説明

ハイドロリックブースタブレーキシステム

【課題】エマージェンシーポンプに不要な挙動を生じさせることのない安定した動作のハイドロリックブースタブレーキシステムを提供すること。
【解決手段】ハイドロリックブースタブレーキシステムにおける分流弁を、導入ポートと優先ポートと余剰ポート及びドレンポートが形成されるハウジングと、付勢部材で片側に付勢されて前記ハウジングに軸方向に移動可能に収められ、前記導入ポートから作動油が導入された場合に該導入ポートと前記優先ポートとを連通可能にするスプールと、前記導入ポートから作動油が導入されない場合に、前記優先ポートを、前記ドレンポートと連通可能にする連通ポートとを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワステ(パワーステアリング)用の作動油を用いてブレーキ踏力を倍力する、ハイドロリックブースタブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワステ用の作動油をブレーキブースタに供給し、作動油によりブレーキ踏力を倍力させるブースタブレーキシステムが知られている。この場合、特開2003−306140号公報に示すようにオイルポンプからパワステギアへの配管途中に分流弁を設け、オイルポンプからの作動油をパワステギアとブレーキブースタに分流させたものがある。
【0003】
分流弁は、作動油を分流させて送り出すことにより、ブレーキブースタに常に一定量の作動油を送り出し、ブレーキ機能を優先させるとともに、ブレーキとハンドルを同時に操作した場合に、いずれの側にも作動油の油圧変動による違和感が発生しないようにしている。
【0004】
一方ブレーキブースタには、エマージェンシーポンプが設けてあり、何らかの理由でオイルポンプからの作動油の供給が停止された場合にも、エマージェンシーポンプが作動して、ブレーキブースタの倍力機能が消失されないようになっている。
【特許文献1】特開2003−306140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記パワステ用の作動油を用いたブースタブレーキシステムにおいて、ブレーキペダルを踏みながら、エンジンを停止させると、エマージェンシーポンプが、作動と停止を短時間で繰り返す、いわゆるチャタリング現象を生じさせることが考えられる。この動きは、次のように解釈される。
【0006】
ブレーキペダルを踏むと、ブレーキブースタにはパワステ用の作動油が流入し、ブレーキピストンを押圧するための高い油圧がかかっている。また、ドレン流路は閉鎖され、ブレーキブースタの油圧室は、ほぼ閉じられた状態となっている。かかる状態でエンジンスイッチが切られオイルポンプが停止すると、ブレーキブースタ内にかかった高圧の油圧が開放されないことから、分流弁も初動の状態に戻らず、分流弁とブレーキブースタ内の作動油の流れが共に膠着した状態となる。
【0007】
一方、分流弁もブレーキブースタも共に流路を、メタルタッチにより開閉制御していることから、金属の摺動面から作動油が高圧部から低圧部に徐々に漏出し、それに伴い作動油の圧力が低下する。そして、エマージェンシーポンプを作動させる閾値以下に油圧が低下すると、エマージェンシーポンプのセンサが作動して、エマージェンシーポンプを駆動させる。
【0008】
ところが、作動油の流路はほぼ閉鎖した状態あるからエマージェンシーポンプが駆動すると、直ちにエマージェンシーポンプによる圧力上昇の上限閾値を超え、エマージェンシーポンプが停止される。そしてまた作動油が漏出して圧力が低下しエマージェンシーポンプのスイッチが入るという、オンオフを繰り返す状況になっていると考えられる。
【0009】
本発明は上記課題を解決し、エマージェンシーポンプに不要な挙動を生じさせることのない安定した動作のハイドロリックブースタブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためハイドロリックブースタブレーキシステムを次のように構成した。
【0011】
1、 駆動源によって駆動されるオイルポンプと、前記オイルポンプに接続され、導入ポートを介して前記オイルポンプから作動油が供給される分流弁と、前記分流弁に接続され、該分流弁の優先ポートを介して作動油が供給されるブレーキブースタと、前記分流弁に接続され、該分流弁の余剰ポートを介して作動油が供給されるパワステギヤと、前記分流弁に接続され、該分流弁のドレンポートを介して作動油が還元される作動油タンクとを備えたハイドロリックブースタブレーキシステムであって、
前記分流弁は、
前記導入ポートと前記優先ポートと前記余剰ポート及び前記ドレンポートが形成されるハウジングと、付勢部材で片側に付勢されて前記ハウジングに軸方向に移動可能に収められ、前記導入ポートから作動油が導入された場合に該導入ポートと前記優先ポートとを連通可能にするスプールと、前記導入ポートから作動油が導入されない場合に、前記優先ポートを、前記ドレンポートと連通可能にする連通ポートと、を備えてハイドロリックブースタブレーキシステムを構成した。
【0012】
2、 前記連通ポートは、スプールの外周に設けられ、前記導入ポートから作動油が導入されない場合において、前記優先ポートと連通する第1溝部と、前記第1溝部と対峙するように前記ハウジングの内周に設けられ、前記導入ポートから作動油が導入されない場合において、該第1溝部と前記ドレンポートとを連通する第2溝部とを備えていることとした。
【0013】
3、 第2溝部は、シリンダの内周面に、少なくとも1つ、軸方向に形成されていることとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるハイドロリックブースタブレーキシステムは、次の効果を有している。
ブレーキペダルを踏んだ状態でエンジンスイッチを切っても、分流弁において、優先ポートが、ドレンポートと連通するので、スプールが移動し、優先ポート内の油圧が速やかに低下する。これにより、ブレーキブースタ内の閉塞した状態が開放され、エマージェンシーポンプが通常に作動する。
【0015】
したがって、上記状態においてもエマージェンシーポンプは、チャタリング等の不要な挙動を生じさせない
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかるハイドロリックブースタブレーキシステムの一実施形態について、図を参照して説明する。図1に、ハイドロリックブースタブレーキシステムの全体の概略構成を示す。
【0017】
ハイドロリックブースタブレーキシステムは、自動車の走行用エンジン10(以下、エンジン10とする。)と、同エンジン10を駆動源として駆動されるパワステ用オイルポンプ12(以下、オイルポンプ12という。)と、前輪(図示せず。)を操舵するパワーステアリング14と、ブレーキ踏力を倍力させるハイドロリックブースタブレーキ15と、オイルポンプ12からの作動油を分配する分流弁18と、作動油を貯留するリザーバータンクとしての作動油タンク20などから構成されている。
【0018】
エンジン10は、通常の自動車走行用のエンジンである。オイルポンプ12は、エンジン10で回転駆動され、作動油(オイル)を所定圧力で、毎分あたり所定量送出する。次にオイルポンプ12からの配管について説明する。
【0019】
オイルポンプ12の吐出口には配管aが接続し、配管aは、分流弁18の導入ポートとしての流入口に接続している。分流弁18は、2つの流出口(優先ポートと余剰ポート)を具え、余剰ポートからはパワーステアリング14に配管bが延び、優先ポートからは配管cがハイドロリックブースタブレーキ15にそれぞれ延びている。
【0020】
パワーステアリング14とハイドロリックブースタブレーキ15のそれぞれの戻し口には、配管d、eが接続しており、それぞれ作動油タンク20に延びている。また、分流弁18、パワーステアリング14、ハイドロリックブースタブレーキ15にはドレンポートとしての排出口が形成してあり、排出口に接続された配管e、f、gがそれぞれ作動油タンク20に延びている。
【0021】
パワーステアリング14は、前輪に連結されたステアリングハンドル22と、ステアリングハンドル22のステアリング軸23と、オイルポンプ12に接続したパワステギアとしてのステアリングブースタ24などから構成されており、ステアリング軸23の回転力をステアリングブースタ24がオイルポンプ12からの作動油により増大させ、ステアリングハンドル22の操作を軽くしている。
【0022】
ハイドロリックブースタブレーキ15は、ブレーキブースタ16とマスターシリンダ28からなり、ブレーキブースタ16の一端にブレーキペダル26が取り付けてある。図2にブレーキブースタ16及びマスターシリンダ28を示す。ブレーキブースタ16は、筒状で、図2の右方にブレーキペダル26の取り付け端30を具え、図2の左方にてマスターシリンダ28に連設している。
【0023】
ブレーキブースタ16は、本体部32と、本体部32に形成されたパワーシリンダ38と、パワーシリンダ38の内部に設けられたパワーピストン34と、パワーピストン34の内部に設けられたスプールバルブ36と、エマージェンシーポンプ37などから構成されている。
【0024】
パワーシリンダ38は、本体部32の中心部分に軸方向に沿って形成してあり、右端に止め栓33が取り付けられている。またパワーシリンダ38には、本体部32の外周面からパワーシリンダ38の内面まで貫通する3つの流通孔40、41、43が設けられている。
【0025】
流通孔40は、オイルポンプ12からの配管cに接続した流入口であり、流通孔41は、オイルポンプ12への戻りの配管eが接続されている戻し口であり、流通孔43は、ドレン用の配管gに接続した排出口である。尚各流通孔40等は、ねじ部を確保するため、本体部32の円周方向にもそれぞれ所定の角度離して設けてある。
【0026】
パワーピストン34を図3に示す。図3は、ブレーキペダル26が踏まれ、マスターシリンダ28を作動させている状態である。パワーピストン34は、円筒状で、パワーシリンダ38の内部に摺動自在に取り付けられている。パワーピストン34の軸方向両側には、オイルシール50、51が取り付けてあり、また一方に、リリーフバルブ52が設けてある。
【0027】
パワーピストン34は、中心部分にスプールシリンダ48が軸方向に沿って設けてあり、スプールシリンダ48内にスプールバルブ36が摺動自在に組み付けてある。パワーピストン34の外壁部分には、スプールシリンダ48の内面まで貫通する連通孔44、45、46が、それぞれ流通孔40、41、43と連通した状態で形成してある。
【0028】
更にパワーピストン34の外周面には、パワーピストン34がパワーシリンダ38の内部で軸方向に摺動した場合でも、連通孔44、45、46が、それぞれ流通孔40、41、43と連通するよう軸方向に設けられた溝47等(他は図示せず。)が設けてある。またパワーピストン34の外周面には、軸方向に沿った案内溝(図示せず。)が形成してあり、パワーシリンダ38の内部で案内溝がピン等にかかり、軸方向への移動は自在であるが、円周方向へは回転が規制されている。
【0029】
スプールバルブ36は、円筒体で、周方向に4箇所溝が形成してあり、これにより図3の右側より、スプールバルブ36の外周面に、戻し側ランド54、導入側ランド55、圧力生成側ランド56が形成されている。
【0030】
またスプールバルブ36の中心には、軸方向に連通路58が形成してある。連通路58は、スプールバルブ36の左端面に開口しているとともに、径方向に設けられた連通孔60と62と連通している。連通孔60は、戻し側ランド54と導入側ランド55の間に開口しており、連通孔62は、パワーピストン34の右端より外方(つまり、右方。)に開口している。
【0031】
スプールバルブ36の左端には、スプールシリンダ48の底部との間にバネ64が設けてあり、スプールバルブ36を図の右方に付勢している。またスプールバルブ36の右端には、取り付け端30から延び、止め栓33を貫通した押圧軸31が当接している。
【0032】
図2に示すエマージェンシーポンプ37は、オイルポンプ12からの作動油の圧送が停止されると油圧低下を感知して作動し、オイルポンプ12に代わってブレーキ倍力用の油圧を生じさせる。
【0033】
次に、分流弁18について図4及び図5を用いて説明する。
【0034】
分流弁18は、金属製のブロックで構成されたハウジング70と、ハウジング70内に形成されたスプールシリンダ72と、リリーフバルブ74と、スプールシリンダ72内に取り付けられたスプールバルブ(スプール)84などから構成されている。
【0035】
ハウジング70は外面に、オイルポンプ12から作動油が供給される導入口(導入ポート)76と、該作動油をステアリングブースタ24に供給するパワステ用流出口(余剰ポート)78と、該作動油をブレーキブースタ16に供給するブレーキブースタ用流出口(優先ポート)80と、該作動油をオイルポンプ12に還元するドレン用流出口(ドレンポート)82が形成してあり、それぞれスプールシリンダ72に連通している。
【0036】
スプールシリンダ72は、ハウジング70の右端(図における。)より開口してあり、その開口部に止め栓73をねじ止めして閉塞されている。スプールシリンダ72の内周面には、左方から、第一環状溝85、第二溝部(連通ポート)としての第二環状溝86、第三環状溝87、第四環状溝88が形成されている。
【0037】
これにより第一環状溝85と第二環状溝86の間には、第一ランド110が形成され、第二環状溝86と第三環状溝87の間には、第二ランド111が形成され、第三環状溝87と第四環状溝88の間には第三ランド112が形成されている。
【0038】
第一環状溝85は、通孔90を介してブレーキブースタ用流出口80に連通し、第二環状溝86は、通孔91を介してドレン用流出口82に連通し、第三環状溝87は、通孔93(紙面に対して垂直方向に形成してある。)を介してパワステ用流出口78に連通し、第四環状溝88は、通孔94を介してオイルポンプ12からの導入口76に連通している。また、第一環状溝85とリリーフバルブ74の間に通孔95が形成してある。
【0039】
更に第二環状溝86は、溝の深さが浅く、スプールバルブ84との隙間が他の第一環状溝85との隙間より狭くなるように形成してある。
【0040】
スプールバルブ84は、スプールシリンダ72の内径とほぼ等しい外径に形成してあり、スプールシリンダ72内に対して軸方向に移動自在となっている。スプールバルブ84は、中心部分に、連通路101が軸方向に形成してある。連通路101には、内部にバネ102が取り付けてあり、バネ102によりスプールバルブ84は図の右方に付勢されている。また連通路101は、右端にオリフィス103が形成してあり、オリフィス103を介して、連通孔105に連通している。
【0041】
更にスプールバルブ84は、外周面に、左側から第一溝部(連通ポート)としての第一切り溝107と、第二切り溝108と、第三切り溝109が形成してある。第一切り溝107は、スプールバルブ84が止め栓73に当接した状態(以下、初期状態とする。)において、第一環状溝85と第二環状溝86の間に形成されている第一ランド110に対向した位置に形成してある。
【0042】
第二切り溝108は、初期状態において、第二環状溝86と第三環状溝87の間に形成されている第二ランド111に対向した位置に形成してある。第三切り溝109は、第四環状溝88に対向し、第三環状溝87と第四環状溝88の間に形成されている第三ランド112に、第三切り溝109の縁がかかる状態に形成してある。また第三切り溝109の底部には、上述した連通孔105と、連通孔113が開口してある。連通孔113は、他端がスプールバルブ84の左端面に軸方向に形成された孔部120に連通している。
【0043】
図6に、オイルポンプ12が作動し、作動油をパワーステアリング14とブレーキブースタ16とに送出している状態の分流弁18を示す。かかる状態では、スプールバルブ84には、オイルポンプ12からの作動油により孔部120にかかる油圧とオリフィス103を通過する流通抵抗による左方への力と、バネ102による右方への力とが均衡した位置で保持される。この位置は、図5の状態より左方に移動した位置である。
【0044】
すると作動油は、通孔94から第四環状溝88に流入し、第四環状溝88から連通孔105を介してオリフィス103を通過し、スプールバルブ84の左端と第一環状溝85の間に形成された間隙から第一環状溝85内に流入し、第一環状溝85から通孔90を通りブレーキブースタ16に送出される。
【0045】
また、第四環状溝88に流入した残りの作動油は、第三切り溝109と第三ランド112の間に形成された空間から第三環状溝87に流入し、そして、第三環状溝87からパワステ用流出口78を通り、パワーステアリング14に送り出される。これにより、パワーステアリング14とハイドロリックブースタブレーキ15に、ハイドロリックブースタブレーキ15を優先して作動油が分配される。
【0046】
更にかかる状態では、第一ランド110は、スプールバルブ84の外周面とわずかな間隙で対向している。したがって、第一ランド110とスプールバルブ84の外周面との間隙から第二環状溝86へは、わずかな量の作動油が流出するのみでほぼ閉塞した状態となっている。
【0047】
次に、ハイドロリックブースタブレーキシステムの作用、効果について説明する。
エンジン10が作動し、オイルポンプ12が駆動されると、配管aを通って作動油が分流弁18に送られる。分流弁18では、スプールバルブ84が図6に示すように左方に移動し、作動油をハイドロリックブースタブレーキ15とパワーステアリング14に、ハイドロリックブースタブレーキ15への作動油を優先してそれぞれ送出する。
【0048】
一方ハイドロリックブースタブレーキ15では、ブレーキペダル26が踏まれると、図3に示すように押圧軸31を介してスプールバルブ36がバネ64に抗して図の左方に移動する。すると、作動油が連通孔45から導入側ランド55を越えて連通孔60に流入し、連通路58に流入する。連通路58に流入した作動油は、連通孔62を通ってパワーピストン34と、止め栓33の間の作動室35に流入し、パワーピストン34の右端面を左方に押圧する。これにより、マスターシリンダ28に倍力された押圧力が加えられ、強力なブレーキ力を作用させる。
【0049】
かかる状態、つまりブレーキペダル26が踏まれた状態で、エンジン10のスイッチがオフされたとする。すると、ブレーキブースタ16では、作動室35の内部に高い圧力が発生しており、しかも、戻し側ランド54によりドレン用の連通孔46が閉鎖されており、高圧の状態が保持される。
【0050】
しかし、分流弁18において、スプールバルブ84には、第一切り溝107が形成してあり、かつスプールシリンダ72の内面には第二環状溝86が形成してあるので、作動油の流入が停止されてスプールバルブ84がバネ102により右方に戻されると、ブレーキブースタ16に通じている通孔90内の作動油が第一ランド110と第一切り溝107の間隙、およびスプールバルブ84の外周面と第二環状溝86の間隙を通り、通孔91を介してドレンに排出される。
【0051】
したがって、ブレーキブースタ16における高圧状態は、直ちに解消され、エマージェンシーポンプ37が直ちに駆動し、エマージェンシーポンプ37のチャタリング等を発生させることがない。
【0052】
このように本発明のハイドロリックブースタブレーキシステムによれば、ブレーキペダル26を踏んだ状態でエンジン10のスイッチをオフして、オイルポンプ12が停止されても、ハイドロリックブースタブレーキ15におけるエマージェンシーポンプ37が不要な動作を発生せず、円滑にハイドロリックブースタブレーキ15が通常の作動を行う。
【0053】
図7に、第二溝部(連通ポート)としての第二環状溝86の他の例を示す。図7は、分流弁18を、第二環状溝86(この第二環状溝86は、正確には環状ではない。)とドレン用流出口82に連通する通孔91の近傍に掛かる位置で、かつスプールシリンダ72(第二環状溝86)の中心軸に対して垂直な面に沿って破断した図である。この第二環状溝86は、スプールシリンダ72の内周面に、4箇所、スプールシリンダ72の中心軸と平行に設けてある。また、周方向に連結溝122が、各第二環状溝86と交差する形で形成してあり、各第二環状溝86を相互に連結している。そして、少なくとも1つの第二環状溝86に図に示すように通孔91が開口している。尚連結溝122を軸方向に互いにずらして形成してもよい。
【0054】
このように第二環状溝86を形成すると、第二環状溝86内を作動油が通孔90から通孔91に軸方向に流通して排出口より排出されるとともに、スプールシリンダ72の内周面に、軸方向に長く径の拡大された部分が形成されないので、スプールバルブ84がスプールシリンダ72内を軸方向に摺動してもがたつきが発生しない。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明にかかるハイドロリックブースタブレーキシステムの一実施形態を示す構成図。
【図2】ハイドロリックブースタブレーキを示す断面図。
【図3】ブレーキブースタを示す断面図。
【図4】分流弁を示す断面図。
【図5】スプールバルブを示す断面図。
【図6】スプールバルブを示す断面図。
【図7】第二環状溝の他の例を示す斜視断面図。
【符号の説明】
【0057】
10…エンジン
12…オイルポンプ
14…パワーステアリング
15…ハイドロリックブースタブレーキ
16…ブレーキブースタ
18…分流弁
28…マスターシリンダ
37…エマージェンシーポンプ
72…スプールシリンダ
84…スプールバルブ
86…第二環状溝(連通ポート、第二溝部)
107…第一切り溝(連通ポート、第一溝部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって駆動されるオイルポンプと、
前記オイルポンプに接続され、導入ポートを介して前記オイルポンプから作動油が供給される分流弁と、
前記分流弁に接続され、該分流弁の優先ポートを介して作動油が供給されるブレーキブースタと、
前記分流弁に接続され、該分流弁の余剰ポートを介して作動油が供給されるパワステギヤと、
前記分流弁に接続され、該分流弁のドレンポートを介して作動油が還元される作動油タンクとを備えたハイドロリックブースタブレーキシステムであって、
前記分流弁は、
前記導入ポートと前記優先ポートと前記余剰ポート及び前記ドレンポートが形成されるハウジングと、
付勢部材で片側に付勢されて前記ハウジングに軸方向に移動可能に収められ、前記導入ポートから作動油が導入された場合に該導入ポートと前記優先ポートとを連通可能にするスプールと、
前記導入ポートから作動油が導入されない場合に、前記優先ポートを、前記ドレンポートと連通可能にする連通ポートと
を備えたことを特微とするハイドロリックブースタブレーキシステム。
【請求項2】
前記連通ポートは、
前記スプールの外周に設けられ、前記導入ポートから作動油が導入されない場合において、前記優先ポートと連通する第1溝部と、
前記第1溝部と対峙するように前記ハウジングの内周に設けられ、前記導入ポートから作動油が導入されない場合において、該第1溝部と前記ドレンポートとを連通する第2溝部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のハイドロリックブースタブレーキシステム。
【請求項3】
前記第2溝部は、前記ハウジングの内周面に、少なくとも1つ、軸方向に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のハイドロリックブースタブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−162379(P2008−162379A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353239(P2006−353239)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】