説明

ハイブリッド追記型光学式記録担体

本発明は、SA−CDディスクの全内容のバックアップを取るよう使用され得る追記型記光学式記録担体に係る。提案された記録担体は、第1の透明な基板層、高データ記憶容量を有する有機色素材料を有する第1の半透明な追記型情報層、第2の透明な基板層、第1の基板層より低いデータ記憶容量を有する有機色素材料を有する第2の追記型情報層、及びカバー層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束放射線ビームを用いて情報を記録する2つの異なる種類の追記型情報層を有する追記型光学式記録担体に係る。
【背景技術】
【0002】
異なる読出しシステムと互換性がある2つの情報層を有するハイブリッド光学式ROMディスクは、米国特許第6,434,107号明細書(特許文献1)において開示される。2つの情報層を有するハイブリッド・スーパーオーディオCD(SA−CD)は、スーパーオーディオCDシステムの記載のパート1物理的性質において説明される。かかるSA−CDの第1の情報層は、1.2mmの深さで位置付けられ、従来のCD音声データを有する。この情報層は、約780nmの波長λ及び0.45の開口数NAを使用して従来のCD再生機によって読み込まれ得る。第2の情報層は、0.6mmの深さで位置付けられる。この第2の半透明な情報層は、高密度(HD)層であり、スーパーオーディオの品質における音声データを有する。この高密度情報層は、約650nmの波長λ及び0.6の開口数NAを使用するDVD状の光学を使用して読み込まれる。
【特許文献1】米国特許第6,434,107号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、かかるSA−CDの全内容のバックアップを取るよう使用され得る入手可能な追記型媒体はない。従って、本発明は、かかる記録可能な光学式記録担体を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載される通りの追記型光学式記録担体によって本発明に従って達成される。該記録担体は、
− 第1の透明な基板層、
− 高データ記憶容量を有する有機色素材料を有する第1の半透明な追記型情報層、
− 第2の透明な基板層、
− 前出の第1の情報層より低い記憶容量密度を有する有機色素材料を有する第2の追記型情報層、及び、
− カバー層、
を有する。
【0005】
本発明は、低いデータ密度(データ記憶容量)を有する従来のCD−R情報層を高データ密度を有する半透明のDVD+R情報層と組み合わせるという考えに基づく。この組み合わせによって、追記型光学式記録担体は得られ、ハイブリッドCD/DVDディスクの全内容のバックアップを格納することが原理上できる。かかるハイブリッド光学式ディスクは、適切な適温を有するコンビ・レコーダ(CD/DVDレコーダ)において記録され得る。
【0006】
本発明の望ましい実施例は従属請求項において定義付けられる。望ましくは、第1の情報層は、二層DVD+RディスクにおいてL0層として使用される情報層である。二層光学式データ記憶媒体に対して使用されるべき適切な層は、国際特許出願PCT/IB03/00090(PHNL030043)及びPCT/IB03/01377(PHNL030310)において説明されている。これらの文献において与えられたL0層に関する全ての説明は、ここに参照として盛り込まれる。
【0007】
これらの文献において説明される通りの第1の情報層の望ましい実施例は、請求項3乃至6において定義付けられる。第1の望ましい実施例によれば、第1の情報層は、第1の波長λで第1の複素屈折率
【0008】
【数8】

、第2の波長λで第2の複素屈折率
【0009】
【数9】

、厚さd、前出の第1の波長λで光の反射値R、及び、前出の第2の波長λで光伝送値Tを有する。以下の条件、
【0010】
【数10】

、k1<0.3、k2<0.1、及び、dが
【0011】
【数11】

の範囲にあることを満たす。式中、λは、第1の情報層において情報を記録するよう使用される放射ビームの波長であり、λは、第2の情報層において情報を記録するよう使用される放射ビームの波長である。
【0012】
第2の情報層から少なくとも58%の第2の情報層の記録及び読出しに対して使用される前出の第2の波長λで反射率Rを達成するよう、第1の情報層は、第2の情報層の記録及び読出しに対して使用される第2の波長λで非常に透過的にされる。
【0013】
望ましくは第1の情報層の透過率Tは、λ=780nmである第2の波長で少なくとも76%であるよう選択され、望ましくは、第2の情報層上での記録に対して使用される。請求項3に定義付けられたパラメータの選択によって、望ましくは780nmである第2の波長での十分に高い透過率、及び、望ましくは650nmである第1の波長での十分に高い反射率は得られ、同時に、情報層は容易に作られ得る。この考えの更なる実施例は、上述された国際特許出願PCT/IB03/01377において説明され、該更なる実施例は参照としてここに盛り込まれる。
【0014】
溝部分の厚さdRGの望ましい値は、請求項5において定義付けられる。望ましくは、非金属反射層は、第1の情報層に近接して与えられ、追加的な反射層は、SiO,SiC,ZnS,ZnS−SiO(80:20)等の誘電材料又はSi等の半導体材料を有し、
【0015】
【数12】

の範囲における厚さdを有する。
【0016】
原理上、第1の情報層として無色素追記型情報層を使用することが可能である。しかしながら、色素の使用は、第2の(CD−R)情報層上に記録するよう使用される波長での高密度記録色素の非常に高い固有の透明性、という重要な有利点を有する。更なる一実施例では、第1及び大の基板層は、0.55mm乃至0.65mmの範囲、特には0.57mm乃至0.63mmの範囲において、望ましくは約0.6mmである厚さを有する。
【0017】
既に記述された通り、追加的な半透明の反射層は、更なる一実施例において第1の情報層と第2の情報層との間に与えられる。この追加的な反射層は、SiO又はSiCで作られた誘電(非金属)鏡層、又はAg等で作られた金属鏡層のいずれかであり得る。更には、半透明の反射層は1つより多い層で作られ得、例えば、第1の情報層で記録/読出しに対して使用される波長(望ましくはλ=650nm)での反射、及び、第1の情報層での記録/読出しに対して使用される透過率(望ましくはλ=780nm)を微調整するよう、誘電鏡の原則を使用する。
【0018】
SA−CDの全内容のバックアップを取る上述された使用の他に、本発明に従った記録担体は、読込み専用のSA−CDを作ることは非常に高額になるため、少容量のSA−CDが流通する可能性を与える。故に、SA−CD−ROMディスクの代わりに追記型記録担体は、同量の情報を記録され得、より容易で安価となる。
【0019】
更には、本発明に従った記録担体は、ROMディスクの製造工程におけるオーサリングに対して使用され得る。音声内容等のディスクの大量生産の開始前に、常に第1のテスト・ディスクでディスクが適切に作動するか否か、例えば内容が正しいか、及びディスクが優れた再生を与えるか等を確認する。これにはとりわけスタンパー製作、ディスク成形等を有する完全な製造工程が要求されるため、多少高価な手順となる。追記型記録担体上でディスクの内容のテスト記録を行うほうが、より早く且つ安価である。本発明に従った記録担体は、故に、SA−CDディスクのオーサリング工程において使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明はこれより、図面を参照してより詳細に説明される。
【0021】
図1中、本発明に従った記録担体の第1の実施例の概略的レイアウトが図示される。波長λを有する記録/読出しレーザビームLが入射する側からみて、記録担体は以下の層、
− 例えば約0.6mmの厚さを有する第1透明な基板層、
− 高いデータ密度を有し、DVD+Rにおける情報層に対して使用される有機色素材料を有し、例えば約80nmの厚さを有する、第1の少なくとも半透明な追記型情報層2、
− 接着層3、
− 例えば約0.6mmの厚さを有する第2の透明な基板層4、
− CD−Rディスクの情報層において使用される有機色素材料を有し、第1の情報層2より低いデータ密度を有し、例えば約150nmの厚さを有する、第2の情報層5、及び、
− カバー層6、
を有する。
【0022】
情報層2,5は、簡略性のために図1中には図示されない誘電層、鏡層又は反射層等の更なる層も一般的には有する適切な記録スタックを代表するものとして図示されている、ことが留意されるべきである。
【0023】
第2の情報層5の位置は、2つの基板層1と4、及び接着層3の合計の光学的厚さによって確定される。即ち、第2の情報層5の位置は、光学的厚さn+n+nによって確定される。式中、nは、第2の波長λ(例えば780nm)での複素屈折率である
【0024】
【数13】

の実数部を示し、dは厚さを示す。特定の一実施例では、第2の情報層5の位置は、1.86±0.1の光学的深さにあり、その結果、従来のCD(CD基板の厚さ1.2mm、CD基板の屈折率1.55)における光学的深さと同一である第2の情報層5の光学的厚さをもたらす。光学的厚さn×dは、ここで関連する。即ち、第1の情報層2に対してこれは、CD:d×n=1.2mm×1.55に類似するべきである。上述の計算によって、スペーサ層、接着層、及び基板層の場合によっては異なる屈折率に起因する第2の情報層の物理的深さを修正することができる。
【0025】
第1の情報層2におけるデータの読出し及び記録に対して、レーザビームLは、DVD+R技術において使用される通りの約650nmの波長λを望ましくは有して使用される一方、第2の情報層5におけるデータの読出し及び記録に対して、レーザビームLは、CD−R技術において使用される通りの約780nmの波長λを望ましくは有して使用される。夫々の波長での情報層2及び5の反射レベルは、夫々少なくとも15%及び58%であるべきである。第2の情報層5に対してこれを達成するには、第1の情報層2が、第2の情報層5上でのデータの記録/読出しに対して使用される第2の波長λ2、即ち780nmで高い伝送値を有さなければならない、ことを意味する。従って望ましい一実施例において色素材料は、複素屈折率である
【0026】
【数14】

の実数部分n650が少なくとも2.0であるよう、また、複素屈折率である
【0027】
【数15】

の虚数部分k650が第1の波長λで少なくとも0.3より小さくあるよう、及び、複素屈折率である
【0028】
【数16】

の虚数部分k780が第2の波長λで少なくとも0.1より小さくあるよう、選択される。
【0029】
更には、第1の情報記録層2の厚さに対して、第1の記録層に隣接する非金属半透明反射層の場合は、
【0030】
【数17】

を、第1の情報層に隣接する薄い金属半透明反射層の場合は、
【0031】
【数18】

を有することが有利である、と示されている。式中、λ1は、第1の情報層2のデータの記録/読出しに対して使用され、故に例えば650nmである。
【0032】
本発明に従った記録担体の一実施例の一部分は、図2中に概略的に図示される。この実施例において、少なくとも半透明な反射層7は、第1の情報層2と第2の基板層4との間に与えられ、前出の第1の情報層2と前出の反射層7は記録スタックを形成し、反射/伝送波長調整、化学安定性等の目的に対し追加的な層(図示せず)を場合によっては有し得る。図示されない接着層3が与えられるが、また、特定の実施例においては完全に省略され得る、ことが留意されるべきである。更には、基板層1並びに第1の情報層2及び追加的反射層7の溝構造が図示される。示される通り、第1の基板層1は、深さgを有する案内溝を有し、第1の情報層2は、溝間の部分における厚さdRLより大きい溝部分における第1の厚さdRGである異なる厚さを有する。対照的に、追加的な反射層7は、略一定の厚さdを有する。第1の情報層2の読出し/記録に対して使用される波長λで望ましい信号を得るよう、溝の深さに対する望ましい選択は、詳細にわたるスタック設計に依存して、(λ/650)×50nm<g<(λ/650)×180nmであるようにされる。
【0033】
更には、厚さに対する望ましい値は、dRGに対して、前出の第1の情報層の厚さdRGが、条件
【0034】
【数19】

を満たすようにされる。溝間の部分の厚さdRLは、
【0035】
【数20】

の範囲にあるべきである一方、反射層7の厚さdは、
【0036】
【数21】

の範囲にあるべきである。溝の深さgに対する特定の値は、50nm<g<180nmである。特定の一実施例の実際の模範値は、g=80nm,d=60nm,dRL=32nm,dRG=80nmである。
【0037】
図3は、第1の情報層2及び反射層7を有する第1の情報記録スタックに対して使用される典型的な色素材料の光学定数n,kを図示する。示される通り、第2の情報層の記録/読出しに対して使用される波長λ=780nmでは、nは約2.0であり、kは約0である一方、第1の情報層2の記録/読出しに対して使用される波長λ=655nmでは、nは約2.4であり、kは約0.1である。
【0038】
異なる材料が、反射層7に対して使用され得る。特には追加的なSiO誘電反射層、及び追加的なSiC誘電反射層及び追加的なAg金属反射層である異なる材料に対する追加的な反射層7を有する第1の情報層2の波長780nmでの透過率は、反射層の厚さに依存して、夫々図4乃至図6に図示される。これらのダイアグラムの使用によって、適切な厚さは、透過率が所望の範囲内にあるよう選択され得る。
【0039】
本発明は、読込み専用のハイブリッドSA−CDの全内容のバックアップを取るよう使用され得る追記型光学式記録担体を与える。更には、少容量のハイブリッドSA−CDが本発明に従った記録担体の使用によって与えられ得る。又更には、かかる記録担体は、ハイブリッド読込み専用SA−CDのオーサリング工程において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に従った光学式記録担体の概略的レイアウト図である。
【図2】本発明に従った記録担体の他の実施例の一部分の概略的レイアウト図である。
【図3】第1の情報層に対して使用される典型的な色素の光学定数を図示する。
【図4】780nmでのSiOの誘電鏡層を有する第1の情報層の透過率を図示する。
【図5】780nmでのSiC誘電鏡層を有する第1の情報層の透過率を図示する。
【図6】780nmでのAg金属鏡層を有する第1の情報層の透過率を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追記型光学式記録担体であって、
第1の透明な基板層と、
高データ記憶容量を有する有機色素材料を有する第1の半透明な追記型情報層と、
第2の透明な基板層と、
前記第1の基板層より低いデータ記憶容量を有する有機色素材料を有する第2の追記型情報層と、
カバー層と、
を有する記録担体。
【請求項2】
前記第1の情報層は、二層DVD+RディスクにおいてL0層として使用される情報層である、
請求項1記載の記録担体。
【請求項3】
前記第1の情報層は、
第1の波長λで第1の複素屈折率
【数1】

と、
第2の波長λで第2の複素屈折率
【数2】

と、
厚さdと、前記第1の波長λで光の反射値Rと、前記第2の波長λで光伝送値Tと、
を有し、
以下の条件、
【数3】


【数4】

、及び、dが、
【数5】

の範囲にあることを満たし、
λは、前記第1の情報層において情報を記録するよう使用される放射線ビームの波長であり、
λは、前記第2の情報層において情報を記録するよう使用される放射線ビームの波長である、
請求項1又は2記載の記録担体。
【請求項4】
前記第1の基板層は、深さgを有する案内溝を有し、前記案内溝は、前記第1の情報層に近接する基板層の側方にあり、
前記第1の情報層は、情報を記録するよう使用される放射ビームの波長λで複素屈折率、
【数6】

と、前記溝部分における厚さdRGと、前記溝の間の部分における厚さdRLとを有し、前記溝の深さgは、nmで表されるλを有して(λ/650)×50nm<g<(λ/650)×180nmの範囲にある、
請求項1記載の記録担体。
【請求項5】
前記第1の情報層の厚さdRGは、条件、
【数7】

を満たす、
請求項4記載の記録担体。
【請求項6】
前記第1の波長λは、約650nmであり、
前記第2の波長λは、約780nmである、
請求項3又は4記載の記録担体。
【請求項7】
前記第2の情報層は、CD−Rディスクにおいて使用される情報層である、
請求項1記載の記録担体。
【請求項8】
前記第1位及び第2の基板層は、0.55乃至0.65nmの範囲にある厚さを有し、特には略0.6nmである、
請求項1記載の記録担体。
【請求項9】
前記第1の情報層と前記第2の基板層との間に、特にはSiO又はSiCで作られた誘電鏡層、あるいはAgで作られた金属鏡層である追加的な半透明の反射層を更に有する、
請求項1記載の記録担体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2006−528818(P2006−528818A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520968(P2006−520968)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051253
【国際公開番号】WO2005/010874
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】