説明

ハフニウム合金ターゲット及びその製造方法

本発明は1、Hfに、Zr若しくはTiのいずれか、又は双方を総計で100wtppm−10wt%含有することを特徴とするハフニウム合金ターゲットであり、平均結晶粒径が1−100μm、不純物であるFe、Cr、Niがそれぞれ1wtppm以下、さらに{002}とこの面から35°以内にある{103}、{014}、{015}の4つの面の晶癖面配同率が55%以上で、かつ場所による4つの面の強度比の総和のばらつきが20%以下であるハフニウム合金ターゲットに関する。成膜特性や成膜速度が良好であり、パーティクルの発生が少なく、HfO又はHfON膜等の高誘電体ゲート絶縁膜の形成に好適なハフニウム合金ターゲット及びその製造方法を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、成膜特性や成膜速度が良好であり、パーティクルの発生が少なく、HfO又はHfON膜等の高誘電体ゲート絶縁膜の形成に好適なハフニウム合金ターゲット及びその製造方法に関する。なお、本明細書で使用する単位「ppm」は全てwtppmを意味する。
【背景技術】
誘電体ゲート絶縁膜の膜厚は、MOSトランジスタの性能に大きく影響するものであり、シリコン基板との界面が電気的にスムーズでキャリヤの移動度が劣化しないことが必要である。
従来、このゲート絶縁膜としてSiO膜が使用されているが、界面特性からみてこれまで最も優れたものであった。そして、このゲート絶縁膜として使用されているSiO膜が薄いほどキャリヤ(すなわち電子又は正孔)の数が増えてドレイン電流を増やすことができるという特性を有している。
このようなことから、ゲートSiO膜は配線の微細化によって電源電圧が下がるたびに、絶縁破壊の信頼性を損ねない範囲で常に薄膜化がなされてきた。しかし、ゲートSiO膜が3nm以下になると直接トンネルリーク電流が流れ、絶縁膜として作動しなくなるという問題を生じた。
一方で、トランジスタをより微細化しようとしているが、前記のようにゲート絶縁膜であるSiO膜の膜厚に制限がある以上、トランジスタの微細化が意味をなさず、性能が改善されないという問題を生じた。
また、LSIの電源電圧を下げ消費電力を下げるためには、ゲート絶縁膜をより一層薄くする必要があるが、SiO膜を3nm以下にすると上記のようにゲート絶縁破壊の問題があるので、薄膜化それ自体に限界があった。
以上から、次世代のゲート絶縁膜の候補として、従来のSiO、SiONよりも誘電率の高いHfOやHfONが有力な候補として検討されている。この膜は、Hfターゲットを酸素や窒素との反応性スパッタ法で成膜する。
この時に用いるターゲット、その製法、スパッタ法による酸化膜の形成に関する特許(特開平11−40517号公報参照)、半導体素子に関する特許(米国特許第4,333,808号、米国特許第6,207,589号参照)等に関するいくつかの特許出願が開示されている。
特許文献(特開平4−358030号公報)においては、Hfターゲットの不純物に関して、Al:10ppm以下であることが述べられている。また特許文献(特開平8−53756号公報)及び特許文献(特開平8−60350号公報)には、Fe:10ppm以下、Ni:10ppm以下、Cr:10ppm以下、Al:10ppm以下であることが記載されている。
特許文献(EPO0915117号公報)では、Fe:10ppm以下、Ni:10ppm以下、Cr:10ppm以下、Al:10ppm以下、酸素:250ppm以下、Na:0.1ppm以下、K:0.1ppm以下、U:0.001ppm以下、Th:0.001ppm以下と記載されている。
また、ゲート電極やドレイン,ソース部のようなゲート電極の極めて近傍の部分の形成に使われるMoSi、WSi、Ti膜では、Fe,Ni,Cr、Na,K、U、Thの不純物を制限する必要がある指摘があり、ターゲット中の不純物量を規定する技術の記載がある(特開昭60−66425号公報、特開昭61−107728号公報、特開昭61−145828号公報、特開平2−213490号公報、特開平4−218912号公報)特許文献12、特許文献13参照)。
しかし、上記の公知技術はいずれもHf単体についての一部不純物を規定するに留まっていた。
Hfターゲットを使った絶縁膜の成膜に関する研究の結果、従来のHf一種の単体では、成膜時のパーティクルの発生量が多いという問題があった。これは、Tiターゲットを用いてTiNの成膜の際に用いられるような、ペースティングと呼ばれる密着性の高い金属膜の成膜による剥離しやすい膜のはがれを抑える処理をおこなっても、実用的なパーティクル数に下げることは困難であった。
また、特にFe、Ni、Cr量が、数ppm程度あると、ゲート電極下のSi基板部に拡散し、デバイス特性を悪化させることが判明した。さらに、成膜した絶縁膜の厚さがばらついており、ウエハーや各部のデバイス特性がばらつくという問題があった。
スパッタ初期にバーンインと呼ばれる処理を行うが、その積算電力量が20kWHr以上にならないと膜厚が安定していなかった。
また、今後成膜特性や成膜速度を向上させるために、スパッタパワーを上昇させることが考えられるが、この場合、従来の金属ロウ材を用いたボンディング法では、スパッタ中に、ロウ材が溶解してターゲットが剥がれることが予想された。
【発明の開示】
本発明は、上記の問題を解決するために、製造方法SiO膜に替わる特性を備え、成膜特性や成膜速度が良好であり、パーティクルの発生が少なく、HfO又はHfON膜等の高誘電体ゲート絶縁膜の形成に好適なハフニウム合金ターゲット及びその製造方法を提供する課題とする。
本発明は、
1.Hfに、Zr若しくはTiのいずれか、又は双方を総計で100wtppm−10wt%含有することを特徴とするハフニウム合金ターゲット
2.平均結晶粒径が1−100μmであることを特徴とする上記1記載のハフニウム合金ターゲット
3.不純物であるFe、Cr、Niがそれぞれ1wtppm以下であることを特徴とする上記1又は2記載のハフニウム合金ターゲット
4.{002}とこの面から35°以内にある{103}、{014}、{015}の4つの面の晶癖面配向率が55%以上で、かつ場所による4つの面の、強度比の総和のばらつきが20%以下であることを特徴とする上記1−3のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット
5.ターゲットのエロージョン面の平均粗さRaが、0.01−2μmであることを特徴とする上記1−4のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット
6.ターゲットの非エロージョン面の平均粗さRaが、2−50μmであることを特徴とする上記1−5のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット
7.ハフニウム合金の溶解インゴット又はビレットを熱間鍛造及び熱間圧延又は冷間圧延を行い、さらに大気中、真空中又は不活性ガス雰囲気中で800−1300°Cに15分以上加熱しすることを特徴とする上記1−6のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法
8.バッキングプレートに拡散接合によりボンディングすることを特徴とする上記7記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法
9.バッキングプレートとしてAl若しくはAl合金、Cu若しくはCu合金又はTi若しくはTi合金を使用することを特徴とす上記8記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法
10.ターゲットの側面等の非エロージョン面をサンドブラスト、エッチング、溶射被膜の形成により平均粗さRaを2−50μmとすることを特徴とする上記1−5のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、Hfに、Zr若しくはTiのいずれか、又は双方を総計で100wtppm−10wt%含有させたハフニウム合金ターゲットである。このようにHfと化学的な性質が似かよっているZr又はTiを添加することにより、誘電率の低下やリーク電流の上昇など絶縁膜の特性を悪化させることなく、次に示すように、パーティクルの少ない成膜を行うことができるようになった。
本発明は、平均結晶粒径を1−100μmとする。これによって、ターゲットの結晶粒径を微細化することによって、パーティクルの発生を減少させることができる。なお、単に粒径を微細化するには、上記Zr又はTiを、10wt%を超えて添加することも有効であるが、10wt%を超えるとターゲットの塑性加工が困難となるため、10wt%が上限となる。
本発明は、また不純物であるFe、Cr、Niがそれぞれ1wtppm以下とする。ゲート酸化膜は、直接Siのスイッチング部に接することから、Siのバンドギャップ中に、エネルギー順位準位を形成してしまうFe,Ni、Coの濃度は下げる必要がある。
{002}とこの面から35°以内にある{103}、{014}、{015}の4つの面の晶癖面配向率が55%以上で、かつ場所による4つの面の、強度比の総和のばらつきを20%以下とする。
形成した酸化膜の厚さが実用上問題のないばらつき内に抑えるためには、結晶配向配向を制御する必要がある。最密面である(002)と、この面から35°以内にある(103)、(014)、(015)面を晶癖面として、これら4面の割合の総和を、次の式により晶癖面配向率として定義する。

この晶癖面配向率が55%以上で、かつターゲット各部の晶癖面配向率ばらつきを±20%以内にすることで、このターゲットを用いてスパッタ成膜した酸(窒)化膜の厚みのばらつきを実用上問題のない、±7%以内に抑えることができる。晶癖面配向率が55%未満であると、晶癖面配向率ばらつきを±20%以内に抑えても、他の面が優勢となり、これらの面のばらついときに、酸(窒)化膜の膜厚はばらついてしまう。
ターゲットのエロージョン面の平均粗さRaは0.01−2μmとする。これによって、ターゲット表面近傍のスパッタされる速度の速い加工ダメージ層を減少させて、早期に安定したスパッタレートを達成させることで、バーンインに要するスパッタ量、つまり積算電力量を減少させることができる。
一方、ターゲットの非エロージョン面の平均粗さRaは2−50μmとすることが望ましい。ターゲットの非エロージョン面、すなわちターゲット側面などのスパッタされた物質が飛来し、好ましくないターゲット物質の成膜が起こる部分をサンドブラスト、エッチング、溶射被膜を形成して、飛来物質を捕獲し該物質の剥がれを抑制するものである。これによってさらにウエハ上のパーティクル数を減少させることができる。
本発明のハフニウム合金ターゲットの製造に際しては、ハフニウム合金の溶解インゴット又はビレットを熱間鍛造及び熱間圧延又は冷間圧延を行い、さらに大気中、真空中又は不活性ガス雰囲気中で800−1300°Cに15分以上加熱するものである。
熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延を組み合わせでHf合金の板、塊を作成する。またターゲット形状によっては、この後にスピニング加工等を行うこともある。これらの塑性加工の途中と最後に、大気中、真空中または不活性ガス雰囲気中で、保持温度:800−1300°C、保持時間:15分以上の熱処理を行う。この後ターゲット形状にあわせて切削加工と、必要に応じてボンディング、EB溶接等を行い、所定のターゲット形状とする。ただし、ターゲットによっては、ボンディングを行わず、一体型ターゲットとする場合がある。
バッキングプレートには、通常Al若しくはAl合金、Cu若しくはCu合金又はTi若しくはTi合金を使用する。特に、バッキングプレートにボンディングする際には、拡散接合により行うことが望ましい。これによって、高出力スパッタによる温度上昇に耐えることが可能となる。
【実施例】
次に、実施例について説明する。なお、本実施例は発明の一例を示すためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に含まれる他の態様及び変形を含むものである。
【実施例1】
Hf−0.23wt%Zrインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で1000°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、35μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:<0.01、Ni:0.25、Cr:<0.01、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.01、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:<0.1、Si:2、P:0.2、Cl:<0.05、Ca:<0.01、Ti:0.07、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:0.01、Nb:<0.05、Mo:0.1、Ag:<0.05、W:0.08、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:110、C:30、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)。また、<nは検出限界であるn(ppm)で、検出されなかったことを示す。
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で72%、半径1/2部で80%、外周近傍で75%であった。ターゲットHf部の底面について、中央部で70%、半径1/2部で78%、外周近傍で71%、厚さ1/2の部分について、中央部で68%、半径1/2部で70%、外周近傍で75%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラストで、表面粗さをRa=5μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなった。
また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布(1σ)とパーティクル数を計測したところ、順に2.0%、12ケ/ウエハー、2.5%、8ケ/ウエハー、2.4%、15ケ/ウエハーであり、膜厚分布・パーティクル数とも良好な結果となった。このターゲットを用いてゲート絶縁膜を作製したデバイスは、良好な特性が得られた。
【実施例2】
Hf−300wtppmZrインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で1000°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、70μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:0.1、Ni:0.8、Cr:0.02、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.01、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:<0.1、Si:0.5、P:0.1、Cl:<0.05、Ca:<0.01、Ti:0.5、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:0.01、Nb:<0.05、Mo:4、Ag:<0.05、W:0.02、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:80、C:60、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で63%、半径1/2部で61%、外周近傍で70%であった。ターゲットの裏面について、中央部で59%、半径1/2部で63%、外周近傍で69%、厚さ1/2の部分について、中央部で66%、半径1/2部で60%、外周近傍で63%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.25μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラストで、表面粗さをRa=10μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハーにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値となった。
また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布とパーティクル数を計測したところ、順に1.5%、15ケ/ウエハー、2.3%、17ケ/ウエハー、2.3%、20ケ/ウエハーであり、膜厚分布パーティクル数とも良好な結果となった。
【実施例3】
Hf−4.7wt%Zrインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で900°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、10μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:0.04、Ni:0.02、Cr:<0.01、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.02、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:12、Si:0.9、P:0.2、Cl:0.1、Ca:<0.01、Ti:0.09、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:0.03、Nb:<0.05、Mo:0.1、Ag:<0.05、W:0.15、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:80、C:60、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で73%、半径1/2部で72%、外周近傍で69%であった。ターゲットの裏面について、中央部で65%、半径1/2部で72%、外周近傍で66%、厚さ1/2の部分について、中央部で69%、半径1/2部で67%、外周近傍で70%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.25μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラスで、表面粗さをRa=5μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、7kWHまで成膜したところで、一定値をなった。
また、7kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布とパーティクル数を計測したところ、順に2.8%、13ケ/ウエハー、3.2%、17ケ/ウエハー、2.3%、24ケ/ウエハーであり、膜厚分布パーティクル数とも良好な結果となった。
【実施例4】
Hf−1wt%Tiインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で900°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、60μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:0.04、Ni:0.02、Cr:<0.01、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.02、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:12、Si:0.9、P:0.2、Cl:0.1、Ca:<0.01、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:0.03、Nb:<0.05、Zr:20、Mo:0.1、Ag:<0.05、W:0.15、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:80、C:60、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で63%、半径1/2部で64%、外周近傍で68%であった。ターゲットの裏面について、中央部で60%、半径1/2部で69%、外周近傍で64%、厚さ1/2の部分について、中央部で70%、半径1/2部で65%、外周近傍で71%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラスで、表面粗さをRa=7μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなった。
また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布とパーティクル数を計測したところ、順に1.5%、18ケ/ウエハー、1.9%、20ケ/ウエハー、2.4%、21ケ/ウエハーであり、膜厚分布パーティクル数とも良好な結果となった。
【実施例5】
実施例1と同一のインゴットと塑性加工・熱処理を行ったターゲットを、250−600°C、100−2000Kgf/cmの温度と圧力をかけて、例えばA5052やA6061のような高強度Al合金に拡散接合を行い、ターゲット形状に加工する。これを用いて、10kWの出力でスパッタをしても、実施例1と同様の成膜結果がえられるが,Inをロウ材とするロウ付けによるボンディング方法では、Inが溶け出し、ターゲットが剥離してしまう。なお、高強度Cu合金に拡散接合する場合、250−950°C、100−2000Kgf/cm温度、圧力をかけて接合する必要がある
(比較例1)
Hf−50wtppmZrインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で1000°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、350μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:<0.01、Ni:0.10、Cr:<0.01、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.01、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:<0.1、Si:1.5、P:0.3、Cl:<0.05、Ca:<0.01、Ti:0.16、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:0.01、Nb:<0.05、Mo:3、Ag:<0.05、W:0.08、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:80、C:40、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で69%、半径1/2部で75%、外周近傍で74%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラスで、表面粗さをRa=6μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。
膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなった。また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布(1σ)とパーティクル数を計測したところ、順に2.2%、150ケ/ウエハー、1.5%、210ケ/ウエハー、1.9%、260ケ/ウエハーであり、膜厚分布は良好であったが、パーティクル数が多く実用には適さなかった。
(比較例2)
Hf−15wt%Zrインゴットを、大気中1300°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。しかしながら鍛造時の変形量が著しく小さいために、鍛造中に何度も再加熱を行わなければならなかった。さらに板状に塑性加工するには、時間とコストが非常に大きくなり、商業的に成立するものではなかった。
(比較例3)
Hf−0.19wt%Zrインゴットを、大気中1200°Cで1時間保持し、熱間鍛造を行った。次に1000°Cに1時間保持し熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で1000°C×1時間の熱処理を行った。この時の平均結晶粒径は、55μmであった。なお、不純物量はつぎのとおりであった。
Na:<0.01、K:<0.01、Fe:3、Ni:8、Cr:1.5、U:<0.001、Th:<0.001、Li:<0.01、Be:<0.01、Mg:<0.01、Al:<0.1、Si:2.1、P:0.3、Cl:<0.05、Ca:<0.01、Ti:0.07、Mn:<0.01、Cu:<0.05、Zn:<0.01、Nb:<0.05、Mo:2、Ag:<0.05、W:0.13、Au:<0.05、Hg:<0.05、Pb:<0.01、Bi:<0.01、O:120、C:200、N:<10 (上記について単位は全てwtppm)
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で69%、半径1/2部で75%、外周近傍で74%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラスで、表面粗さをRa=6μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなった。
また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布(1σ)とパーティクル数を計測したところ、順に2.2%、12ケ/ウエハー、1.5%、20ケ/ウエハー、1.9%、25ケ/ウエハーであり、膜厚分布・パーティクル数とも良好であったが、このターゲットを用いて形成したゲート絶縁膜をもつデバイスの特性のばらつきが大きく、集積回路を作成する事は出来なかった。
(比較例4)
実施例1と同一インゴットから切り出したものを、熱間鍛造工程を省略し、1000°Cに1時間保持後、熱間圧延により円板状にしたあと、大気中で1000°C×1時間の熱処理を行った。このため、組成(Hf−0.23wt%Zr)、不純物量とも実施例1と同一である。
このときの結晶粒径は65μm、晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で75%、半径1/2部で35%、外周近傍で45%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μmに仕上げ、ターゲットの側面にサンドブラスで、表面粗さをRa=5μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなったが、5kWH、20kWH、における膜厚分布は20%、18%とばらつきが大きく実用的ではなかった。
(比較例5)
実施例1と同一のインゴットから切り出し、同一の塑性加工・熱処理を行ったものをターゲットに加工した。この時の平均結晶粒径は35μmであった。
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で75%、半径1/2部で64%、外周近傍で66%であった。ターゲットの裏面について、中央部で74%、半径1/2部で68%、外周近傍で73%、厚さ1/2の部分について、中央部で63%、半径1/2部で65%、外周近傍で69%であった。
このターゲット表面の表面粗さをRa=0.3μm、ターゲットの側面は旋盤上がりで、表面粗さはRa=1.5μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfO膜を成膜した。膜厚は積算電力量で、5kWHまで成膜したところで、一定値をなった。また、5kWH、20kWH、100kWHまで成膜したところで、膜厚分布(1σ)とパーティクル数を計測したところ、順に2.0%、12ケ/ウエハー、2.5%、35ケ/ウエハー、2.4%、105ケ/ウエハーと、膜厚分布は良好であったが、ターゲットを使用してゆくに連れて、パーティクル数は増加していった。
(比較例6)
実施例1と同一のインゴットから切り出し、同一の塑性加工・熱処理を行ったものをターゲットに加工した。この時の平均結晶粒径は42μmであった。
このときの晶癖面配向率は、ターゲット表面について中央部で65%、半径1/2部で71%、外周近傍で72%であった。ターゲットの裏面について、中央部で63%、半径1/2部で73%、外周近傍で67%、厚さ1/2の部分について、中央部で60%、半径1/2部で63%、外周近傍で65%であった。
このターゲット表面の表面粗さを旋盤上がりで、Ra=1.7μm、ターゲットの側面はブラスト処理して、Ra=5μmに仕上げたターゲットを作製した。
このターゲットを用いて、200mm径のSiウエハにHfON膜を成膜した。膜厚は積算電力量で一定値になるまで、20kWHまでかかった。
【発明の効果】
本発明は、成膜特性や成膜速度が良好であり、パーティクルの発生が少なく、HfO又はHfON膜等の高誘電体ゲート絶縁膜の形成に好適なハフニウム合金ターゲットが得られるという優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hfに、Zr若しくはTiのいずれか、又は双方を総計で100wtppm−10wt%含有することを特徴とするハフニウム合金ターゲット。
【請求項2】
平均結晶粒径が1−100μmであることを特徴とする請求の範囲第1項記載のハフニウム合金ターゲット。
【請求項3】
不純物であるFe、Cr、Niがそれぞれ1wtppm以下であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項記載のハフニウム合金ターゲット。
【請求項4】
{002}とこの面から35°以内にある{103}、{014}、{015}の4つの面の晶癖面配向率が55%以上で、かつ場所による4つの面の、強度比の総和のばらつきが20%以下であることを特徴とする請求の範囲第1項−第3項のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット。
【請求項5】
ターゲットのエロージョン面の平均粗さRaが、0.01−2μmであることを特徴とする請求の範囲第1項−第4項のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット。
【請求項6】
ターゲットの非エロージョン面の平均粗さRaが、2−50μmであることを特徴とする請求の範囲第1項−第5項のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲット。
【請求項7】
ハフニウム合金の溶解インゴット又はビレットを熱間鍛造及び熱間圧延又は冷間圧延を行い、さらに大気中、真空中又は不活性ガス雰囲気中で800−1300°Cに15分以上加熱することを特徴とする請求の範囲第1項−第6項のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法。
【請求項8】
バッキングプレートに拡散接合によりボンディングすることを特徴とする請求項7記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法。
【請求項9】
バッキングプレートとしてAl若しくはAl合金、Cu若しくはCu合金又はTi若しくはTi合金を使用することを特徴とする請求の範囲第8項記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法。
【請求項10】
ターゲットの側面等の非エロージョン面をサンドブラスト、エッチング、溶射被膜の形成により平均粗さRaを2−50μmとすることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載のハフニウム合金ターゲットの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/079039
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502981(P2005−502981)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000448
【国際出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(591007860)株式会社日鉱マテリアルズ (545)
【Fターム(参考)】