説明

ノズル

【課題】所定の間隔を隔てて配置される容器内方に効率よく気体を導入しうるノズルの提供。
【解決手段】容器200と非接触状態で容器200の内方に気体を導入するためのノズル100であって、第一流量の気体が吐出される主吐出口101と、主吐出口101を囲む環状であり、第二流量の気体が、主吐出口101が吐出する気体と同方向に吐出される副吐出口102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、容器内方をパージするために容器に気体を導入するノズルに関し、特に、容器と非接触で気体を導入するノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体装置を製造する工程において、ウエハーやガラス基板、レチクル等を、劣化や変性しないように保管する必要がある。例えば、ウエハーの場合は、酸化を防止するため低酸素の状態で保管する必要があり、また、レチクルの場合は、ヘイズの成長を抑制するため水分(H2O)を排除した雰囲気内で保管する必要がある。また、ウエハーなどにパーティクル(微小塵埃)が付着することをできるだけ回避する必要がある。従って、清浄な気体で、かつ、保管対象に対応したガス種からなる気体が充満した容器内でウエハーなどを保管する場合が多い。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されている場合のように、保管されているウエハーを複数の容器にまたがってソートしなければならない場合がある。このような場合、容器を開放する必要が生じる。そのため、開放された容器内に清浄な気体を導入し、容器内を容器外方の雰囲気より正圧にして高い清浄度を保ついわゆるパージ処理が行われる。
【0004】
また、レチクルなどは比較的長期間保管されるため、密閉構造の容器で保管するよりも、常にパージ処理が施される容器で保管される方が汚染が少ないと考えられている。従って、常に清浄な気体で容器をパージし続けることのできるパージ装置などが存在している。
【特許文献1】特開2001−31212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のパージ装置を使用している場合においても、保管しているウエハーやレチクルがパーティクルにより汚染されることがまれに発生することが知られている。そして、本願発明者は、鋭意研究と努力の結果、まれに発生するパーティクルによる汚染がパージ装置に由来することを突きとめるに至った。さらに、パージ装置に載置される容器と、容器に対して気体を吐出するノズルとが接触しているため、容器とノズルとの摩擦や衝撃などによってパーティクルが形成され、当該パーティクルがパージ用の気体に乗って容器内を汚染することを見いだした。
【0006】
本願発明は、上記知見に基づきなされたものであり、容器と接触することなしに容器に気体を導入しパーティクルの発生を回避しうるノズルでありながら、効率よく気体を容器に導入することのできるノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明にかかるノズルは、容器と非接触状態で容器の内方に気体を導入するためのノズルであって、第一流量の気体が吐出される主吐出口と、前記主吐出口を囲む環状であり、第二流量の気体が、前記主吐出口が吐出する気体と同方向に吐出される副吐出口とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、副吐出口から吐出される気体により、主吐出口の周囲にエアカーテンが形成される。従って、主吐出口から吐出される気体がノズルと容器との隙間から漏れることを可及的に抑制することができ、効率よく容器内に気体を導入することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、容器内方をパージするためにノズルに対し容器の着脱を繰り返しても容器とノズルとの接触によりパーティクルが発生することが無い。加えて、ノズルから吐出される気体を効率よく容器内方に導入することができ、無駄な気体の発生量を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本願発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本願発明の実施の形態であるノズルを示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【0012】
同図に示すように、ノズル100は、主吐出口101と、副吐出口102と、連通孔103と、主管体111と副管体112とを備えている。
【0013】
主管体111は、主吐出口101を備える部材であり、パージ用の気体が挿通される管状の部材である。本実施の形態の場合、主管体111は円筒形状であり、中空の部分が主吐出口101として機能している。
【0014】
副管体112は、主管体111を囲んだ状態で、主管体111との間に隙間が生じるように取り付けられる管形状の部材である。また、主管体111との間に形成される隙間は副吐出口102として機能する。本実施の形態の場合、副管体112は、主管体111と同心円状に配置される円筒であり、主管体111の外径よりも僅かに大きな内径を備えている。また、主管体111の端部には径方向に僅かに張り出したフランジ部が設けられており、副管体112は、前記フランジ部と嵌め合うことで主管体111との位置関係が固定される。従って、主管体111と副管体112との間に副吐出口102として機能する隙間が所定の幅を維持して主管体111を取り囲む状態で維持される。
【0015】
ここで、主吐出口101と副吐出口102とに同一の圧力の気体を導入した場合、主吐出口101から吐出される気体の流量である第一流量より、副吐出口102から吐出される気体の流量である第二流量が少なくなるように、副吐出口102の幅が決定される。具体的には、副吐出口102の幅は、主吐出口101の径の2.5%程度が好ましい。例えば、主吐出口101の径が4mmの場合、副吐出口102の幅は0.1mm程度とするのが好ましい。
【0016】
連通孔103は、主吐出口101内を流通する気体の一部を副吐出口102に導くための孔である。本実施の形態の場合、連通孔103は、主管体111の周壁を貫通し、主吐出口101から副吐出口102に至る態様で設けられている。
【0017】
連通孔103により、主吐出口101を通過する気体(図1(a)に矢印で示す)が分岐され、一部が副吐出口102から吐出される。従って、気体を供給する経路が1系統で良く、コストの増加を抑制しつつ本願発明の効果を奏することが可能となる。
【0018】
次に、ノズル100の使用態様を説明する。
【0019】
図2は、ノズルが備えられたパージ装置を示す正面図である。
【0020】
同図に示すように、パージ装置210は、容器200が載置されると対応するノズル100から清浄な気体を吐出し、容器200内方をパージすることができる装置であり、複数個の容器200が載置可能な棚板211を備えたラック状の装置である。パージ装置210は、容器200が載置される位置に対応する棚板211の内部に、ノズル100を備えた吐出ユニット212が設けられ、各吐出ユニット212には気体が案内される導管213が接続されている。また、導管213には各吐出ユニット212に供給する気体の流量を大まかに調整するメインバルブ214が取り付けられている。
【0021】
吐出ユニット212は、容器200が棚板211上の所定の位置に載置されたか否かを検知し、容器200が検知された場合に、ノズル100から気体を吐出させることができる装置である。
【0022】
図3は、ノズルと容器とからなるパージ装置の接続部分を概略的に示す断面図である。
【0023】
同図に示すように、パージ装置は、ノズル100と容器200とが接続された状態において、ノズル100と容器200との間には若干の隙間が形成される。当該隙間は、容器200と棚板211とが接触することによって形成されている。
【0024】
容器200は、副吐出口102から吐出される気体が当たる部分に、テーパ状の案内部201を備えている。
【0025】
案内部201は、副吐出口102から吐出される気体を主吐出口101が吐出する気体方向に案内することができる部分であり、副吐出口102から吐出される気体を副吐出口102から吐出される気体側に反射する反射板的な機能を備えている。これにより、副吐出口102から吐出される気体の多くが、主吐出口101から吐出される気体を押さえつつ、主吐出口101から吐出される気体と共に容器200の内方に導入される。
【0026】
ここで、吐出ユニット212は、容器200が載置されたことを検出し、ノズル100の主吐出口101から第一流量の気体を吐出させる。主吐出口101を流通する気体は、連通孔103を介して副吐出口102に導入され、副吐出口102からも第二流量で吐出される。副吐出口102から吐出される気体は、主吐出口101を取り囲む気体流の薄い層を形成する。当該気体流の層は、ノズル100と容器200との隙間に形成され、あたかもノズル100と容器200との隙間を封止するように存在する。従って、主吐出口101から吐出される気体は、ノズル100と容器200との隙間から漏れ出すことが抑制され、ほとんどが容器200の内方に導入される。なお、副吐出口102から吐出される気体の一部は、ノズル100と容器200との隙間を通じて漏れ出すが、副吐出口102から吐出される第二流量は、主吐出口101から吐出される第一流量よりも少ないため、全体としては漏れ量を抑制し得て、ノズル100と容器200との間に隙間が存在する場合でも効率よく気体を容器に導入することが可能となる。
【0027】
(実施の形態2)
次に、本願発明に係る他の実施の形態を説明する。
【0028】
図4は、他の実施の形態であるノズルを示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【0029】
同図に示すように、ノズル100は、前記実施の形態と同様、主吐出口101と、副吐出口102と、連通孔103と、主管体111と副管体112とを備えている。
【0030】
主管体111は、外形が円錐台形状となっており、主管体111の中心軸に沿って主吐出口101が設けられている。
【0031】
副管体112は、主管体111の外形に対応した円錐台形状の孔を備えた管形状の部材である。また、主管体111との間に形成される隙間は副吐出口102として機能する。
【0032】
副吐出口102は、主吐出口101側へ向けて気体を吐出できるように、先端が主吐出口101に近づくようなテーパ形状となっている。すなわち、副吐出口102は、先端に向かって徐々に縮径する形状となっている。
【0033】
副吐出口102の形状が上記のような形状となっていると、副吐出口102から吐出される気体がノズル100と容器200との隙間を通して漏れ出す量を抑制することができる。従って、全体的により効率よく気体を容器200に導入することが可能となる。
【0034】
なお、気体とは、容器200をパージする為に使用される気体であり、気体の種類は特に限定されない。例えばパージの対象の容器200がレチクルを保持する容器200の場合、用いられる気体としては清浄な乾燥空気が好適である。レチクルは空気による酸化の危険性が低いからである。また、パージの対象の容器200がウエハーを保持する容器200の場合、用いられる気体としては、窒素などの不活性ガスが好適である。ウエハーは、酸化の危険性が高いからである。また、清浄な気体とは、気体内に含まれる単位体積当たりのパーティクルの数が0または少ない状態の気体である。気体は、複数種類のガスが混合された空気のような気体でも良く、単数種類のガスからなるものでもかまわない。
【0035】
なお、特許請求の範囲、及び、明細書において、主吐出口101や副吐出口102と記載する「吐出口」とは、吐出する気体の方向を決定することができる部分を示している。つまり、「吐出口」とは二次元的な概念ではなく、三次元的な概念で用いている。従って、「吐出口がテーパ形状」とは、徐々に縮径する三次元の環状空間、及び、当該環状空間を形成する主管体111と副管体112との部分を示している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は、レチクル、ウエハー、表示装置用ガラス基板など、パーティクルによる汚染を回避しなければならないものを収容する容器に清浄な気体を導入するノズルに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本願発明の実施の形態であるノズルを示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図2】ノズルが備えられたパージ装置を示す正面図である。
【図3】ノズルと容器との接続部分を概略的に示す断面図である。
【図4】他の実施の形態であるノズルを示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0038】
100 ノズル
101 主吐出口
102 副吐出口
103 連通孔
111 主管体
112 副管体
200 容器
210 パージ装置
211 棚板
212 吐出ユニット
213 導管
214 メインバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と非接触状態で容器の内方に気体を導入するためのノズルであって、
第一流量の気体が吐出される主吐出口と、
前記主吐出口を囲む環状であり、第二流量の気体が、前記主吐出口が吐出する気体と同方向に吐出される副吐出口と
を備えるノズル。
【請求項2】
前記副吐出口は、前記主吐出口が吐出する気体に向かって気体が吐出されるように傾いて設けられる請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
さらに、
前記主吐出口内を流通する気体の一部を副吐出口に導く連通孔を備える請求項1に記載のノズル。
【請求項4】
さらに、
前記主吐出口が設けられる主管体と、
前記主管体を囲んだ状態で、前記主管体との間に隙間が生じるように取り付けられる副管体とを備え、
前記隙間が前記副吐出口となされる
請求項1に記載のノズル。
【請求項5】
パージ対象物を収容する容器と、
前記容器と非接触状態で前記容器の内方に気体を導入するためのノズルとを備えるパージ装置であって、
前記ノズルは、
第一流量の気体が吐出される主吐出口と、
前記主吐出口を囲む環状であり、第二流量の気体が、前記主吐出口が吐出する気体と同方向に吐出される副吐出口と
を備え、
前記容器は、
前記副吐出口から吐出される気体を前記主吐出口が吐出する気体方向に案内する案内部を備える
パージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−45138(P2010−45138A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207392(P2008−207392)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】