説明

ハニカム構造体および排気ガス処理装置

【課題】高温下で使用しても前述のような破損の生じにくいハニカム構造体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明では、相互に略平行な第1および第2の端面と、両方の端面をつなぐ外周面とを有し、隔壁を介して、前記第1の端面から第2の端面まで貫通する複数の貫通セルを有するセラミックブロックと、当該ハニカム構造体の外周面を構成するコート層とを少なくとも備えるハニカム構造体であって、前記第2の端面での前記コート層の厚さは、前記第1の端面での前記コート層の厚さよりも厚いことを特徴とするハニカム構造体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体およびそのようなハニカム構造体を備える排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両または建設機械等の内燃機関用の各種排気ガス処理装置が提案され、実用化されている。一般的な排気ガス処理装置は、エンジンの排ガスマニホールドに連結された排気管の途上に、例えば金属等で構成されたケーシングを設け、その中にハニカム構造体を配置した構造となっている。ハニカム構造体は、排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕獲して、排気ガスを浄化するフィルタ(DPF:ディーゼルパティキュレートフィルタ)として、あるいは、排気ガス中の有害ガス成分等を触媒反応によって浄化する触媒担持体として機能する。
【0003】
例えば、ハニカム構造体がDPFとして使用される場合、ハニカム構造体には、多孔質なセル壁を隔てて長手方向に延伸する複数の柱状セルが構成される。それぞれのセルは、いずれか一方の端部が封止材で封止されているため、ハニカム構造体内に導入された排気ガスは、必然的にセル壁を通過してからハニカム構造体外部へ排出される。従って、排気ガスがこのセル壁を通過する際に、排気ガス中のパティキュレート等を捕獲することができる。また、ハニカム構造体が触媒担持体として使用される場合、ハニカム構造体のセル壁の長手方向の表面には、触媒担持層および触媒が設置され、この触媒により、排気ガスに含まれるCO、HCおよびNOx等の有害ガスが浄化される。通常、前述のようなハニカム構造体は、外周部にマット等の保持シール材が巻回された後、金属等で構成されたケーシング内に装着して使用される。
【0004】
なお、ハニカム構造体は、高温での焼成工程等を経て製造されるセラミックブロックを基本部材とすることにより構成されるが、焼成直後のセラミックブロックの外形寸法の精度は、あまり良好ではない。従って、通常、セラミックブロックの外周部には、寸法調整のためのコート層が設置される。例えば、セラミックブロックの長手方向に沿って、コート層の厚さを調整することにより、完成後に得られるハニカム構造体の真円度あるいは円筒度の精度を向上させる技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特公平7−14485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、実際の使用の際にハニカム構造体に加わる熱(および熱応力)は、ハニカム構造体の長手方向に対して一様ではないことが知られている。例えば、ハニカム構造体を排気ガスのDPFとして使用した場合、ハニカム構造体の出口側近傍では、排気ガスの熱により温度が上昇する傾向にある。特に、一度フィルタとして使用されたハニカム構造体は、捕獲されたパティキュレートを除去する再生処理(フィルタを再利用可能にする復元処理)時に、排気ガスの排出側において、温度が著しく上昇する傾向にある。従ってハニカム構造体の外周部(すなわちコート層)の強度が不十分な場合、熱応力によって、この箇所に亀裂が生じたり、ハニカム構造体が破損したりする危険性が極めて高くなるという問題がある。さらに、ハニカム構造体を触媒担持体として使用した場合も、排気ガス中のHCガス等との触媒反応の結果生じた熱によって、ハニカム構造体の出口側が高温となる傾向にあり、同様の問題が生じ得る。従って、このような熱の影響下においても十分な強度を有するハニカム構造体が必要となっている。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、高温下で使用しても前述のような破損の生じにくいハニカム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、相互に略平行な第1および第2の端面と、両方の端面をつなぐ外周面とを有し、隔壁を介して、前記第1の端面から第2の端面まで貫通する複数の貫通セルを有するセラミックブロックと、当該ハニカム構造体の外周面を構成するコート層とを少なくとも備えるハニカム構造体であって、
前記第2の端面での前記コート層の厚さは、前記第1の端面での前記コート層の厚さよりも厚いことを特徴とするハニカム構造体が提供される。
【0008】
ここで、前記コート層は、前記第1の端面から第2の端面に向かって、厚さが単調に増加する部分および/または厚さが一定の部分を有しても良い。あるいは前記コート層は、前記第1の端面から第2の端面に向かって、厚さが直線的に増加しても良い。
【0009】
また、本発明によるハニカム構造体は、前記第1の端面から第2の端面まで、前記第1の端面と平行な面の断面積が実質的に一定であっても良い。あるいは、本発明によるハニカム構造体は、前記第1の端面と平行な面の断面積が、前記第1の端面から第2の端面に向かって増大しても良い。
【0010】
また、前記複数の貫通セルの少なくとも一部は、前記第1の端面と平行な面の断面積が、前記第1の端面から第2の端面に向かって減少しても良い。
【0011】
また、本発明によるハニカム構造体の第1および第2の端面は、いずれも円形状であっても良い。
【0012】
また、前記貫通セルは、前記第1の端面から見たとき、少なくとも2種類の形状を有しても良い。
【0013】
また、前記貫通セルは、いずれか一方の端部が封止されていても良い。あるいは、前記隔壁には、触媒が設置されていても良い。
【0014】
ここで、前記隔壁の厚さは、0.1mm〜0.3mmの範囲であることが好ましい。
【0015】
また、前記セラミックブロックは、複数の柱状のセラミックユニットと該セラミックユニット同士を接合する接着層とを有しても良い。
【0016】
また、本発明では、排気ガスの導入部および排出部を有し、該導入部および排出部の間に設置されたハニカム構造体を備える排気ガス処理装置であって、
前記ハニカム構造体は、前述のいずれかのハニカム構造体であり、前記第1の端面が、前記排気ガスの導入部に対向するように設置されることを特徴とする排気ガス処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、高温下で使用しても破損の生じにくいハニカム構造体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面により本発明の形態を説明する。なお、以下の記載においては、排気ガス中のパティキュレートを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として使用されるハニカム構造体を例に、本発明を説明する。ただし、本発明のハニカム構造体は、後述のように、触媒担持体に使用することも可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0019】
図1には、本発明によるハニカム構造体の一例を模式的に示す。また図2には、図1のハニカム構造体のA−A断面図を示す。
【0020】
図1に示すように、本発明のハニカム構造体100は、2つの端面(以下、第1の端面160および第2の端面170と称する)と、両端面をつなぐ外周面180とを有する。また、本発明のハニカム構造体100は、一体型セラミックブロック150と、この一体型セラミックブロック150の2つの端面(以下、一体型セラミックブロックの第1の端面159および第2の端面169と称する)を除く外周部(側面)に設置されたコート層120とを有する。従って、ハニカム構造体100の外周面180は、コート層120で構成されている。また、ハニカム構造体100の第1の端面160は、一体型セラミックブロックの第1の端面159と、これと同じ側のコート層120の端面とで構成される。同様に、ハニカム構造体100の第2の端面170は、一体型セラミックブロックの第2の端面169と、これと同じ側のコート層120の端面とで構成される。
【0021】
図1、図2に示すように、一体型セラミックブロック150には、第1の端面159から第2の端面169に向かって延伸する多数のセル11が並設されており、セル11同士を隔てるセル壁13がフィルタとして機能するようになっている。すなわち、一体型セラミックブロック150に形成されたセル11は、図2に示すように、一体型セラミックブロックの第1の端面159または第2の端面169のいずれかに相当する側が、封止材12により目封じされており、一つのセル11に流入した排気ガスは、必ずそのセル11を隔てるいずれかのセル壁13を通過した後、他のセル11から排出されるようになっている。
【0022】
なお、本発明では、一体型セラミックブロック内に構成された全てのセルにおいて、一方の端部は、封止材によって封止されており、コート層によって封止されている訳ではないことに留意する必要がある。換言すれば、各セルの端部は、一体型セラミックブロックの第1および第2の端面によって構成され、コート層120によって形成されている訳ではない。
【0023】
ここで本発明では、ハニカム構造体100の外周面180を構成するコート層120において、ハニカム構造体100の第2の端面170での厚さが、第1の端面160での厚さよりも厚くなっていることに特徴がある。
【0024】
例えば、図1、2の例では、コート層120の厚さは、第1の端面160での0.2mmから第2の端面の1.0mmまで、直線的に増加している。なお、このハニカム構造体100では、図2に示すように、一体型セラミックブロック150の第1の端部159と平行な面(すなわちX軸に垂直な面)の最大幅(図2の場合は直径)は、第1の端部159から第2の端部169に向かって、直線的に減少している。また、この最大幅の変化傾向は、前述のコート層120の厚さ変化の傾向と相殺される関係にあり、結果的に、ハニカム構造体100の外周面180の輪郭線は、ハニカム構造体100の長手方向(図2のX軸)に対して平行になっている。さらに、一体型セラミックブロック150をこのような形状にするため、セル11は、一体型セラミックブロック150の第1の端面159から第2の端面169に向かって、X軸に垂直な面の断面積が減少するように形成されている。
【0025】
このようなハニカム構造体100では、コート層120が第2の端面170でより厚くなっているため、この箇所での高温強度が向上する。従って、排気ガス処理装置において、ハニカム構造体100の第2の端面170が、より高温となる側(通常は、排気ガスの排出側)に配設されるように、ハニカム構造体100を排気ガス処理装置内に設置することで、ハニカム構造体100の高温特性を改善することが可能となり、ハニカム構造体100の使用時の破損を有意に抑制することが可能になる。
【0026】
コート層の厚さがハニカム構造体の強度に及ぼす影響の一例を参考までに示せば、我々の測定では、コート層の厚さが均一の場合、セル壁の厚さが0.4mmで、気孔率が42%、セル密度200cpsiのハニカム構造体では、コート層の厚さを0.2mmから1mmに増加させることによって、アイソスタティック強度が約2倍に増大する(7.3MPaが14.1MPaに増大する)と言う結果が得られている。ここで、アイソスタティック強度とは、排ガス処理体に等方的な静水圧荷重を負荷した際に破壊が生じるときの圧縮破壊荷重であり、社団法人自動車技術協会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている。
【0027】
なお、図1および図2の例では、コート層120は、膜厚がハニカム構造体100の第1の端面160から第2の端面170に沿って、直線的に増加するように設置されているが、コート層120のX軸方向の厚さの変化態様は、これに限られるものではない。例えば、コート層120は、第1の端面160から第2の端面170に向かって、厚さが単調に増加する部分と厚さが一定の部分の両方を有しても良く、あるいは厚さが単調に増加する部分のみを有しても良い。例えば、図3には、コート層120の厚さが、ハニカム構造体100の第1の端面160から第2の端面170に向かって「単調に増加」する部分と、「一定の」部分とを有するハニカム構造体100が示されている。また、図4および図5には、コート層120の厚さが、ハニカム構造体100の第1の端面160から第2の端面170に向かって、非直線的に「単調に増加」する部分のみを有するハニカム構造体100が示されている。
【0028】
さらに、図1および図2の例では、ハニカム構造体100の長手軸(X軸)に垂直な面の断面積は、実質的に一定であるが、ハニカム構造体100の形状は、これに限られるものではない。例えば、ハニカム構造体100の長手軸に垂直な面の断面積は、第1の端部160から第2の端部170に沿って、増大または減少しても良い。例えば、長手軸に垂直な面の断面積が一定の一体化セラミックブロック150を用い、この側面に、第1の端部159から第2の端部169まで、厚さが「単調に増加」するコート層120を設置した場合、ハニカム構造体100の長手軸に垂直な面の断面積は、第1の端部160から第2の端部170に沿って単調に増加する。
【0029】
すなわち、本発明において重要なことは、コート層120が、ハニカム構造体100の第1の端面160に比べて第2の端面170の側で、より厚く形成されていることであり、この特徴が維持される限り、ハニカム構造体および/または一体型セラミック自体の形状は、あまり重要ではないことに留意する必要がある。なお、図3乃至5では、コート層120と一体型セラミックブロック150の境界を明確にするため、コート層120が斜線で示されている。
【0030】
このような本発明によるハニカム構造体は、例えば、車両の排気ガス処理装置に用いることができる。
【0031】
図6には、本発明によるハニカム構造体100が装着された排気ガス処理装置70の一例を模式的に示す。図において、ハニカム構造体100は、セル11の一方の端部が封止されたDPFとして使用されている。
【0032】
図6に示すように、排気ガス処理装置70は、主としてハニカム構造体100、ハニカム構造体100を収容する金属製ケーシング71、およびハニカム構造体100とケーシング71との間に配設され、ハニカム構造体100を適切な位置に保持する保持シール材72で構成される。また、排気ガス処理装置70の一方の端部(導入部)には、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスを導入するための導入管74が接続されており、排気ガス処理装置70の他方の端部(排出部)には、排気ガスを排出するための排出管75が接続されている。図において矢印は、排気ガスの流れを示している。
【0033】
本発明では、ハニカム構造体100の第1の端面160が、排気ガス処理装置70の排気ガス導入側となるようにして、ケーシング71内に設置されている。従って、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスは、導入管74を通って、ケーシング71内に導入され、導入管74と面するハニカム構造体の第1の端面160の側が開放されたセル11から、ハニカム構造体100に流入される。ハニカム構造体100に流入した排気ガスは、セル壁13を通過し、このセル壁13でパティキュレートが捕集されて浄化された後、ハニカム構造体の第2の端面170の側が開放されたセル11を通って、排気ガス処理装置から排出され、最終的に、排出管75を通って外部へ排出される。ちなみに、ハニカム構造体100が触媒担持体として使用される場合は、排気ガスが触媒担持体のセル壁11を通過する際に、CO、HCおよびNOx等、排気ガス中の有害な成分が除去され、排気ガスが浄化される。
【0034】
ここで、本発明による排気ガス処理装置70は、温度がより高温となる排気ガスの排出側、すなわち、ハニカム構造体100の第2の端面170において、コート層120の厚さがより厚くなるように構成されている。従って、ハニカム構造体100は、コート層の厚さが一定の従来のハニカム構造体に比べて、第2の端面170において、より高い強度を有し、第2の端面170近傍の温度が高温となっても、ハニカム構造体100に破損が生じにくいという特徴を有する。
【0035】
図7は、一般的な(すなわち、コート層が長手方向に対して一定の厚さを有する)ハニカム構造体を有する排気ガス処理装置を再生処理した際の、ハニカム構造体の温度変化を示したものである。図において、細い曲線は、ハニカム構造体の入口側近傍(入口端面から長手方向に13mm入った面の略中央部)の温度変化に対応し、太い曲線は、ハニカム構造体の出口側近傍(出口端面から長手方向に13mm入った面の略中央部)の温度変化に対応している。この図のように、ハニカム構造体の再生処理時には、ハニカム構造体の出口側の温度が900℃を超え、極めて高温となる場合がある。しかしながら、本発明によるハニカム構造体では、このような再生処理の際にも、出口側近傍で破損が生じにくくなるという特徴を有する。
【0036】
以上の説明では、一体成形によって製作された一体型セラミックブロック150を用いて構成されるハニカム構造体100を例に、本発明の特徴を説明した。しかしながら、本発明は、これとは別の型式の、例えば接着材からなる接着層210を介して、複数の多孔質ハニカムユニット230を接合したセラミックブロック250により構成されるハニカム構造体200にも適用することが可能である。
【0037】
図8には、そのように構成されたハニカム構造体の一例を示す。また、図9には、セラミックブロックを構成する多孔質ハニカムユニットの一例を示す。なお以下、前述の図1および図2に示すハニカム構造体を「一体型ハニカム構造体」と称し、図8のような、接着層210を介して複数の多孔質ハニカムユニット230を接合することにより構成される型式のハニカム構造体を「接合型ハニカム構造体」と称する。
【0038】
図8に示すように、接合型ハニカム構造体200は、互いに実質的に平行な第1の端部260および第2の端部270と、両端面をつなぐ外周面280とを有する。また、接合型ハニカム構造体200は、セラミックブロック250と、該セラミックブロック250の側面に設置されたコート層220とを有する。
【0039】
コート層220は、セラミックブロック250の両端面を除く側面に設置され、接合型ハニカム構造体200の外周面280を形成している。ここで、コート層220は、接合型ハニカム構造体200の第2の端面270の側の厚さが、第1の端面260の側よりも厚くなるように設置されている。
【0040】
セラミックブロック250は、ハニカム構造体200の前記第1および第2の端面260,270に対応する位置に、それぞれ、第1の端部259および第2の端部269を有する。また、セラミックブロック250は、例えば、図9に示すような四角柱状の多孔質ハニカムユニット230を、接着層210を介して複数個(図8の例では、縦横4列ずつの16個)接合させ、さらに、切断または研磨等の機械加工等により、外周部を所定の形状に定形することにより構成される。図9に示すように、多孔質ハニカムユニット230は、中心軸(X軸)に沿って並設された多数のセル21を有し、セル21同士を隔てるセル壁23がフィルタとして機能する。そのため、前述の一体型セラミックブロック150と同様に、セル21は、いずれか一方の端部が封止材22により目封じされている。
【0041】
図8および9の例では、セラミックブロック250を構成する各多孔質ハニカムユニット230は、長手方向(図9のX軸)に対して平行な側面を有する。またコート層220は、セラミックブロックの第1の端面から第2の端面まで、厚さが単調に増加している。このため、完成後の接合型ハニカム構造体200は、X軸に垂直な面の断面積が第1の端部260から第2の端部270に沿って単調に増加する外周面形状を有する。
【0042】
ただし、接合型ハニカム構造体の外周形状は、これに限られるものではない。例えば、接合型ハニカム構造体は、前述の一体型ハニカム構造体100のように、輪郭線が長手方向に平行な外周面280を有しても良い。この場合、コート層220の厚さ変化傾向を相殺するように、セラミックブロックの側面を形成する必要がある。そのようなセラミックブロックは、長手方向に垂直な面の断面積が、一方の端部から他方の端部に向かって減少する形状を有する多孔質ハニカムユニットを複数個組み合わせることにより、製作することができる。
【0043】
前述の一体型セラミックブロック150、およびセラミックブロック250を構成する多孔質ハニカムユニット230(以下、これらをまとめて「セラミック構成材」という)は、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージュエライト、ムライト、シリカ、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等で構成される。また「セラミック構成材」は、金属シリコンと炭化珪素との複合材等、2種類以上の材料で構成されても良い。金属シリコンと炭化珪素との複合材を用いる場合には、金属シリコンを全体の0〜45重量%となるように添加することが望ましい。
【0044】
多孔質ハニカムユニットの場合、上記セラミック材料の中では、耐熱性が高く、機械的特性に優れ、さらに熱伝導性が良い炭化珪素質セラミックが望ましい。なお、炭化珪素質セラミックとは、炭化珪素が60重量%以上含まれる材料をいう。一体型セラミックブロックの場合、耐熱衝撃性が高く、熱膨張係数が小さい、コージェライト、チタン酸アルミニウムが望ましい。
【0045】
「セラミック構成材」のセル壁13、23と封止材12、22は、実質的に同一の材料で構成され、実質的に同一の気孔率を有することが望ましい。これにより、両者の密着強度を高めることができるとともに、セル壁13、23の熱膨張率と封止材12、22の熱膨張率との間の整合を図ることができ、製造時や使用時の応力によって、封止材12、22とセル壁13、23との間にクラックまたは隙間が生じることを防止することができる。
【0046】
封止材12、13のセル長手方向の長さは、特に限定されないが、例えば、1〜20mmであることが望ましく、3〜10mmであることがより望ましい。
【0047】
セル壁(隔壁)13、23の厚さは特に限定されないが、強度の点から望ましい下限は、0.1mmであり、圧力損失の点から望ましい上限は、0.6mmである。セル壁が薄くなると強度が弱くなるため、セル壁13、23の厚さが0.1〜0.3mmの薄壁である場合に、本発明の効果がより発揮されることとなる。なお、セル壁13、23の厚さは、セルの長手方向に沿って、必ずしも一定である必要はない。例えば、図2に示した側面形状を有する一体型セラミックブロック150において、少なくとも一部のセル壁13(特に外周に近い側のセル壁)の厚さは、図2とは異なり、第1の端面160から第2の端面170に向かって徐々に減少しても良い。同様に、多孔質ハニカムユニットについても、該多孔質ハニカムユニットが、一方の端面から他方の端面に向かって、長手方向に対して垂直な面の断面積が徐々に減少する側面形状を有する場合、少なくとも一部のセル壁23(特に外周に近い側のセル壁)の厚さは、一方の端面から他方の端面に向かって徐々に減少しても良い。
【0048】
本発明のハニカム構造体100、200において、コート層120、220は、いかなる材料で構成されても良い。例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維および/または無機粒子とからなるものを使用することができる。
【0049】
上記無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナ等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記無機バインダの中では、シリカゾルが望ましい。
【0050】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等を使用することができ、これらは単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記有機バインダの中では、カルボキシルメチルセルロースが望ましい。
【0051】
上記無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバーを使用することができる。これらは、単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記無機繊維の中では、シリカ−アルミナファイバーが望ましい。
【0052】
上記無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を使用することができ、具体的には、炭化珪素、窒化珪素、窒化ヒ素等からなる無機粉末またはウィスカー等を使用することができる。これらは、単独で使用しても、2種類以上のものを混合して使用しても良い。上記無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化珪素が望ましい。
【0053】
なお、通常の場合、コート層220は、前記成分を含むペーストを原料として調製し、これを所定の箇所に設置後、乾燥させることにより形成される。原料となるペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。
【0054】
本発明の接合型ハニカム構造体200において、接着層210は、コート層220と同じ材料であっても異なる材料であっても良い。
【0055】
本発明のハニカム構造体100、200において、第1の端面160、260(または第2の端面170、270)と平行な面の断面形状は、いかなる形状であっても良い。例えば、ハニカム構造体の断面形状は、図1、図8に示すような円形の他、楕円形または多角形であっても良い。多角形状の場合は、各頂点部が面取りされていても良い。
【0056】
また、ハニカム構造体の第1の端面の側から見たときのセル11、21の形状は、いかなる形状であっても良く、例えば、正方形、長方形、三角形、六角形または八角形である。さらに、各セルの前記形状は、全て同一の形状である必要はなく、相互に異なる形状であっても良い。
【0057】
図10には、第1および第2の端面161、171と、両者をつなぐ外周面181とを有する、図1とは別の一体型ハニカム構造体101の一例を示す。また、図11および図12には、接合型ハニカム構造体を構成する、図9とは別の多孔質ハニカムユニットを、一方の端面の側から見た図を示す。図10の例では、一体型セラミックブロック151は、2種類のセル、すなわち八角形と四角形の断面形状のセル11a、11bを備えている。また、四角形セル11bは、ハニカム構造体101の第1の端面161の側で封止されており、八角形セル11aは、ハニカム構造体101の第2の端面171の側で封止されている。同様に、図11の多孔質ハニカムユニット231は、断面形状が八角形と四角形のセル21a、21bを有し、図12の多孔質ハニカムユニット232は、断面形状がさらに別の八角形と四角形のセル21c、21dを有する。これらのセル構成配置では、セル壁の厚さは、軸方向に垂直な断面で見た場合、全てのセル11、21が等しいセル断面寸法を有するハニカム構造体(例えば、図1および図8)のセル壁に比べて、相対的に壁量が低下する傾向にある。従って、特に、ハニカム構造体の第2の端面の側では、強度がより低下する傾向にある。しかしながら、本発明では、前述のコート層の効果により、このようなハニカム構造体の場合にも、出口側の端部での使用時の破損が抑制されるという特徴が得られる。
(一体型ハニカム構造体の製作方法)
以下、図1および2に示した一体型ハニカム構造体100の製造方法の一例について説明する。
【0058】
まず、前述のセラミック材料を主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、一体型セラミックブロックの成形体を製作する。次に、押出成形された成形体を、マイクロ乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させて、乾燥体とする。
【0059】
ここで、第1の端面から第2の端面に向かって、長手方向に垂直な面の断面積が減少する側面を有する一体型セラミックブロックを製作するため、成形体を製作する際には、以下のいずれかの方法を採用することが好ましい。
1)成形体の押出成型時の速度を漸増または漸減させる。押出速度を速めることで、長手方向に対して垂直な面の断面積を低下させることができ、逆に押出速度を低下させることで、長手方向に対して垂直な面の断面積を増加させることができる。
2)成形体の乾燥工程において、長手方向における乾燥速度を変化させる。乾燥速度が高く、速く乾燥される箇所ほど、成形体の収縮率が大きくなり、長手方向に対して垂直な面の断面積が減少するため、この収縮性の違いを利用して、成形体の長手方向に垂直な面の断面積を変化させることができる。
【0060】
なお、原料ペーストは、これに限定されるものではないが、例えば製造後の一体型セラミックブロックの気孔率が40〜75%となるものが好ましく、例えば前述のようなセラミックからなる粉末に、バインダおよび分散溶媒等を加えたものであっても良い。セラミック粉末の粒径は、特に限定されないが、例えば0.3〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と、0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
【0061】
前記バインダとしては、これに限られるものではないが、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等を使用することができる。前記バインダの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部であることが望ましい。
【0062】
前記分散溶媒としては、これに限られるものではないが、例えばベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール、水等が使用される。分散溶媒は、原料ペーストの粘度が所定範囲内となるように適量配合される。
【0063】
これらのセラミック粉末、バインダおよび分散溶媒は、アトライター等で混合し、ニーダー等で十分に混練した後、押出成形される。
【0064】
また前記原料ペーストには、必要に応じて、成形助剤を添加しても良い。成形助剤としては、これに限られるものではないが、例えばエチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石けん、ポリビニルアルコール等が使用される。また前記原料ペーストには、必要に応じて、酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加しても良い。
【0065】
乾燥工程の後、得られた乾燥体の両端面において、所定のセルの端部に、封止材ペーストを充填し、各セルのいずれか一方の端部を目封じする。
【0066】
前記封止材ペーストとしては、これに限定されるものではないが、後工程を経て形成される封止材の気孔率が30〜75%となるものが好ましく、例えば、前述の原料ペーストと同様のものを使用しても良い。
【0067】
次に、前記封止材ペーストが充填された乾燥体に対して、所定の条件で脱脂処理(例えば200〜500℃)および焼成(例えば1400〜2300℃)処理を行うことにより、一体型セラミックブロックが得られる。前記乾燥体の脱脂および焼成の条件は、従来のハニカム構造体を製造する際に使用されるものを適用することができる。
【0068】
次に、一体型セラミックブロックの外周面に、コート層用ペースト(前記原料ペースト、前記封止材ペーストまたは他の原料ペーストであっても良い)を塗布して、乾燥、固着させることにより、コート層を形成する。ここで、コート層用ペーストは、該ペースト塗布後に、一体型セラミックブロックの側面が長手方向と実質的に平行になるように塗布される。
【0069】
その後、コート層を乾燥固化させることにより、第2の端面のコート層の厚さが第1の端面のコート層に比べて厚くなっている一体型ハニカム構造体を製造することができる。
【0070】
なお、以上の製造方法は一例であって、他の方法によって一体型ハニカム構造体を製造することも可能であることは、当業者には明らかである。例えば、一体型セラミックブロックの各セルの端部の封止処理と、一体型セラミックブロックの成形体の焼成処理の順番を逆にしても良い。
(接合型ハニカム構造体の製作方法)
次に、図8に示した接合型ハニカム構造体200の製作例について説明する。
【0071】
まず前述のセラミック材料を主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、例えば四角柱状のセラミックユニット成形体を製作する。
【0072】
次に、押出成形されたセラミックユニット成形体を、マイクロ乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させてセラミックユニット乾燥体とする。次に、セラミックユニット乾燥体の所定のセルの端部に、封止材ペーストを所定量充填し、各セルのいずれか一方の端部を目封じする。
【0073】
次に、前記封止材ペーストが充填されたセラミックユニット乾燥体に対して、所定の条件で脱脂処理(例えば200〜500℃)および焼成(例えば1400〜2300℃)処理を行うことにより、例えば四角柱状の多孔質ハニカムユニットを製造することができる。
【0074】
次に、多孔質ハニカムユニットの側面に、後に接着層となる接着層用ペーストを均一な厚さで塗布した後、この接着層用ペーストを介して、順次他の多孔質ハニカムユニットを積層する。この工程を繰り返し、所望の寸法の(例えば、多孔質ハニカムユニットが縦横4個ずつ配列された)セラミックブロックを製作する。なお前記接着層用ペーストには、前述の原料ペーストまたは封止材ペーストを使用しても良い。
【0075】
次にこのセラミックブロックを加熱して、接着層用ペーストを乾燥、固定化させて、接着層を形成させるとともに、各多孔質ハニカムユニット同士を固着させる。
【0076】
次にダイヤモンドカッター等を用いて、セラミックブロックを、例えば円柱状に切断加工し、外周が軸方向に沿って平行なセラミックブロックを製作する。
【0077】
次に、セラミックブロック250の外周面に、コート層用ペースト(前記接着材ペーストまたは他の原料ペーストであっても良い)を均一に塗布して、これを乾燥、固着させることにより、コート層を形成する。
【0078】
コート層が乾燥固化した後、第2の端面のコート層の厚さが第1の端面のコート層に比べて厚くなるように、長手軸方向に沿ってコート層を研磨する。あるいは、予め第2の端部でのコート層用ペーストの厚さを、第1の端部での厚さよりも厚く設置しておき、これを乾燥、固着させることにより、第2の端面での厚さがより厚いコート層を形成しても良い。このような工程を経て、本発明による一体型ハニカム構造体を製造することができる。
【0079】
また、複数の異なる形状の多孔質ハニカムユニットを作製し、これらを接着層用ペーストを介して積層して、セラミックブロックとしても良い。この場合、外周の切断加工を省略することができる。
(触媒担持体の製作方法)
なお、前述の記載では、ハニカム構造体100、200をDPFとして使用する場合を例として示したが、ハニカム構造体は、排気ガスに含まれるCO、HCおよびNOx等を浄化するための触媒担持体として使用することも可能である。そこで、以下、本発明のハニカム構造体を用いて、触媒担持体を製作する方法について説明する。
【0080】
本発明のハニカム構造体を触媒担持体として使用する場合、前述のセル端部の封止処理に代えて、セル壁への貴金属等の触媒の設置処理が行われる。
【0081】
まず最初に、セル壁に触媒担持層が設置される。触媒担持層としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、セリア等の酸化物セラミックが挙げられる。また、セル壁にアルミナ触媒担持層を形成する方法としては、例えば、ハニカム構造体をアルミナ粉末を含む溶液中に浸漬させて、引き上げた後、これを加熱する方法がある。その後、さらにCe(NO3)3等の溶液中にハニカム構造体を浸漬させて、触媒担持層中に希土類元素を含浸させても良い。
【0082】
次に、触媒担持層に触媒が設置される。触媒材料は、特に限定されないが、例えば白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が挙げられる。またアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属等を含んだ化合物を担持させても良い。白金触媒を設置する方法としては、例えば、触媒担持層が設置された「セラミック構成材」をジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH3)2(NO2)2]HNO3)等に含浸させて、加熱する方法等が利用される。
【0083】
なお一体型ハニカム構造体100の場合は、一体型セラミックブロック150が製作されてから、上記工程により触媒が設置される。一方、接合型ハニカム構造体200の場合、触媒の設置は、多孔質ハニカムユニット230が製作された後であれば、どの段階で実施されても良いことに注意する必要がある。
【0084】
以下、実施例により本発明の効果を詳しく説明する。
【実施例1】
【0085】
[接合型ハニカム構造体の製作]
まず、γアルミナ粒子(平均粒径2μm)40重量%、シリカ−アルミナ繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長100μm、アスペクト比10)10重量%、シリカゾル(固体濃度30重量%)50重量%を混合し、得られた混合物100重量部に対して有機バインダとしてメチルセルロース6重量部、可塑剤及び潤滑剤を少量加えて更に混合・混練して混合組成物を得た。次に、この混合組成物を押出成形機により押出成形を行い、生の成形体を得た。
【0086】
次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて生の成形体を十分乾燥させ、400℃で2時間保持して脱脂した。その後、800℃で2時間保持して焼成を行い、セル断面形状が略正方形で、セル密度が93個/cm2(600cpsi)、隔壁厚が0.2mmの、角柱状(34.3mm×34.3mm×150mm)のハニカムユニットを得た。
【0087】
次に、γアルミナ粒子(平均粒径2μm)29重量%、シリカ−アルミナ繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長100μm)7重量%、シリカゾル(固体濃度30重量%)34重量%、カルボキシメチルセルロース5重量%及び水25重量%を混合して、封止材ペーストを調製した。ハニカムユニットの所定のセルの端部に、この封止材ペーストを所定量充填し、各セルのいずれか一方の端部を目封じした。
【0088】
次に、前述の封止材ペーストと同組成の接着層用ペーストを用いて、ハニカムユニット同士を接合させた。接着層の厚さは、約1mmとした。このようにして、縦横にハニカムユニットが4列ずつ接合されたセラミックブロックを作製した。
【0089】
次に、ダイヤモンドカッターを用いて、このセラミックブロックが円柱形状となるように切断した。得られたセラミックブロックの第1および第2の端面は、直径が約142.8mmの円であった。
【0090】
次に、外周面にコート層を形成するため、上述の接着層用ペーストを、前記セラミックブロックの側表面(すなわち切断面)に塗布した。ここで、接着層用ペーストは、第1の端面(厚さ0.2mm)から、第2の端面(厚さ1.0mm)まで、厚さが徐々に増加するように塗布した。次に、これを120℃で乾燥後、700℃で2時間保持し、接着層および外周コート層の脱脂を行い、コート層の厚さが第1の端面から第2の端面に沿って、徐々に増加するハニカム構造体を得た。ハニカム構造体の全長は150mmであった。
[再生試験]
前述のように製作したハニカム構造体を用いて排気ガス処理装置を構成し、再生試験を行った。排気ガス処理装置は、ハニカム構造体の外周に無機繊維マット(厚さ6mm)を巻き回し、これを金属ケーシング(内径150mm×長さ190mm)内に設置して構成した。なお、ハニカム構造体は、第1の端面が排気ガス処理装置の入口側に相当するようにして、装置内に装着した。
【0091】
再生試験は、エンジン(2リットル直噴エンジン)の排気管の流入側に排気ガス処理装置を設置して、以下のように行った。まず、エンジンを回転数2000rpm、トルク100Nmの条件で9時間運転させ、ハニカム構造体に約18.8g/Lのスートを捕集させた。次に、ハニカム構造体に捕獲されたスートを燃焼させるため、エンジンの運転をポストインジェクション方式に切り替え、ポストインジェクション開始から1分後に、ハニカム構造体の入口温度が約600℃となる条件で運転した。スートを燃焼させた後に、エンジンを停止して、排気ガス処理装置からハニカム構造体を回収し、ハニカム構造体の破損状況を確認した。
【0092】
試験後に、ハニカム構造体の第2の端面近傍には、破損は生じていなかった。
【比較例1】
【0093】
実施例1の場合と同様の方法により、接合型ハニカム構造体を製作し、排気ガス処理装置を構成した。ただし、この比較例1では、外周面のコート層の厚さは、ハニカム構造体の長手方向に対してほぼ一定であり、0.2mmであった。
【0094】
実施例1の場合と同様の方法により、このハニカム構造体を装着した排気ガス処理装置を用いて再生試験を行った。試験後に、ハニカム構造体の第2の端面近傍に、破損が生じていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一体型ハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のハニカム構造体のA−A線での断面図である。
【図3】本発明による別のハニカム構造体の側面図の一例である。
【図4】本発明によるさらに別のハニカム構造体の側面図の一例である。
【図5】本発明によるさらに別のハニカム構造体の側面図の一例である。
【図6】本発明のハニカム構造体が設置された排気ガス処理装置の一例を模式的に示した断面図である。
【図7】一般的なハニカム構造体の再生処理の際の入口側および出口側における温度変化を示すグラフである。
【図8】本発明の接合型ハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図9】本発明の接合型ハニカム構造体を構成する多孔質ハニカムユニットの一例を模式的に示した斜視図である。
【図10】2種類の断面形状のセルを有する一体型ハニカム構造体を示す図である。
【図11】2種類の断面形状のセルを有する多孔質ハニカムユニットを、一方の端面の側から見た図である。
【図12】2種類の断面形状のセルを有する別の多孔質ハニカムユニットを、一方の端面の側から見た図である。
【符号の説明】
【0096】
11,21 セル
12,22 封止材
13,23 セル壁
70 排気ガス処理装置
71 ケーシング
72 保持シール材
74 導入管
75 排出管
100,101,200 ハニカム構造体
120,121,220 コート層
150,151 一体型セラミックブロック
159,259 セラミックブロックの第1の端面
160,260 ハニカム構造体の第1の端面
169,269 セラミックブロックの第2の端面
170,270 ハニカム構造体の第2の端面
180,181,280 外周面
210 接着層
230,231,232 多孔質ハニカムユニット
250 セラミックブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に略平行な第1および第2の端面と、両方の端面をつなぐ外周面とを有し、
隔壁を介して、前記第1の端面から第2の端面まで貫通する複数の貫通セルを有するセラミックブロックと、当該ハニカム構造体の外周面を構成するコート層とを少なくとも備えるハニカム構造体であって、
前記第2の端面での前記コート層の厚さは、前記第1の端面での前記コート層の厚さよりも厚いことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記コート層は、前記第1の端面から第2の端面に向かって、厚さが単調に増加する部分を有し、または厚さが単調に増加する部分と一定の部分の両方を有することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記コート層は、前記第1の端面から第2の端面に向かって、厚さが直線的に増加することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
当該ハニカム構造体は、前記第1の端面から第2の端面まで、前記第1の端面と平行な面の断面積が実質的に一定であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
当該ハニカム構造体は、前記第1の端面と平行な面の断面積が、前記第1の端面から第2の端面に向かって増大することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記複数の貫通セルの少なくとも一部は、前記第1の端面と平行な面の断面積が、前記第1の端面から第2の端面に向かって減少することを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
第1および第2の端面は、いずれも円形状であることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記貫通セルは、前記第1の端面から見たとき、少なくとも2種類の形状を有することを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記貫通セルは、いずれか一方の端部が封止されていることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記隔壁には、触媒が設置されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記隔壁の厚さは、0.1mm〜0.3mmの範囲であることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記セラミックブロックは、複数の柱状のセラミックユニットと該セラミックユニット同士を接合する接着層とを有することを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
排気ガスの導入部および排出部を有し、該導入部および排出部の間に設置されたハニカム構造体を備える排気ガス処理装置であって、
前記ハニカム構造体は、前記請求項のいずれか一項に記載のハニカム構造体であり、前記第1の端面が、前記排気ガスの導入部に対向するように設置されることを特徴とする排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−215337(P2008−215337A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192485(P2007−192485)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】