説明

ハイブリッド結合及び二重機械式走査構造を有するイオン注入システム及び方法

【課題】複数の作動範囲内でイオンを加工物に注入するシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】イオンの所望ドーズ量が与えられ、スポットイオンビーム112がイオン源108から形成され、質量分析器126によって質量分析される。イオンは、第1モード又は第2モードの一方で、所望のドーズ量に基づいて加工物に注入される。質量分析器126の下流配置されたビーム走査システム128によってイオンビームが走査され、このビーム走査システム128の下流に配置されたパラライザー130によって平行化される。第1モードでは、加工物122は、加工物走査システム167によって少なくとも1次元で走査イオンビームを通って走査される。第2モードでは、イオンビームは、ビーム走査システム128とパラライザー130を走査しないで通過し、かつ加工物122は、スポットイオンビーム112を通って二次元で走査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イオン注入システムおよび方法に関し、特に、複数の作動範囲内でイオンを注入するためのイオン注入システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入装置は、特定量のドーパント又は不純物を半導体加工物又はウエハ内に配置するために、通常利用される。一般的なイオン注入装置において、ドーパント材料は、イオン化され、そこからイオンビームが生成される。イオンビームは、イオンをウエハに注入するために、半導体ウエハの表面に向けられ、イオンがウエハの表面を貫いて、所望の導電率の領域が形成される。例えば、イオン注入は、半導体加工物内に複数のトランジスタを形成するのに用いられる。一般的なイオン注入装置は、イオンビームを発生させるイオン源、イオンビーム内のイオンを指向および/またはフィルタ処理(例えば、質量分析)するための質量分析器を有するビームラインアセンブリ、及び処理されるべき1つ以上のウエハまたは加工物を含むターゲット室を有する。
【0003】
種々の形式のイオン注入装置は、加工物内に達成されるべき所望の特性に基づいて、注入されるイオンを変化させて、それぞれのドーズ量及びエネルギーを可能にする。例えば、高電流イオン注入装置は、一般的に、高いドーズ量に対して用いられ、中電流から低電流までのイオン注入装置は、より低いドーズ量に対して用いられる。イオンのエネルギーは、さらに変えることができ、このエネルギーは、接合深さ、すなわち、イオンが半導体加工物内に注入される際の深さを制御するために用いられる。
【0004】
デバイス形状が縮小され続けているので、浅い接合コンタクト領域が必要とされ、ますます低いエネルギーで、より高いイオンビーム電流が求められる。さらに、正確なドーパント配置に対する要求が、イオンビーム内および基板表面を横切る際のビーム角度の変動を最小化する要求として、より一層要望されている。たとえば、ある利用では、300電子ボルトまで下げたエネルギーでの高電流イオン注入装置が望ましい。一方、エネルギー汚染を同時に最小化しながら、加工物を横切るとともにイオンビーム内の角度変動の密な制御を維持すると共に、加工物の高い処理能力が与えられることが望ましい。
【0005】
現在、角度変動を最小化しながら、低エネルギーで高電流を達成するための好ましい構造は、二重機械式走査構造であり、ここで、加工物は、固定のスポットイオンビームに対して、2つの方向(例えば、「ファースト」走査方向及びほぼ垂直な「スロー」走査方向)において機械的に走査される。しかし、これまでの通常構造を利用する相対的に緩やかなファースト走査周波数は、最大加速によって制限される。この機械的なシステムは、我慢できるもので、1〜3Hzの範囲に収まるが、これにより、イオン注入装置を介して加工物の最大生産能力が制限される。
【0006】
他方、リボン型ビームのシステムでは、リボン形状のイオンビームの方向付け及び形状に対するイオンビーム光学を用いており、低いエネルギーで高電流を達成することができる。しかし、通常のリボンビームシステムにおける均一な電流密度では、要求を達成することが難しく、しばしば、角度の正確度を犠牲にしている。
【0007】
ハイブリッド走査技術は、静電気式又は磁界式によるペンシル型又はスポット型のイオンビームのファースト走査および加工物の機械的なスロー走査を用いてきた。しかし、これらの通常のハイブリッド型のイオン注入装置は、特に、5keV以下のエネルギーで、ペンシル型ビームにおける比較的高い空間電荷密度及びより長いビームラインを生じるため、さらにビームの輸送問題を生じる。
【0008】
通常、高ドーズ量の注入及び低ドーズ量の注入は、個別のドーズ量で特定のイオン注入装置を利用する必要がある。各注入装置は、それぞれより高いまたはより低いドーズ量のイオン注入構造に対して設計される。このようなマルチイオン注入装置に対する要求は、半導体製造業者に対する設備投資を増大させると共に、特定の注入装置を所有する費用を増大させる。こうして、改良されたビームライン構造は、共通のイオン注入システムを用いて、高ドーズ量注入及び低ドーズ量注入の両方を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、中間及び低ドーズ量注入前のハイブリッド型走査注入システムの生産性と共に、高ドーズ量注入のための二次元機械式走査又はスポット型イオンビーム注入システムの高電流能力及び角度制御を組み合わせたシステム、装置及び方法を提供することにより、従来技術の問題点を克服する。
【0010】
従って、以下に本発明のいくつかの構成の基本的理解を与えるために、本発明の簡潔な要約を表す。この要約は、本発明の拡張的な概要ではなく、また、本発明のキーまたは重要な要素を特定し、あるいは、本発明の範囲を描くことを意図するものではない。この目的は、後述するより詳細な説明の前書きとして単純形式で本発明の概念を示すことである。
【0011】
本発明は、複数の作動範囲内でイオンを注入するためのシステム及び方法に向けられている。本発明によれば、イオン注入システムは、以下の構成が提供される。イオン注入システムは、イオンビームを発生させるために構成されたイオン源を含み、このイオンビームは、断面楕円形状を有して、スポット型またはペンシル型イオンビームを形成する。さらに、イオン注入システムは、イオンビームを質量分析するように構成された質量分析器と、この質量分析器の下流に配置されたビーム走査システムを有する。
【0012】
本発明によれば、イオン注入システムは、加工物に注入されるべき、イオンの所望ドーズ量、および/またはイオンビーム電流またはエネルギーに基づいて、第1モードおよび第2モードで選択的に作動するように構成されている。
【0013】
たとえば、第1モードは、低ドーズ量のイオン注入に関する第1作動範囲に関連している。第1モードでは、ビーム走査システムは、イオンビームを単一のビーム走査平面に沿って走査するように構成されている。
【0014】
本発明の1つの例示的な構成によれば、パラライザーが、ビーム走査システムの下流に配置され、このパラライザーは、イオン注入システムが第1モード作動するとき、走査されたイオンビームを略S字形状に選択的に曲げるように構成されている。
【0015】
この結果、実質的に等しい長さを有する複数の平行なビームレットからなるリボンビームの中に、走査されたイオンビームを共に平行化しながら、走査されたイオンビームに関連する汚染物質がフィルタ処理される。従って、走査されたイオンビームの複数の平行なビームレットは、パラライザーの下流に位置する加工物走査システム上に配置された、加工物の中に均一に注入される。イオン注入システムが第1モードで作動しているとき、加工物走査システムは、走査されたイオンビームを通って一次元で加工物を選択的に平行移動するように構成されている。ここで、イオンが、第1作動範囲内で所望のドーズ量および/または電流またはエネルギーで注入される。
【0016】
したがって、第1モードでは、イオン注入システムは、機械的に制限された処理能力で作動することができ、ここで、中ドーズ量から低ドーズ量のイオン注入が、高い加工物の処理能力で達成することができ、加工物処理能力の上限は、走査されたイオンビームを通って加工物を平行移動させるために、加工物走査システムの機械式能力(例えば、速度)によって支配される。
【0017】
本発明によれば、ビーム走査システムは、さらに、イオン注入システムが第2作動モードで作動するとき、イオンビームが走査されないで通過するように構成され、そこに、走査されないスポットイオンビームを形成する。例えば、第2モードは、高電流または高ドーズ量注入等の第2作動範囲に関連する。1つの実例では、走査されないスポットイオンビームは、パラライザーを介してS字形状に曲げられる。そして、加工物走査システムは、走査されないスポットイオンビームを介して二次元で加工物を選択的に平行移動するように構成される。ここで、第2作動範囲内において、所望の電流、エネルギー、および/またはドーズ量でイオンが注入される。
【0018】
従って、第2モードで作動するイオン注入システムによって、イオン注入システムは、「注入制限された」処理能力で作動させることができ、高ドーズ量注入を達成することができる。そして、イオン注入の電流および/またはドーズ量の上限が主に、イオン源およびイオンビーム輸送システムの能力によって支配される。
【0019】
上述及び関連した目的を達成するために、本発明は、以下に記載されかつ特に特許請求の範囲に記載された特徴を含んでいる。以下の記述及び添付する図面は、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する。これらの実施形態は、いくつかの種々の方法を示すものであるが、本発明の原理に従って使用される。本発明の他の構成、利点、および新規な特徴は、添付する図面にとともに以下で詳細に説明される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、イオンの所望ドーズ量が与えられ、スポットイオンビームがイオン源から形成され、質量分析器によって質量分析される。イオンは、第1モード又は第2モードの一方で、所望のドーズ量に基づいて加工物に注入される。質量分析器の下流配置されたビーム走査システムによってイオンビームが走査され、このビーム走査システムの下流に配置されたパラライザーによって平行化される。第1モードでは、加工物は、加工物走査システムによって少なくとも1次元で走査イオンビームを通って走査される。第2モードでは、イオンビームは、ビーム走査システムとパラライザーを走査しないで通過し、かつ加工物は、スポットイオンビームを通って二次元で走査される。
【0021】
この結果、本発明は、複数の作動範囲において、共通の注入システムを利用しながら、イオンを注入する構造及び方法が提供され、このため、作動範囲にかかわらず、共通の注入システムを用いて、イオン注入の所望のドーズ量、電流、および/またはエネルギー、さらに、利用率、及び生産効率を達成することができる。そして、ドーズ特定システムに関連した設備費用を低減し、また、現在のイオン注入システムの利用を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、加工物にイオンを注入するためのイオン注入システム及び方法に向けられている。ここで、複数の異なる作動モードにおいて、複数の作動範囲のためにイオン注入される。従って、本発明は、図面を参照して、記載されるであろう。ここで、同等の参照番号は、同等の要素を指すために用いられる。これらの構成は、単に説明のためであり、制限的な意味に解釈されるべきではない。
【0023】
以下の記載は、説明のためであり、種々の特定の詳細は、本発明の理解を完全にするために説明される。当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細なしで、実施できることが明らかであろう。
図面を参照すると、図1,2において、本発明の1つの構成に従う例示的なイオン注入システム100が示されている。このイオン注入システムは、ここで記載するように、イオンを注入するために、種々のエネルギー、電流および/またはドーズ量で、制御することができる。
【0024】
イオン注入システム100(またイオン注入装置ともいう。)は、ターミナル102ビームラインアセンブリ104、及びエンドステーション106を含み、ここで、ターミナルは、高電圧電源110によって駆動されるイオン源108を含む。このイオン源108は、イオンビーム112を発生し、イオンビームをビームラインアセンブリ104に指向させるように作動可能である。イオン源108は、例えば、電荷イオンを発生させて引き出され、イオンビーム112に形成される。イオンビームは、ビームラインアセンブリ104内の正規ビーム経路113に沿って指向され、エンドステーション106へ向かう。本発明のイオンビーム112は、比較的狭い形状(例えば、正規のビーム経路113に沿ってみたとき、略円形断面)を有しており、以下では、ペンシル型またはスポット型イオンビームという。
【0025】
複数のイオンを発生させるために、イオン化されるべきガス状のドーパント材料(図示略)が、イオン源108の発生室114内に配置される。このドーパントガスは、例えば、ガス源(図示略)から発生室114に供給される。別の例では、RFまたはマイクロ波発生源、電子ビーム放射源、電磁気源、および/または発生室内にアーク放電を作り出すように作動可能なカソード等のいくつかの他の適当な機構(図示略)が、イオン発生室内の自由電子を励起するために、実施されまたは用いられる。
【0026】
従って、励起電子が、ドーパントガス分子に衝突し、これにより、イオンが発生する。一般的に、正イオンが発生するが、本発明では、負イオンを発生させることも同様にでき、このようなイオン発生装置の全ては、本発明の範囲内に入るものと考えられる。複数のイオンは、イオン励起アセンブリ118を介して発生室114にも受けた開口またはスリットをとって制御されて引き出される。ここで、引出アセンブリは、複数の引出電極および/または抑制電極120A、120Bを含む。引出アセンブリ118は、例えば、発生室114からのイオンを加速するために、引出電極および/または抑制電極120A、120Bをバイアスするための個別の引出電源(図示略)を含むこともできる。
【0027】
イオンビーム112は、荷電粒子を含むので、互いに反発する荷電粒子を半径方向外側に、ブローアップ即ち発散させる傾向を有する。さらに、ビームの発散は、低エネルギー、高電流(従来、高パービアンスとして知られている)イオンビームにおいて増強されることが理解できるであろう。ここで、多くの同類の荷電粒子が、比較的ゆっくり、同一方向に移動し、荷電粒子間に多量の反発力が小さな粒子運動量と共に存在し、その結果、荷電粒子が、正規ビーム経路113の方向に移動するのを維持する。従って、1つの実例によれば、引出アセンブリ118は、イオンビーム112が十分高いエネルギーで引き出されるように構成されており、その結果、スポットイオンビームは、発散しない(即ち、荷電粒子は、イオンビームの発散を導く反発力に打ち勝つ十分な運動量を有しているからである。)。別の例では、ビームの抑制を促進するために、システム全体にわたり比較的高いエネルギーでイオンビーム112を移送することが有益であり、イオンビームのエネルギーは、以下に記載するように、エンドステーション106内に配置された加工物122に衝突する前に、選択的に減少させることができる。また、分子またはクラスターイオンを発生させ、移送するために、イオンを比較的高いエネルギーで移送でき、一方、分子又はクラスターイオンのエネルギーが、分子のドーパント原子の間で分割されるので、より低い同等のエネルギーで注入することができるという利点に注目してほしい。
【0028】
本発明の別の構成によれば、ビームラインアセンブリ104は、ビームガイド124、質量分析126、及びビーム走査システム128を含んでいる。ビームラインアセンブリ104は、例えば、さらにパラライザー130を含むことができる。質量分析器126は、例えば、約90°の角度に形成され、1つ以上の磁石(図示略)を含む。この磁石は、質量分析器内に双極子磁界を形成する。イオンビーム112が質量分析器126に入ると、イオンビームは、磁界により曲げられ、不適当な電荷質量比のイオンをほぼ退けることができる。さらに特に、イオンが、あまりに大きい、またはあまりに小さい電荷質量比を有する場合、質量分析器の側壁内に偏向される。このように、質量分析器126は、主に、所望の電荷質量比を有する、イオンビーム112内のイオンのみを通過させることができ、イオンビーム112は、分析開口134を通過する。
【0029】
システム100内の他の粒子(図示略)と衝突するイオンビームは、ビームの統合を減退させることができ、この結果、少なくともビームガイド124を取り除くために、さらに1つ以上のポンプ(図示略)を含むことができる。
【0030】
本発明は、イオン注入システム100を介して注入されるイオンドーズ量の複数の範囲を考慮する。例えば、イオン注入システム100は、第1作動範囲(例えば、イオンドーズ量が、略5×1010〜5×1014イオン/cm2の範囲にある。)及び第2作動範囲(例えば、イオンドーズ量が、略5×1014〜1×1017イオン/cm2の範囲にある。)において、イオンを注入するように構成することができる。例えば、第1、第2作動範囲は、必ずしもドーズ量だけで規定されるものではなく、ドーズ量の代わりに、イオンビーム電流及びエネルギーの組合せによって規定することができる。従って、第1、第2作動範囲は、イオンドーズ量、イオンビーム電流、および/またはイオンビームエネルギーに関連させることができる。1つの実例によれば、作動範囲の好適な概算値は、さらに以下の記載によって所望のイオンドーズ量を介して達成することができる。
【0031】
通常、第1、第2の両方の作動範囲におけるイオン注入は、2つの別個のイオン注入システムを必要とし、それぞれのイオン注入システムは、ドーズ量、電流、および/またはエネルギーの、第1または第2の各範囲のそれぞれ1つにおいて注入するように構成されている。本発明は、イオン注入システム100における共通の基本設計概念を用いるのに有益である。ここで、イオン注入システムの制御は、一般的に、以下で論議するように作動範囲を決定する。
【0032】
例示的なビーム走査システム128は、図1に示されており、例えば、走査要素136及び集束および/または操縦要素(図示略)を含み、電源140が、ビーム走査要素136(集束/操縦要素‐図示略)に接続されて作動する。この集束/操縦要素(図示略)は、例えば、質量分析されたスポットイオンビーム112を受入れ、そして、イオンビームを、選択的に、走査要素136の走査頂点148に、集束及び方向付ける。
【0033】
本発明の1つの構成によれば、イオン注入システム100は、第1モード(例えば、第1作動範囲に関係する。)及び第2モード(例えば、第2作動範囲に関係する。)に選択的に作動するように構成される。
【0034】
第1モードでは、例えば、電圧波形が、電源140を介してビーム走査システム128の走査プレート144A、144Bに選択的に印加される。ここで、印加された電圧波形は、スポットイオンビーム112をある時間にわたり前後方向に静電気的に走査するように作動可能であり、その結果、単一のビーム走査平面149に沿ってイオンビームを拡張させ(例えば、図1に示すようにX軸に沿って)、そして、走査されたイオンビーム150を形成する。また、印加された電圧波形のサイクルにわたり平均化された時間において、走査されたイオンビームは、細長いリボンビームとしてみることができる。走査されたイオンビーム150は、例えば、複数のビームレット151を構成し、各ビームレットは、印加された電圧波形のサイクルにわたり、それぞれの時間でのスポットイオンビーム112からなる。走査されたイオンビーム150は、ビーム走査平面149に沿って測定されるとき、これに関連した幅152を有し、この幅は、スポットイオンビーム112の断面形状よりも大きい。走査されたイオンビーム150の幅152は、例えば、加工物122の幅(図示略)またはこの幅よりも大きい幅とすることができる。走査されたイオンビームの幅152は、変更することができ、また、ビーム走査システム128の下流に在るパラライザー130を介して集束される。さらに、走査頂点148は、正規ビーム経路113における点で規定することができ、この経路から各ビームレット151が、走査要素136によって走査された後で現れる。
【0035】
本発明によれば、イオン注入システムは、第2モードにおいて、一般的に走査されずに、ビーム走査システム128を介してスポットイオンビーム112が選択的に通過するように構成される。このスポットイオンビームは、図2に示すように、正規のビーム経路113にのみ従う。
【0036】
従って、イオン注入システム100の作動における第2モードでは、電源140を介して走査プレート144、144Bに電圧が印加されない。この結果、ビーム走査システムを介して移動するスポットイオンビーム112は、パラライザー130の集束特性によって与えられるビーム移送の向上からの恩恵を受けている間、妨げられないし又は変化しない。双極子磁石及び同等品等の集束要素は、イオンビーム112の伝播方向に交差する両方向に、集束特性を有するように設計することができる。ここで、この集束動作は、ビームサイズの拡張とは反対に作用し、真空エンクロージャー、開口等のビームラインにおける制限により、イオンビームの良好な移送を与える。
【0037】
別の実例によれば、イオンビーム112(例えば、図1に図示された第1モードの場合の走査されたイオンビーム150、または図2に示す第2モードの場合における走査されないスポットイオンビーム)が、パラライザ−130を通過する。このパラライザー130は、例えば、略台形状で互いに対向配置された2つの双極子磁石(ダイポール)153A,153Bを含む。この双極子磁石153A、153Bは、イオンビーム112(例えば、走査されるイオンビーム150又は走査されないスポットイオンビーム)が略S字形状に曲がるように構成されている。
別の言い方では、双極子磁石153A、153Bは、等しい角度で対抗する曲げ方向を有し、かつ走査頂点148、例えば、ほぼ平行に発生する走査されるイオンビーム150の発散性ビームレットを作るように作動可能である。2つの対称的な双極子磁石153A、153Bは、さらに、2006年9月29日に出願された米国特許出願番号第11/540,064号に記載されており、この内容は、その全てが参考としてここに包含される。
【0038】
2つの対称的な双極子磁石153A、153Bの使用は、一般的に、ビームレット151の経路長さ及び早くかつより高い次元での集束特性の両方によって、走査されるイオンビーム150にわたる当方性または空間的に均一な特性を可能にする。
さらに、質量分析器126の動作と同じように、S字形状の曲げは、スポットイオンビーム112及び走査されるイオンビーム150を浄化するのに役立つ。中性粒子および/または他の汚染物質(例えば、質量分析器120のビーム下流に入る環境粒子)の軌道(図示略)は、双極子磁石153A、153Bによって影響をほとんど受けない。この結果、これらの中性粒子のいくつかは、曲げられないか(インジェクターに関して)、又は非常にわずかに曲げられるだけであり、そのため、加工物122に衝突しない。
【0039】
パラライザー130は、例えば、注入パラメータ(例えば、注入角度)が、加工物122に対して均一になるように、走査されるイオンビーム150のビームレット151を、平行にさせる。
図3を参照すると、双極子磁石153A、153Bの各々は、イオンビーム112の元の軌道(例えば、正規ビーム経路113)に対して平行となる方向156に対して、ビームレット151を角度θだけ曲げ、その結果、ビームを略S字形状にさせることが分かる。
【0040】
1つの例では、θ154は、約30°〜約40°の間の角度であるが、約20°以上の角度にすることもできる。とにかく、2つの双極子磁石153A、153Bは、互いに鏡像関係にあるので、それぞれのビームレット151は、図1に示すように、ほぼ等しい長さ158を有する。代わりに、各ビームレット151は、一定の経路長さを有するものと言うこともできる。双極子磁石の対称特性は、注入パラメータ(例えば、注入角度)を均一にすることを容易にする。ビームレット151の長さ158は、双極子磁石153A、153Bにおける比較的小さい曲げ角度を用いることによって比較的短くなる。これは、少なくとも、イオン注入システム100の全床面積を比較的コンパクトに維持するという利点を有する。さらに、双極子磁石153A、153Bは、一般的に図3に示された例示のように、ギャップ160によって分離されている。このギャップは、例えば、それぞれのビームレット151の等しいドリフト長さを与え、また、双極子磁石の磁極ギャップを2倍の距離(例えば、約100mmから約200mm)だけ、双極子磁石153A、153Bを分離することができる。
【0041】
双極子磁石153A、153Bの各々は、さらに、複数のカスピング(cusping)磁石(図示略)を含み、図1及び図2の通過するイオンビーム112を包含および/または制御するの役立つ。このカスピング磁石は、例えば、ベンベニステ(Benveniste)他に付与された米国特許第6,104,329号明細書に記載されているように作動する。この明細書の全体は、参照することにより、ここに包含される。
【0042】
カスピング磁石は、一般的に、自己中和化または他の手段によって発生した電子を閉じ込めるためにビームラインエンクロージャーに接近した静磁界を導く。その結果、このような電子が、カスプ磁界に垂直な方向に動くことを禁止される。さらに、カスピング磁石は、電子を閉じ込めて、電子が、この磁界に沿って動くこと、およびエンクロージャーの磁極片または壁に到達することを難しくする。このように、自己中和化に対して電子が有効に寄与することが高められる。双極子磁石153A、153Bの回りのカスピング磁石の種々の方向、大きさ、スペースおよび/または数は、ここに開示した範囲内に入るものと考えられる。
【0043】
図1を再び参照すると、1つ以上の減速ステージ(図示略)を、パラライザー130の下流に配置することができる。イオン注入システム100におけるこの点まで、イオンビーム112は、比較的高エネルギーレベルで移動し、ビーム発散に対する傾向を和らげる。例えば、ビーム発散の傾向は、分析開口134の位置において、ビーム密度が上昇すると高まる。イオン引出アセンブリ118、走査要素136、及び集束/操縦要素(図示略)、と同様に、減速ステージは、電源(図示略)に接続された1つ以上の電極(図示略)を含み、この減速ステージの1つ以上の電極は、イオンビーム112(例えば、走査されるイオンビーム)を選択的に減速するように作動可能である。例えば、走査されるイオンビーム150の減速は、イオン注入システム100の第1作動モードにおいて、特に有益である。イオンビーム112は、ビーム走査システムによってスキャンされる前に高エネルギーで移動することができ、走査されるイオンビーム150のエネルギーは、第1作動範囲内のイオン注入のために加工物122に衝突する前に、低くすることができる。
【0044】
1つの実例によれば、減速ステージ(図示略)は、イオンビーム112から離れた中性粒子及び不必要なエネルギーの他のイオンを選択的にフィルタ処理するように作動可能である。そして、所望のエネルギーのイオン種が、イオンビームの所望経路に従って行き、さらに、減速ステージを介して選択的に減速される。
【0045】
本発明の別の構成によれば、イオン注入システム100の第2作動モードにおいて、減速ステージ(図示略)の複数の電極に電圧が印加されず、これにより、スポットイオンビーム112が、一般的に、影響を受けないで減速ステージを通過することができる。
本発明の例では、2つの電極120Aと120B、及び電極144Aと144Bは、それぞれ、イオン引出アセンブリ1158と走査要素136に示されている。しかし、引出アセンブリ118、走査要素136、集束/操縦要素(図示略)、及び減速ステージ(図示略)は、適切な数の電極を含み、イオンを加速および/または減速すると共に、イオンビーム112を、集束、曲げ、偏向、収斂、発散、走査、平行化、および/または除去することを含んでいる。このことは、ラスメル(Rathmell)他に付与された米国特許第6,777,696号明細書に記載され、その全体が、参考としてここに包含される。
【0046】
さらに、集束/操縦要素は、静電偏向プレート(例えば、1対以上のプレート)を含むと共に、イオンビームを選択的に集束させるために、アインゼル(Einzel)レンズ、四極子、および/または他の集束要素を含むことができる。
【0047】
図1および図2に示すエンドステーション106は、例えば、シリアル型エンドステーションからなり、単一の加工物122が、イオン注入のために、加工物走査システム167を介してイオンビーム112の経路を通って移動する。代わりに、エンドステーション106は、バッチ型エンドステーションからなり、複数の加工物(図示略)が回転ディスク(図示略)上に置かれてイオンビーム112が通過するようになっている。好ましい実施形態では、加工物走査システム167は、単一の加工物122を支持するように構成され、さらに、単一の加工物を一次元または二次元でまたは、イオンビームが通過するイオンビーム径路に対してほぼ直交する方向に機械的に走査する。加工物走査システム167は、例えば、ベリリアン(Berrian)に付与された米国特許第7,135,691号明細書に記載された二次元走査システムを含むことができる。このシステムの内容は、その全体を参考としてここに包含される。代わりに、任意の加工物走査システム167が、イオンビーム112の経路を通って、本発明の範囲内に入ると考えられるイオンビーム径路113にほぼ直交する1つ以上の方向に、加工物を移動させることができる。
【0048】
例えば、第1作動範囲に関連した第1作動モードにおいて、加工物走査システム167は、イオンビーム112が、走査要素136を介して走査されながら、第1方向(例えば、Y方向すなわち緩やかな走査方向)に機械的に移動できる(これは、走査されるイオンビーム150を形成する。)。また、加工物全体にわたってイオンを注入するために、加工物が第2方向に(例えば、X方向すなわち早い走査方向)に機械的に移動できる。従って、第1モードでは、イオン注入システム100は、機械的に制限された方法で作動することができる。以下に記述するように、中間から低いドーズ量のイオン注入は、実質的に高い加工物の処理能力を達成することができ、また、走査されるイオンビーム150を通過するように加工物122を移動させるために、加工物の処理能力の上限は、加工物走査システム167の機械的能力によって主に支配される。
【0049】
本発明の他の例示的な構成によれば、パラライザー130は、省略することができ、また、加工物走査システム167は、イオン注入システム100が第1モードで作動するときY軸回りに加工物122を回転されることができる。この点は、フェララ(Ferrara)他に付与された米国特許第6,992,310号に記載されており、この内容は、ここに参考として包含される。加工物122をY軸回りに回転させることによって、加工物上に、ほぼ一定の注入角度を達成することができる。
【0050】
第1作動範囲に関連した第1作動モードでは、例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、イオンビームは、加工物に対して走査される。図4(a)では、例えば、加工物は、Y方向(矢印168で示す)に移動することが示され、一方、イオンビーム112は、X方向(矢印169で示す)に走査される。従って、図4(b)で示すように、イオンビーム112は、加工物122を横切るストライプ171を形成する軌道170を進み、その結果、イオンビームが移動する加工物に対して走査される。各ストライプ171の幅172(図4(a)に示す)は、例えば、イオンビーム112の大きさに関連する。従って、イオンビーム112は、加工物を横切って走査され、そして、正しいイオンドーズ量を維持するために、加工物から離れる。ここで、1つ以上のビーム監視装置173が加工物の周囲に配置され、ビーム経路の拡張部174でイオンビームをリアルタイムで監視することができる。この結果、図4(b)に示すように、イオンビーム112によって走査される全体の面積175は、加工物の面積176よりも大きい。それゆえ、イオンビームは、加工物からはみ出ているかなりの時間浪費されることになる(例えば、イオンビームが加工物に衝突しないとき)。
【0051】
加工物122上にある時間と加工物からはみ出た時間との比は、イオンビーム利用率Uを定める。代わりに、イオンビーム利用率Uは、注入処理中のイオン注入システムによって配給されるドーパント量に対する加工物内に注入される所望のドーパント量として、一定のイオンビーム電流Iで定めることもできる。
【0052】
所定の加工物に中に注入されるべきドーパントの所望ドーズ量D(単位正方形あたり)を用いて、イオン注入装置における加工物に対する注入時間t注入は、次式で表される。
【0053】
注入=D×A/q/I/U (1)
ここで、Aは、イオンビームによって注入されるべき加工物の全面積であり、qは、イオンの電荷である。イオンビームの幅に従って、利用率は、第1作動モードにおいて、略80%〜20%以下までの範囲とすることができる。さらに、イオン注入装置の連続作動と共に、シリアル形式で多数の加工物にイオンを注入するとき、加工物あたりの全体の処理能力又は善処理時間t全体は、次式で表される。
【0054】
全体=t注入+tハンドリング
ここで、t注入は、上述したように、各加工物にイオンを注入する時間であり、また、tハンドリングは、イオン注入装置の出し入れする加工物の移送に関連した取扱時間である。例えば、所定の加工物に対する注入時間t注入が短い(例えば、取扱時間tハンドリングよりもかなり短い)場合、そのとき、注入装置の処理能力は、主に取扱時間に支配され、イオン注入装置は、機械的に制限された処理能力の方法又はモードで作動される。
【0055】
第2作動範囲に関連した第2作動モードでは、また別の例に従って、加工物走査システム167は、第1方向(Y軸すなわち遅い走査方向)と第2方向(X軸すなわち早い走査方向)の両方において、加工物を機械的に平行移動するように構成されている。このとき、図2に示すように、イオンビーム122は、より高いドーズ量、より高い電流、および/またはより高いエネルギーの注入のために、走査されないスポットイオンビームのままである。従って、第2モードでは、イオン注入システム100は、以下で記載するように、注入制限された処理能力で作動することができる。そして、ドーズ量、電流、および/または注入のエネルギーは、主にターミナル102、ビームガイド124、及び質量分析器126の能力によって支配される。第2モードにおける加工物122の処理能力は、概略、ビームラインのビーム電流性能によって制限される。
【0056】
図5(a)および図5(b)に示すように、第2作動モードにおいて、例えば、加工物122は、X方向(矢印177で示す)及びY方向(矢印178で示す)の両方で固定のイオンビーム112を通過して走査される。ここで、利用率Uは、イオンビームが加工物上で費やされる時間対全体の注入時間によって定められる。リアルタイム電流監視装置(図示略)が、例えば、加工物の背後に配置され、その結果、走査幅は、ビームの大きさによって与えられる。矢印177,178が、直線移動、曲線移動、として示され、これらは、葉音発明の範囲内に入るものと考えられ、X方向に加工物122の振り子型の並進移動となる。
【0057】
加工物122の二次元機械的走査の速度は、電気的及び時期的な走査システムの速度よりも、一般的に遅い。従って、注入時間が長いとき(例えば、所望の注入ドーズ量が高いとき)、加工物を機械的に走査することは有益である。このような場合、イオンビーム112が加工物の外にある間の時間は、加工物の転換点領域179(加工物軌跡の逆転方向に関連した時間)において、高加速を維持することによって、比較的短く(例えば、図5(b)に示すように)することができる。この結果、第1モード(例えば、100%の利用率に近い)で達成する場合よりもより高い利用率を達成することができる。それゆえ、ビーム/加工物の移動軌跡の相対面積が最小化される。このため、第2作動モードでは、加工物122の処理能力は、加工物の取扱時間tハンドリングよりも一般的により大きい注入時間t注入で主に定められる。
式(1)に見られるように、より高い利用率は、より短い注入時間t注入を導きイオン注入装置に対する改良された処理能力及び生産性を導くことになる。
【0058】
また別の実例によれば、図1及び図2に示すように、線量測定システム182が、注入動作の前に測定値を較正するために、加工物122近くのエンドステーション106内に設けられる。1つの例では、較正中、イオンビーム112は、線量測定システム182を通過する。この線量測定システムは、プロファイラー経路186に沿って平行移動するように作動可能な1つ以上のプロファイラー184を含む。これにより、イオンビームの1つ以上の特性を測定する(例えば、走査されるイオンビームおよび/またはスポットイオンビーム112のプロファイルを測定するように作動可能である。)。このプロファイラー184は、例えば、ファラデーカップ等の電流密度センサを含み、イオンビーム112の電流密度を測定するように作動できる。測定された電流密度は、例えば、作動連結されたシステムコントローラ188を介して、イオン注入システムの制御のために利用することができる。
【0059】
このシステムコントローラ188は、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又は他の制御システムを含み、このコントローラが、ターミナル102、質量分析器126、ビーム走査システム128、集束/操縦要素(図示略)、走査要素136、パラライザー130、減速ステージ(図示略)、及び加工物走査システム167の1つ又はそれ以上を制御するように作動可能である。
【0060】
1つの例では、システムコントローラ188は、線量測定システム182からの測定値を受け取るように構成され、そして、受け取った測定値に基づいて加工物122へのイオン注入量を制御する。システムコントローラ188は、例えば、イオン発生室114及び引き出しアセンブリ118の制御を介してイオンビーム112の形成を制御するように作動可能である。さらに、システムコントローラ188は、電源140を介して走査要素136を制御するように作動可能であり、イオンビーム112が、所望の作動範囲(例えば、イオン注入システム100の作動の第1モード又は第2モード)に基づいて、選択的に走査される。
【0061】
例えば、所望の注入ドーズ量、電流、および/またはエネルギーに基づいて、システムコントローラ188は、第1モードでイオン注入システム100を作動するように構成される。このため、イオンビーム112は、ビーム走査システム128によってX方向に走査され、また、システムコントローラが加工物走査システム167を制御して、加工物をY方向に並進させる。ここで、走査されるイオンビーム150のイオンを用いて加工物にイオン注入する。
【0062】
第2モードでは、コントローラ188は、イオンビーム走査システム128を介して、ほぼ変更されない、即ち、走査されないイオンビーム112を通過させるように構成されている。このコントローラは、さらに、加工物走査システム167を制御するように構成されており、加工物122は、イオンビーム径路113に沿って固定のスポットイオンビームを移動しながら、X方向及びY方向の両方に平行移動する。
【0063】
従って、イオン注入システム100は、システムコントローラ188を介して調整することができ、この結果、線量測定システム182によって与えられる1つ上の測定された特性に基づくと共に、イオン注入の所望のドーズ量、電流、および/またはエネルギーに基づいて、所望のイオン注入を容易にする。
【0064】
1つの例によれば、イオンビーム112は、所定のビーム調整パラメータ(例えば、所定のビーム調整パラメータは、システムコントローラ188内にストア/ロードされる)に従って初期的に確立される。そして、線量測定システム182からのフィードバックに基づいて、パラライザー130が、例えば、注入角度を変えるためにS曲線の角度を変えるように調整される。同様に、走査されるイオンビーム150のエネルギーレベルは、例えば、イオン引出アセンブリ118に設けた電極120A、120Bおよび減速ステージ(図示略)内の電極に加えられるバイアスを制御することによって、接合深さを調整することができる。別の例では、質量分析器126において発生する磁界の強さ及び方向が、イオンビーム112の電荷質量比を変える界磁巻線を流れる電流量を調整することによって、さらに制御される。注入角度は、操縦要素(図示略)に印加される電圧を調整することによってさらに制御される。
【0065】
本発明の別の構成にしたがって、図6において、加工物内に種々の作動範囲のイオンを注入するための例示的な方法200が示されている。この例示的な方法は、ここで一連の動作又は事象として図示されかつ説明されているが、本発明は、このような動作または事象の図示された順序によって制限されるものではないことに注目すべきであることを理解してほしい。このようなステップは、本発明に従って、ここで図示されかつ記載されたものとは別の他のステップおよび/または異なる順序で起こり得る。さらに、図示されたステップは、本発明に従う方法を実行するのに必要とされるものとは限らない。さらに、この方法は、図示しない他のシステムに関連するとともに、ここで図示しかつ説明したシステムに関連して実行することができることを理解してほしい。
【0066】
方法200は、動作202から開始され、図1および図2に示すイオン注入システム100等のイオン注入システムが提供される。このイオン注入システムは、複数の作動範囲において、加工物中にスポットイオンビームのイオンを注入するように構成されている。例えば、イオン注入システムは、第1モード及び第2モードで作動でき、スポットイオンビームが、第2モードでは、走査されないままである。図6の動作204では、イオンの所望のドーズ量、電流、および/またはエネルギー等の一組の所望の基準が与えられる。例えば、イオン注入の所望のドーズ量は、動作204において与えられ、この所望のドーズ量は、低いドーズ量での注入(例えば、略5×1010〜5×1014イオン/cm2)から高いドーズ量の注入(例えば、略5×1014〜1×1017イオン/cm2)までの範囲になる。所望の一組の基準は、例えば、イオンビームの利用率、処理能力の考察、生産性の考察、又は注入に関連した他の基準の1つまたはそれ以上を、さらに含むことができる。
【0067】
動作206において、スポットイオンビームは、形成されかつ質量分析され、ここで、スポットイオンビームは、略断面円形状を有し、動作204において与えられた所望の規準と関連したエネルギー及び電流を有する。動作208において、スポットイオンビームの1つ以上の特性が定量化される。例えば、動作208において、スポットイオンビームの電流および/または大きさが、図1及び図2の線量測定システム168を介して測定されまたは決定される。図6の動作210において、注入時間(例えば、加工物全体の中にイオンを注入するのに必要される時間)が決定され、この注入時間の決定は、スポットイオンビームの1つ以上の定量化された特性に基づいている。例えば、動作204において与えられた所望のドーズ量で、加工物全体を注入するための注入時間が、スポットイオンビームの定量化された電流および/または大きさに基づいて計算される。
【0068】
動作212において、注入時間は、機械的に制限された走査時間と関連した走査時間と比較される。この機械的に制限された走査時間は、例えば、第2モードにおけるイオン注入システム100の作動と関連した最小時間である。そして、図1及び図2の加工物走査システム167は、加工物122をX方向及びY方向にそれぞれ最大速度又は限界値で平行移動される。図6の動作212の比較において、動作210において決定された注入時間が機械的に制限された走査時間(比較的短い注入時間)よりも短い場合、例えば、十分なイオンビーム電流が利用可能であり、イオン注入システムが動作214における第1モードで作動しているとき、イオンビームは、図1に示すようなビーム走査システム128を介して走査される。図6の動作210において決定した注入時間が機械的に制限された走査時間(比較的長い注入時間)よりも長い場合、イオン注入システムが動作216における第2モードで作動しているとき、イオンビームは、図2に示すように、走査されないままとなり、加工物走査システム167が、加工物122をX方向及びY方向の両方向に平行移動させる。
【0069】
従って、イオン注入システム100が、第1モード又は第2モードで作動しているかどうかにかかわらす、イオンを加工物122に注入することは、動作218において実行され、所望の基準の組(例えば、所望のドーズ量)で注入がなされる。
【0070】
こうして、本発明は、複数の作動範囲において、共通の注入システムを利用しながら、イオンを注入する構造及び方法が提供される。この結果、作動範囲にかかわらず、共通の注入システムを用いて、イオン注入の所望のドーズ量、電流、および/またはエネルギー、さらに、利用率、及び生産効率を達成することができる。そして、ドーズ特定システムに関連した設備費用を低減し、また、現在のイオン注入システムの利用を増大させることができる。
【0071】
本発明は、好ましい実施形態または他の実施形態に関して図示しかつ記載してきたが、この明細書と添付された図面とを読んで理解すると、他の同業者にも同等の変更や修正を見出すことができるであろう。特に上述の構成要素(アセンブリ、装置、回路等)によって実行される種々の機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は、他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても、本発明のここで図示された例示的実施においてその機能を果たすものであれば、説明された構成要素の特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかの構成要素に相当するものと意図されている。
【0072】
更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施形態の内のただ一つに対して開示されてきたものであるが、そのような特徴は、いずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わせられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の1つの構成に従う複数の作動範囲のための共通構造を有する、例示的なイオン注入システムを説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の1つの構成に従う複数の作動範囲のための共通構造を有する、例示的なイオン注入システムを説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の他の構成に従う例示的なパラライザーを示す概略図である。
【図4】4(a)、(b)は、本発明の別の構成に従うイオン注入の作動における例示的な第1モードを示す図である。
【図5】5(a)、(b)は、本発明の別の構成に従うイオン注入の作動における例示的な第2モードを示す図である。
【図6】本発明の更なる例示的なに従う共通のイオン注入システムを用いて、複数の作動範囲で加工物にイオンを注入するための例示的な方法を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
100 イオン注入システム
108 イオン源
112 イオンビーム
122 加工物
126 質量分析器
128 ビーム走査システム
130 パラライザー
136 走査要素
151 ビームレット
167 加工物走査システム
188 システムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを発生させるために構成されたイオン源と、
イオンビームを質量分析するように構成された質量分析器と、
この質量分析器の下流に配置され、かつ、イオン注入システムが第1モードで作動するとき、イオンビームを単一のビーム走査平面に沿って走査するように構成され、前記第1モードにおいて、走査されたイオンビームを形成しており、また、イオン注入システムが第2モードで作動するとき、イオンビームが走査されないで通過するように構成され、前記第2モードにおいて、走査されないスポットイオンビームを形成する、ビーム走査システムと、
このビーム走査システムの下流に配置され、かつ、実質的に等しい長さを有する複数の平行なビームレットの中に、走査されたイオンビームを同時に平行化しながら、汚染物質がフィルタ処理される、パラライザーと、
前記パラライザーの下流に配置され、かつ、走査されたイオンビーム又はスポットイオンビームを通過して、1つ以上の方向に加工物を選択的に平行移動するように構成される加工物走査システムとを含み、
前記平行移動が、イオン注入システムに基づいて、前記第1モードまたは前記第2モードの各々において作動されることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
前記パラライザーは、少なくとも一対の双極子磁石を含み、かつ、前記ビーム走査システムが第1モードで作動するとき、略S字形状に走査されたイオンビームを選択的に曲げるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項3】
各双極子磁石は、台形状でかつ互いにミラー配置されていることを特徴とする請求項2記載のイオン注入システム。
【請求項4】
各双極子磁石は、走査されたイオンビームを約20°以上の角度に曲げることを特徴とする請求項2記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記パラライザーは、前記ビーム走査システムが第2モードで作動するとき、走査されないスポットイオンビームを略S字形状に選択的に曲げるように構成されていることを特徴とする請求項4記載のイオン注入システム。
【請求項6】
イオン源、質量分析器、ビーム走査システム、パラライザー、及び加工物走査システムに接続して作動し、かつ、少なくとも部分的に、加工物に注入される所望のイオンドーズ量に基づいて、前記イオン源、質量分析器、ビーム走査システム、パラライザー、及び加工物走査システムの少なくとも1つの作動を制御するように構成されるコントローラをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記コントローラは、加工物に注入される所望のイオンドーズ量が、概略5×1010〜5×1014イオン/cm2の範囲にあるとき、前記ビーム走査システムを前記第1モードで作動させるように構成され、また、加工物に注入される所望のイオンドーズ量が、概略5×1014〜1×1017イオン/cm2の範囲にあるとき、前記ビーム走査システムを前記第2モードで作動させるように構成されることを特徴とする請求項6記載のイオン注入システム。
【請求項8】
さらに、イオンビームの1つ以上の特性を測定するように構成された測定構成要素を含み、
前記コントローラは、前記測定構成要素に接続されて作動し、かつ、少なくとも部分的に、イオンビームの1つ以上の測定された特性に基づいて、前記イオン源、質量分析器、ビーム走査システム、パラライザー、及び加工物走査システムの少なくとも1つの作動を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記パラライザーと前記加工物走査システムの間に配置され、かつ、イオンビームを選択的に減速するように構成される減速フィルタをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記質量分析器と前記ビーム走査システムとの間に配置され、かつ、イオンビームを選択的に前記ビーム走査システムの走査頂点に集束及び方向付ける、集束/操縦構成要素を含むことを特徴とする請求項1記載のイオン注入システム。
【請求項11】
イオン注入システムにおいて、イオンを加工物に注入する方法であって、
イオンを加工物に注入するための所望の基準組を設け、
前記所望の基準組に基づいて、断面楕円形状のスポットイオンビームを形成し、
前記スポットイオンビームの1つ以上の特性を定量化し、
前記スポットイオンビームの1つ以上の定量化した特性に基づく注入時間を決定する、各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記所望の基準組は、加工物に注入すべきイオンの所望のドーズ量、電流、及びエネルギーの1つ以上を含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記スポットイオンビームの1つ以上の特性は、前記所望の基準組に関連した前記スポットイオンビームの電流、エネルギー、及び大きさの1つ以上を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
機械的に制限された走査時間は、第2モードで作動するイオン注入システムに関連した最小時間であり、加工物は、それぞれの最大速度又は限界において、二次元で平行移動されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記イオン注入システムが、第1モードで作動するとき、走査されたイオンビームを平行化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
走査されたイオンビームを平行化する工程は、略S字形状に走査されたイオンビームを曲げ、かつほぼ等しい長さを有する複数の平行ビームレットの中に走査されたイオンビームを共に平行化しながら、汚染物質が取り除かれる各ステップを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記スポットイオンビームは、イオン注入システムが第2モードで作動するとき、略S字形状に曲げられることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項18】
イオンビームを発生させるために構成されたイオン源と、
イオンビームを質量分析するように構成された質量分析器と、
この質量分析器の下流に配置され、かつ、イオン注入システムが第1モードで作動するとき、イオンビームを単一のビーム走査平面に沿って走査するように構成され、前記第1モードにおいて、走査されたイオンビームを形成しており、また、イオン注入システムが第2モードで作動するとき、イオンビームが走査されないで通過するように構成され、前記第2モードにおいて、走査されないスポットイオンビームを形成する、ビーム走査システムと、
このビーム走査システムの下流に配置され、かつ、第1、第2のそれぞれのモードにおいて作動する前記イオンビームシステムに基づいて、走査されたイオンビーム又はスポットイオンビームを通過して、1つ以上の方向に加工物を選択的に平行移動するように構成されている、加工物走査システムと、を含むことを特徴とするイオン注入システム。
【請求項19】
さらに、前記ビーム走査システムの下流に配置され、かつ、イオン注入システムが第1モードで作動するとき、略S字形状に走査されたイオンビームを選択的に曲げるように構成され、さらに、実質的に等しい長さを有する複数の平行なビームレットの中で、前記走査されたイオンビームを同時に平行化しながら、汚染物質がフィルタ処理される、パラライザーをさらに含むことを特徴とする請求項18記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記加工物走査システムは、さらに、前記第1モードまたは前記第2モードの各々において、作動するイオン注入システムに基づいて、1つ以上の軸回りに前記加工物を回転させるように構成されていることを特徴とする請求項18記載のイオン注入システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−38031(P2009−38031A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198062(P2008−198062)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500266634)アクセリス テクノロジーズ インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】