説明

ハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置

【課題】ハイブリッド車両のエンジン1の停止時に伝達比可変用電動機9の作動音が乗員に伝達されず、快適な運転等を可能とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置を提供する。
【解決手段】エンジン1が停止中であって車速Vsが所定車速Vth以下の場合に、ロック手段8がロック状態となるように制御する。そして、ロック状態への切替動作及びロック解除状態への切替動作は、エンジン1が動作中に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリングハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との舵角比を可変にする伝達比可変操舵装置をハイブリッド車両へ適用することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−75013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ハイブリッド車両が駆動用電動機により駆動する際には、エンジンが停止しているために、非常に騒音が小さい。そのため、特にエンジンの停止時に伝達比可変操舵装置が駆動する場合には、伝達比可変操舵装置を構成する伝達比可変用電動機の作動音が乗員に違和感として聞こえる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、ハイブリッド車両のエンジン停止時に伝達比可変用電動機の作動音が乗員に伝達されず、快適な運転等を可能とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)第1発明
第1発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記ロック手段をロック状態にする伝達比不可変処理を行うことを特徴とする。
【0006】
さらに、前記ハイブリッド車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記制御手段は、前記内燃機関の停止時であり前記車速が所定速度以下の場合に前記伝達比不可変処理を行うようにしてもよい。
【0007】
(2)第2発明
第2発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記ロック手段をロック解除状態にすると共に、前記出力軸の目標角を前記入力軸の操舵角に保持するように伝達比可変手段を制御する伝達比不可変処理を行うことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記ハイブリッド車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記制御手段は、前記内燃機関の停止時であり前記車速が所定速度以下の場合に前記伝達比不可変処理を行うようにしてもよい。
【0009】
(3)第3発明
第3発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、前記制御手段は、前記入力軸に対して前記伝達比可変用電動機を回転駆動することにより前記出力軸を回転駆動する前記伝達比可変用電動機の目標角を算出する伝達比可変用電動機角算出手段と、前記伝達比可変用電動機の前記目標角に基づき伝達比可変用電動機を角度制御する角度制御手段と、前記内燃機関の停止時に前記入力軸の前記操舵角に対する前記伝達比可変用電動機の目標角である目標角伝達比を低下させる目標角伝達比低下処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
(4)第4発明
第4発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記伝達比可変用電動機の回転速度を所定速度上限値以下にする回転速度制限処理を行うことを特徴とする。
【0011】
(5)第5発明
第5発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、前記制御手段は、前記ロック手段のロック状態への動作及びロック解除状態への動作を前記内燃機関が始動又は停止する際に行うことを特徴とする。
【0012】
また、第5発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置の前記制御手段は、前記ロック手段の前記ロック状態への動作及び前記ロック解除状態への動作を前記内燃機関の動作中に行うようにするとよい。
【0013】
(6)第6発明
第6発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置は、内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、少なくとも前記伝達比可変用電動機は、車室外に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(1)第1発明の効果
第1発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、内燃機関の停止時にロック手段によりロック状態とすることにより、伝達比可変用電動機を駆動しないようにしている。つまり、内燃機関の停止時に伝達比可変用電動機の作動音が生じることはなく、乗員に違和感として聞こえることを防止できる。
【0015】
さらに、内燃機関の停止時であって、さらに車速が所定速度以下の場合に、ロック手段によりロック状態とすることにより、駆動用電動機により駆動している時のうち騒音が小さな低速域のみにロック状態とすることになる。つまり、駆動用電動機により駆動している時の高速域においては、ロック手段をロック解除状態として、通常の伝達比可変制御(VGR制御)を行うことができるようにしている。そして、高速域における駆動用電動機による騒音は低速域に比べると比較的大きいので、伝達比可変用電動機の作動音が違和感としてそれほど聞こえない。これにより、駆動用電動機の低速域においては確実に伝達比可変用電動機の作動音を防止すると共に、駆動用電動機の高速域においてはVGR制御を行うことによりVGR制御の効果を発揮することができる。
【0016】
(2)第2発明の効果
第2発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、内燃機関の停止時に出力軸の目標角を入力軸の操舵角に保持している。すなわち、入力軸が回転すると、その回転角と同一の回転角だけ出力軸が回転するように、伝達比可変手段が制御される。このとき、伝達比可変用電動機は駆動しないことになる。具体的には、伝達比可変用電動機のロータとステータとの相対角度位置が常に一定位置となるように制御される。このように、伝達比可変用電動機を駆動しないように制御しているので、内燃機関の停止時に伝達比可変用電動機の作動音が生じることはなく、乗員に違和感として聞こえることを防止できる。
【0017】
さらに、内燃機関の停止時であって、さらに車速が所定速度以下の場合に、出力軸の目標角を入力軸の操舵角に保持することにより、駆動用電動機により駆動している時のうち騒音が小さな低速域のみに伝達比可変用電動機を駆動しないように制御することになる。つまり、駆動用電動機により駆動している時の高速域においては、通常の伝達比可変制御(VGR制御)を行うようにしている。そして、高速域における駆動用電動機による騒音は低速域に比べると比較的大きいので、伝達比可変用電動機の作動音が違和感としてそれほど聞こえない。これにより、駆動用電動機の低速域においては確実に伝達比可変用電動機の作動音を防止すると共に、駆動用電動機の高速域においてはVGR制御を行うことによりVGR制御の効果を発揮することができる。
【0018】
(3)第3発明の効果
第3発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、内燃機関の停止時に目標角伝達比を低下させている。ここで、目標角伝達比が低下するということは、伝達比可変用電動機の目標角が小さくなることになる。そして、伝達比可変用電動機の目標角が小さいほど、伝達比可変用電動機による伝達比可変動作が小さくなる。すなわち、伝達比可変用電動機の回転速度が小さくなる。このように、目標角伝達比を低下させることにより、伝達比可変用電動機の回転速度を小さくすることができ、結果として伝達比可変用電動機の作動音を抑制することができる。従って、伝達比可変用電動機の作動音を乗員に違和感として聞こえ難くすることができる。
【0019】
ここで、出力軸の目標角は、入力軸の操舵角と入力軸に対して伝達比可変用電動機が駆動することにより出力軸に伝達される伝達比可変用電動機の目標角との合計となる。そして、本発明のように伝達比可変用電動機の目標角が小さくなるということは、入力軸の操舵角に対する出力軸の目標角の伝達比が1に近づくように作用することになる。
【0020】
(4)第4発明の効果
第4発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、内燃機関の停止時に伝達比可変用電動機の回転速度を所定速度上限値以下にするようにしている。つまり、伝達比可変用電動機の回転速度を大きくしないことにより、伝達比可変用電動機の作動音を抑制することができる。このように、内燃機関の停止時に伝達比可変用電動機の作動音を抑制することができるので、乗員に違和感として聞こえ難くすることができる。
【0021】
(5)第5発明の効果
第5発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、ロック手段のロック状態への動作及びロック解除状態への動作を内燃機関が始動又は停止する際に行うようにしている。ここで、ロック手段がロック解除状態からロック状態へ動作する際、及び、ロック状態からロック解除状態へ動作する際には、僅かにロック音が発生する。しかし、ロック状態への動作及びロック解除状態への動作を内燃機関の始動又は停止に合わせることにより、ロック手段により発生するロック音を聞き取り難くすることができる。
【0022】
また、ロック状態への動作及びロック解除状態への動作を内燃機関の動作中に行うことにより、ロック音が内燃機関の駆動音に紛れて、乗員にロック音が聞こえ難くすることができる。
【0023】
なお、第1発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置のロック手段の制御に適用することにより、両者の効果を奏することができる。その結果、伝達比可変用電動機による作動音及びロック手段によるロック音が乗員に違和感として聞こえ難くなるので、より快適となる。
【0024】
(6)第6発明の効果
第6発明のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置によれば、少なくとも伝達比可変用電動機が車室外に配置されることにより、伝達比可変用電動機による作動音が乗員に違和感として伝達されることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0026】
(1)第1実施形態
(1.1)ハイブリッド車両の全体構成
第1実施形態におけるハイブリッド車両の全体構成について図1を参照して説明する。図1は、ハイブリッド車両の全体構成を示す図である。図1に示すように、ハイブリッド車両は、動力伝達源として、エンジン(内燃機関)1及び駆動用電動機2を備えている。エンジン1は、動力系減速機3及びディファレンシャル4を介して、後輪を回転駆動する。このエンジン1は、車室内の前方側に位置するエンジンルーム内(図1において「車室外」と示す。)に配置されている。また、駆動用電動機2は、動力系減速機3及びディファレンシャル4を介して、後輪を回転駆動する。この駆動用電動機2は、エンジン1と選択的に駆動源として用いられている。つまり、駆動用電動機2は、エンジン1が停止中に駆動する。一般に、低速域においては駆動用電動機2により駆動され、高速域においてはエンジン1により駆動される。
【0027】
そして、ハイブリッド車両は、エンジン1及び駆動用電動機2の駆動を制御するハイブリッドECU5を備えている。このハイブリッドECU5は、さらに、エンジン1の停止信号及びエンジン1の駆動信号を後述するVGR−ECU13に出力する。ここで、エンジン1の停止信号とは、動作中のエンジン1が間もなく停止して、駆動用電動機2による駆動に切り替えようとする場合にハイブリッドECU5にて生成される信号である。また、エンジン1の駆動信号とは、停止中のエンジン1が駆動を開始した場合にハイブリッドECU5にて生成される信号である。
【0028】
さらに、ハイブリッド車両は、操舵伝達系として、ステアリングハンドル6と、アッパステアリングシャフト(入力軸)7と、ロック手段8と、伝達比可変用電動機9と、操舵系減速機10と、ロアステアリングシャフト(出力軸)11と、電動パワーステアリング装置12とを備えている。アッパステアリングシャフト7は、ステアリングハンドル6に連結され、運転者によるステアリングハンドル6の第1舵角を伝達するシャフトである。
【0029】
伝達比可変用電動機(伝達比可変手段)9及び操舵系減速機(伝達比可変手段)10は、アッパステアリングシャフト7の下端側に連結されると共に、ロアステアリングシャフト11の上端側に連結されている。具体的には、伝達比可変用電動機9のステータがアッパステアリングシャフト7の下端側に連結され、伝達比可変用電動機9のロータ出力軸が操舵系減速機10に連結されている。さらに、操舵系減速機10の出力側がロアステアリングシャフト11の上端側に連結されている。そして、伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10により、アッパステアリングシャフト7の第1舵角(操舵角)θ1に対するロアステアリングシャフト11の第2舵角(出力軸の目標角)θ2である伝達比R1を可変することができる。具体的には、ロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2は、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1と伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10による第3舵角(伝達比可変用電動機の目標角)θ3との合計である。ここで、第3舵角θ3とは、アッパステアリングシャフト7に対して伝達比可変用電動機9が駆動することにより操舵系減速機10を介してロアステアリングシャフト11に伝達される回転舵角である。つまり、第3舵角θ3を変化させることにより、結果として第1舵角θ1に対して第2舵角θ2を変化させることができる。
【0030】
ロック手段8は、アッパステアリングシャフト7と伝達比可変用電動機9のロータ出力軸とを一体的なロック状態にする手段である。すなわち、ロック手段8は、アッパステアリングシャフト7と伝達比可変用電動機9のロータ出力軸とが一体的なロック状態とロック状態でないロック解除状態とを切り替えることができる。そして、ロック手段8によりロック状態とされた場合には、アッパステアリングシャフト7とロアステアリングシャフト11とは一体的に回転される。つまり、ロック状態の場合には、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1とロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2とは同一となる。
【0031】
電動パワーステアリング装置12は、ラックピニオン式の電動パワーステアリング装置である。すなわち、ロアステアリングシャフト11の下端側にピニオン(図示せず)が形成され、当該ピニオンがラック(図示せず)に噛合している。そして、電動パワーステアリング装置12を構成するアシスト電動機により、前輪(転舵輪)を転舵させる補助操舵力を発生させる。さらに、ハイブリッド車両は、少なくとも伝達比可変用電動機9の駆動及びロック手段8の駆動を制御するVGR−ECU(制御手段)13を備えている。
【0032】
ここで、伝達比可変操舵装置は、ロック手段8と、伝達比可変用電動機9と、操舵系減速機10と、VGR−ECU13とから構成される。
【0033】
(1.2)VGR−ECU13の構成
ここで、VGR−ECU13について図2を参照して説明する。図2は、第1実施形態のVGR−ECU13のブロック図を示す。図2に示すように、VGR−ECU13は、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1を検出する第1舵角センサ21から検出信号を入力している。さらに、VGR−ECU13は、ハイブリッド車両の車速Vsを検出する車速センサ22から検出信号を入力している。さらに、VGR−ECU13は、ハイブリッドECU5からエンジン1の停止信号及びエンジン1の駆動信号などの駆動情報を入力している。
【0034】
そして、VGR−ECU13は、ロック手段8の駆動を制御するロック制御部23と、伝達比可変用電動機9の駆動を制御する電動機制御部24とを備えている。ロック制御部23は、車速センサ22から入力される検出信号及びハイブリッドECU5から入力される駆動情報に基づき、ロック手段8のロック状態とロック解除状態との動作の切り替えを行っている。なお、ロック制御部23の処理動作の詳細については後述する。
【0035】
電動機制御部24は、第1舵角センサ21及び車速センサ22から入力される検出信号に基づき、伝達比可変用電動機9の駆動を制御している。この電動機制御部24は、例えば、低速域においては第1舵角に対する第2舵角である伝達比R1が1よりも大きくなるように制御し、高速域においては伝達比R1が1よりも小さくなるように制御する。すなわち、低速域においては僅かな操舵により大きく前輪(転舵輪)が切れ、高速域においては大きく操舵したとしてもそれほど大きく前輪が切れないように制御される。
【0036】
(1.3)ロック制御部23の処理動作
次に、ロック制御部23の処理動作について、図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。図3は、ロック制御部23によるロック手段8の駆動処理を示すフローチャートである。図4は、ロック状態とロック解除状態との切替処理が行われる際のロック制御部23の処理を示すフローチャートである。
【0037】
まずは、図3を参照して、ロック制御部23によるロック手段8の駆動処理について説明する。図3に示すように、イグニッションスイッチ(IG)がON状態であるか否かを判定する(ステップS1)。IGがON状態でない場合には(ステップS1:No)、そのまま処理を終了する。一方、IGがON状態の場合には(ステップS1:Yes)、エンジン1が動作中であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0038】
そして、エンジン1が動作中の場合には(ステップS2:Yes)、ロック手段8をロック解除状態とする処理が行われる(ステップS3)。そして、処理を終了する。一方、エンジン1が停止中の場合には(ステップS2:No)、さらに、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きいか否かを判定する(ステップS4)。そして、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きい場合には(ステップS4:Yes)、ロック手段8をロック解除状態にする処理が行われる(ステップS3)。そして、処理を終了する。
【0039】
一方、エンジン1が停止中の場合であって(ステップS2:No)、車速Vsが所定車速閾値Vth以下の場合には(ステップS4:No)、ロック手段8をロック状態にする処理が行われる(伝達比不可変処理)(ステップS5)。そして、処理を終了する。
【0040】
つまり、エンジン1が動作中である場合と、エンジン1が停止中の場合であって車速Vsが所定車速閾値Vthより大きい場合とには、ロック手段8はロック解除状態となる。そして、伝達比可変用電動機9が駆動して、伝達比R1が可変に制御される。
【0041】
一方、エンジン1が停止中であって車速Vsが所定車速Vth以下の場合には、ロック手段8はロック状態となる。つまり、運転者により操舵された第1舵角θ1がそのままロアステアリングシャフト11に伝達される。すなわち、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1とロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2とが同一となる。このとき、伝達比可変用電動機9は駆動できないので、電動機制御部24は伝達比可変用電動機9を駆動しないようにする。
【0042】
ただし、図4を参照して後述するように、ロック状態からロック解除状態へ切り替えられる場合及びロック解除状態からロック状態へ切り替えられる場合には制限される。すなわち、ロック状態とされるべき場合であっても、直ちにロック処理がされずにロック解除状態が維持される場合がある。さらに、ロック解除状態とされるべき場合であっても、直ちにロック解除処理がされずにロック状態が維持される場合がある。
【0043】
次に、図4を参照して、ロック状態とロック解除状態との切替処理が行われる際のロック制御部23の処理について説明する。図4に示すように、ロック状態へ切り替える指示信号(ロック指示信号)が生成されたか否かを判定する(ステップS11)。ロック状態へ切り替える指示信号は、図3において、ロック状態である場合であってステップS3のロック解除処理が行われる際に生成される。
【0044】
ロック指示信号が生成された場合には(ステップS11:Yes)、続いて、ハイブリッドECU5からエンジン1の停止信号が入力されたか否かを判定する(ステップS12)。エンジン1の停止信号とは、上述したように、動作中のエンジン1が間もなく停止して、駆動用電動機2による駆動に切り替えようとする場合にハイブリッドECU5にて生成される信号である。
【0045】
そして、ハイブリッドECU5からエンジン1の停止信号が入力されていない場合には(ステップS12:No)、エンジン1の停止信号が入力されるまでステップS12の処理を繰り返す。一方、ハイブリッドECU5からエンジン1の停止信号が入力された場合には(ステップS12:Yes)、ロック手段8をロック解除状態からロック状態へ切替動作を行う(ステップS13)。そして、処理を終了する。
【0046】
一方、ロック指示信号が生成されていない場合には(ステップS11:No)、続いて、ロック解除状態へ切り替える指示信号(ロック解除指示信号)が生成されたか否かを判定する(ステップS14)。ロック解除状態へ切り替える指示信号は、図3において、ロック解除状態である場合であってステップS5のロック処理が行われる際に生成される。
【0047】
ロック解除指示信号が生成された場合には(ステップS14:Yes)、続いて、ハイブリッドECU5からエンジン1の駆動信号が入力されたか否かを判定する(ステップS15)。エンジン1の駆動信号とは、上述したように、停止中のエンジン1が駆動を開始した場合にハイブリッドECU5にて生成される信号である。
【0048】
そして、ハイブリッドECU5からエンジン1の駆動信号が入力されていない場合には(ステップS15:No)、エンジン1の駆動信号が入力されるまでステップS15の処理を繰り返す。一方、ハイブリッドECU5からエンジン1の駆動信号が入力された場合には(ステップS15:Yes)、ロック手段8をロック状態からロック解除状態へ切替動作を行う(ステップS16)。そして、処理を終了する。なお、ロック指示信号及びロック解除信号が生成されていない場合には(ステップS14:No)、そのまま処理を終了する。
【0049】
(1.4)第1実施形態の効果
上述したように、エンジン1が停止中であって低車速の場合に、ロック手段8をロック状態として伝達比可変用電動機9を作動させないので、上記場合に伝達比可変用電動機9の作動音が乗員に違和感として聞こえることを防止できる。さらに、駆動用電動機2の高速域においてはVGR制御を行うことにより確実にVGR制御の効果を発揮することができる。さらに、ロック状態への動作及びロック解除状態への動作をエンジン1の動作中に行うことにより、ロック手段8のロック音がエンジン1の駆動音に紛れて、乗員にロック音が聞こえ難くすることができる。
【0050】
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態におけるハイブリッド車両について説明する。ここで、第2実施形態のハイブリッド車両は、第1実施形態のハイブリッド車両に対してVGR−ECU13の内部構成が相違する。以下、VGR−ECU13について説明する。なお、第2実施形態のハイブリッド車両において、VGR−ECU13以外の第1実施形態のハイブリッド車両と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
(2.1)第2実施形態のVGR−ECU13の構成
第2実施形態のVGR−ECU13について図5を参照して説明する。図5は、第2実施形態におけるVGR−ECU13のブロック図を示す。図5に示すように、VGR−ECU13は、目標角算出部31と、減算器32と、角度制御部33と、第3舵角算出部35と、ロック制御部36とを備えている。
【0052】
目標角算出部31は、第1舵角センサ21及び車速センサ22から入力された検出信号に基づき、伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10によりロアステアリングシャフト11が回転される第3舵角の目標角θ3*が算出される。例えば、車速Vsが小さい場合には、第1舵角θ1に対する第3舵角の目標角θ3*である目標角伝達比(目標ギヤ比)R2を正の値とし、車速Vsが大きい場合には、目標ギヤ比R2を負の値とする。すなわち、車速Vsが小さい場合には第3舵角の目標角θ3*が第1舵角θ1と同一方向の角度となる。従って、車速Vsが小さい場合には、ロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2は、第1舵角θ1よりも第3舵角の目標角θ3*だけ大きくなる。つまり、第1舵角θ1に対する第2舵角θ2である伝達比R1は1より大きくなる。また、車速Vsが大きい場合には第3舵角の目標角θ3*が第1舵角θ1と逆方向の角度となる。従って、車速Vsが大きい場合には、ロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2は、第1舵角θ1よりも第3舵角の目標角θ3*だけ小さくなる。つまり、第1舵角θ1に対する第2舵角である伝達比R1は1より小さくなる。ここで、このようなVGR制御を後述する目標角一定処理と区別するために通常VGR制御という。
【0053】
さらに、目標角算出部31は、車速センサ22から入力された検出信号及びハイブリッドECU5から入力される駆動情報に基づき、目標角一定処理が行われる。目標角一定処理とは、第3舵角の目標角θ3*が一定値を保持するようにされる処理である。第3舵角の目標角θ3*が一定値となると、ロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2は、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1と常に同一となる。
【0054】
そして、減算器32は、目標角算出部31にて算出された第3舵角の目標角θ3*から実際の第3舵角θ3を減算された偏差第3舵角Δθ3(=θ3*−θ3)を算出する。なお、実際の第3舵角θ3は、後述する第3舵角算出部35にて伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10によるロアステアリングシャフト11が回転する第3舵角θ3が算出される。角度制御部(角度制御手段)33は、減算器32にて算出された偏差第3舵角Δθ3を入力し、入力された偏差第3舵角Δθ3に基づき伝達比可変用電動機9に印加する電圧指令値Vmを算出する。
【0055】
第3舵角算出部35は、伝達比可変用電動機9のロータ出力軸の回転角度θmを検出する角度検出部34から検出信号を入力して、伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10による実際のロアステアリングシャフト11の第3舵角θ3を算出する。具体的には、第3舵角θ3は、角度検出部34から入力された伝達比可変用電動機9のロータ出力軸の回転角度θmに操舵系減速機10の減速比分を乗算して得られる。そして、第3舵角算出部35は、上述した減算器32に出力する。
【0056】
ロック制御部36は、車速センサ22から入力される検出信号及びハイブリッドECU5から入力される駆動情報に基づき、ロック手段8のロック状態とロック解除状態との動作の切り替えを行っている。なお、ロック制御部36の処理動作の詳細については後述する。
【0057】
(2.2)VGR−ECU13の処理動作
次に、第2実施形態のVGR−ECU13の処理動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。図6は、第2実施形態のVGR−ECU13の処理を示すフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、まず、イグニッションスイッチ(IG)がON状態であるか否かを判定する(ステップS21)。IGがON状態でない場合には(ステップS21:No)、そのまま処理を終了する。一方、IGがON状態の場合には(ステップS21:Yes)、エンジン1が動作中であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0059】
そして、エンジン1が動作中の場合には(ステップS22:Yes)、ロック手段8をロック解除状態とする処理が行われる(ステップS23)。続いて、通常VGR制御が行われる(ステップS24)。通常VGR制御は、上述したように、目標角算出部31にて、第1舵角センサ21及び車速センサ22から入力された検出信号に基づき算出された第3舵角の目標角θ3*に従って伝達比可変用電動機9を角度制御する制御である。そして、処理を終了する。
【0060】
一方、エンジン1が停止中の場合には(ステップS22:No)、さらに、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きいか否かを判定する(ステップS25)。そして、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きい場合には(ステップS25:Yes)、ロック手段8をロック解除状態にする処理が行われ(ステップS23)、通常VGR制御が行われる(ステップS24)。そして、処理を終了する。
【0061】
そして、エンジン1が停止中の場合であって(ステップS22:No)、車速Vsが所定車速閾値Vth以下の場合には(ステップS25:No)、ロック手段8をロック解除状態にする処理が行われる(伝達比不可変処理)(ステップS26)。続いて、目標角一定処理が行われる(伝達比不可変処理)(ステップS27)。ここで、目標角一定処理は、上述したように、第3舵角の目標角θ3*が一定値を保持するようにされる処理である。そして、処理を終了する。
【0062】
つまり、エンジン1が動作中である場合と、エンジン1が停止中の場合であって車速Vsが所定車速閾値Vthより大きい場合とには、ロック手段8はロック解除状態となり、通常VGR制御が行われる。すなわち、伝達比可変用電動機9が駆動して、伝達比R1が可変に制御される。
【0063】
一方、エンジン1が停止中であって車速Vsが所定車速Vth以下の場合には、ロック手段8はロック解除状態となるが、目標角一定処理が行われる。すなわち、伝達比可変用電動機9が駆動しないように制御される。つまり、運転者により操舵された第1舵角θ1がそのままロアステアリングシャフト11に伝達される。すなわち、アッパステアリングシャフト7の第1舵角θ1とロアステアリングシャフト11の第2舵角θ2とが同一となる。
【0064】
(2.3)第2実施形態の効果
上述したように、エンジン1が停止中であって低車速の場合に、目標角一定処理を行い伝達比可変用電動機9を作動させないので、上記場合に伝達比可変用電動機9の作動音が乗員に違和感として聞こえることを防止できる。さらに、駆動用電動機2の高速域においてはVGR制御を行うことにより確実にVGR制御の効果を発揮することができる。さらに、ロック手段8のロック状態とロック解除状態との切り替えを行わないので、ロック音が発生することがない。
【0065】
(3)第3実施形態
次に、第3実施形態におけるハイブリッド車両について説明する。ここで、第3実施形態のハイブリッド車両は、第2実施形態のハイブリッド車両に対してVGR−ECU13の目標角算出部31の内部構成が相違する。以下、目標角算出部31について説明すると共に、第3実施形態のVGR−ECU13の処理動作について説明する。なお、第3実施形態のハイブリッド車両において、目標角算出部31以外の第2実施形態のハイブリッド車両と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
(3.1)第3実施形態の目標角算出部31の構成
第3実施形態の目標角算出部31について図7を参照して説明する。図7は、第3実施形態の目標角算出部31のブロック図を示す。図7に示すように、目標角算出部31は、基準目標角算出部41と、目標ギヤ比低下処理部42と、電動機速度算出部43と、電動機速度上限値記憶部44と、修正目標角算出部45とから構成される。
【0067】
基準目標角算出部(電動機目標角算出手段)41は、第1舵角センサ21及び車速センサ22から入力された検出信号に基づき、伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10によりロアステアリングシャフト11が回転される第3舵角の目標角θ3*の基準値(以下、「基準目標角」という)が算出される。この基準目標角は、第1舵角θ1に目標ギヤ比R2を乗算した値となる。ここで、目標ギヤ比R2は、車速Vsが小さい場合には正の値とし、車速Vsが大きい場合には負の値とする。つまり、目標ギヤ比R2は、車速Vsに応じて異なるようにされている。ここで、目標ギヤ比R2は、後述する目標ギヤ比低下処理部42により変更される。この場合、基準目標角算出部41は、変更された目標ギヤ比R2に基づき基準目標角を算出する。
【0068】
目標ギヤ比低下処理部(目標角伝達比低下処理手段)42は、車速センサ22から入力された検出信号及びハイブリッドECU5から入力される駆動情報に基づき、目標ギヤ比R2の絶対値を小さくさせる処理(以下、「目標ギヤ比低下処理」という)が行われる。なお、目標ギヤ比R2の絶対値が小さくなると、第3舵角の目標角θ3*が小さくなる。
【0069】
電動機速度算出部43は、伝達比可変用電動機9及び操舵系減速機10によりロアステアリングシャフト11が基準目標角算出部41により算出された基準目標角だけ回転させる場合に、伝達比可変用電動機9の回転速度V1を算出する。そして、電動機速度算出部43は、算出した回転速度V1を後述する修正目標角算出部45に出力する。電動機速度上限値記憶部44は、伝達比可変用電動機9の回転速度の上限値Vmaxが記憶されている。
【0070】
修正目標角算出部45は、基準目標角算出部41により算出された基準目標角を入力する。そして、修正目標角算出部45は、車速センサ22から入力された検出信号及びハイブリッドECU5から入力される駆動情報に基づき、入力された基準目標角を修正する状態であるか否かを判定する。さらに、基準目標角を修正する状態であると判定された場合には、電動機速度算出部43にて算出された回転速度V1が回転速度の上限値Vmaxを越えているか否かを判定する。そして、回転速度V1が回転速度の上限値Vmaxを越えている場合には、伝達比可変用電動機9の回転速度V1が回転速度の上限値Vmaxとなるような第3舵角の目標角θ3*を算出する(回転速度制限処理)。そして、修正目標角算出部45は、算出した第3舵角の目標角θ3*を減算器32に出力する。
【0071】
(3.2)第3実施形態のVGR−ECU13の処理動作
次に、第3実施形態のVGR−ECU13の処理動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8は、第3実施形態のVGR−ECU13の処理を示すフローチャートである。
【0072】
図8に示すように、イグニッションスイッチ(IG)がON状態であるか否かを判定する(ステップS31)。IGがON状態でない場合には(ステップS31:No)、そのまま処理を終了する。一方、IGがON状態の場合には(ステップS31:Yes)、エンジン1が動作中であるか否かを判定する(ステップS32)。
【0073】
そして、エンジン1が動作中の場合には(ステップS32:Yes)、ロック手段8をロック解除状態とする処理が行われる(ステップS33)。続いて、VGR制御が行われる(ステップS34)。そして、処理を終了する。
【0074】
一方、エンジン1が停止中の場合には(ステップS32:No)、さらに、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きいか否かを判定する(ステップS35)。そして、車速Vsが所定速度閾値Vthより大きい場合には(ステップS35:Yes)、ロック手段8をロック解除状態にする処理が行われ(ステップS33)、VGR制御が行われる(ステップS34)。そして、処理を終了する。
【0075】
そして、エンジン1が停止中の場合であって(ステップS32:No)、車速Vsが所定車速閾値Vth以下の場合には(ステップS35:No)、目標ギヤ比低下処理が行われる(ステップS36)。目標ギヤ比低下処理とは、上述したように、目標ギヤ比低下処理部42にて、目標ギヤ比R2の絶対値を小さくさせる処理である。つまり、基準目標角算出部41は、小さくされた目標ギヤ比R2に基づき基準目標角が算出される。
【0076】
目標ギヤ比低下処理が行われた後には、回転速度制限処理が行われる(ステップS37)。ここで、回転速度制限処理は、上述したように、電動機速度算出部43にて算出された回転速度V1が電動機速度上限値記憶部44に記憶されている回転速度の上限値Vmaxを越えている場合に行われる処理である。具体的には、回転速度制限処理は、上記場合に、修正目標角算出部45が、回転速度V1が回転速度の上限値Vmaxとなるような第3舵角の目標角θ3*を算出し、算出した第3舵角の目標角θ3*を減算器32に出力する処理である。
【0077】
回転速度制限処理が行われた後には、ロック手段8をロック解除状態にする処理が行われ(ステップS33)、VGR制御が行われる(ステップS34)。そして、処理を終了する。
【0078】
つまり、エンジン1が動作中である場合と、エンジン1が停止中の場合であって車速Vsが所定車速閾値Vthより大きい場合とには、目標ギヤ比R2が小さくされることなく、かつ、伝達比可変用電動機9の回転速度を制限されることなく、VGR制御が行われる。すなわち、第1舵角θ1及び車速Vsに基づき算出された第3舵角の目標角θ3*に基づき、伝達比可変用電動機9が駆動される。
【0079】
一方、エンジン1が停止中であって車速Vsが所定車速Vth以下の場合には、目標ギヤ比R2が小さくされ、かつ、伝達比可変用電動機9の回転速度が制限された状態で、VGR制御が行われる。すなわち、伝達比可変用電動機9の回転速度が出来るだけ小さくなるように制御される。
【0080】
(3.3)第3実施形態の効果
上述したように、エンジン1が停止中であって低車速の場合に、目標ギヤ比低下処理及び回転速度制限処理を行うことにより、伝達比可変用電動機9の回転速度が出来るだけ小さくなるように制御される。その結果、上記場合に伝達比可変用電動機9の作動音が乗員に違和感として聞こえることを抑制できる。さらに、駆動用電動機2の高速域においてはVGR制御を行うことにより確実にVGR制御の効果を発揮することができる。さらに、ロック手段8のロック状態とロック解除状態との切り替えを行わないので、ロック音が発生することがない。
【0081】
(4)他の実施形態
上記実施形態においては、伝達比可変操舵装置は、アッパステアリングシャフトとロアステアリングシャフトとの間に配置されたいわゆるコラム搭載型として説明したが、これに限られるものではない。例えば、伝達比可変操舵装置は、ラックハウジング一体型としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ハイブリッド車両の全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態のVGR−ECU13を示すブロック図である。
【図3】ロック制御部23によるロック手段8の駆動処理を示すフローチャートである。
【図4】ロック状態とロック解除状態との切替処理が行われる際のロック制御部23の処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態におけるVGR−ECU13を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態のVGR−ECU13の処理を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態の目標角算出部31を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態のVGR−ECU13の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1:エンジン(内燃機関)、 2:駆動用電動機、 3:動力系減速機、 4:ディファレンシャル、 5:ハイブリッドECU、 6:ステアリングハンドル、 7:アッパステアリングシャフト、 8:ロック手段、 9:伝達比可変用電動機、 10:操舵系減速機、 11:ロアステアリングシャフト、 12:電動パワーステアリング装置、 13:VGR−ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、
前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、
前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記ロック手段をロック状態にする伝達比不可変処理を行うことを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項2】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、
前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、
前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記ロック手段をロック解除状態にすると共に、前記出力軸の目標角を前記入力軸の操舵角に保持するように伝達比可変手段を制御する伝達比不可変処理を行うことを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項3】
さらに、前記ハイブリッド車両の車速を検出する車速検出手段を備え、
前記制御手段は、前記内燃機関の停止時であり前記車速が所定速度以下の場合に前記伝達比不可変処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項4】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、
前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、
前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
前記制御手段は、
前記入力軸に対して前記伝達比可変用電動機を回転駆動することにより前記出力軸を回転駆動する前記伝達比可変用電動機の目標角を算出する伝達比可変用電動機角算出手段と、
前記伝達比可変用電動機の前記目標角に基づき伝達比可変用電動機を角度制御する角度制御手段と、
前記内燃機関の停止時に前記入力軸の操舵角に対する前記伝達比可変用電動機の前記目標角である目標角伝達比を低下させる目標角伝達比低下処理手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項5】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、
前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、
前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の停止時に前記伝達比可変用電動機の回転速度を所定速度上限値以下にする回転速度制限処理を行うことを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項6】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段と、
前記入力軸と前記出力軸との相対的な回転を制限するロック手段と、
前記伝達比可変手段及び前記ロック手段を制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
前記制御手段は、前記ロック手段のロック状態への動作及びロック解除状態への動作を前記内燃機関が始動又は停止する際に行うことを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ロック手段の前記ロック状態への動作及び前記ロック解除状態への動作を前記内燃機関の動作中に行うことを特徴とする請求項6記載のハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。
【請求項8】
内燃機関及び駆動用電動機を搭載し前記内燃機関及び前記駆動用電動機の少なくとも一方の駆動により走行可能なハイブリッド車両であって、
ステアリングハンドル側に連結される入力軸と転舵輪側に連結される出力軸とを有し伝達比可変用電動機の回転駆動により前記入力軸と前記出力軸との間の伝達比を変化させる伝達比可変手段を備えるハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置において、
少なくとも前記伝達比可変用電動機は、車室外に配置されることを特徴とするハイブリッド車両の伝達比可変操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−103626(P2006−103626A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296285(P2004−296285)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】