説明

ハイブリッド型建設機械における制御システム

【課題】エンジンと蓄電装置とを動力源とするハイブリッド型建設機械において、エンジン効率を向上させる。
【解決手段】エンジンコントローラ26及び発電機制御器14に制御指令を出力する制御装置27と、蓄電装置の充電量を測定する充電量センサ38とを設けると共に、制御装置27は、蓄電装置の充電量に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとを設定し、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数ωsにするべくエンジンコントローラ26に制御指令を出力する一方、エンジン出力をエンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを演算し、発電機の出力を該発電機目標出力Pgsにするべく発電機制御器14に制御指令を出力する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械における制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械においても、省エネルギー化、燃費の向上、排ガス低減等を達成するべく、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械が実用化されつつある。この様なハイブリッド型建設機械の制御システムとして、エンジンの動力を発電機の駆動専用に使用すると共に、該発電機から電力供給される電動機により走行装置や旋回装置、作業装置等の負荷を駆動させる所謂シリーズ方式の制御システムが知られている。また、エンジンと、作業装置等の油圧作動部の油圧供給源になる油圧ポンプと、発電電動機とを動力伝達機構を介して機械的にパラレル接続して、油圧ポンプの出力がエンジン出力よりも小さい場合には、発電電動機をエンジン動力により駆動する発電機として動作させる一方、油圧ポンプの出力がエンジン出力よりも大きい場合には、発電電動機を電動機として動作させてエンジンの動力をアシストするように構成した所謂パラレル方式の制御システムも知られている。これら何れの制御システムにおいても、発電機や発電電動機により発電される電力を蓄電し、該蓄電電力を電動機や発電電動機に供給する蓄電装置が設けられている。
ところで、前述したようなハイブリッド型建設機械では、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用することで燃費向上が図られているが、この場合に、更なる燃費向上のためには、エンジンを効率良く運転させることが必要になる。そこで、従来、シリーズ方式のものにおいて、動力制限レバーのレバー位置に応じて発電機の出力電力の上限値を切替えると共に、該発電機の出力電力の上限値に応じてエンジン回転数の設定値を切替えるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、パラレル方式のものでは、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも小さい時には、エンジンを所定の設定回転数とハイアイドル回転数との間で運転し、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも大きい時には、油圧ポンプの入力を低下させると共に、発電電動機を電動機動作させてエンジン出力を補いエンジンを設定回転数の近傍で運転するように構成した技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−322681号公報
【特許文献2】特開2001−12274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献1のものでは、発電機の出力電力が前記上限値以下になるように制御されると共に、該発電機の出力電力の上限値に応じてエンジン回転数が設定されることになるが、この場合に、発電機の出力が作業負荷の変動を受けて前記上限値以下の範囲内で変動すると、これに伴いエンジンの出力が変動してエンジン効率が低下する場合がある。つまり、エンジン回転数は発電機の出力電力の上限値に対応して設定されるものであるから、発電機の出力電力の低下に伴いエンジン出力も低下すると、エンジン回転数に対してエンジン出力が低くなり、エンジン効率の悪い状態になる。一方、特許文献2のものでは、油圧ポンプの入力がエンジン出力よりも小さい時には、エンジンは所定の設定回転数とハイアイドル回転数(無負荷回転数)との間で運転されることになるが、この場合、エンジン効率は、エンジン回転数が設定回転数のときに最も良く、設定回転数よりもエンジン回転数が高くなる、つまりエンジンにかかる負荷が小さくなってエンジン回転数が高くなると、エンジン効率は低下する。而して、前記特許文献1、特許文献2のものでは、エンジンが効率の良くない状態で運転される場合があって、燃費向上の妨げになるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、該エンジンにより駆動される発電機と、該発電機から電力供給される電動機と、エンジン及び電動機の少なくとも何れか一方により機械的に駆動される負荷と、前記発電機及び電動機に接続され、エンジンの出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電する蓄電装置とを備えたハイブリッド型建設機械において、前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段と、前記発電機の出力を制御する発電機制御手段と、これらエンジン制御手段、発電機制御手段に制御指令を出力する制御装置と、前記蓄電装置の充電量を測定する充電量測定手段とを設けると共に、前記制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段と、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電機目標出力を演算し、発電機の出力を該発電機目標出力にするべく発電機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、エンジン目標回転数設定手段は、蓄電装置の充電量の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正すると共に、エンジン目標出力設定手段は、前記補正されたエンジン目標回転数に基づいてエンジン目標出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
請求項3の発明は、請求項1または2において、制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段を備えることを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、エンジンは、蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標回転数が設定され、さらに該エンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力が設定されると共に、該エンジン目標回転数及びエンジン目標出力で運転されることになるが、蓄電装置は、エンジンの出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電することで充電量が増減するため、該蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標回転数を設定することによって、エンジン目標回転数及びエンジン目標出力は、エンジンの出力と負荷の出力との過不足がなくなるように、つまり、負荷の大きさに対応するように設定されることになる。而して、エンジンを、負荷の大きさに対応し、且つ、常にエンジン効率の良い状態で運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、エンジン出力をエンジン目標出力にするための発電機目標出力を演算し、発電機の出力を該発電機目標出力にすることでエンジンの出力をエンジン目標出力にする構成であるから、負荷の過渡的変動の影響をエンジンが受けることなく、エンジンの出力を確実にエンジン目標出力になるように制御することができる。
請求項2の発明とすることにより、蓄電装置の充電量の増減変化を予測したエンジン目標回転数及びエンジン目標出力が設定されることになり、而して、蓄電装置の充電量の増減変化に素早く対応できるエンジン回転数制御、出力制御を行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、蓄電装置の充電が不要の場合には、エンジンを停止させることで無駄な燃料消費を削減できる一方、エンジンの駆動時には、常にエンジン効率の良い状態で運転されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。
【図2】第一の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図3】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施の形態におけるエンジン・発電機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【図5】(A)は蓄電装置の充電量とエンジン目標回転数との対応を示すグラフ、(B)は蓄電装置の充電量の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正する場合を示すグラフである。
【図6】エンジン目標回転数とエンジン目標出力との対応を示すグラフ図である。
【図7】エンジン出力と燃料消費率との関係を示す図である。
【図8】第二の実施の形態における制御システムの全体構成を示す図である。
【図9】第二の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の構成を示すブロック図である。
【図10】第二の実施の形態におけるエンジン・発電電動機制御部の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、第一の実施の形態について図1〜図7に基づいて説明すると、図1において、1は本発明のハイブリッド型建設機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルであって、該ハイブリッド型油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等から構成され、さらに該フロント作業機4は、ブーム5、アーム6、バケット7等を用いて構成されている。さらに、ハイブリッド型油圧ショベル1は、前記ブーム5、アーム6、バケット7をそれぞれ揺動せしめるブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、下部走行体2を走行せしめる左右の走行モータ11L、11R等の各種油圧アクチュエータを備えると共に、上部旋回体3には、動力源としてのエンジン12及び蓄電装置34が搭載されている。
【0009】
次に、図2に基づいて、前記ハイブリッド型油圧ショベル1を運転せしめる制御システムの全体構成を説明すると、第一の実施の形態ではシリーズ方式の制御システムが採用されており、エンジン12の動力により発電機13が駆動されると共に、該発電機13で発電された電力は、発電機制御器14、母線15、電動機制御器16〜20を介して、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25に供給されるように構成されている。
【0010】
前記エンジン12は、エンジンコントローラ26による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されると共に、該エンジンコントローラ26は、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、エンジン回転数を制御する。尚、上記エンジンコントローラ26は、本発明のエンジン制御手段に相当する。
【0011】
また、前記発電機制御器14は、発電機13で発電された交流電力を直流に変換すると共に、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、発電機13の出力を制御する。尚、上記発電機制御器14は、本発明の発電機制御手段に相当する。
【0012】
さらに、前記電動機制御器16〜20は、直流を交流に変換すると共に、後述する制御装置27から出力される制御指令に基づいて、メインポンプ用、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機21〜25の出力或いは回転数或いはトルクをそれぞれ制御する。
【0013】
前記メインポンプ用電動機21は、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11Rの油圧供給源であるメインポンプ28を駆動せしめる専用の電動機である。また、旋回用電動機22は、旋回減速機29を介して上部旋回体3の旋回機構30を駆動せしめる専用の電動機である。パイロットポンプ用電動機23は、パイロット圧の油圧供給源であるパイロットポンプ31を駆動せしめる専用の電動機である。冷却ファン用電動機24は、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器(図示せず)やエンジン12に冷却風を供給する冷却ファン32を駆動せしめる専用の電動機である。サブポンプ用電動機25は、ハイブリッド型油圧ショベル1に設けられる他の油圧アクチュエータ(図示しないが、前記ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R以外の油圧アクチュエータ)の油圧供給源であるサブポンプ33を駆動せしめる専用の電動機である。そして、これら電動機21〜25の出力或いは回転数或いはトルクの制御は、前述したように、制御装置27から電動機制御器16〜20に出力される制御指令に基づいて行なわれるように構成されている。ここで、本実施の形態では、前記メインポンプ28及びサブポンプ33は、容量可変手段28a、33aを備えた可変容量型ポンプが用いられていると共に、該容量可変手段28a、33aは、制御装置27から出力される制御指令に基づいてメインポンプ28、サブポンプ33の容量をそれぞれ制御するように構成されている。また、パイロットポンプ31には定容量型ポンプが用いられている。尚、本実施の形態において、前記メインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33は、本発明の電動機により機械的に駆動される負荷を構成する。
【0014】
さらに、図2において、34はバッテリやキャパシタ等の蓄放電機能を有した蓄電装置であって、該蓄電装置34は、発電機制御器14と電動機制御器16〜20との間の母線15に接続され、エンジン12の出力と負荷(メインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33)の出力との過不足に応じて、電力を蓄放電するようになっている。該蓄電装置34の蓄放電は、本実施の形態では、母線15の電圧と蓄電装置34の電圧との差により自動的に行われるようになっている。つまり、エンジン12の出力が負荷の出力に対して余剰がある場合には、発電機13から電動機21〜25への供給電力に余剰が生じて母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも高くなり、これにより発電機13の余剰電力が蓄電装置34に蓄電される一方、エンジン12の出力が負荷の出力に対して不足する場合には、発電機13から電動機21〜25への供給電力が不足して母線15の電圧が蓄電装置34の電圧よりも低くなり、これにより蓄電装置34から放電されて電動機21〜25に不足電力が供給されるようになっている。
【0015】
一方、前記制御装置27には、エンジン12の特性(エンジン効率、エンジン出力、エンジン回転数、エンジン無負荷回転数等に関する特性)、発電機13の特性(発電機効率、発電機出力、発電機回転数、励磁電流等に関する特性)、メインポンプ28やサブポンプ33の特性(ポンプ効率、ポンプ容積、ポンプ回転数等に関する特性)、電動機21〜25の特性(電動機効率、電動機出力、電動機回転数、電動機トルク等に関する特性)、パイロット設定圧(パイロットポンプ31の吐出ラインの圧力として予め設定される圧力)、蓄電装置34の特性(容量、効率等に関する特性)等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されたメモリ35が設けられている。そして制御装置27は、蓄電装置34の充電量を測定する充電量センサ(本発明の充電量測定手段に相当する)38、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、走行用、旋回用、ブーム用、アーム用、バケット用、他の油圧アクチュエータ用の各操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等)の操作をそれぞれ検出する操作検出手段(例えば、操作具の操作量を電気的に検出するポテンショメータや、操作具操作に基づいて出力されるパイロット圧の圧力を検出する圧力センサ等)40等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ35に収納されたデータとに基づいて、前記エンジンコントローラ26、発電機制御器14、電動機制御器16〜20、メインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0016】
扨、前記制御装置27には、エンジン12及び発電機13の制御を行なうエンジン・発電機制御部36が設けられているが、該エンジン・発電機制御部36の構成について、図3のブロック図に基づいて説明すると、エンジン・発電機制御部36は、入力側に前記メモリ35、充電量センサ38が接続され、出力側にエンジンコントローラ26、発電機制御器14が接続されると共に、駆動/停止基準値設定部42、駆動/停止判定部43、エンジン目標回転数設定部44、エンジン目標出力設定部45、指令値演算部46、駆動/停止切替部47を具備して構成されている。さらに、前記指令値演算部46は、エンジン回転数指令値演算部48と発電機出力指令値演算部49とを具備している。尚、前記エンジン目標回転数設定部44は、本発明のエンジン目標回転数設定手段を構成し、エンジン目標出力設定部45は、本発明のエンジン目標出力設定手段を構成する。また、前記駆動/停止基準値設定部42、駆動/停止判定部43、駆動/停止切替部47は、本発明の駆動/停止切替え手段を構成する。
【0017】
さらに、前記エンジン・発電機制御部36の行なうエンジン12及び発電機13の制御について、前記図3のブロック図、及び図4のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電機制御部36は、メモリ35に収納されているデータを読込む(ステップS1)。
【0018】
次いで、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCを読込む(ステップS2)。
【0019】
次いで、エンジン目標回転数設定部44において、蓄電装置34の充電量SOCに対応するエンジン目標回転数ωsが示されたグラフ(図5(A)に示す)を用いて、前記充電量センサ38により測定された蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定する(ステップS3)。この場合、図5(A)に示す如く、エンジン目標回転数ωsは、充電量SOCが低充電状態(例えば、充電量0%〜20%)のときに最も高く、充電量SOCが増加するほど低くなるように、つまり、充電量SOCの増減に伴いエンジン目標回転数ωsが低高するように設定される。尚、前記蓄電装置34の充電量SOCとエンジン目標回転数ωsとの対応を示すグラフは、蓄電装置34やエンジン12の特性に基づいて作成されると共に、メモリ35にデータとして収納されているが、設定されるエンジン目標回転数ωsとしては、図5(A)に実線で示す如く無段階にすることもでき、また、図5(A)に点線で示す如く複数段階にすることもできる。
【0020】
さらに、エンジン目標出力設定部45において、エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフ(図6に示す)を用いて、前記エンジン目標回転数設定部44で設定されたエンジン目標回転数ωsに対応するエンジン目標出力Pesを設定する(ステップS4)。該エンジン目標出力Pesは、エンジン12の回転数がエンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力であって、図6に示す如く、エンジン目標回転数ωsが高くなるにつれてエンジン目標出力Pesも大きくなる。前記エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフは、メモリ35にデータとして収納されている。
【0021】
ここで、ハイブリッド式建設機械に搭載されるエンジン12の特性の一例について、図7に基づいて説明する。図7に示す実線は、最大出力を出力可能な無負荷回転数に設定したときのエンジン出力と燃料消費率との関係を示すグラフであって、エンジン出力が極めて低い範囲(無負荷状態に近い状態)を除くと、最大出力となるポイントAが燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)。また、図7に示す点線L上のポイントBは、前記最大出力を出力可能な無負荷回転数よりも無負荷回転数を低く設定した場合に、燃料消費率が最小になる(エンジン効率が最大になる)ポイントであって、これらポイントBは、前記ポイントAよりもエンジン出力は低いが、エンジン効率は高い。このようなエンジン特性の場合、上記ポイントAになるエンジン回転数、エンジン出力が、充電量SOCが低充電状態のときのエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesとして設定される。また、点線L上のポイントBになるエンジン回転数、エンジン出力が、充電量SOCが低充電状態よりも増加したときのエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesとして設定される。或いは、エンスト防止のために、前記ポイントA、ポイントBよりも出力を少し下げたポイントを、エンジン目標出力Pesとして設定する。この様にエンスト防止のために出力を少し下げたポイントでエンジン目標出力Pesを設定した場合は、厳密にはエンジン効率は少し低くなるが、この場合は、エンストを防止できる範囲内でのエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesであって、本発明のエンジン効率が最大になるエンジン目標出力に含まれる。
【0022】
さらに、前記ステップS3、S4におけるエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesの設定後、駆動/停止基準値設定部42において、エンジン12の駆動/停止を切替える基準値を設定する(ステップS5)。つまり、エンジン12は、後述するように蓄電装置34の充電量に応じて駆動/停止の切替え制御が行なわれるが、該エンジン12を駆動させるときに用いる蓄電装置34の充電量を駆動基準値SOC1として設定し、また、エンジン12を停止させるときに用いる蓄電装置34の充電量を停止基準値SOC2として設定する。尚、停止基準値SOC2は、駆動基準値SOC1よりも大きな値(SOC1<SOC2)に設定される。
【0023】
ここで、前記基準値を設定するにあたり、本実施の形態では、蓄電装置34の充電量SOCが予め設定される満充電範囲より少ない状態ではエンジン12を常に駆動させ、蓄電装置34の充電量の上限値に達すればエンジン12を停止させるように、駆動基準値SOC1と停止基準値SOC2とを設定する。例えば、蓄電装置34の充電量SOCが90%〜100%(蓄電装置34の充電量の下限値を0%、上限値を100%としたときの百分率。以下同様)のときを満充電範囲としたとき、該満充電範囲の最小値(充電量90%)を駆動基準値SOC1として設定し、また、充電量の上限値(充電量100%)を停止基準値SOC2として設定する。
【0024】
さらに、前記ステップS5における駆動基準値SOC1及び停止基準値SOC2の設定後、駆動/停止判定部43において、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCと、上記駆動基準値SOC1、停止基準値SOC2とを比較して、エンジン12の駆動/停止を判定する(ステップS6)。この場合、駆動/停止判定部43は、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCが駆動基準値SOC1よりも小さく(SOC<SOC1)なると、エンジン12を駆動させると判定し、また、充電量SOCが停止基準値SOC2以上(SOC≧SOC2)になると、エンジン12を停止させると判定する。さらに、充電量SOCが駆動基準値SOC1以上で且つ停止基準値SOC2未満(SOC1≦SOC<SOC2)の場合には、エンジン12が駆動中であれば駆動を継続させると判定し、エンジン12が停止中であれば停止を継続させると判定する。そして、後述するように上記判定に基づいてエンジン12の駆動/停止を切替えることによって、エンジン12は、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲よりも少ない状態では常に駆動し、上限値に達すれば停止するように制御される。尚、本実施の形態の制御システムはシリーズ方式であるため、発電機13はエンジン12の駆動、停止と同期して駆動、停止する。
【0025】
さらに、前記ステップS3、S4で設定されたエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesに基づいて、エンジン回転数指令値演算部48においてエンジンコントローラ26に対するエンジン回転数指令値ωcを演算し、また、発電機出力指令値演算部49において発電機制御器14に対する発電機出力指令値Pgcを演算する(ステップS7)。上記エンジン回転数指令値ωcは、エンジン12の回転数をエンジン目標回転数ωsにするためにエンジンコントローラ26に出力される指令値である。また、発電機出力指令値Pgcは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするために、発電機13の出力を制御するべく発電機制御器14に出力される指令値である。つまり、発電機13の出力制御によって発電機13からエンジン12にかかる負荷を制御し、これによってエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesになるように制御する構成になっている。
【0026】
前記エンジン回転数指令値演算部48では、メモリ35にデータとして保存されているエンジン目標回転数ωsとエンジン回転数指令値ωcとの関係を示す関数(ωc=F(ωs))を用いて、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数をエンジン目標回転数ωsにするためのエンジン回転数指令値ωcを演算する。
ここで、本実施の形態において、エンジンコントローラ26は、エンジン12の無負荷回転数の設定値を指令値としてエンジン12の回転数制御を行なう構成になっており、而して、無負荷回転数の設定値がエンジン回転数指令値ωcになるが、この場合には、下記の式(1)を用いてエンジン回転数指令値ωc(無負荷回転数の設定値)を演算することにより、エンジン出力がエンジン目標出力Pesのときにエンジン回転数がエンジン目標回転数ωsになるエンジン回転数指令値ωcを求めることができる。
ωc=A×ωs+B ・・・(1)
上記式(1)において、A、Bはエンジン12の特性により定まる定数である。
【0027】
一方、発電機出力指令値演算部49では、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを、下記の式(2)を用いて演算する。尚、本実施の形態において、発電機制御器14は、発電機目標出力Pgsを指令値として発電機13の出力を制御する機能を有しており、而して、発電機目標出力Pgsがそのまま発電機出力指令値Pgcになる。
Pgc=Pgs=Pes×ηg ・・・(2)
上記式(2)において、ηgはメモリ35にデータとして保存されている発電機13の効率である。尚、発電機効率ηgは、発電機13の出力や回転数により変化する。
【0028】
さらに、前記ステップS7におけるエンジン回転数指令値ωc及び発電機出力指令値Pgcの演算後、駆動/停止切替部47において、前記駆動/停止判定部43の判定が、エンジン12の駆動(駆動継続を含む)か停止(停止継続を含む)かを判断する(ステップS8)。
【0029】
前記ステップS8の判断で、エンジン12の駆動と判断された場合、駆動/停止切替部47は、エンジンコントローラ26に対してエンジン回転数指令値ωcを出力すると共に、発電機制御器14に対して発電機出力指令値Pgcを出力する(ステップS9)。これにより、発電機13の出力は発電機目標出力Pgsになるように制御され、そして該発電機13の出力が発電機目標出力Pgsになるように制御されることによって、エンジン12の出力はエンジン目標出力Pesになるように制御されると共に、エンジン12の回転数はエンジン目標回転数ωsになるように制御される。ステップS9の処理後は、前記ステップS2に戻る。
【0030】
一方、ステップS8の判断で、エンジン12の停止と判断された場合、駆動/停止切替部47は、エンジンコントローラ26に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力すると共に、発電機制御器14に対して発電機13の停止指令(発電機出力指令値Pgc=0)を出力する(ステップS10)。これによりエンジン12及び発電機13は停止する。ステップS10の処理後は、前記ステップS2に戻る。
【0031】
而して、前記エンジン・発電機制御部36の行なう制御によって、エンジン12は、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲よりも少ない状態では常に駆動し、上限値に達すれば停止するように駆動/停止の切替え制御が行なわれると共に、該エンジン12の駆動時において、エンジン12の回転数は、蓄電装置34の充電量SOCに応じて設定されたエンジン目標回転数ωsになるように制御され、さらにエンジン12の出力は、エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesになるように制御される構成になっている。
【0032】
また、前記制御装置27は、前述したように、電動機制御器16〜20、及びメインポンプ28、サブポンプ33の容量可変手段28a、33aに対しても制御指令を出力するが、この場合、メインポンプ用電動機21を制御する電動機制御器16及びメインポンプ28の容量可変手段28aに対しては、メインポンプ28の吐出流量を、該メインポンプ28を油圧源とする油圧アクチュエータ(本実施の形態では、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)用操作具の操作量に応じて要求される流量にするべく制御指令を出力する。また、旋回用電動機22を制御する電動機制御器17に対しては、旋回用操作具の操作量に応じた速度で旋回機構30を駆動させるべく制御指令を出力する。また、パイロットポンプ用電動機23を制御する電動機制御器18に対しては、パイロットポンプ31の吐出圧を予め設定されたパイロット設定圧にするべく制御指令を出力する。また、冷却ファン用電動機24を制御する電動機制御器19に対しては、冷却ファン32が必要な冷却風を供給できる回転数にするべく制御指令を出力する。また、サブポンプ用電動機25を制御する電動機制御器20及びサブポンプ33の容量可変手段33aに対しては、サブポンプ33の吐出流量を、該サブポンプ33を油圧源とする他の油圧アクチュエータ用操作具の操作量に応じて要求される流量にするべく制御指令を出力するようになっている。
【0033】
叙述の如く構成された第一の実施の形態において、ハイブリッド型油圧ショベル1は、エンジン12と、該エンジン12により駆動される発電機13と、該発電機13から電力供給される電動機21〜25と、該電動機21〜25により機械的に駆動される負荷(本実施の形態では、メインポンプ28、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33)と、前記発電機13及び電動機21〜25に接続され、エンジン12の出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電する蓄電装置34とを備えているが、さらにハイブリッド型油圧ショベル1には、前記エンジン12の回転数を制御するエンジンコントローラ26と、前記発電機13の出力を制御する発電機制御器14と、これらエンジンコントローラ26、発電機制御器14に制御指令を出力する制御装置27と、前記蓄電装置34の充電量を測定する充電量センサ38とが設けられている。そして、前記制御装置27は、蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定し、さらに、エンジン回転数が該エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力をエンジン目標出力Pesとして設定すると共に、エンジン12の駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数ωsにするべくエンジンコントローラ26に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを演算し、該発電機目標出力Pgsにするべく発電機制御器14に制御指令を出力することになる。
【0034】
而して、蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsが設定され、さらに該エンジン目標回転数ωsに応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesが設定されることになるが、この場合に、蓄電装置34は、エンジン12の出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電することで充電量SOCが増減するため、該蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定する、つまり、前述したように蓄電装置34の充電量SOCの増減に伴いエンジン目標回転数ωsが低高するように設定することによって、エンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesは、エンジン12の出力と負荷の出力との過不足がなくなるように、つまり、負荷の大きさに対応するように設定されることになる。この結果、負荷が大きい場合には、該大きな負荷に対応するエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesが設定されて、作業を効率良く行うことができる一方、負荷が小さい場合には、該小さな負荷に対応するエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesが設定されて、燃費向上に貢献できることになる。しかも、前記負荷の大きさに対応するエンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesの設定は、蓄電装置34の充電量SOCの測定だけで簡単に行なうことができると共に、負荷が急激に大きく変動しても蓄電装置34の充電量SOCは負荷の変動よりも緩やかに増減するため、エンジン目標回転数ωs、エンジン目標出力Pesが急に大きく変化して操作性が損なわれてしまうことを回避できる。
【0035】
さらにこのものにおいて、エンジン目標出力Pesは、エンジン回転数がエンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン出力が設定されるから、エンジン12を常に効率良く運転させることができることになって、燃費向上に大きく貢献できる。しかもこのものは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電機目標出力Pgsを演算し、発電機13の出力を該発電機目標出力Pgsとなるように制御することで、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにする構成であるから、負荷の過渡的変動の影響をエンジン12が受けることなく、エンジン12の出力を確実にエンジン目標出力Pesになるように制御できることになる。
【0036】
そのうえ、前記制御装置27は、蓄電装置34の充電量に応じてエンジン12の駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段(駆動/停止基準値設定部42、駆動/停止判定部43、駆動/停止切替部47)を備えている。而して、蓄電装置34の充電が不要の場合には、エンジン12を停止させることで無駄な燃料消費を削減できる一方、エンジン12の駆動時には、負荷の大きさに対応し、且つ、常にエンジン効率の良い状態で運転されることになる。
【0037】
次に、本発明の第二の実施の形態を図8〜図10に基づいて説明する。尚、図1、図5、図6、図7については第一の実施の形態のものを共用する。また、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)については同一の符号を附すと共に、その詳細については省略する。
まず、図8に第二の実施の形態の制御システムの全体構成を示すが、第二の実施の形態ではパラレル方式の制御システムが採用されており、エンジン12は、動力伝達機構51を介して油圧ポンプ52及び発電電動機53に機械的にパラレル接続されている。
【0038】
前記エンジン12は、第一の実施の形態のエンジン12と同様に、エンジンコントローラ26による燃料噴射量調整により回転数(回転速度)が制御されると共に、該エンジンコントローラ26は、制御装置54から出力される制御指令に基づいてエンジン回転数を制御する。
【0039】
前記発電電動機53は、エンジン12の動力により駆動して発電する発電機としての機能と、油圧ポンプ52を駆動せしめる電動機としての機能とを有している。そして、該発電電動機53の発電機動作、電動機動作の切替えは、発電電動機制御器56によって行なわれると共に、該発電電動機制御器56は、制御装置54からの制御指令に基づいて、前記発電機動作、電動機動作の切替え制御、発電機動作時における発電出力の制御、電動機動作時における出力或いは回転数或いはトルクの制御を行なう。尚、発電電動機53は、本発明の発電機に相当するが、電動機として動作している場合には、本発明の電動機としても機能する。また、前記発電電動機制御器56は、本発明の発電機制御手段に相当する。
【0040】
また、前記油圧ポンプ52は、ハイブリッド型油圧ショベル1に設けられる油圧アクチュエータA(本実施の形態では、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ10、左右の走行モータ11L、11R)の油圧供給源になる容量可変型ポンプであって、該油圧ポンプ52と各油圧アクチュエータAとの間には、各油圧アクチュエータA用操作具(図示せず)の操作に基づいて油圧アクチュエータAへの油給排制御をそれぞれ行なうコントロールバルブ55が配されている。また、52aは油圧ポンプ52の容量可変手段であって、該容量可変手段52aは、油圧アクチュエータA用操作具の操作量や油圧ポンプ52の吐出圧に基づいて、油圧ポンプ52の吐出流量を制御するように構成されている。尚、前記油圧ポンプ52は、本発明のエンジンにより機械的に駆動される負荷を構成するが、前記発電電動機53が電動機として動作している場合には、エンジン及び電動機により機械的に駆動される負荷になる。
【0041】
一方、前記動力伝達機構51は、前述したようにエンジン12と油圧ポンプ52と発電電動機53とを機械的にパラレル接続するものであるが、該動力伝達機構51は、エンジン12、油圧ポンプ52、発電電動機53を動力伝達機構51に対してそれぞれ断続するクラッチ機構51aを備えている。そして、該クラッチ機構51aは、制御装置54からの制御指令に基づいて、動力伝達機構51とエンジン12、油圧ポンプ52、発電電動機53とを断続する。
【0042】
さらに、前記発電電動機53は、前記発電電動機制御器56、母線15、電動機制御器17〜20を介して、旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機22〜25に接続されている。前記電動機制御器17〜20、及び旋回用、パイロットポンプ用、冷却ファン用、サブポンプ用の各電動機22〜25については、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため、説明は省略する。また、旋回減速機29、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33、サブポンプ33の容量可変手段33aについても、第一の実施の形態と共通するもの(同一のもの)であるため説明は省略する。尚、第二の実施の形態では、前記旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33が本発明の電動機により機械的に駆動される負荷を構成する。
【0043】
また、図8において、34は第一の実施の形態と同様に蓄放電機能を有した蓄電装置であるが、該蓄電装置34は、発電電動機制御器56と電動機制御器17〜20との間の母線15に接続されていて、蓄電装置34と発電電動機53と電動機22〜25の相互間で電力の授受を行うことができるようになっている。そして、該蓄電装置34は、エンジン12の出力と負荷(油圧ポンプ52、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33)の出力との過不足に応じて、電力を蓄放電する。つまり、エンジン12の出力が負荷の出力に対して余剰がある場合には、発電電動機53は発電機として動作すると共に、該発電電動機53から電動機22〜25への供給電力の余剰分が蓄電装置34に蓄電される一方、エンジン12の出力が負荷の出力に対して不足する場合には、発電電動機53が発電機として動作しているときは該発電電動機53から電動機22〜25への供給電力の不足分が蓄電装置34から放電され、また、発電電動機53が電動機として動作しているときは該発電電動機53及び電動機22〜25に供給される総電力が蓄電装置34から放電されるようになっている。該蓄電装置34の蓄放電は、第一の実施の形態と同様に、母線15の電圧と蓄電装置34の電圧との差により自動的に行われるようになっている。
【0044】
一方、第二の実施の形態の制御装置54には、前記第一の実施の形態の制御装置27と同様に、エンジン12の特性、蓄電装置34の特性、油圧ポンプ52の特性、発電電動機53の特性、電動機22〜25の特性、サブポンプ33の特性、パイロット設定圧等の種々のデータや、後述する制御に用いるデータ等が保存されたメモリ57が設けられている。そして制御装置54は、蓄電装置34の充電量を検出する充電量センサ38、母線15の電圧を計測する電圧センサ39、旋回用操作具及び他の油圧アクチュエータ用操作具(図示しないが、操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等)の操作をそれぞれ検出する操作検出手段40、油圧ポンプ52の回転数を検出するポンプ回転数検出センサ58、油圧ポンプ52の容量を検出するポンプ容量検出センサ59、油圧ポンプ52の吐出圧を検出するポンプ吐出圧検出センサ60等からの信号を入力し、これら入力信号と前記メモリ57に収納されたデータとに基づいて、前記エンジンコントローラ26、クラッチ機構51a、発電電動機制御器56、電動機制御器17〜20、サブポンプ33の容量可変手段33a等に制御指令を出力するように構成されている。
【0045】
扨、第二の実施の形態の制御装置54にも、第一の実施の形態と同様に、エンジン12及び発電電動機53の制御を行なうエンジン・発電電動機制御部61が設けられているが、該エンジン・発電電動機制御部61の構成について、図9のブロック図に基づいて説明すると、エンジン・発電電動機制御部61は、入力側に前記メモリ57、充電量センサ38、ポンプ回転数検出センサ58、ポンプ容量検出センサ59、ポンプ吐出圧検出センサ60が接続され、出力側に前記クラッチ機構51a、エンジンコントローラ26、発電電動機制御器56が接続されると共に、駆動/停止基準値設定部42、駆動/停止判定部43、エンジン目標回転数設定部44、エンジン目標出力設定部45、ポンプ出力演算部62、指令値演算部63、駆動/停止切替部64を具備して構成されている。さらに、前記指令値演算部63は、エンジン回転数指令値演算部48と発電電動機出力指令値演算部66とエンジン停止時発電電動機出力指令値演算部67を具備している。尚、前記駆動/停止基準値設定部42、駆動/停止判定部43、エンジン目標回転数設定部44、エンジン目標出力設定部45、エンジン回転数指令値演算部48は、前記第一の実施の形態と同様の制御を行なう。また、ポンプ出力演算部62、発電電動機出力指令値演算部66、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部67、駆動/停止切替部64の制御については後述する。
【0046】
さらに、前記エンジン・発電電動機制御部61の行なうエンジン12及び発電電動機53の制御について、前記図9のブロック図、及び図10のフローチャート図に基づいて説明する。まず、ハイブリッド型油圧ショベル1が運転開始すると、エンジン・発電電動機制御部61は、メモリ57に収納されているデータを読込む(ステップS11)。
【0047】
次いで、充電量センサ38により検出される蓄電装置34の充電量SOCと、ポンプ回転数検出センサ58、ポンプ容量検出センサ59、ポンプ吐出圧検出センサ60によりそれぞれ検出される油圧ポンプ52の回転数、容量、吐出圧とを読込む(ステップS12)。
【0048】
次いで、エンジン目標回転数設定部44において、蓄電装置34の充電量SOCに対応するエンジン目標回転数ωsが示されたグラフ(前記図5(A))を用いて、前記充電量センサ38により測定された蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定する(ステップS13)。この場合、蓄電装置34の充電量SOCの増減に伴いエンジン目標回転数ωsが低高するように設定されるが、該エンジン目標回転数設定部44におけるエンジン目標回転数ωsの設定は、前記第一の実施の形態におけるエンジン目標回転数ωsの設定(ステップS3の制御)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0049】
さらに、エンジン目標出力設定部45において、エンジン目標回転数ωsとエンジン目標出力Pesとの対応を示すグラフ(前記図6)を用いて、前記エンジン目標回転数設定部44で設定されたエンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesを設定する(ステップS14)。該エンジン目標出力設定部45におけるエンジン目標出力Pesの設定は、前記第一の実施の形態におけるエンジン目標出力Pesの設定(ステップS4の制御)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
さらに、駆動/停止基準値設定部42において、エンジン12の駆動/停止を切替える基準値(駆動基準値SOC1及び停止基準値SOC2)を設定する(ステップS15)。該駆動/停止基準値設定部42における駆動基準値SOC1及び停止基準値SOC2の設定は、前記第一の実施の形態における駆動基準値SOC1及び停止基準値SOC2の設定(ステップS5の制御)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
さらに、駆動/停止判定部43において、充電量センサ38により測定される蓄電装置34の充電量SOCと、前記駆動基準値SOC1、停止基準値SOC2とを比較して、エンジン12の駆動/停止を判定する(ステップS16)。該駆動/停止判定部43におけるエンジン12の駆動/停止の判定は、前記第一の実施の形態におけるエンジン12の駆動/停止の判定(ステップS6の制御)と同様であるため、詳細な説明は省略する。尚、第二の実施の形態の制御システムはパラレル方式であって、エンジン12と発電電動機53とはクラッチ機構51aを備えた動力伝達機構51を介して接続されているため、エンジン12の駆動、停止と発電電動機53の駆動、停止とは別々に制御される。
【0052】
さらに、ポンプ出力演算部62において、油圧ポンプ52の出力Ppを演算する(ステップS17)。該油圧ポンプ52の出力Ppの演算は、下記の式(3)を用いて行なう。
Pp=ωp×v×pr ・・・(3)
上記式(3)において、ωpはポンプ回転数検出センサ58により検出される油圧ポンプ52の回転数、vはポンプ容量検出センサ59により検出される油圧ポンプ52の容量、prはポンプ吐出圧検出センサ60により検出される油圧ポンプ52の吐出圧である。
【0053】
さらに、エンジン回転数指令値演算部48、発電電動機出力指令値演算部66、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部67において、エンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctをそれぞれ演算する(ステップS18)。上記エンジン回転数指令値ωcは、エンジン12の回転数をエンジン目標回転数ωsにするためにエンジンコントローラ26に出力される指令値である。また、発電電動機出力指令値Pgcは、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするために、油圧ポンプ52の出力に基づいて発電電動機53の出力を制御するべく発電電動機制御器56に出力される指令値である。つまり、油圧ポンプ52の出力に基づいて発電電動機53の出力を制御することによって、発電電動機53及び油圧ポンプ52からエンジン12にかかる負荷が一定になるように制御し、これによりエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesになるように制御する構成になっている。また、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctは、エンジン12の停止時に発電電動機53のみの動力で油圧ポンプ52を駆動するときに発電電動機制御器56に出力される指令値である。
【0054】
前記エンジン回転数指令値演算部48では、メモリ57にデータとして保存されているエンジン目標回転数ωsとエンジン回転数指令値ωcとの関係を示す関数(ωc=F(ωs))を用いて、エンジン回転数指令値ωcを演算する。該エンジン回転数指令値演算部48におけるエンジン回転数指令値ωcの演算は、前記第一の実施の形態におけるエンジン回転数指令値ωcの演算と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
一方、発電電動機出力指令値演算部66では、エンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを、下記の式(4)を用いて演算する。尚、本実施の形態において、発電電動機制御器56は、発電電動機目標出力Pgsを指令値として発電電動機53の出力を制御する機能を有しており、而して、発電電動機目標出力Pgsがそのまま発電電動機出力指令値Pgcになる。
Pgc=Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg ・・・(4)
上記式(4)において、Ppは前記ポンプ出力演算部62において演算された油圧ポンプ52の出力、ηpは油圧ポンプ52の効率、ηgは発電電動機53の効率であって、これらの値はメモリ57にデータとして保存されているが、これら油圧ポンプ効率ηp、発電電動機効率ηgは、油圧ポンプ52、発電電動機53の出力や回転数により変化する。また、発電電動機出力指令値Pgcは、プラス(Pgc≧0)の場合には発電電動機53を発電機として動作させる指令になり、マイナス(Pgc<0)の場合には電動機として動作させる指令になる。尚、前記発電電動機目標出力Pgsは、本発明の発電機目標出力に相当する。
【0056】
また、エンジン停止時発電電動機出力指令値演算部67では、エンジン12の停止時における発電電動機53の目標出力Pgst(以下、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstと称するが、該エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、本発明の発電機目標出力に含まれない)を、下記の式(5)を用いて演算する。尚、エンジン停止時発電電動機目標出力Pgstは、そのままエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとして用いられる。
Pgct=Pgst=(−Pp/ηp)×ηg ・・・(5)
上記式(5)において、Ppは前記ポンプ出力演算部62において演算された油圧ポンプ52の出力、ηpは油圧ポンプ52の効率、ηgは発電電動機53の効率である。また、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctはマイナス(Pgct<0)であり、発電電動機53を電動機として動作させる指令になる。
【0057】
さらに、前記ステップS18におけるエンジン回転数指令値ωc、発電電動機出力指令値Pgc、エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctの演算後、駆動/停止切替部64において、前記駆動/停止判定部43の判定が、エンジン12の駆動(駆動継続を含む)か停止(停止継続を含む)かを判断する(ステップS19)。
【0058】
前記ステップS19の判断で、エンジン12の駆動と判断された場合、駆動/停止切替部64は、動力伝達機構51のクラッチ機構51aに対してエンジン12と油圧ポンプ52と発電電動機53とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ26に対してエンジン回転数指令値ωcを出力すると共に、発電電動機制御器56に対して発電電動機出力指令値Pgcを出力する(ステップS20)。これにより、発電電動機53の出力は発電電動機目標出力Pgsになるように制御されるが、この場合、前述したように、発電電動機出力指令値Pgcがプラス(Pgc≧0)のときには、発電電動機53を発電機として動作させる制御指令が出力され、発電電動機出力指令値Pgcがマイナス(Pgc<0)の場合には、電動機として動作させる制御指令が出力される。そして、発電電動機53が発電機として動作している場合には、該発電電動機53及び油圧ポンプ52の出力をエンジン12が負担し、また、発電電動機53が電動機として動作している場合には、油圧ポンプ52の出力をエンジン12と発電電動機53とで負担することになるが、何れの場合でも、発電電動機53の出力を油圧ポンプ52の出力に基づいて発電電動機目標出力Pgsになるように制御することによって、エンジン12の出力はエンジン目標出力Pesになるように制御されると共に、エンジン12の回転数は、エンジン目標回転数ωsになるように制御される。ステップS20の処理後は、前記ステップS12に戻る。
【0059】
一方、ステップS19の判断で、エンジン12の停止と判断された場合、駆動/停止切替部64は、動力伝達機構51のクラッチ機構51aに対してエンジン12を油圧ポンプ52及び発電電動機53から断ち、且つ、油圧ポンプ52と発電電動機53とを接続するように制御指令を出力し、さらに、エンジンコントローラ26に対してエンジン12の停止指令(エンジン回転数指令値ωc=0)を出力すると共に、発電電動機制御器56に対してエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctを出力する(ステップS21)。これによりエンジン12が停止すると共に、発電電動機53の出力はエンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctとなるように制御されるが、該エンジン停止時発電電動機出力指令値Pgctは前述したように発電電動機53を電動機として動作させる指令であり、該電動機として動作する発電電動機53により油圧ポンプ52が駆動される。ステップS21の処理後は、前記ステップS2に戻る。
【0060】
而して、第二の実施の形態のものにおいても、前記第一の実施の形態と同様に、エンジン・発電電動機制御部61の行なう制御によって、エンジン12は、蓄電装置34の充電量SOCが満充電範囲よりも少ない状態では常に駆動し、上限値に達すれば停止するように駆動/停止の切替え制御が行なわれると共に、該エンジン12の駆動時において、エンジン12の回転数は、蓄電装置34の充電量SOCに応じて設定されたエンジン目標回転数ωsになるように制御され、さらにエンジン12の出力は、エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesになるように制御される構成になっている。
【0061】
つまり、第二の実施の形態のものでは、エンジン12と、油圧ポンプ52と、発電機及び電動機として機能する発電電動機53とが動力伝達機構51を介してパラレル接続されたパラレル方式の制御システムが採用されているが、該パラレル方式の制御システムが採用された第二の実施の形態のものにおいても、前記シリーズ方式の制御システムが採用されている第一の実施の形態のものと同様に、エンジン12の回転数は、蓄電装置34の充電量SOCに応じて設定されたエンジン目標回転数ωsになるように制御され、さらにエンジン12の出力は、エンジン目標回転数ωsのときにエンジン効率が最大になるエンジン目標出力Pesになるように制御されることになる。そして、蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定する、つまり、蓄電装置34の充電量SOCの増減に伴いエンジン目標回転数ωsが低高するように設定することによって、エンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesは、エンジン12の出力と負荷(第二の実施の形態では、油圧ポンプ52、旋回機構30、パイロットポンプ31、冷却ファン32、サブポンプ33)の出力との過不足がなくなるように、つまり、負荷の大きさに対応するように設定されることになる。
【0062】
この結果、第二の実施の形態のものにおいても、エンジン12は、負荷の大きさに対応し、且つ、常にエンジン効率の良い状態で運転されることになって、前述した第一の実施の形態のものと同様の効果を奏することになり、作業性の向上、操作性の向上、燃費向上に大きく貢献できる。
【0063】
尚、本発明は上記第一、第二の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、エンジン目標回転数設定部44において蓄電装置34の充電量SOCに応じてエンジン目標回転数ωsを設定するにあたり、充電量SOCの変化率Rsoc(=ΔSOC/sec(単位時間当たりの充電量SOCの変化量))に応じて、エンジン目標回転数ωsの値を補正するように構成することもできる。この場合に、エンジン目標回転数設定部44は、蓄電装置34の充電量SOCの変化率Rsocを演算し、該変化率Rsocの絶対値が予め設定される設定値Sより小さい(|Rsoc|<S)場合には、前述した第一、第二の実施の形態の場合と同様に、図5(B)に実線で示すグラフ(図5(A)に実線で示すグラフと同じもの)を用いて蓄電装置34の充電量SOCに対応するエンジン目標回転数ωsを設定する一方、充電量SOCの変化率Rsocの絶対値が設定値S以上(|Rsoc|≧S)の場合には、充電量SOCの減少時(変化率Rsoc<0)には、図5(B)に一点鎖線で示す如く、エンジン目標回転数ωsを補正値αだけ高くするように補正し、また、充電量SOCの増加時(変化率Rsoc>0)には、図5(B)に二点鎖線で示す如く、エンジン目標回転数ωsを補正値αだけ低くするように補正する。この場合の補正値αは、予め設定された一定の値でも良いが、変化率Rsocの大きさに応じて増減変化させることもでき、また、充電量SOCの増加時と減少時とで異なる値にすることもできる。さらに、エンジン目標出力設定部45は、前記補正されたエンジン目標回転数ωsに基づいてエンジン目標出力Pesを設定する。この様に、充電量SOCの変化率Rsoc(=ΔSOC/sec)に応じてエンジン目標回転数ωsの値を補正すると共に、該補正されたエンジン目標回転数ωsに基づいてエンジン目標出力Pesを設定することにより、蓄電装置34の充電量SOCの増減変化を予測したエンジン目標回転数ωs及びエンジン目標出力Pesが設定されることになって、蓄電装置34の充電量SOCの増減変化に素早く対応できるエンジン回転数制御、出力制御を行うことができる。尚、図5(B)では、蓄電装置34の充電量SOCに対してエンジン目標回転数ωsを無段階に設定した場合を図示したが、エンジン目標回転数ωsを段階的に設定した場合においても同様に補正できることは勿論である。
【0064】
また、前記第二の実施の形態において、油圧ポンプ52の出力に基づいてエンジン12の出力をエンジン目標出力Pesにするための発電電動機目標出力Pgsを演算するにあたり、エンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)を求め、該偏差がなくなるように(「0」になるように)発電電動機目標出力Pgsを増減させる構成にすることもできる。この場合の制御方法はPI制御とし、下記の式(6)を用いて発電電動機目標出力Pgsを演算する。
Pgs=(Pes−Pp/ηp)×ηg+(Kp+Ki/s)(ωs−ωa) ・・・(6)
上記式(6)において、Ppはポンプ出力演算部62において演算された油圧ポンプ52の出力、ηpは油圧ポンプ52の効率、ηgは発電電動機53の効率、Kpは比例定数、Kiは積分定数、sはラプラス演算子である。
そして、この様にエンジン目標回転数ωsとエンジン実回転数ωaとの偏差(ωs−ωa)がなくなるように発電電動機目標出力Pgsを増減させることにより、油圧ポンプ52の出力の測定や効率の算定に誤差が生じても(一般に、建設機械の作業中における負荷変動は大きく、このため、油圧ポンプ52の出力の測定誤差や効率の算定誤差が大きくなってしまう惧れがある)、該誤差分を発電電動機53の出力で補償できることになって、エンジン12の出力を確実にエンジン目標出力Pesにすることができる。尚、上記エンジン実回転数ωaは、エンジン回転数検出センサにより検出されるエンジン12の実際の回転数である。
【0065】
また、第二の実施の形態では、油圧ポンプの出力を測定するためのポンプ出力測定手段として、油圧ポンプの回転数、容量、吐出圧をそれぞれ検出するポンプ回転数検出センサ、ポンプ容量検出センサ、ポンプ吐出圧検出センサを設けたが、これに限定されることなく、例えば、ポンプ回転数検出センサ及びポンプ容量検出センサに替えて、油圧ポンプの流量を検出するポンプ流量検出センサを設けても良い。また、油圧ポンプの容量を、制御装置からの制御指令に基づいて可変できるように構成することもできるが、この場合には、ポンプ容量検出センサを設けることなく、制御装置から出力されるポンプ容量指令値に基づいて油圧ポンプの容量を求めるように構成することができる。
【0066】
さらに、本発明は、発電機から電力供給される電動機として、電動機としての機能に加えて発電機の機能も有した発電電動機を用いることもできる。例えば、旋回機構を駆動せしめる電動機を発電電動機を用いて構成することができ、この場合、発電電動機は旋回機構の制動時に発電機として動作することになる。尚、この様に電動機として発電電動機を用いた場合、該発電電動機で発電された電力は、他の電動機や発電電動機に供給される、或いは蓄電装置に蓄電される。
【0067】
さらに、本発明は、蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標回転数を設定し、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定する構成であるが、これらエンジン目標回転数とエンジン目標出力とは、前記図6に示す如く、1対1で対応するものであるから、まずエンジン目標出力を設定し、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標回転数を設定する構成にしても、同等の制御システムを提供することができる。この場合には、蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標出力を設定し、該設定されたエンジン目標出力に応じてエンジン目標回転数が設定されることになる。
【0068】
また、充電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なうにあたり、上記第一、第二の実施の形態では、エンジンは、蓄電装置の充電量が予め設定される満充電範囲よりも少ない状態では常に駆動し、上限値に達すれば停止するように制御されるが、これに限定されることなく、例えば、蓄電装置の充電量が予め設定される高効率範囲の最小値になればエンジンを駆動させる一方、高効率範囲の最大値になればエンジンを停止させる構成(例えば、充電量40%〜60%を高効率範囲として設定すると共に、駆動基準値を充電量40%、停止基準値を充電量60%に設定する)にしたり、或いは、蓄電装置の充電量が上限値になるまではエンジンの駆動を継続する一方、上限値になった以降は予め設定される空充電範囲になるまでエンジンを停止させる構成(例えば、充電量10%以下の範囲を空充電範囲として設定すると共に、駆動基準値を充電量10%、停止基準値を充電量100%に設定する)にすることもできる。さらに、前記エンジンの駆動、停止を切替えるための蓄電装置の充電量の基準値(駆動基準値及び停止基準値)の設定を、サービスマンやオペレータが任意に行なうことができる基準値設定手段を設けることもできる。
【0069】
また、蓄電装置の蓄放電は、上記第一、第二実施の形態では、母線の電圧と蓄電装置の電圧との差により自動的に行なわれる構成になっているが、これに限定されることなく、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を行なう構成にすることもできる。この場合には、制御装置からの制御指令に基づいて蓄電装置の蓄放電を制御する蓄放電制御手段が必要になる。
【0070】
さらに、本発明は、ハイブリッド型油圧ショベルに限らず、種々のハイブリッド型建設機械に実施できることは勿論であると共に、エンジン及び電動機の少なくとも何れか一方により機械的に駆動される負荷も、ハイブリッド型建設機械の種類やサイズ、或いはハイブリッド型建設機械の行なう作業内容等に応じて適宜設けられることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、動力源としてエンジンと蓄電装置とを併用するハイブリッド型建設機械において、エンジン効率の向上を図る場合に利用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 ハイブリッド型油圧ショベル
12 エンジン
13 発電機
14 発電機制御器
21 メインポンプ用電動機
22 旋回用電動機
23 パイロットポンプ用電動機
24 冷却ファン用電動機
25 サブポンプ用電動機
26 エンジンコントローラ
27、54 制御装置
34 蓄電装置
36 エンジン・発電機制御部
38 充電量センサ
42 駆動/停止基準値設定部
43 駆動/停止判定部
44 エンジン目標回転数設定部
45 エンジン目標出力設定部
47、64 駆動/停止切替部
49 発電機出力指令値演算部
52 油圧ポンプ
53 発電電動機
56 発電電動機制御器
61 エンジン・発電電動機制御部
66 発電電動機出力指令値演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンにより駆動される発電機と、該発電機から電力供給される電動機と、エンジン及び電動機の少なくとも何れか一方により機械的に駆動される負荷と、前記発電機及び電動機に接続され、エンジンの出力と負荷の出力との過不足に応じて蓄放電する蓄電装置とを備えたハイブリッド型建設機械において、前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段と、前記発電機の出力を制御する発電機制御手段と、これらエンジン制御手段、発電機制御手段に制御指令を出力する制御装置と、前記蓄電装置の充電量を測定する充電量測定手段とを設けると共に、前記制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジン目標回転数を設定するエンジン目標回転数設定手段と、該設定されたエンジン目標回転数に応じてエンジン効率が最大になるエンジン目標出力を設定するエンジン目標出力設定手段とを備え、エンジンの駆動時に、エンジン回転数を前記エンジン目標回転数にするべくエンジン制御手段に制御指令を出力する一方、エンジン出力を前記エンジン目標出力にするための発電機目標出力を演算し、発電機の出力を該発電機目標出力にするべく発電機制御手段に制御指令を出力することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項2】
請求項1において、エンジン目標回転数設定手段は、蓄電装置の充電量の変化率に応じてエンジン目標回転数を補正すると共に、エンジン目標出力設定手段は、前記補正されたエンジン目標回転数に基づいてエンジン目標出力を設定することを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。
【請求項3】
請求項1または2において、制御装置は、蓄電装置の充電量に応じてエンジンの駆動、停止の切替え制御を行なう駆動/停止切替え手段を備えることを特徴とするハイブリッド型建設機械における制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−17676(P2012−17676A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154838(P2010−154838)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】