説明

ハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法

本発明は、ハイブリッド電気自動車(HEV)用バッテリーの最大出力を推定する方法に関するものである。上記方法は、上記自動車が運行できる複数のバッテリー充電状態(SOC)に応じたバッテリーの最大充放電出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記自動車が運行できる複数の温度におけるバッテリーの最大出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記自動車の走行中にバッテリーの容量が放電されることに伴うバッテリー出力の退化率を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記それぞれの段階を通じて得られる相関関係に基づいて、バッテリーの最大出力(Powermax)を次の関数を通じて推定する段階とを含む。
Powermax= F(SOC, temp, accumulated discharge Ah)
= F(SOC, temp) × F(accumulated discharge Ah)

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ハイブリッド電気自動車(HEV)用バッテリーの最大出力を推定する方法に関するものであって、より詳しくは、車両に搭載されるバッテリーの最大出力に影響を及ぼす様々な環境変数による最大出力を正確に推定してバッテリーの利用率を向上させ、またバッテリーの過充電及び過放電を防止するようにするハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法に関する。
【0002】
[背景技術]
電気自動車は駆動燃料として一般に2次電池のリチウム‐イオン電池を用いており、上記電池から出力される電源により動力発生装置を駆動させ、これを動力伝達装置を通じて駆動ホイールに伝達して駆動ホイールを回転させることで、自動車を駆動させる。
【0003】
上記電池において、放電が進むにつれて陽極と陰極間の端子電圧は漸次減少してからある限度に至ると、急激に低下して放電終止電圧に至るようになり、その後からは放電能力がなくなる。放電終止電圧の以下まで放電するようになれば、電解液と化学的反応を起こし電流を生成する極板が損傷されて、蓄電池としての機能が喪失される。
【0004】
したがって、電気自動車はバッテリーに充電されている容量だけ走行することができ、走行中駆動ホイールの回転力を逆利用して発電した後再充電させながら用いるようにしている。バッテリーが完全に放電するまで車両を運行して走行中に停止した場合、再充電することは難しい。従って、走行中にバッテリーの残存容量(SOC;State of Charge)を正確に把握することが重要である。しかし、バッテリーの不規則性(温度、放電などによって変わる)のため、既存車両の燃料ゲージのように充電量を正確に測定することは困難である。
【0005】
バッテリーの残存容量をチェックする方法として、電池電圧により残存容量を確認する方法と放電容量により残存容量を確認する方法などが常用化されている。
【0006】
しかし、前者の方法の場合、放電量によって電圧が減少する。すなわち急加速の際に残存容量に関係なく電圧が瞬間的に減少する。また、後者の方法の場合、時速何キロメートルで定速走行したのかまたは市内走行をしたのか等のような負荷条件によって電池が使用できる容量が異なるので、残存容量を確認するためのアルゴリズムが非常に複雑になる問題点がある。
【0007】
一方、バッテリーの最大出力に影響を与える変数は、バッテリーの充電状態、温度環境及び走行の際に放電された容量による出力の退化率である。一般に、ハイブリッド車両に適用されたバッテリーは車両の運行の際に頻繁に発生する急加速及び急減速によって急激な充放電を経験するようになる。このような急激な充放電によってバッテリーの充電状態と最大出力は変化率の大きい動的な挙動を示す。また、バッテリーの最大出力は温度によって大きい変化を示す。このような様々な変数によって、車両の運行中にバッテリーの最大出力を正確に予測することは非常に難しい。
【0008】
[発明の開示]
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決する。
【0009】
本発明の目的は、車両に適用されたバッテリーの最大出力を正確に推定し、この情報を車両の制御機に実時間で伝達してモーターの出力をバッテリーの状態に適合するように制御することで、バッテリーの利用率を向上させバッテリーの過充電及び過放電を防止してバッテリーの寿命を極大化する方法を提供することである。
【0010】
上記目的は、車両が運行される様々な環境(バッテリーの充電状態、温度)における最大出力を調査し、バッテリーの充電状態と最大出力間、及びバッテリーの温度と最大出力間の相関関係を示す関係式を作り、ハイブリッド自動車用バッテリーの最大出力を推定することにより達成される。
【0011】
より詳しくは、本発明によるハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法は、上記自動車が運行できる複数のバッテリー充電状態(SOC)に応じたバッテリーの最大充放電出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記自動車が運行できる複数の温度(temp)におけるバッテリーの最大出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記自動車が走行する際にバッテリーの容量が放電されることに応じたバッテリー出力の退化率を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、上記それぞれの段階を通じて得られる相関関係に基づいて、バッテリーの最大出力(Powermax)を次の関数を通じて推定する段階とを含むことを特徴とする。
Powermax= F(SOC, temp, accumulated discharge Ah)
= F(SOC, temp) × F(accumulated discharge Ah)
【0012】
本発明によると、上記関数F(SOC, temp)は、次の関係式を通じて計算される。
F(SOC, temp) = F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp),
上記式において、F(temp) = D × temp + D × temp + D(D 〜 Dは、定数)
【0013】
本発明によると、上記バッテリーの最大出力は、自動車が走行する際に放電されるバッテリーの容量を累積させそれによるバッテリーの退化率を示す次の関係式を通じて補償される。
F(accumulated discharge Ah) = C + C + C + C + Ck + C(C〜Cは、定数)(kは、[0,300000]の範囲にあり、関数に入力値として入力される場合、[−1,1]の範囲の値に変わって入力される)
【0014】
したがって、本発明によると、上記バッテリーの最大出力は、次の関係式を通じて推定される。
Powermax = {F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp)} × (C + C + C + C + Ck + C
【0015】
本発明の一実施例によると、上記推定された最大出力値をバッテリー管理システム(BMS)を介して上記ハイブリッド電気自動車の車両制御装置に伝達してバッテリーの充放電出力を制御する段階をさらに含むことができる。
【0016】
前述及びその他の本発明の目的、特徴及び利点は添付図面と併せて下記の詳細な説明からより明確に理解できるであろう。
【0017】
[発明の実施形態]
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。以下の本発明の説明においては、本発明の対象を不明確にしないとき、組み込まれる公知の機能及び構成に対する詳細な説明は省略する。
【0018】
バッテリーの最大出力は様々な変数、すなわち、バッテリーの充電状態(SOC)、温度(temp)及び自動車が走行する際に放電される容量に応じた出力の退化率により決定される。従来技術によると、バッテリーの最大出力を推定する際に、これら変数がバッテリーの出力に及ぼす影響を考慮せずに、ある一つの変数(例えば、SOC)によるバッテリーの出力を推定する方法のみが開発されて実用化されている。従って、その開発された方法はバッテリーの出力に影響を及ぼす各変数を考慮しなかったことによる結果、バッテリーの出力が正確に推定できない。
【0019】
しかし、本発明者らはバッテリーの最大出力をより正確に推定するために、バッテリーの充電状態、温度及び走行する際に放電されるバッテリーの容量全てがバッテリーの出力に影響を及ぼすという事実を明確に認識し、これら変数の全てを考慮した新しいバッテリー最大出力の推定方法を開発した。
【0020】
まず、図1ないし図3に示したように、本発明に従ってバッテリーの最大出力を推定するために、車両が運行できる各種の環境(走行中の放電容量に応じた出力の退化率、SOC、温度)における最大出力を調査し、各変数と出力間の相関関係を算出する。このように算出された相関関係は次のような過程を通じてバッテリーの最大出力を推定するのに用いられる。
【0021】
すなわち、バッテリーの最大充放電出力(Powermax)は、次のような関数で表すことができる。
[数1]
Powermax = F(SOC, temp, accumulated discharge Ah)
= F(SOC, temp) × F(accumulated discharge Ah)
【0022】
上記式の中でF(SOC, temp)関数は曲線関数にすると次のように表すことができる。
[数2]
F(SOC, temp) = F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp)
【0023】
上記数式2において、F(temp)は次のような温度に対する関数で表すことができる。
[数3]
F(temp) = D × temp + D × temp + D(D 〜 Dは、定数)
【0024】
一方、バッテリーの出力は自動車が走行する際にバッテリーが放電されるにつれて退化され得る。本発明によると、このような自動車の走行の際にバッテリーの放電につれて減少するバッテリー出力の退化率を補償することで、最大出力推定の正確性をさらに高める。
【0025】
具体的に、走行の際に放電されるバッテリーの容量を累積させて出力の退化率を推定するのに、図4に示したように、累積放電容量とバッテリーの出力退化に関する実験データとを適合させる。上記データを用いて、次のような数学式4を誘導することができる。すなわち,
[数4]
F(accumulated discharge Ah) = C + C + C + C + Ck + C (C 〜 Cは、定数)
【0026】
本発明の一実施例によると、上記数式4は次のように具体化して表される。
F(accumulated discharge Ah) = −16.3986k + 15.0026k + 13.307k − 8.38698k − 7.96289k + 82.3028
【0027】
上記式において、kは、累積放電容量であって[0,300000]の範囲にあり、関数に入力値として入力される場合、[−1,1]の範囲の値に変わって入力される(すなわちk' = [−1,1])。例えば、kが0であれば、k'は−1になり、kが150,000であれば、k'は0になり、kが300,000であれば、k'は1の値を有する。すなわち、比例的にスケールを減らして入力することができる。
【0028】
数式2及び数式4を数式1に代入すれば、バッテリーの最大充放電出力を次のような式で推定することができる。
[数5]
Powermax = { F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp)} × C + C + C + C + Ck + C
【0029】
すなわち、バッテリーの出力に影響を及ぼす各変数に応じたバッテリーの出力を抽出して両者間の相関関係を利用すれば、数学式5を通じてバッテリーの充放電出力が正確に推定できるようになる。
【0030】
上記過程を通じて推定された最大充放電出力値はバッテリー管理システム(BMS)を介してハイブリッド電気自動車の車両制御装置に伝達されてバッテリーの充放電出力を制御するようになる。
【0031】
<実施例>
本発明者らは本発明のバッテリー出力推定方法の正確性を検証するための実験を行い、図5及び図6に示したような結果を得た。
【0032】
すなわち、図5及び図6は、25℃における実際の最大充放電出力と、前述した推定式を通じて推定された最大出力とを比較したグラフである。グラフから、約2.2%の誤差しかないことが分かる。これくらいの誤差は実際にバッテリーの充放電出力を制御する際に許容可能な範囲の誤差である。つまり、実際の出力とほぼ等しいバッテリーの最大出力が推定できることを示している。
【0033】
[産業上の利用可能性]
上記のように、本発明によると、ハイブリッド電気自動車に装着されるバッテリーの出力に影響を及ぼすSOC、温度、自動車の走行の際にバッテリーの容量が放電されることによる出力の退化率を全て考慮して、バッテリーの出力を予め正確に推定することで、バッテリーの利用率を向上させバッテリーの過充電及び過放電を防止することができる。
【0034】
本発明は特定の好適な実施形態を参照して示され、説明されたが、本発明が属する技術分野において通常の知識を持つ者により本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例に従って、累積放電容量とバッテリーの出力退化率との関係を示す図面である。
【図2】本発明の一実施例に従って、バッテリーの残存容量(SOC)とバッテリーの最大充放電出力の関係を示す図面である。
【図3】本発明の一実施例に従って、温度とバッテリーの最大出力との関係を示す図面である。
【図4】本発明の一実施例に従って、自動車が走行する際に放電されたバッテリーの容量と出力退化率の実験例を示すグラフである。
【図5】25℃におけるバッテリーの実際の最大充放電出力と、本発明の一実施例に従って推定されたバッテリーの最大出力を比較したグラフである。
【図6】25℃におけるバッテリーの実際の最大充放電出力と、本発明の一実施例に従って推定されたバッテリーの最大出力を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法であって、
上記自動車が運行できる複数のバッテリー充電状態(SOC)に応じたバッテリーの最大充放電出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、
上記自動車が運行できる複数の温度(temp)におけるバッテリーの最大出力を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、
上記自動車の走行の際にバッテリーの容量が放電されることに応じたバッテリー出力の退化率を抽出して両者の相関関係を算出する段階と、
上記それぞれの段階を通じて得られる相関関係に基づいて、バッテリーの最大出力(Powermax)を次の関数を通じて推定する段階とを含むことを特徴とするハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法。
Powermax = F(SOC, temp, accumulated discharge Ah)
= F(SOC, temp) × F(accumulated discharge Ah)
【請求項2】
上記関数においてF(SOC, temp)は、次の関係式を通じて計算されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法。
F(SOC, temp) = F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp) × SOC + F(temp)
上記式において、F(temp) = D × temp + D × temp + D(D 〜 Dは、定数)
【請求項3】
上記バッテリーの最大出力は、自動車の走行の際に放電されるバッテリーの容量に応じたバッテリーの退化率を示す次の関係式を通じて補償されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法。
F(accumulated discharge Ah) = C + C + C + C + Ck + C
上記式において、C 〜 Cは、定数であり、kは、バッテリーの放電容量として[0,300000]の範囲にあり、関数に入力値として入力される場合、[−1,1]の範囲の値に変わって入力される。
【請求項4】
上記バッテリーの放電容量に応じた出力の退化率は、次の式により表されることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法。
F(accumulated discharge Ah) = − 16.3986k + 15.0026k + 13.307k − 8.38698k − 7.96289k + 82.3028
【請求項5】
上記推定された最大出力値をバッテリー管理システム(BMS)を介して上記ハイブリッド電気自動車の車両制御装置に伝達してバッテリーの充放電出力を制御する段階をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド電気自動車用バッテリーの最大出力推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−532472(P2008−532472A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557934(P2007−557934)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000731
【国際公開番号】WO2006/107140
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】