説明

ハイブリッド車両

【課題】車両走行風によるフライホイールの回転エネルギーを補助動力源とするハイブリッド車両の提供。
【解決手段】主として車両の高速走行時、車両表面の正圧を受ける部分から導入し負圧となる部分から排出される走行風によって風車14を回転させ、風車14の回転エネルギーをフライホイール15の回転エネルギーに転換・蓄積し、蓄積されたフライホイール15の回転エネルギーをもって車両駆動の補助動力源16、あるいはその一部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高速走行時車両の走行抵抗の主体的要因となる空気抵抗による車両走行風を、車両駆動の補助エネルギー源とするハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載した風車を車両走行風によって回転させ、前記風車の回転によって発電機を駆動して発電し、発電された電気エネルギーをバッテリーに蓄積して車両駆動の補助エネルギーとする車両走行風利用方法が考えられている。
しかしこの方法では、走行風を電気エネルギーに変換しているため、発電機、バッテリー、および車両駆動用モータが必要であること、また発電機効率、蓄電効率、車両駆動用モータの駆動効率等、によって走行風エネルギーの利用効率、すなわちエネルギー回生効率、が悪くなるという問題点がある(特許文献1〜特許文献4)。
【0003】
一方、車両駆動の補助エネルギー源として電気エネルギーではなく機械エネルギー、すなわちフライホイールに蓄積された回転エネルギーを利用する方法がある。これは車両減速時において通常摩擦エネルギーとして消費されてしまう車両の運動エネルギーをフライホイールに蓄積して利用しようとするものである(非特許文献1)。
この方法は補助エネルギーの形態として電気エネルギーではなく機械エネルギーであるため前記回生効率の問題は改良されるが、フライホイールへのエネルギー採取・蓄積量は車両減速時の車両エネルギーに限定されているため、一般車両用補助エネルギー源としては十分であるとはいえない。
【0004】
【特許文献1】実開平6−60202
【特許文献2】特開2003−278641
【特許文献3】特開2008−127994
【特許文献4】特開2008−185026
【非特許文献1】フライホイールでモータと電池に勝つ方法 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20080205/146997/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は上記車両の走行風を補助エネルギー化するに際してのエネルギーの回生効率の問題、および車両の運動エネルギーを回生するに際しての回生エネルギー量の問題、を解決したハイブリッド車両の構成方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両における空気抵抗は本来車両の正面投影面積に比例して大きくなる。したがって空気抵抗を少なくするためには正面投影面積を極力小さくする必要がある。しかし、車両の規格、用途、あるいはデザイン上の制限から正面投影面積の極小化には限度がある。そこで次善の策として、極小化した車両正面投影面積を有する車両表面の受ける風圧中、正圧部分(ラジエーターやベンチレーターの空気取入口等)からできるだけ効率よく大量の走行風を取り込んでそれを車両の駆動エネルギーに活用する方法が考えられる。
【0007】
上記車両走行風、すなわち車両走行時の走行抵抗の一要因である空気抵抗によって発生する風、を補助エネルギー化するに際しては、
従来考えられている走行風によって風車を回転させ、風車の回転によって発電機を駆動して発電し、発電された電力をバッテリーあるいはキャパシターに蓄積して車両駆動の補助エネルギーとして活用する方法に代えて、
本願発明においては走行風によって風車を回転させ、風車の回転エネルギーを(電気エネルギーに変換せずそのまま)機械エネルギーとしてフライホイールの回転エネルギーとして蓄積し、それをCVT(無段変速機)、クラッチを介して車両駆動に活用する。
【0008】
上記の如く構成、動作させることによって、走行風エネルギーを電気エネルギーに変換・蓄積・車両駆動エネルギー化するに際しての発電機、バッテリー、駆動用モータ等の付加すべき構成要素の問題、およびエネルギー回生効率の問題が、本願発明においては走行風エネルギーを風車で取り込みその回転エネルギーをそのままフライホイールの回転エネルギーとして蓄積し、さらに蓄積された回転エネルギーを車両駆動輪の駆動エネルギーとして変速機を経由してそのまま利用することから、大幅に改善されることになる。
【0009】
また、速度vで走行している質量mの車両は、運動エネルギーE=m・v2/2を有している。通常この車両が減速する、すなわち速度vを減少させる際には前記運動エネルギーは通常は摩擦ブレーキによって消費されてしまう。このエネルギーを回生して後の発進・加速に利用しているのが、現在最も省エネルギーで環境にやさしい車両としてのエンジン/モータによるハイブリッドカーである。
すなわち車両減速時、前記運動エネルギーは発電機によって電気エネルギーに変換されバッテリーに蓄積される。これに対して前記運動エネルギーを電気エネルギーに変換・蓄積する代わりにフライホイールに蓄積・保存して活用しようとする試みもなされている。
【0010】
エネルギー蓄積用としてフライホイール利用に関してはジャイロ効果の問題もある。しかしジャイロ効果に対しては車両進行方向左右対称に2組の走行風導入路、風車、およびフライホイール、を設け、左右のフライホイールの回転の向きを逆に設定することによって、各々のフライホイールのジャイロ効果を相殺させることができる。したがってフライホイールには一定量の質量が必要であることを加味しても、補助エネルギー源のために付加すべき構成要素、あるいは回生効率、に関してエネルギー蓄積を電気量で行う場合に比べてフライホイールを利用するほうが総合的には優れていると考えられる。
【発明の効果】
【0011】
上記本願発明、すなわち走行風のエネルギーをフライホイールに蓄積して車両駆動の補助エネルギー源とすること、によって、省エネルギー、排出ガス量削減を目的としたハイブリッド車両の実現が価格的にもまた出力パワー密度、エネルギー蓄積要素(具体的にはバッテリー)の廃棄時の環境問題等の問題も解決され、容易となる。
以上本願発明使用形態としてハイブリッド車両を説明してきたが、2輪車を含む自動車以外の移動体であって走行抵抗に相当する抵抗がその移動体移動抵抗の大きな要因となるもの、例えば船舶、鉄道等、への補助エネルギー源としての本願発明の適用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
また、フライホイールに蓄積するエネルギー源として、本願発明による走行風によるエネルギーに加えて、従来から考えられている車両減速時の運動エネルギーをも合わせて蓄積することによって、より大量のまた異なった走行条件下、すなわち主として高速走行時および減速時、に各々得られるエネルギーを統合した効率的な補助エネルギー源とすることができる。
但し、車両の運動エネルギーの活用に際しては、補助エネルギー源として変換・蓄積する以前に、車両運動エネルギーの惰性走行への活用による直接的・効率的な活用を優先度1とし、それに余る部分、即ち制動により消費すべきすべき運動エネルギー部分についてのみフライホイールに蓄積することによる回生が望ましい。
【実施例1】
【0013】
図1に本願発明によるハイブリッド車両のエネルギーフローを示す。
図1において、
11は、エンジン等ハイブリッド車両の主動力源、
12は、主動力源および補助動力源の動力(駆動エネルギー)を車輪に伝達する無段変速機、
13は、主動力源および補助動力源の動力を得て車両を駆動する車輪、
14は、主として高速走行中の車両走行風によって回転する風車であり、本風車は走行車両表面の受ける風圧の正圧部分から導入され、負圧部分から排出される走行風によって駆動される。
15は、風車14の回転エネルギーを蓄積し、無段変速機12を介して車輪13を駆動するフライホイール、
16は、風車14とフライホイール15から構成される補助動力源、
である。
【0014】
また、図1中の
aは、主動力源11による駆動エネルギー、
bは、補助動力源16による駆動エネルギー、
cは、主動力源11および補助動力源16の合成駆動エネルギー、
である。
ただし合成駆動エネルギーcによる車輪13の駆動は、車両の走行状態あるいは補助エネルギー蓄積状態等によって適宜最適化される。
上記の如きエネルギーフローを構成することによって、車輪13は主動力源11および補助動力源16を構成するフライホイール15からエネルギーを得て車両駆動を行うことができる。
【実施例2】
【0015】
図2に、フライホイールの回転エネルギー源として走行風に加えて車両減速時の運動エネルギー回生によるエネルギーフローをしめす。
図1との相違点は、補助エネルギーとしてのフライホイール15へのエネルギー蓄積が、図1の場合は風車14からだけであるのに対し、図2においては風車14からに加えて車両制動時の回生エネルギーが加わっていることである。
従って本例においては無段変速機の構成が実施例1における主動力源および補助動力源から車輪への動力伝達に加えて、車輪から補助動力源への回生エネルギーの伝達も行うことになる。
【0016】
すなわち、b‘は、補助動力源16による駆動エネルギーであるが、これは風車14の回転エネルギーの蓄積に加えて、車両制動時の車輪13からの回生エネルギーdが蓄積されたものである。
従って主動力源11及び補助動力源16の合成駆動エネルギーの内容は図1の場合のcと異なりc‘となる。
ここで合成駆動エネルギーc’による車輪13の駆動は、cと同様車両の走行状態あるいは補助エネルギーの蓄積状態によって適宜最適化される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本願発明による「風車+フライホイール」を補助動力源とするハイブリッド車両によって、ハイブリッド車両の一層の低価格化・高効率化が実現できる。加えて補助エネルギー源として電気エネルギーを使用する場合に最も問題となるバッテリーの重量・サイズおよび廃棄時の環境問題も改善される。
さらに、風車とフライホイールを一体化することによって風車からフライホイールへのエネルギー伝達損失は改善されること、構成が単純化すること、によって上記効果は一層上がることになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明によるハイブリッド車両の車両駆動エネルギーフロー(その1)説明図
【図2】本願発明によるハイブリッド車両の車両駆動エネルギーフロー(その2)説明図である。
【符号の説明】
【0019】
図1、および図2において、
11:主動力源、
12:無段変速機、
13:車輪、
14:風車、
15:フライホイール、
16:補助動力源、
【0020】
a:主動力源11による車輪駆動エネルギー、
b:補助動力源16による車輪駆動エネルギー、
b‘:補助動力源16による車輪駆動エネルギー、
c:主動力源11および補助動力源16の合成車輪駆動エネルギー、
c‘:主動力源11および補助動力源16の合成車輪駆動エネルギー、
d:車両減速時の回生エネルギー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載した風車の車両走行風による回転エネルギーをフライホイールに蓄積し、これを車両駆動の補助エネルギーとすることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
車両進行方向左右対称の位置に風車およびフライホイールの組み合わせを各々設置し、かつフライホイールの回転の向きを逆に設定することによってフライホイールのジャイロ効果を相殺することを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
風車機能とフライホイール機能を一体化して構成することを特徴とする請求項1、あるいは請求2記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
車両に搭載した風車の車両走行風による回転エネルギーに加えて車両減速時の運動エネルギーをフライホイールに蓄積し、これを車両駆動の補助エネルギーとすることを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−149785(P2010−149785A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332303(P2008−332303)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(301001199)
【Fターム(参考)】