説明

ハイブリッド車両の熱管理システム及び方法

【課題】エンジンの冷却水を利用して車両室内を暖房する際に、エンジン停止時の暖房性能をより増大させることのできるハイブリッド車両の熱管理システム及び方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両用熱管理システムはヒーターコアと、熱交換器と、エンジンとヒーターコア、熱交換器との間に冷却水が循環されるようにする冷却水ラインと、冷却水ラインに設置される冷却水ポンプと、熱交換器と駆動部品間に熱交換媒体が循環されるようにする熱交換媒体ラインを含み、エンジン側の冷却水ラインに設置されてエンジンの駆動及び停止状態に従って制御装置により開閉制御されるバイパス弁を更に含み、エンジン停止時、冷却水がエンジンを通過せずに熱交換器のみを通過するようにバイパス弁を制御して、前記熱交換器で昇温した後、室内暖房のためにヒーターコアに供給される冷却水がエンジンにより冷却されるのを防止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両の熱管理システム及び方法に関し、更に詳しくは、エンジンの冷却水を利用して車両室内を暖房する際に、エンジン停止時の暖房性能をより増大させることのできるハイブリッド車両の熱管理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ガソリンやディーゼルなどのような化石燃料を燃料として使用する一般内燃機関(エンジン)自動車は、排気ガスによる環境汚染、二酸化炭素による地球温暖化、オゾン生成などによる呼吸器疾患の誘発など多くの問題点を有している。一方、地球上に存在する化石燃料の量が限られているためいつかは枯渇するのが現実であり、人間社会の未来が憂慮されている。
【0003】
これらの問題点を解決するために、電気モータを駆動させて走行する純粋電気車両(Electric Vehicle,EV)や、エンジンと電気モータで走行するハイブリッド車両(Hybrid Electric Vehicle,HEV)、燃料電池から生成される電力にて電気モータを駆動させて走行する燃料電池車両(Fuel Cell Electric Vehicle,FCEV)などの電気エネルギーを利用する自動車が開発されてきた。
【0004】
電気自動車は、環境問題と資源枯渇の問題を小さくできる低公害環境親和的車両または無公害環境親和的車両であり、車両を駆動させるための電気モータと合わせて電気モータに電力を供給する蓄電手段としてバッテリー(高電圧バッテリー)を含み、更に電気モータを回転させるためのインバータが備えられている。
【0005】
インバータは、制御装置で印加される制御信号に応じて蓄電手段(または燃料電池)から供給される電源を相変換させてモータを駆動させる。
【0006】
その他、電気自動車には電力変換のためのコンバータが搭載されるが、例えば、高電圧バッテリー(メインバッテリー)と低電圧バッテリー(補助バッテリー)間の電力変換のための低電圧DC−DCコンバータ(Low Voltage DC−DC Converter,LDC)、高電圧バッテリーの電力を変換して高電圧駆動部品に提供するための高電圧DC−DCコンバータ(High Voltage DC−DC Converter,HDC)などが搭載されている。
【0007】
一方、電気自動車の場合、高電圧部品などの各種部品でエネルギー損失により熱が発生しているため、この熱を冷却させる冷却システムが必要であり、更に、車両室内の熱的快適性を提供するために冷暖房空調システムが、一般内燃機関自動車と共通して必要である。
【0008】
特に、電気自動車では、各種電力電子部品(PE部品)、例えばモータ(駆動モータ、ラジエーターファンモータなど)やDC−DCコンバータ、インバータなどの部品を含む駆動系や、高電圧バッテリーなどにはそれ自体発熱に対応するためのベッセルを具備した後、ベッセルを通して冷却水を供給及び循環させて該当部品から出る熱を吸収するようにする水冷式冷却システムが構成されている。
【0009】
図1は、ハイブリッド車両で通常的にある熱管理システムを表す構成図であり、エンジン冷却システムとエンジン冷却水を利用した暖房システム、変速機オイル冷却−昇温システムを図示している。
【0010】
図示したように、ハイブリッド車両の場合、内燃機関、即ちエンジン10を駆動源として搭載しているため、冷却水を供給及び循環させてエンジンを冷却させるエンジン冷却システムが備えられ、このエンジン10の冷却水を利用して車両室内を暖房するための暖房システム、そしてエンジン10の冷却水を利用して変速機を含むギアボックス61のオイルを冷却または昇温させるための変速機オイル冷却−昇温システムが具備されている。
【0011】
このように、ハイブリッド車両の冷却装置では、バッテリーモータ冷却系統とエンジン冷却系統とを有し、流路切替弁により冷却系統を切替えて温度管理を行っている〔例えば、特許文献1参照特開2000−274240〕
【0012】
暖房システムは、エンジン10(エンジンブロックのウォータージャケットなど)からの熱を受けて温度の高くなった冷却水(エンジンを冷却させた冷却水)を、車両室内に吐出させる空気と熱交換するヒーターコア20を有して、加温された空気を車両室内に放出して車両室内を暖めている。
【0013】
このようなエンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う車両用空調システムは一般に行われ、多くの報告がある〔例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照〕。
【0014】
図1を参照すると、ハイブリッド車両の熱管理システムは、熱源となるエンジン10、エンジン10を通過して温度の高くなった冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房用熱を供給するヒーターコア20、エンジン10を通過して温度の高くなった冷却水と外気との間で熱交換してエンジンの熱を放出するラジエーター30、そして電気モータ(駆動モータ)62に連結されたギアボックス(変速機など)61の温度を下げる、または場合により上げるためにギアボックスの作動誘因オイルと冷却水との間の熱交換を行う熱交換器40(オイルと冷却水間の熱交換器)で構成されている。
【0015】
更に、エンジン10、ヒーターコア20、熱交換器40、ラジエーター30の間に冷却水が循環するように連結される冷却水ライン51、冷却水ライン51で冷却水をポンピングして循環させるための冷却水ポンプ50、ラジエーター30を選択的に通過するように冷却水の流れを制御するサーモスタット52、そして熱交換器40とギアボックス61の間にオイルを循環させるためのオイルライン41が備えられている。
【0016】
このような熱管理システムの構成において、エンジン10が駆動している状態では、冷却水がエンジン10からの熱を受けて加温され、加温された空気がヒーターコア20において車両室内に吐出される空気と熱交換して、暖かい空気を車両室内に送り暖房する。
【0017】
また、エンジン10が停止した状態では、熱交換器40において冷却水が、ギアボックス61で温度の高くなったオイルと熱交換して熱を受けとり、温度の高くなった冷却水がヒーターコア20で空気と熱交換して室内暖房をしていく。
【0018】
エンジンの始動後、排気ガスの低減や燃費向上のためにエンジン10を迅速に昇温させようとするときには、熱交換器40でオイルから熱を受けて加温された冷却水を、エンジン10に通してエンジン10の温度を上げることが可能である。
【0019】
しかし、前述したシステムでは、エンジン10の停止時には、熱交換器40で加温された冷却水で車両室内を暖房するが、冷却水の一部が常にエンジンを通過するようになっているため、停止後の冷たいエンジン10を流れた冷却水が混合されて冷却水全体の温度が下がり、ヒーターコア20における暖房のための熱が十分ではない問題点があり、暖房のためにエンジン10を余儀なく始動させなければならなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2000−274240号公報
【特許文献2】特開2009−67224号公報
【特許文献3】特開2010−179911号公報
【特許文献4】特開2010−159008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前述した問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、エンジンの冷却水を利用して車両室内を暖房する際に、エンジン停止時の暖房性能を大きくすることができるハイブリッド車両の熱管理システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するための本発明は、ハイブリッド車両の熱管理システムであって、エンジンを通過して加温された冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房のための熱を提供するヒーターコアと、駆動部品を通過した熱媒体と冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器と、エンジン、ヒーターコアおよび熱交換器との間に冷却水を循環させるようにする冷却水ラインと、冷却水ラインに設置された冷却水ポンプと、熱交換器と駆動部品の間に熱媒体を循環させるようにする熱媒体ラインとに、さらに、冷却水ラインにおけるエンジンのあるラインに設置されて、エンジンの駆動あるいは停止状態に従って制御装置により冷却水がエンジンを選択的に通過するように制御装置により開閉制御されるバイパス弁を含んでなり、エンジンが停止している時には、バイパス弁により冷却水がエンジンを通過せずに熱交換器にのみ通過するように制御されて、熱交換器で加温された冷却水が、停止しているエンジンを通過して加温されていない冷却水と混合してヒーターコアに供給される冷却水の温度が下げられるのを防止するようにしている。
【0023】
更に、本発明は、ハイブリッド車両の熱管理方法であって、 エンジンを通過して加温された冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房のための熱を提供するヒーターコアと、駆動部品を通過した熱媒体と冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器と、エンジン、ヒーターコアおよび熱交換器との間に冷却水を循環させるようにする冷却水ラインと、冷却水ラインに設置された冷却水ポンプと、熱交換器と駆動部品の間に熱媒体を循環させるようにする熱媒体ラインと、を含むハイブリッド車両用熱管理システムにおいて、冷却水ラインにおけるエンジンのあるラインに設置されて、エンジンの駆動あるいは停止状態に従って制御装置により冷却水がエンジンを選択的に通過するように制御装置により開閉制御されるバイパス弁をさらに含んでなり、エンジンが停止している時には、バイパス弁により冷却水がエンジンを通過せずに熱交換器にのみ通過するように制御されて、熱交換器で加温された冷却水が、停止しているエンジンを通過して加温されていない冷却水と混合してヒーターコアに供給される冷却水の温度が下げられるのを防止している。
【発明の効果】
【0024】
本発明のハイブリッド車両の熱管理システム及び方法によると、EVモード走行時のようにエンジン駆動が停止した状態では、バイパス弁を作動させて冷却水がエンジンをバイパスして、熱交換器とヒーターコアのみを通過するように冷却水の流れを制御することで、室内暖房に使用される冷却水の温度が低くなることを防止し、これによりエンジン停止時の暖房性能を更に増大させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ハイブリッド車両における通常的な熱管理システムを表す構成図である。
【図2】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の熱管理システムを表す構成図である。
【図3】本発明の実施形態によるハイブリッド車両の熱管理システムを表す構成図である。
【図4】本発明によるハイブリッド車両の熱管理システムにおける弁制御による作動状態を表す図面である。
【図5】本発明によるハイブリッド車両の熱管理システムにおける弁制御による作動状態を表す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照しつつ本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。
【0027】
図2及び図3には、本発明の実施形態によるハイブリッド車両の熱管理システムを示しており、ハイブリッド車両の場合、エンジン10を駆動源として搭載しているため、冷却水を供給及び循環させてエンジンを冷却させるエンジン冷却システムが具備され、このエンジンの冷却水を利用して車両室内を暖房するための暖房システム、そしてこの冷却水を利用して変速機を含むギアボックス61の熱媒体(オイル)を冷却または昇温させるための変速機熱媒体冷却−昇温システムが具備されている。
【0028】
このとき、暖房システムは、エンジン10(エンジンブロックのウォータージャケットなど)を通ってエンジンから熱の供給を受けた冷却水(エンジンを冷却させた冷却水)と車両室内に吐出される空気と熱交換して、加温された空気を放出して車両室内に熱を提供するヒーターコア20を有している。
【0029】
即ち、この熱管理システムは、熱源となるエンジン10、エンジン10を通過して加温された冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房用熱を提供するヒーターコア20、エンジン10を通過して加温された冷却水と外気との間で熱交換してエンジン10の熱を放出するラジエーター30、そして駆動部品の作動油、例えば駆動モータ62に連結されたギアボックス61(変速機など)の温度を上げあるいは下げるためにギアボックス61の作動油である熱媒体(オイル)と冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器40(オイルと冷却水との熱交換を行う熱交換器)を有している。
【0030】
更に、ヒーターコア20、エンジン10、熱交換器40、ラジエーター30との間を冷却水が循環するように連結される冷却水ライン51、冷却水ライン51で冷却水をポンピングして循環させるための冷却水ポンプ50、ラジエーター30に冷却水を選択的に通過するように冷却水の流れを制御するサーモスタット52、そして熱交換器40とギアボックス61間に熱媒体(オイル)循環のために連結される熱媒体(オイル)ライン41を有している。
【0031】
このような構成において、冷却水ポンプ50は、エンジン10が停止した後にも冷却水をポンピングして圧送させることができるように電動式ウォーターポンプが使用され、熱媒体(オイル)と冷却水との間の熱交換を行う熱交換器40としては、冷却水と熱媒体(オイル)間の熱交換を通して駆動部品、即ちギアボックス61の熱媒体(オイル)を冷却させる通常の熱交換器40があるが、加温された冷却水を利用してギアボックス61の熱媒体(オイル)温度を上昇させるATウォーマーもあり得る。
【0032】
基本的に、通常のATウォーマーは、加温された冷却水を熱媒体として利用する自動変速機熱媒体(オイル)の昇温装置であり、加温された冷却水と自動変速機の熱媒体(オイル)を通過させて熱媒体(オイル)を迅速に昇温させることで、自動変速機の動力伝達効率を向上させる目的で使用されている。
【0033】
このようなATウォーマーは、自動変速機の熱媒体(オイル)を冷却水を利用して冷却させる役割もするため、本発明ではATウォーマーのような熱交換器40が熱媒体(オイル)と冷却水との間の熱交換を通して冷却水の温度を昇温させ、熱交換器40を通過した冷却水がヒーターコア20に供給されるようにして車両室内暖房に使用されるようにする。
【0034】
即ち、熱交換器40で昇温された冷却水が、ヒーターコア20を通過するようにして、加温された冷却水と空気との間で熱交換して空気の温度を高めた後、車両室内に吐出することで室内暖房を行うようにするものである。
【0035】
更に、熱交換器40として、車両のエンジン10から排出される排気ガスと、冷却水および熱媒体(オイル)との間の相互熱交換を行う排気熱回収装置が使用されることもある。
【0036】
排気熱回収装置は、排気ガスと冷却水および熱媒体(オイル)との間の相互熱交換を行うように構成され、排気ガスから廃棄される排気熱を冷却水とオイルに伝達して熱回収するように構成され、これは排気熱にて冷却水とオイルの温度を上昇させて、加温された冷却水を室内暖房に、加温された熱媒体(オイル)を自動変速機の温度を上昇させるのに有用に活用することができる。
【0037】
排気熱回収装置は、エンジン10の駆動時にエンジンから排出される排気ガスを利用して冷却水を加温させるが、このとき加温された冷却水をヒーターコア20に供給して空気との熱交換を通して室内暖房が行われるようにする。
【0038】
更に、エンジン10の停止時には、後述するように熱媒体(オイル)により冷却水を加温し、加温された冷却水をヒーターコア20に供給して空気との熱交換を通して室内暖房を行うようにする。
【0039】
このように本発明では、エンジン10を冷却させるエンジン冷却水と、駆動部品(例えば、ギアボックスなど)を冷却させるための熱媒体(ギアボックスのオイル)と熱交換する熱交換器40に流す冷却水とを、一つのポンプ、即ち冷却水ポンプ50のみを用いて行うようにシステムが構成されている。
【0040】
上記の駆動部品が変速機を含むギアボックス61では、駆動部品を冷却させる熱媒体としてオイルを挙げているが、駆動部品が水冷式である場合では熱媒体が水であり、空冷式ならば空気であり、その他の熱媒体であってもよい。
【0041】
冷却水ライン51は、冷却水ポンプ50とエンジン10の間で分岐され、一方のラインはエンジン10の冷却水入口に、他方の冷却水ライン51aは熱交換器40の入口にそれぞれ連結され、そして、エンジン10の冷却水出口に連結されたラインと熱交換器40の出口に連結されたラインはまた合わさって冷却水ライン51としてヒーターコア20の入口に連結される。
【0042】
従って、冷却水ポンプ50が駆動されると、送り出された冷却水のうち一部はエンジン10を通過した後ヒーターコア20に、一部は熱交換器40を通過した後ヒーターコア20に、それぞれ供給されるようになる。
【0043】
本発明では、冷却水ライン51の上記分岐点の後で、エンジン10の前側または後側の位置にバイパス弁53を設け、バイパス弁53の開放で冷却水がエンジン10と熱交換器40の両方に流れる場合と、バイパス弁53を閉鎖して冷却水がエンジン10に流れずに熱交換器40にのみを流れる場合を、選択できるようにしたことに特徴がある。
【0044】
図2には、バイパス弁53が冷却水ライン51におけるエンジン10の前側(エンジン10の入口側)に、図3には、エンジン10の後側(エンジン10の出口側)にそれぞれ設置された形態を表している。
【0045】
バイパス弁53としては、制御装置(図示せず)の制御信号によって開閉制御される電磁式弁が使用され、制御装置はエンジン10の駆動/停止状態に応じてバイパス弁53の開閉動作を制御する。
【0046】
図4と図5は本発明によるハイブリッド車両の熱管理システムにおいて弁制御による作動状態を表す図面である。図4は、エンジン10が駆動している状態であり、制御装置がバイパス弁53を開放して、冷却水ポンプ50により送り出された冷却水がエンジン10を通過して循環するようにし、冷却水がエンジン10を冷却してエンジン10から熱を受け、エンジン10で加温された冷却水がヒーターコア20に供給している。同時に、冷却水ポンプ50により送り出された冷却水の一部は、分岐されて冷却水ライン51aを通って熱交換器40に流れ、熱交換器40において熱媒体(オイル)と熱交換が行われ、ここで加温された冷却水もヒーターコア20に供給される。
【0047】
ヒーターコア20では、加温された冷却水と空気との間で熱交換が行われて空気の温度を上げ、加温された空気が車両室内に吐出されて車両室内の暖房が行われるようになる。即ち、冷却水ポンプ50により送り出された冷却水がエンジン10の熱をヒーターコア20に移動させ車両室内の暖房に利用される。
【0048】
図5には、駆動モータ62でのみ走行するEVモードで、エンジン10が停止した状態であり、制御装置がバイパス弁53を閉じて、冷却水はエンジン10に流れずに、熱交換器40にのみ流れている。
従って、熱交換器40で熱媒体(オイル)と熱交換して、熱交換器40で加温された冷却水のみがヒーターコア20に供給されて車両室内の暖房が行われる。冷却水が、停止して冷たくなったエンジン10に流れないので、加温されてない冷却水がヒーターコア20に流れないので、ヒーターコア20に供給される冷却水の温度低下がなく、暖房性能が大きくなる。
【0049】
即ち、従来、冷却水は常にエンジン10を通過するようになっていたが、バイパス弁53の設置により、エンジン10の停止時にはエンジン10をバイパスさせて、冷たいエンジン10に冷却水が通過しないようにすることができ、冷却水ラインを循環する冷却水の温度を高めることができ、これによりヒーターコア20で放出される熱量を大きくすることができる。
【0050】
もちろん、エンジン10の温度を上げる必要があるときは、バイパス弁53を開いて冷却水がエンジン10を通過するようにし、熱交換器40で加温された冷却水がエンジン10を通過するようにすることもできる。
【0051】
このように本発明によると、EVモード走行時のようにエンジン10の駆動が停止した状態では、バイパス弁53を作動させて冷却水がエンジン10をバイパスした後、熱交換器40とヒーターコア20のみを通過するように冷却水の流れを制御することで、車両室内の暖房に使用される冷却水に、冷たいエンジン10を通過して低い温度の冷却水が入ることを防止でき、冷却水の温度が低下することがなく、これによりエンジン停止時の暖房性能を上げることができる。
【符号の説明】
【0052】
10:エンジン
20:ヒーターコア
30:ラジエーター
40:熱交換器
41:熱媒体(オイル)ライン
50:冷却水ポンプ
51:冷却水ライン
52:サーモスタット
53:バイパス弁
61:ギアボックス(変速機)
62:駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを通過して加温された冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房のための熱を提供するヒーターコアと、駆動部品を通過した熱媒体と冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器と、前記エンジン、前記ヒーターコアおよび前記熱交換器との間に冷却水を循環させるようにする冷却水ラインと、前記冷却水ラインに設置された冷却水ポンプと、前記熱交換器と前記駆動部品の間に熱媒体を循環させるようにする熱媒体ラインと、を含むハイブリッド車両用熱管理システムにおいて、
前記冷却水ラインにおける前記エンジンのあるラインに設置されて、前記エンジンの駆動あるいは停止状態に従って制御装置により前記冷却水が前記エンジンを選択的に通過するように制御装置により開閉制御されるバイパス弁をさらに含んでなり、前記エンジンが停止している時には、前記バイパス弁により冷却水が前記エンジンを通過せずに前記熱交換器にのみ通過するように制御されて、前記熱交換器で加温された冷却水が、停止している前記エンジンを通過して加温されていない冷却水と混合して前記ヒーターコアに供給される冷却水の温度が下げられるのを防止することを特徴とするハイブリッド車両の熱管理システム。
【請求項2】
前記バイパス弁は、前記冷却水ラインの前記エンジンの冷却水入口側または出口側に設置されることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の熱管理システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、自動変速機のオイルと、前記冷却水との間で熱交換が行われるように具備されたATウォーマーであることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の熱管理システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記エンジンから排出された排気ガスと、前記冷却水および前記熱媒体との間の相互熱交換が行われる排気熱回収装置であることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の熱管理システム。
【請求項5】
前記冷却水ポンプは、前記エンジンを通る冷却水と、前記熱交換器における熱媒体との熱交換に使用する冷却水とを循環させることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の熱管理システム。
【請求項6】
エンジンを通過して加温された冷却水と車両室内に吐出される空気との間で熱交換して車両室内に暖房のための熱を提供するヒーターコアと、駆動部品を通過した熱媒体と冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器と、前記エンジン、前記ヒーターコアおよび前記熱交換器との間に冷却水を循環させるようにする冷却水ラインと、前記冷却水ラインに設置された冷却水ポンプと、前記熱交換器と前記駆動部品の間に熱媒体を循環させるようにする熱媒体ラインと、を含むハイブリッド車両用熱管理システムにおいて、
前記冷却水ラインにおける前記エンジンのあるラインに設置されて、前記エンジンの駆動あるいは停止状態に従って制御装置により前記冷却水が前記エンジンを選択的に通過するように制御装置により開閉制御されるバイパス弁をさらに含んでなり、前記エンジンが停止している時には、前記バイパス弁により冷却水が前記エンジンを通過せずに前記熱交換器にのみ通過するように制御されて、前記熱交換器で加温された冷却水が、停止している前記エンジンを通過して加温されていない冷却水と混合して前記ヒーターコアに供給される冷却水の温度が下げられるのを防止することを特徴とするハイブリッド車両の熱管理方法。
【請求項7】
前記バイパス弁は、前記冷却水ラインの前記エンジンの冷却水入口側または出口側に設置されることを特徴とする請求項6記載のハイブリッド車両の熱管理方法。
【請求項8】
前記熱交換器は、自動変速機のオイルと、前記冷却水との間で熱交換が行われるように具備されたATウォーマーであることを特徴とする請求項6記載のハイブリッド車両の熱管理方法。
【請求項9】
前記熱交換器は、エンジンから排出される排気ガスと、前記冷却水および前記熱媒体との間の相互熱交換が行われる排気熱回収装置であることを特徴とする請求項6記載のハイブリッド車両の熱管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46163(P2012−46163A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249570(P2010−249570)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】