説明

ハイブリッド作業機械の機器冷却装置

【課題】冷却条件がほぼ同じ複数の要冷却機器の冷却制御を、最小限の設備及び回路構成によって効率良く行う。
【解決手段】ハイブリッドショベルにおいて、電源としてのバッテリ17と、発電電動機及び旋回電動機の作動を制御するインバータ20とをそれぞれ独立したケーシング21,22内に収容するとともに、両ケーシング21,22に冷却ファン27,28を設け、この両冷却ファン27,28を個別に駆動するファンモータ29,30を、温度センサ37で検出されたバッテリ雰囲気温度に基づきコントローラ38により同期して駆動/停止させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッドショベル等のハイブリッド作業機械において、ハイブリッド関係の電気機器を冷却する機器冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ショベルは、図3に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が、地面に対して鉛直となる縦軸まわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の前部に、ブーム3、アーム4、バケット5、及びこれらを作動させるブーム、アーム、バケット各シリンダ6,7,8を備えた作業アタッチメント9が取付けられて構成される。
【0004】
上部旋回体2には、前部左側にキャビン10が搭載されるとともに、後端部にカウンタウェイト11が装着される。
【0005】
上部旋回体2の後部にはエンジンルーム12が設けられ、このエンジンルーム12に動力源としてのエンジン13が設置される。
【0006】
なお、この明細書において、「前後」「左右」はキャビン10内に着座したオペレータから見た方向性をいう。
【0007】
ハイブリッドショベルの駆動系及び制御系のブロック構成を図4に示す。
【0008】
エンジン13に、発電機作用と電動機作用とを行う発電電動機14と油圧ポンプ15とが接続され、これらがエンジン13によって駆動される。
【0009】
油圧ポンプ15からの吐出油はコントロールバルブ(弁そのものはアクチュエータごとに設けられているが、ここでは複数の弁の集合体として示す)16を介して図3に示すブーム、アーム、バケット各シリンダ6〜8、及び図示しない左、右両走行用油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給され、これら油圧アクチュエータが駆動される。
【0010】
一方、発電電動機14には、二次電池等からなる電源としてのバッテリ17がバッテリコントローラ18を介して、また旋回駆動源としての旋回電動機19がインバータ20を介してそれぞれ接続される。
【0011】
バッテリコントローラ18は、発電電動機14の発電機出力の過不足に応じたバッテリ17の充・放電作用等を制御する。
【0012】
インバータ20は、発電電動機14の発電機作用と電動機作用の切換え、発電電力あるいは電動機としての電流またはトルクの制御、それに旋回電動機19の電流またはトルクの制御等を行う。
【0013】
なお、発電電動機14及び旋回電動機19を別々のインバータで制御する場合もあるが、ここでは上記兼用タイプのものを例にとっている。
【0014】
このようなハイブリッドショベルにおいて、バッテリ17及びインバータ20のように熱に弱いハイブリッド関係の電気機器(要冷却機器)について、性能維持のために、ファンを用いた強制空冷方式によって冷却する技術は特許文献1に示されている。
【0015】
この場合、要冷却機器ごとに冷却ファンを設け、それぞれのファンモータ(電動機)を要冷却機器ごとに設定された温度に基づいて別々に制御するのが一般的である。
【0016】
この従来の制御技術を、バッテリ17及びインバータ20を例にとって説明する。
【0017】
図5に示すように、バッテリ17及びインバータ20はそれぞれ独立したケーシング(バッテリケーシング、インバータケーシング)21,22内に、周囲に空気通路が形成される状態で収容される。
【0018】
両ケーシング21,22には、吸気口23,24と、排気口25,26と、バッテリ及びインバータ両冷却ファン27,28と、この両冷却ファン27,28を駆動するファンモータ29,30(冷却ファン27,28とともにケーシング内に設けられるが、図5では便宜上、ケーシング外に抽出して示す)、それに冷却用の空気を吸気口23,24に導入する吸気ダクト31,32が設けられる。
【0019】
また、両ケーシング21,21内の温度、すなわちバッテリ17及びインバータ20の雰囲気温度を検出する温度検出手段としての温度センサ33,34が設けられ、この温度センサ33,34からの温度信号がファン制御手段としてのコントローラ35に入力される。
【0020】
コントローラ35は、この温度信号に基づき、両ケーシング内の温度(バッテリ17及びインバータ20の雰囲気温度)がバッテリ17及びインバータ20のそれぞれについて冷却を開始すべき温度として予め設定された値(設定温度)に達すると、この設定温度以上となった側のファンモータ29または30に対し、コントローラ内の図示しないモータ制御部から駆動指令(電圧または電流)を出力し、設定温度未満で停止指令(電圧または電流0)を出力する。
【0021】
つまり、両ファンモータ29,30(ファン27,28)を別々に独立して制御する構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2007−106209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ここで、
(1) ハイブリッドショベルの場合、既存の機械の限られたスペースにハイブリッド関係機器を追加すること、及び機器間の接続配線の容易化、短縮化の要請があること等から、バッテリ17とインバータ20は、通常、近接して配置される。
【0024】
このため、周囲の温度環境は両者ほぼ同じで、雰囲気温度の変化も似たものとなる。
【0025】
(2) バッテリ17とインバータ20の設定温度、及び冷却ファン27,28による冷却能力はほぼ同じである。
【0026】
つまり、バッテリ17とインバータ20は冷却条件において殆ど差がなく、両冷却ファン27,28はほぼ同時期に駆動され、停止するのが実状である。
【0027】
ところが、従来装置では上記のように両冷却ファン27,28(ファンモータ29,30)を、別々の温度センサ33,34からの信号に基づいて別々に駆動制御する構成をとっているため、冷却制御のための温度センサ、配線等の設備、及びファンモータ駆動回路の回路構成に無駄があり、コスト、メンテナンスの点で不利となっていた。
【0028】
そこで本発明は、バッテリとインバータのような冷却条件がほぼ同じ複数の要冷却機器の冷却制御を、最小限の設備及び回路構成によって効率良く行うことができるハイブリッド作業機械の機器冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
請求項1の発明は、冷却を必要とする電気機器である要冷却機器がそれぞれ独立したケーシング内に収容され、各ケーシングには、吸気口と、排気口と、ファンモータにより駆動されて冷却用の空気を上記吸気口から吸入して上記排気口から排出する冷却ファンとが設けられるとともに、複数の要冷却機器に共通の温度検出手段が設けられ、かつ、上記温度検出手段からの温度信号に基づいて複数の上記ファンモータを同期して駆動/停止させるファン制御手段を具備するものである。
【0030】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記要冷却機器として、電源としてのバッテリと、電動機の作動を制御するインバータとを備え、上記温度検出手段は、このバッテリ及びインバータの一方についての温度のみを検出し、上記制御手段は、この温度検出手段からの温度信号に基づいてバッテリ及びインバータの双方についてのファンモータを同期して駆動/停止させるように構成されたものである。
【0031】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、上記温度検出手段は、上記バッテリについての温度のみを検出するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、複数の要冷却機器(請求項2,3の発明ではバッテリとインバータ)に共通の温度検出手段からの温度信号に基づいて複数のファンモータ(同、バッテリ用及びインバータ用のファンモータ)を同期して駆動/停止させる構成としたから、温度センサ、信号配線等の設備が最小限に少なくてすむとともに、ファンモータ駆動回路の回路構成が簡単ですむ。このため、コスト及びメンテナンスの点で有利となる。
【0033】
ところで、バッテリとインバータの組み合わせにおいて、両者のうちバッテリの方が熱影響による性能、寿命の低下が大きいため、より厳しい温度管理が要求される。
【0034】
この点、請求項3の発明によると、バッテリ側優先で温度を検出して両ファンモータを駆動制御するため、バッテリを確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却装置を含めたハイブリッドショベルの概略平面図である。
【図2】同装置の駆動系及び制御系の構成を示す図である。
【図3】本発明が適用されるハイブリッドショベルの概略側面図である。
【図4】ハイブリッドショベル全体の駆動系及び制御系の構成を示す図である。
【図5】従来の冷却装置の駆動系及び制御系の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を図1,2によって説明する。
【0037】
実施形態はハイブリッドショベルにおいて、バッテリ17及びインバータ20の二つの要冷却機器の冷却装置を適用対象としている。
【0038】
図1は、上部旋回体におけるバッテリ17とインバータ20の配置を示す。
【0039】
図中、36は上部旋回体のアッパーフレームで、このアッパーフレーム36の前部左側にキャビン10が設置されるとともに、後部にエンジンルーム12が形成され、ここにエンジン13が設置される。
【0040】
一方、アッパーフレーム36の右側後部にバッテリ17、その前方にインバータ20がそれぞれ相近接して設置される。
【0041】
図2はこのバッテリ17及びインバータ20の冷却装置の駆動系と制御系の構成を示す。
【0042】
図1,2に示すように、この冷却装置において、
(i) バッテリ17及びインバータ20はそれぞれ独立したケーシング(バッテリケーシング、インバータケーシング)21,22内に、周囲に空気通路が形成される状態で収容される点、
(ii) 両ケーシング21,22には、吸気口23,24と、排気口25,26と、バッテリ及びインバータ両冷却ファン27,28と、この両冷却ファン27,28を駆動するファンモータ29,30(冷却ファン27,28とともにケーシング内に設けられるが、図2では便宜上、ケーシング外に抽出して示す)、それに冷却空気を吸気口23,24に導入する吸気ダクト31,32が設けられる点
は、図2に示す従来の冷却装置と同じである。
【0043】
なお、吸気ダクト31,32は、低温の外気を冷却空気として吸入し得るように機械外側に向けて開口している。
【0044】
この吸気ダクト31,32を一つに統合し、分岐して両ケーシング21,22の吸気口23,24に接続してもよい。
【0045】
実施形態固有の構成として、バッテリ、インバータ両ケーシング21,21のうち、バッテリケーシング21内の温度、すなわちバッテリ17の雰囲気温度を検出する温度検出手段としての温度センサ37が設けられ、この温度センサ37からの温度信号がファン制御手段としてのコントローラ38に入力される。
【0046】
コントローラ38は、この温度信号に基づき、バッテリ雰囲気温度がバッテリ17について冷却を開始すべき温度として予め設定された値(設定温度)に達すると、両ファンモータ29,30に対し、コントローラ内の図示しないモータ制御部から同時に駆動指令(電圧または電流)を出力し、設定温度未満で同時に停止指令(電圧または電流0)を出力する。
【0047】
つまり、この冷却装置においては、バッテリ17とインバータ20に冷却条件(設定温度、冷却ファン27,28による冷却能力)に殆ど差がないことに着目し、両ファンモータ29,30(ファン27,28)を、一つの温度センサ37からの温度信号に基づく単一の制御系により同期して作動させる構成がとられている。
【0048】
この構成によると、温度センサとしてバッテリ用の温度センサ37のみを設ければよく、信号配線もこの温度センサ37とコントローラ37とを結ぶ一つだけですむとともに、ファンモータ駆動回路の回路構成が簡単ですむ。
【0049】
このため、コスト及びメンテナンスの点で有利となる。
【0050】
また、この実施形態では、バッテリ側優先で温度を検出して両ファンモータ29,30を駆動制御するため、とくに熱影響による性能、寿命の低下が大きいバッテリ17を確実に保護することができる。
【0051】
他の実施形態
(1) 請求項1の発明においては、上記実施形態とは逆に、インバータ20の雰囲気温度のみを温度センサで検出し、インバータ優先で両ファンモータ29,30を駆動制御する構成をとってもよい。
【0052】
(2) 上記実施形態では、インバータ20として発電電動機14及び旋回電動機19の両者を制御するものを例示したが、本発明は、両者別々のインバータで制御する構成をとる場合の両インバータの一方または双方について適用することができる。
【0053】
この場合、バッテリと一方のインバータの組み合わせで冷却制御するようにしてもよいし、両インバータの組み合わせで冷却制御するようにしてもよい。
【0054】
(3) 上記のようにインバータが二つある場合を含めて、冷却条件がほぼ同じ要冷却機器が三つ以上ある場合に、一つの温度センサからの温度信号に基づいて各ファンモータを駆動制御する構成をとってもよい。
【0055】
(4) 多数の要冷却機器を、冷却条件がほぼ同じものの組み合わせで複数のグループに分け、グループごとに、共通の温度センサからの温度信号に基づいてファンモータを連動させる構成をとってもよい。
【0056】
(5) 本発明はハイブリッドショベルに限らず、ショベルを母体として構成される解体機や破砕機等の他のハイブリッド作業機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
17 要冷却機器であるバッテリ
20 同、インバータ
21 バッテリケーシング
22 インバータケーシング
23,24 吸気口
25,26 排気口
27 バッテリ用冷却ファン
28 インバータ用冷却ファン
29 バッテリファンモータ
30 インバータファンモータ
37 温度センサ
38 ファン制御手段としてのコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却を必要とする電気機器である要冷却機器がそれぞれ独立したケーシング内に収容され、各ケーシングには、吸気口と、排気口と、ファンモータにより駆動されて冷却用の空気を上記吸気口から吸入して上記排気口から排出する冷却ファンとが設けられるとともに、複数の要冷却機器に共通の温度検出手段が設けられ、かつ、上記温度検出手段からの温度信号に基づいて複数の上記ファンモータを同期して駆動/停止させるファン制御手段を具備することを特徴とするハイブリッド作業機械の機器冷却装置。
【請求項2】
上記要冷却機器として、電源としてのバッテリと、電動機の作動を制御するインバータとを備え、上記温度検出手段は、このバッテリ及びインバータの一方についての温度のみを検出し、上記制御手段は、この温度検出手段からの温度信号に基づいてバッテリ及びインバータの双方についてのファンモータを同期して駆動/停止させるように構成されたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド作業機械の機器冷却装置。
【請求項3】
上記温度検出手段は、上記バッテリについての温度のみを検出するように構成されたことを特徴とする請求項2記載のハイブリッド作業機械の機器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220069(P2011−220069A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93221(P2010−93221)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】