説明

ハイドロリックシール構造

【課題】オイル溜まりの冷却効率を高めるハイドロリックシール構造を提供することを目的にする。
【解決手段】低速回転軸2の外周から外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を外周側で囲むよう高速回転軸4に形成され且つフランジ22との間に下流空間室27を構成するフランジ受部23と、フランジ受部23及び高速回転軸4から延在して中間空間室32を構成する中間受部29と、中間受部29から延在して上流空間室36を構成する入側受部33と、入側受部33と中間空間室32を連通する第一貫通孔38と、中間空間室32と下流空間室27を連通する第二貫通孔39と、入側受部33の上流空間室36へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの高速回転軸と低速回転軸の間をシールするハイドロリックシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジェットエンジン等のガスタービンエンジンは、空気を取り入れるように上流側に配置される高圧コンプレッサ及び低圧コンプレッサと、燃焼ガスにより回転駆動する高圧タービン及び低圧タービンと、高圧タービンの回転力を高圧コンプレッサに伝達する高速回転軸と、高速回転軸の内側で同軸上に配置され且つ低圧タービンの回転力を低圧コンプレッサに伝達する低速回転軸とを備えている。
【0003】
又、高速回転軸と低速回転軸の間には、高圧雰囲気を維持するハイドロリックシール構造が形成されている場合がある。
【0004】
図7に示す如く、ハイドロリックシール構造1は、低速回転軸の外周面2aから外方に向かって形成されるフランジ3と、フランジ3を外周側で囲むように高速回転軸4の外周に形成されるフランジ受部5とを備えており、フランジ受部5は、高速回転軸4の外周端から径方向で外方へ向かって形成される壁面状の支持部6と、支持部6から高速回転軸4の延在方向と略平行に形成される外周部7と、外周部7の先端から低速回転軸のフランジ3を挟み込むよう低速回転軸の外周面2aに向かって配置される壁面状の側面部8とを備え、フランジ3の両面側に所定幅の空間室9を構成すると共に、側面部8の下端と低速回転軸の外周面2aとの間に、空間室9と低速回転軸側の外部とを連通する開口10を形成している。
【0005】
又、ハイドロリックシール構造1は、低速回転軸側でフランジ受部5に隣接するようにオイルノズル11を備え、オイルノズル11は、下方の噴射口(図示せず)より、開口10へ向けてオイルを噴射するようになっている。ここで、図中、12は低速回転軸に接するベアリング、13はベアリング12を支持するベアリング支持部、14はオイル漏れを防止するシール部材を示している。
【0006】
ガスタービンエンジンを駆動する際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、空間室9にオイル溜まり15を形成し、フランジ3とフランジ受部5の間をシール状態にし、低速回転軸と高速回転軸4の間を高圧雰囲気で保持するようにしている。
【0007】
次に、オイルノズル11からオイルを噴射し、オイルを、開口10を介してオイル溜まり15へ流入させ、更にオイル溜まり15内で循環をさせてから同じ開口10より排出し、フランジ3とフランジ受部5の相対速度の差により生じるオイル溜まり15の発熱による温度上昇、特に図8に示す如くフランジ3の発熱h1やフランジ受部5の発熱h2による温度上昇を抑制するようにしている。
【0008】
ここで、上記したハイドロリックシール構造としては、特許文献1及び特許文献2に示されるものがある。
【特許文献1】特開2003−286806号公報
【特許文献2】特開2003−214111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、オイルノズル11から噴射されたオイルは、図8に示す如く、オイル溜まり15への流入と排出が同じ開口10であるため、オイルの排出が阻害され、オイル溜まりの冷却効率が十分でないという問題があった。又、オイルノズル11から噴射されたオイルは、オイル溜まり15の奥まで循環することなく排出されるため、オイル溜まり15の奥に位置する部分(フランジ受部5の支持部6等)の発熱h3を冷却することができず、オイル溜まり15等の発熱による温度上昇を適切に抑制することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、オイル溜まりの冷却効率を高めるハイドロリックシール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むよう高速回転軸に形成され且つフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、該フランジ受部及び高速回転軸から延在して中間空間室を構成する中間受部と、該中間受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、前記入側受部と中間空間室を連通する第一貫通孔と、前記中間空間室と下流空間室を連通する第二貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成し、中間空間室に中間オイル溜まりを形成し、更に下流空間室に下流側オイル溜まりを形成したことを特徴とするハイドロリックシール構造、に係るものである。
【0012】
本発明において、前記フランジ受部は、高速回転軸の外周から外方に向かって形成される支持部と、該支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、該下流側外周部から低速回転軸のフランジを挟み込むよう低速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記中間受部は、フランジ受部の支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される中間側外周部と、該中間側外周部から高速回転軸の外周に接続される中間支持部とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記第一貫通孔は、回転軸線の径方向で第二貫通孔よりも外方に配置されると共に、前記第二貫通孔は、中間オイル溜まり及び下流側オイル溜まりのオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記中間受部に、中間空間室の圧を制御する空気穴を備えることが好ましい。
【0015】
本発明は、低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むようフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、前記下流空間室と区画する中間突起部を形成し且つ高速回転軸から延在して中間空間室を構成する中間受部と、該中間受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、該入側受部と中間空間室を連通する貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成し、中間空間室に中間オイル溜まりを形成し、更に下流空間室に、中間突起部の先端を超えて流下するオイルにより下流側オイル溜まりを形成したことを特徴とするハイドロリックシール構造、に係るものである。
【0016】
本発明において、前記フランジ受部は、フランジに隣接するよう高速回転軸の径方向に沿って形成される中間突起部と、該中間突起部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、該下流側外周部から低速回転軸のフランジを挟み込むよう低速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記中間受部は、フランジ受部の中間突起部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される中間側外周部と、該中間側外周部から高速回転軸の外周に接続される中間支持部とを備えることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記貫通孔は、回転軸線の径方向でフランジ受部の中間突起部の先端よりも外方に配置されると共に、前記中間突起部の先端は、中間オイル溜まり及び下流側オイル溜まりのオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記入側受部は、中間受部の中間支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される上流側外周部と、該上流側外周部から高速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備えることが好ましい。
【0019】
本発明において、前記オイル供給手段は、上流空間室の上流側開口に向かってオイルを噴射するように配置されることが好ましい。
【0020】
本発明において、前記中間空間室に、オイルに遠心力を発生させるフィンを備えることが好ましい。
【0021】
本発明において、前記フィンは、オイルを貫通孔へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハイドロリックシール構造によれば、オイルを上流側オイル溜まりから中間オイル溜まりを介して下流側オイル溜まりへ流下させるので、オイル溜まりへのオイルの流入と排出が同じ開口である場合と異なり、オイルの流入と排出を別々にして下流側オイル溜まりの冷却効率を高め、オイル溜まりの温度上昇を抑制することができる。又、オイルを中間オイル溜まりから第二貫通孔又は中間突起部を介して下流側オイル溜まりへ流下させるので、下流側オイル溜まりの奥に位置する部分にオイルが流下して下流側オイル溜まりを冷却し、オイル溜まりの奥に位置する部分の温度上昇を適切に抑制することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施する形態の第一例を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明のハイドロリックシール構造を実施する形態の第一例であり、図7、図8と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
ハイドロリックシール構造21は、低速回転軸2の外周面2aから外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を外周側で囲むよう高速回転軸4の外周に形成されるフランジ受部23とを備えており、フランジ受部23は、高速回転軸4の外周端から径方向で外方へ向かって形成される壁面状の支持部24と、支持部24から高速回転軸4の延在方向と略平行に形成される下流側外周部25と、下流側外周部25の端部から低速回転軸2のフランジ22を挟み込むよう低速回転軸2の径方向で外周面2aに向かって配置される壁面状の側面部26とを備え、フランジ22の両面との間に、所定幅の下流空間室27を構成すると共に、側面部26の下端と低速回転軸2の外周面2aとの間に、下流空間室27と低速回転軸2側の外部とを連通する下流側開口28を形成している。
【0025】
又、ハイドロリックシール構造21は、高速回転軸4側でフランジ受部23に隣接するよう、フランジ受部23及び高速回転軸4から延在する中間受部29を備えており、中間受部29は、フランジ受部23の下流側外周部25と連なるよう、支持部24の上端から下流側外周部25と反対側へ高速回転軸4の延在方向と略平行に配置される中間側外周部30と、中間側外周部30の端部から高速回転軸4の外周面4aに接続される中間支持部31とを備え、中間側外周部30、支持部24、中間支持部31、高速回転軸4の外周面4aに囲まれる部分に、中間空間室32を構成している。
【0026】
更に、ハイドロリックシール構造21は、中間受部29に隣接するよう、中間受部29から延在する入側受部33を備えており、入側受部33は、中間受部29の中間側外周部30と連なるよう、中間支持部31の上端から下流側外周部25と反対側へ高速回転軸4の延在方向に略平行に配置される上流側外周部34と、上流側外周部34の端部から高速回転軸4の径方向で外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部35とを備え、入側受部33に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室36を構成すると共に、側面部35の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室36と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口37を形成している。
【0027】
ここで、中間支持部31は、上流空間室36と中間空間室32を連通するよう、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置し且つ周方向に沿って所定の間隔で形成される複数の第一貫通孔38を備えており、支持部24は、中間空間室32と下流空間室27を連通するよう、高速回転軸4の径方向で内寄りに位置し且つ周方向に沿って所定の間隔で形成される複数の第二貫通孔39を備えている。
【0028】
又、中間支持部31の第一貫通孔38は、低速回転軸2及び高速回転軸4による回転軸線Sの径方向で第二貫通孔39よりも外方に配置するように、回転軸線Sから形成位置までの距離を、回転軸線Sから第二貫通孔39までの距離よりも長くしている。更に、第二貫通孔39は、低速回転軸2及び高速回転軸4による回転軸線Sの径方向でフランジ22の先端位置よりも内方に配置するように、回転軸線Sから形成位置までの距離を、回転軸線Sからフランジ22の先端位置までの距離よりも短くしている。
【0029】
更に、中間支持部31の中間空間室32を形成する外周面4aには、中間空間室32の内部と高速回転軸4の内側とを連通する空気穴40が形成されている。
【0030】
一方、高速回転軸4側(低速回転軸2と反対側)には、入側受部33に隣接するようにオイル供給手段のオイルノズル41が備えられ、オイルノズル41は、下方の噴射口(図示せず)より、上流側開口37へ向かってオイルを噴射するようになっている。
【0031】
以下本発明のハイドロリックシール構造21を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0032】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室36に上流側オイル溜まり42を形成して第一貫通孔38をオイルで満たすと共に、中間空間室32に中間側オイル溜まり43を形成して第二貫通孔39をオイルで満たし、更に、下流空間室27に下流側オイル溜まり44を形成してフランジ22の先端とフランジ受部23との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。
【0033】
更に、オイルノズル41の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口37から上流側オイル溜まり42へ給油し、次いで上流側オイル溜まり42のオイルを第一貫通孔38を介して中間側オイル溜まり43へ流入させ、続いて中間側オイル溜まり43から第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ流入させ、更に下流側オイル溜まり44の奥部から排出側へ流下させて下流側オイル溜まり44の全体を冷却し、下流側開口28から排出させる。
【0034】
ここで、上流側オイル溜まり42は、高速回転軸4の高速回転の影響のみを受けて高圧状態になり、中間側オイル溜まり43は、高速回転軸4の高速回転の影響を受けると共に空気穴40による内圧の制御で中圧状態になり、下流側オイル溜まり44は、高速回転軸4の高速回転と低速回転軸2の低速回転との影響を受けて低圧状態になり、上流側オイル溜まり42と中間側オイル溜まり43の間には、差圧を生じてオイルが上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38を介して中間側オイル溜まり43へ向かうようになり、又、中間側オイル溜まり43と下流側オイル溜まり44の間には、差圧を生じてオイルが中間側オイル溜まり43から第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ向かうようになっている。更に、中間側オイル溜まり43は、空気穴40によりオイル液面を制御しており、オイル液面の高さは、第二貫通孔39が、中間側オイル溜まり43及び下流側オイル溜まり44のオイル内に位置し且つオイル液面に近づくようにしている。更に又、上流側オイル溜まり42及び中間側オイル溜まり43は、高速回転軸4の回転の影響のみを受け、下流側オイル溜まり44の如き温度上昇は生じないようになっている。
【0035】
このように、実施の形態の第一例によれば、オイル供給手段のオイルノズル41によって噴射されたオイルは、上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38を介して中間側オイル溜まり43へ流下し、次に第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ流下し、更に下流側オイル溜まり44から流出するので、オイル溜まり15(図8参照)へのオイルの流入と排出が同じ開口である従来の場合と異なり、オイルの流入と排出を上流側開口37と下流側開口28で別々にして下流側オイル溜まり44の冷却効率を高め、下流側オイル溜まり44の温度上昇を抑制することができる。ここで、従来の構造において、入側受部33を設けることなく、支持部6(図8参照)に単に第二貫通孔39を形成し、且つオイルノズル41を設けたのみでは、オイル溜まり15にオイルが流入せず、結果的に従来例と同じ問題を生じる。
【0036】
又、オイルを上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38、中間側オイル溜まり43、第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ流下させるので、下流側オイル溜まり44の奥にオイルを十分に流下させ、下流側オイル溜まり44の奥に位置するフランジ22の奥側の面、及びフランジ受部23の支持部24の温度上昇を抑制することができる。
【0037】
更に、上流側オイル溜まり42のオイルが差圧により第一貫通孔38を介して中間側オイル溜まり43に確実に供給され、且つ中間側オイル溜まり43のオイルが差圧により下流側オイル溜まり44に確実に供給されるので、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間のシール状態を適切に保持すると共に、オイルノズル41のオイル供給量を低減することができる。更に又、オイルを、第一貫通孔38、第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ供給するので、オイルは下流側オイル溜まり44の隅々(全体)まで流下し、下流側オイル溜まり44の温度分布を均一にするように冷却し、結果的に、高速運転時においても下流側オイル溜まり44の温度が安定し、シール状態を適切に保持することができる。
【0038】
実施の形態の第一例において、フランジ受部23は、高速回転軸4の外周から外方に向かって形成される支持部24と、支持部24から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される下流側外周部25と、下流側外周部25から低速回転軸2のフランジ22を挟み込むよう低速回転軸2の外周に向かって配置される側面部26とを備え、中間受部29は、フランジ受部23の支持部24から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される中間側外周部30と、中間側外周部30から高速回転軸4の外周に接続される中間支持部31とを備えると、中間側オイル溜まり43及び下流側オイル溜まり44を適切に形成し、オイルを、中間側オイル溜まり43から第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44の下流側開口28へ流下させるので、下流側オイル溜まり44を好適に冷却し、下流側オイル溜まり44の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0039】
実施の形態の第一例において、第一貫通孔38は、回転軸線Sの径方向で第二貫通孔39よりも外方に配置されると共に、第二貫通孔39は、中間側オイル溜まり43及び下流側オイル溜まり44のオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されると、上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38、中間側オイル溜まり43、第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ好適に流下させて下流側オイル溜まり44の全体を冷却するので、冷却効率を高め、下流側オイル溜まり44の奥に位置するフランジ22の奥側の面、及びフランジ受部23の支持部24の温度上昇を一層抑制することができる。又、フランジ22と支持部24との隙間から何らかの理由で空気が下流側溜まりに流れ込む場合であっても、空気が中間空間室32へ流下し、第一貫通孔38には空気が流れ込まないので、シール状態が破断するようなシールブレイクを確実に防止し、シール状態を適切に保持すると共に、下流側オイル溜まり44を好適に冷却することができる。
【0040】
実施の形態の第一例において、中間受部29に、中間空間室32の圧を制御する空気穴40を備えると、オイル液面の高さは、第二貫通孔39をオイル内でオイル液面に近づけるように制御するので、冷却効率を一層高め、下流側オイル溜まり44の奥に位置するフランジ22の奥側の面、及びフランジ受部23の支持部24の温度上昇を最適に抑制することができる。
【0041】
実施の形態の第一例において、入側受部33は、中間受部29の中間支持部31から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される上流側外周部34と、上流側外周部34から高速回転軸4の外周に向かって配置される側面部35とを備えると、上流側オイル溜まり42を適切に形成し、上流側オイル溜まり42から中間側オイル溜まり43までのオイルの流れを好適にし、下流側オイル溜まり44の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0042】
実施の形態の第一例において、オイル供給手段のオイルノズル41は、上流空間室36の上流側開口37に向かってオイルを噴射するように配置されると、上流側オイル溜まり42にオイルを適切に供給して第一貫通孔38、中間側オイル溜まり43、第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ流下させるので、下流側オイル溜まり44を好適に冷却し、下流側オイル溜まり44の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0043】
以下、本発明を実施する形態の第二例を添付図面を参照して説明する。
図2〜4は本発明のハイドロリックシール構造45を実施する形態の第二例であって、第一例の上流空間室36の構造を変形したものであり、第一例と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0044】
第二例のハイドロリックシール構造45は、第一例と略同様に、低速回転軸2の外周面から外方に向かって形成されるフランジ22と、フランジ22を外周側で囲むよう高速回転軸4に形成されるフランジ受部23と、フランジ受部23及び高速回転軸4から延在する中間受部29と、中間受部29から延在する入側受部33と、上流空間室36と中間空間室32を連通する複数の第一貫通孔38と、中間空間室32と上流空間室36を連通する複数の第二貫通孔39と、高速回転軸4側で入側受部33に隣接するオイル供給手段のオイルノズル41とを備えている。
【0045】
入側受部33は、第一例と略同様に、中間受部29の中間側外周部30と連なるよう中間支持部31から下流側外周部25と反対側へ高速回転軸4の延在方向に略平行に配置される上流側外周部34と、上流側外周部34の端部から高速回転軸4の外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部35とを備え、中間支持部31、上流側外周部34、側面部35で囲まれる部分に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室36を構成すると共に、側面部35の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室36と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口37を形成している。
【0046】
又、複数の第二貫通孔39は、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置するように中間支持部31に形成され且つ周方向に沿って所定の間隔で配置されており、上流空間室36には、図3に示す如く、複数の第一貫通孔38に対応するよう、回転方向で第一貫通孔38の後方に位置し且つ高速回転軸4の径方向に沿って外周端から内方に向かって所定長さで形成されるフィン46が備えられている。ここで、フィン46の他の例としては、図4に示す如く、外周端から内方に向い且つ径方向に対して内方側を高速回転軸4の回転方向に傾斜させるフィン47がある。なお、図4では径方向から角度αで傾斜していることを示している。
【0047】
以下本発明のハイドロリックシール構造45を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0048】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室36に上流側オイル溜まり42を形成して第一貫通孔38をオイルで満たすと共に、中間空間室32に中間側オイル溜まり43を形成して第二貫通孔39をオイルで満たし、更に、下流空間室27に下流側オイル溜まり44を形成してフランジ22の先端とフランジ受部23との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ22と高速回転軸4のフランジ受部23の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。この時、上流空間室36ではフィン46によりオイルに遠心力を更に発生させ、上流側オイル溜まり42を適切に形成している。
【0049】
更に、オイルノズル41の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口37から上流側オイル溜まり42へ給油し、次いで上流側オイル溜まり42のオイルを第一貫通孔38を介して中間側オイル溜まり43へ流入させ、続いて中間側オイル溜まり43から第二貫通孔39を介して下流側オイル溜まり44へ流入させ、更に下流側オイル溜まり44の奥部から排出側へ流下させて下流側オイル溜まり44の全体を冷却し、下流側開口28から排出させる。ここで、上流空間室36には、フィン46により、第一貫通孔38をオイルで確実に満たすように上流側オイル溜まり42を形成し、オイルを上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38へ好適に流すようにしている。又、図4の如く、フィン46を傾斜させた場合には、フィン47によりオイルを第一貫通孔38へ誘導し、オイルを上流側オイル溜まり42から第一貫通孔38へ好適に流すようにしている。なお、フィン46,47を中間空間室32や下流空間室27に設けても有用な効果を得ることができなかった。
【0050】
このように、実施の形態の第二例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0051】
又、上流空間室36に、オイルに遠心力を発生させるフィン46,47を備えると、上流空間室36の上流側オイル溜まり42を適切に構成するので、第一貫通孔38を介して上流側オイル溜まり42から中間側オイル溜まり43までのオイルの流れを好適にし、オイル溜まりの温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
更に、フィン46は、オイルを第一貫通孔38へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されると、上流空間室36の上流側オイル溜まり42を第一貫通孔38へ適切に誘導するので、第一貫通孔38を介して上流側オイル溜まり42から中間側オイル溜まり43までのオイルの流れを好適にし、下流側オイル溜まり44の温度上昇、フランジ22の温度上昇、フランジ受部23の温度上昇を一層抑制することができる。
【0053】
以下、本発明を実施する形態の第三例を添付図面を参照して説明する。
図5は本発明のハイドロリックシール構造51を実施する形態の第三例であって、第一例の構造を変形したものであり、第一例と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0054】
第三例のハイドロリックシール構造51は、低速回転軸2の外周面2aから外方に向かって形成されるフランジ52と、フランジ52を外周側で囲むよう高速回転軸4の外周に形成されるフランジ受部53とを備えており、フランジ受部53は、フランジ52に隣接するよう高速回転軸4の径方向に沿って形成される所定長さの中間突起部54と、中間突起部54の外周端から高速回転軸4の延在方向と略平行に形成される下流側外周部55と、下流側外周部55の端部から低速回転軸2のフランジ52を挟み込むよう低速回転軸2の径方向で外周面2aに向かって配置される側面部56とを備え、フランジ52の両面との間に、所定幅の下流空間室57を構成すると共に、側面部56の下端と低速回転軸2の外周面2aとの間に、下流空間室57と低速回転軸2側の外部とを連通する下流側開口58を形成している。
【0055】
又、ハイドロリックシール構造51は、高速回転軸4側でフランジ受部53に隣接するよう、フランジ受部53及び高速回転軸4から延在する中間受部59を備えており、中間受部59は、フランジ受部53の下流側外周部55と連なるよう、中間突起部54の外周端から下流側外周部55と反対側へ高速回転軸4と略平行に配置される中間側外周部60と、中間側外周部60の端部から高速回転軸4の外周面4aに接続される中間支持部61とを備え、中間突起部54、中間側外周部60、中間支持部61に囲まれる部分に、中間空間室62を構成している。
【0056】
更に、ハイドロリックシール構造51は、中間受部59に隣接するよう、中間受部59から延在する入側受部63を備えており、入側受部63は、中間受部59の中間側外周部60と連なるよう、中間支持部61の上端から下流側外周部55と反対側へ高速回転軸4と略平行に配置される上流側外周部64と、上流側外周部64の端部から高速回転軸4の径方向で外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部65とを備え、中間支持部61、上流側外周部64、側面部65に囲まれる部分に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室66を構成すると共に、側面部65の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室66と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口67を形成している。
【0057】
ここで、中間支持部61は、上流空間室66と中間空間室62を連通するよう、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置し且つ周方向に沿って所定の間隔で形成される複数の貫通孔68を備えている。又、中間支持部61の貫通孔68は、低速回転軸2及び高速回転軸4による回転軸線Sの径方向で中間突起部54の先端位置よりも外方に配置するように、回転軸線Sから形成位置までの距離を、回転軸線Sから中間突起部54の先端位置までの距離よりも長くしている。更に、中間突起部54の先端位置は、高速回転軸4の径方向でフランジ52の先端位置よりも内方に配置するように、回転軸線Sから形成位置までの距離を、回転軸線Sからフランジ52の先端位置までの距離よりも短くしている。
【0058】
一方、高速回転軸4側(低速回転軸2と反対側)には、入側受部63に隣接するようにオイル供給手段のオイルノズル69が備えられ、オイルノズル69は、下方の噴射口(図示せず)より、上流側開口67へ向かってオイルを噴射するようになっている。
【0059】
以下本発明のハイドロリックシール構造51を実施する形態の第三例の作用を説明する。
【0060】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室66に上流側オイル溜まり70を形成して貫通孔68をオイルで満たすと共に、中間空間室62に中間側オイル溜まり71を形成して中間突起部54の先端をオイル内に配置し、更に、下流空間室57に下流側オイル溜まり72を形成してフランジ52の先端とフランジ受部53との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ52と高速回転軸4のフランジ受部53の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。
【0061】
更に、オイルノズル69の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口67から上流側オイル溜まり70へ給油し、次いで上流側オイル溜まり70のオイルを貫通孔68を介して中間側オイル溜まり71へ流入させ、続いて中間側オイル溜まり71から中間突起部54の先端を越えて下流側オイル溜まり72へ流入させ、更に下流側オイル溜まり72の奥部から排出側へ流下させて下流側オイル溜まり72の全体を冷却し、下流側開口58から排出させる。
【0062】
ここで、上流側オイル溜まり70は、高速回転軸4の高速回転の影響のみを受けて高圧状態になり、中間側オイル溜まり71は、高速回転軸4の高速回転の影響を受けると共に、低速回転軸2の風圧の影響を受けて中圧状態になり、下流側オイル溜まり72は、高速回転軸4の高速回転と低速回転軸2の低速回転との影響を受けて低圧状態になり、上流側オイル溜まり70と中間側オイル溜まり71の間には差圧を生じてオイルが上流側オイル溜まり70から貫通孔68を介して中間側オイル溜まり71へ向かうようになり、又、中間側オイル溜まり71と下流側オイル溜まり72の間には差圧を生じてオイルが中間側オイル溜まり71から中間突起部54の先端を越えて下流側オイル溜まり72へ向かうようになっている。更に、中間側オイル溜まり71のオイル液面の高さは、中間突起部54の先端がオイル内に位置し且つオイル液面に近づくようにしている。更に又、上流側オイル溜まり70及び中間側オイル溜まり71は、高速回転軸4の回転の影響のみを受け、下流側オイル溜まり72の如き発熱は生じないようになっている。
【0063】
このように、実施の形態の第三例によれば、オイル供給手段のオイルノズル69によって噴射されたオイルは、上流側オイル溜まり70から貫通孔68を介して中間側オイル溜まり71へ流下し、次に中間突起部54を越えて下流側オイル溜まり72へ流下し、更に下流側オイル溜まり72から流出するので、オイル溜まり15(図8参照)へのオイルの流入と排出が同じ開口である従来の場合と異なり、オイルの流入と排出を上流側開口67と下流側開口58で別々にして下流側オイル溜まり72の冷却効率を高め、下流側オイル溜まり72の温度上昇を抑制することができる。
【0064】
又、オイルを上流側オイル溜まり70から貫通孔68、中間側オイル溜まり71、中間突起部54を介して下流側オイル溜まり72へ流下させるので、下流側オイル溜まり72の奥にオイルを十分に流下させ、下流側オイル溜まり72の奥に位置するフランジ52の奥側の面、及びフランジ受部53の中間突起部54の温度上昇を抑制することができる。
【0065】
更に、第三例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態の第三例において、フランジ受部53は、フランジ52に隣接するよう高速回転軸4の径方向に沿って形成される中間突起部54と、中間突起部54から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される下流側外周部55と、下流側外周部55から低速回転軸2のフランジ52を挟み込むよう低速回転軸2の外周に向かって配置される側面部56とを備え、中間受部59は、フランジ受部53の中間突起部54から高速回転軸4の延在方向に沿って配置される中間側外周部60と、中間側外周部60から高速回転軸4の外周に接続される中間支持部61とを備えると、中間側オイル溜まり71及び下流側オイル溜まり72を適切に形成し、オイルが、中間側オイル溜まり71から中間突起部54の先端を越えて下流側オイル溜まり72へ流下するので、下流側オイル溜まり72を好適に冷却し、下流側オイル溜まり72の温度上昇、フランジ52の温度上昇、フランジ受部53の温度上昇を一層抑制することができる。
【0067】
実施の形態の第三例において、貫通孔68は、回転軸線Sの径方向でフランジ受部53の中間突起部54の先端よりも外方に配置されると共に、中間突起部54の先端は、中間側オイル溜まり71及び下流側オイル溜まり72のオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されると、オイルが、上流側オイル溜まり70から貫通孔68、中間側オイル溜まり71、中間突起部54を介して下流側オイル溜まり72へ好適に流下して下流側オイル溜まり72の全体を冷却するので、冷却効率を高め、下流側オイル溜まり72の奥に位置するフランジ52の奥側の面、及びフランジ受部53の中間突起部54の温度上昇を一層抑制することができる。
【0068】
以下、本発明を実施する形態の第四例を添付図面を参照して説明する。
図6は本発明のハイドロリックシール構造73を実施する形態の第四例であって、第三例の上流空間室66の構造を第二例と同様に変形したものであり、第三例、第二例と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0069】
第四例のハイドロリックシール構造73は、第三例と略同様に、低速回転軸2の外周面から外方に向かって形成されるフランジ52と、フランジ52を外周側で囲むフランジ受部53と、フランジ受部53及び高速回転軸4から延在する中間受部59と、中間受部59から延在する入側受部63と、上流空間室66と中間空間室62を連通する複数の貫通孔68と、高速回転軸4側で入側受部63に隣接するオイル供給手段のオイルノズル69とを備えている。
【0070】
高速回転軸4側でフランジ受部53に隣接する入側受部63は、第三例と略同様に、中間受部59の中間側外周部60と連なるよう中間支持部61の外周端から下流側外周部55と反対側へ高速回転軸4と略平行に沿って配置される上流側外周部64と、上流側外周部64の端部から高速回転軸4の外周面4aに向かって配置される壁面状の側面部65とを備え、中間支持部61、上流側外周部64、側面部65に囲まれる部分に、高速回転軸4の外周面4aに対向する所定容積の上流空間室66を構成すると共に、側面部65の下端と高速回転軸4の外周面4aとの間に、上流空間室66と高速回転軸4側の外部とを連通する上流側開口67を形成している。
【0071】
又、複数の貫通孔68は、高速回転軸4の径方向で外方寄りに位置するように中間支持部61に形成され且つ周方向に沿って所定の間隔で配置されており、上流空間室66には、第二例と同様に、複数の貫通孔68に対応するよう、回転方向で貫通孔68の後方に位置し且つ高速回転軸4の径方向に沿って外周端から内方に向かって所定長さで形成されるフィン74が備えられている。ここで、フィン74の他の例としては、第二例と同様に、外周端から内方に向い且つ径方向に対して内方側を高速回転軸4の回転方向に傾斜させるフィン75がある。
【0072】
以下本発明のハイドロリックシール構造73を実施する形態の第四例の作用を説明する。
【0073】
低速回転軸2及び高速回転軸4を駆動して回転させる際には、高速回転軸4の回転に伴う遠心力により、上流空間室66に上流側オイル溜まり70を形成して貫通孔68をオイルで満たすと共に、中間空間室62に中間側オイル溜まり71を形成して中間突起部54をオイル内に配置し、更に、下流空間室57に下流側オイル溜まり72を形成してフランジ52の先端とフランジ受部53との間を塞ぎ、低速回転軸2のフランジ52と高速回転軸4のフランジ受部53の間をシール状態にして高圧雰囲気を保持する。この時、上流空間室66ではフィン74によりオイルに遠心力を更に発生させ、上流側オイル溜まり70を適切に形成している。
【0074】
更に、オイルノズル69の噴射口(図示せず)からオイルを噴射し、オイルを、上流側開口67から上流側オイル溜まり70へ給油し、次いで上流側オイル溜まり70のオイルを貫通孔68を介して中間側オイル溜まり71へ流入させ、続いて中間側オイル溜まり71から中間突起部54の先端を越えて下流側オイル溜まり72へ流入させ、更に下流側オイル溜まり72の奥部から排出側へ流下させて下流側オイル溜まり72の全体を冷却し、下流側開口58から排出させる。ここで、上流空間室66には、フィン74により、貫通孔68をオイルで確実に満たすように上流側オイル溜まり70を形成し、オイルを上流側オイル溜まり70から貫通孔68へ好適に流すようにしている。又、フィン75を傾斜させた場合には、フィン75によりオイルを貫通孔68へ誘導し、オイルを上流側オイル溜まり70から貫通孔68へ好適に流すようにしている。なお、フィン74,75を中間空間室62や下流空間室57に設けても有用な効果を得ることができなかった。
【0075】
このように、実施の形態の第四例によれば、第三例、第二例と同様な作用効果を得ることができる。
【0076】
なお、本発明のハイドロリックシール構造は、上記の構成に限定されるものでなく、上流側オイル溜まりから第一貫通孔を介して中間側オイル溜まりへオイルを流下させ、更に中間側オイル溜まりから第二貫通孔又は中間突起部を介して下流側オイル溜まりへオイルを流下させるならば他の構成でもよいこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のハイドロリックシール構造の第一例を示す概念図である。
【図2】本発明のハイドロリックシール構造の第二例を示す概念図である。
【図3】図2のIII−III方向断面図である。
【図4】図3においてフィンの他の例に変形したものを示す概念図である。
【図5】本発明のハイドロリックシール構造の第三例を示す概念図である。
【図6】本発明のハイドロリックシール構造の第四例を示す概念図である。
【図7】従来のハイドロリックシール構造を示す概念図である。
【図8】ハイドロリックシール構造に発熱を生じる状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0078】
2 低速回転軸
4 高速回転軸
22 フランジ
23 フランジ受部
24 支持部
25 下流側外周部
26 側面部
27 下流空間室
29 中間受部
30 中間側外周部
31 中間支持部
32 中間空間室
33 入側受部
34 上流側外周部
35 側面部
36 上流空間室
38 第一貫通孔
39 第二貫通孔
40 空気穴
41 オイルノズル(オイル供給手段)
42 上流側オイル溜まり
43 中間側オイル溜まり
44 下流側オイル溜まり
46 フィン
47 フィン
52 フランジ
53 フランジ受部
54 中間突起部
55 下流側外周部
56 側面部
57 下流空間室
59 中間受部
60 中間側外周部
61 中間支持部
62 中間空間室
63 入側受部
64 上流側外周部
65 側面部
66 上流空間室
68 貫通孔
69 オイルノズル(オイル供給手段)
70 上流側オイル溜まり
71 中間側オイル溜まり
72 下流側オイル溜まり
74 フィン
75 フィン
S 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むよう高速回転軸に形成され且つフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、該フランジ受部及び高速回転軸から延在して中間空間室を構成する中間受部と、該中間受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、前記入側受部と中間空間室を連通する第一貫通孔と、前記中間空間室と下流空間室を連通する第二貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成し、中間空間室に中間オイル溜まりを形成し、更に下流空間室に下流側オイル溜まりを形成したことを特徴とするハイドロリックシール構造。
【請求項2】
前記フランジ受部は、高速回転軸の外周から外方に向かって形成される支持部と、該支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、該下流側外周部から低速回転軸のフランジを挟み込むよう低速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記中間受部は、フランジ受部の支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される中間側外周部と、該中間側外周部から高速回転軸の外周に接続される中間支持部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項3】
前記第一貫通孔は、回転軸線の径方向で第二貫通孔よりも外方に配置されると共に、前記第二貫通孔は、中間オイル溜まり及び下流側オイル溜まりのオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項4】
前記中間受部に、中間空間室の圧を制御する空気穴を備えたことを特徴とする請求項3に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項5】
低速回転軸の外周から外方に向かって形成されるフランジと、該フランジを外周側で囲むようフランジとの間に下流空間室を構成するフランジ受部と、前記下流空間室と区画する中間突起部を形成し且つ高速回転軸から延在して中間空間室を構成する中間受部と、該中間受部から延在して上流空間室を構成する入側受部と、該入側受部と中間空間室を連通する貫通孔と、前記入側受部の上流空間室へ向かってオイルを噴射するオイル供給手段とを備え、
前記高速回転軸の回転時には、遠心力により、上流空間室に上流側オイル溜まりを形成し、中間空間室に中間オイル溜まりを形成し、更に下流空間室に、中間突起部の先端を超えて流下するオイルにより下流側オイル溜まりを形成したことを特徴とするハイドロリックシール構造。
【請求項6】
前記フランジ受部は、フランジに隣接するよう高速回転軸の径方向に沿って形成される中間突起部と、該中間突起部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される下流側外周部と、該下流側外周部から低速回転軸のフランジを挟み込むよう低速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備え、
前記中間受部は、フランジ受部の中間突起部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される中間側外周部と、該中間側外周部から高速回転軸の外周に接続される中間支持部とを備えたことを特徴とする請求項5に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項7】
前記貫通孔は、回転軸線の径方向でフランジ受部の中間突起部の先端よりも外方に配置されると共に、前記中間突起部の先端は、中間オイル溜まり及び下流側オイル溜まりのオイル内に位置し且つオイル液面に近づけて配置されたことを特徴とする請求項5又は6に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項8】
前記入側受部は、中間受部の中間支持部から高速回転軸の延在方向に沿って配置される上流側外周部と、該上流側外周部から高速回転軸の外周に向かって配置される側面部とを備えたことを特徴とする請求項2又は6に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項9】
前記オイル供給手段は、上流空間室の上流側開口に向かってオイルを噴射するように配置されたことを特徴とする請求項1又は5に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項10】
前記中間空間室に、オイルに遠心力を発生させるフィンを備えたことを特徴とする請求項1又は5に記載のハイドロリックシール構造。
【請求項11】
前記フィンは、オイルを貫通孔へ誘導するように径方向に対して傾斜を設けて構成されたことを特徴とする請求項10に記載のハイドロリックシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−19609(P2009−19609A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184525(P2007−184525)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】