説明

ハイブリッド自動車

【課題】エンジンの運転に起因する騒音や振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域を回避した移行動作ラインをより適正に設定する。
【解決手段】要求パワーPe*の属する所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていないときには(S130,S132)、燃費動作ラインと要求パワーPe*とに基づく運転ポイントでのエンジンの運転時におけるエンジンのトルク変動ΔTeが大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインLnv[Rp]を設定する(S160〜S180)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、エンジンと、第1モータと、車軸に連結された駆動軸とエンジンの出力軸と第1モータの回転軸とに接続されたプラネタリギヤと、駆動軸に回転軸が接続された第2モータと、第1モータおよび第2モータと電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、第1モータと、エンジンと第1モータと車軸に連結された駆動軸とに接続された動力分配統合機構と、減速ギヤを介して駆動軸に接続された第2モータと、第1モータや第2モータと電力をやりとりするバッテリとを備え、減速ギヤなどのケースに取り付けられた振動センサからの振動レベルが閾値以上のときや、エンジンルームに取り付けられた騒音センサからの騒音レベルが閾値以上のときに、そのときのエンジンの運転ポイントが振動異音領域に含まれるよう振動異音領域の境界となる下限トルクとしてのトルク一定ラインTlineや上限回転数としての回転数一定ラインNlineを変更して振動異音領域を学習するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、こうした処理により、車両の個体差や経年変化に応じた振動異音領域を用いて制御できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−221896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド自動車では、振動センサや騒音センサを設ける必要がある。このため、部品点数の削減などを図るために、これらのセンサによる検出値を用いずに、エンジンの運転に起因する騒音や振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域をより適正に設定できるようにすることが望まれる。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、エンジンの運転に起因する騒音や振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域を回避した移行動作ラインをより適正に設定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
エンジンと、第1モータと、車軸に連結された駆動軸と前記エンジンの出力軸と前記第1モータの回転軸とに接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に回転軸が接続された第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータと電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記エンジンの運転効率を優先する燃費動作ラインのうち前記エンジンの運転に起因する騒音または振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域内の部分を該騒音振動領域外に移行させた移行動作ラインと、前記エンジンから出力すべき要求パワーと、に基づく運転ポイントで前記エンジンが運転されながら走行するよう前記エンジンと前記第1モータと前記第2モータとを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、前記燃費動作ラインと前記要求パワーとに基づく運転ポイントでの前記エンジンの運転時における該エンジンのトルク変動が大きいほど前記燃費動作ラインから離れる傾向に前記移行動作ラインを設定する手段である、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、エンジンの運転効率を優先する燃費動作ラインのうちエンジンの運転に起因する騒音または振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域内の部分を騒音振動領域外に移行させた移行動作ラインと、エンジンから出力すべき要求パワーと、に基づく運転ポイントでエンジンが運転されながら走行するようエンジンと第1モータと第2モータとを制御するものにおいて、エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、エンジンの運転効率を優先する燃費動作ラインとエンジンから出力すべき要求パワーとに基づく運転ポイントでのエンジンの運転時におけるエンジンのトルク変動が大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインを設定する。これにより、エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、騒音センサや振動センサなどを用いずに、エンジンの運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動を乗員に違和感を与えない程度に抑制可能で且つ燃費動作ラインから必要以上に離れない(エンジンの運転効率が必要以上に低下しない)ように移行動作ラインを設定することができる。即ち、エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、移行動作ラインをより適正に設定することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記エンジンの複数の運転領域のうち前記要求パワーの属する所属運転領域についての前記移行動作ラインが設定されていないときには、前記燃費動作ラインと前記要求パワーとに基づく運転ポイントで前記エンジンが運転されながら走行するよう制御し、そのときの前記エンジンのトルク変動が大きいほど前記燃費動作ラインから離れる傾向に前記所属運転領域についての前記移行動作ラインを設定する手段である、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記エンジンのトルク変動を用いて該トルク変動のレベルを決定し、該決定したトルク変動のレベルが高いほど前記燃費動作ラインから離れる傾向に前記移行動作ラインを設定する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド自動車において、前記エンジンの複数の運転領域は、前記要求パワーについての複数の領域,回転数およびトルクについての複数の領域のいずれかである、ものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、出荷時,イグニッションオフ時,前記エンジンの部品交換時の少なくとも一つのときに、前記エンジンの複数の運転領域のそれぞれについての前記移行動作ラインをリセットする手段である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のHVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】燃費動作ラインとNV動作ラインとの一例を示す説明図である。
【図5】燃費動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子とを示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】所属パワー領域がパワー領域Rp2のとき(要求パワーPe*が所定値Pe1以上で所定値Pe2未満のとき)に所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定する様子を示す説明図である。
【図8】要求パワーPe*とNV動作ラインLnv[Rp]とに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して複数のピニオンギヤ33を連結したキャリア34が接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62とギヤ機構60とを介して連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aにリングギヤ32が接続されたプラネタリギヤ30と、例えば周知の同期発電電動機として構成されてプラネタリギヤ30のサンギヤ31に回転子が接続されたモータMG1と、例えば周知の同期発電電動機として構成されて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して回転子が接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42を制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
【0016】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサからの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサからの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブや排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサからのカムポジションθca,スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットルポジションTP,吸気管に取り付けられたエアフローメータからの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサからの吸気温Ta,排気系に取り付けられた空燃比センサからの空燃比AF,同じく排気系に取り付けられた酸素センサからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されており、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁への駆動信号やスロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号,吸気バルブの開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0017】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0018】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0019】
HVECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に、処理プログラムを記憶するROM74やデータを一時的に記憶するRAM76,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0020】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、実施例のHVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
駆動制御ルーチンが実行されると、HVECU70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0023】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除すること(Nr=Nm2/Gr)によって求めたりすることができる。
【0024】
続いて、要求パワーPe*を用いて、複数のパワー領域Rp1〜Rp3から要求パワーPe*の属する所属パワー領域を決定する(ステップS120)。ここで、複数のパワー領域Rp1〜Rp3は、それぞれ、要求パワーPe*が所定値Pe1未満の領域,要求パワーPe*が所定値Pe1以上で所定値Pe2(>Pe1)未満の領域,要求パワーPe*が所定値Pe2以上の領域とするものとした。なお、パワー領域の数は、3つに限定されるものではなく、2つであっても構わないし、4つ以上であっても構わない。
【0025】
そして、決定した所属パワー領域についてのNV(ノイズ・バイブレーション)動作ラインLnv[Rp]が設定されているか否かを判定する(ステップS130,S132)。ここで、[]内の変数Rpは、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のうち所属パワー領域に決定されたパワー領域を示す。また、NV動作ラインは、エンジン22を効率よく運転する(エンジン22の運転効率の向上を図る)ための回転数とトルクとの関係として定められた動作ライン(以下、燃費動作ラインという)のうちエンジン22の運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域(低回転数高トルクの領域)内の部分を騒音振動領域外(高回転数低トルク側)に移行させた動作ラインである。燃費動作ラインとNV動作ラインとの一例を図4に示す。図4では、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp](実施例で用いるNV動作ライン)ではなく、一般的なNV動作ラインを図示した。なお、実施例では、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてのNV動作ラインLnv[Rp]は、イグニッションオフ時にリセットする(設定されていない状態とする)ものとした。したがって、複数のパワー領域Rp1〜Rp3は、それぞれ、イグニッションオン後に初めて所属パワー領域に決定されたときには、そのパワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]は設定されていないと判定されることになる。
【0026】
ステップS130,S132で所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]は設定されていないと判定されたときには、要求パワーPe*と燃費動作ラインとに基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*を設定してエンジンECU24に送信する(ステップS140)。燃費動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子とを図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とは、燃費動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。以下、こうして設定した運転ポイントを燃費運転ポイントという。また、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。
【0027】
続いて、所属パワー領域についてのエンジン22のトルク変動ΔTeを取得可能か否かを判定する(ステップS150)。いま、燃費運転ポイントでエンジン22を運転するときを考えているから、エンジン22のトルク変動ΔTeは、実施例では、そのときのエンジン22の2回転(1サイクル)におけるエンジン22のトルクの最大値と最小値との差分の所定回数(例えば、数回〜十数回程度など)や所定時間(例えば、数百ミリ秒〜数秒程度など)における平均値や中央値などを用いるものとした。したがって、ステップS150の判定は、燃費運転ポイントでのエンジン22の運転を開始してからエンジン22のトルク変動ΔTeの取得までに要するエンジン22のサイクルや時間が経過したか否かを判定する処理となる。
【0028】
ステップS150で所属パワー領域についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]を取得可能でないと判定されたときには、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2とプラネタリギヤ30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算したモータMG1の目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS200)。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0030】
ここで、式(1)は、プラネタリギヤ30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0031】
そして、要求トルクTr*にモータMG1のトルク指令Tm1*をプラネタリギヤ30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS210)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で除することによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(4)および式(5)により計算し(ステップS220)、設定した仮トルクTm2tmpを式(6)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS230)。ここで、式(6)は、図6の共線図から容易に導くことができる。
【0032】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (6)
【0033】
そして、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0034】
こうした制御により、燃費運転ポイントでエンジン22を運転して(エンジン22を効率よく運転して)エンジン22から要求パワーPe*を出力しながらバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。
【0035】
ステップS150で所属パワー領域についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]を取得可能であると判定されたときには、所属パワー領域についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]を取得する(ステップS160)。ここで、エンジン22のトルク変動ΔTeは、上述したように、エンジン22の2回転(1サイクル)におけるエンジン22のトルクの最大値と最小値との差分の所定回数(例えば、数回〜十数回程度など)や所定時間(例えば、数百ミリ秒〜数秒程度など)における平均値や中央値などを用いるものとした。なお、エンジン22のトルクとしては、エンジン22から出力されていると推定されるトルク(推定トルク)Teestを用いることができる。この推定トルクTeestは、例えば、モータMG1のトルク指令Tm1*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとを用いて次式(7)により計算したり、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2とプラネタリギヤ30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて式(8)によりキャリア34の回転数Ncを計算すると共に計算したキャリア34の回転数Ncをエンジン22の回転数Neから減じて得られる値を積分して式(9)によりダンパ28のねじれ角θdを計算してこのダンパ28のねじれ角θdにダンパ28のバネ定数Kdを乗じることによって計算したりすることができる。式(7)および式(8)は、図6の共線図から容易に導くことができる。また、ダンパ28のねじれ角θdを用いて推定トルクTeestを計算するのは、エンジン22側からキャリア34側に作用するトルクは基本的にはダンパ28のねじれに応じてキャリア34側に作用するトルクに相当すると考えられる、との理由に基づく。
【0036】
Teest=-Tm1*・(1+ρ)/ρ (7)
Nc=(ρ・Nm1+Nm2/Gr)/(1+ρ) (8)
θd=2π・∫(Ne-Nc)dt (9)
【0037】
こうして所属パワー領域についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]を取得すると、取得したエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]を用いてトルク変動レベルLt[Rp]を決定する(ステップS170)。ここで、トルク変動レベルLt[Rp]は、エンジン22のトルク変動ΔTe[Rp]が所定値ΔTe1未満のときにはレベル0,トルク変動ΔTe[Rp]が所定値ΔTe1以上で所定値ΔTe2(>ΔTe1)未満のときにはレベル1,トルク変動ΔTe[Rp]が所定値ΔTe2以上で所定値ΔTe3(>ΔTe2)のときにはレベル2,トルク変動ΔTe[Rp]が所定値ΔTe3以上で所定値ΔTe4(>ΔTe3)のときにはレベル3と4段階で設定するものとした。閾値ΔTe1は、エンジン22の運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動が乗員に違和感を与え得る下限値を用いるものとした。したがって、燃費動作ラインと要求パワーPe*とに基づく運転ポイントが騒音振動領域(低回転数高トルクの領域)内のときには、通常、トルク変動レベルLt[Rp]はレベル1〜3となる。なお、トルク変動レベルLt[Rp]の段階は、レベル0を除いて3段階(レベル1〜3)に限定されるものではなく、2段階であっても構わないし、4段階以上であっても構わない。
【0038】
そして、決定したトルク変動レベルLt[Rp]を用いてNV動作ラインLnv[Rp]を設定し(ステップS180)、ステップS200〜S240の処理を実行して本ルーチンを終了する。NV動作ラインLnv[Rp]は、実施例では、トルク変動レベルLt[Rp]とNV動作ラインLnvとの関係を予め定めてROM74に記憶しておき、トルク変動レベルLt[Rp]が与えられると記憶した関係から対応する動作ラインLnv[Rp]を導出して設定するものとした。図7は、所属パワー領域がパワー領域Rp2のとき(要求パワーPe*が所定値Pe1以上で所定値Pe2未満のとき)に所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定する様子を示す説明図である。なお、図7では、この設定に関する部分以外については点線で示した。NV動作ラインLnv[Rp]は、図示するように、トルク変動レベルLt[Rp]が高いほど燃費動作ラインから離れる傾向に設定される。これは、トルク変動レベルLt[Rp]が高いほど騒音振動領域が大きくなる傾向があり、エンジン22の運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動を乗員に違和感を与えない程度に抑制するためには、トルク変動レベルLt[Rp]が高いほどエンジン22の運転ポイントをより高回転数低トルク側に移行させる必要がある、という理由に基づく。
【0039】
こうして所属パワー領域(例えば、パワー領域Rp2)についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定すると、その情報をイグニッションオフ時までリセットしないから、次回以降に本ルーチンが実行されたときに、要求パワーPe*がそのパワー領域(例えば、パワー領域Rp2)に属するときには、ステップS130,S132で所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていると判定される。
【0040】
ステップS130,S132で所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていると判定されたときには、NV動作ラインLnv[Rp]を用いて、即ち、要求パワーPe*とNV動作ラインLnv[Rp]とに基づいて、エンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*を設定してエンジンECU24に送信し(ステップS190)、ステップS200〜S240の処理を実行して本ルーチンを終了する。即ち、あるパワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定した後に要求パワーPe*がそのパワー領域に属するときには、燃費動作ラインではなく、NV動作ラインLnv[Rp]を用いてエンジン22の運転ポイントを設定するのである。これにより、エンジン22の運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動を乗員が感じるのを抑制することができる。以下、このようにして設定した運転ポイントをNV運転ポイントという。
【0041】
図8は、要求パワーPe*とNV動作ラインLnv[Rp]とに基づいてエンジン22のNV運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。実施例では、図示するように、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてNV動作ラインLnv[Rp](Lnv[Rp1]〜Lnv[Rp3])を設定し、要求パワーPe*の属する所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]と要求パワーPe*とに基づいてエンジン22の運転ポイント(NV運転ポイント)を設定するから、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、騒音センサや振動センサなどを用いずに、エンジン22の運転に起因する騒音(例えばこもり音など)や振動を乗員に違和感を与えない程度に抑制可能で且つ燃費動作ラインから必要以上に離れない(エンジン22の運転効率が必要以上に低下しない)ように移行動作ラインLnv[Rp]を設定することができる。即ち、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、移行動作ラインLnv[Rp]をより適正に設定することができる。しかも、複数のパワー領域Rp1〜Rp3は、それぞれ、イグニッションオン後に初めて所属パワー領域に決定されたときには、NV動作ラインLnv[Rp]が設定されていないと判定され、そのパワー領域(所属パワー領域)についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定するから、エンジン22の個体差や経年変化に応じたNV動作ラインLnv[Rp]を設定することができる。
【0042】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22の複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、燃費動作ラインと要求パワーPe*とに基づく運転ポイント(燃費運転ポイント)でのエンジン22の運転時におけるエンジン22のトルク変動ΔTeが大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインLnv[Rp](Lnv[Rp1]〜Lnv[Rp3])を設定するから、エンジン22の複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、騒音センサや振動センサなどを用いずに、移行動作ラインLnv[Rp]をより適正に設定することができる。そして、こうして設定した移行動作ラインLnv[Rp]に基づく運転ポイントでエンジン22を運転することができる。
【0043】
しかも、実施例のハイブリッド自動車20によれば、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、イグニッションオン後に初めて要求パワーPe*の属する所属パワー領域に決定されたときに、そのパワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]を設定するから、エンジン22の個体差や経年変化に応じたNV動作ラインLnv[Rp]を設定することができる。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてNV動作ラインLnv[Rp]を設定するものとしたが、エンジン22の回転数NeとトルクTeとからなる複数の領域Rnt1(回転数Neが所定値Ne1未満,トルクTeが所定値Te1未満の領域),Rnt2(回転数Neが所定値Ne1以上で所定値Ne2未満,トルクTeが所定値Te1未満の領域),・・・のそれぞれについてNV動作ラインLnv[Rp]を設定するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、エンジン22のトルク変動ΔTeに応じてトルク変動レベルLt[Rp]を決定し、決定したトルク変動レベルLt[Rp]に応じてNV動作ラインLnv[Rp]を設定するものとしたが、トルク変動レベルLt[Rp]を決定せずに、エンジン22のトルク変動ΔTeに応じて直接的にNV動作ラインLnv[Rp]を設定するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてのNV動作ラインLnv[Rp]は、イグニッションオフ時にリセットする(設定されていない状態とする)ものとしたが、これに加えてまたは代えて、工場出荷時や、エンジン22に関する部品(例えば、インジェクタや、イグナイタ,エンジン22からの排気を吸気系に供給するEGR装置など)の交換時,所定期間毎(例えば、1週間や1ヶ月など)などの少なくとも一つのときにリセットするものとしてもよい。なお、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてのNV動作ラインLnv[Rp]をイグニッションオフ時にリセットしない場合、この情報を、イグニッションオフ時でもデータを保持可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリや、イグニッションの状態に拘わらず図示しない補機バッテリから電力が供給される図示しない電源用電子制御ユニットのRAMなど)に記憶する必要がある。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されているか否かを判定し、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]は設定されていないと判定されたときにはそのパワー領域(所属パワー領域)についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp],トルク変動レベルLt[Rp],NV動作ラインLnv[Rp]を順に設定し、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていると判定されたときには設定したNV動作ラインLnv[Rp]を用いてエンジン22の運転ポイントを設定するものとしたが、これに代えて、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されているか否かを判定し、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていないと判定されたときにはそのパワー領域(所属パワー領域)についてのエンジン22のトルク変動ΔTe[Rp],トルク変動レベルLt[Rp]を順に設定し、所属パワー領域についてのNV動作ラインLnv[Rp]が設定されていると判定されたときには設定したトルク変動レベルLt[Rp]を用いてNV動作ラインLnv[Rp]を設定すると共に設定したNV動作ラインLnv[Rp]を用いてエンジン22の運転ポイントを設定するものとしてもよい。なお、この場合、イグニッションオフ時や、工場出荷時,エンジン22に関する部品の交換時,所定期間毎(例えば、1週間や1ヶ月など)などの少なくとも一つのときに、複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについてのトルク変動レベルLt[Rp]をリセットするものとしてもよい。
【0048】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「第1モータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「プラネタリギヤ」に相当し、モータMG2が「第2モータ」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、NV動作ラインLnv[Rp]と要求パワーPe*とに基づく運転ポイントでエンジン22が運転されながら走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、エンジン22の複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、燃費動作ラインと要求パワーPe*とに基づく運転ポイント(燃費運転ポイント)でのエンジン22の運転時におけるエンジン22のトルク変動ΔTeが大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインLnv[Rp]を設定する、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0049】
ここで、「エンジン」としては、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22に限定されるものではなく、水素エンジンなど、如何なるタイプのエンジンであっても構わない。「第1モータ」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、如何なるタイプのモータであっても構わない。「プラネタリギヤ」としては、プラネタリギヤ30(シングルピニオン式のプラネタリギヤ)に限定されるものではなく、ダブルピニオン式のプラネタリギヤや、複数のプラネタリギヤの組み合わせによって構成されたものなど、車軸に連結された駆動軸とエンジンの出力軸と第1モータの回転軸とに接続されたものであれば如何なるタイプのプラネタリギヤであっても構わない。「第2モータ」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に回転軸が接続されたものであれば如何なるタイプのモータであっても構わない。「バッテリ」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、第1モータおよび第2モータと電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプのバッテリであっても構わない。「制御手段」としては、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットによって構成されるものなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、NV動作ラインLnv[Rp]と要求パワーPe*とに基づく運転ポイントでエンジン22が運転されながら走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、エンジン22の複数のパワー領域Rp1〜Rp3のそれぞれについて、燃費動作ラインと要求パワーPe*とに基づく運転ポイント(燃費運転ポイント)でのエンジン22の運転時におけるエンジン22のトルク変動ΔTeが大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインLnv[Rp]を設定するものに限定されるものではなく、エンジンの運転効率を優先する燃費動作ラインのうちエンジンの運転に起因する騒音または振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域内の部分を騒音振動領域外に移行させた移行動作ラインと、エンジンから出力すべき要求パワーと、に基づく運転ポイントでエンジンが運転されながら走行するようエンジンと第1モータと第2モータとを制御し、エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、燃費動作ラインと要求パワーとに基づく運転ポイントでのエンジンの運転時におけるエンジンのトルク変動が大きいほど燃費動作ラインから離れる傾向に移行動作ラインを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0050】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、第1モータと、車軸に連結された駆動軸と前記エンジンの出力軸と前記第1モータの回転軸とに接続されたプラネタリギヤと、前記駆動軸に回転軸が接続された第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータと電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記エンジンの運転効率を優先する燃費動作ラインのうち前記エンジンの運転に起因する騒音または振動が乗員に違和感を与え得る騒音振動領域内の部分を該騒音振動領域外に移行させた移行動作ラインと、前記エンジンから出力すべき要求パワーと、に基づく運転ポイントで前記エンジンが運転されながら走行するよう前記エンジンと前記第1モータと前記第2モータとを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記エンジンの複数の運転領域のそれぞれについて、前記燃費動作ラインと前記要求パワーとに基づく運転ポイントでの前記エンジンの運転時における該エンジンのトルク変動が大きいほど前記燃費動作ラインから離れる傾向に前記移行動作ラインを設定する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記エンジンの複数の運転領域のうち前記要求パワーの属する所属運転領域についての前記移行動作ラインが設定されていないときには、前記燃費動作ラインと前記要求パワーとに基づく運転ポイントで前記エンジンが運転されながら走行するよう制御し、そのときの前記エンジンのトルク変動が大きいほど前記燃費動作ラインから離れる傾向に前記所属運転領域についての前記移行動作ラインを設定する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車であって、
前記エンジンの複数の運転領域は、前記要求パワーについての複数の領域,回転数およびトルクについての複数の領域のいずれかである、
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、出荷時,イグニッションオフ時,前記エンジンの部品交換時の少なくとも一つのときに、前記エンジンの複数の運転領域のそれぞれについての前記移行動作ラインをリセットする手段である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−44291(P2013−44291A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183007(P2011−183007)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】