説明

ハニカム構造体

単位体積当たりのパティキュレートの捕捉量が多く、かつ、長期間の使用でもアッシュの不均一な蓄積やクラック等の発生がない耐久性に優れるハニカム構造体を提供することを目的とするものであって、大容積貫通孔群と小容積貫通孔群の2種類の貫通孔を、隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなるハニカム構造体の多孔質セラミック部材の1または複合数個の組合わせからなるものであって、セラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成したハニカム構造体を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
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本出願は、2003年6月23日に出願された日本国特許出願特願2003−178797号を基礎出願として優先権主張する出願である。
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される車輌の排気ガス中のパティキュレート等を除去するフィルタや、触媒担持体等として使用されるハニカム構造体に関するものである。
【背景技術】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排気ガスは、その中に環境や人体に害を及ぼすパティキュレートが含まれていることが知られており、そのパティキュレートを除去する技術が求められている。例えば、そうした技術の1つとして、多孔質セラミック部材に、排気ガス中のパティキュレートを通過させることにより捕集し、除去する排気ガス浄化用ハニカム構造体(フィルタ)がある。
前記セラミックハニカム構造体の具体例としては、図10に示すように、複数個の柱状の多孔質セラミック部材(ユニット)130を、シール材層124を介して組み合わせてセラミックブロック125を構成し、このセラミックブロック125の周囲に排気ガス漏洩防止用シール材層123を形成してなるセラミックハニカムフィルタ120を挙げることができる。
このハニカムフィルタ120は、図11(a)に示したように、柱状の多孔質セラミック部材130を構成単位(ユニット)として、これらの複数個を結束してなるものであってもよい。前記多孔質セラミック部材130は、長手方向に並列する多数の貫通孔131どうしを隔てる隔壁133を排気ガスが通過する(ウオールフロー)ときに、この隔壁にて前記パティキュレートを捕集することにより除去することで、フィルタとしての機能を発揮するようになっている。
多孔質セラミック部材130に形成された前記貫通孔131は、例えば、図11(b)に示すように、排気ガスの入口側又は出口側の端部のいずれか一方が封止材132により目封じされ(好ましくは、市松模様状)、開口した貫通孔(セル)131aの一方の端部から流入した排気ガスは、この貫通孔131aを隔てる隔壁133を通過した後、隣りの貫通孔(セル)131bに流入して他方の端部から流出するようになっている。
なお、外周に設けられたシール材層123は、上述したように、ハニカムフィルタ120を内燃機関の排気通路に設置した際、排気ガスがセラミックブロック125の外周部から、漏れ出すのを防止する目的で設けられているものである。
このようなセラミックハニカムフィルタ120は、耐熱性に優れ、再生処理が容易であることから、現在、大型車両やディーゼルエンジン搭載車両等に使用されている。それは、このようなハニカムフィルタ120が内燃機関の排気通路に設置されると、内燃機関より排出された排気ガス中のパティキュレートが、このハニカムフィルタ120を通過する際に、隔壁133により捕捉され(ウオールフロータイプ)、排気ガスの浄化が達成されるからである。
従来、この種の排気ガスフィルタとしては、長手方向に垂直な断面の総面積が相対的に大きい大容積貫通孔群と、断面の総面積が相対的に小さい小容積貫通孔群の少なくとも2種類の貫通孔群にて構成し、排気ガスを大容積貫通孔群から小容積貫通孔群へ流入させることにより、再生までの時間の長期化等を図ったものが提案されている。
これらの大容積貫通孔と小容積貫通孔とは、貫通孔の容積が等しいものにおいて、断面方向からみた封止材の面積比を変更することにより、また貫通孔の容積を2種類以上に変更した上で、長手方向に垂直な断面方向からみた封止材の面積比、即ちセルの孔径(断面の面積)を変更することによって製造したものであってもよく、また、容積が異なる2種類の貫通孔を設け、容積の大きな貫通孔(大容積貫通孔)と、容積の小さな貫通孔(小容積貫通孔)の2種類としたものであってもよい。
このような貫通孔構造をもつ排気ガスフィルタとしては、例えば、特公平3−49608号公報(第7頁)に記載されているように、粉体金属や、ガラス、セラミック、樹脂、有機ポリマー、紙、編織布、ガラスーセラミック混合物、サーメットなどを使用したもの、とりわけ、コージェライトを用いて製作されたディーゼルエンジン用排気ガスフィルタがある。
図12は、上記ディーゼルエンジン用排気ガスフィルタの長手方向に垂直な断面を模式的に示したものである。この排気ガスフィルタ160は、碁盤目の交点に、該碁盤目を構成する正四角形よりも小さな四角形が配置されたような断面形状を有し、小さな四角形に相当する小容積貫通孔161bとその周囲に存在する大容量貫通孔161aとからなり、これらの貫通孔の間に隔壁162a、162bが形成されている。
また、実願昭56−187890号マイクロフィルム(第4頁、第6図)においては、シリカ、アルミナ、マグネシアを配合して製作したコージェライト質からなり、流入側の貫通孔のセルピッチをほぼ1.0〜2.5mmとした排気ガスフィルタが開示されている。
図13は、上記排気ガスフィルタ200の長手方向に垂直な断面(以下、単に断面ともいう)を模式的に示した断面図である。この排気ガスフィルタ200では、断面の形状が六角形の大容積貫通孔201の周囲に断面の形状が三角形の小容積貫通孔202の組合せからなるものである。
さらに、特許第3130587号公報(第1頁)においては、大容積貫通孔の容積率が60〜70%で、小容積貫通孔の容積率が20〜30%で、大容積貫通孔のセルピッチをほぼ2.5〜5.0mmとした炭化珪素製の排気ガスフィルタが開示されている。
さらに、特開2001−334114号公報(第6頁)においては、大容積貫通孔の断面の総面積に対する小容積貫通孔の断面の総面積の比の百分率が40〜120%の排気ガスフィルタが開示されている。
図14は、上記排気ガスフィルタの長手方向に垂直な断面を模式的に示した断面図である。この排気ガスフィルタ300では、上記断面の形状が正六角形の大容積貫通孔301の周囲に上記断面の形状が横長六角形の小容積貫通孔302を組合せ、外周近傍には、正六角形の大容積貫通孔301と台形の大容積貫通孔303とを並存させてなるものである。
従来技術に係る上記排気ガスフィルタでは、排気ガスが直接的に流入する隔壁(以下、「直接流入隔壁」という)と、排気ガスが間接的にしか流入しない隔壁(以下、「間接流入隔壁」という)との2種類の隔壁が存在している。
したがって、この排気ガスフィルタによりパティキュレートの捕集が始めると、まず、排気ガスが直接的に流入しやすい隔壁に捕集される(図16(a))が、次第に、パティキュレートの堆積厚みによる抵抗が高くなるために、排気ガスが間接的にしか流れない隔壁に流入しやすくなる(図16(b))ので、間接的に流入する隔壁にもパティキュレートが堆積するようになる。
すると、フィルタの壁部を局所的に見ると、直接流入隔壁にパティキュレートが捕集されやすい初期段階時(図16(a)〜図16(b))は、直接流入隔壁では、間接流入隔壁と比較すると、排気ガス流量も高くなっている。加えて、捕集されたパティキュレートの量は、相対的に同程度か、むしろ直接流入隔壁の方が多くなっているので、直接流入隔壁において、急激な燃焼が起こりやすくなる。
次の段階(図16(b)〜図16(c))においては、パティキュレートが直接流入隔壁で捕集されているために、排気ガスが、間接流入隔壁と比較すると直接流入隔壁には流入しにくくなっている。即ち、間接流入隔壁の方が、直接流入隔壁に比べて排気ガスの流入量が相対的に高くなる。この状態で、捕集されたパティキュレートの量に注目すると、直接流入隔壁の方が、間接流入隔壁と比べて、相対的に多いか、同程度である。よって、ガスの流入が高くパティキュレートの捕集量が高い箇所が最も激しい燃焼が起こりやすい。即ち、直接流入隔壁と間接流入隔壁の両方が接触する付近において、急激な燃焼が起こり易くなるものと考えられる。
したがって、このようなハニカム構造体を排気ガスフィルタとして使用し、そのフィルタの再生処理を行うと、パティキュレートの燃焼により不均一な温度分布が発生し、局部的に大きな熱応力が作用するので、上記排気ガスフィルタにクラック等の致命的な欠陥が発生し、その結果、排気ガスフィルタが破壊するという問題があった。また、一度に破壊に至らなくても、再生時に局部的に繰り返し熱応力が作用するため、排気ガスフィルタの再生限界が低下してしまうという問題があった。
また、このような排気ガスフィルタを長期間使用するときには、排気ガス中に含まれる灰分(アッシュ)の蓄積も問題になる。
すなわち、一般的なフィルタに関しては、パティキュレートの蓄積メカニズムが一定であるために、アッシュの蓄積状況もほぼ一定になるが、開口率(大・小容積貫通孔)を変更させた場合においては、パティキュレートの蓄積状況が変化するために、アッシュの蓄積状態も変更され、長期間使用していると、アッシュの蓄積された壁面と蓄積されない壁面が生じて、結果的に不均一なアッシュの蓄積が起こって、圧力損失の増大につながるという問題があった。
本発明は、従来技術が抱える上述した問題点を解決するためになされたものであり、主たる目的は、単位体積当たりのパティキュレートの捕捉量が多く、かつ、長期間の繰返し使用の際にクラック等が発生することのない耐久性に優れるハニカム構造体を提供することにある。
本発明の他の目的は、長期間の使用でもアッシュの不均一な蓄積が起こりにくいハニカム構造体を提供することにある。
【発明の開示】
本発明らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、以下に示すような内容を要旨構成とするハニカム構造体を開発するに至った。
すなわち、本発明は、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体であって、前記ハニカム構造体は、一方の端面の開口面積と他方の端面の開口面積が異なっており、前記セラミック部材がセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成したことを特徴とするハニカム構造体である。
本発明のハニカム構造体は、長手方向に垂直な断面において、一方の端面の開口面積の総和が相対的に大きくなるように封止されてなる大容積貫通孔群と、他方の断面における開口面積が総和が相対的に小さくなるように封止されてなる小容積貫通孔群とを有して構成されることが望ましい。
また、本発明は、セルを形成するための多数の貫通孔を隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部が封止されてなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体であって、前記多孔質セラミック部材は、長手方向に垂直な断面におけるセル面積の総和が相対的に大きい大容積貫通孔群と、長手方向に垂直な前記断面におけるセル面積の総和が相対的に小さい小容積貫通孔群との組み合わせからなり、かつこのセラミック部材がセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成されていることを特徴とするハニカム構造体である。
また、本発明は、前記多孔質セラミック部材は、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心間距離と、前記小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心間距離とが等しい関係をもつハニカム構造体である。
前記大容積貫通孔は、孔径の大きさが小容積貫通孔の孔径よりも大きい貫通孔からなることが好ましく、また、前記大容積貫通孔は、入側が開口したガス流入側セルを構成し、前記小容積貫通孔は出側が開口したガス流出側セルを構成していることが好ましい。
上記ハニカム構造体において、前記多孔質セラミック部材は、貫通孔を仕切っている壁部、すなわち、隔壁の気孔率は、30〜80%であること、その隔壁の表面の粗さは、JIS B 0601−2001に規定された算術平均粗さ(Ra)で示すと、0.1〜30.0μm好ましい。
また、上記ハニカム構造体において、前記多孔質セラミック部材は、X線回折におけるシリコン(Si)のピーク(2θ=28°付近)の半値幅が、0.6°以下であることが望ましい。
本発明のハニカム構造体において、前記貫通孔は、一方の端部が封止材によって封止された側で、大容積貫通孔群を構成するとき、その他端部が封止材によって封止された側の貫通孔は小容積貫通孔群を構成する2種類の貫通孔が用いられてなること、その断面形状は多角形であること、とくに四角形と八角形であることが望ましく、この貫通孔の断面の角部は、アールもしくは面取り形状にすることが望ましく、そして、上記小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面と、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面との面積比(大容積貫通孔断面積/小容積貫通孔断面積)は、1.01〜9.00であることが望ましい。
上記貫通孔を隔てる隔壁表面には、触媒のコーティング層が形成されていることが望ましい。
上記ハニカム構造体を構成するセラミック粒子は、炭化珪素であることが望ましい。
上記ハニカム構造体は、シリコン−セラミック複合材からなる多孔質セラミック部材を、シール材層を介して複数個結束させて1の構造体に形造ってなるものであることが望ましい。また、本発明は、車両の粒子状物質を含む排気ガス浄化用フィルタとして使用されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明にかかるハニカム構造体の一実施形態を模式的に示した斜視図である。
図2の(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示した多孔質セラミック部材のA−A線断面図である。
図3の(a)は、本発明にかかるハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示したハニカム構造体のB−B線断面図である。
図4の(a)〜(d)は、本発明にかかるハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の長さ方向に垂直な断面を模式的に示した断面図であり、(e)は、従来のフィルタを構成する多孔質セラミック部材の長さ方向に垂直な断面を模式的に示した断面図である。
図5は、本発明にかかるハニカム構造体を用いた排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
図6の(a)〜(c)は、実施例1.1にかかるハニカムフィルタの入口から異なる位置で観察されるパティキュレートの捕集状態を示す写真である。
図7は、実施例3.1にかかるハニカムフィルタのアッシュの捕集状況を示す写真である。
図8は、比較例1.3にかかるハニカムフィルタのアッシュの捕集状況を示す写真である。
図9は、実施例5.1に係るハニカムフィルタのX線回折を示すグラフである。
図10は、従来の排気ガス浄化装置用ハニカム構造体の一例を模式的に示した斜視図である。
図11の(a)は、図10に示した従来のハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示した多孔質セラミック部材のC−C線断面図である。
図12は、従来のハニカムフィルタの一例を模式的に示した横断面図である。
図13は、従来のハニカムフィルタの他の一例を模式的に示した横断面図である。
図14は、従来のハニカムフィルタのさらに他の一例を模式的に示した横断面図である。
図15は、従来のハニカムフィルタの他の一例を模式的に示した横断面図である。
図16は、従来のハニカム構造体のパティキュレートの捕集状況を説明した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、車輌用排気ガスを流入させるセルを形成するための大容積貫通孔群と小容積貫通孔群との、少なくとも2種類の貫通孔群を、隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなるハニカム構造体であって、この構造体をセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成したことを特徴とするハニカム構造体である。
本発明のより好ましい実施の形態として、大容積貫通孔群と小容積貫通孔群の少なくとも2種類の貫通孔を、隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体において、この構造体の多孔質セラミック部材が、この部材を構成しているセラミック粒子の間に金属シリコンを介在させて接合してなるシリコン−セラミック複合材にて形成されているハニカム構造体が望ましい。
大容積貫通孔群と小容積貫通孔群の少なくとも2種類の貫通孔を隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなるハニカム構造体は、大量のパティキュレートを捕集するのに都合がよいが、フィルタの強度を向上させない限り、熱応力によって破壊されることがあった。このような問題は従来、ハニカム構造体の密度(熱容量)に起因すると考えられていたが、発明者らの研究によると、同程度の密度であったとしても、貫通孔の形状が同一でない場合には、捕集時や燃焼時において不均一が発生するために、破損が生じることを発見した。
そこで、本発明では、長手方向に垂直な断面の面積(たとえば断面形状)が同一でない貫通孔群、言い換えれば、大容積貫通孔群と小容積貫通孔群とからなるハニカム構造体については、多孔質セラミック部材として、この部材を構成している各セラミック粒子の間に金属シリコンを結合剤として接合してなるシリコン−セラミック複合材を用いることで、上述した熱衝撃によるクラックの発生を防止するようにしたのである。
また、上記ハニカム構造体には形成される多数の貫通孔は、長手方向に垂直な断面における面積の総和、即ち総セル面積(開口面積)が相対的に大きくなるように形成された上記ハニカム構造体の一方の端部で封止されてなる大容積貫通孔群と、他方の端部が封止されてなる側では、上記断面における面積の総和、即ち総セル面積(開口面積)が相対的に小さい小容積貫通孔群とからなるものである。
ここで、排気ガスが流入するセルを形造る上記貫通孔は、それぞれの貫通孔の長手方向に垂直な断面における面積が同一で、大容積貫通孔群を構成する一方の端部が封止された貫通孔の数が、小容積貫通孔群を構成する他方の端部が封止された貫通孔の数よりも多くなるように構成されていてもよいし、また、大容積貫通孔群を構成する貫通孔の長手方向に垂直な断面における面積が相対的に大きく、小容積貫通孔群を構成する貫通孔の長手方向に垂直な断面における面積が相対的に小さくなるように構成されていてもよい。
また、後者の場合、大容積貫通孔群を構成する貫通孔の数と、小容積貫通孔群を構成する貫通孔の数とは特に限定されず、大容積貫通孔群を構成する貫通孔の長手方向に垂直な断面における面積の総和が、小容積貫通孔群を構成する貫通孔の長手方向に垂直な断面における面積の総和よりも大きければ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
即ち、本発明においては、基本ユニットとして形状の繰り返しが起こっており、その基本ユニットでみて、セルの断面の面積比が異なっている。したがって、外周部の1〜2セルまでも厳密に測定した場合、本発明に入る場合がある。その場合は、外周部の2セルを取り除いて計測するか、基本ユニットの繰り返しとならない箇所を省いて計測することになる。
例えば、貫通孔の長手方向に垂直な断面の形状が、その外周付近近傍以外の部分で、全て同一であり、かつ、その断面形状が同一の貫通孔について、いずれか一方の端部が封止されるとともに、全体として各端面の封止部と開放部とが市松模様を呈するように配置された構成を有するハニカム構造体(例えば、図10、図11参照)は、本発明のハニカム構造体に含まないものとする。
次に、本発明において、多孔質セラミック部材の素材としては、シリコン−セラミック複合材を用いるが、この複合部材を用いると、部材の熱伝導率が向上するだけでなく、とくにセラミック粒子間に介在するシリコンによって、セラミック粒子間の結合力が増大し、そのことによって前記クラックの発生を効果的に防止することができるようになる。
ただし、発明者らの研究によると、セラミック粒子の間にシリコンを介在させて接合してなるシリコン−セラミック複合材から形成してなる多孔質セラミック部材は、シリコンを介在させていない場合に比べてヤング率が低くなる傾向があり、そのヤング率が低くなると、同じ力を加えた時の撓み量が小さくなるので、同程度のディーゼルエンジンの振動や排気ガスの圧力による振動では、該セラミック部材の壁部が撓むようなことはなく、その結果、隔壁に蓄積されたアッシュが剥離しにくくなることを突き止めた。
このような問題に対して鋭意研究した結果、上述したアッシュの剥離を容易にするためには、ハニカム構造体(例えば、多孔質セラミック部材)の隔壁の気孔率を30〜80%とすること、あるいは、隔壁の表面粗さ(Ra)を1.0〜30.0μmとすること、あるいは、隔壁の厚さを0.15〜0.45μmとすることが有効であるとの結論を得た。
本発明において、ハニカム構造体の隔壁の気孔率、その表面粗さ(Ra)、その厚さを、上記のような数値範囲内にした場合、大量のパティキュレートを捕集することができると同時に、大量のアッシュが蓄積されても、アッシュの剥離を容易にすることができる。
この点、従来の排気ガスハニカムフィルタは、多孔質セラミック部材を用いているものの、気孔率が比較的に小さく、またヤング率も比較的低い材料を用いている。即ち、気孔率が比較的小さい従来のフィルタは、そのままではアッシュの剥離を容易にすることはできない。しかし、本発明のように隔壁部の気孔率を大きくした場合には、気孔内壁に排気ガスの流入が促進されるようになり、その結果、大きな隔壁を導いてアッシュの剥離を促進させることができるようになる。
しかも、本発明によれば、シリコン−セラミック複合材がセラミックスとシリコンという2種類の異なる物性をもつ材料が混ざり合って構成されているため、気孔率を比較的に大きくした場合に、隔壁上に蓄積するアッシュを剥離しやすくするものと考えられる。
上述したところから明らかなように、本発明においては、ハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材を、セラミックスとシリコンからなるもの、とりわけ、セラミック粒子の間に接合剤としての作用をもつシリコンを介在させて粒子間接合したものからなるシリコン−セラミック複合材にて形成した点に特徴があり、とくに、このような複合材からなる隔壁の気孔率を30〜80%と比較的に大きなものとすることが望ましく、さらに望ましい範囲は、30〜65%である。
本発明において、上記のメカニズムは必ずしも明らかではないが、上記気孔率が30%未満である場合、排気ガスの流入が部分的にしか起こらず、壁部全体のアッシュを剥離させるのに十分な振動が起こらず、アッシュを容易に剥離させることができないと考えられる。
一方、隔壁の気孔率が80%超である場合、排気ガスの流入が容易になるが、振動が共振せず、却って打ち消されてしまうので、アッシュの剥離効果が低くなるものと考えられる。もちろん単純に壁内に引っかかりやすくなるためであるとも考えられる。加えて、気孔率が80%超だと、強度が下がって、熱衝撃にも弱いものとなる。
なお、上記気孔率は、例えば、水銀圧入法、アルキメデス法及び走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等、公知の方法により測定することができる。
本発明において、上記隔壁の表面粗さは、JIS B 0601−2001に規定された算術平均粗さ(Ra)に換算して、1.0〜30.0μmの範囲であることが望ましい。
その隔壁の表面粗さ(Ra)が1.0未満の場合、メカニズムは定かではないが、排気ガスの流入が起こりにくく、ヤング率が低いことから、排気ガス流入による振動が起こりにくく、アッシュの剥離効果が小さくなる。一方、隔壁の表面粗さ(Ra)が30.0μmを越えるものでは、排気ガスの流入が起こりやすくなるが、振動が共振せず、打ち消されてしまうために、アッシュの剥離効果が小さくなると考えられる。もちろん単純に壁内に引っかかりやすくなるためと考えられる。
また、本発明において、壁部の厚さは、0.15〜0.45mmの範囲とすることが、熱衝撃に強く、かつアッシュを剥離しやすくする点で望ましい。
そのメカニズムは定かではないが、壁部の厚みが0.45mmより大きい場合には、排気ガスの流入が起こりにくく、ヤング率が低いことから、排気ガス流入による振動が起こりにくいために、アッシュの剥離効果が小さくなり、一方、壁部の厚みが0.15mm未満の場合には、排気ガスの流入が起こりやすくなるが、振動が共振せず、打ち消されてしまうため、アッシュの剥離効果が小さくなると考えられ、これに加えて、強度が低下して、熱衝撃にも弱いものとなると考えられる。
また、本発明のハニカム構造体において、シリコン−セラミック複合材を構成するセラミック粒子間に介在し、セラミック粒子同士を結合するシリコンとしては、たとえば、単結晶シリコン、金属シリコン、アモルファスシリコン等を用いることができるが、結晶性が高いものほど好ましい。
具体的には、上記多孔質セラミック部材(シリコン−セラミック複合材)は、そのX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が0.6°以下であるようなものを用いることが望ましい。
本発明者らの研究によると、セラミック粒子間にシリコンを介在させて接合してなる上記シリコン−セラミック複合材の熱伝導率は、上記シリコンの結晶性によって、得られるハニカム構造体の熱伝導率が大きく変動することがわかった。また、前述したアッシュの剥離除去に対しても、結晶性を高くするほどアッシュの剥離除去能力が向上することがわかった。
すなわち、ハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が0.6°以下となる程度に、セラミック粒子を接合するシリコンの結晶性を高めることにより、上記ハニカム構造体の熱伝導率が非常に優れたものとなる。その結果、ハニカム構造体の熱拡散性が向上し、該ハニカム構造体に温度分布が生じた場合や、冷熱サイクルが繰り返された場合であっても、あまり熱応力が蓄積されず、耐熱衝撃性に優れたものとなる。
また、シリコンの結晶性は高いほど、アッシュの剥離除去能力が向上する。そのメカニズムは定かではないが、結晶性を高くすることで、シリコン自体の格子振動が起こりやすくなること、すなわち、結晶性の高いシリコンとセラミック粒子が共振しやすくなるためであると考えられる。
上記多孔質セラミック部材のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅が0.6°を超えると、シリコンの結晶性が低いため、たとえ、シリコンをセラミック粒子の接合に用いてもハニカム構造体の熱伝導率が充分に高いものとならず、耐熱衝撃性も不充分なものとなるからである。しかも、シリコン自体の格子振動が起こりにくくなるので、シリコンがセラミック粒子の振動を全て打ち消してしまうことも考えられる。
なお、上記多孔質セラミック部材のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、0.1°以上であることが望ましい。このピーク値が、0.1°未満の場合には、上記結晶質シリコンの結晶性が高くなりすぎるため、ハニカム構造体に冷熱サイクルを何度も繰り返すと、セラミック粒子と結晶質シリコンとの界面において微小クラックが発生する惧れがある。そのような場合、微小クラックがさらに大きなクラックに進展しやすくなるとと共に、シリコンとセラミック粒子が引っ張りあって共振しにくくなるので、振動が打ち消されやすくなると考えられる。
本発明のハニカム構造体は、多数の貫通孔が壁部を隔てて長手方向に並設された柱状の多孔質セラミック部材からなるものであるが、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状の多孔質セラミック部材がシール材層を介して複数個結束された組合せ集合体として構成されたものであってもよく(以下、これを「集合体型ハニカム構造体」という)、また全体が単一の部材として形成された多孔質セラミック部材から構成されていてもよい(以下、これを「一体型ハニカム構造体」という)。
上記集合体型ハニカム構造体の場合、壁部は、多孔質セラミック部材の貫通孔を隔てる隔壁と、多孔質セラミック部材の外壁及び多孔質セラミック部材間の接着材層として機能しているシール材層とから構成されており、上記一体型ハニカム構造体の場合、一種類の隔壁のみにより構成されている。
図1は、ハニカム構造体の一例である集合体型ハニカム構造体の具体例を模式的に示した斜視図であり、図2(a)は、図1に示したハニカム構造体を構成する多孔質セラミック部材の一例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、(a)に示した多孔質セラミック部材のA−A線断面図である。
図1および図2に示したように、本発明にかかるハニカム構造体10(以下、単に「ハニカムフィルタ」という)は、多孔質セラミック部材20がシール材層14を介して複数個結束されて円柱状のセラミックブロック15を構成し、このセラミックブロック15の外周部には、シール材層13が設けられている。
上記多孔質セラミック部材20は、その長手方向に多数の貫通孔21が並設されているが、この貫通孔21は、長手方向に垂直な断面の面積が相対的に大きい大容積貫通孔21aと、上記断面の面積が相対的に小さい小容積貫通孔21bとの2種類からなり、大容積貫通孔21aは、ハニカムフィルタ10の排気ガス出口側の端部が封止材22により封止される一方、小容積貫通孔21bは、ハニカムフィルタ10の排気ガス入口側の端部が封止材22により封止され、これらの貫通孔21a、21b同士を隔てる隔壁23がフィルタとして機能するようになっている。
すなわち、大容積貫通孔21aに流入した排気ガスは、必ずこれらの貫通孔21a、21b同士を隔てる隔壁23を通過した後、小容積貫通孔21bから流出するようになっている。
本発明の上記ハニカムフィルタは、排気ガスが流入する大容積貫通孔21aが、隔壁23を通過した後に通過する小容積貫通孔21bよりも相対的に容積が大きくなっており、全て同じ容積の貫通孔が形成されたハニカムフィルタと比べると、排気ガスが通過する隔壁部分の面積(濾過面積)は、小さくなっている。
このようなハニカムフィルタにおいては、図6に示すように、大容積貫通孔21aの隔壁全体にパティキュレートが一様に蓄積される。これは、排気ガスは、大容積貫通孔21aから小容積貫通孔21bへ向かって、フィルタの壁を直接流入(直接流入隔壁を通過)する以外にも、隔壁内の気孔部分を通過(間接流入隔壁を通過)していったり、孔のなかで渦をまいたりするような多様な流れを生じさせ、結果的に大容積貫通孔21aの壁に一様に蓄積されるからであると考えられる。
その結果として、直接排気ガスが流入する濾過壁の減少や、小容積貫通孔内に排気ガス等を通過させた際の抵抗が高くなるため、全て同じ容積の貫通孔が形成された従来のフィルタと比べると、初期圧力損失が若干劣ることになる。
この点、本発明にかかるハニカムフィルタでは、使用するにつれて、大容積貫通孔21aの壁に一様にパティキュレートが蓄積され、従来のフィルタと比べて同じ量のパティキュレートを蓄積させたとき、フィルタ内での流れが最も多い大容積貫通孔21aと小容積貫通孔21bとの間の隔壁部分に蓄積するパティキュレートの厚みを減少させることができる。従って、使用開始から時間が経過するにつれて、全て同じ容積の貫通孔が形成されたフィルタと比べると、圧力損失が小さくなる。
このようなハニカムフィルタでは、圧力損失の増加を効果的に抑えることができるので、従来のフィルタと比べて、単位体積当たりのパティキュレートの捕捉可能な量が多くなり、フィルタの再生が必要となるまでの期間が長くなる。
また、パティキュレート(アッシュ)の蓄積量が多くなると、そのままでは使用することができなくなり、排気管から取り出して逆洗浄を行うか、廃棄することとなるが、このような逆洗浄等を必要とするまでの期間も長くすることができ、長寿命となる。以下、逆洗浄等をするまでの期間を単に寿命という。
本発明にかかるハニカム構造体においては、上述した貫通孔は2種類のものを用い、とくに、隣り合う大容積貫通孔の断面の重心間距離と、隣り合う小容積貫通孔の断面の重心間距離とを等しくしたものを用いることが好ましい(図4参照)。
なお、この場合、「隣り合う上記大容積貫通孔の断面の重心間距離」とは、一の大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における重心と、他の大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における重心との最小の距離をいい、一方、「隣り合う上記小容積貫通孔の断面の重心間距離」とは、一の小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における重心と、他の小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における重心との最小の距離のことをいう。
よって、大容積貫通孔と小容積貫通孔とは、壁部を隔てて上下方向及び左右方向に交互に並設されており、各方向における大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心と小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心とは、常に一直線上に存在する。
従って、「隣り合う大容積貫通孔の断面における重心間距離」及び「隣り合う小容積貫通孔の断面における重心間距離」とは、その長手方向に垂直な断面において、互いに斜め方向に位置して隣り合う大容積貫通孔及び小容積貫通孔の重心間の距離をいう。
このような構成を有するハニカム構造体は、大容積貫通孔21aに流入した排気ガスは、必ずこれらの貫通孔21a、21b同士を隔てる隔壁23を通過した後、小容積貫通孔21bから流出するようになっている。
また、本発明にかかるハニカム構造体において、隣り合う大容積貫通孔21aの上記断面の重心間距離と、隣り合う小容積貫通孔21bの上記断面の重心間距離とが等しいことが望ましい。
このような構成によれば、再生時に熱が均一に拡散する結果、温度分布が均一になりやすく、長期間繰り返し使用しても、熱応力に起因するクラック等が発生することがなく、耐久性に優れたフィルタを提供することができる。
なお、セラミックブロック15の周囲に形成されたシール材層13は、本発明のハニカム構造体10を上記ハニカムフィルタとして使用した際に、セラミックブロック15の外周から排気ガスの漏れを防止するため、又は形状を整えるために形成されている。従って、本発明のハニカム構造体の用途によっては必ずしも必要でない。
また、図3(a)は、本発明にかかるハニカム構造体の別の実施形態である一体型ハニカム構造体の具体例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのB−B線断面図である。
図3(a)に示したように、ハニカムフィルタ30は、多数の貫通孔31が壁部33を隔てて長手方向に並設された柱状の多孔質セラミックブロック35を含んで構成されている。
貫通孔31は、長手方向に垂直な断面の面積が相対的に大きい大容積貫通孔31aと、上記断面の面積が相対的に小さい小容積貫通孔31bとの2種類の貫通孔からなり、大容積貫通孔31aは、ハニカムフィルタ30の排気ガス出口側の端部で封止材32により封止される一方、小容積貫通孔31bは、ハニカムフィルタ30の排気ガス入口側の端部で封止材32により封止され、これらの貫通孔31a、31b同士を隔てる隔壁33がフィルタとして機能するようになっている。
図3には示していないが、多孔質セラミックブロック35の周囲には、図1に示したハニカムフィルタ10と同様に、シール材層が形成されていてもよい。
このハニカムフィルタ30では、多孔質セラミックブロック35が1部材として形成された一体構造とした以外は、ハニカムフィルタ10と同様に構成されており、大容積貫通孔31aに流入した排気ガスは、貫通孔31a、31b同士を隔てる壁部33を通過した後、小容積貫通孔31bから流出するようになっている。
上記実施形態によるハニカムフィルタは、排気ガスが流入する大容積貫通孔31aが、隔壁33を通過した後に通過する小容積貫通孔31bよりも相対的に容積が大きくなっており、全て同じ容積の貫通孔が形成されたハニカムフィルタと比べると、排気ガスが通過する隔壁部分の面積(濾過面積)は、小さくなっている。
しかし、上述したハニカムフィルタにおいては、図6に示すように、パティキュレートが大容積貫通孔31aの隔壁全体に一様に蓄積される。これは、排気ガスは、大容積貫通孔31aから小容積貫通孔31bへ向かって、フィルタの壁を直接流入する以外にも、隔壁内の気孔部分を通過していったり、孔のなかで渦をまいたりするような多様な流れを生じさせ、結果的に大容積貫通孔31aの壁に一様に蓄積されるからであると考えられる。
その結果として、直接排気ガスが流入する濾過壁の減少や、小容積貫通孔内に排気ガス等を通過させた際の抵抗が高くなるために、全て同じ容積の貫通孔が形成されたフィルタと比べると、初期圧力損失が若干劣ることになる。
しかしながら、使用するにつれて、大容積貫通孔31aの壁に一様にパティキュレートが蓄積され、従来のフィルタと比べて同じ量のパティキュレートを蓄積させたとき、フィルタの流れが最も多い大容積貫通孔31aと小容積貫通孔31bとの間の隔壁部分に蓄積するパティキュレートの厚みを減少させることができる。従って、使用開始から時間が経過するにつれて、全て同じ容積の貫通孔が形成されたフィルタと比べると、圧力損失が小さくなる。
このようなハニカムフィルタでは、圧力損失の増加を抑えることができるので、従来のフィルタと比べて、単位体積当たりのパティキュレートの捕捉可能な量が多くなり、フィルタの再生が必要となるまでの期間が長くなり、また、寿命も長くなる。
また、上記のようなハニカムフィルタ30において、隣り合う大容積貫通孔31aの上記断面の重心間距離と、隣り合う小容積貫通孔31bの上記断面の重心間距離とが等しく形成されているので、再生時に熱が均一に拡散して、温度分布が均一になりやすく、長期間繰り返し使用しても、熱応力に起因するクラック等が発生することのない耐久性に優れるフィルタとなる。
本発明にかかるハニカム構造体においては、上述したように、多孔質セラミック部材として、セラミック粒子間にシリコンを介在させて接合されてなる複合材を用いる。
本発明において用いることのできるセラミック粒子としては、例えば、コージェライト、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、イットリア等の酸化物セラミック、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック等が挙げられるが、これらのセラミックだけに限定されるものではない。
本発明にかかるハニカム構造体が、図1に示したような集合体型ハニカム構造体である場合には、炭化珪素を用いることが望ましい。耐熱性が大きく、機械的特性及び化学的安定性に優れるとともに、熱伝導率も大きいからである。
また、本発明にかかるハニカム構造体が、図3に示したような一体型ハニカム構造体である場合、コージェライト等の酸化物セラミックを用いることが望ましい。安価に製造することができるとともに、比較的熱膨張係数が小さく、例えば、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用している途中に破壊されることがなく、また、酸化されることもないからである。
本発明にかかるハニカム構造体の熱伝導率は、上記シリコンの結晶性及び使用するセラミック粒子の種類等により決定される。例えば、上記セラミック粒子として炭化物セラミック、窒化物セラミックを使用した場合には、熱伝導率の下限は3W/m・K、上限は60W/m・Kであることが望ましく、10〜40W/m・Kの範囲がより望ましい。
その理由は、熱伝導率が3W/m・K未満だと、熱伝熱性が悪く、長手方向において温度勾配がつきやくなって、全体的にクラックが入りやすくなるからである。一方、60W/m・Kを超えると、熱伝導性がよいものであるが、熱の拡散が大きくなって温度が上がりにくくなる。また、熱の流出側で冷えやすくなって、流出側端部で温度勾配がつきやすくなって、クラックが入りやすくなるからである。
また、セラミック粒子として酸化物セラミック(例えば、コーディエライト)を使用した場合には、熱伝導率の下限は0.1W/m・K、上限は10W/m・Kであることが望ましく、0.3〜3W/m・Kの範囲がより望ましい。
その理由は、熱伝導率が0.1W/m・K未満だと、熱伝熱性が悪く、長手方向において温度勾配がつきやくなって、全体的にクラックが入りやすくなるからである。一方、10W/m・Kを超えると、熱伝導性がよいものであるが、熱の拡散が大きくなってなかなか温度が上がらなくなる。また、熱の流出側で冷えやすくなって、流出側端部で温度勾配がつきやすくなって、クラックが入りやすくなるからである。
本発明にかかるハニカム構造体において、多孔質セラミック部材の平均気孔径(直径)は、5〜100μm程度の大きさのものが望ましい。その理由は、平均気孔径が5μm未満だと、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、パティキュレートが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、平均気孔径が100μmを超えると、パティキュレートが気孔を通り抜けてしまい、該パティキュレートを捕集することができず、フィルタとして機能できないことがあるからである。
このようなセラミック部材を製造する際に使用するセラミック粒子の粒径は、後の焼成工程で収縮が少ないものが望ましく、例えば、0.3〜50μm程度の平均粒径を有する粉末100重量部と、0.1〜1.0μm程度の平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが望ましい。その理由は、このような粒径のセラミック粒子粉末を上記混合比で混合することで、必要な特性の多孔質セラミック部材を有利に製造することができるからである。
本発明にかかるハニカム構造体において、セラミック部材の貫通孔の端部を封止するために用いられる封止材としては、多孔質セラミックからなるものを用いることが望ましい。その理由は、上記封止材を上記セラミック部材と同じ多孔質セラミックとすることで、両者の接着強度を高くすることができるとともに、封止材の気孔率を上述したセラミックブロックと同様に調整することで、上記セラミックブロックの熱膨張率と封止材の熱膨張率との整合を図ることができ、製造時や使用時の熱応力によって封止材と壁部との間に隙間が生じたり、封止材やその封止材に接触する部分の壁部にクラックが発生したりすることを防止することができるからである。
かかる封止材が多孔質セラミックからなるものの場合、例えば、上述したセラミック部材を構成するセラミック粒子及びシリコンと同様の材料を使用することができる。
本発明にかかるハニカム構造体が、図1に示したような集合体型ハニカム構造体である場合、シール材層13、14は、多孔質セラミック部材20間と、セラミックブロック15の外周面に形成されている。そして、多孔質セラミック部材20相互間に形成されたシール材層14は、複数の多孔質セラミック部材20同士を結束する接着剤として機能し、一方、セラミックブロック15の外周面に形成されたシール材層13は、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、本発明のハニカム構造体10を内燃機関の排気通路に設置した際に、セラミックブロック15の外周から排気ガスが漏れ出すことを防止するための封止材として機能する。
上記シール材層を構成する材料としては、例えば、無機バインダーと、有機バインダーと、無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等を挙げることができる。
上述したシール材層は、多孔質セラミック部材間及びセラミックブロックの外周に形成されているが、これらのシール材層は、同じ材料からなるものであってもよく、異なる材料からなるものであってもよい。さらに、上記シール材層が同じ材料からなるものである場合、その材料の配合比は同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
上記シール材中に含まれる無機バインダーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機バインダーのなかでは、シリカゾルが望ましい。
また、上記シール材中に含まれる有機バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機バインダーのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
さらに、上記シール材中に含まれる無機繊維としては、例えば、シリカーアルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機繊維のなかでは、シリカーアルミナファイバーが望ましい。
上記シール材中に含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等からなる無機粉末又はウィスカー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化珪素が望ましい。
上記シール材層14は、緻密体からなるものでもよく、本発明のハニカム構造体を上記ハニカムフィルタとして使用する場合、その内部への排気ガスの流入が可能になるように、多孔質体が好ましいが、シール材層13については、緻密体からなるものであることが望ましい。その理由は、シール材層13は、本発明のハニカム構造体10を内燃機関の排気通路に設置した際、セラミックブロック15の外周から排気ガスが漏れ出すことを防止する目的で形成されているからである。
図1〜図3に示す本発明にかかるハニカム構造体は、円柱状であるが、それに限定されるべきでなく、柱状であればよい。例えば、楕円柱状や角柱状等の任意の柱状体でよい。
本発明にかかるハニカムフィルタは、大容積貫通孔及び小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面(以下、単に「断面」という)の形状は、多角形であることが望ましい。その理由は、多角形とすることにより、フィルタの長手方向に垂直な断面における壁部の面積を減少させることができ、その結果、上記断面に対する大容積貫通孔の断面の面積比(大容積貫通孔群断面積/小容積貫通孔群断面積)(以下においては、単に開口比率という)を容易に高くすることができ、ひいては耐久性に富み、長寿命のフィルタを実現することができるからである。多角形のなかでも4角形以上の多角形が望ましく、特に、大容積貫通孔の断面形状は、8角形であることが望ましい。円形状や楕円形状とすると、壁部の断面の面積が大きくなり、開口比率を高くすることが困難となるからである。
なお、大容積貫通孔のみの断面を4角形、5角形、台形、8角形等の多角形としてもよく、小容積貫通孔のみを上述した多角形としてもよく、両方を多角形としてもよい。また、種々の多角形を混在させてもよい。
本発明にかかるハニカム構造体の上記開口比率は、1.01〜9.00であることが望まく、1.01〜6.00であることがより望ましい。その理由は、開口比率が1.01未満では、本発明に特有な作用・効果が生じにくく、一方、9.00を超えると、壁部を通った排気ガスが流入する小容積貫通孔の容積が小さすぎるため、圧力損失が大きくなりすぎるからである。
図4(a)〜(d)は、集合型フィルタを構成する多孔質セラミック部材の断面の一部を模式的に示した断面図であり、図4(e)は、従来用いられているフィルタにおける断面の一部を模式的に示した断面図である。
なお、一体型フィルタにおける小容積貫通孔及び大容積貫通孔の断面の形状も集合型フィルタの場合と同じ組み合わせになるので、図4を用いて本発明のフィルタにおける小容積貫通孔及び大容積貫通孔の断面形状を説明する。
図4(a)〜(e)に示すような多孔質セラミック部材フィルタの開口比率は、それぞれ1.55(a)、2.54(b)、4.45(c)、9.86(d)、1.00(e)である。
また、この図に例示されたものは、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の形状は、8角形であり、小容積貫通孔の断面の形状は、4角形(正方形)である。
上記大容積貫通孔及び/又は小容積貫通孔の断面の角部は、アール(曲線状)に形成されていることが望ましい。その理由は、貫通孔の角部における応力集中を防止することができ、クラックの発生を防止することができるからである。
また、図4(a)〜(d)に示したように、多孔質セラミック部材の外周の角部は、面取りが施されていることが望ましい。その理由は、角部における応力集中を防止することができ、クラックの発生を防止することができるからである。
なお、図4(d)に示した多孔質セラミック部材70では、大容積貫通孔71aの断面における重心間距離と、小容積貫通孔71bの断面における重心間距離とは等したが、上記開口比率は9.86と非常に大きくなっている。この場合、開口比率が9.00を超える大きなものだと、壁部73を通過した排気ガスが流入する小容積貫通孔71bの容積が小さすぎるため、圧力損失が大きくなりすぎるから、上述したように気孔率の大きい隔壁73をもつ多孔質セラミック部材を用いることが望ましい。
このような構成のハニカム構造体は、貫通孔が全長にわたってそれぞれの断面を変えないことが望ましい。押出し成形等で容易に製造できるからである。
本発明にかかるハニカム構造体は、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路にフィルタ(DPF)として設置されることが望ましく、その内燃機関から排出された排気ガスのパティキュレートは、フィルタを通過する際に隔壁により捕捉され、排気ガスが浄化される。
また、本発明にかかるハニカム構造体を上記排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして使用する場合、セラミックブロックの壁部には、ハニカムフィルタに再生処理を施す際、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒を担持させてもよい。
さらに、本発明にかかるハニカム構造体のセラミックブロック(多孔質セラミック部材)に、例えば、Pt、Rh、Pd等の貴金属又はこれらの合金等の触媒を担持させることで、本発明のハニカム構造体を内燃機関等の熱機関やボイラー等の燃焼装置等から排出される排気ガス中のHC、CO及びNOx等の浄化や、液体燃料又は気体燃料の改質等を行う触媒担持体として使用することができる。
上記触媒は、パティキュレートの燃焼を促進させたり、排気ガス中のCO、HC及びNOx等を浄化することができる触媒であればよく、例えば、上記貴金属に加えて、アルカリ金属(元素周期表1族)、アルカリ土類金属(元素周期表2族)、希土類元素(元素周期表3族)、遷移金属元素等を添加したものなどが望ましい。
なお、本発明のハニカム構造体を上記触媒担体のみとして使用する場合、上記封止材は必ずしも必要でない。
また、触媒は、セラミックス上にコートすることになるので、気孔をのこすようにコートしてもよいし、壁上にコートしてもよいが、パティキュレートを捕集、再生させる場合においては、気孔を残すように触媒をコートする方が望ましい。
次に、本発明にかかるハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。
本発明のハニカム構造体の構造が、図3に示したように、その全体が一体として形成された一体型ハニカム構造体である場合、まず、上述したようなセラミック粒子とシリコンとを主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、図3に示したハニカム構造体30と略同形状のセラミック成形体を作製する。
上記押出成形では、押出成形機の先端部分に設けられ、多数の細孔が形成された金属製のダイスから上記原料ペーストを連続的に押出し、所定の長さに切断することで、セラミック成形体を作製できるが、本発明のハニカム構造体を製造するには、上記ダイスに形成された細孔、スリット等の壁面に研磨処理等を行なうことによって、表面粗さを調整することが望ましい。その理由は、上記ダイスの細孔、スリットの壁面は、押出成形において原料ペーストが直接接触する部分であり、その壁面の表面粗さが高いものであると、作製するセラミック成形体の貫通孔内壁の表面粗さが大きなものとなってしまい、後工程を経て製造するハニカムフィルタの貫通孔内壁の表面粗さを調整することが難しくなるからである。
また、本発明では、造孔作用をもつ造孔材を用いることによって、隔壁の表面粗さを調整してもよい。
さらには、上記原料ペーストの粘度、各材料の粒径、配合比等を調整することによって表面粗さを調整することも可能である。
上記原料ペーストは、製造後のセラミック部材の気孔率が30〜80%となるものであることが望ましく、例えば、セラミック粒子粉末と粉末シリコンとからなる混合粉末にバインダーおよび分散媒液を加えたものが使用できる。
本発明のように、セラミック粒子がシリコンで接合されてなるシリコン−セラミック複合材からハニカム構造体を製造する場合、上記粉末シリコンは、単結晶シリコンのような結晶性の高いシリコンを粉砕して粉末化したものを用いることが望ましい。
上記粉末シリコンは、後述する脱脂処理後の加熱処理中に溶けてセラミック粒子の表面を濡らし、セラミック粒子同士を接合する接合材としての役割を担うものである。このようなシリコンの配合量は、セラミック粒子粉末の粒径や形状等によって適宜変わるものであるが、上記混合粉末100重量部に対して、5〜50重量部であることが望ましい。
シリコンの配合量が5重量部未満だと、粉末シリコンの配合量が少なすぎて、セラミック粒子同士を接合する接合材としての役割を充分に果たすことができないので、得られるハニカム構造体(セラミック部材)の強度が不充分となるからである。
一方、シリコンの配合量が50重量部を超えると、得られるハニカム構造体が緻密化しすぎて、気孔率が低くなり、例えば、本発明のハニカム構造体を排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして使用する場合、パティキュレート捕集中の圧損がすぐに高くなり、フィルタとして充分に機能することができなくなるおそれがある。
上記原料ペーストに含まれるバインダーとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。
上記バインダーの配合量は、通常、セラミック粒子粉末100重量部に対して、1〜10重量部程度とすることが望ましい。
上記分散媒液としては、例えば、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール、水等を使用することができる。上記分散媒液は、原料ペーストの粘度が一定範囲内となるように、適量配合される。
これらの混合粉末、バインダー及び分散媒液は、アトライター等で混合し、ニーダー等で充分に混練して原料ペーストとした後、該原料ペーストを押出成形して上記セラミック成形体を作製する。
また、上記原料ペーストには、必要に応じて成形助剤を添加してもよい。上記成形助剤としては、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を使用することができる。
上記原料ペーストには、さらに、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
上記バルーンとしては、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)及びムライトバルーン等を使用することができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
次に、得られた上記セラミック成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機及び凍結乾燥機等を用いて乾燥させてセラミック乾燥体とした後、所定の貫通孔に封止材となる封止材ペーストを充填し、上記貫通孔に目封じする封口処理を施す。
上記封止材(充填材)ペーストとしては、例えば、上記原料ペーストと同様のものを用いることができるが、上記原料ペーストで用いた混合粉末に潤滑剤、溶剤、分散剤及びバインダーを添加したものであることが望ましい。その理由は、上記封口処理の途中で封止材ペースト中のセラミック粒子が沈降することを防止することができるからである。
次に、上記封止材ペーストが充填されたセラミック乾燥体を150〜700℃程度に加熱して、上記セラミック乾燥体に含まれるバインダーを除去し、セラミック脱脂体とする脱脂処理を施す。
上記脱脂処理は、上記シリコンが溶融する温度よりも低い温度にて実施することが望ましく、また、その脱脂雰囲気は、酸化性雰囲気であってもよく、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気であってもよい。
なお、上記脱脂雰囲気は、使用するバインダーの量やセラミック粒子の種類等を考慮して適宜最適な雰囲気が選択される。
次に、上記セラミック脱脂体を1400〜1600℃程度に加熱し、粉末シリコンを軟化(溶融)させ、セラミック粒子が上記シリコンにより接合されてなるセラミック多孔体を製造する。
ここで、本発明では、表面粗さを変更させるために、上記セラミック乾燥体の脱脂及び焼成の条件を調整する。すなわち、上記脱脂焼成時において、セラミック部材から造孔材、成形助剤等が揮発し、気孔を生じさせることもあるが、その際に、貫通孔内に十分な雰囲気ガスを通過させることが必要である。
なお、上記セラミック多孔体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、0.6°を超えるものであり、その結晶性が低いものである。
上記セラミック多孔体を更に1800〜2100℃程度に加熱し、上記セラミック粒子を接合しているシリコンを結晶化させ、結晶質シリコンとすることにより、多孔質セラミックからなり、その全体が一体として形成された本発明のハニカム構造体(セラミックブロック)を製造することができる。
なお、このようにして製造したハニカム構造体のX線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は、0.6°以下となり、その結晶性が非常に高いものとなる。
なお、セラミック粒子が、X線回折におけるSiのピークの半値幅が0.6°を超えるような結晶性の低いシリコンで接合されたハニカム構造体を製造する場合には、上述した粉末シリコンとしてアモルファスシリコンのような結晶性の低いものを用い、1400〜1600℃の温度範囲で加熱し、上記シリコンによりセラミック粒子を接合する方法をとることが好ましい。
本発明のハニカム構造体の構造が、図1に示したような、多孔質セラミック部材がシール材層を介して複数個結束されて構成された集合体型ハニカム構造体の場合、まず、上述したセラミック粒子とシリコンとを主成分とする原料ペーストを用いて押出成形を行い、図2に示した多孔質セラミック部材20のような形状の生成形体を作製する。
なお、上記原料ペーストは、上述した一体型ハニカム構造体において説明した原料ペーストと同様のものを使用することができる。
次に、上記生成形体を、マイクロ波乾燥機等を用いて乾燥させて乾燥体とした後、該乾燥体の所定の貫通孔に封止材となる封止材ペーストを充填し、上記貫通孔を目封じする封口処理を施す。
なお、上記充填材ペーストは、上述した一体型ハニカム構造体において説明した充填材ペーストと同様のものを使用することができ、上記封口処理は、充填材ペーストを充填する対象が異なるほかは、上述した一体型ハニカム構造体の場合と同様の方法を使用することができる。
さらに、上記封口処理を経た乾燥体に上述した一体型ハニカム構造体と同様の条件で脱脂処理を施してセラミック多孔体を製造し、さらに、上記一体型ハニカム構造体と同様の条件で加熱し、焼成を行うことにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された多孔質セラミック部材を製造することができる。
次に、シール材層14となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布して、順次他の多孔質セラミック部材20を積層する工程を繰り返し、所定のサイズの角柱状の多孔質セラミック部材20の積層体を作製する。
なお、上記シール材ペーストを構成する材料としては、上述した本発明のハニカム構造体において説明した通りであるのでここではその説明を省略する。
次に、この多孔質セラミック部材20の積層体を加熱してシール材ペースト層51を乾燥、固化させてシール材層14とし、その後、例えば、ダイヤモンドカッター等を用いて、その外周部を図1に示したような形状に切削することで、セラミックブロック15を作製する。
そして、セラミックブロック15の外周に上記シール材ペーストを用いてシール材層13を形成することによって、多孔質セラミック部材がシール材層を介して複数個結束されて構成される本発明のハニカム構造体を製造することができる。
また、本発明にかかるハニカム構造体の隔壁表面には、パティキュレートの燃焼を促進させたり、排気ガス中のCO、HC及びNOx等を浄化させることができる触媒を担持した触媒コート層を設けてもよい。
上記触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を使用することができる。また、必要に応じて、貴金属に加えて、アルカリ金属(元素周期表1族)、アルカリ土類金属(元素周期表2族)、希土類元素(元素周期表3族)、遷移金属元素等を添加してもよい。
前記触媒コート層は、セラミック部材の表面、とくに隔壁を構成する粒子表面上に形成される層であって、少なくとも、上記貴金属等からなる触媒を用いることが求められるが、高比表面積のアルミナや、ジルコニア、チタニア、シリカからなるサポート材層を介して上記触媒を担持したものとすることが望ましい。
以下の説明における、触媒コート層は、触媒として白金を用い、サポート材層としてアルミナを用いた例で説明する。
まず、溶液作製方法としては、サポート材の粉末を粉砕機等で微細に粉砕し、サポート材の粉末を溶液と攪拌し混合することで、溶液を製作する。具体的には、まず、γ−アルミナ等の酸化物の粉末をゾルゲル法等によって製作する。このとき、触媒のコート層として用いるために出来るだけ高い比表面積を有したものであることがよく、望ましくは250m/g以上の高い比表面積値を有するものを選択することが望ましい。よって、比表面積が高いことから、γ−アルミナを選択することが望ましい。
これらの粉末に、水和アルミナ、アルミナゾル、シリカゾルのような、無機質のバインダーや、純水、水、アルコール、ジオール、多価アルコール、エチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレンなどの溶媒を5〜20wt%程度加え、粉砕して攪拌する。
実際にサポート材として用いられる酸化物(アルミナ)が500nm以下程度になるまで、粉砕を行なう。細かく粉砕することで隔壁の表層にコートされた従来技術のウオッシュコートによる触媒コート層とは異なり、セラミック部材の隔壁粒子上に均一にアルミナ膜を形成することができる。
次に、セラミック部材の隔壁表面に上記金属酸化物の粉末入り溶液を塗布して、含浸させる。その際、110〜200℃で2時間程度の加熱を行なって乾燥させた後、本焼成を行なう。
本焼成の温度は、好ましくは500〜1000℃であり、処理時間は1〜20時間が好ましい。焼成温度が500℃より低いと結晶化が進まないからであり、一方、1000℃よりも高いと、結晶が進行しすぎて、表面積が低下する傾向にあるからである。また、これらの工程前後の質量を測定することで、担持量を計算することができる。
なお、アルミナ含浸を行なう前に、セラミック部材の隔壁において、各々の粒子表面に濡れ性を向上させる処理を行なうことが望ましい。例えば、HF溶液によって、炭化珪素粒子表面を改質させると、触媒溶液との濡れ性が向上されることになり、触媒コート層を形成後の表面粗さが高いものとなる。
次に、白金の担持を行なう。白金が入った溶液をセラミック部材の吸水分のみ、ピペットで滴下した後、110℃で2時間乾燥し、窒素雰囲気で、500〜1000℃で乾燥して、金属化をはかることができる。
以上説明した本発明によるフィルタの用途は、特には限定されないが、車両の排気ガス浄化装置に用いる場合は、図5に示した車両の排気ガス浄化装置に設置することが望ましい。この図5は、本発明のハニカム構造体(ハニカムフィルタ)が設置された車両の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
上記排気ガス浄化装置600は、主に、本発明によるハニカムフィルタ60と、そのハニカムフィルタ60の外側を覆うケーシング630と、ハニカムフィルタ60とケーシング630との間に配置された保持シール材620、及び、ハニカムフィルタ60の排気ガス流入側に設けられた加熱手段610とから構成されている。ケーシング630の排気ガスが導入される側の端部には、エンジン等の内燃機関に連結された導入管640が接続されており、ケーシング630の他端部には、外部に連結された排出管650が接続されている。なお、図5中、矢印は排気ガスの流れを示している。
また、図5において、ハニカムフィルタ60の構造は、図1に示したハニカム構造体10と同様であってもよく、図3に示したハニカム構造体30と同様であってもよい。
このように構成された排気ガス浄化装置600では、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスは、導入管640を通ってケーシング630内に導入され、ハニカムフィルタ60の貫通孔から壁部(隔壁)を通過してこの壁部(隔壁)でパティキュレートが捕集されて浄化された後、排出管650を通って外部へ排出されることとなる。
そして、ハニカムフィルタ60の壁部(隔壁)に大量のパティキュレートが堆積し、圧損が高くなると、ハニカムフィルタ60の再生処理が行われる。
上記再生処理では、加熱手段610を用いて加熱されたガスをハニカムフィルタ60の貫通孔の内部へ流入させることで、ハニカムフィルタ60を加熱し、壁部(隔壁)に堆積したパティキュレートを燃焼除去させるのである。
また、ポストインジェクション方式を用いてパティキュレートを燃焼除去してもよい。
なお、ハニカムフィルタ60の壁部(隔壁)に、パティキュレートの燃焼を促進するためのPt等の触媒を担持させた場合、パティキュレートの燃焼温度が低下するため、加熱手段610によるハニカムフィルタ60の加熱温度を低くすることができる。
以下、本発明にかかるセラミック構造体を、具体的な実施例を用いて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例示のものに限定されるものではない。
【実施例】
【実施例1】
実施例1は、以下の(A)のように調製された炭化珪素粉末と単結晶シリコン粉末とを主として含む原料ペーストA1を用いて、以下の(B)に記載されたような方法で、図4(a)〜(c)に示すような異なる貫通孔断面形状(B1〜B3)を有する3種類のセラミック多孔体を作製するとともに、これらの各セラミック多孔体の複数個をシール材層を介して結束してなる3種類の集合体型ハニカム構造を作製し、それらを実施例1.1〜1.3とした。
また、原料ペーストA1を用いて、図13、14、15に示すような異なる貫通孔断面形状(B4〜B6)を有する3種類のセラミックブロックを作製し、これらの各セラミックブロックから3種類の一体型ハニカム構造を作製し、それらを実施例1.4〜1.6とした。以下、具体的に説明する。
(A)原料ペーストA1の調製
平均粒径30μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、平均粒径4μmの単結晶シリコン粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製し、この原料ペーストをA1とした。
(B)集合体型ハニカム構造体の作製
(1) 上記(A)で調合した原料ペーストA1を押出成形機に充填し、10cm/分の押出速度にて、生のセラミック多孔体を作製した。
なお、上記押出成形では、押出成形機の先端部分に設ける金属製のダイスを替えることによって、異なる貫通孔断面形状を有する3種類の生のセラミック多孔体を作製した。
(2) 上記(1)で作製した3種類の生のセラミック多孔体をマイクロ波乾燥機を用いて乾燥させ、セラミック乾燥体とした後、上記セラミック多孔体と同様の組成の封止材ペーストを所定の貫通孔に充填し、さらに再び乾燥機を用いて乾燥させた後、酸化雰囲気下550℃で3時間脱脂して、3種類のセラミック脱脂体を得た。
(3) 上記(2)で得られた各セラミック脱脂体をアルゴン雰囲気下1400℃、2時間の条件で加熱し、単結晶シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させた。
(4) その後、常圧のアルゴン雰囲気下、2150℃、2時間の焼成処理にて、上記シリコンを結晶化して、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)〜(c)に示すような3種類(B1〜B3)の多孔質セラミック部材を作製した。
(5) 繊維長0.2mmのアルミナファイバー30重量%、平均粒径0.6μmの炭化珪素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを調製した。
(6) 上記(5)で調製したシール材ペーストを用いて、上記(4)で得られた同一種類の多孔質セラミック部材の複数個を結束させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、直径が140mmであり、貫通孔断面形状(B1〜B3)がことなる3種類の円柱形状のセラミックブロックを作製した。
このとき、上記各多孔質セラミック部材を結束するシール材層の厚さが1.0mmとなるように調整した。
(7) 次いで、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバー(ショット含有率:3%、繊維長:0.1〜100mm)23.3重量%、無機粒子として平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダーとしてシリカゾル(ゾル中のSiOの含有率:30重量%)7重量%、有機バインダーとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
(8) 上記(7)で調製したシール材ペーストを用いて、上記(6)で得られた3種類の円柱形状のセラミックブロックの外周面に厚さ1.0mmのシール材ペースト層を形成した後、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する3種類のハニカム構造体を製造した。
(C)一体型ハニカム構造体の作製
(1) 上記(A)で調合したセラミック粒子とシリコンとを主成分とする原料ペーストA1を用いて押出成形を行い、図13、14、15に示すような貫通孔断面形状(B4〜B6)を有するハニカム構造体とほぼ同じ形状のセラミック成形体を作製した。
(2) 上記(B)の工程(2)〜(4)とほぼ同様な処理により、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図13、14、15に示すような3種類(B4〜B6)のセラミックブロックを作製した。
(3) 上記(B)の工程(7)で調製したシール材ペーストを用いて、上記(2)で得られた3種類の円柱形状のセラミックブロックの外周面に厚さ1.0mmのシール材ペースト層を形成した後、このシール材ペースト層を120℃で乾燥して、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する3種類のハニカム構造体を製造した。
なお、上記実施例1.1〜1.6にかかるハニカム構造体の貫通孔断面形状B1〜B6について説明する。
B1は、図4(a)に示すような集合体型ハニカム構造体を形成する多孔性セラミック部材20の貫通孔断面形状であり、具体的には、貫通孔の数が289個、隔壁23の厚さが0.4mmであり、一方の端面においては、大容積貫通孔のみが充填材によって封止され、他方の端面においては、小容積貫通孔のみが充填材によって封止された構成である。
より具体的には、大容積貫通孔21aの長手方向に垂直な断面における幅は、1.65mm、小容積貫通孔21bの上記断面における幅は、1.33mmであり、多孔質セラミック部材20の長手方向に垂直な断面における、大容積貫通孔21aの面積割合は、38.2%であり、小容積貫通孔21bの面積割合は、24.6%であった。
上記多孔質セラミック部材20において、隣り合う大容積貫通孔21aの断面の重心間距離、及び、隣り合う小容積貫通孔21bの上記断面の重心間距離は、2.68mmであり、開口比率は、1.55であった。
同様に、B2は、図4(b)に示すような集合体型ハニカム構造体を形成する多孔性セラミック部材40の貫通孔断面形状であり、隔壁43の厚さは、0.4mm、大容積貫通孔41aの長手方向に垂直な断面における幅は、1.84mm、小容積貫通孔41bの長手方向に垂直な断面における幅は、1.14mmであり、多孔質セラミック部材40の長手方向に垂直な断面における、大容積貫通孔41aの面積割合は、46.0%であり、小容積貫通孔41bの面積割合は、18.1%であった。
上記B2を有する多孔質セラミック部材40において、隣り合う大容積貫通孔41aの断面の重心間距離、及び、隣り合う小容積貫通孔41bの上記断面の重心間距離は、2.72mmであった。また、開口比率は、2.54であった。
同様に、B3は、図4(c)に示すような集合体型ハニカム構造体を形成する多孔性セラミック部材50の貫通孔断面形状であり、隔壁53の厚さは、0.4mm、大容積貫通孔51aの長手方向に垂直な断面における幅は、2.05mm、小容積貫通孔51bの長手方向に垂直な断面における幅は、0.93mmであり、多孔質セラミック部材50の長手方向に垂直な断面における、大容積貫通孔51aの面積割合は、53.5%であり、小容積貫通孔51bの面積割合は、12.0%であった。
上記B3に係る多孔質セラミック部材50において、隣り合う大容積貫通孔51aの断面の重心間距離、及び、隣り合う小容積貫通孔51bの上記断面の重心間距離は、2.79mmであった。また、開口比率は、4.45であった。
同様に、B4は、基本的には、図13に示すような一体型ハニカム構造体を形成する多孔質セラミック部材の貫通孔断面形状であり、その多孔質セラミック部材の隔壁の厚さは、0.3mm、大容積(六角形)貫通孔の長手方向に垂直な断面における幅(対向する辺間の距離)は、2.25mm、小容積(三角形)貫通孔の長手方向に垂直な断面における幅(一の頂点から対辺までの垂線の長さ)は、0.825mmであり、上記多孔質セラミック部材の長手方向に垂直な断面における、上記大容積貫通孔の面積割合は、58.4%であり、上記小容積貫通孔の面積割合は、10.5%であった。
上記B4に係る多孔質セラミック部材において、隣り合う上記大容積貫孔の断面の重心間距離は、2.60mmであり、隣り合う上記小容積貫通孔の上記断面の重心間距離は、1.70mmであり、また、開口比率は、5.58であった。
同様に、B5は、基本的には、図14に示すような一体型ハニカム構造体を形成する多孔質セラミック部材の貫通孔断面形状であり、その多孔質ミック部材の隔壁の厚さは、0.4mm、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における幅(対向する辺間の距離)は、3.0mm、小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面における最大幅は、2.14mm、最小幅は、0.7mmであり、上記多孔質セラミック部材の長手方向に垂直な断面における、上記大容積貫通孔の面積割合は、44.4%であり、上記小容積貫通孔の面積割合は、23.2%であった。
上記B5に係る多孔質セラミック部材において、隣り合う上記大容積貫通孔の断面の重心間距離は、4.5mmであり、隣り合う上記小容積貫通孔の上記断面の重心間距離は、2.3mmであり、また、開口比率は、1.91であった。
同様に、B6は、基本的には、図15に示すような一体型ハニカム構造体を形成する多孔質セラミック部材400の貫通孔断面形状であり、その多孔質セラミック部材400は、その長手方向に多数の貫通孔が並設されており、この貫通孔は、長手方向に垂直な断面の面積が相対的に大きい大容積貫通孔401aと、上記断面の面積が相対的に小さい小容積貫通孔401bと、大容積貫通孔401aより小さく小容積貫通孔401bよりも大きい中容積貫通孔402との3種類からなり、断面形状がほぼ正方形の大容積貫通孔401a及び小容積貫通孔401bは、フィルタ400の排気ガス出口側の端部で封止材により封止される一方、断面形状が長方形の中容積貫通孔402は、フィルタ400の排気ガス入口側の端部で封止材により封止され、大容積貫通孔401a及び小容積貫通孔401bから流入した排気ガスは、隔壁403を通過した後、中容積貫通孔402から流出するようになっており、隔壁403がフィルタとして機能するようになっている。
上記B6に係る多孔質セラミック部材の隔壁403の厚さは、0.4mm、大容積貫通孔401aの長手方向に垂直な断面における幅は、2.36mm、小容積貫通孔401bの長手方向に垂直な断面における幅は、0.62mm、中容積貫通孔402の長手方向に垂直な断面の最大幅は、2.36mm、最小幅は、0.62mmであり、上記多孔質セラミック部材の長手方向に垂直な断面における、大容積貫通孔401a及び小容積貫通孔401bの面積割合は、41.0%であり、中容積貫通孔402の面積割合は、20.0%であった。
すなわち、B6に係る多孔質セラミック部材400において、隣り合う大容積貫通孔401a及び小容積貫通孔401bの断面の重心間距離は、2.67mm、中容積貫通孔402の断面の重心間距離は、3.90mmであった。また、開口比率は、2.03であった。
(比較例1)
以下の(C)のような方法で調製された炭化珪素粉末を主として含む原料ペーストA2を用いた以外は、実施例1.4〜1.6と同様の処理を行って、貫通孔断面形状(B4〜B6)を有するセラミック成形体を3種類作製し、これらの各セラミック成形体から3種類のセラミック構造体を作製して、それらを比較例1.1〜1.3とした。
(C)原料ペーストA2
平均粒径30μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、平均粒径0.5μmのβ型炭化珪素粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、有機バインダー(メチルセルロース)を6重量部、界面活性剤(オレイン酸)を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
以上の実施例1.1〜1.6および比較例1.1〜1.3について、以下のような耐熱衝撃性試験およびアッシュ補集試験を行った。
(A)耐熱衝撃性の評価
実施例1.1〜1.6および比較例1.1〜1.3に係るハニカム構造体を電気炉に入れ、加熱した後、常温(20℃)の水中に入れ、冷却させて熱衝撃を発生させる。その際、クラックが生じると音が発生するので、そのような音が発生したものについてSEMを用いて観察して、クラックの存在を確認し、そのクラックが生じる温度差を測定した。その結果を表1に示した。
(B)耐熱衝撃性の評価
実施例1.1〜1.6および比較例1.1〜1.3に係るハニカム構造体を、エンジンの排気通路に配設した図5に示したような排気ガス浄化装置に設置し、上記エンジンを回転数3000rpm、トルク50Nmで所定の時間運転し、パティキュレートを捕集し、その後、再生処理を行うという実験を繰り返し行い、ハニカム構造体にクラックが発生するか否かを調査した。そして、クラックが発生した際に、捕集したパティキュレートの量を捕集限界(g/L)とした。その結果を表1に示した。
(C)アッシュ捕集の評価
実施例1.1〜1.6および比較例1.1〜1.3に係るハニカム構造体を、上述した捕集限界まで捕集して再生する試験を500サイクル繰り返した。その後、フィルタを切断し、アッシュの蓄積の様子を確認した。
このようなアッシュの蓄積の様子は、フィルタの中心部に位置する多孔質セラミック部材において、入口側端部近傍(入口端面から15mm付近:蓄積量αmm)と排気側端部近傍(入口端面から125mm付近:蓄積量βmm)の2箇所において、アッシュの厚みを測定し、α/βを測定し蓄積量比とした。その結果を表1に示した。
【表1】

表1の結果から明らかなように、セラミック粒子としての炭化珪素をシリコンによって接合させてなるシリコン−炭化珪素複合体からハニカム構造体を構成し、そのハニカム構造体をフィルタとして用いた(実施例1.1〜1.6)場合には、捕集限界におけるパティキュレートの捕集量が、炭化珪素のみから形成されるフィルタ(比較例1.1〜1.3)に比べて、より多くのパティキュレートを捕集することができ、再生までの期間を長くすることができることが確認された。
なお、図6(a)〜(c)は、上記実施例1.1にかかるハニカムフィルタの入口から、それぞれ15mm(a)、75mm(b)、125mm(c)だけ離間した位置で観察されるパティキュレートの捕集状態を示す写真であり、パティキュレートが大容積貫通孔31aの隔壁全体に一様に蓄積されていることがわかる。
特に、ハニカム構造体の断面形状がB1〜B3であるような実施例1.1〜1.3にかかるフィルタは、ハニカム構造体の断面形状がB4〜B6であるような比較例1.1〜1.3にかかるフィルタに比べて、耐熱衝撃試験、捕集限界およびアッシュの蓄積量比のすべての点で、極めて優れた効果を示すことが確認された。
ハニカム構造体の断面形状がB4〜B6であるような実施例1.4〜1.6にかかるフィルタは、それらと同じ断面形状を有する比較例1.1〜1.3にかかるフィルタに比べて、耐熱衝撃試験、捕集限界およびアッシュの蓄積量比のすべての点で、わずかに優れた効果を示しているだけである。
このような結果から分ることは、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を断面形状がB1〜B3とした場合には、より優れた作用・効果を奏することが確認された。
【実施例2】
実施例2は、実施例1.1〜1.6と同様に、炭化珪素をシリコンによって接合してなるシリコン−炭化珪素複合材にて多孔質セラミック部材を構成するという前提の下で、気孔率を変化させたセラミック部材を作製し、それらを実施例2.1〜2.5とした。
なお、この実施例2.1〜2.5における多孔質セラミック部材の形状は、上述した貫通孔断面形状がB1(図4(a))と同じ形状に固定化し、その部材を形成する材料(原料ペースト)を調整することによって、5種類の異なるハニカム構造体を製造した。
(1) まず、比較的大きい平均粒子径の原料粉末として、平均粒径が20μmのα型炭化珪素粉末80重量%(これを、「粉体A」とする)と、比較的小さい平均粒子径の原料粉末として、平均粒径6μの単結晶シリコン粉末20重量%(これを、「粉体B」とする)とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを6重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
(2) 上記(1)で得た原料ペーストを用いて、上記実施例1の(B)(1)〜(4)とほぼ同様の処理によって、気孔率が30%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を製造した。
(3) 次いで、上記実施例1の(B)(5)〜(8)とほぼ同様の処理によって、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造し、これを実施例2.1とした。
上記(1)において、粉体Aとして、平均粒径が30μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、粉体Bとして、平均粒径4μmの単結晶シリコン粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを6重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練した原料ペーストを用いた以外は、実施例2.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例2.2とした。
また、上記実施例2.2におけるα型炭化珪素粉末と、単結晶シリコン粉末とに加えて、平均粒径が11μm、アスペクト比が1であるような造孔材としてのアクリル樹脂粒子(密度1.1g/cm)(これを、「粉体C」とする)を体積割合で5vol%混合した原料ペーストを用いた以外は、実施例2.2と同様の処理によって、気孔率が80%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例2.3とした。
さらに、上記実施例2.1において、粉体Aとして、平均粒径が10μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、粉体Bとして、平均粒径6μmの単結晶シリコン粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを3重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練した原料ペーストを用いた以外は、実施例2.1と同様の処理によって、気孔率が25%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例2.4とした。
また、上記実施例2.3において、平均粒径が11μm、アスペクト比が1であるような造孔材としてのアクリル樹脂粒子(密度1.1g/cm)を体積割合で20vol%混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを15重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練した原料ペーストを用いた以外は、実施例2.3と同様の処理によって、気孔率が85%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を製造し、これを実施例2.5とした。
上記実施例2.1〜2.5について、上記実施例1と同様に、耐熱衝撃性試験(A)、(B)およびアッシュ補集試験(C)を行った。その試験結果を表2に示した。
【表2】

表2に示した結果より明らかなように、セラミック粒子としての炭化珪素をシリコンによって接合させてなるシリコン−炭化珪素複合体からハニカム構造体を構成し、そのハニカム構造体をフィルタとして用いた場合には、多孔質セラミック部材の気孔率が30%未満および80%を越えた実施例では、アッシュの剥離が悪く、しかも、アッシュがフィルタの排気側から中央部に寄った壁部に蓄積されることが確認された。
すなわち、気孔率が30〜80%の範囲内にある場合には、アッシュの剥離は良好であり、しかも、使用するにつれて、アッシュがフィルタの排気側寄りの壁部により多く蓄積されることが確認され、圧力損失を低くすることができることがわかった。
【実施例3】
実施例3は、実施例2と同様に、炭化珪素をシリコンによって接合してなるシリコン−炭化珪素複合材にて多孔質セラミック部材を構成するという前提の下で、隔壁の表面粗さ(Ra)を変化させた多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、それらを実施例3.1〜3.7とした。
なお、この実施例3.1〜3.7における多孔質セラミック部材の形状は、実施例2と同様に、貫通孔断面形状がB1(図4(a))と同じ形状に固定化し、その部材を形成する材料(原料ペースト)、特に、アクリル樹脂粒子のアスペクト比およびまたは金型表面の粗さを調整することによって、7種類の異なるハニカム構造体を製造した。
(1) まず、平均粒径が10μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、平均粒径4μmの単結晶シリコン粉末20重量%とに加えて、平均粒径が11μm、アスペクト比が1であるような造孔材としてのアクリル樹脂粒子(密度1.1g/cm)を体積割合で5vol%混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを6重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練した原料ペーストを調製した。
(2) 上記(1)で調製した原料ペーストを押出成形機に充填し、押出速度10cm/分にて、生のセラミック多孔体を作製した。
なお、上記押出成形では、押出成形機の先端部分に設けた金属製のダイスのスリット表面の粗さRaを予め0.1μmに加工しておいた。
(3) 次いで、上記実施例1の(B)(2)〜(8)とほぼ同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が1.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.1とした。
上記実施例3.1の(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め1μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が5.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.2とした。
上記実施例3.1の(1)の工程において、アクリル樹脂粒子のアスペクト比を1.3とし、(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め5μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が10.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの多孔質セラミック部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.3とした。
また、上記実施例3.1の(1)の工程において、アクリル樹脂粒子のアスペクト比を1.5とし、(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め15μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が20.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの多孔質セラミック部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.4とした。
上記実施例3.1の(1)の工程において、アクリル樹脂粒子のアスペクト比を2.0とし、(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め20μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が30.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.5とした。
さらに、上記実施例3.1の(1)の工程において、原料ペーストに造孔材としてのアクリル樹脂粒子を配合しないこと、(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め0.1μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が0.5μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.6とした。
また、上記実施例3.1の(1)の工程において、アクリル樹脂粒子のアスペクト比が2.5であり、(2)の工程において、スリット表面の粗さRaを予め30μmに加工しておいた以外は、実施例3.1と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔内壁の表面粗さ(Ra)が35.0μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、これらの多孔質セラミック部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例3.7とした。
上記実施例3.1〜3.7について、上記実施例1と同様に、耐熱衝撃性試験(A)、(B)およびアッシュ補集試験(C)を行った。その試験結果を表3に示した。
なお、実施例3.1(気孔率45%)および比較例1.3(気孔率45%)について、アッシュが蓄積された様子を示す写真をそれぞれ図7および図8に示す。
【表3】

表3に示した結果から明らかなように、セラミック粒子としての炭化珪素をシリコンによって接合させてなるシリコン−炭化珪素複合体からハニカム構造体を構成し、そのハニカム構造体をフィルタとして用いた場合には、多孔質セラミック部材の隔壁の表面粗さRaが1.0μm未満および30μmを超えた実施例では、アッシュの剥離が悪く、しかもアッシュがフィルタの排気側から中央部に寄った壁部に蓄積されることが確認された。
すなわち、隔壁の表面粗さRaが1.0〜30μmの範囲内にある場合には、アッシュの剥離は良好であり、しかも、アッシュがフィルタの排気側寄りの壁部により多く蓄積されることが確認された。
実際に、図7および図8に示されるように、気孔率が45%である実施例3.1では、気孔率が45%である比較例1.3に比べて、アッシュが排気側により多く蓄積されていることがわかる。
【実施例4】
実施例4は、実施例2と同様に、炭化珪素をシリコンによって接合してなるシリコン−炭化珪素複合材にて多孔質セラミック部材を構成するという前提の下で、隔壁の厚さを変化させた多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、それらを実施例4.1〜4.7とした。
なお、この実施例4.1〜4.7における多孔質セラミック部材の形状は、実施例2.2と同様に、貫通孔断面形状がB1(図4(a))と同じ形状に固定化し、原料ペーストを充填する押出成形機のスリット幅あるいはスリット形状を変化させることによって、貫通孔の隔壁の厚さが異なる7種類のハニカム構造体を製造した。
(1) まず、平均粒径が30μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、平均粒径4μmの単結晶シリコン粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを6重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練した原料ペーストを調製した。
(2) 上記(1)で調製した原料ペーストを押出成形機に充填し、押出成形機のスリット幅あるいはスリット形状を、焼成後の貫通孔の隔壁の厚さが、それぞれ0.15mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.45mm、0.5mmおよび0.1mmとなるように調整し、押出速度10cm/分にて、7種類の生のセラミック多孔体を作製した。
(3) 次いで、上記実施例1の(B)(2)〜(8)とほぼ同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、貫通孔の隔壁の厚さが、それぞれ0.15μm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.45mm、0.5mmおよび0.1mm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであり、貫通孔断面形状が図4(a)に示すB1であるようなシリコン−炭化珪素複合体からなる7種類の多孔質セラミック部材を作製し、これらの各多孔質セラミック部材の複数個を結束させて、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能する集合型ハニカム構造体を製造し、これを実施例4.1〜4.7とした。
上記実施例4.1〜4.7について、上記実施例1と同様に、耐熱衝撃性試験(A)、(B)およびアッシュ補集試験(C)を行った。その試験結果を表4に示した。
【表4】

表4に示した結果から明らかなように、セラミック粒子としての炭化珪素をシリコンによって接合させてなるシリコン−炭化珪素複合体からハニカム構造体を構成し、そのハニカム構造体をフィルタとして用いた場合には、多孔質セラミック部材の隔壁の厚さが0.15mm未満および0.45mmを超えた実施例では、アッシュの剥離が悪く、しかもアッシュがフィルタの排気側から中央部に寄った壁部に蓄積されることが確認された。
すなわち、隔壁の厚さが0.15〜0.45mmの範囲内にある場合には、アッシュの剥離は良好であり、しかも、アッシュがフィルタの排気側寄りの壁部により多く蓄積されることが確認された。
【実施例5】
実施例5は、実施例2.2と同様に、炭化珪素をシリコンによって接合してなるシリコン−炭化珪素複合材にて多孔質セラミック部材を構成するという前提の下で、シリコン粒子を単結晶シリコン、アモルファスシリコンあるいは金属シリコンから形成したセラミック部材を作製し、それらを実施例5.1〜5.8とした。
なお、この実施例5.1〜5.8における多孔質セラミック部材の形状は、上述した貫通孔断面形状がB1(図4(a))と同じ形状に固定化し、シリコン粒子を単結晶シリコン、アモルファスシリコンあるいは金属シリコンのいずれか1から形成するとともに、その焼成条件(温度、時間)を調整することによって、シリコンの結晶化度が異なる8種類のハニカム構造体を製造した。
(1) まず、平均粒径が30μmのα型炭化珪素粉末80重量%と、平均粒径4μの単結晶シリコン粉末20重量%とを混合し、得られた混合粉末100重量部に対して、成形助剤としてメチルセルロースを6重量部、分散溶媒液としてオレイン酸を2.5重量部、水を24重量部加えて混練して原料ペーストを調製した。
(2) 上記(1)で得た原料ペーストを用いて、上記実施例1の(B)(3)および(4)の工程において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、単結晶シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、2時間で焼成処理してシリコンを結晶化させた以外は、実施例2.2と同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmであるシリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を製造した。
(3) 次いで、上記実施例1の(B)(5)〜(8)とほぼ同様の処理によって、円柱形状で排気ガス浄化用ハニカムフィルタとして機能するハニカム構造体を製造し、これを実施例5.1とした。
上記実施例5.1において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、単結晶シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、2250℃、3時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.2とした。
上記実施例5.1において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下1400℃、2時間の条件で加熱し、単結晶シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、2200℃、2時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.3とした。
また、上記実施例5.1において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下1400℃、2時間の条件で加熱し、単結晶シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、2200℃、3時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.4とした。
上記実施例5.1において、シリコン粉末として、平均粒径4μのアモルファスシリコン粉末を用い、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、アモルファスシリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、1600℃、3時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.5とした。
上記実施例5.5において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、アモルファスシリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、1500℃、2時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.6とした。
上記実施例5.1において、シリコン粒子として、平均粒径4μの金属シリコン粉末を用い、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、金属シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、1600℃、3時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.7とした。
上記実施例5.7において、多孔質セラミック部材をアルゴン雰囲気下、1400℃、2時間の条件で加熱し、金属シリコンを溶融させて炭化珪素粒子をシリコンで接合させ、その後、常圧のアルゴン雰囲気下、1500℃、2時間の焼成処理にてシリコンを結晶化させた以外は、同様の処理によって、気孔率が45%、平均気孔径が10μm、サイズが34.3mm×34.3mm×150mmである、シリコン−炭化珪素複合体からなる多孔質セラミック部材を作製し、それらの部材を複数個結束させてなる集合型セラミック構造体を作製し、これを実施例5.8とした。
上記実施例5.1〜5.8について、上記実施例1と同様に、耐熱衝撃性試験(A)、(B)およびアッシュ補集試験(C)を行なうと共に、各多孔質セラミック部材を構成する炭化珪素粒子を接合するシリコンの結晶化度の評価を行なうために、サンプルを粉砕して粉末化し、X線回折におけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅を測定した。
この分析測定に用いたX線回折装置は、理学電気社製のリガクRINT−2500を用いた。X線回折の光源は、CuKα1とし、測定方法としては、まず、試料を粉砕・均一化してガラス製の試料ホルダーに充填し、この試料が充填された試料ホルダーをゴニオメーターの試料台にセットし、次に、X線球管に冷却水を流して、装置の電源をいれ、電圧を徐徐に上げて40KVとし、電流つまみを回して30mAに設定した。その後、以下の測定条件で測定した。
測定条件は、発散スリット:0.5°、発散縦制限スリット:10mm、散乱スリット:0.5°、受光スリット:0.3mm、モノクロ受光スリット:0.8mm、操作モード:連続、操作速度:5.000°/分、ステップ:0.01°、走査範囲:10.000°〜60.000°、モノクロメータ:カウントモノクロメータ使用、光学系:集中光学系とした。
これらの結果を、表5に示した。
【表5】

表5に示した結果から明らかなように、セラミックスとしての炭化珪素粒子をシリコンによって接合させてなるシリコン−炭化珪素複合体にて多孔質セラミック部材を構成し、その多孔質セラミック部材から形成されるハニカム構造体をフィルタとして用いた場合には、多孔質セラミック部材のX線回折におけるシリコンのピークの半値幅が0.6°を越えた実施例では、アッシュの剥離が悪く、しかもアッシュがフィルタの排気側から中央部に寄った壁部に蓄積されることが確認された。
すなわち、X線回折におけるシリコンのピークの半値幅が0.6°以下である場合には、アッシュの剥離は良好であり、しかも、アッシュがフィルタの排気側寄りの壁部により多く蓄積されることが確認された。
特に、セラミックスとしての炭化珪素粒子を接合させるシリコンとして、単結晶シリコンを用いる(実施例5.1〜5.4)ことが、耐熱衝撃試験、捕集限界およびアッシュの蓄積量比のすべての点で、アモルファスシリコン(実施例5.5〜5.6)や金属シリコン(実施例5.7〜5.8)を用いるよりも優れた効果を示すことが確認された。
なお、図9には、実施例5.1にかかるハニカム構造体のX線回折グラフを示す。このX線回折グラフにおけるSiのピーク(2θ=28°付近)の半値幅は0.6°であることを示している。
【産業上の利用可能性】
以上説明したように、本発明のハニカム構造体は、セラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成されているので、ハニカム構造体の熱拡散性が向上し、ハニカム構造体に不均一な温度分布が発生したり、冷熱サイクルが繰り返された場合であっても、あまり熱応力が蓄積されることがないため、クラック等が生じることがなく、耐熱衝撃性に優れたものとなる。加えて、排気ガス浄化用フィルタとして用いた場合には、アッシュの剥離除去能力も向上する。
【図1】




【図5】


【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造体は、一方の端面の開口面積と他方の端面の開口面積が異なっており、前記セラミック部材がセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成したことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体は、長手方向に垂直な断面において、一方の端面の開口面積の総和が相対的に大きくなるように封止されてなる大容積貫通孔群と、他方の断面における開口面積が総和が相対的に小さくなるように封止されてなる小容積貫通孔群とからなることを特徴とする請求の範囲1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
セルを形成するための多数の貫通孔を隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部が封止されてなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体であって、
前記多孔質セラミック部材は、長手方向に垂直な断面におけるセル面積の総和が相対的に大きい大容積貫通孔群と、長手方向に垂直な前記断面におけるセル面積の総和が相対的に小さい小容積貫通孔群との組み合わせからなり、
かつこのセラミック部材がセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項4】
前記多孔質セラミック部材は、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心間距離と、前記小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面の重心間距離とが等しいことを特徴とする請求の範囲3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記大容積貫通孔は、孔径の大きさが小容積貫通孔の孔径よりも大きい貫通孔からなるものであることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記大容積貫通孔は、入側が開口したガス流入側セルを構成し、前記小容積貫通孔は出側が開口したガス流出側セルを構成しているものであることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記多孔質セラミック部材は、気孔率が30〜80%であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記多孔質セラミック部材は、隔壁の表面粗さRaが、1.0〜30.0μmであることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記多孔質セラミック部材は、隔壁の厚さが、0.15〜0.45mmであることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記シリコン−セラミック複合材は、X線回折におけるSiのピークの半値幅が0.6°以下の特性を有することを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記貫通孔は、一方の端部が封止材によって封止された側で、大容積貫通孔群を構成するとき、その他端部が封止材によって封止された側の貫通孔は小容積貫通孔群を構成する2種類の貫通孔からなることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記貫通孔は、多角形であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記貫通孔の断面形状は、四角形と八角形であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記貫通孔は、断面角部が、アールもしくは面取り形状であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
前記小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面と、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面との面積比(大容積貫通孔断面積/小容積貫通孔断面積)は、1.01〜9.00であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項16】
前記小容積貫通孔の長手方向に垂直な断面と、大容積貫通孔の長手方向に垂直な断面との面積比(大容積貫通孔断面積/小容積貫通孔断面積)は、1.01〜6.00であることを特徴とする請求の範囲3または4に記載のハニカム構造体。
【請求項17】
前記隔壁は、その表面の少なくとも一部に触媒コーティング層を有することを特徴とする請求の範囲3に記載のハニカム構造体。
【請求項18】
前記多孔質セラミック部材が、シール材層を介して複数個結束されて1のハニカム構造体を形造ってなることを特徴とする請求の範囲3に記載のハニカム構造体。
【請求項19】
前記多孔質セラミック部材は、炭化珪素を含むことを特徴とする請求の範囲3に記載のハニカム構造体。
【請求項20】
車輌の粒子状物質を含む排気ガス浄化用フィルタとして使用されるものであることを特徴とする請求の範囲3に記載のハニカム構造体。

【国際公開番号】WO2004/113252
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507323(P2005−507323)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009225
【国際出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】