説明

ハイブリッド建設機械の制御コントローラ

【課題】イグニッションキーをOFFした後にハイブリッド建設機械の停止処理を行うことができるようにする。
【解決手段】CPU250に電力を供給する内部電源260と、内部電源260にそれぞれ独立して供給する第1電源ライン210及び第2電源ライン230と、第1電源ライン210に設けられ、ハイブリッド建設機械の始動・停止時にON・OFFされるスイッチ211と、第1電源ライン210の電圧値をCPU250に入力する電圧監視ライン220と、第2電源ライン230に設けられ、CPU250によってON・OFF制御される半導体スイッチ232と、を備え、CPU250は、第1電源ライン210の電圧値に基づいてスイッチ211のON・OFF状態を判定し、スイッチ211がONである判定したときに半導体スイッチ232をONとし、スイッチ211がOFFであると判定した後も半導体スイッチ232をONとすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド建設機械の制御コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧アクチュエータから排出される作動流体の油圧エネルギを電気エネルギや運動エネルギに変換するいわゆるハイブリッド建設機械の制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−275945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなハイブリッド建設機械の制御システムにおいて、イグニッションキーのOFFと同時にシステムを停止すると、油圧エネルギが高い状態のままシステムが停止されることがある。そのため、イグニッションキーをOFFにしてハイブリッド建設機械を停止した後に、油圧エネルギが電気エネルギや運動エネルギに変換されてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、油圧エネルギが電気エネルギや運動エネルギに変換されることのないように、イグニッションキーをOFFした後にシステムの停止処理を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハイブリッド建設機械の制御コントローラであって、CPUと、前記CPUに電力を供給する内部電源と、バッテリからの電力を、前記内部電源にそれぞれ独立して供給する第1電源ライン及び第2電源ラインと、前記第1電源ラインに設けられ、前記ハイブリッド建設機械の始動時にONされて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に接続し、前記ハイブリッド建設機械の停止時にOFFされて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に遮断する第1スイッチと、前記第1スイッチよりも内部電源側の前記第1電源ラインの電圧値を、前記CPUに入力する電圧監視ラインと、前記第2電源ラインに設けられ、前記CPUによってON・OFF制御されて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に接続又は遮断する第2スイッチと、を備え、前記CPUは、前記第1電源ラインの電圧値に基づいて前記第1スイッチのON・OFF状態を判定し、前記第1スイッチがONである判定したときに前記第2スイッチをONとし、前記第1スイッチがOFFであると判定した後も前記第2スイッチをONとする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、CPUの電力源となる内部電源に、それぞれ独立した2系統の電源ラインから電力を供給することとしたので、ハイブリッド建設機械の停止後もCPUに電力を供給することができる。そのため、ハイブリッド建設機械の停止後に、ハイブリッド建設機械に対して各種の停止処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】油圧ショベルの掘削アタッチメントの概略側面図である。
【図2】本発明の一実施形態による流体圧制御装置の概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態による流体圧制御装置に接続されるアシスト回生機構の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態によるコントローラの電源回路の概略構成図である。
【図5】本発明の一実施形態による停止処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
流体圧制御装置は、油圧ショベル等の油圧作業機器の動作を制御するものであり、本実施形態では、図1に示す油圧ショベルのブーム(負荷)101を駆動するブームシリンダ104の伸縮動作を制御する場合について説明する。
【0011】
図1は、油圧ショベルの掘削アタッチメント100の概略側面図である。
【0012】
掘削アタッチメント100は、掘削作業等を行うためのブーム101、アーム102及びバケット103を備え、これらをアクチュエータであるブームシリンダ104、アームシリンダ105及びバケットシリンダ106によってそれぞれ駆動する。ブームシリンダ104、アームシリンダ105及びバケットシリンダ106は、それぞれ油圧シリンダである。
【0013】
図2は、本実施形態による流体圧制御装置120の概略構成図である。
【0014】
流体圧制御装置120は、メインポンプ108と、パイロットポンプ109と、メイン制御弁110と、メイン通路111と、第1通路112と、第2通路113と、コントローラ114と、を備える。
【0015】
ブームシリンダ104は、ブームシリンダ104内を摺動自在に移動するピストンロッド107によって、ロッド側圧力室104aとボトム側圧力室104bとに区画される。ピストンロッド107はブーム101に連結されており、ピストンロッド107がブームシリンダ104内を移動することによってブーム101が駆動する。
【0016】
油圧源であるメインポンプ108及びパイロットポンプ109は、油圧ショベルに搭載されたエンジン(図示せず)によって駆動され、作動油(作動流体)を吐出する。メインポンプ108及びパイロットポンプ109は、それぞれ斜板の傾斜角を制御することで作動油の吐出量の制御が可能な可変容量型油圧ポンプである。エンジンは、運転効率の良い所定の回転速度・負荷で運転される。
【0017】
メインポンプ108から吐出された作動油は、ブームシリンダ104に対する作動油の給排を切り換えるメイン制御弁(制御弁)110に供給される。メインポンプ108とメイン制御弁110とは、メイン通路111によって接続される。メイン通路111には、メインポンプ108から吐出された作動油の他に、後述するアシスト回生機構10(図3参照)のアシストポンプ3から吐出された作動油がサブ通路31を通じて導かれる。
【0018】
メイン制御弁110とブームシリンダ104のロッド側圧力室104aとは、第1通路112によって接続され、メイン制御弁110とブームシリンダ104のボトム側圧力室104bとは、第2通路113によって接続される。第2通路113には、ブームシリンダ104のボトム側圧力室104bから排出され、後述するアシスト回生機構10(図3参照)の回生モータ2を駆動するための作動油が流れる戻り通路21が接続される。
【0019】
メイン制御弁110は、パイロットポンプ109からパイロット室110a,110bに供給されるパイロット圧によって操作される。パイロット室110a,110bに供給されるパイロット圧の制御は、油圧ショベルの乗務員によるレバー操作に基づいて、コントローラ114がパイロット電磁弁115を制御することで行われる。
【0020】
パイロット室110aにパイロット圧が供給された場合は、メイン制御弁110が位置aに切り換わり、メインポンプ108から第1通路112を介してロッド側圧力室104aに作動油が供給されるとともに、ボトム側圧力室104bの作動油が第2通路113を介してタンクTへと排出される。これにより、ブームシリンダ104内のピストンロッド107が図2の下側に移動、すなわちブームシリンダ104が収縮し、ブーム101が図1に示す矢印121の方向へと下降する。
【0021】
また、パイロット室110bにパイロット圧が供給された場合は、メイン制御弁110が位置bに切り換わり、メインポンプ108から第2通路113を介してボトム側圧力室104bに作動油が供給されるとともに、ロッド側圧力室104aの作動油が第1通路112を介してタンクTへと排出される。これにより、ブームシリンダ104内のピストンロッド107が図2の上側に移動、すなわちブームシリンダ104が伸長し、ブーム101が図1に示す矢印122の方向へと上昇する。
【0022】
さらに、パイロット室110a、110bにパイロット圧が供給されない場合は、メイン制御弁110が位置cに切り換わり、ブームシリンダ104に対する作動油の給排が遮断され、ブーム101は停止した状態を保つ。
【0023】
このように、メイン制御弁110は、ブームシリンダ104を収縮させる収縮位置a、ブームシリンダ104を伸長させる伸長位置b及びブームシリンダ104の負荷を保持する遮断位置cの3つの切り換え位置を備える。
【0024】
ここで、メイン制御弁110を遮断位置cに切り換えてブーム101の動きを止めると、ブーム101等の重さによって、ブームシリンダ104内のピストンロッド107には、ピストンロッド107を図2の下側に移動させようとする力、すなわちブームシリンダ104を収縮させようとする力が作用する。このように、ブーム101を駆動するブームシリンダ104においては、ボトム側圧力室104bが、メイン制御弁110が遮断位置cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。一方、アーム102を駆動するアームシリンダ105においては、ロッド側圧力室104aが負荷側圧力室となる。
【0025】
なお、以下の説明において、負荷の下降とは、負荷側圧力室の容積が減少する方向へ変化することを指し、負荷の上昇とは、負荷側圧力室の容積が増加する方向へ変化することを指す。したがって、ブームシリンダ104の場合、負荷の下降とは、ブームシリンダ104が収縮してブーム101が下降することを指し、負荷の上昇とは、ブームシリンダ104が伸長してブーム101が上昇することを指す。
【0026】
本実施形態では、この流体圧制御装置120に、ブームシリンダ104を収縮させるときにボトム側圧力室104bから排出された作動油の油圧エネルギを必要に応じて電気エネルギとして回収する回生と、ブームシリンダ104を伸長させるときに必要に応じて補助力を付与するアシストと、を行うことのできるアシスト回生機構10を接続する。このように、アシスト回生機構10を備える流体圧制御装置120によってアクチュエータの動作が制御される油圧ショベル等の油圧作業機器のことをハイブリッド建設機械という。
【0027】
図3は、流体圧制御装置120に接続されるアシスト回生機構10の概略構成図である。
【0028】
アシスト回生機構10は、モータジェネレータ1と、回生モータ2と、アシストポンプ3と、バッテリ4と、インバータ5と、戻り通路21と、サブ通路31と、を備える。
【0029】
モータジェネレータ1は、バッテリ4によって駆動されてアシストポンプ3を駆動する電動機としての機能と、回生モータ2によって駆動されて発電する発電機としての機能と、を有する。モータジェネレータ1、回生モータ2及びアシストポンプ3の回転軸は、それぞれ同軸上に配置されており、モータジェネレータ1の回転軸が回転すると、回生モータ2及びアシストポンプ3の回転軸が連係して回転する。同様に、回生モータ2の回転軸が回転すると、モータジェネレータ1及びアシストポンプ3の回転軸が連係して回転する。
【0030】
回生モータ2は、斜板の傾斜角を制御することで、出力トルクの制御が可能な可変容量型油圧モータである。回生モータ2は、ブームシリンダ104のボトム側圧力室104bから排出されて、戻り通路21を流れてきた作動油によって駆動される。回生モータ2の斜板の傾斜角の制御は、コントローラ114が傾斜角制御器24を制御することで行われる。回生モータ2の斜板の傾斜角を制御することで回生モータ2の容量が変化し、回生モータ2が発生可能なトルクの最大値(以下「最大モータトルク」という。)が変化する。
【0031】
戻り通路21には、回生モータ2に対する作動油の給排を切り換える戻り制御弁22が設けられる。戻り制御弁22は、パイロットポンプ109からパイロット室22aに供給されるパイロット圧に応じて、回生モータ2に作動油を供給する連通位置dと、回生モータ2への作動油の供給を停止する遮断位置eと、に切り換わる。パイロット室22aに供給されるパイロット圧の制御は、油圧ショベルの乗務員によるレバー操作に基づいて、コントローラ114がパイロット電磁弁23を制御することで行われる。
【0032】
アシストポンプ3は、斜板の傾斜角を制御することで吐出量の制御が可能な可変容量型油圧ポンプである。アシストポンプ3は、モータジェネレータ1によって駆動され、サブ通路31を介してメイン通路111に作動油を供給する。アシストポンプ3の斜板の傾斜角の制御は、コントローラ114が傾斜角制御器34を制御することで行われる。アシストポンプ3の斜板の傾斜角を制御することでアシストポンプ3の容量が変化し、アシストポンプ3が吐出可能な作動油の流量の最大値(以下「最大吐出量」という。)が変化する。
【0033】
サブ通路31には、メイン通路111への作動油の給排を切り換えるサブ制御弁32が設けられる。サブ制御弁32は、パイロットポンプ109からパイロット室32aに供給されるパイロット圧に応じて、メイン通路111に作動油を供給する連通位置fと、メイン通路111への作動油の供給を停止する遮断位置gと、に切り換わる。パイロット室32aに供給されるパイロット圧の制御は、油圧ショベルの乗務員によるレバー操作に基づいて、コントローラ114がパイロット電磁弁33を制御することで行われる。
【0034】
モータジェネレータ1は、インバータ5を介して電力源となるバッテリ4に接続される。
【0035】
バッテリ4は、充放電可能なリチウムイオン電池などの二次電池を複数直列に接続して構成される。バッテリ4とインバータ5の電力ライン41には、電気的な接続を遮断するためのリレー42が設けられる。リレー42は、コントローラ114によってON、OFFされる。
【0036】
インバータ5は、電流変換部51と、平滑コンデンサ52と、を備える。
【0037】
電流変換部51は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの複数の半導体スイッチ511で構成される。電流変換部51の半導体スイッチ511は、コントローラ114によって開閉制御され、これにより直流が交流に、又は交流が直流に変換される。具体的には、モータジェネレータ1を電動機として機能させるときは、電流変換部51によってバッテリ4からの直流が任意の周波数の三相交流に変換され、モータジェネレータ1に供給される。一方、モータジェネレータ1を発電機として機能させるときは、電流変換部51によってモータジェネレータ1からの三相交流が直流に変換され、バッテリ4に供給される。
【0038】
平滑コンデンサ52は、電流変換部51に対して並列に、かつ、電流変換部51に対してバッテリ4側に設けられる。平滑コンデンサ52は、モータジェネレータ1の動作時に充放電が繰り返され、直流電流を平滑化する。
【0039】
次に、図2及び図3を参照して本実施形態による流体圧制御装置120の作用について説明する。
【0040】
まず、負荷の下降時に必要に応じて実施されるアシスト回生機構10による回生について説明する。
【0041】
油圧ショベルの乗務員によってブームシリンダ104を収縮させるレバー操作が行われると、メイン制御弁110が収縮位置aに切り換えられ、ロッド側圧力室104aに作動油が供給されるとともに、ボトム側圧力室104bから作動油が排出される。
【0042】
このとき、例えばバッテリ4のバッテリ充電量が相対的に低いときなど、必要に応じて戻り制御弁22が連通位置dに切り換えられると、ボトム側圧力室104bから排出された作動油の一部が戻り通路21を介して回生モータ2に供給される。また、同時にアシストポンプ3からの吐出量が最小となるように、斜板の傾斜角が制御される。
【0043】
これにより、回生モータ2の回転軸と同期してモータジェネレータ1の回転軸が回転するので、モータジェネレータ1によって発電することができ、バッテリ4を充電することができる。つまり、ブームシリンダ104から排出される作動流体の油圧エネルギを電気エネルギに変換することができる。
【0044】
一方で、例えばバッテリ4のバッテリ充電量が相対的に高いときなど、必要に応じて戻り制御弁22が遮断位置eに切り換えられると、ボトム側圧力室104bから排出された作動油が全て第2通路113を介してタンクTへと排出され、回生が停止される。
【0045】
次に、負荷の上昇時に必要に応じて実施されるアシスト回生機構10によるアシストについて説明する。
【0046】
油圧ショベルの乗務員によってブームシリンダ104を伸長させるレバー操作が行われると、メイン制御弁110が伸長位置bに切り換えられ、ボトム側圧力室104bに作動油が供給されるとともに、ロッド側圧力室104aの作動油が第1通路112を介してタンクTへと排出される。
【0047】
ここで、エンジンは運転効率の良い所定の回転速度・負荷で運転している。したがって、ブームシリンダ104を素早く伸長させたいときなど、エンジンの駆動力による吐出量のみではボトム側圧力室104bに供給する作動油の流量が不足する場合がある。そこで、そのような場合にアシスト回生機構10によるアシストを行う。
【0048】
具体的には、バッテリ4によってモータジェネレータ1を電動機として駆動して、アシストポンプ3を駆動する。これにより、アシストポンプ3から作動油が吐出される。その結果、アシストポンプ3から吐出された作動油を、サブ通路31を介してメイン通路111に合流させて、ブームシリンダ104を伸長させるときに補助力を付与することができる。
【0049】
ここで、アシスト回生機構10を備える流体圧制御装置120の場合、油圧ショベルの乗務員によってイグニッションキー116がOFFされたと同時にコントローラ114の電源を落としてしまうと、以下のような問題が生じる。なお、イグニッションキー116は、油圧ショベルの始動時にON、停止時にOFFされるものである。
【0050】
イグニッションキー116がOFFされると、エンジンが停止されてメインポンプ108及びパイロットポンプ109が停止される。
【0051】
このとき、イグニッションキー116がOFFされたと同時にコントローラ114の電源を落としてしまうと、回生モータ2の出力トルクが最小となるように、また、アシストポンプ3の吐出流量が最小となるように、それぞれの斜板を制御することなく停止されることになる。
【0052】
また、パイロット電磁弁23、33への電力供給が停止されて戻り制御弁22及びサブ制御弁32が遮断位置e、gに切り替えられる。
【0053】
そうすると、イグニッションキー116をOFFにした後に戻り制御弁22の下流側に存在する作動油の油圧エネルギによって回生モータ2が回転させられ、アシストポンプ3から作動油が吐出され得る状況が発生してしまう。その結果、サブ通路31の圧力が高くなってしまい、次回イグニッションキー116をONにしてサブ制御弁32を連通位置fに切り替えたときに、高圧な作動油がブームシリンダ104のボトム側圧力室104bに供給されてショックが発生するおそれがある。また、サブ通路31の圧力が高くなることで、アシストポンプ3にかかる負荷も大きくなるので、アシストポンプ3の劣化を早めるおそれがある。
【0054】
さらに、インバータ5の平滑コンデンサ52には、モータジェネレータ1の動作中に電荷が蓄積されるが、電荷が蓄積された状態のまま放置するのは好ましくない。つまり、イグニッションキー116をOFFした後に、平滑コンデンサ52の電荷を放電する放電処理を行うことが好ましいが、イグニッションキー116がOFFされたと同時にコントローラ114の電源を落としてしまうと、放電処理を実行することができない。
【0055】
このように、アシスト回生機構10を備える流体圧制御装置120によってアクチュエータの動作が制御されるハイブリッド建設機械においては、イグニッションキー116をOFFにした後に、回生モータ2及びアシストポンプ3の斜板を制御し、平滑コンデンサ52を放電する停止処理を行う必要がある。
【0056】
そこで本実施形態では、イグニッションキー116をOFFにした後でも停止処理が可能なようにコントローラ114の電源回路200を構成する。
【0057】
図4は、本実施形態によるコントローラ114の電源回路200の概略構成図である。
【0058】
コントローラ114の電源回路200は、第1電源ライン210と、電圧監視ライン220と、第2電源ライン230と、制御ライン240と、CPU250と、を備える。
【0059】
第1電源ライン210は、イグニッションキー116がONされたときに、CPU250に電力を供給するためのラインである。第1電源ライン210は、一端が第1スイッチの一例であるイグニッションスイッチ211を介してバッテリ4に接続されるとともに、他端がコントローラ114の内部電源260に接続される。
【0060】
第1電源ライン210には、電圧調整のための2つのダイオード212が設けられる。なお、イグニッションスイッチ211は、イグニッションキー116をONにしたときにONとなるスイッチである。
【0061】
電圧監視ライン220は、イグニッションキー116の状態(ONかOFFか)を検出するためのラインである。電圧監視ライン220は、一端がイグニッションスイッチ211とダイオード212との間に接続され、他端がCPU250の入力ポート251に接続される。
【0062】
電圧監視ライン220には、バッテリ電圧を分圧する分圧器221が設けられる。イグニッションキー116がONのときは、バッテリ電圧を分圧器221で分圧した電圧値(以下「始動判定電圧」という。)がCPU250に入力される。一方、イグニッションキー116がOFFのときは、始動判定電圧よりも低い電圧値(以下「停止判定電圧」という。)がCPU250に入力される。
【0063】
第2電源ライン230は、イグニッションキー116をOFFした後に、CPU250に電源を供給するためのラインである。第2電源ライン230は、一端がバッテリ4に接続されるとともに、他端がコントローラ114の内部電源260に接続される。
【0064】
第2電源ライン230には、電圧調整のためのダイオード231と、第2スイッチの一例であるトランジスタ(以下「第1半導体スイッチ232」という。)と、が設けられる。
【0065】
制御ライン240は、第1半導体スイッチ232をON又はOFFにするためのラインである。制御ライン240は、一端がCPU250の出力ポート252に接続され、他端が第1半導体スイッチ232に接続される。
【0066】
制御ライン240には、CPU250の出力ポート252から出力される電圧信号を分圧する分圧器241と、分圧器241によって分圧された電圧信号によってONとなり、第1半導体スイッチ232をONにするトランジスタ(以下「第2半導体スイッチ242」という。)と、が設けられる。
【0067】
CPU250は、内部電源260から必要な電力の供給を受けて作動する。
【0068】
CPU250は、入力ポート251に入力される電圧値に基づいてイグニッションキー116の状態を判断する。具体的には、入力ポート251に始動判定電圧が入力されていれば、CPU250はイグニッションキー116がONの状態であると判定する。一方で、入力ポート251に停止判定電圧が入力されていれば、CPU250はイグニッションキー116がOFFの状態であると判定する。
【0069】
CPU250は、イグニッションキー116がONの状態であると判定したときは、出力ポート252から電圧信号を出力して第1半導体スイッチ232をONにする。これにより、第1電源ライン210の他に、第2電源ライン230からも内部電源260への電力供給が可能となるので、イグニッションキー116がOFFの状態になって、第1電源ライン210からの電力供給が遮断された後も、第2電源ライン230を介して内部電源260に電力を供給することができる。その結果、イグニッションキー116がOFFの状態になった後も、CPU250の作動が可能となる。
【0070】
CPU250は、イグニッションキー116がOFFの状態であると判定したときは、所定の停止処理を行った後、出力ポート252からの電圧信号の出力を停止することで第1半導体スイッチ232をOFFにし、最終的に内部電源260への電力供給を停止する。
【0071】
図5は、コントローラ114によって実行される本実施形態による停止処理について説明するフローチャートである。コントローラ114は、イグニッションキー116がONにされて、第1電源ライン210を介して内部電源260に電力が供給されると、CPU250の出力ポート252から電圧信号を出力して第1半導体スイッチ232をONにし、第2電源ライン230からも内部電源260への電力供給が可能な状態とする。このように、コントローラ114は、内部電源260への電力供給を、第1電源ライン210及び第2電源ライン230の2系統の電源ラインで確保した後、以下のルーチンを所定の演算周期(例えば500ミリ秒)で実行する。
【0072】
ステップS1において、コントローラ114は、CPU250の入力ポート251に入力される電圧値に基づいてイグニッションキー116の状態を判断する。コントローラは、CPU250の入力ポート251に始動判定電圧が入力されていれば、イグニッションキー116がONの状態であると判定し、今回の処理を終了する。一方で、コントローラ114は、CPU250の入力ポート251に停止判定電圧が入力されていれば、イグニッションキー116がOFFの状態であると判定し、ステップS2の処理を行う。
【0073】
ステップS2において、コントローラ114は、メイン制御弁110を遮断位置cに切り替えるとともに、戻り制御弁22及びサブ制御弁32をそれぞれ遮断位置e、gに切り替える。
【0074】
ステップS3において、コントローラ114は、回生モータ2の出力トルクが最小となるように、また、アシストポンプ3の吐出流量が最小となるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の斜板の傾斜角を制御する。つまり、回生モータ2の最大出力トルク及びアシストポンプ3の最大吐出量が最小となるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の容量を制御する。
【0075】
これにより、イグニッションキー116をOFFした後に、戻り制御弁22の下流側に存在する作動油によって回生モータ2が回転させられ、アシストポンプ3から作動油が吐出されるのを防止できる。よって、次回始動時のショックやアシストポンプ3の劣化を防止できる。
【0076】
ステップS4において、コントローラ114は、リレー42をOFFにして、バッテリ4とインバータ5との電気的な接続を切る。
【0077】
ステップS5において、コントローラ114は、インバータ5を作動させて、平滑コンデンサ52に残っている電荷をモータジェネレータ1へ放電する。
【0078】
これにより、イグニッションキー116をOFFした後に、平滑コンデンサ52に電荷が蓄積された状態となることがない。
【0079】
ステップS6において、コントローラ114は、平滑コンデンサ52の放電が終了したか否かを判定する。放電が終了したかの判定は、インバータ5の端子電圧を測定して判定する方法や、放電開始から所定時間が経過したかによって判定する方法などがあるが、本実施形態では所定時間が経過したときに、平滑コンデンサ52の放電が終了したと判定する。コントローラ114は、平滑コンデンサ52の放電が終了したと判定したときはステップS7の処理を行い、そうでなければステップS5の処理に戻る。
【0080】
ステップS7において、コントローラ114は、出力ポート252からの電圧信号の出力を停止して第1半導体スイッチ232をOFFにし、コントローラ114の電源を落とす。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、コントローラ114の内部電源260への電力供給を、第1電源ライン210及び第2電源ライン230の2系統の電源ラインで確保することとした。そのため、イグニッションキー116がOFFの状態になった後も、第2電源ライン230を介してコントローラ114の内部電源260に電力を供給することができる。
【0082】
これにより、イグニッションキー116がOFFの状態になった後に、回生モータ2の出力トルクが最小となるように、また、アシストポンプ3の吐出流量が最小となるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の斜板の傾斜角を制御することができる。つまり、イグニッションキー116がOFFの状態になった後に、回生モータ2の最大出力トルク及びアシストポンプ3の最大吐出量が最小となるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の容量を制御することができる。そのため、戻り制御弁22の下流側に存在する作動油によって回生モータ2が回転させられ、アシストポンプ3から作動油が吐出されるのを防止でき、次回始動時のショックやアシストポンプ3の劣化を防止できる。
【0083】
また、イグニッションキー116がOFFの状態になった後に、インバータ5を作動させて平滑コンデンサ52を放電させることができる。そのため、イグニッションキー116がOFFの状態になってから次にONの状態になるまでの間、平滑コンデンサ52に電荷が蓄積された状態となるのを防止できる。
【0084】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0085】
例えば、上記実施形態ではアクチュエータとして油圧シリンダを例に説明したが、これに限られるものではなく、油圧ショベルなどの建設機械や作業機械の走行モータや旋回モータであっても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、発明の理解を容易にするためブームシリンダ104のみを駆動する流体圧制御装置120にアシスト回生機構10を適用したが、ブームシリンダ104やアームシリンダ105、バケットシリンダ106、走行モータ、旋回モータなどの複数のアクチュエータを駆動する流体圧制御装置120に適用しても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、イグニッションキー116がOFFの状態になった後に、回生モータ2の最大出力トルク及びアシストポンプ3の最大吐出量が最小となるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の容量を制御していたが、回生モータ2の最大出力トルク及びアシストポンプ3の最大吐出量を最小にするものに限られるものではない。次回始動時のショックやアシストポンプ3の劣化を防止できる範囲で、イグニッションキー116がOFFの状態になったときよりも回生モータ2の最大出力トルク及びアシストポンプ3の最大吐出量が小さくなるように、回生モータ2及びアシストポンプ3の容量を制御すれば良い。
【符号の説明】
【0088】
1 モータジェネレータ
2 回生モータ
3 アシストポンプ
4 バッテリ
5 インバータ
52 平滑コンデンサ
108 メインポンプ
104 ブームシリンダ(アクチュエータ)
114 コントローラ(制御コントローラ)
210 第1電源ライン
211 イグニッションスイッチ(第1スイッチ)
220 電圧監視ライン
230 第2電源ライン
232 トランジスタ(第2スイッチ)
250 CPU
260 内部電源
S3〜S7 停止処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド建設機械の制御コントローラであって、
CPUと、
前記CPUに電力を供給する内部電源と、
バッテリからの電力を、前記内部電源にそれぞれ独立して供給する第1電源ライン及び第2電源ラインと、
前記第1電源ラインに設けられ、前記ハイブリッド建設機械の始動時にONされて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に接続し、前記ハイブリッド建設機械の停止時にOFFされて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に遮断する第1スイッチと、
前記第1スイッチよりも内部電源側の前記第1電源ラインの電圧値を、前記CPUに入力する電圧監視ラインと、
前記第2電源ラインに設けられ、前記CPUによってON・OFF制御されて前記バッテリと前記内部電源とを電気的に接続又は遮断する第2スイッチと、
を備え、
前記CPUは、
前記第1電源ラインの電圧値に基づいて前記第1スイッチのON・OFF状態を判定し、前記第1スイッチがONである判定したときに前記第2スイッチをONとし、前記第1スイッチがOFFであると判定した後も前記第2スイッチをONとする、
ことを特徴とするハイブリッド建設機械の制御コントローラ。
【請求項2】
前記CPUは、前記第1スイッチがOFFであると判定したときは前記ハイブリッド建設機械に対して所定の停止処理を行った後に前記第2スイッチをOFFとする、
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド建設機械の制御コントローラ。
【請求項3】
前記ハイブリッド建設機械は、
エンジンによって駆動されるメインポンプと、
前記メインポンプから供給される作動流体によって駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータから排出された作動流体によって駆動される回生モータと、
前記メインポンプから吐出された作動流体に合流させるための作動流体を吐出する可変容量型のアシストポンプと、
前記バッテリにインバータを介して接続されるとともに、前記バッテリによって駆動されて前記アシストポンプを駆動する電動機として機能し、前記回生モータによって駆動されて発電機として機能するモータジェネレータと、
を備え、
前記停止処理は、前記アシストポンプの吐出量が、前記第1スイッチがOFFであると判定されたときの吐出量よりも小さくなるように、前記アシストポンプの容量を制御する処理である、
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド建設機械の制御コントローラ。
【請求項4】
前記ハイブリッド建設機械は、
エンジンによって駆動されるメインポンプと、
前記メインポンプから供給される作動流体によって駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータから排出された作動流体によって駆動される可変容量型の回生モータと、
前記メインポンプから吐出された作動流体に合流させるための作動流体を吐出するアシストポンプと、
前記バッテリにインバータを介して接続されるとともに、前記バッテリによって駆動されて前記アシストポンプを駆動する電動機として機能し、前記回生モータによって駆動されて発電機として機能するモータジェネレータと、
を備え、
前記停止処理は、前記回生モータの出力トルクが、前記第1スイッチがOFFであると判定されたときの出力トルクよりも小さくなるように、前記回生モータの容量を制御する処理である、
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド建設機械の制御コントローラ。
【請求項5】
前記ハイブリッド建設機械は、
エンジンによって駆動されるメインポンプと、
前記メインポンプから供給される作動流体によって駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータから排出された作動流体によって駆動される回生モータと、
前記メインポンプから吐出された作動流体に合流させるための作動流体を吐出するアシストポンプと、
前記バッテリにインバータを介して接続されるとともに、前記バッテリによって駆動されて前記アシストポンプを駆動する電動機として機能し、前記回生モータによって駆動されて発電機として機能するモータジェネレータと、
を備え、
前記停止処理は、前記インバータ内部の平滑コンデンサを放電させる処理である、
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド建設機械の制御コントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193551(P2012−193551A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58688(P2011−58688)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】