説明

ハイブリッドエンジンを作動する方法

本発明はハイブリッド内燃機関を作動する方法に関し、以下を含む:ハイブリッド内燃機関に可燃性燃料を供給し;エンジンオイル合成物を前記内燃機関に補給し;エンジンの大端部コンロッド軸受シェルにおけるエンジンオイル合成物の油膜厚を少なくとも0.4μmに維持し;そこで、エンジンオイル合成物の温度が123℃より低く維持され、そして、エンジンオイル合成物は150℃および剪断率10−1で2.6cP(2.6ミリパスカル秒)未満の高温高剪断粘度を有し;最大で13重量%のNoack揮発度であり;その合成物は(A)少なくとも1つの合成ベースストック(basestock)であり、100℃で少なくとも2.0cSt(2.0mm/s)の動粘性率を有する基油と、(B)少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの洗浄剤、および少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供する量で含む添加剤パッケージとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド内燃機関を作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド内燃機関はハイブリッド車の1つまたはそれ以上の他の動力源と共に用いられる。典型的には、ハイブリッド車は機械的および電気的動力源を備え、機械的動力源は内燃機関によって設けられている。ハイブリッド内燃機関は、火花点火内燃機関または圧縮点火内燃機関でもよい。
【0003】
ハイブリッド内燃機関は、他の原動力、例えば電気モータ、油圧モータ、慣性装置(例えばフライホイール)等の1つまたはそれ以上、と共に直列または並列で車両に用いられることができる。
【0004】
直列に用いられる場合、内燃機関は発電機に動力を供給し、駆動系に機械的に接続されていない。発電機からの電気が車両を動かす1つまたはそれ以上のモータに供給され、過剰なエネルギは電池を充電するために使用することができる。さらに、内燃機関が必要とされない場合または内燃機関が作動されることが非効率な場合、例えばアイドリングのときには、内燃機関はスイッチを切ることができる。大電力が必要の場合、電力は電池およびエンジン発電機部分の両方から生成される。
【0005】
並列に用いられる場合、内燃機関および電気モータは機械的変速機へ機械的に接続されてもよい。多くの場合、内燃機関は主要な動力源であり、ブーストが必要な場合のみ作動する電気モータとともに主要動力のために利用される。他のシステムは、電気モータまたは内燃機関を単独で作動することにより作動させることができる。多くのシステムは発電機および電気的モータを1つのユニットに結合し、そして、この装置は、内燃機関を始動させるために用いる始動モータと置き換えてもよい。
【0006】
他の並列システムにおいて、通常、制動の際に失う運動エネルギを回復するのに追加の動力が必要な場合、動力補助として利用される電気モータとともに内燃機関は直接車輪を動かす。
【0007】
内燃機関のための低粘度潤滑油は、燃料効率を備えていることで知られている。したがって、タモト等による、SAE Technical Paper 2004−01−1936(2004年6月)の表題「ガソリンエンジンオイルを節減する超低粘度燃料の可能性」はガソリンオイルエンジン摩擦試験に関するものであり、その試験は超低粘度エンジンオイルを使用して行われる。鉱基油ストックを含んでいるオイルは、粘度の増加、オイル消費量の増加および洗浄力の低下を示した。特定の合成基油により調製されるエンジンオイルは、鉱油より優れた性能を示すといわれていた。合成基油ET−1はエーテル型、低粘度および高粘度指数である鉱油と類似する高アニリン点を有するといわれていた。合成基油の粘度は100℃で2.8mm/sといわれていたが、その揮発度は報告されていなかった。調製されたオイル、MFO−2において、合成基油は粘度調整のために少量の第III群の100N鉱基油と混合され、未定義のSL添加剤パッケージとMoDTCフリクションモデファイアが未定義量で用いられた。調製されたオイルの100℃でのHTHS(高温高剪断)の粘度は3.4mPa.sで規定され、そのリン含有量は0.10質量%で規定され、調製されたオイル(250℃、1時間)のNoack揮発度は14質量%で規定された。
【0008】
欧州特許出願公開第1600495号明細書はエンジンオイル合成物に関するものであり、その合成物は現行基準(Society of Automotive Engineers)の粘度分類で特定される最も低い粘度等級より低い粘度を有し、耐摩耗剤の量の増加することなく高温および高剪断率条件下で、優れた耐摩耗性を成し遂げるといわれている。オイル合成物は、鉱油および/または合成オイルを含む基油中に、0.02〜0.12質量%のジチオリン酸亜鉛を含み、150℃および剪断率1×10−1で、2.6mPa.s未満の高温高剪断粘度を特徴とするといわれており、以下の方程式をみたす。
【0009】
【数1】

【0010】
欧州特許出願公開第1600495号明細書によると、潤滑油のために一般的な基油はエンジンオイル合成物のために用いることができ、特別な制限ではなくまた、実施例には鉱基油、GTL(gas to liquid)型基油、合成基油、またはこれらの混合物を含むことが記載されている。欧州特許出願公開第1600495号明細書によると、エンジンオイル合成物のために必要な1つの特徴的特性は蒸発可能性が最小化されなければならないということである。蒸発は、軽油成分に依存するといわれ、基油の粘度が減少される場合に、鉱油が使用されるなら、蒸発可能性が増加することは回避不能であるといわれている。さらに、NOACK蒸発可能性を15質量%またはそれ以下に保つ必要性があるといわれている。低い粘度、低いNOACK蒸発可能性を有する適切な基油であって、例えば、その量に対応して粘度が減少する、その中に記載されたエステルを選択することが好ましいといわれている。欧州特許出願公開第1600495号明細書によると、所望の粘度特性、NOACK蒸発可能性および他の特性を実現するために、基油がさまざまな型の基油を用いて製造されるか、または適切に2つまたはそれ以上の型の基油を混合して製造される。このようにして製造される100℃で基油の動粘性率は2〜40mm/sの範囲、好ましくは2〜20mm/sの範囲内で、より好ましくは3〜8mm/sの範囲内で調整されることがいわれている。
【0011】
大端部コンロッド(連接棒)軸受シェルにおける内燃機関の許容操作に必要なエンジンオイル合成物の最小油膜の厚みは0.4μmと考えられている。自動車内燃機関において、コンロッドは各ピストンをクランクシャフトに連結する。大端部コンロッドは大端部軸受シェルを介してクランクシャフトに連結している。自動車内燃機関において、大端部コンロッド軸受シェルは、摩耗のために最も重要な軸受であると考えられている。潤滑油合成物の最小油膜厚みは、主にオイルの粘度およびオイルの温度に依存している。例えば、出願人は、最新小型ディーゼルエンジンにおける、150℃および剪断率10−1で、2.6cP未満の高温高剪断粘度を有するオイルについて、そのオイルは大端部コンロッド軸受シェルにおいて0.4μmの最小油膜厚みを維持するために123℃以下の温度で維持されなければならないことを発見した。
【0012】
過酷な作動条件、例えば、都市交通状態、及び/又は、高速道路での運転における長期にわたる作動で内燃機関におけるエンジンオイルは非常に高温度に達するだろう。例えば、従来のガソリンおよびディーゼルの内燃機関においてエンジンオイルは過酷な作動条件で最高140℃の温度に達するに違いない。
【0013】
低粘度のエンジンオイル、例えば、欧州特許出願公開第1600495号明細書に記載されたオイルで潤滑されたエンジンにおいて、過酷な作動条件で、そのオイルが大端部コンロッド軸受シェルで少なくとも0.4μmの油膜厚みを維持するには薄くなりすぎ、それは、不十分な注油となることが予測される。不十分な注油は多くの不利益をおこし、例えば、軸受故障、過剰なシリンダまたはライナー摩耗、オイル消費の増加および潜在的エンジンの故障をおこす。
【0014】
したがって、許容レベル以下に減少したオイルの最小限油膜厚による危険性は、オイルが高温にさらされるエンジンでの低粘度オイルの使用を抑える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、エンジンオイルが大端部コンロッド軸受シェルのエンジンオイル膜厚を0.4μm以下に減少させる温度に達するのを防止するこの種のエンジンオイル合成物を使用する手段の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この種のオイルがハイブリッド内燃機関において、一般的に使用できることを見出した。
【0017】
したがって、本発明によれば、ハイブリッド内燃機関を作動する方法が提供され、その方法は以下を含み:
・ ハイブリッド内燃機関に可燃性燃料を供給し;
・ エンジンオイル合成物を前記内燃機関に補給し;そして
・ 前記内燃機関の大端部コンロッド軸受シェルにおけるエンジンオイル合成物の油膜厚を少なくとも0.4μmに維持し;
そこで、エンジンオイル合成物の温度が123℃より低く維持され、そして、エンジンオイル合成物は、
− 150℃および剪断率10−1で2.6cP(2.6ミリパスカル秒)未満の高温高剪断粘度;および
− 最大で13重量%のNoack揮発度を有し;
そして以下の組成:
− (A)少なくとも1つの合成ベースストック(basestock)であり、100℃で少なくとも2.0cSt(2.0mm/s)の動粘性率を有する基油と
− (B)少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの洗浄剤、および少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供する量で含む添加剤パッケージとを含む。
【0018】
定義したようにハイブリッド車の作動中に、ハイブリッド内燃機関はスイッチが切られるか、または内燃機関が他の動力源から発生した動力によって補助される場合、エンジンオイルが最小限の油膜厚を0.4μm以下に減少させる温度に達することを防ぐことができることから、本発明は低粘度オイルを有効に使用できる。内燃機関に十分な潤滑油を維持している間、定義された低粘度のオイルのそのような使用は低粘度オイルの燃料経済利益の開発を許容する。
【0019】
本発明はエンジンオイル合成物の使用をさらに提供する。エンジンオイル合成物は、150℃および剪断率10−1で、2.6cP(2.6ミリパスカル秒)未満の高温高剪断粘度を有し、最大で13重量%のNoack揮発度である;そして以下の組成を含み、(A)少なくとも1つの合成ベースストックであり、100℃で少なくとも2.0cSt(2.0mm/s)の動粘性率を有する基油と(B)少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの洗浄剤、および少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供し、ハイブリッド内燃機関において、大端部コンロッド軸受シェルにおける少なくとも0.4μmの油膜厚を提供する量で含む添加剤パッケージとを含む。
【0020】
エンジンオイル
本発明の方法で使用されるエンジンオイル合成物は、150℃および剪断率10−1で2.6cP(2.6ミリパスカル秒)未満の高温高剪断粘度を有し;最大で13重量%のNoack揮発度を有する。
【0021】
本発明の方法で使用されるエンジンオイルの高温高剪断粘度は、150℃および10−1剪断率で高温高剪断粘計を使用することで測定される。エンジンオイルの高温高剪断粘度はCEC L‐36‐A‐97またはASTM D4683方法により測定されることができる。
【0022】
エンジンオイルのNoack揮発度はCEC‐L‐40‐A‐93方法により測定されることができる。
【0023】
エンジンオイルはニュートン型の挙動または非ニュートン型の挙動を示すことができる。本願発明のエンジンオイルはSAE等級0W,5W,10W,0W20,5W20、または10W20オイルでもよい。
【0024】
基油
基油は、100℃で少なくとも2.0cSt(2.0mm/s)動粘性率を有する。
【0025】
基油の動粘性率は、ASTM D445方法により測定できる。
【0026】
基油は少なくとも1つの合成ベースストックである。合成ベースストックは以下の群から選択されることができ、その族群は、以下からなる。
【0027】
(i)第III群のベースストック。第III群のベースストックは、API基準1509,“ENGINE OIL LICENSING AND CERTIFICATION SYSTEM”,2004年11月,第15版,編集Appendix Eに従って定義され、以下に示す表1における5つの群のひとつに属し、基油のために使用される。特に製造において広範囲に処理されるため、本発明における第III群のベースストックは合成ベースストックである。
【0028】
【表1】

【0029】
(ii)エステル類。例えば(a)ポリオールエステル類、例えば、ユニケマ社のPriolube 3970(商標)、Hatco社製のH‐2925(商標);(b)二塩基酸のエステル類(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー等)と、アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2‐エチルヘキシルアルコール、イソデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等);(c)C5−18モノカルボン酸および多価アルコールのエステル類(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトール等)が利用される。
【0030】
(iii)天然ガス液体燃料(gas to liquids(GTL))工程由来のベースストック。GTL工程由来のベースストックは、GTL工程における原料として天然ガスを含むガスを用いて得られた液体反応生成物から分離された滑油留分、及び/又は、GTL工程において生成されたワックスを水素化し、異性化により得られた滑油留分を含む。
【0031】
(iv)熱分解工程由来のベースストック。熱分解工程由来のベースストックは熱分解工程において生成されたワックスを水素化し、異性化することで得られた潤滑油留分を含む。
【0032】
(v)アスファルト製液体燃料(ATL)工程由来のベースストック。ATL工程由来のベースストックは、ATL工程で生成されたワックスを水素化し、異性化することにより得られた潤滑油留分を含む。
【0033】
(vi)ポリアルファオレフィン、例えば、1つまたはそれ以上のC〜C30アルファオレフィンモノマーを含むポリアルファオレフィン;
【0034】
(vii)他の合成ベースストック。例えば、ポリブテン、エチレン‐アルキレン共重合体、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、ジノニルベンゼン等)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、アルキル化ポリフェニル等)、アルキル化ジフェニルエステル、およびアルキル化ジフェニルスルフィド、およびそれらの誘導体、およびそれらの混合物から、1つまたはそれ以上のベースストックが選択される。
【0035】
(viii)および、それらの混合物。
【0036】
添加剤パッケージ
添加剤パッケージは少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの洗浄剤、および少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供する量で含む。
【0037】
添加剤パッケージは、少なくとも1つの摩擦調整剤をさらに含む。
【0038】
好ましくは、添加剤パッケージは粘度調整剤をさらに含む。
【0039】
粘度調整剤
添加剤パッケージが少なくとも1つの粘度調整剤をさらに含む場合、二つ以上の粘度調整剤が添加剤パッケージに存在する。添加剤パッケージは、少なくとも1つの粘度調整剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき、好ましくは0.1〜10重量%の粘土調整剤の総濃度を提供する量で含む。適切には、粘度調整剤は非分散性型でもよいが好ましくは分散型である。
【0040】
適切な非分散性剤粘度調整剤は非分散性ポリアルキルメタクリレート;非分散性オレフィン共重合体、例えば、ポリイソブチレン、エチレンプロピレン共重合体;非分散性星形共重合体、例えば星型水酸化イソプレン及びそれらの混合物に基づく、からなる群から選択される。適切には、非分散性調整剤はLubrizol社製のLz7077、Infineum社製のSV261を含む。
【0041】
適切には、分散性粘度調整剤は、分散性ポリアルキルメタクリレート;分散性オレフィン共重合体;およびこれらの混合物からなる群から選択される。適切には、分散性粘度調整剤は、Afton社製のHitec5777およびRohmax社製のViscoplex6−054を含む。
【0042】
他の好ましい調整剤は、ポリアルキルスチレン;スチレン‐ブタジエン水素化共重合体;スチレン‐無水マレイン酸エステル共重合体およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
分散剤
添加剤パッケージは少なくとも1つの分散剤を含む。二以上の分散剤は添加剤パッケージ中に含まれることができる。
【0044】
ハイブリッド内燃機関におけるエンジンオイルは、従来の内燃機関におけるエンジンオイルのような高温に達しないので、エンジンオイルにおける高レベルの水および燃料希釈が起こり得る。そのような水および燃料希釈は、エンジンオイルにおけるスラッジの形成をもたらす。
【0045】
したがって、添加剤パッケージにおいて少なくとも1つの分散剤を包含することは、本発明の方法で使用するエンジンオイル合成物におけるスラッジ生成の影響を有益に阻害または軽減する。
【0046】
添加剤パッケージは、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは2.0〜4.0重量%の分散剤の総濃度であって、存在する場合には溶媒および希釈剤を除く濃度を提供する量で、少なくとも1つの分散剤を含む。
【0047】
好ましくは、添付剤パッケージにおいて少なくとも1つの分散剤は無灰添加剤である。好ましくは、添加剤パッケージにおける少なくとも1つの分散剤はホウ素入りでない分散剤である。
【0048】
好ましくは、分散剤はカルボン酸アシル化剤(例えば、酸または無水物)の反応生成物、および(a)窒素化合物、例えば、アミン、典型的にはポリアミン(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタミンおよび高級エチレンアミン類)または(b)有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価または多価アルコールを含む)である。その反応生成物はイミド、アミド、及び/又は、有機ヒドロキシ化合物である。
【0049】
分散剤はマンニッヒ反応により製造される1つ以上の分散剤である。
【0050】
好ましくは、分散剤は、イミドコハク酸エステル、アミドコハク酸エステル、ベンジルアミン、コハク酸エステル、エステルアミドコハク酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、イミドコハク酸エステルは、ポリアルケニルイミドコハク酸エステルからなる群から選択することができ、例えばポリイソブテンスクシンイミドである。
【0051】
添加剤パッケージは分散剤の異なる型の混合物を含んでもよい。
【0052】
洗浄剤
添加パッケージは少なくとも1つの洗浄剤を含む。好ましくは、添加パッケージは2つ以上の洗浄剤からなる。添加剤パッケージは、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.1〜5重量%、より好ましくはエンジンオイル合成物に基づき0.1〜2.0重量%の洗浄剤の総濃度であって、存在する場合には溶媒および希釈剤を除く濃度を提供する量で、少なくとも1つの洗浄剤をさらに含む。
【0053】
少なくとも1つの洗浄剤は、スルホン酸塩洗浄剤、サリチル酸塩洗浄剤、フェノラート洗浄剤およびそれらの混合物からなる群から選択されることができる。適切な洗浄剤には、Lubrizol社製の6477C、6473、6499、6490およびInfineum社製のC9371およびC9372が含まれる。
【0054】
リン含有耐摩耗剤
添加剤パッケージは、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供する量で、少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤の分散剤を含む。リン含有耐摩耗剤は式Iで表すことができる。
【0055】
【化1】

【0056】
ここで、RおよびRは、それぞれ、C1−20炭化水素基を表す。例えば、C1−20炭化水素基は、C1−20アルキル基、C2−20アルケニル基、C6−20シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基などを含む。少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤は、好ましくは、少なくとも1つのジアルキルジチオリン酸亜鉛である。アルキル基は、第一級および第二級アルキル基のどちらかまたは両方とも含むことができる。アルキル基は、イソプロピル基、イソブチル基、第二ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、4‐メチル‐2‐ペンチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、およびオクタデシル基を含むアルキル基の群から独立して選択される。添加剤パッケージは、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、ジイソブチルジチオリン酸亜鉛、ジ第二ブチルジチオリン酸亜鉛、ジ(n−ペンチル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−ヘキシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(4‐メチル‐2‐ペンチル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−オクチル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(2‐エチルヘキシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−ノニル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−デシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−ドデシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−トリデシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−テトラデシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−ヘキサデシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(n−オクタデシル)ジチオリン酸亜鉛、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤を含む。
【0057】
適切なリン含有耐摩耗剤には、Lubrizol社製の1371およびInfineum社製のC9417が含まれる。
【0058】
摩擦調整剤
添加剤パッケージは、少なくとも1つの摩擦調整剤をさらに含む。適切な摩擦調整剤には、ジチオカルバミン酸モリブデン、オレイルアミド、グリセロールモノオレエート酸塩、脂肪酸、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、油脂、アミン類、ポリアミド類、硫化エステル類、リン酸エステル類(phosphoric esters)、酸性リン酸エステル類、リンエステル類(phosphorus esters)、リン酸エステルアミン塩類、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
添加剤パッケージは、少なくとも1つの摩擦調整剤を、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.05〜5重量%の摩擦調整剤の総濃度を提供する量で含む。
【0060】
ジチオカルバミン酸モリブデンは、エンジンオイル合成物中に重量当たり20〜800ppmのモリブデン総濃度を提供する量で添加剤パッケージに存在してもよい。オレイルアミド摩擦調整剤は、エンジンオイル合成物中に0.05〜0.5重量%の総濃度を提供する量で添加剤パッケージに存在してもよい。グリセロールモノオレエート摩擦調整剤は、エンジンオイル合成物中に0.05〜0.5重量%の総濃度を提供する量で添加剤パッケージに存在してもよい。
【0061】
適切な摩擦調整剤には、グリセロールモノオレエート、Sakuralube S100およびS160およびCrodamide Oが含まれる。
【0062】
添加剤パッケージの他の成分
添加剤パッケージは少なくとも1つの酸化防止剤を含む。添加剤パッケージは、少なくとも1つの酸化防止剤を、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.05〜5重量%の酸化防止剤の総濃度を提供する量でさらに含むこともできる。適切には、酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。適切には、酸化防止剤は、Irganox L‐135、L‐57およびLubrizol社製の5150Cを含む。
【0063】
本発明のエンジンオイルは、基油と添加剤パッケージを共に1つまたはそれ以上の工程で混合され、作られる。
【0064】
添加剤パッケージは、各成分を共に、1つまたはそれ以上の工程で混合され、作られる。
【0065】
添加剤パッケージは、1つまたはそれ以上のパートパック(part‐packs)として基油に加えられる。
【0066】
ハイブリッド内燃機関
ハイブリッド内燃機関は、1つまたはそれ以上の他のハイブリッド車の動力源に用いられて、そしてスパーク点火エンジンまたは圧縮点火エンジンでもよい。可燃燃料は、水素または一般的な液体燃料でもよい。一般的な液体燃料は、ガソリン燃料またはディーゼル燃料でもよい。燃料は、生物学的要素を含むことができる。
【0067】
ハイブリッド内燃機関は、123℃以下で維持されるエンジンオイル温度で作動される。好ましくは、エンジン合成物は、100℃以下で維持される。
【0068】
ハイブリッド内燃機関は、例えば、80〜90℃の範囲のエンジンオイル温度によって作動される。
【0069】
エンジンオイル温度は、エンジンオイルの大量または大部分の温度であることが理解される。エンジンオイルの温度を測定するためのエンジンの適切な場所は、エンジンオイルの大量または大部分の温度の適切な測定を提供するエンジンのオイルギャラリー注入口である。
【0070】
本発明のエンジンオイルは、大端部コンロッド軸受シェルに加え、少なくともピストンリング/シリンダライナ、主クランクシャフト軸受、小端部コンロッド軸受シェル、可動弁機構およびエンジンの他の摺動部分に注油することによって、エンジンを円滑にすることができる。
【0071】
本発明のハイブリッド内燃機関は他の動力源と直列または並列に車両において用いられる。適切な他の動力源は、1つまたはそれ以上の電気モータ、油圧モータおよび慣性装置(例えば、フライホイール)などが含まれる。
【0072】
ハイブリッド内燃機関は発電機と直列に用いられる。使用中、発電機からの電気は車両を動かす1つまたはそれ以上の原動機へ供給され過剰なエネルギは電池を充電するために用いられる。大電力が必要な場合、電気は電池およびエンジン発電機から生成される。
【0073】
ハイブリッド内燃機関が電気モータと並列に用いられることができ、両方とも機械的変速機に接続している。使用中、内燃機関は主要な動力源であり、ブーストが必要な場合のみ作動する電気モータとともに主要動力のために利用される。他のシステムは、電気モータまたは内燃機関を単独で作動することにより作動させることができる。
【0074】
他の並列システムにおいて、通常、制動の際に失う運動エネルギを回復するのに追加の動力が必要な場合、動力補助として利用される電気モータとともに内燃機関は直接車輪を動かす。
【0075】
本発明は、以下の実施例および図に準拠してここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】粘度および温度への軽量のディーゼルエンジンの大端部コンロッド軸受シェルの最小油膜厚の依存関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
実施例1
コンピュータ・モデル(AVL Excite Designer クランク‐トレイン解析)は、動的負荷(Butenschoens論に基づく)の下で、円筒状スライダ軸受の流体力学反応の計算によって、クランク‐トレイン軸受の油膜厚をシミュレーションし、150℃および、剪断率10−1で、それぞれ1.6,2.5,2.85および2.95cPのHTHS粘度を有する一連のエンジンオイルについて、1000回転数/分で操作された軽量ディーゼルエンジンの大端部コンロッド軸受シェルにおける最小油膜厚0.4μmが維持できる最大油温度を決定するために使用された。結果は、図1のグラフの形で示される。
【0078】
コンピュータ・モデルからの結果は、150℃および剪断率10−1で2.6cP未満のHTHS粘度を有するエンジンオイルが、従来のガソリンおよびディーゼルエンジンに実用的に使用されることができないことを実証する。なぜなら、この種のエンジンでエンジンオイルが、大端部コンロッド軸受シェルにおけるこの種の油の油膜厚みが0.4μm以下に減少する温度を超える温度に達する可能性があるからである。
【0079】
これらの結果は、150℃および剪断率10−1で、2.6cP未満のHTHS粘度を有するエンジンオイルがハイブリッド内燃機関において有用に使用できることを更に実証しており、このハイブリッド内燃機関内では、大端部コンロッド軸受シェルの油膜厚が少なくとも0.4μmのままであるように、エンジンオイルの温度が維持されている。
【0080】
実施例2
エンジンオイル合成物は:90.25重量%(エンジンオイル合成物の総重量に基づく)第III群の合成基油であって、この基油が100℃で4.24cStの動粘性率を有する基油、100℃で6.45cStの動粘性率を有する基油、ならびにPIBスクシンイミド分散剤、金属系清浄剤、第2のZDDP耐摩耗剤、無灰酸化防止剤、および流動点硬化剤からなる9.75重量%の添加剤パッケージとの混合物であり、150℃および剪断率10−1で1.9cPの高温高剪断粘度、11.7重量%のNoack揮発度、そして737ppmの亜リン酸の総濃度を有するものが、10000マイルの過酷な市街走行運転サイクルの下で作動されるフォード・エスケープSUVハイブリッド内燃機関に注油のため用いられた。エンジンの適切な操作および良好な燃料効率が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド内燃機関に可燃性燃料を供給し;エンジンオイル合成物を該内燃機関に補給し;該内燃機関の大端部コンロッド軸受シェルにおけるエンジンオイル合成物の油膜厚を少なくとも0.4μmに維持する工程を含み;そこで、エンジンオイル合成物の温度が123℃より低く維持され、そして、エンジンオイル合成物は150℃および剪断率10−1で2.6cP(2.6ミリパスカル秒)未満の高温高剪断粘度と;最大で13重量%のNoack揮発度を有し;そしてその合成物は(A)少なくとも1つの合成ベースストックであり、100℃で少なくとも2.0cSt(2.0mm/s)の動粘性率を有する基油と、(B)少なくとも1つの分散剤、少なくとも1つの洗浄剤、および少なくとも1つのリン含有耐摩耗剤をエンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物の0.01〜0.2重量%リンに相当するリン含有耐摩耗剤の総濃度を提供する量で含む添加剤パッケージとを含むことを特徴とするハイブリッド内燃機関を作動する方法。
【請求項2】
エンジンオイル合成物の温度が、80〜90℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エンジンオイルが、SAE等級0W,5W,10W,0W20,5W20、または10W20オイルであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基油は、第III群のベースストック;エステル;天然ガス液体燃料工程由来のベースストック;熱分解工程由来のベースストック;アスファルト製液体燃料工程由来のベースストック;ポリアルファオレフィン;およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
添加剤パッケージが、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.1〜10重量%の粘度調整剤の総濃度を提供する量で、少なくとも1つの粘度調整剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
添加剤パッケージが、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.5〜5重量%の分散剤の総濃度であって、存在する場合には溶媒および希釈剤を除く濃度を提供する量で、少なくとも1つの分散剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
添加剤パッケージが、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.1〜5重量%の洗浄剤の総濃度であって、存在する場合には溶媒および希釈剤を除く濃度を提供する量で、少なくとも1つの洗浄剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
添加剤パッケージが、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.05〜5重量%の摩擦調整剤の総濃度を提供する量で、少なくとも1つの摩擦調整剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
添加剤パッケージが、エンジンオイル合成物中にエンジンオイル合成物に基づき0.05〜5重量%の酸化防止剤の総濃度を提供する量で、少なくとも1つの酸化防止剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
ハイブリッドエンジンが、スパーク点火エンジンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
ハイブリッドエンジンが、圧縮点火エンジンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−511057(P2012−511057A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531550(P2011−531550)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002435
【国際公開番号】WO2010/046620
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(501354624)カストロール リミテッド (8)
【Fターム(参考)】