説明

ノロ水の上澄み吸引濾過装置

【課題】フィルタの目詰まりが起こりにくく、給水ポンプも壊れにくいノロ水の上澄み吸引濾過装置。
【解決手段】ノロ水を回収するための密閉された第1容器1と、第1容器1の内部に設置されて上部は閉じられ、底部にはフィルタを備えた第2容器2と、第2容器2と連結管路8を介して連結され、第2容器2で濾過された濾過水を溜める密閉された第3容器3とを備え、第1容器1を第1の負圧発生装置4aに、第3容器3を第2の負圧発生装置4bに各々連結するとともに、第1容器1の負圧P1を第3容器3および第2容器2の負圧P2より高く設定し、第1の負圧発生装置4aにより第1容器1に回収されたノロ水を、第2の負圧発生装置4bにより第2容器2の底部のフィルタ6を介して第2容器2から第3容器3に吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石、コンクリート穿孔・切削するドリル工具を冷却した冷却水が流れ落ちて汚濁したノロ水を回収して濾過し、再び冷却水として利用するためのノロ水の上澄み吸引濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、岩石、コンクリート等を穿孔するドリル工具は冷却水で冷却されるが、冷却水を有効に再利用するための回収濾過装置が知られている。その装置の1つが特許文献1に示されている。
【0003】
流れ落ちた冷却水は穿孔屑を含んで汚濁したノロ水となるので、このようなノロ水を再び使用できるようにするためには、濾過する必要がある。従来のノロ水の濾過装置は、給水ポンプでノロ水を吸い上げ、そのままフィルタに押し付けて加圧することにより濾過する技術であった。
【特許文献1】特開平11−311083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ノロ水を直接に給水ポンプで吸い上げると中に含まれる穿孔屑や粉塵が給水ポンプの構成部品を破損させることがあり、またフィルタは、回収されたノロ水の中に常時漬かっているため、フィルタの目詰まりが起こりやすく、タンクの中には大量のノロ水が残り掃除が大変である。
【0005】
また、2個以上の気密、液密な密閉容器を必要とするので高価なものにならざるを得なかった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消し、フィルタの目詰まりが起こりにくく、濾過効率を向上させることができるノロ水の上澄み吸引濾過装置を提供することを第1の課題とし、さらに気密、液密な密閉容器を少なくすることもできるノロ水の上澄み吸引濾過装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ノロ水を回収するための密閉された第1容器と、第1容器の内部に設置されて上部は閉じられ、底部にはフィルタを備えた第2容器と、第2容器と連結管路を介して連結され、第2容器で濾過された濾過水を溜める密閉された第3容器とを備え、第1容器を第1の負圧発生装置に、第3容器を第2の負圧発生装置に各々連結するとともに、第1容器の負圧P1を第3容器および第2容器の負圧P2より高く設定し、第1の負圧発生装置により第1容器に回収されたノロ水を、第2の負圧発生装置により第2容器の底部のフィルタを介して第2容器から第3容器に吸引することを特徴とする。
【0008】
前記第2の課題を解決するため、請求項2に係る発明は、ノロ水を回収するための第1容器と、第1容器の内部に設置されて上部は閉じられ、底部にはフィルタを備えた第2容器と、第2容器と連結管路を介して連結され、第2容器で濾過された濾過水を溜める密閉された第3容器とを備え、ノロ水供給源と第1容器とを連結する連結管路を開閉可能とし、この開閉部の上流側を第1の負圧発生装置に、上記第3容器を第2の負圧発生装置に各々連結するとともに、第1容器の負圧P1を第3容器および第2容器の負圧P2より高く設定し、1の負圧発生装置により吸引されたノロ水を上記開閉部に溜めた後に上記開閉部を開放して第1容器に回収し、このノロ水を、第2の負圧発生装置により第2容器の底部のフィルタを介して第2容器から第3容器に吸引することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2において、上記第1容器の内側に、ノロ水を回収するための上部が開放された回収容器を配置し、回収容器の内側に上記第2容器を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、第1の負圧発生装置により第1容器を負圧にし、ノロ水を回収する。回収が進むとその上澄み液の水面がだんだん上がってきて、第2容器底部のフィルタを越えると濾過できる状態になる。負圧発生装置により第3容器および第2容器内の圧力を第1容器の負圧よりも低くすることにより、第1容器内のノロ水はフィルタを通り、濾過されて第2容器内に吸引され、さらに、連結管路を通って第3容器に溜まる。
【0011】
このように、第2容器の底部に設けられたフィルタは、第1容器のノロ水の上澄みを濾過する構成である。ノロ自体は沈殿してフィルタには付着しにくいので、フィルタの目詰まりが起こりにくい。そして、給水ポンプは濾過水を送ることになるために、部品が損傷したり、壊れたりしにくい。
【0012】
さらに、常に穿孔機器と負圧発生装置を連結する連結管路内の気密が保たれるため、ノロ水を、壊れやすい給水ポンプ等を用いることなく上澄み吸引濾過装置に供給することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、第1の負圧発生装置によりノロ水供給源に続く連結管路は負圧になり、閉じられた部位にノロ水が溜まる。一定量が溜まったら、連結管路を開放することによりノロ水は第1容器に送られる。再び連結管路を閉じてノロ水を溜めては開いて第1容器に送る。これを繰り返すと、第1容器のノロ水は第2容器の底部を越える。そこで、第2の負圧発生装置を作動させることにより、第1の発明の場合と同様に、第1容器内のノロ水はフィルタを通り、濾過されて第2容器内に吸引され、さらに、連結管路を通って第3容器に溜まる。
【0014】
したがって、請求項1に係る発明の場合と同様に、フィルタの目詰まりが起こりにくく、第3容器からの給水ポンプの部品損傷などが防止されるとともに、ポンプによることなくノロ水を第1容器に回収することができる。
【0015】
さらに、気密、液密の密閉容器は第3容器だけでよく、第1容器と第2容器は密閉する必要がないので、コストを低く抑えることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、第1容器に回収されたノロ水のノロは回収容器に回収され、第1容器を開放して、回収容器を外に出して容易に廃棄等の処理して第1容器の清掃作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面によって本発明に係るノロ水の上澄み吸引濾過装置を図1の概略図に基づいて説明する。
【0018】
まず、第1の実施形態について説明する。同図において符号1は第1容器を示す。第1容器1は、ノロ水10の回収容器であって気密、液密となるように密閉され、上部には穿孔現場からのノロ水10の回収手段が形成されている。また、第1容器1は第1の負圧発生装置4aに連結されている。
【0019】
なお、第1容器1の内側には内側容器として回収容器5が配置されている。
【0020】
次に、第1容器1の内部には、第2容器2が配置されている。第2容器2の上部は閉じられ、底部にはフィルタ6が配置されている。
【0021】
次に、第3容器3は、濾過水の貯水容器で、気密、液密となるように密閉され、上記第2容器2は連結管路7を介して第3容器3に連結されている。また、第3容器3には、穿孔現場などで使用されるドリル工具などの接続機器に濾過水を供給する給水ポンプ9が設けられている。また、第3容器3は第2の負圧発生装置4bに連結されている。
【0022】
上述の構成において、第1の負圧発生装置4aにより第1容器1を負圧P1にし、この状態でノロ水10を回収する。ノロ水10は第1容器1に溜まり、時間の経過につれてノロ10bの部分は底部に沈殿していく。ノロ水10の回収が進むとその水面がだんだん上がってきて第2容器2の底部のフィルタ6を越えると濾過できる状態になる。この段階で第2の負圧発生装置4bにより第3容器3を負圧P2にする。すると、第3容器3と連結管路7で連結されている第2容器2も負圧P2となる。第1容器1の負圧(圧力)P1を第2容器2及び第3容器3の負圧(圧力)P2をより高くすることにより、つまり各容器の圧力をP2<P1<大気圧とすることにより、第1容器1内のノロ水10はまずフィルタ6を通り濾過されて第2容器2内に吸引される。吸引されるのはノロ水の上澄み10aである。そして、さらに連結管路7を通って第3容器3内に吸引されて溜まる。この状態で給水ポンプ9を作動させると、第3容器3内の濾過水はふたたび穿孔現場に戻され、コアドリルなどの接続機器に供給される。
【0023】
以上のようにフィルタ6は、ノロ水10の上澄み10aだけを吸引して濾過するので、目詰まりしにくく、給水ポンプ9も濾過された水が通るので壊れにくい。
【0024】
なお、第1容器1の底部に沈殿したノロ10bは、回収容器5に回収され、第1容器1を開放することにより回収袋とともに外に出して容易に廃棄等の処理をすることができる。
【0025】
次に、第2の実施形態について図2および図3で説明する。本実施形態では、基本的構成は上記の第1の実施形態と同じであるが、第1容器1にノロ水10を回収する機構に特徴を有する点、および、上記第1容器1には負圧発生装置は連結されておらず、第1容器1は開放されており、第1容器1内の圧力P1は大気圧である点が異なる。
【0026】
図2に示すように、第1容器1にノロ水10を回収する手段として、第1の負圧発生装置4aを用いる。ノロ水10の発生する穿孔現場(ノロ水供給源)と第1容器1とを連結する連結管路8の端部に大径の管路11が垂直に設けられ、大径管路11の下端は、第1容器1の底部に開口している。大径管路11の内部には開閉蓋12が開閉自在に配置されていて、開閉蓋12が閉じられているとき大径管路11の内面と開閉蓋12はシールされ、連結管路8は気密が保たれる。そして、開閉蓋12の上流側は第1の負圧発生装置4aに連結されている。
【0027】
次に、図3によりノロ水10の回収動作を説明する。上述の構成において、まず、図3(a)に示すように、上記大径管路11内の開閉蓋12を閉じた状態で第1の負圧発生装置4aにより穿孔現場間の連結管路8を負圧にする。これにより、ノロ水10は大径管路11内に流入し開閉蓋12の上部に溜まる。そして、所定量のノロ水10が溜まった後に、図3(b)に示すように、図示しない駆動装置により開閉蓋12を開放し、ノロ水10を第1容器内に流下させる。ノロ水10の上面が第2容器2のフィルタ6を越えた後、図3(c)に示すように第1容器のノロ水10の上面が大径管路11の最下部よりも高い状態にあるときは、ノロ水10が開閉蓋12の役割を果たし、連結管路8内の気密は保たれるため、開閉蓋12は開いたままの状態とし、第1容器1へのノロ水10の回収を継続的に行う。
【0028】
ノロ水10の上面が大径管路11の最下部より低くなり、図3(d)の状態になると、連結管路8内の気密が保てなくなるため、濾過が進んで大径管路11の最下部より若干高い位置までノロ水10の上面が下がった時点で開閉蓋12を閉じ、開閉蓋12の上部にノロ水10が所定量溜まるまでこの状態で回収を続ける。このような大径管路11内の開閉蓋12の開閉動作を繰り返し行うことにより、第1容器1へのノロ水10の回収を行う。
【0029】
次に、第1容器1に溜まったノロ水10の濾過については、基本的には第1の実施形態と同じ方式にて行う。すなわち図2において、第1容器の濾過水上面が第2容器2底部のフィルタ6を越えた段階で、第3容器3を負圧発生装置4bにて負圧P2とし、第3容器3と連結管路7で連結している第2容器2についても負圧P2とする。第1容器1内の圧力P1は大気圧であるため、第1容器1内のノロ水10の上澄み10aはフィルタ6を通って濾過されて第2容器2内に吸引され、さらに連結管路7を通って第3容器3内に吸引される。この状態で給水ポンプ9を作動させると、第3容器3内の濾過水はふたたび穿孔現場に戻され、コアドリルなどの接続機器に供給される。
【0030】
上記構成によれば、穿孔機器からのノロ水10の回収を、給水ポンプを用いることなく行うことができるため、高低差のある穿孔現場において、ノロ水10の上澄み回収濾過装置の設置位置に自由度をもたせることができ、給水ポンプを使用することによるポンプの故障も防止することができる。
【0031】
また、フィルタ6は、ノロ水10の上澄み10aだけを濾過するので、目詰まりしにくく、給水ポンプ9も濾過された水が通るので壊れにくい。
【0032】
なお、第1容器1の底部に沈殿したノロ10bは、回収容器5としての回収袋に回収され、第1容器1を開放することにより回収袋とともに外に出して容易に廃棄等の処理をすることができる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、第1容器1は密閉する必要がなく、気密、液密な密閉容器は第3容器4の1個だけで済むのでコストを低く抑えることができる。
【0034】
なお、上記実施形態では第2容器2から第3容器3へ濾過水を送るのに、第3容器3に連結した第2負圧発生装置4bで実施しているが、この第2負圧発生装置4bの代わりに、連結管7に供給ポンプ等の加圧発生装置を設けて実施してもよい。また、実施例では負圧発生装置を2個利用しているが、1個で共用または複数個の負圧発生装置を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ノロ水の上澄み濾過装置の第1の実施形態の構成概略図である。
【図2】ノロ水の上澄み濾過装置の第2の実施形態の構成概略図である。
【図3】(a)〜(d)は大径管路の開閉蓋の動作説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 第1容器
2 第2容器
3 第3容器
4a 第1の負圧発生装置
4b 第2の負圧発生装置
6 フィルタ
7、8 連結管路
9 給水ポンプ
10 ノロ水
12 開閉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノロ水を回収するための密閉された第1容器と、第1容器の内部に設置されて上部は閉じられ、底部にはフィルタを備えた第2容器と、第2容器と連結管路を介して連結され、第2容器で濾過された濾過水を溜める密閉された第3容器とを備え、第1容器を第1の負圧発生装置に、第3容器を第2の負圧発生装置に各々連結するとともに、第1容器の負圧P1を第3容器および第2容器の負圧P2より高く設定し、第1の負圧発生装置により第1容器に回収されたノロ水を、第2の負圧発生装置により第2容器の底部のフィルタを介して第2容器から第3容器に吸引する
ことを特徴とするノロ水の上澄み吸引濾過装置。
【請求項2】
ノロ水を回収するための第1容器と、第1容器の内部に設置されて上部は閉じられ、底部にはフィルタを備えた第2容器と、第2容器と連結管路を介して連結され、第2容器で濾過された濾過水を溜める密閉された第3容器とを備え、
ノロ水供給源と第1容器とを連結する連結管路を開閉可能とし、この開閉部の上流側を第1の負圧発生装置に、上記第3容器を第2の負圧発生装置に各々連結するとともに、第1容器の負圧P1を第3容器および第2容器の負圧P2より高く設定し、
第1の負圧発生装置により吸引されたノロ水を上記開閉部に溜めた後に上記開閉部を開放して第1容器に回収し、このノロ水を、第2の負圧発生装置により第2容器の底部のフィルタを介して第2容器から第3容器に吸引する
ことを特徴とするノロ水の上澄み吸引濾過装置。
【請求項3】
上記第1容器の内側に、ノロ水を回収するための上部が開放された回収容器を配置し、回収容器の内側に上記第2容器を配置したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のノロ水の上澄み吸引濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−160179(P2007−160179A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357844(P2005−357844)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】