説明

ハイパーブランチポリマーとその誘導体およびそれらを用いた有効成分保持体

【課題】高性能な有効成分保持体用のハイパーブランチポリマーとその誘導体およびそれらを用いた有効成分保持体を提供する。
【解決手段】本発明に係るハイパーブランチポリマーは、フェノール性水酸基および/またはカルボキシル基からなる官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分を重縮合することによって得られる。また、本発明に係るハイパーブランチポリマー誘導体は、ハイパーブランチポリマーをコアとして該コアの表面の少なくとも一部を覆うシェルが形成され、該シェルが前記コアのモノマーB由来のエポキシ基に修飾可能な官能基を有する化合物から構成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現する有効成分保持体の保持主体に用いられるハイパーブランチポリマーおよび該ハイパーブランチポリマーを用いた有効成分保持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、香料、清涼剤、酸化防止剤、殺菌剤、消臭剤などを始めとする薬用化合物、化粧用化合物や、電子材料用の金属イオンなどの有効成分を担持もしくは保持する技術として、活性剤によるミセル化合物、多孔質微粒子への吸着、または有効成分を含有する芯物質と高分子化合物等からなる多芯型のマイクロカプセルなどが知られている。
【0003】
これらの有効成分を担持する従来の技術では、有効成分を担持する単位容積が比較的大きく、有効成分を生体の微小領域に作用させるための担持体として、あるいは電子材料へ微量な金属イオンを添加するための担持体として利用することが難しいという問題点があった。また、有効成分を安定配合、安定分散、放出制御可能とする機能面において不十分であり、さらに、単位容積当たりの担持もしくは保持有効成分分量が低いという問題点もあった。
【0004】
これに対し、ナノサイズ〜ミクロンサイズのスペースに有効成分を担持することを可能とする担持体材料として、多分岐状高分子が注目されている。
【0005】
多分岐状高分子として、例えば、ハイパーブランチポリマーまたはその誘導体が知られている。このハイパーブランチポリマーまたはその誘導体は、分子鎖が非常に多岐に分岐した構造を持つため、全体が網目構造を有している。そのため、分子の内部及び/又は表面に有効成分を担持することが可能となる。かかる担持構造は、一種のカプセル構造と見なせるので、いわゆる分子カプセルとしての応用が期待されている。
【0006】
上記多分岐高分子に有効成分を担持させた場合、カプセル構造が実現されることになり、外環境の影響を受けづらい。また、多分岐高分子が網目構造を有し、かつ有効成分を担持する駆動力として、水素結合や疎水性相互作用、π電子相互作用などの分子間相互作用が期待できるため、担持主体である多分岐高分子よりも分子量の小さい化合物を有効成分として用いれば、簡単な操作によって有効成分の安定配合、安定分散、放出制御といった機能を発揮することが可能と考えられる。
【0007】
上述の観点から、多分岐高分子に有効成分を内包する様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、「樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする触媒」が開示されている。前記金属粒子前駆体として、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである金属イオンが、挙げられており、かかる触媒が、燃料電池用として好適な触媒として用い得ることが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、「電子供与性の結合もしくは原子を含むデンドリマーもしくはデンドロンに、有機化合物および有機金属化合物の1種以上のカチオンもしくはカチオンラジカルが内包あるいは複合化されていることを特徴とする有機・有機金属化合物内包デンドリマー」が開示されており、かかる有機・有機金属化合物内包デンドリマーは、発光材料、EL素子電子デバイスに好適に用い得ることが記載されている。
【0009】
このように、高分岐高分子を用いて有効成分を保持させた場合には、高分岐高分子の持つ網目構造に水素結合や疎水性相互作用、π電子相互作用などの分子間相互作用が期待できるため、有効成分分量を高めた担持もしくは保持する技術として提案されているが、有効成分保持体の安定配合、安定分散という観点からは課題がある。
【0010】
また、特許文献3には、「A)少なくとも1種の窒素原子含有ハイパーブランチポリマーと、 B)25℃かつ1013mbarにおいて10g/L未満の水への溶解度を呈する少なくとも1種の活性物質または有効物質と、を含む、活性物質組成物または有効物質組成物」が開示されており、かかる構成の組成物により、水難溶性活性物質の水性相中での安定化が図れることが記載されている。
【0011】
さらに、非特許文献1には、アミド末端ポリ(アミドアミン)デンドリマーへのメチル置換エポキシ化合物の付加によって、デンドリマー誘導体を生成し、白金ナノ粒子を取り込む知見が記載されている。
【0012】
しかしながら、上述のいずれの技術においても、香料、清涼剤、酸化防止剤、殺菌剤、消臭剤などを始めとする薬効化合物、化粧用化合物などの有効成分を組成物中に安定的に配合、分散して安定的に保持するとともに、保持した有効成分を適宜に放出可能とする技術は、未だに提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−134774号公報
【特許文献2】特開2006−070100号公報
【特許文献3】特表2008−531763号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Langmuir 2000, 16, 7842-7846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、薬効化合物、化粧用化合物などの有効成分を、親水性あるいは疎水性のいずれであっても、安定的かつ効果的に保持可能とするとともに、保持した有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現することのできる有効成分保持体の保持主体に好適なハイパーブランチポリマーとその誘導体、およびこれらを用いた有効成分保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用したハイパーブランチポリマーとその誘導体、およびこれらを用いた有効成分保持体を提供する。
【0017】
[1] 有効成分保持体の保持主体に用いられるハイパーブランチポリマーであって、フェノール性水酸基および/またはカルボキシル基からなる官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分を重縮合することによって得られたハイパーブランチポリマー。
[2] 前記モノマーAが前記官能基を2つ有するとともに、前記モノマーBがエポキシ基を3つ有することを特徴とする、上記[1]に記載のハイパーブランチポリマー。
[3] 上記[1]または[2]に記載のハイパーブランチポリマーをコアとして該コアの表面の少なくとも一部を覆うシェルが形成され、該シェルが前記コアのモノマーB由来のエポキシ基に修飾可能な官能基を有する化合物から構成されているハイパーブランチポリマー誘導体。
[4] 前記コアが疎水性であり、前記化合物が親水性であり、前記シェルが親水性であることを特徴とする、上記[3]に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
[5] 前記親水性化合物が前記コア表面のエポキシ基と反応して極性官能基を生成するものであることを特徴とする、上記[4]に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
[6] 前記[1]または[2]に記載のハイパーブランチポリマーに所望の有効成分が保持されてなる有効成分保持体。
[7] 前記有効成分が、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[6]に記載の有効成分保持体。
[8] 前記[3]〜[5]のいずれか1つに記載のハイパーブランチポリマー誘導体に所望の有効成分が保持されてなる有効成分保持体。
[9] 前記有効成分が、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[8]に記載の有効成分保持体。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるハイパーブランチポリマーは、エポキシ基と反応する官能基(フェノール性水酸基、カルボキシル基)を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分の一段階重縮合により得られるので、分子量1000未満のオリゴマー成分を減らすことができる。その結果、本発明にかかる有効成分保持体では、有効成分の保持が可能な分子量1000以上の共重合体(ハイパーブランチポリマー)を保持主体に選択的に用いることができ、有効成分の保持効率をより一層高めることができる。
【0019】
また、本発明においては、前記モノマーAとモノマーBの組み合わせを調整することにより、保持主体として用いるハイパーブランチポリマーの表面特性を親水性も疎水性もコントロール可能である。親水性となるように調製した場合は、保持主体であるハイパーブランチポリマーは水溶性となるので、そのままで、水性溶媒に均一に分散させることができ、水性溶媒中に均一に分散したハイパーブランチポリマーは水性溶媒中に配合した香料成分あるいは薬効成分などの有効成分と接触することにより、有効成分を効率的に保持することができる。また、ハイパーブランチポリマーを疎水性となるように調製した場合は、その表面に存在するエポキシ基の一部を親水性化合物により化学修飾することによって外郭に親水性のシェルを設けて疎水性コア親水性シェル型(ハイパーブランチポリマー誘導体)とし、水性溶媒中で香料成分あるいは薬効成分などの有効成分を効率的に保持可能とすることができる。水溶性としたハイパーブランチポリマーまたはハイパーブランチポリマー誘導体は、水性溶媒中において、配位結合、イオン結合、静電的相互作用、疎水性相互作用、π電子相互作用、分子間力相互作用を駆動力として、有効成分を保持することができる。
【0020】
また、前記シェルを構成する化合物の種類の選択や、官能基量に対する修飾の割合(置換率)を制御することにより香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述のように、本発明にかかるハイパーブランチポリマーは、エポキシ基と反応する官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分を重縮合することによって得られることを特徴とする。本発明にかかる有効成分保持体は、前記ハイパーブランチポリマーを保持主体として用いることを特徴とする。
以下、各構成要素について、順次、詳しく説明する。
【0022】
(ハイパーブランチポリマー)
本発明のハイパーブランチポリマーは、エポキシ基と反応する官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分を重縮合することによって得られる共重合物である。
【0023】
なお、本発明のハイパーブランチポリマーを重縮合により得るために用いられるモノマー成分としては、モノマーAとモノマーBとの組み合わせを必須成分として有していればよく、これら2成分から構成されていてもよいし、さらに、エポキシ基あるいはエポキシ基と反応する官能基を単数有する他のモノマーを加えた構成であってもよい。
エポキシ基あるいはエポキシ基と反応する官能基を単数有する他のモノマーを加える場合、モノマー成分合計に対する他のモノマーの割合は、1質量%以上50質量%未満、好ましくは、1質量%以上30質量%未満である。
【0024】
前記官能基およびエポキシ基の数の組み合わせとしては、前記モノマーAが官能基を2つ有するとともに、前記モノマーBがエポキシ基を3つ有する組み合わせが好ましい。
モノマーAとモノマーBを重縮合することによって得られる共重合物であるハイパーブランチポリマーにおいては、モノマーAとモノマーBとの組み合わせを調整することにより、親水性(水溶性)、疎水性(水難溶性)のどちらの形態にもコントロール可能である。
【0025】
なお、本発明において、水溶性とは、25℃、1気圧の条件で、100gの水への溶解度が5g以上であることを意味し、水難溶性とは、25℃、1気圧の条件で、100gの水への溶解度が5g未満であることを意味する。
【0026】
(モノマーA)
モノマーAにおける「エポキシ基と反応する官能基」としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基を好ましくは用いることができる。
【0027】
フェノール性水酸基を2つ有するモノマーAとしては、例えば、メチレンジフェノール、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノール(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等を挙げることができる。
【0028】
カルボキシル基を2つ有するモノマーAとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸等を挙げることができる。
【0029】
カルボキシル基を3つ有するモノマーAとしては、例えば、クエン酸等を挙げることができる。
【0030】
(モノマーB)
エポキシ基を2つ有するモノマーBとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0031】
エポキシ基を3つ有するモノマーBとしては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0032】
(重縮合反応条件)
上記モノマーAとモノマーBを出発物質としてハイパーブランチポリマーを製造する場合の諸条件は、以下のようである。
【0033】
(溶媒)
重縮合反応は、溶媒の存在なしに進行するが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0034】
(反応濃度)
モノマーAとモノマーBとを溶媒を用いて反応させる場合であっても、溶媒中でモノマーAとモノマーBとエポキシ基あるいはエポキシ基と反応する官能基を単数有する他のモノマーとを同時に用いて反応させる場合であっても、モノマー成分合計の溶媒に対する濃度は、1質量%以上100質量%未満、好ましくは、10質量%以上100質量%未満、より好ましくは、30質量%以上100質量%未満である。
【0035】
(反応温度および時間)
上記モノマーの重縮合反応は、好ましくは、不活性ガス(Ar、Nなど)下にモノマー溶液と触媒を混合させる。この時、モノマー溶液は、一度に混合させても、反応系に滴下してもどちらでも良い。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。反応時間は0.5〜20時間、より好ましくは、1〜10時間として、重縮合を完結させる。なお、前記モノマー溶液とは、反応に溶媒を用いない場合は、単体モノマー(液状)を意味し、反応に溶媒を用いる場合では、モノマーの溶媒溶液を意味する。
【0036】
(分岐度および分子量)
付加重合における反応温度と反応時間の選択は、分岐度、分子量に影響する。本発明における重縮合では、エポキシ基とエポキシ基と反応する官能基の活発な縮合の進行が、分岐度を向上させることから、高分岐重合体を得るためには、高温での反応(例えば、50℃以上、好ましくは60〜150℃)が望ましい。モノマーの消費が完了した後も反応温度が高い状態にあると、末端のエポキシ基が、系内の水分等によって、開環してしまう恐れがあるため、反応温度は、重合が終了した時点で速やかに室温まで低下させることが望ましい。
【0037】
重縮合で得られたハイパーブランチポリマーの換算分子量、すなわち重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000であることがより好ましく、最も好ましくは1,000〜20,000である。
ここで、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、0.5質量%の水溶液または水とメタノール等の有機溶媒との混合溶液を調製し、温度40℃でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行って求めることができる。例えば、カラムとして「TSKgel α−M」(商品名、東ソー製)を用い、測定装置として「RI−71」(商品名、Shodex社製)を用い、移動溶媒としては水または水とメタノール等の有機溶媒との混合溶液を用い、標準物質としてはポリエチレングリコールを使用することができ、後述の実施例においても、この条件で測定している。
また、ポリマーの多分散度(Mw/Mn)は1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがさらに好ましい。なお、上記多分散度(Mw/Mn)の分母のMnは数平均分子量である。
【0038】
また、重縮合で得られたハイパーブランチポリマーの絶対分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましく、最も好ましくは2,000〜200,000である。
ここで、ハイパーブランチポリマーの絶対分子量は、MALLS(multi-angle laser light scattering:多角度光散乱検出器)により測定することができる。
測定条件は、例えば、前述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のラインにWyatt社製の多角度光散乱検出器(商品名「DAWN DSP−F」)を接続して行うことができ、後述する実施例においても、この条件にて測定している。
【0039】
ハイパーブランチポリマーは、超多分岐体であるので、その構造は、通常、球状である。すなわち、重縮合で得られたハイパーブランチポリマーの分岐度は、球状構造をとっているかどうかによって判断することができる。球状構造であることの確認は、GPCで測定した重量平均分子量とMALLSで測定した絶対分子量との間が大きく異なるかどうかによって行うことができる(Frechet,M.et al.Am.Chem.Soc.1999,121,2313.;Sawamoto,et al.Macromolecules,2001,34,7629.)。
すなわち、GPC(Shodex社製、商品名「RI−71」)の測定値及び多角度光散乱検出器:MALLS(Wyatt社製、商品名「DAWN DSP−F」)により得られる絶対分子量の値を用いて、GPC測定の値とMALLSの値との差異に応じて判断することができ、後述の実施例もこれに従った。
【0040】
GPC測定の値とMALLSの値とが大きく異なる場合、球状のポリマーであると判断することができる。通常は、MALLSで測定した絶対分子量が、GPCで測定した重量平均分子量の2倍以上、好ましくは3倍以上であれば、球状構造と判断することができる。また、上限は特に規定されないが、通常は10倍以下である。
【0041】
(親水性および疎水性とする調製方法)
得られるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを親水性とする場合の調製方法は、モノマーAあるいはモノマーBの少なくともどちらか一方を水溶性の化合物から選択することである。水溶性化合物と水難溶性化合物の2種を選択した場合は、その親水疎水性のバランスを親水性寄りにすることが必要となる。
【0042】
一方、得られるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを疎水性とする場合の調製方法は、モノマーAあるいはモノマーBの少なくともどちらか一方を水難溶性の化合物から選択することである。水溶性化合物と水難溶性化合物の2種を選択した場合は、その親水疎水性のバランスを疎水性寄りにすることが必要となる。
【0043】
(精製)
得られたハイパーブランチポリマーから触媒や低分子量成分を除去するために、再沈操作や透析操作等の精製操作を行うことができる。
【0044】
(ハイパーブランチポリマー誘導体)
本発明のハイパーブランチポリマーは、エポキシ基と反応する官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBを重縮合することによって得られるので、その多数の末端はエポキシ基から構成される。
製造されたハイパーブランチポリマーが疎水性である場合は、疎水性ハイパーブランチポリマーをコアとし、そのコア表面に存在する末端のエポキシ基を下記の親水性化合物で修飾することにより、外郭に親水性のシェルを形成することができ、それにより水溶性のハイパーブランチポリマー誘導体を得る。
【0045】
なお、本発明において、上述のように、シェルに対して本体のハイパーブランチポリマーをコアと呼称する場合もある。コアに対してシェルを形成したハイパーブランチポリマー誘導体では、主に有効成分を保持するコアのハイパーブランチポリマーの表面特性を様々に制御することが可能となる。また、シェルによるコアの被覆率を制御することによりコアに保持されている有効成分の外部への放散速度(徐放性)を制御することもできる。
【0046】
シェルは、前記ハイパーブランチポリマー(コア)の表面の末端エポキシ基の全てと反応してコア全体を覆う場合もあれば、一部と反応してコアを部分的に覆う場合もある。シェルは、コア表面の末端基の30%以上と反応するのが好ましく、コア表面の末端基の50%以上と反応するのがさらに好ましい。コア表面の末端基との反応率が低い場合、有効成分の保持効率が不十分になる恐れがある。
【0047】
(親水性化合物)
本発明において、親水性化合物とは、コア表面の末端エポキシ基と反応してヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、スルホ基、ニトリル基などの極性官能基を生成する化合物である。
【0048】
かかる親水性化合物としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、トリプロピルアミン塩酸塩、トリイソプロピルアミン塩酸塩、トリブチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩などのアミン塩酸塩;エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド;メタノール、エタノールなどのアルコール;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミンなどのアミン;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩;水素、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化試薬;硫化アンモニウムなどのアミド化試薬を挙げることができる。
【0049】
(シェルを形成するための、コア表面への化合物の修飾反応条件)
シェル形成とは、換言すれば、ハイパーブランチポリマーの誘導体化であり、この誘導体化は、触媒の存在なしに進行する場合もあるが、各種の触媒で行うこともできる。触媒の種類としては、塩基性触媒、酸性触媒、四級アンモニウム塩触媒等が挙げられる。
【0050】
上記塩基性触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、それらの水素化物、アルコキシド、水酸化物、アルキル化物、炭酸塩等を挙げることができる。
【0051】
また、上記酸性触媒としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、シアン化水素酸、イソシアン化水素酸、アジ化水素酸、ホウ酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過塩素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等を挙げることができる。
【0052】
上記四級アンモニウム塩触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、これらは単独または混合して用いることができる。
【0053】
上記触媒の使用量は、出発物質(ハイパーブランチポリマー)に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いるハイパーブランチポリマーへのシェル形成(ハイパーブランチポリマーの誘導体化)は、溶媒の存在なしに進行するが、各種の溶媒中で行うこともできる。
【0055】
溶媒を用いて誘導体化する場合に用いる溶媒の種類としては、特に限定はされないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、N.N−ジメチルホルムアミド、N.N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0056】
上記誘導体化の反応濃度(溶媒に対するハイパーブランチポリマーの濃度)は、1質量%〜100質量%(溶媒なし)、好ましくは、10質量%〜100質量%、より好ましくは、30質量%〜100質量%である。
【0057】
上記誘導体化の反応は、好ましくは、不活性ガス(Ar、Nなど)下にモノマー溶液と触媒を混合させる。この時、シェル形成用の化合物は、一度に混合させても、反応系に滴下してもどちらでも良い。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。反応時間は0.5〜10時間、より好ましくは、1〜7時間として、重合を完結させる。
【0058】
(有効成分保持体)
本発明の有効成分保持体は、上記ハイパーブランチポリマーまたはハイパーブランチポリマー誘導体を保持主体とし、この保持主体に所望の有効成分を保持させてなるものである。
【0059】
(有効成分)
本発明において、上記保持主体に保持する有効成分としては、香料、金属イオン、殺菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、清涼剤、制汗剤、必須脂肪酸、ビタミン等が挙げられる。
【0060】
上記有効成分のうち、水難溶性物質(水への溶解度:25℃で5%未満)は、疎水性のハイパーブランチポリマーと特に保持体を形成しやすい。一方、水溶性物質(水への溶解度:25℃で5%以上)は、親水性ハイパーブランチポリマーまたは親水性のシェルが形成されたハイパーブランチポリマーに、特に保持されやすい。また、遮蔽性を有するシェルが形成された球状超多分岐構造分子は、シェルによる遮蔽効果によって、揮発性の有効成分の保持能が向上する。
【0061】
上記香料としては、アルデヒド(炭素数8〜20)、アニスアルデヒド、アセトフェノン、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、アンブロキサン、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルニルアセテート、ベンズアルデヒド、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、クマリン、シンナミルアセテート、ジプロピレングリコール、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロミルセノール、ジフェニルオキサイド、エチルバニリン、オイゲノール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソシクロシトラール、アンバーコア、イソEスーパー、イソブチルキノリン、ジャスモラクトン、コアボン、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リラール、マイヨール、γ−メチルイオノン、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、ミラックアルデヒド、ネロール、ノピールアルコール、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、ローズオキサイド、サンダルマイソールコア、サンタレックス、バクダノール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、テトラヒドロゲラニオール、トナリッド、トリプラール、チモール、バニリン、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、セダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、パチュリ油、ペパーミント油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、ベチバー油、イランイラン油、トルーバルサム油、チュベローズ油等が挙げられる。
【0062】
上記金属イオンとしては、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Ruイオン、Scイオン、Tiイオン、Vイオン、Crイオン、Mnイオン、Yイオン、Zrイオン、Nbイオン、Moイオン、Tcイオン、Hfイオン、Taイオン、Wイオン、Osイオン、Irイオン、Cdイオン、Hgイオン等が挙げられる。
【0063】
上記殺菌剤としては、ピロクトンオラミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロラムフェニコール、塩酸オキシテトラサイクリン、グリセオフルビン、トリクロサン、クララエキス等が挙げられる。
【0064】
上記抗菌剤としては、カテキン、ヒノキチオール、1,8−シネオール、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ブチル、タケ抽出オイル、シソオイル、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、p−メトキシフェノール(PMP)、トコフェロール、トコトリエノール等が挙げられる。
【0065】
上記抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸塩、プロピオン酸クロベタゾール、イブプロフェン及びその塩、ジクロフェナック及びその塩、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、またはグリシルレチン酸、フェルビナク、インドメタシンが挙げられる。
【0066】
上記清涼剤としては、ハッカ油、マスティック油、パセリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、カルダモン油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、パインニードル油、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オクチルアルデヒド、メンチルアセテート、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、6−イソプロピル−9−メチル−1,4−ジオキサスピロ−(4,5)−デカン−2−メタノール、コハク酸メンチルおよびそのアルカリ土類塩、トリメチルシクロヘキサノール、N−エチル−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3−(1−メントキシ)−2−メチル-プロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンケタール、乳酸メンチル、[1’R,2’S,5’R]−2−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)エタン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−3−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)プロパン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−4−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)ブタン−1−オール等が挙げられる。
【0067】
上記制汗剤としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0068】
上記必須脂肪酸としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0069】
上記ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(フィロキノン)、ビタミンK(メナキノン)、ビタミンK(メナジオール二リン酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0070】
上記有効成分のうち、水難溶性物質(水への溶解度:25℃、5質量%未満)は、疎水コアあるいは疎水シェルを有するハイパーブランチポリマーによって特に複合化されやすく、水溶性物質(水への溶解度:25℃、5質量%以上)は、親水コアあるいは親水シェルを有するハイパーブランチポリマーによって特に複合化されやすい。これは、分子間の相互作用が強くなるためであると考えられる。また、ハイパーブランチポリマーの化学修飾により、ハイパーブランチポリマーをコアとし、このコアにシェルが形成されたコアシェル型が構成される場合は、揮発性物質への保持能が向上する。
【0071】
上記水難溶性物質としては、アルデヒド(炭素数8〜20)、アニスアルデヒド、アセトフェノン、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、アンブロキサン、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルニルアセテート、ベンズアルデヒド、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、クマリン、シンナミルアセテート、ジプロピレングリコール、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロミルセノール、ジフェニルオキサイド、エチルバニリン、オイゲノール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソシクロシトラール、アンバーコア、イソEスーパー、イソブチルキノリン、ジャスモラクトン、コアボン、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リラール、マイヨール、γ−メチルイオノン、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、ミラックアルデヒド、ネロール、ノピールアルコール、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、ローズオキサイド、サンダルマイソールコア、サンタレックス、バクダノール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、テトラヒドロゲラニオール、トナリッド、トリプラール、チモール、バニリン、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、セダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、パチュリ油、ペパーミント油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、ベチバー油、イランイラン油、トルーバルサム油、チュベローズ油、ピロクトンオラミン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロラムフェニコール、グリセオフルビン、トリクロサン、パラメトキシフェノール、クララエキス、カテキン、ヒノキチオール、1,8−シネオール、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ブチル、タケ抽出オイル、シソオイル、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、トコトリエノール、ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸塩、プロピオン酸クロベタゾール、イブプロフェン、ジクロフェナック、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、グリシルレチン酸、フェルビナク、インドメタシン、ハッカ油、マスティック油、パセリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、カルダモン油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、パインニードル油、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オクチルアルデヒド、メンチルアセテート、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、6−イソプロピル−9−メチル−1,4−ジオキサスピロ−(4,5)−デカン−2−メタノール、コハク酸メンチルおよびそのアルカリ土類塩、トリメチルシクロヘキサノール、N−エチル−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3−(1−メントキシ)−2−メチル−プロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンケタール、乳酸メンチル、[1’R,2’S,5’R]−2−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)エタン-1-オール、[1’R,2’S,5’R]−3−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)プロパン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−4−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)ブタン−1−オール、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0072】
上記水溶性物質として、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Ruイオン、Scイオン、Tiイオン、Vイオン、Crイオン、Mnイオン、Yイオン、Zrイオン、Nbイオン、Moイオン、Tcイオン、Hfイオン、Taイオン、Wイオン、Osイオン、Irイオン、Cdイオン、Hgイオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩酸オキシテトラサイクリン、カテキン、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、エリソルビン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0073】
上記水難溶性物質として、製剤への汎用性という観点から、好ましくは、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオールリリアール、リモネン、リナロール、リラール、ムスクケトン、トリプラール、チモール、バニリン、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルフェノール、パラメトキシフェノール、ヒノキチオール、1,8−シネオール、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸のエステル類、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、フェルビナク、インドメタシン、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0074】
上記水溶性物質として、製剤への汎用性という観点から、好ましくは、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Tiイオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、次亜塩素酸ナトリウム、カテキン、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。
【0075】
(有効成分の保持形態)
本発明におけるハイパーブランチポリマーへの有効成分の保持は、ハイパーブランチポリマー(コア)またはシェルが形成されたハイパーブランチポリマー(コア−シェル構造体)と有効成分とを混合することにより得られる。有効成分のハイパーブランチポリマーへの保持は、配位結合、イオン結合、共有結合、静電的相互作用、疎水性相互作用、分子間力相互作用、などの結合形態により実現される。
【0076】
(有効成分の保持化方法)
本発明におけるハイパーブランチポリマーへの有効成分の保持を実現する方法は、特に限定されないが、ハイパーブランチポリマーと有効成分のそれぞれをそのままで混合する方法、何れか一方を溶媒に溶解させてから、もう片方をそのままで混合する方法、どちらも溶媒に溶解させてから混合する方法などが挙げられる。
【0077】
上記混合を行う時の温度は、−20℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、0℃〜120℃である。混合時間は1分〜10時間、より好ましくは、10分〜5時間として、有効成分のハイパーブランチポリマーへの保持を完結させる。
【0078】
(本発明の有効成分保持体の用途)
本発明の有効成分保持体は、多くの用途に使用することができる。例えば、化粧品、洗浄剤、医薬品、芳香剤、ポリウレタン配合物、塗料、水性塗料、接着剤、硬化樹脂、生物学的適合性ポリマー、機能性物質や触媒の担持体として、医薬、生化学、および合成における有効成分等に使用することができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。以下に示す実施例は、本発明を説明するための好適な例示であって、本発明を限定するものではない。
【0080】
(合成例1) ハイパーブランチポリマーA1の調製
300mL反応容器内に、反応モノマーとしての1,1−ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン56.4g、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名「SR−TMP」)63.6g、触媒としてのテトラブチルアンモニウムブロマイド3.4g、及び溶媒としてのジエチレングリコールジエチルエーテル80gを収容し、室温で30分間窒素を吹き込んだ。
その後、温度140℃で攪拌して2時間重合反応させた。室温まで温度を下げ、反応液を分子量測定したところ、分子量1000未満の成分は11%であった。THF/メタノールで再沈を行い、沈殿物をエバポレータで乾固させることにより、ハイパーブランチポリマーA1を合成した。
得られたハイパーブランチポリマーA1は、水難溶性であった。重量平均分子量が41,000(GPC測定、ポリエチレングリコール換算)であり、MALLSによる絶対分子量は、90,000であった。MALLSの値が、GPCの値の3.2倍と大きく異なっていることより、本ポリマーは球状であると言える。
【0081】
(合成例2)ハイパーブランチポリマーA2の調製
300mL反応容器内に、反応モノマーとしてのアジピン酸13.0g、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名「SR−TMP」)27.0g、触媒としてのテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5g、及び溶媒としてのテトラヒドロフラン160gを収容し、室温で30分間窒素を吹き込んだ。
その後、温度70℃で攪拌して7時間重合反応させた。室温まで温度を下げ、エバポレータで乾固させることにより、ハイパーブランチポリマーA2を合成した。
得られたハイパーブランチポリマーA2は水難溶性であった。重量平均分子量が8,000であり、分子量1000未満の成分は16%(GPC測定、ポリエチレングリコール換算)であり、MALLSによる絶対分子量は、29,000であった。MALLSの値が、GPCの値の3.6倍と大きく異なっていることより、本ポリマーは球状であると言える。
【0082】
(実施例1)ハイパーブランチポリマーA3の調製
300mL反応容器内に、反応モノマーとしてのマロン酸13.6g、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名「SR−TMP」)26.4g、触媒としてのテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5g、及び溶媒としてのテトラヒドロフラン160gを収容し、室温で30分間窒素を吹き込んだ。
その後、温度70℃で攪拌して6時間重合反応させた。室温まで温度を下げ、エバポレータで乾固させることにより、ハイパーブランチポリマーA3を合成した。
得られたハイパーブランチポリマーA3は水溶性であった。重量平均分子量が11,000であり、分子量1000未満の成分は13%(GPC測定、ポリエチレングリコール換算)であり、MALLSによる絶対分子量は、45,000であった。MALLSの値が、GPCの値の4.1倍と大きく異なっていることより、本ポリマーは球状であると言える。
【0083】
(実施例2)ハイパーブランチポリマー誘導体B1の調製
300mL反応容器内に、原料ポリマーとして合成例1で調製した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1を10.0g、トリメチルアミン塩酸塩 1.32g、1−プロパノール30.0gを収容し、室温で30分間窒素を吹き込んだ。その後、温度110℃で攪拌して15時間反応させた。
室温まで温度を下げた後、透析(ポアスペクトラ7、分画分子量:2000)を行った。凍結乾燥後、目的のハイパーブランチポリマー誘導体(コアシェル型ハイパーブランチポリマー)B1を得た。
得られたハイパーブランチポリマー誘導体B1は、重量平均分子量が52,000(GPC測定、ポリエチレングリコール換算)であり、水溶性であった。
【0084】
(実施例3)ハイパーブランチポリマー誘導体B2の調製
300mL反応容器内に、原料ポリマーとして前記合成例2で調製した疎水性水不溶性ハイパーブランチポリマーA2を10.0g、トリメチルアミン塩酸塩 0.66g、1−プロパノール30.0gを収容し、室温で30分間窒素を吹き込んだ。その後、温度110℃で攪拌して14時間反応させた。
室温まで温度を下げた後、透析(ポアスペクトラ7、分画分子量:2000)を行った。凍結乾燥後、目的のハイパーブランチポリマー誘導体(コアシェル型ハイパーブランチポリマー)B2を合成した。
得られたハイパーブランチポリマー誘導体B2は、重量平均分子量が9,400(GPC測定、ポリエチレングリコール換算)であり、水溶性であった。
【0085】
上記実施例1〜3で得たハイパーブランチポリマーおよびハイパーブランチポリマー誘導体を保持主体として用いて所望の有効成分を保持させることにより、有効成分保持体を調製するとともに、それぞれにおける保持特性を評価した。
保持主体の比較例として、下記2種の化合物を用意した。
【0086】
(比較例1)
比較のための保持主体として、ポリエチレングリコール(関東化学製、商品名「PEG4000」)を用いた。この化合物のGPCによる重量平均分子量は3,000であり、球状高分岐構造分子(ハイパーブランチポリマー)ではないことが確認された。
【0087】
(比較例2)
比較のための保持主体として、合成例1で得た水難溶性のハイパーブランチポリマーA1を用いた。
【0088】
(評価試験1)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分として塩化ベンザルコニウムを用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0089】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分とした塩化ベンザルコニウム(水溶性)0.1g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌して、有効成分保持体を調製した。
【0090】
上記有効成分保持体を含む混合溶液を透過分子量1000の透析膜(Spectrum社製、商品名「「スペクトラポア7」)で3日間透析し、残存する塩化ベンザルコニウム量を定量し、下記評価条件によって有効成分保持性を評価した。評価結果を下記(表1)に示した。
ここで、残存する塩化ベンザルコニウム量は、適当な濃度の水溶液を調製し、温度40℃で高速液体クロマトグラフィー測定を行って求めることができる。例えば、カラムとして「CAPCELL PAK SCX UG―80」(商品名、株式会社資生堂製)を用い、測定装置として「UV−8010」(商品名、東ソー株式会社製)を用い、移動溶媒としては1%の過塩素酸ナトリウムを含む水/メタノール混液(75/25vol比)を用い、標準物質としてはベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを使用することができる。
(評価条件)
◎:残存率が10%以上
○:残存率が5%以上、10%未満
×:残存率が5%未満
【0091】
【表1】

【0092】
上記(表1)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、水溶性の塩化ベンザルコニウムが透析膜の中に残存しており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0093】
(評価試験2)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分としてp−メトキシフェノール(水難溶性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0094】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分としたp−メトキシフェノール(PMP)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌して、有効成分保持体を調製した。
【0095】
上記有効成分保持体を含む混合溶液中のp−メトキシフェノール(PMP)の溶存量を定量し、下記評価条件によって有効成分保持性を評価した。評価結果を下記(表2)に示した。
ここで、PMPは、適当な濃度のエタノール溶液を調製し、初期温度100℃、最終温度300℃でガスクロマトグラフィー測定を行って求めることができる。例えば、カラムとして「Ultra2」(商品名、HEWLET PACKARD社製)を用い、測定装置として「5890 SERIES II」(商品名、HEWLET PACKARD社製)を用い、移動相としてはヘリウムガスを用い、標準物質としてはシクロヘキサノンを使用することができ、後述の評価試験においても、この条件で測定している。
(評価条件)
◎:7%以上
○:4%以上、7%未満
×:4%未満
【0096】
【表2】

【0097】
上記(表2)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、水難溶性のp−メトキシフェノール(PMP)が混合溶液中に溶存しており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0098】
(評価試験3)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分としてメントール(水難溶性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0099】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分としたメントール0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌して、有効成分保持体を調製した。
【0100】
上記有効成分保持体を含む混合溶液中のメントール溶存量を定量し、下記評価条件によって有効成分保持性を評価した。評価結果を下記(表3)に示した。
ここで、メントールは、評価試験2と同様のガスクロマトグラフィー測定を行って求めることができる。
(評価条件)
◎:0.1%以上
○:0.03%以上、0.1%未満
×:0.03%未満
【0101】
【表3】

【0102】
上記(表3)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、水難溶性であるメントールが水溶液に十分可溶化されており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0103】
(評価試験4)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分として有効成分としてイソプロピルメチルフェノール(水難溶性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0104】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分としてイソプロピルメチルフェノール(IPMP)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌して、有効成分保持体を調製した。
【0105】
上記有効成分保持体を含む混合溶液中の有効成分としてイソプロピルメチルフェノール(IPMP)溶存量を定量し、下記評価条件によって有効成分保持性を評価した。評価結果を下記(表4)に示した。
ここで、IPMPは、評価試験2と同様のガスクロマトグラフィー測定を行って求めることができる。
(評価条件)
◎:0.1%以上
○:0.03%以上、0.1%未満
×:0.03%未満
【0106】
【表4】

【0107】
上記(表4)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、水難溶性であるイソプロピルメチルフェノールが水溶液に十分可溶化されており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0108】
(評価試験5)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分として有効成分としてジブチルヒドロキシトルエン(水難溶性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0109】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分とした有効成分としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.05g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌して、有効成分保持体を調製した。
【0110】
上記有効成分保持体を含む混合溶液中の有効成分としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)溶存量を定量し、下記評価条件によって有効成分保持性を評価した。評価結果を下記(表5)に示した。
ここで、BHTは、評価試験2と同様のガスクロマトグラフィー測定を行って求めることができる。
(評価条件)
◎:0.002%以上
○:0.001%以上、0.002%未満
×:0.001%未満
【0111】
【表5】

【0112】
上記(表5)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、非常に高い水難溶性を示すBHTが水溶液に可溶化されており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0113】
(評価試験6)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分としてピロクトンオラミンを用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0114】
上記5例の各サンプル0.1g、有効成分としたピロクトンオラミン3g、プロピレングリコール10gを混合し、50℃で1時間攪拌し、有効成分保持体を得た。
【0115】
上記有効成分保持体を含む混合溶液の調製直後、および室温で1日静置した後の、溶液の外観、特にピロクトンオラミンの結晶の析出状態から、ピロクトンオラミンの保持安定性を下記評価条件によって評価した。評価結果を下記(表6)に示した。
(評価条件)
◎:結晶が析出しない
△:結晶がやや析出する
×:結晶が析出する
【0116】
【表6】

【0117】
上記(表6)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、プロピレングリコール中での室温安定性が低いピロクトンオラミンが安定に溶解しており、有効成分が保持主体に保持されていることが分かった。
【0118】
(評価試験7)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分として銀イオンを用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0119】
上記5例の各サンプルの0.05%水溶液1g、100ppm硫酸銀水溶液1gを混合し、室温で3時間攪拌し、有効成分保持体を得た。
【0120】
上記有効成分保持体を含む混合溶液の1日後の外観から各サンプルの保持主体が有効成分である銀イオンを保持する状態の安定性を、下記評価条件によって評価した。評価結果を下記(表7)に示した。
(評価条件)
◎:沈殿物が生成しない
△:沈殿物がやや生成する
×:沈殿物が生成する
【0121】
【表7】

【0122】
上記(表7)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、易酸化性の銀イオンが沈殿することなく可溶化されており、有効成分が保持主体に安定保持されていることが分かった。
【0123】
(評価試験8)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分として銀微粒子を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0124】
上記5例の各サンプルの0.05%水溶液1g、100ppm硫酸銀水溶液1g、1%水素化ホウ素ナトリウム0.2gを混合し、室温で3時間攪拌し、有効成分保持体を得た。
【0125】
上記有効成分保持体を含む混合溶液の1日後の外観から各サンプルの保持主体が有効成分である銀微粒子を保持する状態の安定性を、下記評価条件によって評価した。評価結果を下記(表8)に示した。
(評価条件)
◎:沈殿物が生成しない
△:沈殿物がやや生成する
×:沈殿物が生成する
【0126】
【表8】

【0127】
上記(表8)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、銀イオンを還元させて銀微粒子としても沈殿することなく分散されており、有効成分が保持主体に安定保持されていることが分かった。
【0128】
(評価試験9)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分としてレチノール(易酸化性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、有効成分保持性を評価した。
【0129】
上記5例の各サンプルの0.1g、有効成分としたレチノール0.1g、水10gを混合し、室温で3時間攪拌し、有効成分保持体を得た。
【0130】
上記有効成分保持体を含む混合溶液を70℃で7日間静置した後、溶液中のレチノールの残存量を定量し、レチノールの残存率から、保持安定性を下記評価条件によって評価した。評価結果を下記(表9)に示した。
ここで、レチノールは、温度40℃で高速液体クロマトグラフィー測定を行って求めることができる。例えば、カラムとして「Cadenza CD−C18」(商品名、インタクト社製)を用い、測定装置として「UV―970」(商品名、日本分光製)を用い、移動溶媒としてはメタノール/2−プロパノール/テトラヒドロフラン/水(680/120/100/100vol比)混合溶液を用い、標準物質としては5℃保存品のレチノール量を使用することができる。
(評価条件)
◎:残存率が70%以上
○:残存率が50%以上、70%未満
×:残存率が50%未満
【0131】
【表9】

【0132】
上記(表9)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、易酸化性のレチノールが高温下に長期におかれても酸化により消失することなく残存しており、易酸化性の有効成分が実施例の保持主体に安定保持されることが分かった。
【0133】
(評価試験10)
実施例1で得たハイパーブランチポリマーA3と、実施例2で得たハイパーブランチポリマー誘導体B1と、実施例3で得たハイパーブランチポリマー誘導体B2と、比較例1で用意したポリエチレングリコールと、比較例2で用意した水難溶性ハイパーブランチポリマーA1(合成例1)の5例の各サンプルを保持主体とするとともに、有効成分としてリナロール(揮発性)を用い、以下のようにして、有効成分保持体を調製し、揮発性有効成分の放出制御性(保持安定性)を評価した。
【0134】
上記5例の各サンプルの0.1g、有効成分としたリナロール0.05g、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO=15)(日本エマルジョン社製、商品名「EMALEX715」)0.1g、水10gを混合し、開放系容器中、室温で攪拌し、有効成分保持体を得た。
【0135】
上記有効成分保持体を含む混合溶液中の7日後のリナロールの残存量を定量し、リナロールの残存率から保持安定性を下記評価条件によって評価した。評価結果を下記(表10)に示した。
ここで、リナロールは、評価試験2と同様のガスクロマトグラフィー測定を行って求めることができる。
(評価条件)
◎:10%以上
○:1%以上、10%未満
×:1%未満
【0136】
【表10】

【0137】
上記(表10)に見るように、実施例1〜3の各サンプルを保持主体として用いた場合では、揮発性物質のリナロールが溶液中に7日後でも残存しており、揮発性の有効成分が実施例の保持主体により放出制御される(安定保持される)ことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上説明したように、本発明にかかるハイパーブランチポリマーとその誘導体およびこれらを用いた有効成分保持体は、香料、薬剤などの有効成分を散逸しないように保持するとともに、前記有効成分の徐放性、溶解性などの有用な機能を実現するという効果を有し、特に、医薬品や、各種衛生製品、精密電子材料などの微量成分導入手段に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分保持体の保持主体に用いられるハイパーブランチポリマーであって、
フェノール性水酸基および/またはカルボキシル基からなる官能基を複数有するモノマーAと、前記官能基の数より多い数のエポキシ基を有するモノマーBとを有してなるモノマー成分を重縮合することによって得られたハイパーブランチポリマー。
【請求項2】
前記モノマーAが前記官能基を2つ有するとともに、前記モノマーBがエポキシ基を3つ有することを特徴とする請求項1に記載のハイパーブランチポリマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイパーブランチポリマーをコアとして該コアの表面の少なくとも一部を覆うシェルが形成され、該シェルが前記コアのモノマーB由来のエポキシ基に修飾可能な官能基を有する化合物から構成されているハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項4】
前記コアが疎水性であり、前記化合物が親水性であり、前記シェルが親水性であることを特徴とする請求項3に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項5】
前記親水性化合物が前記コア表面のエポキシ基と反応して極性官能基を生成するものであることを特徴とする請求項4に記載のハイパーブランチポリマー誘導体。
【請求項6】
請求項1または2に記載のハイパーブランチポリマーに所望の有効成分が保持されてなる有効成分保持体。
【請求項7】
前記有効成分が、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の有効成分保持体。
【請求項8】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のハイパーブランチポリマー誘導体に所望の有効成分が保持されてなる有効成分保持体。
【請求項9】
前記有効成分が、薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の有効成分保持体。

【公開番号】特開2011−84601(P2011−84601A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236563(P2009−236563)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】