗浄液供給管4には制御部20の制御命令により溶剤Tの供給及び供給停止動作を行う洗浄液供給部21(洗浄液供給手段)が接続されている。
【0031】
ここで洗浄液供給管4は、その供給口4aから吐出される溶剤Tが、図3に示すようにノズル30には直接当たらず、前記したように漏斗状の内周面に沿って流れるように設けられている。したがって、ノズル30が洗浄容器部2内に配置され、供給口4aから所定量の溶剤Tが洗浄室1内に供給されると、溶剤Tはノズル30の回りを旋回する渦を形成し、その後、開口部2cから下方に流れ落ちるようになされている。
尚、前記のように開口部2cとノズル30先端との位置関係が設定されるため、ノズル先端周りにおいて滞留することのない渦が形成され、より効果的にノズル洗浄ができるように構成されている。
【0032】
また、溶剤雰囲気形成部3は、洗浄室1の下方において該洗浄室1に連通し、洗浄室1から廃液された溶剤Tの廃液路となる流路管6と、流路管6の下方に設けられ、流路管6を流れ落ちた溶剤を所定量貯留する第一溶剤溜部8(第一の溶剤溜部)とを有する。また、溶剤雰囲気形成部3は、流路管6の上部において当該流路管6に連通しドーナツ状の管で形成された第二溶剤溜部7を有する。
【0033】
第一溶剤溜部8は、流路管6を流れ落ちた溶剤Tを所定量貯留するように機能し、カップ状の溜部8aを形成している。また、第一溶剤溜部8の側方には廃液管9が設けられている。即ち、溜部8aが貯留する溶剤Tが所定量を超えると廃液管9にオーバーフローし、廃液管9から廃液されるよう構成されている。尚、この廃液管9の下方に図示しない吸引手段を設けてもよく、その場合、廃液管9にオーバーフローした溶剤Tを前記吸引手段により吸引することで、より効率的に廃液作業を行うことができる。
【0034】
尚、図2に示すように流路管6の下端6aは、廃液管9の上端9aよりも低い位置まで下方に延設されている。また、廃液管9の上端9aは溜部8aの上端となされる。したがって、溜部8aに最大貯留量の溶剤Tが溜ると、図示するように溶剤Tにより流路管6の下端6aが塞がれた状態となり、流路管6内が密閉される。これにより、溜部8aの溶剤Tが気化すると、流路管6に連通する洗浄室1内に効率的に溶剤雰囲気が形成される。
【0035】
また、第二溶剤溜部7は、図2に示すように所定の深さ寸法を有する溶剤Tの溜部7aと、この溜部7aをオーバーフローした溶剤Tが流路管6に排出されるよう形成された流路管6への連通部7bとを有する。尚、この第二溶剤溜部7にはその外側側方に、洗浄液供給部21から溶剤Tを供給するための溶剤供給路7cが形成されている。即ち、溶剤供給路7cから供給された溶剤Tが溜部7aに貯留されるように構成されている。したがって、洗浄室1に近い位置に第二溶剤溜部7が設けられることによって、溜部7aから気化した溶剤雰囲気が連通部7bを通って洗浄室1に流入し易くなり、より効率的に洗浄室1内に溶剤雰囲気が形成される。
【0036】
尚、前記した制御部20は、図示しない記憶部を備え、この記憶部には、ノズル待機部100の動作が予め決められたソフトウエアからなる1つまたは複数の処理レシピと、その処理レシピのいずれかに基づき各動作が実施されるよう命令が組まれたコマンド部とを有するノズル洗浄プログラムが格納されている。
そして、制御部20は当該プログラムを読み出し、後述のノズル洗浄工程が実施されるよう制御を行う。尚、このノズル洗浄プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記録媒体に記録され収納された状態で制御部20の記憶部に格納される。
【0037】
続いて、このように構成されたノズル待機部100におけるノズル待機時の一連の動作(制御部20による制御動作)について図4のフローに基づき、図5、図6の工程の状態を示すノズル待機部100の断面図を用いながら説明する。
【0038】
先ず、レジスト塗布装置COTにおいて一枚のウエハWに対するレジスト塗布処理を終了したノズル30はノズル待機部100の洗浄室1内に収容され配置される(図4のステップS1)。
ノズル30がノズル待機部100に配置されると、図5(a)に示すように洗浄液供給部21から溶剤Tを第二溶剤溜部7に供給し、その溜部7aから溶剤Tを流路管6にオーバーフローさせる(流路管6に溶剤Tを廃液する)ことにより、さらに第一溶剤溜部8に溶剤Tを貯留する(図4のステップS2)。
尚、前記のようにノズル30のノズル待機部100への配置後、溶剤Tを第一溶剤溜部8、第二溶剤溜部7に貯留するようにしてもよいが、先に溶剤Tを第一溶剤溜部8、第二溶剤溜部7に貯留後、ノズル30をノズル待機部100に配置するようにしてもよい。
【0039】
次いで図5(b)に示すようにノズル30は静止状態とされ、所定時間の間、待機状態となされる(図4のステップS3、S4)。ここで、洗浄室1内及び流路管6内は略密閉空間となされており、第一及び第二溜部7、8に貯留された溶剤が気化することにより、洗浄室1内に所定濃度の溶剤雰囲気が形成される。したがって、ノズル30に付着したレジストが乾燥固化しないようノズル30を待機させることができる。
【0040】
前記所定時間の待機後、ノズル30を洗浄するステップを実行する場合、図6(a)に示すように洗浄液供給部21から洗浄液供給管4に所定量の溶剤Tを供給し、洗浄室1内においてノズル30先端の周りに渦状の溶剤Tの流れを形成する(図4のステップS8)。ここで、溶剤Tの渦状の流れは漏斗部2bに形成されると共に、その下端の開口部2cから流路管6に流れ落ちる。したがって、ノズル30の回りに付着していたレジストの結晶物等は、その渦状の溶剤Tの流れによって効率的に満遍なく除去される。
【0041】
次いで、洗浄室1への所定量の溶剤Tの供給が停止され、洗浄処理が終了すると、図1に示したバルブ37が開かれ、ノズル30から所定量のレジストが吐出されることにより、洗浄後にノズル30先端に付着した溶剤が流し落とされ、次のウエハWへのレジスト供給処理工程に移行する(図4のステップS9)。
尚、ノズル30を洗浄するステップを実行した後においても、第一及び第二溜部7、8には溶剤Tが貯留された状態であるため、洗浄室1内は所定濃度の溶剤雰囲気が形成された状態となっている。したがって、ノズル洗浄後、次のウエハWへのレジスト供給処理工程まで所定時間、洗浄室1内でノズル30を待機させるステップを実行してもよい。
また、ノズル30を洗浄するステップ5の処理において、溶剤Tを第一溶剤溜部8、第二溶剤溜部7に流入させ、溜部に溜った溶剤を定期的に入れ換える処理を行ってもよい。
【0042】
一方、図4のステップS5において、ノズル30の洗浄を行わない場合、さらに継続してノズル30は静止状態とされ、次のレジスト供給処理工程までの所定時間の間、待機状態となされる(図4のステップS6、S7)。
【0043】
尚、図4のステップS5における判断(洗浄するか否か)は、ウエハWの枚葉処理毎にノズル洗浄するか、所定ウエハ枚数毎にノズル洗浄するかの設定に基づき決定され、その設定は選択された処理レシピ毎になされる。
また、洗浄室1において、ノズル30の先端周囲の内周面が漏斗状に形成されているため、ノズル先端ほど周囲の空間が小さくなり、ノズル待機中において溶剤雰囲気の濃度が高く溶剤の結露が発生する場合には、ノズル先端側に結露を生じさせることができる。これにより、よりレジストの乾燥をより防止することができる。一方、レジスト塗布工程に移行する際には、前記のようにノズル洗浄を行うことでノズル先端側に生じた結露を除去することができる。
【0044】
尚、使用する薬液によっては、薬液が溶剤T(シンナー)に触れることによりパーティクルを析出するものがあり、ノズル30から薬液を吐出する際、このパーティクルが薬液と一緒に吐出され、製品不良が発生する虞がある。このため、そのような薬液を使用する場合には、図7に示すように、洗浄容器部2に不活性ガス挿入口40を設け、ノズル先端の洗浄後において、不活性ガス供給部41により不活性ガス挿入口40から洗浄室1内に不活性ガスを供給するようにしてもよい。そのようにすれば、洗浄後のノズル先端の乾燥を促進し、速やかな乾燥処理を行うことができ、パーティクルの析出を防止することができる。
また、図示しないが、ノズル先端洗浄後の洗浄室1内の溶剤雰囲気を排出するための吸引口(排出口)を設けることによっても、ノズル先端の乾燥を促進することができ、パーティクルの析出を防ぐことができる。
【0045】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、洗浄室1内に収容したノズル30に対し、そのノズル先端周囲に旋回する溶剤Tの渦を形成することにより、ノズル先端を効率的に洗浄し、該ノズル先端の付着物を容易に除去することができる。また、この洗浄方法により、ノズル30を洗浄室1に収容する毎にノズル先端位置に多少のずれが生じても、ノズル先端周囲に確実に渦を形成し、ノズル先端の洗浄を行うことができる。
さらに、洗浄室1内に溶剤Tの渦を形成するために、ノズル先端周囲の内周面を漏斗状とし、その内周面に沿って周方向に溶剤Tを流入する構成とすることにより、溶剤Tを流入させるための吐出口は一つで足り、装置に掛かるコストを低減することができる。
【0046】
また、洗浄室1の下方において、該洗浄室1に連通し、洗浄に用いた溶剤T或いは洗浄液供給部21から供給された溶剤Tを貯留する第一溶剤溜部8を設けることにより、貯留した溶剤Tを気化して洗浄室1内に溶剤雰囲気を形成することができる。したがって、洗浄時以外においては溶剤雰囲気中でノズル30を待機させ、レジストの乾燥を防ぐことができる。
【0047】
尚、前記実施の形態において、漏斗部2bの形状は逆円錐形としたが、その形態に限定されず、半球形で漏斗状を形成する構成であってもよい。
また、前記実施の形態においては、基板の例としてウエハを用いて説明したが、本発明のノズル洗浄装置及びノズル洗浄方法において処理する基板はウエハに限らず、LCD基板等、フォトリソグラフィ工程により現像処理される基板に適用される。
また、処理液を吐出するノズルとしてレジスト供給ノズル30を例に説明したが、本発明のノズル洗浄装置及びノズル洗浄方法においては、レジストを吐出するノズルに限らず、他の種類の処理液を吐出するノズルにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えばフォトリソグラフィ工程において半導体ウエハやLCD基板等に処理液を用いて処理するためのノズルを洗浄するノズル洗浄装置に適用でき、半導体製造業界、電子デバイス製造業界等において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明に係るノズル洗浄装置としてのノズル待機部を具備するレジスト塗布装置の平面図である。
【図2】図2は、ノズル待機部の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A矢視横断面図である。
【図4】図4は、ノズル待機部におけるノズルに対する一連の動作を示すフローである。
【図5】図5は、図4のフローに対応するノズル待機部における状態を示す工程図である。
【図6】図6は、図4のフローに対応するノズル待機部における状態を示す工程図である。
【図7】図7は、本発明に係るノズル洗浄装置としてのノズル待機部の他の形態を示す縦断面図である。
【図8】図8は、従来のノズル洗浄装置の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 洗浄室
2 洗浄容器部
3 溶剤雰囲気形成部
4 洗浄液供給管(洗浄液供給手段)
6 流路管
7 第二溶剤溜部(第二の溶剤溜部)
8 第一溶剤溜部(第一の溶剤溜部)
9 廃液管
20 制御部
21 洗浄液供給部(洗浄液供給手段)
30 レジスト供給ノズル(ノズル)
100 ノズル待機部(ノズル洗浄装置)
T 溶剤
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、
前記ノズルを収容し、少なくともノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成された洗浄室と、前記洗浄室の漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤を流入する洗浄液供給手段とを備え、
前記ノズルが前記洗浄室内に収容された際、前記洗浄液供給手段が前記洗浄室内に溶剤を所定量供給することにより、前記ノズルの回りを旋回する溶剤の渦が形成されることを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄室の底部に前記溶剤を廃液する開口部が形成され、
前記開口部の内直径寸法は、前記ノズル先端の外直径寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたノズル洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルが前記洗浄室内に収容された際、該ノズル先端は前記開口部上端よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載されたノズル洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄室内に溶剤雰囲気を形成する溶剤雰囲気形成部を備え、
前記溶剤雰囲気形成部は、前記洗浄室の下方において該洗浄室に連通し、前記洗浄液供給手段により供給された溶剤の廃液路となる流路管と、前記流路管の下方に設けられ、該流路管の下端部よりも上方の高さ位置まで前記溶剤を貯留する第一の溶剤溜部とを有し、
前記第一の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたノズル洗浄装置。
【請求項5】
前記溶剤雰囲気形成部は、前記洗浄液溜部よりも上方に、前記流路管に連通する第二の溶剤溜部を有し、
前記洗浄液供給手段により前記第二の溶剤溜部に溶剤を供給することを特徴とする請求項4に記載されたノズル洗浄装置。
【請求項6】
基板に処理液を吐出するノズルを洗浄するノズル洗浄方法において、
前記ノズルを、少なくともノズル先端周囲の内周面が漏斗状に形成された洗浄室に収容するステップと、
前記洗浄室の漏斗状の内周面に沿って周方向に洗浄液としての溶剤を所定量流入し、前記ノズルの回りを旋回する溶剤の渦を形成することによりノズル洗浄を行うステップとを実行することを特徴とするノズル洗浄方法。
【請求項7】
前記ノズル洗浄を行うステップの前または後において、
前記洗浄室の下方で該洗浄室に連通する流路管に、前記溶剤を廃液するステップと、
前記流路管の下方に設けられた第一の溶剤溜部に、前記流路管に廃液された溶剤を該流路管の下端部よりも上方の高さ位置まで貯留するステップとを実行し、
前記第一の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることを特徴とする請求項6に記載されたノズル洗浄方法。
【請求項8】
前記ノズル洗浄を行うステップの前または後において、
前記洗浄液溜部よりも上方に設けられ、前記流路管に連通する第二の溶剤溜部に溶剤を供給するステップを実行し、
前記第二の溶剤溜部に貯留された溶剤が気化することにより前記洗浄室内に溶剤雰囲気が形成されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載されたノズル洗浄方法。
【請求項9】
前記請求項6乃至請求項8のいずれかに記載されたノズル洗浄方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
前記請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−317706(P2007−317706A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142665(P2006−142665)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】