説明

ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体

【化001】


式(I)(式中の可変基は本明細書に記載の通りである)の、ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体を提供する。このような化合物は、インビボ又はインビトロにおいて特定な受容体活性を調節するために用いられるリガンドであって、ヒト、ペット、及び家畜における病理学的な受容体活性化に関連する疾患の治療に於いて特に有用である。医薬組成物及びこのような化合物を用いてこのような疾患を治療する方法、さらに受容体の局在化研究のためのこのようなリガンドを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年8月23日出願の米国仮特許出願第60/823,261号の優先権を主張し、その全てを参照として本明細書に取り込む。
【0002】
本発明は一般に、有用な薬理学的特性を有するハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体に関する。本発明は更に、カプサイシン受容体の活性化に関連する疾患を治療するための、カプサイシン受容体と結合する他の薬剤を同定するための、そしてカプサイシン受容体の検出及び局在化のためのプローブとしての、このような化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
疼痛知覚、又は侵害受容は、「侵害受容器」と呼ばれる、特化した知覚神経群の末梢ターミナルが介在している。多種の物理的及び化学的な刺激は、哺乳動物のこのような神経の活性化を誘発するものであって、潜在的に有害な刺激の認識へつながる。しかしながら、侵害受容器の異常な又は過剰な活性化は、衰弱性の急性又は慢性疼痛をもたらすことがある。
【0004】
神経障害性疼痛は、刺激がなくても疼痛シグナルの伝達を生じ、主として神経系の損傷に起因している。ほとんどの場合、このような疼痛は末梢系の初期損傷(例えば、直接の損傷又は全身性疾患を介して)後の末梢及び中枢神経系の鋭敏化によって生じるものと考えられている。神経障害性疼痛は、一般にその強さにより、灼熱痛(burning)、疼くような痛み(shooting)及び強烈な間断のない(unrelenting)痛みであり、時には、その誘引となった初期の損傷又は病気を凌ぐほどのものである。
【0005】
既存の神経障害性疼痛の治療法は、ほとんどが効果がない。モルヒネのような麻薬は強力な鎮痛薬であるが、その実用性は、身体的嗜癖、退薬性のような、更には呼吸障害、情緒変調、並びに付随性便秘、悪心、嘔吐、及び内分泌及び自律神経系の変化に伴う腸運動の低下のような、副作用のために限定されている。更に、神経障害性疼痛は従来のオピオイド鎮痛薬による治療に対して多くの場合は反応しないか又は部分的に反応するのみである。N−メチル−D−アスパラギン酸拮抗薬ケタミン又はアルファ−(2)−アドレナリン作動薬クロニジンを用いる治療法は急性又は慢性の疼痛を緩和することができ、オピオイド消費の減少を可能にするが、これらの薬剤は副作用のために症状を悪化させる場合がある。
【0006】
カプサイシンを用いる局所療法が、神経障害性疼痛を含む慢性及び急性疼痛の治療に用いられている。カプサイシンはなす科(辛いチリ・ペパーを含む)植物から得られる刺激的な物質であり、痛みに介在するとされる小さな直径を有する求心性神経線維(A−デルタ及びC繊維)上で選択的に作用するものとされている。カプサイシンに対する応答は、末梢組織の侵害受容器の持続的な活性化に続いて、1つ又はそれ以上の刺激に対して次第に末梢の侵害受容器が脱感作されるものと特徴付けられている。動物を用いた研究により、カプサイシンは、カルシウム及びナトリウムに対してカチオン選択性チャネルを開くことにより、C繊維膜の脱分極化を誘発するものと思われる。
【0007】
同様の応答が、バニロイド部位を共通にするカプサイシンの構造的な類縁体によっても引き起こされる。そのような類縁体の1つは、ユーホルビア(Euphorbia)植物の天然生成物であるレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)である。バニロイド受容体(VR)という用語は、カプサイシン及びこれに関連する刺激性物質の神経膜認識部位を表すために造られた用語である。カプサイシンの応答はその他の類縁体、カプサゼピンによって競合的に阻害され(従って拮抗され)、また非選択的カチオンチャネルブロッカー、ルテニウムレッドによっても阻害される。これらは中等度未満の親和性(一般に140μM以上のKi値で)でVRと結合する。
【0008】
ラット及びヒトのバニロイド受容体は、後根神経節細胞からクローン化されている。最初に同定されたバニロイド受容体の型は、バニロイド受容体1型(VR1)として知られているが、「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、哺乳動物の同属体のものと同様にラット及び/又はヒトのこのような型の受容体を意味するもので、本明細書では同義的に用いられる。痛覚におけるVR1の役割は、バニロイドが誘発する疼痛症状を示さず、熱及び炎症に対して応答障害を示すような、当該受容体が欠如しているマウスを用いて確認された。VR1は、高温、低pH、及びカプサイシン受容体作動薬に応答してチャネルを開く閾値が低くなる、非選択的なカチオンチャネルである。カプサイシン受容体チャンネルの開口は、一般に、この受容体を発現している神経細胞及び隣接するその他の神経細胞からの炎症ペプチドの放出に引き続いて起こり、疼痛応答を増強させる。カプサイシンによる初期活性化の後に、カプサイシン受容体は、cAMP依存プロテインキナーゼによるリン酸化によって急速に脱感作を受ける。
【0009】
末梢組織の侵害受容器を脱感作するこれらの能力により、VR1作動薬であるバニロイド化合物は局所麻酔薬として使用されている。しかしながら、作動薬の投与自体が灼熱痛を引き起こす場合があるため、治療への使用が制限されている。
最近、ある特定の非バニロイド化合物を含むVR1拮抗薬も疼痛の治療に有用であることが報告されている(例えば、PCT国際出願公開第WO02/08221号、同第WO03/062209号、同第WO04/054582号、同第WO04/055003号、同第WO04/055004号、同第WO04/056774号、同第WO05/007646号、同第WO05/007648号、同第WO05/007652号、同第WO05/009977号、同第WO05/009980号、同第WO05/009982号、同第WO05/049601号、同第WO05/049613号、同第WO06/122200号及び同第WO06/120481号を参照されたい)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、VR1と相互に作用するが、VR1作動薬であるバニロイド化合物のように初期疼痛を誘発しない化合物が、神経障害性疼痛、さらにカプサイシン受容体の調節に応答する他の疾患を含む、慢性及び急性の疼痛の治療に対して望ましい。本発明はこの要求を満たし、更に関連する効果を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は式Iのハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体、更にそのような化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)及びエステルを提供する。
【0012】
【化001】

【0013】
式Iにおいて、
【0014】
【化002】

【0015】
は、環中に1、2又は3個のヘテロ原子を含有する縮合した5員又は6員のヘテロアリールを示す。当該ヘテロ原子はO、N及びSから独立して選ばれ、残りの環員原子は炭素である。縮合したヘテロアリールは置換されていてもよく、好ましい縮合ヘテロアリールは、アミノ、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルキルスルホニルアミノ、C−Cアルカノイルアミノ、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜3個、又は0〜2個の置換基で置換されている。
【0016】
Arは、フェニル、又は5又は6員のヘテロアリールであって、それぞれは置換されていてもよく、それぞれはハロゲン、シアノ、アミノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜4個、又は0〜3個の置換基で置換されていることが好ましい。
【0017】
Xは、C−Cアルキレンであって、それぞれの炭素原子は置換されていてもよく、そしてメチル、エチル、及び一緒になってC−Cシクロアルキルを形成する置換基から独立して選ばれる0、1又は2個の置換基で置換されていることが好ましいが、少なくとも1個の炭素原子は置換されている。そして
Yは、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルである。
【0018】
本発明は更に、式Iaのハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体、更にそのような化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物(例えば、水和物)及びエステルを提供する。
【0019】
【化003】

【0020】
式中の、
【0021】
【化004】

【0022】
、X及びYは式Iで示したとおりである。
Wは、N、又はRで示される置換基で置換されていてもよいCHである。
【0023】
は、0〜3個の置換基を示し、好ましくはこのような置換基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、アミノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる。
【0024】
ある態様において、式I及び式Iaの化合物は、VR1調節剤であり、カプサイシン受容体結合試験において1マイクロモル、500ナノモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のKi値を示し、及び/又はカプサイシン受容体作動薬又は拮抗薬の活性のインビトロ測定試験において、1マイクロモル、500ナノモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のEC50値又はIC50値を有している。
ある実施態様において、このようなVR1調節剤はVR1拮抗薬であり、そしてカプサイシン受容体活性化のインビトロ試験(例えば、本明細書の実施例6に示した試験)において、化合物のIC50と同等、IC50の10倍又はIC50の100倍の濃度で、検出可能な程の作動活性を示さない。
【0025】
ある態様において、本明細書で記載されているような化合物は、検出可能なマーカー(例えば、放射性標識又は蛍光結合)で標識されている。
【0026】
他の態様によると、本発明は更にハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体の少なくとも1つを、生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物を提供する。
【0027】
更なる態様において、カプサイシン受容体を発現している細胞(例えば、中枢神経系又は末梢神経節、尿路上皮又は肺の細胞のような、神経細胞)を本明細書に記載されているような、少なくとも1つのVR1調節剤と接触させることからなる、細胞カプサイシン受容体のカルシウム伝達を減少させる方法を提供する。このような接触はインビボ又はインビトロで起こさせてもよく、通常はインビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合を変化させるのに十分な濃度のVR1調節剤(実施例5に示した試験を用いて)及び/又はVR1介在信号伝達(実施例6に示した試験を用いて)を用いて実施する。
【0028】
バニロイドリガンドのカプサイシン受容体との結合を阻害する方法も更に提供される。ある特定な態様においては、この阻害がインビトロで行われる。このような方法は、カプサイシン受容体を、バニロイドリガンドのカプサイシン受容体との結合を検出可能な程阻害する条件下及び十分な量又は濃度の、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤と接触させることよりなる。他の態様によると、カプサイシン受容体は患者の体内にある。このような方法は、患者体内のカプサイシン受容体を発現している細胞を、インビトロでバニロイドリガンドのクローンのカプサイシン受容体を発現する細胞との結合を検出可能な程阻害するのに十分な量の、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤と接触させることからなる。
【0029】
本発明は更に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を、患者に投与することからなる、患者のカプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する方法を提供する。
【0030】
その他の態様において、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を、疼痛に罹っている(又はその危険性がある)患者に投与することからなる、患者の疼痛を治療する方法を提供する。
【0031】
痒み、尿失禁、過活動膀胱、更年期症状、咳及び/又はしゃっくりの1つ又はそれ以上に罹っている(又はその危険性がある)患者に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を投与することからなる、患者における痒み、尿失禁、過活動膀胱、更年期症状、咳及び/又はしゃっくりを治療する方法が更に提供される。
【0032】
その他の態様において、更年期症状に罹っている(又はその危険性がある)患者に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を投与することからなる、患者の更年期症状を治療する方法を提供する。
【0033】
本発明は更に、本明細書に記載されているような少なくとも1つのVR1調節剤の治療有効量を、肥満患者に投与することからなる、肥満患者の減量を促進する方法を提供する。
【0034】
更に、カプサイシン受容体に結合する薬剤を同定するための方法を提供し、この方法は、
(a)化合物がカプサイシン受容体と結合できる条件下に、カプサイシン受容体を本明細書に記載のような標識された化合物と接触させて、これにより結合した標識化合物を生成する;
(b)テスト薬剤の非存在下の、結合した標識化合物の量に相当するシグナルを検出する;
(c)結合した化合物を、テスト薬剤と接触させる;
(d)テスト薬剤の存在下の、結合した化合物の量に相当するシグナルを検出する;そして
(e)工程(b)で検出されるシグナルと比較して、工程(d)で検出されるシグナルの減少を測定する、
ことを包含する。
【0035】
更なる態様によれば、本発明は、サンプル中のカプサイシン受容体の有無を決定する方法を提供し、この方法は、
(a)化合物がカプサイシン受容体と結合することが可能な条件下で、サンプルを本明細書に記載されているような化合物と接触させる;そして
(b)化合物がカプサイシン受容体と結合するレベルの指標となるシグナルを検出する;
ことを包含する。
【0036】
本発明はまた、
(a)容器中の本明細書に記載されているような医薬組成物;及び
(b)疼痛、痒み、尿失禁、過活動膀胱、更年期症状、咳、しゃっくり及び/又は肥満のような、カプサイシン受容体調節の応答に関連する1つ又はそれ以上の疾患の治療に、当該組成物を使用するための使用説明書;
を含有してなる、包装された医薬調製物を提供する。
【0037】
更に別の態様によれば、本発明は本明細書に開示されている、中間体を含む、化合物を製造する方法を提供する。
【0038】
本発明のこれらの又はその他の態様は以下の詳細な説明を参照することにより明瞭になるだろう。
【0039】
(詳細な説明)
上記のように、本発明は、ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体を提供する。このような化合物は、インビトロ又はインビボでカプサイシン受容体の活性を調節するために様々な状況下で使用できる。
【0040】
(用語)
化合物は一般に、本明細書において標準の命名法を用いて記載されている。不斉中心を有する化合物については、特定される以外は、全ての光学異性体及びこれらの混合物は範囲内であることを理解すべきである。更に、炭素−炭素2重結合を有する化合物は、Z体及びE体を生じ、特定される以外は、全ての異性体が本発明に含まれる。多種の互変異性体の形態で存在する化合物においては、表示されている化合物は何れかの一つの特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異性体の形態を含むように意図されている。本明細書では、ある特定の化合物は、可変基(例えば、R1、A、X)を含む一般式を用いて本明細書に記載されている。そのような式の可変基の各々は、特定されていない限り、その他の何れの可変基からもそれぞれ独立して定義されており、式中に一度以上現れる何れの可変基も、その都度それぞれ独立して定義される。
【0041】
本明細書で用いられる「ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体」という用語は、式Iaの化合物、更に本明細書で提供される他の式の化合物を包含する、式Iの全ての化合物(エナンチオマー、ラセミ体及び立体異性体の何れをも含む)及び当該化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物及びエステルを包含する。
【0042】
本明細書で示されている化合物の「薬学的に許容される塩」は、過度な毒性又は発癌性、及び好ましくは刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症をもたらさずに、ヒト又は動物の組織に接触させて用いるのに適している酸又は塩基の塩である。このような塩は、アミンのような塩基残基の無機及び有機酸塩を、またカルボン酸のような酸残基のアルカリ又は有機塩を包含する。
塩の形成に用いるための具体的な薬学的に許容されるアニオンは、これらに限定されないが、酢酸、2−アセトキシ安息香酸、アスコルビン酸、安息香酸、重炭酸、ブロマイド、エデト酸カルシウム、炭酸、クロライド、クエン酸、二塩酸、二リン酸、二酒石酸、エデト酸、エストル酸(エチルコハク酸)、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレソルシン酸、ヒドラバミン、臭化水素酸、塩酸、ヨー化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メチルブロマイド、メチル硝酸、メチル硫酸、ムチン酸、ナプシル酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、塩基性酢酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、ベシル酸(ベンゼンスルホン酸)、カンシル酸(カンファースルホン酸)、エジシル酸(エタン−1,2−ジスルホン酸)、エシル酸(エタンスルホン酸)、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、メシル酸(メタンスルホン酸)、トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸)及びトシル酸(p−トルエンスルホン酸)を包含するスルホン酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸及びトリエチオジドの塩を包含する。
同様に塩形成に用いるための薬学的に許容されるカチオンは、これに限定されないが、アンモニウム、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、及びアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛のような金属を包含する。
当業者は、本明細書で提供される化合物のための更なる薬学的に許容される塩を認識するであろう。一般的に、薬学的に許容される酸又は塩基の塩は、塩基又は酸の部位を含んでいる親化合物から何れかの慣用の化学的方法により合成することができる。つまり、このような塩は、これらの化合物の遊離の酸又は塩基形態を、水若しくは有機溶媒、又はこれらの混合物中で、適当な塩基又は酸の化学量論的な量を反応させることによって製造でき;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、メタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水溶媒の使用が好ましい。
【0043】
本明細書で提供される化合物の各々は、溶媒和物(例えば、水和物)又は非共有結合錯体の形態とすることができるが、必ずしも必要というわけではない。更に、多種の結晶形及び多形体は、本発明の範囲内である。列挙した式の化合物のプロドラッグも本明細書で提供される。
「プロドラッグ」は、本明細書で提供される化合物の構造的な要求を完全に満たすものではないが、患者へ投与した後に、インビボで修飾されて、本明細書に示される式の化合物を生成するものである。例えば、プロドラッグは本明細書に示される化合物のアシル化誘導体であってよい。プロドラッグは、哺乳動物に投与した後に開裂して、それぞれ遊離のヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基を形成する、ヒドロキシ、アミノ又はスルフヒドリル基が何れかの基と結合している化合物を包含している。プロドラッグの例は、これに限定されないが、本明細書に示される化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸及び安息香酸の誘導体を包含する。本明細書に示される化合物のプロドラッグは、化合物中に存在する官能基を、修飾体がインビボで開裂して親化合物になるような方法で、修飾することによって製造することができる。
【0044】
本明細書で用いられる、「アルキル」という用語は、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素を示す。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル及び3−メチルペンチルのような、1〜8個の炭素原子(C−Cアルキル)、1〜6個の炭素原子(C−Cアルキル)及び1〜4個の炭素原子(C−Cアルキル)を有する基を包含する。「C−Cアルキル」は単共有結合(C)又は1〜n個の炭素原子を有するアルキル基を示し;例えば、「C−Cアルキル」は単共有結合又はC−Cアルキル基を示す。ある場合に、アルキル基の置換基を具体的に示す。例えば、「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1つのヒドロキシ置換基を有するアルキル基を示す。
【0045】
「アルキレン」は、上で定義したような2価のアルキル基を示す。C−Cアルキレンはメチレン又はエチレンであり;C−Cアルキレンは単共有結合又は1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;C−Cアルキレンは単共有結合又は1若しくは2個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0046】
「アルケニル」は、直鎖又は分枝鎖のアルケン基を示し、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素二重結合を含んでいる。アルケニル基は、エテニル、アリル又はイソプロペニルのような、それぞれ2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル及びC−Cアルケニル基を包含する。
「アルキニル」は、1つ又はそれ以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、それの少なくとも1つは三重結合である、直鎖又は分枝鎖のアルキン基を示す。アルキニル基は、それぞれ2〜8個、2〜6個又は2〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル及びC−Cアルキニル基を包含する。
【0047】
「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、及びシクロヘキセニルのようなこれらの部分飽和変異体のような、環員原子の全てが炭素である、1個以上の飽和及び/又は部分飽和環を含有する基である。シクロアルキル基は芳香環又はヘテロ環を含有していない。あるシクロアルキル基は、C−Cシクロアルキルで、これはシクロアルキル基が、その全てが炭素である、3〜7の環員原子を有する単環を含有している。「(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル」は、単共有結合又はC−Cアルキレン基を介して結合しているC−Cシクロアルキルである。
【0048】
本明細書で用いられる「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合している上記のようなアルキル基を意味する。アルコキシ基は、それぞれ1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有する、C−Cアルコキシ及びC−Cアルコキシ基を包含する。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、及び3−メチルペントキシが具体的なアルコキシ基である。
【0049】
「アルキルエーテル」は、直鎖又は分枝鎖のエーテル置換基(すなわち、アルコキシ基で置換されているアルキル基)を示す。アルキルエーテル基は、それぞれ2〜8、6又は4個の炭素原子を有する、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルキルエーテル及びC−Cアルキルエーテルを包含する。Cアルキルエーテルは、構造:−CH−O−CHを有する。
【0050】
「アルカノイル」という用語は、アシル基(例えば、−(C=O)−アルキル)を示し、その炭素原子は直鎖又は分枝鎖状のアルキル配列になっていて、結合はケト基の炭素を介している。アルカノイル基は、指定された数の炭素原子を有し、ケト基の炭素原子は番号付けされた炭素原子に包含される。例えば、Cアルカノイル基は式−(C=O)CHを有するアセチル基である。「Cアルカノイル」は、−(C=O)−Hを示し、「C−Cアルカノイル基」は1〜6個の炭素原子を含有している。
【0051】
本明細書で用いられる「アルカノイルオキシ」という用語は、酸素リンカーを介して結合しているアルカノイル(すなわち、一般構造:−O−C(=O)−アルキルを有する基)を示す。アルカノイルオキシ基は例えば、1〜6個の炭素原子を有する、C−Cアルカノイルオキシ基を包含する。
【0052】
本明細書で用いられる「アルカノイルアミノ」は、アミノリンカーを介して結合しているアルカノイル基(すなわち、一般構造:−N(R)−C(=O)−アルキル(ここで、Rは水素又はC−Cアルキルである)を有する基)を示す。アルカノイルアミノ基は、例えば、「アルキル」部分に1〜6個の炭素原子を有する、C−Cアルカノイルアミノ基(すなわち、ケト架橋の炭素原子は番号付けされた炭素原子に含まれない)を包含する。
【0053】
「アルキルスルホニル」は、式:−(SO)−アルキルの基を示し、ここでは硫黄原子が結合点である。アルキルスルホニル基は、それぞれ1〜6個又は1〜4個の炭素原子を有するC−Cアルキルスルホニル及びC−Cアルキルスルホニル基を包含する。メチルスルホニルは、アルキルスルホニル基の一具体例である。
【0054】
「アルキルスルホニルアミノ」は、アミノリンカーを介して結合しているアルキルスルホニル基(すなわち、一般構造:−N(R)−(SO)−アルキル(ここで、Rは水素又はC−Cアルキルである)を有する基)を示す。アルキルスルホニルアミノ基は、例えば、1〜6個の炭素原子を有する、C−Cアルキルスルホニルアミノ基を包含する。
【0055】
「アルキルアミノ」は、一般構造:−NH−アルキル、又は−N(アルキル)(アルキル)を有する2級又は3級アミンを示し、ここにおいてそれぞれのアルキルは、アルキル、シクロアルキル及び(シクロアルキル)アルキル基から独立して選ばれる。このような基は、例えば、それぞれのC−Cアルキルが同一でも異なっていてもよい、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基を包含する。
用語「アルキルアミノ」の中で用いられる「アルキル」の定義は、これがシクロアルキル及び(シクロアルキル)アルキル基(例えば、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル)を包含している点で、他の全てのアルキル含有基で用いられる「アルキル」の定義と異なることは明らかであろう。
【0056】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示す。
「ハロアルキル」は、1つ又はそれ以上の独立して選ばれるハロゲンで置換されているアルキル基(例えば、「C−Cハロアルキル」基は1〜6個の炭素原子を有する)である。ハロアルキル基の例は、これに限定されないが、モノ−、ジ−又はトリ−フルオロメチル;モノ−、ジ−又はトリ−クロロメチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−フルオロエチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−クロロエチル;及び1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチル−エチルを包含する。代表的なハロアルキル基はトリフルオロメチル及びジフルオロメチルである。「ハロアルコキシ」という用語は、酸素架橋を介して結合している、上で定義したハロアルキル基を示す。
【0057】
2つの文字又は記号の間にない、ダッシュ(「−」)は置換基の結合位置を示すために用いられている。例えば、−CONHは炭素原子を介して結合している。
【0058】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの芳香環がN、O及びSから選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含有している、芳香族基である。ヘテロアリールは、例えば、イミダゾール、フラン、フラザン、イソチアゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、テトラゾール、チアゾール及びチオフェンのような、5−及び6−員のヘテロアリールを包含する。
【0059】
本明細書で用いられる「置換基」は、目的の分子中の原子に共有結合している分子の残基を示す。例えば、環置換基は、環員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)に共有結合しているハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基又はその他の基のような残基であってよい。芳香族基の置換基は一般に環員炭素原子に共有結合している。「置換」という用語は、分子構造中の水素原子を置換基で、指定された原子の原子価が過剰にならないように、かつ置換の結果、化学的に安定な化合物(すなわち、単離でき、特定化でき、生物活性を試験することができる化合物)が得られるように、置き換えることを示す。
【0060】
「置換されていてもよい」基は、非置換か又は、水素以外のもので1つ又はそれ以上の可能な位置、具体的には1、2、3、4又は5位を、1つ又はそれ以上の適当な基(これは同一でも異なっていてもよい)で置換されている。置換されていてもよいは、「0〜X個の置換基で置換されている」(ここにおいて、Xは置換可能な最大数である)という語句でも表される。ある特定の置換されていてもよい基は、独立して選ばれる0〜2、3又は4個の置換基で置換されている(すなわち、これらは非置換であるか又は挙げられている置換基の最大数まで置換されている)。その他の置換されていてもよい基は少なくとも1個の置換基で置換されている(例えば、1〜2、3又は4個の独立して選ばれた置換基で置換されている)。
【0061】
「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、本明細書ではどちらもバニロイド受容体1型を示す同義語として用いられている。他に特定されない限り、これらの用語はラット及びヒトの両方のVR1受容体(例えば、GenBankの受託番号AF327067、AJ277028及びNM 018727;特定のヒトVR1のcDNA配列表及びそのコードするアミノ酸配列は米国特許第6,482,611号に示されている)を含み、更に他の種で見出されるこれらの同族体をも含む。
【0062】
「VR1調節剤」(本明細書では「調節剤」とも示される)は、VR1の活性化及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を調節する化合物である。本明細書で具体的に提供されるVR1調節剤は、式Iaの化合物を含んでいる、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩、水和物及びエステルである。ある好ましいVR1調節剤はバニロイドではない。VR1調節剤は、VR1の作動薬又は拮抗薬であってもよい。ある特定の調節剤は1マイクロモル未満、好ましくは500ナノモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満のK値で、VR1と結合する。VR1におけるK値を測定する代表的な試験は、本明細書の実施例5に提供されている。
【0063】
調節剤は、バニロイドリガンドのVR1との結合及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(例えば、実施例6で提供されている代表的な試験を用いて)を検出可能な程阻害するならば、「拮抗薬」と考えられ;一般に、このような拮抗薬はVR1活性化を、実施例6に提供されている試験において、1マイクロモル未満の、好ましくは500ナノモル未満の、より好ましくは100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50値で阻害する。VR1拮抗薬は、ニュートラルアンタゴニスト及びインバースアゴニスト(逆作動薬)を包含する。
【0064】
VR1の「逆作動薬」は、追加のバニロイドリガンドの非存在下で、VR1の活性をその基礎活性レベル以下に減少させる化合物である。VR1の逆作動薬は、VR1におけるバニロイドリガンドの活性も阻害でき、及び/又はバニロイドリガンドのVR1との結合も阻害できる。VR1の基礎活性、更にVR1拮抗薬の存在に因るVR1活性の減少は、実施例6の試験のような、カルシウム非固定化試験により測定できる。
【0065】
VR1の「ニュートラルアンタゴニスト」とは、VR1におけるバニロイドリガンドの活性を阻害するが、この受容体の基礎活性を顕著には変化させない(すなわち、バニロイドリガンドの非存在下で行われる実施例6に記載のようなカルシウム非固定化試験において、VR1活性の低下が、10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは検出可能な活性低下を示さない)化合物である。VR1のニュートラルアンタゴニストはバニロイドリガンドがVR1に結合するのを阻害できる。
【0066】
本発明の「カプサイシン受容体作動薬」又は「VR1作動薬」は、受容体の活性を受容体の基礎活性より上に上昇させる(すなわち、VR1活性化及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を増強する)化合物である。カプサイシン受容体作動薬の活性は、実施例6で提供されている代表的な試験を用いて確認できる。一般に、このような作動薬は、実施例6で提供されている試験において、1マイクロモル未満、好ましくは500ナノモル未満、そしてより好ましくは100ナノモル又は10ナノモル以下のEC50値を有する。
【0067】
「バニロイド」とは、隣接する環の炭素原子(この炭素原子のうちの1つは、フェニル環に結合している第3の残基が結合している位置とパラ位にある)に結合した2つの酸素原子を有するフェニル環を含有してなる化合物の何れかである。カプサイシンは典型的なバニロイドである。「バニロイドリガンド」は、10μM以下のK値(本明細書に記載されているようにして測定された)でVR1と結合する、バニロイドである。バニロイドリガンドの作動薬はカプサイシン、オルバニル(olvanil)、N−アラキドノイル−ドーパミン及びレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)を包含する。バニロイドリガンドの拮抗薬はカプサゼピン及びヨード−レシニフェラトキシンを包含する。
【0068】
「治療有効量」(又は用量)とは、患者に投与することにより、患者への認識できる程の利点(例えば、治療中の少なくとも1つの疾患を検出可能な程軽減する)をもたらす量である。このような軽減は、痛みのような1つ又はそれ以上の症状の緩和を含む、何れかの適切な基準によって検出可能である。治療有効量又は用量とは一般に、結果として(血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、滑液、リンパ液、細胞間質液、涙液又は尿のような)体液中に、インビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合(実施例5で提供されている試験を用いての測定)及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(実施例6で提供されている試験を用いての測定)を変化させるのに十分な濃度の化合物をもたらすものである。患者への認識できる程の利点は、単回投与後に現れるか、又は投与する化合物の適応に基づく、所定の処方計画に従って治療有効量の頻回投与によって現れることを理解できるであろう。
【0069】
本明細書で用いられる「統計的に有意な」とは、スチューデントT検定のような統計的有意性の標準パラメーター試験を用いて測定した、対照との差異で表され有意差のレベルがp<0.1となることを意味する。
【0070】
「患者」とは、本明細書に示される化合物で治療される何れかの個人である。患者は、ヒト、更にペット(例えば、イヌ及びネコ)及び家畜のようなその他の動物も包含する。患者は、カプサイシン受容体調節応答に関連する疾患の1つ又はそれ以上の症状(例えば、疼痛、バニロイドリガンドへの暴露、痒み、尿失禁、過活動膀胱、更年期症状、呼吸器疾患、咳及び/又はしゃっくり)を呈していてもよいし、又はそのような症状を呈していなくてもよい(すなわち、治療とはこのような症状を発症する危険性のある患者における予防的な治療であってもよい)。
【0071】
(ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体)
上記のように、本発明は式I及び式Iaのハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体を提供する。ある態様においては、このような化合物は、疼痛(例えば神経性又は末梢神経を介する疼痛);カプサイシンへの暴露;酸、熱、光、催涙ガス、大気汚染(例えば、タバコの煙)、感染性物質(ウィルス、バクテリア及びイーストを含む)、唐辛子スプレー又は関連する薬剤への暴露;喘息又は慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患;痒み;尿失禁又は過活動膀胱;更年期症状;咳又はしゃっくり;及び/又は肥満の治療を含む、多岐にわたる状況下で使用できる、VR1調節剤である。このような化合物は、インビトロ試験(例えば、受容体活性の試験)において、VR1の検出及び局在化のためのプローブとして、並びにリガンド結合及びVR1が介在するシグナル伝達試験における標準としても使用できる。
【0072】
本発明の状況下で、本発明で提供されるハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体が、式I及び式Iaのピリミジノンの2位にある分枝ハロアルキル残基に少なくとも部分的に起因して、予想外に高いVR1−調節活性を示すことが見いだされた。
上記のように、
【0073】
【化005】

【0074】
は、縮合した、置換されていてもよい5−又は6−員のヘテロアリールであって、その1、2又は3個の環員原子は、O、N及びSから独立して選ばれるヘテロ原子であり、残りの環員原子は炭素である。
ある特定の態様では、
【0075】
【化006】

【0076】
が、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる、0〜2個の置換基で置換されている。
更なる態様では、
【0077】
【化007】

【0078】
が、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる、0〜2個の置換基で置換されている。
ある特定の態様では、
【0079】
【化008】

【0080】
が、上記のような(例えば、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる)0〜2個の置換基で置換されている、5−員のヘテロアリールである。
別の態様では、
【0081】
【化009】

【0082】
が、次の何れかの式で表される5−員のヘテロアリールである。
【0083】
【化010】

【0084】
式中の、R’は水素、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルカノイルアミノ又はC1−C4アルキルスルホニルアミノである。
代表的なこのような基は、例えば、
【0085】
【化011】

【0086】
を包含し、式中のRは例えば、水素、シアノ、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル又はC−Cシクロアルキルである。
ある特定の態様では、
【0087】
【化012】

【0088】
が、
【0089】
【化013】

【0090】
である。
【0091】
【化014】

【0092】
のような部分の配向が示されるように保持されることを意図していることは明瞭であろう(例えば、
【0093】
【化015】

【0094】
が、
【0095】
【化016】

【0096】
であるならば、二環性の核、
【0097】
【化017】

【0098】
は、
【0099】
【化018】

【0100】
である)。
別の態様では、
【0101】
【化019】

【0102】
が、ヒドロキシ、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルカノイルアミノ又はC−Cアルキルスルホニルアミノから独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている、6−員のヘテロアリールである。代表的なこのような基は例えば、
【0103】
【化020】

【0104】
を包含し、式中のRは、ヒドロキシ、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルカノイルアミノ又はC−Cアルキルスルホニルアミノから独立して選ばれる0〜3個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基を示す。
【0105】
各態様では、可変基Rが、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる0〜3個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基を示す。例えば、ある特定のそのような化合物では、Rが(例えば、Ar環のパラ位に)正確に1個の置換基を示す。別のそのような化合物では、Rで示される少なくとも1個の置換基が、ハロゲン又はCNであって;ある特定のそのような化合物中の6−員Ar部分のパラ位にそのような置換基が位置している。式Iaにおいては、パラ位が、ピリミジノン核へのArの結合点に対してパラの位置を示している;すなわち、XがCHであるときのフェニル環の第4位、そしてWがNであるときのピリジン−3−イル環の第3位であることは明瞭であろう。
【0106】
ある特定の態様では、式Iaの化合物は、更に式II、IIa、III、IIIa、IV、IVa、V又はVaを満たす。
【0107】
【化021】

【0108】
式中の、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
はハロゲン、シアノ、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルであり;Rは、ヒドロキシ、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル及びC−Cアルコキシから独立して選ばれる1〜2個の置換基を示し;
は水素、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルカノイルアミノ又はC−Cアルキルスルホニルアミノであり;そして
残りの可変基は上記の通りである。
【0109】
式II、IIa、III、IIIa、IV、及びIVaのある特定の態様では、Rが水素である;すなわち、このような化合物は、IIb、IIc、IIIb、IIIcIVb、又はIVcのうちの1つを満たす。
【0110】
【化022】

【0111】
式中のRは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル又はC−Cシクロアルキルであり;
はハロゲン、シアノ、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルであり;そして 残りの可変基は上記の通りである。
【0112】
上記のように、「X」部分は分枝した、2価のアルキレン基であって、例えば、−CH(R)−、−CH−CH(R)−及び−CH(R)−CH−を包含し、ここにおいてRはメチル又はエチルである。代表的なこのような基は、−CH(CH)−、−CH−CH(CH)−及び−CH(CH)−CH−を包含する。
他のX部分は、−C(CH−、−C(CH−CH−、−CH−C(CH−、−CH(CH)−CH(CH)−、−CH(CH−CH(CH)−、−CH(CH)−CH(CH−及び−CH(CH−CH(CH−を包含する。
更なるX部分は、単一炭素原子の2つの置換基が一緒になってシクロアルキル部分(例えば、シクロプロピル又はシクロブチル)を形成しているメチレン及びエチレンを包含する。
ある特定の態様では、式Iaの化合物は式VI〜XXのうちの1つを満たす。
【0113】
【化023】

【0114】
式中の可変基は前記の通りである。
本明細書で提供されるある特定のハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体では、Yがトリフルオロメチルである。ある特定のこのような化合物は次の式の1つを満たし、ここにおいてはR、R及びRは前記の通りである。
【0115】
【化024】

【0116】
【化025】

【0117】
【化026】

【0118】
上記式のある特定の化合物では、Rがハロゲン又はCNである。
【0119】
本発明の代表的な化合物は、実施例1〜3に具体的に記載されているものを包含するが、これらに限定されるものではない。本明細書に示されている具体的な化合物は代表例に過ぎず、本発明の範囲を限定するように意図されたものではないということは明らかである。更に、上記のように、本発明の全ての化合物は、遊離の酸又は塩基、又は薬学的に許容される塩として存在するものであってもよい。更に、このような化合物の水和物及びプロドラッグのような他の形態は本発明によって明確に考慮されている。
【0120】
本発明のある態様において、本明細書で提供されるハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体は、カルシウム非固定化試験のような、インビトロのVR1機能試験を用いて測定すると、VR1活性を検出可能な程度変化させる(調節する)。このような活性のための初期選別として、VR1リガンド結合試験が適用される。本明細書における「VR1リガンド結合試験」とは、実施例5で挙げられているような標準インビトロ受容体結合試験を参照することを意図しており、そして「カルシウム非固定化試験」(本明細書では「シグナル伝達試験」とも言う)は、実施例6に記載されているように実施することができる。つまり、VR1との結合を評価するために、VR1調合液をVR1(例えば、RTXのようなカプサイシン受容体作動薬)と結合する(例えば、125I又はHで)標識された化合物及び標識されていないテスト化合物と共に培養して、競合試験を行うことができる。本明細書に示される試験において、使用されるVR1は哺乳動物のVR1が好ましく、より好ましくはヒト又はラットのVR1である。受容体は、組み換え技術で発現させたもの又は天然に発現しているものを用いてもよい。VR1調合液は、例えば、ヒトVR1を組み換え技術で発現するHEK293又はCHO細胞からの膜調合液であってよい。バニロイドリガンドがVR1に結合するのを検出可能な程度調節する化合物と培養すると、当該化合物を添加していない場合の結合した標識の量に比べて、VR1調合液と結合する標識の量が減少又は増加する。この様な増減は、本明細書に記載されているように、VR1におけるK値の測定に用いることができる。一般には、このような試験においてVR1調合液と結合する標識の量を減少させる化合物が好ましい。
【0121】
本明細書で提供されるある種のVR1調節剤は、ナノモル(すなわち、マイクロモル以下)の濃度で、ナノモル以下の濃度で、又は100ピコモル、20ピコモル、10ピコモル又は5ピコモル以下の濃度で、VR1活性を検出可能な程度に調節する。
【0122】
上記のように、VR1拮抗薬である化合物がある特定の態様においては好ましい。このような化合物のIC50値は、実施例6で示されているような、標準のインビトロでのVR1が介在するカルシウム非固定化試験を用いて測定できる。つまり、カプサイシン受容体を発現する細胞を、目的の化合物及び細胞内カルシウム濃度の指示薬(例えば、Fluo−3又はFura−2のような膜透過性カルシウム感受性染料(Molecular Probes社、Eugene, OR)で、共にCa++と結合すると蛍光シグナルを生成する)と接触させる。このような接触は、溶液中に当該化合物及び指示薬の一方又は両方を含有する緩衝液又は培養液中で、細胞を1回又はそれ以上培養することによって実施することが好ましい。染料が細胞に入るのに十分な時間(例えば、1〜2時間)接触を保持させる。過剰な染料を除去するために細胞を洗浄又はろ過し、次いでバニロイド受容体の作動薬(例えば、カプサイシン、RTX又はオルバニル)と、一般にはEC50値と等しい濃度で接触させて、蛍光応答を測定する。作動薬と接触させた細胞をVR1拮抗薬である化合物と接触させると、蛍光応答は一般に、テスト化合物を添加していない作動薬と接触させた細胞と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、そしてより好ましくは少なくとも80%減少する。本発明のVR1拮抗薬のIC50値は、1マイクロモル未満、100nM未満、10nM未満又は1nM未満が好ましい。ある態様において、本発明のVR1拮抗薬は、カプサイシン受容体作動性のインビトロ試験において、IC50値と等しい化合物濃度では検出可能な作動活性を示さない。ある特定のこのような拮抗薬は、カプサイシン受容体作動性のインビトロ試験において、IC50値の100倍高い化合物濃度においても検出可能な作動活性を示さない。
【0123】
別の態様では、カプサイシン受容体作動薬である化合物が好ましい。カプサイシン受容体の作動薬活性は一般に、実施例6に記載されているようにして測定できる。細胞をVR1作動薬である化合物の1マイクロモルと接触させると、蛍光応答は一般に、細胞を100nMのカプサイシンと接触させて観測される増加の少なくとも30%の量で増加する。本発明のVR1作動薬のEC50値は、1マイクロモル未満、100nM未満又は10nM未満が好ましい。
【0124】
VR1調節活性も同様に、また一方では、実施例7に提供されているような培養脊髄後根神経節試験及び/又は実施例8に提供されているようなインビボ疼痛緩和試験を用いて評価できる。本発明のVR1調節剤は好ましくは、本明細書で提供されている1つ又はそれ以上の機能試験で、VR1活性について統計的に有意な特異的効果を有している。
【0125】
ある態様においては、本発明のVR1調節剤は、EGF受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような、他の細胞表面受容体とのリガンド結合を実質的に調節しない。すなわち、このような調節剤は、ヒト上皮細胞増殖因子(EGF)受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような細胞表面受容体の活性を実質的に阻害しない(例えば、このような受容体におけるIC50値又はIC40値は、1マイクロモルより大きいことが好ましく、10マイクロモルより大きいことが、最も好ましい)。好ましくは、調節剤は、0.5マイクロモル、1マイクロモル又はより好ましくは10マイクロモルの濃度で、EGF受容体活性又はニコチン性アセチルコリン受容体活性を検出可能な程は阻害しない。細胞表面受容体の活性を測定する試験は、パンベラ社(Panvera: Madison, WI)から入手できる、チロシンキナーゼ試験キットを含め、市販されている。
【0126】
ある態様において、好ましいVR1調節剤は非鎮静剤である。すなわち、疼痛緩和測定の動物モデル(本明細書の実施例8に示されているモデルのような)において無痛覚を十分にもたらす最小用量の2倍であるVR1調節剤用量は、鎮静動物モデル試験(Fitzgerald et al. (1988) Toxicology 49 (2-3): 433-9 に記載の方法を用いて)において、一時的(すなわち、疼痛緩和持続時間の1/2以下の間持続する)鎮静のみを引き起こす又は好ましくは、統計的に有意な鎮静を引き起こさない。好ましくは、無痛覚をもたらすのに十分な最小用量の5倍の用量が統計的に有意な鎮静を引き起こさない。より好ましくは、本発明のVR1調節剤は、25mg/kg未満(好ましくは10mg/kg未満)の静脈内用量、又は140mg/kg未満(好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは30mg/kg未満)の経口投与用量で鎮静を引き起こさない。
【0127】
必要に応じて、本発明の化合物は、幾つかの薬理学的性質を評価することができ、この性質は、これに限定されないが、経口バイオアベイラビリティー(好ましい化合物は、140mg/kg未満、好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは30mg/kg未満、更に好ましくは10mg/kg未満、更により好ましくは1mg/kg未満、そして最も好ましくは0.1mg/kg未満の経口用量で、この化合物の治療有効濃度が達成される程度まで経口で体内に吸収され利用され得る)、毒性(好ましい化合物は、治療有効量を患者に投与したときに非毒性である)、副作用(好ましい化合物は、化合物の治療有効量を患者に投与したとき、プラセーボと同等の副作用を生ずる)、血清蛋白との結合性並びにインビトロ及びインビボ半減期(好ましい化合物は、1日4回(Q.I.D.)の投与、好ましくは1日3回(T.I.D.)の投与、より好ましくは1日2回(B.I.D.)の投与、そして最も好ましくは1日1回の投与を容認する程のインビボ半減期を示す)を包含する。更に、上述の1日の総経口投与量が治療効果のある調節をするといった、中枢神経系(CNS)のVR1活性を調節することによる疼痛の治療に用いるVR1調節剤には、血液脳関門の差別化された透過(differential penetration)が望ましいが、一方、末梢神経が介在する疼痛の治療には、VR1調節剤の脳レベルが低い方が好ましい(すなわち、化合物の脳(例えばCSF)レベルは、VR1活性を有意に調節するのに十分ではない用量である)。当該技術分野でよく知られた通常の試験は、これらの性質を評価し、そして特定の使用のための優れた化合物を同定するために用いられる。例えば、バイオアベイラビリティーを予測するために用いられる試験は、Caco−2細胞単層を含む、ヒト腸細胞単層間の輸送を含む。ヒトにおける化合物の血液脳関門の透過は、化合物を投与(例えば、静脈内投与)した実験動物における化合物の脳内レベルから予測できる。血清蛋白結合性はアルブミン結合試験から予測できる。化合物の半減期は、化合物の投与頻度に反比例する。化合物のインビトロ半減期は、例えば、米国特許出願公開第2005/0070547号の実施例7で記載されているようなミクロソーム半減期の試験から予測できる。
【0128】
上記のように、本発明の好ましい化合物は非毒性である。一般に、「非毒性」という用語は、相対的に理解すべきであり、米国食品医薬品局(「FDA」)によって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認されたか又は、判定基準を保持している、FDAによって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認される可能性のある物質の何れかを参照することを意図している。更に、非常に好ましい非毒性の化合物は一般的に、以下の判定基準(1)細胞のATP生成を実質的に阻害しない;(2)心臓のQT間隔を有意に延長しない;(3)実質的な肝肥大を引き起こさない;又は(4)肝酵素の実質的な放出を引き起こさない;の1つ又はそれ以上を充たすものである。
【0129】
本発明で用いられている、細胞のATP生成を実質的に阻害しない化合物は、米国特許出願公開第2005/0070547号の実施例8で示されている判定基準を充たしている化合物である。つまり、そこで述べられているように100μMのこのような化合物で処理された細胞は、非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも50%のATPレベルを示す。更に非常に好ましい態様によると、このような細胞は非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも80%のATPレベルを示す。
【0130】
心臓のQT間隔を有意に延長しない化合物とは、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生ずる用量を投与したモルモット、ミニブタ又はイヌにおいて、心臓のQT間隔を統計的有意に延長しない(心電図記録で測定して)化合物のことである。ある好ましい態様においては、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口投与の用量は、心臓のQT間隔の統計的に有意な延長をもたらさない。
【0131】
実験用齧歯動物(例えば、マウス又はラット)に、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生ずる用量を、5〜10日間毎日投与する治療を施しても、対応する対照と比較した場合の、肝臓の対体重比の増加が100%未満であれば、化合物は、実質的な肝肥大をもたらさない。更に極めて好ましい態様においては、このような用量は、対応する対照と比較して75%を越える又は50%を越える肝肥大をもたらさない。非齧歯動物(例えば、イヌ)を用いると、このような用量は、対応する治療を施していない対照に対して50%を超える、好ましくは25%を超える、そしてより好ましくは10%を超える肝臓の対体重比の増加をもたらさない。このような試験における好ましい用量は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口投与を包含する。
【0132】
同様に、実験動物(例えば齧歯動物)に、当該化合物のVR1におけるEC50値又はIC50値に等しい血清濃度を生じる最小用量の2倍量を投与しても、ALT、LDH又はASTの血清レベルを、偽治療を施した対照の100%を越えて上昇させないならば、化合物は肝酵素の実質的な放出を促進しない。更に極めて好ましい態様においては、このような用量は、これらの血清レベルを対応する対照と較べて75%を越えて又は50%を越えて上昇させない。また、インビトロ肝細胞試験において、当該化合物のEC50値又はIC50値に等しい濃度(インビトロで肝細胞と接触させて培養する培養液又は溶液中の濃度)が、培養液中にこのような肝酵素を、対応する偽治療を施した対照細胞の培養液中で見られる基礎レベルを超えて、検出可能な程の放出を引き起こさないなら、この化合物は肝酵素の実質的な放出を促進しない。更に極めて好ましい態様においては、このような化合物の濃度が、当該化合物のEC50値又はIC50値の5倍及び好ましくは10倍であっても、基礎レベル以上に、このような肝酵素を培養液に検出可能な程放出しない。
【0133】
その他の態様において、ある好ましい化合物は、当該化合物のVR1におけるEC50値又はIC50値と等しい濃度で、CYP1A2活性、CYP2A6活性、CYP2C9活性、CYP2C19活性、CYP2D6活性、CYP2E1活性又はCYP3A4活性のような、ミクロソーム・チトクロームP450酵素活性を阻害又は誘発しない。
【0134】
ある特定の好ましい化合物は、当該化合物のEC50値又はIC50値と等しい濃度では、(例えば、マウス赤血球前駆細胞小核試験、エームス小核試験、らせん小核試験などを用いて測定されるように)染色体異常を誘発しない。その他の態様において、ある特定の好ましい化合物は、このような濃度では(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞において)姉妹染色分体交換を誘発しない。
【0135】
以下で更に詳細に考察されるように、本発明のVR1調節剤は、検出を目的とする同位体標識又は放射性標識が可能である。例えば、化合物は、一般に自然界で見出される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する同じ元素の原子で置き換えられえた1つ又はそれ以上の原子を有することができる。本発明の化合物に存在させることができる同位体の例は、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clのような、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体を包含する。更に、重水素(すなわち、H)のような重同位体は、例えばインビボ半減期の増加又は必要用量の減少のような代謝安定性がより大きいことに起因する治療効果をもたらすので、特定の状況においては好ましい。
【0136】
(ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体の製造)
ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体は一般的に、標準的な合成法を用いて製造できる。出発物質は、シグマ−アルドリッチ社[Sigma-Aldrich Corp. (St. Louis, MO)]のような供給業者から購入できるか、又は市販の前駆物質から確立された方法で合成することできる。例として、以下の反応式の何れかに示されているのと同様な合成経路は、有機化学合成の技術において知られている合成方法と共に使用することができる。下記反応式中の各可変基は、本明細書に於ける化合物の記載に一致した何れかの基を示す。
【0137】
以下の反応式及び本明細書の他の場所に用いられている特定の定義は、以下の通りである。
δ ケミカルシフト
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間
HNMR プロトン核磁気共鳴
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
Hz ヘルツ
min 分
MS 質量分析
(M+1) 質量+1
n−BuLi n−ブチルリチウム
RT 室温
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0138】
【化027】

【0139】
ある態様において、本発明の化合物は1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含有することができるので、この化合物は異なった立体異性形態で存在することができる。このような形態は、例えば、ラセミ体又は光学活性体の形態になる。上で述べたように、全ての立体異性体は本発明の範囲に入る。それにもかかわらず、一つのエナンチオマー(すなわち、光学活性体)を得ることが望ましい。一つのエナンチオマーを製造する標準的な方法は、不斉合成及びラセミ分割方法を包含する。ラセミ分割は、例えば、分割剤の存在下での再結晶、又は例えばキラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィーのような通常の方法によって達成される。
【0140】
化合物は、放射性同位体である原子を少なくとも1つ含有する前駆物質を用いる合成を行うことにより放射性標識できる。それぞれの放射性同位体は、炭素(例えば、14C)、水素(例えば、H)、硫黄(例えば、35S)、又はヨウ素(例えば、125I)が好ましい。トリチウム標識化合物も、基質として当該化合物を用いて、トリチウム化酢酸中での白金触媒交換、トリチウム化トリフルオロ酢酸中での酸触媒交換、又はトリチウムガスとの不均一系触媒交換、を介する触媒作用によって製造することができる。更に、ある特定の前駆体は、必要に応じて、トリチウムガスとトリチウム−ハロゲン交換、不飽和結合のトリチウムガス還元、又はナトリウムボロトリタイドを用いる還元に付すことができる。放射性標識化合物は、放射性標識プローブ化合物の受注合成を専門とする放射性同位体供給業者によって容易に製造することができる。
【0141】
(医薬組成物)
本発明は、1つ又はそれ以上の本発明の化合物を、少なくとも1つの生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物も提供する。医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性に緩衝された食塩水、又はリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、糖質(例えば、ブドウ糖、マンノース、蔗糖又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド若しくはグリシンのようなアミノ酸、抗酸化剤、EDTA若しくはグルタチオンのようなキレート剤及び/又は保存剤を、1つ又はそれ以上含有していてもよい。更に、その他の有効成分を本発明の医薬組成物に含有させてもよい(が、必ずしも必要ではない)。
【0142】
医薬組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、直腸内又は非経口投与を含む、適切な投与方法のために製剤化できる。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内及び腹腔内注射を、また同様な注射又は注入法も包含する。ある態様においては、経口使用に適する組成物が好ましい。このような組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ(薬用キャンディー)、水性若しくは油性懸濁液、分散性の粉末若しくは顆粒、乳剤、ハード若しくはソフトカプセル、又はシロップ若しくはエリキシルを包含する。更なる他の態様においては、医薬組成物は凍結乾燥物として製剤化できる。局所投与用の製剤は、ある状況(例えば、火傷や痒みのような皮膚の症状を治療する場合)では好ましい。膀胱に直接投与(膀胱内投与)する製剤 は、尿失禁及び過活動膀胱の治療に好ましい。
【0143】
経口使用のための組成物は更に、魅力的かつ味の良い製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤及び/又は保存剤のような成分を1つ又はそれ以上含有していても良い。錠剤は有効成分を、錠剤の製造に適当な生理的に許容される賦形剤と共に含有している。このような賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳酸、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム)、顆粒化及び崩壊剤(例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸)、結合剤(例えば、澱粉、ゼラチン又はアラビアゴム)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)を包含する。錠剤は、乾式造粒、直接圧縮及び湿式造粒を包含する、標準的な技術を用いて形成することができる。錠剤は非被覆であるか、又は公知の技術によって被覆することができる。
【0144】
経口使用のための製剤は、有効成分を不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセル、又は有効成分を水若しくは油性媒体(例えば、ピーナッツオイル、流動パラフィン又はオリーブオイル)と混合したソフトゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0145】
水性懸濁剤は、適当な賦形剤と混合して活性物質を含有している。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム);及び分散又は湿潤剤(例えば、レクチンのような自然界にあるリン脂質、ステアリン酸ポリオキシエチレンのようなアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールのようなエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのようなエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又はモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンのようなエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物)を包含する。水性懸濁剤は、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピルのような1つ又はそれ以上の保存剤、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の着香剤、及び/又は蔗糖又はサッカリンのような1つ又はそれ以上の甘味剤を含有していてもよい。
【0146】
油性懸濁剤は、有効成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブオイル、ごま油又はココナッツ油)又は流動パラフィンのよう鉱物油に懸濁させることによって製剤化できる。油性懸濁剤は蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。味の良い経口用製剤を提供するために、上記のような甘味剤及び/又は着香剤を添加することができる。このような懸濁剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存されてもよい。
水を加えて水性懸濁剤を調製するのに適当な分散性の粉末又は顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ又はそれ以上の保存剤と混合して、有効成分を提供する。適当な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上に例示されている。甘味、着香及び着色剤のような追加の賦形剤も存在させることができる。
【0147】
医薬組成物は、水中油型乳剤として製剤化してもよい。油層は植物油(例えば、オリーブオイル又はラッカセイ油)、鉱物油(例えば、流動パラフィン)又はこれらの混合物であってよい。適当な乳化剤は、自然界に存在するゴム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、自然界に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン、及び脂肪酸及びヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル)、酸無水物(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)及び脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)を包含する。乳剤は1つ又はそれ以上の甘味剤及び/又は着香剤を含有していてもよい。
【0148】
シロップ及びエリキシルは、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール又は蔗糖のような甘味剤と製剤化できる。このような製剤は、1つ又はそれ以上の粘滑剤、保存剤、着香剤及び/又は着色剤も含有していてもよい。
【0149】
局所投与用の製剤は、一般的に、活性剤を加えた局所用賦形剤を、追加の任意成分と共に又はこれなしで含有している。適当な局所用賦形剤及び追加の成分は、当該技術分野ではよく知られており、賦形剤の選択は、特殊な物理的形態及び送達方法によって決まるものと考えられる。局所用賦形剤は、水;アルコール(例えばエタノール又はイソプロピルアルコール)又はグリセリンのような有機溶媒;グリコール(例えば、ブチレン、イソプレン又はプロピレングリコール);脂肪族アルコール(例えば、ラノリン);水と有機溶媒との混合物及びアルコールのような有機溶媒とグリセリンの混合物;脂肪酸、アシルグリセロール(鉱物油のような油、及び天然又は合成の脂肪を含む)、ホスホグリセリド、スフィンゴリピド及びワックスのような脂肪をベースとする物質;コラーゲン及びゼラチンのようなタンパク質をベースとする物質;シリコンをベースとする物質(不揮発性と揮発性の両方);及びマイクロスポンジ及び高分子物質のような炭化水素をベースとする物質を包含する。組成物は、用いる製剤の安定性又は有効性を高めるのに適した、1つ又はそれ以上の成分を更に含有していてもよく、この成分は安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘度調節剤、ゲル化剤、保存剤、抗酸化剤、皮膚浸透増強剤、保湿剤及び徐放物質のようなものである。このような成分の例は、「Martindale- The Extra Pharmacopoeia (Pharmaceutical Press, London 1993)」及び「Remington:The Sciences and Practice of Pharamacy, 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA (2005)」に記載されている。製剤は、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルのようなマイクロカプセル、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子又はナノカプセルを含有していてもよい。
【0150】
局所製剤は例えば、固体、ペースト、クリーム、フォーム(泡)、ローション、ゲル、パウダー、水性液及び乳剤を包含する多種の物理的な形態に製剤化することができる。このような薬学的に許容される形態の物理的な外観及び粘度は、この製剤に存在する乳化剤及び粘度調節剤の有無及び量によって規定できる。固体製剤は通常、硬質で非注入性であって、一般に棒状若しくはスティック状、又は特定な形態で製剤化され;固体製剤は、不透明又は透明で、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる他の有効成分を、任意に含有していてもよい。クリーム及びローションは、互いに同様なものであることが多く、主にこれらの粘度が異なる。ローションとクリームの両者は、不透明、透明又は透明感があり、乳化剤、溶媒、及び粘度調節剤を、更に保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる他の有効成分をも、含むことが多い。ゲルは高粘度から低粘度の範囲の粘度で調製できる。これらの製剤は、ローション及びクリームと同様に、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる他の有効成分を含有していてもよい。液剤は、クリーム、ローション、又はゲルよりも薄く、乳化剤を含まないことが多い。液状の局所用製品は、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終物の効能を増加又は増強させる他の有効成分を含有していることが多い。
【0151】
局所製剤中で使用するのに適している乳化剤は、イオン性乳化剤、セテアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルのような非イオン性乳化剤、ステアリン酸PEG−40、セテアレス−12、セテアレス−20、セテアレス−30、セテアレスアルコール、ステアリン酸PEG−100及びステアリン酸グリセリルを包含するが、これに限定されない。
適当な粘度調節剤は、これらに限定されないが、保護コロイド、又はヒドロキシエチルセルロース、キサンタンゴム、マグネシウムアルミニウムシリケート、シリカ、微結晶性ワックス、蜜蝋、パラフィン、及びパルミチン酸セチルのような非イオン性のゴムを包含する。
ゲル組成物は、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクオタニウム(polyquaterniums)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー(carbomer)又はグリチルリチン酸アンモニウム(ammoniated glycyrrhizinate)のようなゲル化剤の添加によって形成できる。
適当な界面活性剤は、これらに限定されないが、非イオン、両性、イオン性及び陰イオン性界面活性剤を包含する。例えば、ジメチコンコポリオール(dimethicone copolyol)、ポリソルベート(polysorbate)20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウラミドDEA,コカミドDEA、及びコカミドMEA、オレイルベタイン、コカミドプロピルホスファチジルPG−ジモニウムクロライド(PG-dimonium chloride)、及びラウリル硫酸アンモニウムの1つ又はそれ以上を局所製剤中に用いることができる。
好ましい保存剤は、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、安息香酸及びホルムアルデヒドのような抗菌薬を、また物理的安定剤、及びビタミンE、アスコルビン酸ナトリウム/アスコルビン酸及び没食子酸プロピルのような抗酸化剤をも包含する。
適当な保湿剤は、これらに限定されないが、乳酸及びその他のヒドロキシ酸及びこれの塩、グリセリン、プロピレングリコール、及びブチレングリコールを包含する。
適当な皮膚軟化剤は、ラノリンアルコール、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、ワセリン、ネオペンタン酸イソステアリル及び鉱物油を包含する。
適当な香料及び着色剤は、これらに限定されないが、FD&C Red No.40及びFD&C Yellow No.5を包含する。
局所製剤に包含できるその他の好ましい更なる成分は、これらに限定されないが、研磨剤、吸湿剤、固結防止剤、消泡剤、帯電防止剤、収れん剤(例えば、ヘーゼル、アルコール及びカモミールエキスのようなハーブエキス)、結合剤/賦形剤、緩衝剤、キレート化剤、フィルム形成剤、品質改良剤、高圧ガス、不透明化剤、pH調節剤及び保護剤を包含する。
【0152】
ゲルの製剤化のために適した局所賦形剤の例は:ヒドロキシプロピルセルロース(2.1%);70/30のイソプロピルアルコール/水(90.9%);プロピレングリコール(5.1%);及びポリソルベート80(1.9%)である。フォーム(泡)として製剤化するための適当な局所賦形剤の例は:セチルアルコール(1.1%);ステアリルアルコール(0.5%); クオタニウム52(Quaternium 52)(1.0%);プロピレングリコール(2.0%);エタノール95PGF3(61.05%)、脱イオン水(30.05%);P75炭化水素高圧ガス(4.30%)である。全てのパーセントは重量によるものである。
【0153】
局所用組成物の局所送達方法は、指を使用する塗布;布、ティッシュー、綿棒、スティック又はブラシのような物理的な塗布具を用いる塗布;スプレー(霧、エアロゾル又は泡のスプレーを包含する);点滴投与;散布;浸漬;及びすすぎ;を包含する。
【0154】
医薬組成物は、無菌注射用の水溶液又は油性懸濁液として、調製することができる。本発明の化合物は、使用する賦形剤及び濃度に応じて、賦形剤に懸濁させても溶解させてもよい。このような組成物は、上記のような適当な分散、湿潤剤及び/又は懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。許容される賦形剤及び溶媒のうち使用し得るものは、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液及び生理食塩液である。更に、無菌の不揮発性油を溶媒又は懸濁媒体として使用できる。この目的のために、合成モノ−又はジグリセライドを含む、何れかの無菌の不揮発性油を使用することができる。更に、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用組成物の調製において使用できると考えられ、局所麻酔剤、保存剤及び/又は緩衝剤のようなアジュバントを賦形剤に溶解することができる。
【0155】
医薬組成物は、坐薬(例えば、直腸内投与用)としても製剤化できる。このような組成物は薬剤を、常温では固体であるが、直腸の温度では液体であるので直腸内で溶けて薬剤を放出する、適当な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製できる。適当な賦形剤は、例えば、ココアバター又はポリエチレグリコールを包含する。
【0156】
吸入用の組成物は一般に、ドライパウダーとして又は通常の高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン又はトリクロロフルオロメタン)を用いるエアロゾルの形態で投与することができる溶液、懸濁液又は乳剤の形態で提供できる。
【0157】
医薬組成物は、予め定められた速度で放出するように製剤化することができる。瞬時の放出は、例えば舌下投与(すなわち、有効成分が消化管を介するよりも舌の下部の血管を介する方が早く吸収されるように、口に投与する)によって達成される。放出制御製剤(すなわち、投与後に有効成分の放出を遅らせ、そして/又は延ばすカプセル、錠剤又は被覆錠剤のような製剤)は、例えば経口、直腸内、又は皮下移植によって、又は標的部位へ移植することによって投与することができる。一般に、放出制御製剤は、消化管(又は移植部位)での崩壊又は吸収を遅らせて、長期にわたって遅延した作用又は持続した作用をもたらす、マトリックス及び/又はコーティング剤を含有している。放出制御製剤の1種は持続放出製剤であって、長時間にわたり一定速度で、少なくとも1つの有効成分を連続的に放出する。少なくとも4時間、好ましくは少なくとも8時間、更に好ましくは12時間の期間にわたって、血液(例えば、血清)濃度を治療範囲内であるが、毒性レベル以下に保持されるような速度で治療剤が放出されることが好ましい。このような製剤は一般に、公知の技術で製造され、例えば、経口で、直腸内に若しくは皮下移植によって、又は所望の標的部位に移植することによって投与される。このような製剤において用いられる担体は生体適合性あって、生体分解性もあるものであって;この製剤が調節剤放出の比較的一定なレベルをもたらすことが好ましい。持続放出製剤中に含まれる調節剤の量は、例えば、移植の部位、速度及び望まれる放出の持続及び治療又は予防する疾患の性質によって決まる。
【0158】
放出の制御は、有効成分を、自身が放出速度を変える、そして/又は放出制御コーティング剤を用いることによって放出速度を変えるマトリックス剤と組合わせることによって達成できる。放出速度を、(a)コーティング剤の厚さ又は組成物を変化させること、(b)コーティング剤中の流動化剤の追加の量又は方法を変化させること、(c)放出調整剤のような追加の成分を含むこと、(d)組成物、粒子サイズ又はマトリックスの粒子形状を変化させること、及び(e)コーティングに1つ又はそれ以上の通路を設けること、による方法を包含する、当該技術分野で公知の方法を用いて変えることができる。持続放出製剤中に含まれる調節剤の量は、例えば、投与方法(例えば、移植の部位)、速度及び望まれる放出の持続及び治療又は予防する疾患の性質によって決まる。
【0159】
自身で放出制御機能を果たすか又は果たさない、マトリックス物質は、一般に有効成分を担持する何れかの物資である。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルのような時間持続性物質を用いることができる。投与形態(例えば、錠剤)を形成する前に、有効成分をマトリックス物質と結合することができる。あるいは又は更に、有効成分を、マトリックス物質を含有する粒子、顆粒、球体、微小球体、ビーズ又はペレットの表面上に被覆することができる。このような被覆は、有効成分を水又はその他の適当な溶媒に溶解してスプレーすることによるような、通常の方法によって実施できる。随意に、追加の有効成分を被覆前に添加する(例えば、有効成分がマトリックス物質に結合するのを補助するために又は溶液を着色するために)。次いで、放出制御コーティング剤をで処理する前に、このマトリックスをバリア剤で保護する。多重に被覆したマトリックスのユニットを、所望により、最終投与形態を作成するためにカプセルに封入する。
【0160】
ある特定の態様では、放出制御は放出制御コーティング剤(すなわち、水性媒体中で、制御された速度で有効成分の放出を可能にするコーティング剤)の使用によって達成される。放出制御コーティング剤は、滑らかで、着色剤及びその他の添加剤を担持でき、非毒性で、不活性で、そして不粘着である、強い連続薄膜でなくてはならない。調節剤の放出を調整するコーティング剤は、pH非依存性、pH依存性コーティング剤(胃の中に調節剤を放出するために使用できる)及びエンテリックコーティング剤(製剤が無傷で胃を通って小腸へ入って、そこでコーティング剤が溶解して内容物が身体に吸収されることを可能にする)を包含する。複数のコーティング剤を使用できる(例えば、用量の一部を胃内に、そして一部を消化管沿いに放出できる)と思われる。例えば、有効成分の一部をエンテリックコーティング剤の上に被覆することによって、胃内に放出し、一方、マトリックス核内にある残りの有効成分はエンテリックコーティング剤で保護されていて、消化管の下方で放出される。pH依存性コーティング剤は、例えば、シェラック、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニル酢酸フタル酸、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸エステル共重合体及びゼインを包含する。
【0161】
ある特定の態様では、コーティング剤が疎水性物質であって、投与後にゲル化剤の水和を遅らせるのに効果的な量で用いることが好ましい。適している疎水性物質は、アルキルセルロース(例えば、エチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース)、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、アクリルポリマー(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、メタクリル酸アルカミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アンモニオ共重合体、メタクリル酸アミノアルキル共重合体、ポリ(無水メタクリル酸)及びメタクリル酸グリシジル共重合体)及び前記のものの混合物を包含する。エチルセルロースの代表的な水性懸濁剤は、例えば、AQUACOAT(登録商標)(FMC Corp., Philadelphia, PA) 及びSURELEASE(登録商標)(Colorcon, Inc., West Point, PA) を包含し、両者は製造会社の使用説明書に従って、基質に適用することができる。代表的なアクリルポリマーは例えば、各種のEUDRAGIT(T)(登録商標)(Roham America, Piscataway, NJ) ポリマーを包含し、製造会社の使用説明書に従い、望ましい放出プロフィルによって、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0162】
疎水性物質の水性懸濁剤を含有するコーティング剤の物理的性質は、1つ又はそれ以上の可塑剤を添加して改善することができる。アルキルセルロースのための適当な可塑剤は、例えば、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル及びトリアセチンを包含する。アクリルポリマーのための適当な可塑剤は、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルのようなクエン酸エステル、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油及びトリアセチンを包含する。
【0163】
放出制御コーティング剤は通常、水性懸濁剤の形態でスプレーするような、慣用技術を用いて適用される。所望により、コーティング剤は有効成分の放出を促進する、孔又は溝を含んでいてもよい。孔及び溝は、使用環境においてコーティング剤から溶解され、抽出され又は浸出する有機又は無機物質を添加することを含む、公知方法によって作成することができる。ある特定のそのような孔形成物質は、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、セルロースエーテルのような、疎水性ポリマー、合成水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキシド)、水溶性ポリデキストロース、単糖類及び多糖類、並びにアルカリ金属塩を包含する。あるいは又は更に、放出制御コーティング剤は1つ以上の開口部を含んでいてもよく、それは米国特許第3,845,770号、同第4,034,758号、同第4,077,407号、同第4,088,864号、同第4,783,337号及び同第5,071,607号に記載されているような方法で形成することができる。放出制御は通常の技術(例えば、米国特許第4,668,232号を参照されたい)を用いる、経皮パッチの使用によっても達成することができる。
【0164】
放出制御製剤及びそれらの成分の更なる例は、例えば、米国特許第5,524,060号、同第4,572,833号、同第4,587,117号、同第4,606,909号、同第4,610,870号、同第4,684,516号、同第4,777,049号、同第4,994,276号、同第4,996,058号、同第5,128,143号、同第5,202,128号、同第5,376,384号、同第5,384,133号、同第5,445,829号、同第5,510,119号、同第5,618,560号、同第5,643,604号、同第5,891,474号、同第5,958,456号、同第6,039,980号、同第6,143,353号、同第6,126,969号、同第6,1(2)56,342号、同第6,197,347号、同第6,387,394号、同第6,399,096号、同第6,437,000号、同第6,447,796号、同第6,475,493号、同第6,491,950号、同第6,524,615号、同第6,838,094号、同第6,905,709号、同第6,923,984号、同第6,923,988号及び同第6,911,217号中に見いだすことができ、これらはそれぞれ放出制御投与形態の調製を教示する参照として本明細書に取り込まれている。
【0165】
更に又は上記投与方法と共に、本発明の化合物は、(例えば、(イヌ及びネコのような)ペット及び家畜を含むヒト以外の動物への投与用に)簡便に食物又は飲料水に添加することができる。動物用の餌及び飲料水の組成物は、動物が食事と共に組成物の適当量を摂取できるように処方することができる。組成物を餌又は飲料水に添加するための、プレミックスとしても簡便に提供できる。
【0166】
化合物は、一般に治療有効量を投与する。好ましい全身用量は1日に体重1kg当り50mg以下(例えば、1日に体重1kg当り約0.001mgから約50mgの範囲)であり、経口では静脈内投与の約5〜20倍高い(例えば、1日に体重1kg当り約0.01mgから約40mgの範囲)。
【0167】
単回投与単位を調製するために、担体物質と混合する有効成分の量は、例えば、治療する患者、特定の投与方法及び併用投与する他の何れかの薬剤によって変わる。投与単位は一般に、約10μgから約500mgの有効成分を含有している。最適投与量は、日常の検査、及び当該技術分野で公知の手順によって決めることができる。
【0168】
医薬組成物は、VR1調節の応答に関連する疾患の治療(例えば、バニロイドリガンド又はその他の刺激物への暴露、疼痛、痒み、肥満又は尿失禁の治療)用に包装することができる。
包装された医薬組成物は一般に、
(i)本発明の少なくとも1つのVR1調節剤よりなる医薬組成物を入れた容器;及び
(ii)容器内の組成物は患者におけるVR1調節の応答に関連する疾患を治療するために使用するものであることを示す使用説明書(例えば、ラベル又は添付文書);
を包含する。
【0169】
(使用方法)
本発明のVR1調節剤は、インビトロ及びインビボの両方での様々な状況下で、カプサイシン受容体の活性及び/又は活性化を変化させるために使用できる。ある態様においては、VR1拮抗薬は、インビトロ又はインビボにおいて、バニロイドリガンド作動薬(カプサイシン及び/又はRTXのような)がカプサイシン受容体に結合するのを、阻害するために用いることができる。一般に、このような方法は、水溶液中でバニロイドリガンドの存在下に、このリガンドがカプサイシン受容体と結合するその他の好ましい条件下に、本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤を、カプサイシン受容体に接触させる工程を含有してなる。VR1調節剤は一般に、インビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合(実施例5で提供される試験を用いて)及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(実施例6で提供される試験を用いて)を、変化させるのに十分な濃度で存在している。カプサイシン受容体は、溶液若しくは懸濁液中に(例えば、単離した膜又は細胞の調合液中)、又は培養された若しくは単離された細胞中に存在する。ある態様において、カプサイシン受容体は患者の神経細胞によって発現されるので、当該水溶液は体液である。好ましくは、1つ又はそれ以上のVR1調節剤は、このVR1調節剤が動物の少なくとも1つの体液中に、1マイクロモル以下、好ましくは500ナノモル以下、更に好ましくは100ナノモル以下、50ナノモル以下、20ナノモル以下、又は10ナノモル以下の治療有効濃度で存在する量で、動物に投与される。例えば、このような化合物は、20mg/体重kg未満、好ましくは5mg/体重kg、ある場合では、1mg/体重kg未満の治療有効用量で投与が可能である。
【0170】
細胞カプサイシン受容体のシグナル伝達活性(すなわち、カルシウム伝達)を調節する、好ましくは低減する方法も本発明で提供している。このような調節は、カプサイシン受容体を(インビトロ又はインビボのどちらかで)、本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤と、調節剤(複数も含む)が受容体と結合するのに適当な条件下で、接触させることによって達成することができる。VR1調節剤(複数も含む)は一般に、本明細書で記載されるようなインビトロでバニロイドリガンドのVR1との結合及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を、変化させるのに十分な濃度で存在する。この受容体は、溶液又は懸濁液中に、培養又は単離した細胞の調合液中に、又は患者の細胞内に存在する。例えば、この細胞は動物のインビボで接触している神経細胞であってもよい。また、この細胞は、動物のインビボで接触している、膀胱上皮細胞(尿路上皮細胞)又は気道上皮細胞のような、上皮細胞であってもよい。シグナル伝達活性の調節は、カルシウムイオンの伝導(カルシウム非固定化又は流出としても)への影響を検出することによって評価することができる。シグナル伝達活性の調節は、また本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤で治療されている患者の症状(例えば、疼痛、灼熱感、気管支収縮、炎症、咳、しゃっくり、痒み、更年期症状、尿失禁又は過活動膀胱)の変化を検出することによっても評価することができる。
【0171】
本発明のVR1調節剤は、患者(例えば、ヒト)に経口で又は局所に投与され、VR1シグナル伝達活性を調節している間、動物の少なくとも1つの体液中に存在させることが好ましい。このような方法に用いられる好ましいVR1調節剤は、インビトロでは1ナノモル以下の、好ましくは100ピコモル以下の、より好ましくは20ピコモル以下の濃度で、インビボでは血液のような体液中で1マイクロモル以下の、500ナノモル以下の又は100ナノモル以下の濃度で、VR1シグナル伝達活性を調節する。
【0172】
本発明は更に、VR1調節の応答に関連する疾患を治療する方法を提供する。本発明の文脈においては、「治療」という用語は、予防維持療法及び対症療法の両方(このどちらかは予防的(すなわち、症状の発現前に、阻止し、遅らせ、症状の重篤度を減少させるために)又は治療的(すなわち、症状の発現後に、症状の重篤度及び/又は期間を減少させるために)であってよいが)を含んでいる。局所的に存在するバニロイドリガンドの量に関係なく、カプサイシン受容体の不適切な活性によって特徴付けられるものであり、且つ/又はカプサイシン受容体活性の調節がこれらの疾患又は症状の緩和をもたらすものであれば、疾患は「VR1調節に応答性である」と言える。このような疾患には例えば、以下で更に詳細に説明されるように、VR1を活性化する刺激への暴露、疼痛、呼吸器疾患(咳、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、嚢胞性線維症並びに季節性及び通年性鼻炎のようなアレルギー性鼻炎及び非アレルギー性鼻炎を含む鼻炎のような)、うつ病、痒み、尿失禁、過活動膀胱、更年期症状、聴覚損傷(例えば、蝸牛の損傷)、耳鳴り、聴覚過敏、糖尿病及び前糖尿病状態(例えば、インスリン抵抗性又はブドウ糖耐性)、しゃっくり及び肥満からくる症状を包含する。このような疾患は、当該技術分野で確立されている評価基準を用いて診断及びモニターすることができる。上記の用量で治療される患者は、ヒト、ペット及び家畜を含む。
【0173】
治療計画は、使用する化合物及び治療すべき特定の疾患に応じて変わるが、殆どの病気の治療には、1日4回以下の投与が望ましい。一般に、1日2回の投与が更に望ましく、1日1回の投与が特に望ましい。急性の疼痛治療には、直ちに有効濃度に到達することが可能な単回投与が望ましい。しかし、それぞれ特定の患者の何れかに対する投与量レベル及び治療計画は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、健康状況、性別、治療食、投与期間、投与経路、そして排泄率、薬剤の組合せ及び治療中の特定の病気の重篤度を含む、種々の要因によって異なるものであることは理解されたい。一般に、効果的な治療を提供できる最少の投与量が望ましい。患者の治療効果は、通常、治療又は予防される疾患に適した、医療又は獣医学上の基準を用いて観察(モニター)される。
【0174】
カプサイシン受容体を活性化する刺激への暴露による症状を呈している患者には、熱、光、催涙ガス又は酸による火傷を負った者、及び彼らの粘膜がカプサイシン(例えば、唐辛子からの又は唐辛子スプレー中の)又は酸、催涙ガス、感染性物質(複数でも)若しくは大気汚染物質(複数でも)のような関連のある刺激に(例えば、摂食、吸入又は目からの接触を介して)曝されている者が含まれる。結果として生じる症状(本発明のVR1調節剤、特に拮抗薬を用いて治療できる)には例えば、疼痛、気管支収縮及び炎症が含まれる。
【0175】
本発明のVR1調節剤を用いて治療できる疼痛は、慢性又は急性のものでもよく、末梢神経が介在する疼痛(特に、神経障害性疼痛)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は、例えば、乳房切除後疼痛症候群、断端痛、幻肢痛、口腔内神経性疼痛、歯痛、義歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、化学療法による神経障害、反射性交感神経性ジストトロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、線維筋痛、ギラン−バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群及び/又は末梢神経障害(例えば、神経絞扼及び腕神経叢の裂離、切断、両側性末梢神経障害を含む末梢神経障害、有痛性チック、非定型顔面痛、神経根損傷、及びクモ膜炎)に関連する疼痛を包含する、神経及び神経根損傷に関連する疼痛の治療に用いることができる。
更なる神経障害性疼痛疾患は、灼熱痛(末梢神経損傷に続発する、反射性交感神経性ジストトロフィーRSD)、神経炎(例えば、坐骨神経炎、末梢神経炎、多発性神経炎、視神経炎、発熱後神経炎、移動性神経炎、分節性神経炎及びゴンボール神経炎(Gombault's neuritis)を含む)、ニューロン炎、神経痛(例えば、上で述べたもの、 頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、群発頭痛、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、顎関節神経痛、モートン神経痛(Morton's neuralgia)、鼻毛様体神経痛、後頭神経痛、紅神経痛、スルダー神経痛(Sluder's neuralgia)、翼口蓋神経痛、眼窩上神経痛及びビディアン神経痛)、手術関連疼痛、筋骨格痛、筋筋膜性疼痛症候群、エイズ関連神経障害性疼痛、MS関連神経障害性疼痛、中枢神経系疼痛(例えば、脳幹損傷による疼痛、座骨神経痛、及び強直性脊椎炎)及び脊髄損傷に関連する疼痛を含む脊髄疼痛を包含する。
末梢神経活性による頭痛を包含する、頭痛も本明細書に記載のように治療することができる。このような疼痛は、例えば、膿瘻、クラスター(すなわち、群発頭痛)及び緊張性頭痛、片頭痛、顎関節痛及び上顎洞痛を包含する。例えば、片頭痛は、患者が片頭痛の前兆を感じたら直ちに本発明の化合物を投与することによって阻止することができる。
本明細書に記載されているように治療することが可能な更なる疼痛は、シャルコー疼痛、腸内ガスによる疼痛、耳痛、心臓痛、筋肉痛、眼痛、口腔顔面痛(例えば、歯痛)、腹痛、婦人科の疼痛(例えば、生理痛、月経困難症、膀胱炎に関連する疼痛、陣痛、慢性骨盤痛、慢性直腸痛(chronic prostitis)及び子宮内膜症)、急性及び慢性の背痛(例えば、腰痛)、痛風、瘢痕痛、痔痛、消化不良性疼痛、狭心症、神経根痛、「非疼痛性」神経障害、複合性局所疼痛症候群、同所痛及び異所痛(癌関連疼痛、癌性疼痛(例えば、骨癌患者における)ともよく言われる、を包含する)、毒への暴露による疼痛(及び炎症)(例えば、蛇、くもに咬まれたり昆虫に刺されたことによる)及び外傷性疼痛(例えば、手術後疼痛、会陰切開痛、切り傷、筋骨格痛、打撲及び骨折からの痛み、及び火傷の痛み、特にそれによる初期痛覚過敏)を包含する。
本明細書に記載されているように治療することが可能な更なる疼痛は、上記のような呼吸器疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、ほてり、炎症性腸疾患、胃食道逆流性疾患(GERD)、過敏性腸症候群及び/又は炎症性腸疾患に関連する疼痛を包含する。
【0176】
ある態様において、本発明のVR1調節剤は機械的疼痛の治療に用いることができる。本明細書で用いられる「機械的疼痛」という用語は、神経性ではない頭痛、又は熱、寒冷若しくは外からの化学的な刺激への暴露によるもの以外の疼痛を示す。機械的疼痛は、術後疼痛及び切り傷、打撲及び骨折からの痛み;歯痛;義歯痛;神経根痛、変形性関節症;関節リウマチ;線維筋痛;知覚異常性大腿神経痛;背痛;癌関連疼痛;狭心症;カーペルトンネル症候群(carpel tunnel syndrome);及び骨折、労働、痔、腸内ガス、消化不良、及び生理からくる疼痛のような物理的な外傷(熱的若しくは化学的な火傷又はその他の刺激及び/又は有毒な化学物質への有痛性の暴露以外の)を包含する。
【0177】
治療できる掻痒症は、乾癬性掻痒、血液透析による痒み、水性掻痒、並びに膣前庭炎、接触皮膚炎、昆虫に咬まれる及び皮膚アレルギーに関連する痒みを包含する。
本明細書に記載されているように治療することができる尿路疾患は、尿失禁(溢流性尿失禁、急迫性尿失禁及びストレス性尿失禁を包含する)、更に過活動又は不安定膀胱症(膀胱排尿筋過反射、脊髄因性排尿筋過反射及び膀胱過敏症を包含する)を包含する。このようなある特定の治療方法において、VR1調節剤を直接膀胱に注入できるように、カテーテル又は同様な器具を介してVR1調節剤を投与する。
本発明の化合物は鎮咳薬(ACE阻害剤のような薬剤によって誘発される咳を含む、咳を阻止し、緩和し又は抑える)として、及びしゃっくりの治療のために、一過性熱感のような更年期症状の治療のために、及び肥満患者の減量を促進するためにも使用することができる。
【0178】
他の態様において、本発明のVR1調節剤は、疼痛及び/又は炎症性要素を含む疾患の治療のための併用療法で使用することができる。このような疾患には、例えば、自己免疫疾患、及びこれらに限定されないが、関節炎(特に関節リウマチ)、乾癬、クローン病、紅斑性狼瘡、過敏性腸症候群、組織移植不適合、及び移植臓器の超急性拒絶を包含する炎症性要素を有するものと知られている病的自己免疫反応を包含する。その他のこのような疾患は、外傷(例えば、頭部又は骨髄の損傷)、心臓及び脳の血管疾患及びある種の感染症を包含する。
【0179】
このような併用療法において、VR1調節剤は鎮痛及び/又は抗炎症剤とともに患者に投与される。このVR1調節剤と鎮痛及び/又は抗炎症剤は、同じ医薬組成物中に存在させても、いずれかの順序で別々に投与されてもよい。抗炎症剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID類)、非特異的及びシクロオキシゲナーゼ−2特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキセート、腫瘍壊死因子(TNF)受容体拮抗薬、抗TNFアルファー抗体、抗C5抗体、及びインターロイキン−1(IL−1)受容体拮抗薬を包含する。NSAID類の例は、これらに限定されないが、イブプロフェン、フルビプロフェン、ナプロキセン又はナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの合剤、スリンダック、オキサプロジン、ジフルニサール、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラック、フェノプロフェンカルシウム、ケトプロフェン、ナトリウムナブメトン、スルファサラジン、トルメチンナトリウム、及びヒドロキシクロロキンを包含する。ある種類のNSAID類は、シクロオキシゲナーゼ酵素を阻害する化合物(セレコキシブ及びロフェコキシブを包含する化合物のような)からなっている。NSAID類は更に、アセチルサリチル酸又はアスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン及びマグネシウム、及びサルサラートのようなサリチル酸塩を、またコルチゾン、デキサメサゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾロン・リン酸ナトリウム、及びプレドニゾンのような副腎皮質ステロイドを包含する。更なる抗炎症剤はメロキシカム、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ及びチリコキシブを包含する。
【0180】
このような併用療法におけるVR1調節剤の適切な用量は、一般に上記の通りである。抗炎症剤の用量及び投与方法は、例えば「Physician's Desk Reference」中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様において、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、治療効果を生ずるのに必要な抗炎症剤の用量の減少をもたらす(つまり、最少治療有効量を減少させる)。従って、好ましくは、併用又は併用療法における抗炎症剤の用量は、VR1拮抗薬の併用投与なしで、抗炎症剤を投与する際の製造会社が助言している最大用量未満である。より好ましくは、この用量は、この最大用量の3/4未満、更に好ましくは1/2未満、非常に好ましくは1/4未満であり、一方で最も好ましい用量は、VR1拮抗薬と併用投与しないで投与するときの抗炎症剤(複数でも)の投与に対して製造会社が助言する最大量の10%未満である。望ましい効果を達成するのに必要な併用するVR1拮抗薬成分の用量は、併用する抗炎症剤成分の用量及び効力によって同様に影響されることは明らかであろう。
【0181】
ある好ましい態様において、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤を、パッケージ内の別の容器に入れるか、或いは1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤の混合物として同じ容器に入れるかして、同じパッケージに包装することによって遂行できる。好ましい混合物は、経口投与用に(例えば、丸薬、カプセル、錠剤などとして)製剤化される。ある態様においては、このパッケージは、炎症性の疼痛を治療するためには、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤を一緒に用いることを、指示する表示付きのラベルを含有する。
【0182】
更なる態様において、本発明のVR1調節剤は、1つ又はそれ以上の更なる疼痛緩和薬剤と併用して用いることができる。このような薬剤のあるものは抗炎症剤で、上に記載されている。その他のこのような薬剤は、通常1つ又はそれ以上のオピオイド受容体のサブタイプ(例えば、μ、κ及び/又はδ)上で、好ましくは作動薬又は部分作動薬として作用する麻薬性薬剤を包含する、鎮痛薬である。このような薬剤は、アヘン剤、アヘン誘導体及びオピオイドを、更にはこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。麻薬性鎮痛薬の具体的な例は、好ましい態様において、アルフェンタニル、アルファプロジン、アニレリジン、ベジトラマイド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ジアセチルジヒドロモルフィン、ジアセチルモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルフィネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、イソメタドン、レボメトルファン、レボルファン、レボルファノール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メトルファン、メトポン、モルヒネ、ナルブフィン、アヘン抽出物、アヘン流エキス剤、粉末化アヘン、顆粒化アヘン、原料アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、プロポキシフェン、ラセメトルファン、ラセモルファン、スルフェンタニル、テバイン及び上記の薬剤の薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0183】
麻薬性鎮痛薬のその他の例は、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルメタドール、アリルプロジン、アルファアセチルメタドール、アルファメプロジン、アルファメタドール、ベンゼチジン、ベンジルモルヒネ、ベータアセチルメタドール、ベータメプロジン、ベータメタドール、ベータプロジン、クロニタゼン、コデインメチルブロマイド、コデイン−N−オキシド、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デソモルヒネ、デキストロモルアミド、ジアンプロミド、ジエチルチアンブテン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、ドロテバノール、エタノール、エチルメチルチアンブテン、エトニタゼン、エトルフィン、エトキセリジン、フレチジン、ヒドロモルフィノール、ヒドロキシペチジン、ケトベミドン、レボモラミド、レボフェナシルモルファン、メチルデソルフィン、メチルジヒドロモルヒネ、モルフェリジン、モルヒネメチルプロミド、モルヒネメチルスルホネート、モルヒネ−N−オキシド、ミロフィン、ナロキソン、ナルチヘキソン、ニココデイン、ニコモルヒネ、ノルアシメタドール、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、ペンタゾカイン、フェナドキソン、フェナムプロミド、フェノモルファン、フェノペリジン、ピリトラミド、フォルコジン、プロヘプタゾイン、プロペリジン、プロピラン、ラセモラミド、テバコン、トリメペリジン及びこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0184】
更に特定の代表的鎮痛剤は、例えば、アセトアミノフェン(パラセタモール);イブプロフェン;アスピリン及びその他の上記NSAID類;NR2B拮抗薬;ブラディキニン拮抗薬;抗片頭痛薬;オクスカルバゼピン及びカルバマゼピンのような抗痙攣薬;抗うつ薬(TCAs、SSRIs、SNRIs、サブスタンスP拮抗薬等のような);脊髄ブロッカー;ペンタゾシン/ナロキソン;メペリジン;レボファノール;ブプレノルフィン;ヒドロモルホン;フェンタニル;スフェンタニル;オキシコドン;オキシコドン/アセトアミノフェン;ナルブフィン及びオキシモルホンを包含する。更なる鎮痛剤は、AM1241のようなCB2受容体作動薬、カプサイシン受容体拮抗薬、及びガバペンチン及びプレガバリンのような、電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合する化合物を包含する。
【0185】
本発明のVR1調節剤との併用に用いられる代表的な抗片頭痛薬は、CGRP拮抗薬、エルゴタミン、及びスマトリパン、ナラトリプタン、ゾルマトリプタン及びリザトリプタンのような5−HT作動薬を包含する。
【0186】
更なる態様において、本発明の調節剤は 1つ又はそれ以上のベータ(2)−アドレナリン受容体作動薬又はロイコトリエン受容体拮抗薬(例えば、システイニルロイコトリエン CysLT受容体を阻害する薬剤)と併用して、喘息のような肺疾患の治療に用いることができる。CysLT拮抗薬は、モンテルカスト、ザフィルカスト、及びプランルカストを包含する。
【0187】
咳を治療又は予防するために、本発明のVR1調節剤は、抗生物質、抗炎症剤、システイニルロイコトリエン、ヒスタミン拮抗薬、コルチコステロイド、オピオイド、NMDA拮抗薬、プロトンポンプ阻害剤、ノシセプチン、ニューロキニン(NK1、NK2及びNK3)及びブラディキニン(BK1及びBK2)受容体拮抗薬、カナビノイド(cannabinoids)、Na依存性チャネルのブロッカー及び高伝導性Ca依存性Kチャネル活性化剤のような、この症状を治療するために開発された他の薬剤と併用して用いることができる。特定の薬剤は、デキスブロムフェニラミンとシュードエフェドリン、ロラタジン(roratadine)、オキシメタゾリン、イプラトロピウム(ipratropium)、アルブテロール(albuterol)、ベクロメタゾン、モルヒネ、コデイン、フォルコデイン及びデキストロメトルファンを包含する。
【0188】
本発明は更に尿失禁を治療するための併用療法を提供する。このような態様において、本発明のVR1調節剤は、エストロゲン交換治療、プロゲステロン同属体、電気刺激、カルシウムチャネルブロッカー、鎮痙剤、コリン作用拮抗薬、抗ムスカリン剤、三環性抗うつ剤、SNRIs、ベータアドレナリン受容体作動薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カリウムチャネルオープナー、ノシセプチン/オルファニンFQ(OP4)作動薬、ニューロキニン(NK1及びNK2)拮抗薬、P2X3拮抗薬、筋肉栄養剤及び仙骨神経調節剤のような、このような症状を治療するために開発された他の治療と併用して用いることができる。特定の薬剤は、オキシブチニン、エメプロニウム、トルテロジン、フラボキサート、フルルビプロフェン、トルテロジン、ジシクロミン、プロピベリン、プロパンテリン、ジシクロミン、イミプラミン、ドキセピン、デュロキセチン(duloxetine)、1−デアミノ−8−D−アルギニン バソプレシン、トルテロジンのようなムスカリン受容体拮抗薬及びオキシブチニンのような抗コリン薬を包含する。
【0189】
このような併用療法でのVR1調節剤の適切な用量は、一般に上記の通りである。その他の疼痛緩和薬剤の用量及び投与方法は、例えば「Physician's Desk Reference」中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様において、VR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤との併用投与は、それぞれの治療薬が治療効果を示すのに必要な用量を減少させる(例えば、片方又は両方の薬剤の用量は、上で示した又は製造会社が助言している最大容量の3/4未満、1/2未満、1/4未満又は10%未満であろう)。
【0190】
併用療法で用いるために、上記のような医薬組成物は、上記のような追加の薬剤を1つ又はそれ以上含有していてもよい。あるこのような組成物においては、追加の薬剤が鎮痛薬である。本発明では、同じ包装中の1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の追加の薬剤(例えば、鎮痛薬)よりなる、包装された医薬製剤も提供される。このような包装された医薬製剤は一般に、(i)少なくとも1つの本発明のVR1調節剤を含有している医薬組成物を入れた容器;(ii)上記のような、少なくと1つの追加の薬剤(疼痛緩和及び/又は抗炎症薬のような)を含有している医薬組成物を入れた容器;(iii)この組成物は患者のVR1調節に応答する疾患(疼痛及び/又は炎症が主症状であるような)の治療又は予防のために、同時に、別々に又は連続的に使用するように指示している使用説明書(例えば、ラベル又は添付文書);を包含している。
【0191】
VR1作動薬である化合物は、例えば、群衆整理で(催涙ガスの代用品として)若しくは身辺警護で(例えばスプレー製剤中に)、又はカプサイシン受容体の脱感作による疼痛、痒み、更年期症状、尿失禁若しくは過活動膀胱の治療用の薬剤として、更に使用できるであろう。一般に、群集整理又は個人警護で用いられる化合物は、通常の催涙ガス又は唐辛子スプレー技術に従って製剤化及び使用される。
【0192】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物についての多種のインビトロ及びインビボでの非医薬用途を提供する。例えば、このような化合物は標識されて、カプサイシン受容体の検出及び局在化(細胞調合液又は組織片、これらの調合液又は分画のようなサンプル中の)のためのプローブとして使用できる。更に、適当な反応性の基(アリールカルボニル、ニトロ又はアジド基のような)を含有する、本発明の化合物は、受容体結合部位の光親和性標識の検討に使用できる。更に、本発明の化合物は、受容体活性試験において陽性対照として、候補薬剤のカプサイシン受容体との結合能力を測定するための標準として、又は陽電子放出断層撮影(PET)用若しくは単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)用の放射性追跡子としても使用できる。これらの方法は対象生物のカプサイシン受容体を特定化するために使用することができる。例えば、VR1調節剤を多種の公知の技術を用いて標識し(例えば、本明細書に記載されているように、トリチウムのような放射性核種で放射性標識し)、そしてサンプルと共に適当な培養時間(例えば、まず最初に結合時間について試験して決定された時間)培養する。培養に続いて、結合しなかった化合物を除去し(例えば、洗浄によって)、結合した化合物を使用した標識に適した何れかの方法(例えば、放射性標識された化合物はオートラジオグラフィー又はシンチレーションカウントで;発光性の基及び蛍光性の基を検出するためには分光方法が使用できる)により検出する。対照として、標識された化合物及び大量の(例えば10倍以上の)標識されていない化合物を含む対応のサンプルを同様の方法で処理する。テストサンプルの中に、対照中よりも多い量の検出可能な標識が残っていれば、テストサンプル中にカプサイシン受容体が存在することを示す。培養細胞又は組織サンプル中のカプサイシン受容体の受容体オートラジオグラフィー(受容体マッピング)を含む検出試験は、Kuharによる記載(Current Protocols in Pharmacology (1988) John Wiley & Sons, New York の section 8.1.1〜8.1.9)のようにして行うことができる。
【0193】
本発明の化合物は、周知の各種細胞分離方法にも使用できる。例えば、調節剤を、固定化のための親和性リガンドとして用いるために、組織培養のプレート又はその他の支持体の内部表面に結合させ、それによりインビトロでカプサイシン受容体を単離(例えば、カプサイシン受容体を発現する細胞を単離する)させてもよい。一つの好ましい態様では、フルオレセインのような蛍光マーカーに結合させた調節剤を細胞に接触させ、次いでこれを蛍光活性化細胞選別(FACS)によって分析(又は単離)する。
【0194】
本発明のVR1調節剤は更に、カプサイシン受容体に結合するその他の薬剤を同定するための試験に使用できる。一般に、このような試験は、結合した標識VR1調節剤が、テスト化合物によって置き換えられる、標準の競合結合試験である。つまり、このような試験は、(a)VR1調節剤がカプサイシン受容体と結合可能な条件下に、本発明の放射性標識されたVR1調節剤を、カプサイシン受容体に接触させて、これにより結合した標識VR1調節剤を生成する;(b)テスト薬剤の非存在下での、結合した標識VR1調節剤の量に相当するシグナルを検出する;(c)結合した標識VR1調節剤を、テスト薬剤と接触させる;(d)テスト薬剤の存在下での、結合した標識VR1調節剤の量に相当するシグナルを検出する;そして(e)工程(b)で検出されるシグナルと比較して、工程(d)で検出されるシグナルの減少を測定する;ことによって実施される。
【0195】
以下の実施例は、説明の目的で提供されているものであり、それらによって本発明は何ら限定されるものではない。特に明記されない限り、全ての試薬及び溶媒は、標準の商用等級であり、更に精製せずに使用した。通常の改変方法で、出発物質を変えてもよく、追加の工程を採用して、本明細書で提供されるその他の化合物を製造することができる。
【実施例】
【0196】
下記の実施例に挙げられている質量分析の値は、Waters600ポンプ、Waters996フォトダイオード配列検出器、Gilson215オートサンプラー、及びGilson841マイクロインジェクターを取り付けた、Micromass Time−of−Flight LCTを用い、15V又は30Vのコーン電圧で、陽イオンモードによって得られるエレクトロスプレーMSである。MassLynx(Advanced Chemistry Development, Inc; Toronto, Canada)のバージョン4.0 ソフトウェアをデータ収集及び分析に用いた。1マイクロリットル容量のサンプルを、50×(x)4.6mmの Chromolith SpeedROD C18カラム上に注入し、6ml/minの流速で、2相線形勾配を用いて溶出する。サンプルを、220〜340nmのUV範囲における総吸収量を用いて検出する。
【0197】
溶出条件は、
移動相A: 95/5/0.05 水/メタノール/TFA
移動相B: 5/95/0.025 水/メタノール/TFA
勾配: 時間(分) %B
0 10
0.5 100
1.2 100
1.21 10
注入から注入までの総ランタイムは2分である。
【実施例1】
【0198】
代表的な中間体の製造
この実施例は、ハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体の合成で用いる代表的な中間体の製造を説明する。
A.3−ニトリロアラニンエチルエステル
【0199】
【化028】

【0200】
シアノシュウ酸エチル−2−オキシム(50g、352ミリモル)と水(440mL)の混合物を、飽和NaHCO水溶液(340mL)で注意深く処理した後、ヒドロ亜硫酸ナトリウム(165g、950ミリモル)を少量づつ加える。次いで反応液を35℃の内部温度まで35min加熱する。RTまで冷却した後、反応液をNaCl(約250g)で飽和して、CHCl(6×150mL)で抽出する。合わせたCHCl抽出液をNaSOで乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮すると標題の化合物が褐色油状物として得られる。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:4.43(1H、S)、4.34(2H、q、J=7.2)、2.30(2H、bs)、1.35(3H、t、J=7.2)。
B.5−アミノ−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0201】
【化029】

【0202】
3−ニトリロアラニンエチルエステル(25g、0.195モル)のMeCN(400mL)溶液に、オルトギ酸トリエチル(32.5mL、28.9g、0.195モル)を加えて、得られる溶液を90℃に加熱する。70min後に、この溶液をRTまで冷却し、エチルアミン(THF中2M、98mL、0.195モル)溶液を加えて、反応液をRTで18h撹拌する。反応液を真空下で濃縮して粘性の油状物を得、これを塩酸(1N、200mL)中に取り込む。水層をDCM(2×200mL、1×100mL)で洗浄する。固体の重炭酸ナトリウム(〜25g)を加えて水層を中和し、次いでDCM(5×200mL)で抽出する。有機層を合わせ、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮すると、褐色/赤色の固体残渣が得られる。この残渣をEtOAc(50mL)中でスラリーにし、ろ過し、固体をジエチルエーテルで洗い流して、乾燥すると標題の化合物が得られる。
H NMR(360MHz、CDCl)δ:70.5(1H、s)、4.85(2H、br.s)、4.34(2H、q、J=7)、3.79(2H、q、J=7)、1.43(3H、t、J=7)、1.39(3H、t、J=7)。
C.5−アミノ−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0203】
【化030】

【0204】
3−ニトリロアラニンエチルエステル(20g、0.156モル)のMeCN(400mL)溶液に、オルトギ酸トリエチル(26mL、23.2g、0.156モル)を加えて、得られる溶液を90℃に加熱する。1h後に、この溶液をRTまで冷却し、メチルアミン(EtOH中8M、20mL、0.156モル)溶液を加えて、反応液をRTで18h撹拌する。反応液を真空下で濃縮して粘性の油状物を得、これを塩酸(1N、180mL)中に取り込む。水層をDCM(2×200mL、1×100mL)で洗浄する。固体の重炭酸ナトリウム(〜20g)を加えて水層を中和し、次いでDCM(5×200mL)で抽出する。有機層を合わせ、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮すると、褐色/赤色の固体残渣が得られる。この残渣をEtOAc(40mL)中で超音波でスラリーにし、ろ過し、固体をエーテルで洗い流して、乾燥すると標題の化合物が得られる。
H NMR(400MHz、DMSO)δ:7.08(1H、s)、5.94(2H、s)、4.15(2H、q、J=7.1)、3.39(3H、s)、1.24(3H、t、J=7.1)。
D.5−アミノ−1−プロピル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0205】
【化031】

【0206】
エチルアミンの代わりにn-プロピルアミンを用い、本質的に実施例1Bに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(360MHz、DMSO)δ:7.10(1H、s)、5.89(2H、s)、4.14(2H、q、J=7.1)、3.75(2H、t、J=7.0)、1.63(2H、q、J=7)、1.23(3H、t、J=7.1)、0.83(3H、t、J=7.4)。
E.5−アミノ−1−シクロプロピル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0207】
【化032】

【0208】
エチルアミンの代わりにシクロプロピルアミンを用い、本質的に実施例1Bに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(360MHz、CDCl)δ:5.09(2H、s)、4.33(2H、q、J=7)、3.00−2.94(1H、m)、1.38(3H、t、J=7)、1.2−1.0(2H、m)、1.0−0.8(2H、m)。
F.5−アミノ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0209】
【化033】

【0210】
エチルアミンの代わりに2,2,2−トリフルオロエチルアミンを用い、本質的に実施例1Bに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(360MHz、d-DMSO)δ:1.24(3H、t、J=7.1)、4.17(2H、q、J=7.1)、4.92(2H、q、J=9.3)、6.32(2H、br s)、7.18(1H、s)。
G.5−アミノ−1−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル
【0211】
【化034】

【0212】
エチルアミンの代わりに2,2−ジフルオロエチルアミンを用い、本質的に実施例1Bに記載のようにして、この化合物を製造する。
H.3−アミノピリジン−2−カルボン酸エチル
【0213】
【化035】

【0214】
3−アミノピリジン−2−カルボン酸(6.4g、46.3ミリモル)、EtOH(26mL)及び濃硫酸(8mL)の混合物を2日間加熱還流する。冷却後、混合物を約15〜20mLまで濃縮して20gの氷へ注ぐ。氷浴中で冷却しながら、濃NHOHで混合物をpH8〜9に塩基性化する。得られる褐色の沈殿物をろ過して除いて、ろ液をエーテル(4×60mL)で抽出する。合わせたエーテル抽出液を食塩水(4×60mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)し、ろ過して、濃縮すると、黄色/褐色の固体が得られる。この固体を上記のろ過で得られる固体と合わせて、全てを冷却したエーテルを用いて粉末化すると、標題の化合物が淡褐色の固体として得られる。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:8.08(1H、m)、7.21(1H、m)、7.03(1H、m)、5.74(2H、bs)、4.44(2H、q、J=7.2、6.9)、1.45(3H、t、J=6.9)。
I.5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0215】
【化036】

【0216】
トリメチルアルミニウム(ヘキサン2M溶液;8.9mL、17.7ミリモル)を、窒素気流下、RTで5minかけて、4−クロロアニリン(11.3g、8.87ミリモル)の1,2−ジクロロエタン(18mL)溶液に滴下する。得られる懸濁液を30min撹拌した後、5−アミノ−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル(1.00g、5.91ミリモル)を加えて、スラリーを6h加熱還流する。冷却して、溶液をCHCl(60mL)で希釈して、飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液(60mL)、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)及びMeOH(10mL)を加える。混合物を1h激しく撹拌し、次いで1h放置した後、層を分離する。水層を8%のMeOH/DCM(50mL)で抽出して、合わせた有機抽出液を1Mの酒石酸ナトリウムカリウム(150mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮すると、橙色の固体が得られる。この固体をジエチルエーテル中でスラリーにして、混合物をろ過する。残渣をエーテルで洗浄して、気流で1h乾燥すると、標題の化合物が金色の固体として得られる。
H NMR(500MHz、DMSO)δ:9.44(1H、s)、7.84(2H、d、J=8.8)、7.30(2H、d、J=8.8)、7.19(1H、s)、5.98(2H、s)、3.43(3H、s)。
J.5−アミノ−N−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0217】
【化037】

【0218】
4−クロロアニリンに代えて4−フルオロアニリンを用い、本質的に実施例1Iに記載のようにして、この化合物を製造する。
K.3−アミノ−N−(4−クロロロフェニル)ピコリンアミド
【0219】
【化038】

【0220】
3−アミノピリジン−2−カルボン酸エチル及び4−クロロアニリンを用い、本質的に実施例1Iに記載のようにして、この化合物を製造する。
L.5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0221】
【化039】

【0222】
5−アミノ−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル及び4−クロロアニリンを用い、本質的に実施例1Iに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(500MHz、DMSO)δ:9.44(1H、s)、7.83(2H、d、J=8.9)、7.29(2H、d、J=8.9)、7.24(1H、s)、6.02(2H、s)、3.85(2H、q、J=7.3)、1.27(3H、t、J=7.2)。
【0223】
M.酢酸ギ酸無水物
無水酢酸(35.94g、352ミリモル)及びギ酸(16.20g、352ミリモル)を丸底フラスコに入れて、455℃で3h加熱する。反応混合物を、更に精製することなく、実施例1Nで用いる。
N.N−ホルミル−3−ニトリロアラニンエチルエステル
【0224】
【化040】

【0225】
3−ニトリロアラニンエチルエステル(26.9g、210ミリモル)を無水エーテル(200mL)に溶解して氷/水浴中で冷却する。酢酸ギ酸無水物(上記のように混合物として製造)を滴下する。添加が終了した時点で、反応混合物をRTまで暖めて、RTで1晩撹拌する。殆どの揮発性のものを、真空下で除去して、残渣の溶媒をトルエン(100mL×4)と共に蒸発留去する。エーテル中で引っ掻いて生ずる沈殿物から赤色油状物が得られ、得られる固体をエーテル中で再結晶すると、標題化合物が白色固体として得られる。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:8.32(1H、s)、7.26(1H、s)、6.46(1H、bs)、5.56(1H、d、J=7.8)、4.39(2H、q)、1.37(3H、t)。
O.5−アミノ−1,3−チアゾール−4−カルボン酸エチル
【0226】
【化041】

【0227】
N−ホルミル−3−ニトリロアラニンエチルエステル(11.22g、71.86ミリモル)を無水ベンゼン(220mL)に溶解する。ローソン試薬(14.53g、35.93ミリモル)を加えた後、懸濁液を24h還流する。殆どの溶媒を真空下で除去して、粘性の赤色残渣をシリカゲルに前吸着して、シリカゲルカラムにロードする(溶出溶媒:EtOAc:ヘキサン=50:50)。標題化合物が黄色の固体として得られる。
H NMR(400MHz、CDCl)δ:7.87(1H、s)、7.26(1H、s)、6.01(2H、broad s)、4.38(2H、q)、1.41(3H、t)。
P.5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1,3−チアゾール−カルボキサミド
【0228】
【化042】

【0229】
反応時間を90℃で3hに減縮すること、生成物をCHCl(8%のMeOH/CHClに代えて)で抽出すること及び10%のEtO/ヘキサン(EtOに代えて)で洗浄すること以外は、本質的に実施例1Iに記載のようにして、5−アミノ−1,3−チアゾールカルボン酸エチル(Tetrahedron 1985, 41, 5989)及び4−クロロアニリンからこの化合物を製造する。
H NMR(500MHz、DMSO)δ:9.83(1H、s)、8.08(1H、s)、7.85(2H、d、J=8.9)、7.35(4H、m)。
Q.5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−シクロプロピル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0230】
【化043】

【0231】
本質的に実施例1Iに記載のようにして、5−アミノ−1−シクロプロピル−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル及び4−クロロアニリンから、この化合物を製造する。
R.5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0232】
【化044】

【0233】
本質的に実施例1Iに記載のようにして、5−アミノ−1−(2,2−ジフルオロエチル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチル及び4−クロロアニリンから、この化合物を製造する。
S.5,5,5−トリフルオロ−3−メチル−ペンタ−2−エン酸エチル
【0234】
【化045】

【0235】
4,4,4−トリフルオロ−2−ブタノン(5g、40ミリモル)のベンゼン(150mL)溶液に、(カルベトキシメチレン)−トリフェニルホスホラン(15.2g、44ミリモル)を加えて、得られる溶液を16h加熱還流する。溶液をRTまで冷却して、真空下で濃縮して粘性の油状物を得、これをヘキサンに懸濁する。混合物をろ過して、ろ液を濃縮する。残渣を、5%EtOAc−ヘキサンで溶出する、フラッシュクロマトグラフィーで精製すると、標題の化合物がシスとトランスの異性体の混合物として得られる。
T.5,5,5−トリフルオロ−3−メチル−ペンタン酸
【0236】
【化046】

【0237】
5,5,5−トリフルオロ−3−メチル−ペンタ−2−エン酸エチル(1.4g、7.1ミリモル)のEtOH(50mL)溶液に、10%のPd−C(0.2g)を加えて、得られる混合物を20psiで3時間(TLCが出発物質が残っていないことを示す)水素化する。混合物をろ過してPd−Cを除去して、10%のNaOH(20mL)をろ液に加える。得られる溶液を3h加熱還流し、次いでRTまで冷却して濃縮する。残渣をエーテル(2×50mL)で洗浄して、pH4まで酸性化する。次いで水層をエーテル(3×50mL)で抽出する。有機層を合わせてMgSOで乾燥して、真空下で濃縮すると、標題の化合物が得られる。
U.5,5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタノイルクロライド
【0238】
【化047】

【0239】
5,5,5−トリフルオロ−3−メチル−ペンタン酸(1.0g、5.9ミリモル)のDCM(30mL)溶液に、(COCl)(DCM中の2M溶液;4.4mL、8.8ミリモル)及び1滴のDMFを加える。得られる混合物をRTで16h撹拌する。この溶液を真空下で濃縮すると、標題の化合物が得られる。
V.(R)−4−フェニル−3−[(S)−5,5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタノイル]オキサゾリジン−2−オン
【0240】
【化048】

【0241】
冷却(−78℃)した(R)−4−フェニル−オキサゾリジノン(216mg、1.33ミリモル)のTHF(15mL)溶液に、n−buLi溶液(ヘキサン中の2.5M溶液;557μl、1.39ミリモル)を滴下する。混合物を−78℃で15min撹拌し、次いで5,5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタノイルクロライド(250mg、1.33ミリモル)のTHF(5mL)溶液を加える。得られる混合物をゆっくり室温にして、16h撹拌する。飽和NHClで反応を停止して、エーテル(3×30mL)で抽出する。有機層を合わせ、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮する。ジアステレオマー混合物をキラルHPLCカラム(Chiralpak AD, Diacel Chemical IND., LTD; 移動相:0.2%のジエチルアミンを加えた、96%ヘキサン4%イソプロパノール)を用いて分離して、標題の化合物に対応する短い保持時間ピークを得た。
W.(S)−5、5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタン酸
【0242】
【化049】

【0243】
冷却(−5℃〜0℃)した(R)−4−フェニル−3−[(S)−5,5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタノイル]オキサゾリジン−2−オン(250mg、0.8ミリモル)のTHF/HO(15/7mL)溶液に、30%のH(380μL、4.0ミリモル)を加える。得られる混合物を1min撹拌し、次いでLiOH・HO(67mg、1.6ミリモル)のHO(5mL)溶液を加える。混合物を0℃で2h撹拌する。NaSO(900mg、7.1ミリモル))のHO(5mL)溶液を加えて、混合物を0℃で20min撹拌する。THFを蒸発させて、残渣をDCM(2×30mL)で抽出する。水層をpH1〜2に中和し、エーテル(3×500mL)で抽出する。有機層を合わせ、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮すると、標題の化合物が得られる。
X.4,4,4−トリフルオロ−3−メチル酪酸クロライド
【0244】
【化050】

【0245】
4,4,4−トリフルオロ−3−メチル酪酸を用い、本質的に実施例1U(I)に記載のようにして、この化合物を製造する。
Y.(S)−4−tert−ブチル−3−[(S)−4,4−トリフルオロ−3−メチルブタノイル]オキサゾリジン−2−オン及び(S)−4−tert−ブチル−3−[(R)−4,4−トリフルオロ−3−メチルブタノイル]オキサゾリジン−2−オン
【0246】
【化051】

【0247】
4,4,4−トリフルオロ−3−メチル酪酸クロライドから出発し、本質的に実施例1Vに記載のようにして、ジアステレオマー混合物を製造する。フラッシュクロマトグラフィー(勾配:5%〜20%のEtOAc/ ヘキサン)を用いてジアステレオマーを分離して、表題の化合物を得た。

Z.(S)4,4,4−トリフルオロ−3−メチル酪酸
【0248】
【化052】

【0249】
(S)−4−tert−ブチル−3−[(S)−4,4−トリフルオロ−3−メチルブタノイル]オキサゾリジン−2−オンから出発し、本質的に実施例1Wに記載のようにして、この化合物を製造する。
AA.5,5−ジフルオロ−ペンタン酸メチル
【0250】
【化053】

【0251】
5−オキソペンタン酸メチル(1.0g、7.7ミリモル;本質的にヨーロッパ特許出願第0338993A1に記載されているようにして製造)のDCM(30mL)溶液に、[ビス(2−メトキシエチル)−アミノ]硫黄トリフルオライド(2.4mL、13ミリモル)及びEtOH(90μl、1.54ミリモル)を加える。得られる混合物を室温で20h撹拌する。混合物を飽和NaHCO(40mL)に注いで、20min撹拌する。次いでこの混合物をDCM(2×30mL)で抽出する。有機層を合わせて、MgSOで乾燥して真空下で濃縮する。残渣をEtOAc/ヘキサン(50%)で溶出する、フラッシュクロマトグラフィーで精製すると、標題の化合物が得られる。
BB.5,5−ジフルオロ−ペンタン酸
【0252】
【化054】

【0253】
5,5−ジフルオロ−ペンタン酸メチル(300mg、2.0ミリモル)のMeOH・HO(1:1、50mL)溶液に、KOH(3当量)を加えて、得られる混合物をRTで4h撹拌する。MeOHを蒸発させて残渣をDCM(2×30mL)で抽出する。水層をpH1〜2に中和して、エーテル(3×50mL)で抽出する。有機層を合わせて、MgSOで乾燥して、真空下で濃縮すると、標題の化合物が得られる。
CC.メタンスルホン酸の4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチルエステル
【0254】
【化055】

【0255】
塩化メタンスルホニル(1.64mL、21.1ミリモル)及びTEA(3.9mL、28.2ミリモル)を、冷却した4,4,4−トリフルオロ−3−メチル−ブタン−1−オール(2.0g、14.1ミリモル;本質的にヨーロッパ特許第0300497B1に記載されているようにして製造)のTHF(40mL)溶液に滴下する。混合物をRTで2h撹拌して、飽和NaHCOで反応を停止する。混合物をエーテル(3×50mL)で抽出して、合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、蒸発させると、標題の化合物が得られる。
DD.5,5,5−トリフルオロ−4−メチルペンタンニトリル
【0256】
【化056】

【0257】
NaCN(2.1g、42.3ミリモル)を、メタンスルホン酸の4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチルエステル(3.1g、14.1ミリモル)のDMSO(40mL)溶液に加える。混合物を120℃で24時間撹拌する。混合物をRTまで冷却し、エーテル(200mL)で希釈し、水(3×40mL)で洗浄し、有機層を乾燥(MgSO)して、蒸発させる。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(25%のEtOAc−ヘキサン)で精製すると、標題の化合物が得られる。
EE.5,5,5−トリフルオロ−4−メチルペンタン酸
【0258】
【化057】

【0259】
25%のNaOH(20mL)を、5,5,5−トリフルオロ−4−メチルペンタンニトリル(1.2g、7.9ミリモル)のEtOH(20mL)溶液に加える。混合物を24h加熱還流する。混合物をRTまで冷却し、濃縮して、HO(10mL)で希釈して、エーテル(20mL)で洗浄する。水層をpH2まで酸性化し、エーテル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、蒸発すると、標題の化合物が得られる。
FF.4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブタン−1−オール
【0260】
【化058】

【0261】
水素化アルミニウムリチウム(0.42g、37.95ミリモル)を3回に分けて、4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブタン酸エチル(Synquest Laboratories; Alachua, Florida)の溶液に室温で加える。この温度で0.5h撹拌した後、混合物を1晩還流する。反応液を0℃まで冷却して、ジエチルエーテル(35mL)で希釈した後、フィーザー仕上げ処理を行う。この処理はHO(0.42mL)、15%のNaOH(0.42mL)及び追加のHO(1.26mL)の添加を含んでいる。混合物を少なくとも2h撹拌した後、固体をろ過してジエチルエーテルで洗浄する。ろ液を乾燥(MgSO)し、ろ過して、注意深く濃縮すると標題の化合物が得られ、これは更に精製することなく、5,5,5−トリフルオロ−3,3−ジメチルペンタンニトリルの製造に用いられる。
GG.5,5,5−トリフルオロ−3,3−ジメチルペンタンニトリル
【0262】
【化059】

【0263】
塩化メタンスルホニル(0.66g、5.8ミリモル)を、冷却した4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブタン−1−オール(0.60g、3.8ミリモル)及びTEA(0.78g、7.7ミリモル)のTHF(10mL)溶液に0℃で滴下する。混合物をRTで2.5h(この時点で、TLCが出発物質の消費を示す)撹拌して、飽和NaHCOで反応を停止する。混合物をジエチルエーテル(3×20mL)で抽出して、合わせた有機抽出液を乾燥(MgSO)し、ろ過して、濃縮すると、粗製のメタンスルホン酸の4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブチルエステルが得られる。これを直ちにDMSO(15mL)に溶解した後、NaCN(0.56g、11.5ミリモル)を加える。混合物を120℃で24時間加熱する。混合物をRTまで冷却し、エーテル(50mL)で希釈して、HO(3×10mL)で洗浄する。有機層を乾燥(MgSO)し、ろ過して、濃縮すると、標題の化合物が得られる。
HH.5,5,5−トリフルオロ−3,3−ジメチルペンタン酸
【0264】
【化060】

【0265】
NaOH(4N、5mL)を、5,5,5−トリフルオロ−3,3−ジメチルペンタンニトリル(0.4g、2.4ミリモル)のEtOH(10mL)溶液に加える。混合物を24h加熱還流する。混合物をRTまで冷却し、濃縮し、HO(5mL)で希釈してジエチルエーテル(2×10mL)で抽出する。水層をpH2に酸性化して、エーテル(3×20mL)で抽出する。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)して、濃縮すると、標題の化合物が得られる。
【実施例2】
【0266】
代表的なハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体の合成
A.1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブチル)−1H−プリン−6(9H)−オン(化合物1)
【0267】
【化061】

【0268】
5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(30mg、0.12ミリモル)を封管中で、5,5,5−トリフルオロ−3,3−ジメチルペンタン酸(45mg、0.24ミリモル)及びポリリン酸(0.5mL)と混合する。混合物を140℃まで加熱して、5h撹拌する。反応液をRTまで冷却して、氷を加える。ポリリン酸の栓状核を砕き、懸濁液を4NのNaOH水溶液(10mL)とCHCl(20mL)の間で分配する。層を分離し、水層をCHCl(20mL)で抽出して、合わせた有機層を乾燥(MgSO)し、ろ過して、真空下で濃縮する。分取TLCで精製すると、標題の化合物が白色の固体として得られる。
H NMR(300MHz、CDCl)δ:7.74(s、1H)、7.52(m、2H)、7.12(m、2H)、3.82(s、3H)、2.57(m、2H)、2.45(s、2H)、1.15(s、6H)。
MS(M+1):399.11;R=1.4min。
B.(S)−1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1H−プリン−6(9H)−オン(化合物2)
【0269】
【化062】

【0270】
5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド及び(S)−5,5,5−トリフルオロ−3−メチルペンタン酸を用いて、本質的に実施例2Aに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(CDCl)δ(ppm):7.74(s、1H)、7.52(dd、2H)、7.14(dd、2H)、3.81(s、3H)、2.52−2.64(m、1H)、2.29−2.48(m、2H)、2.18−2.27(m、1H)、1.84−2.04(m、1H)、1.03(d、3H)、
MS(M+1):385.04;R=1.25min。
C.(S)−1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1H−プリン−6(9H)−オン(化合物3)
【0271】
【化063】

【0272】
5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド及び(S)−4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブタン酸を用いて、本質的に実施例2Aに記載のようにして、この化合物を製造する。
H NMR(CDCl)δ(ppm):7.75(s、1H)、7.53(dd、2H)、7.14(dd、2H)、3.83(s、3H)、3.06−3.18(m、1H)、2.76(dd、1H)、2.32(q、1H)、1.16(d、3H)。
MS(M+1):371.08;R=1.34min。
D.6−(4−クロロフェニル)−5−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−7(6H)−オン(化合物4)
【0273】
【化064】

【0274】
本質的に実施例2Aに記載のようにして、5−アミノ−4−(クロロフェニル)−1,3−チアゾール−4−カルボキサミド及び5,5,5−トリフルオロ−4−メチル−ペンタン酸からこの化合物を製造する。
MS(M+1):388.03;R=1.25min。
E.6−(4−クロロフェニル)−5−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−7(6H)−オン(化合物5)
【0275】
【化065】

【0276】
本質的に実施例2Aに記載のようにして、5−アミノ−4−(クロロフェニル)−1,3−チアゾール−4−カルボキサミド及び5,5,5−トリフルオロ−3−メチル−ペンタン酸からこの化合物を製造する。
MS(M+1):388.12;R=1.22min。
F.(R)−1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1H−プリン−6(9H)−オン(化合物6)
【0277】
【化066】

【0278】
本質的に実施例2Aに記載のようにして、5−アミノ−N−(4−クロロフェニル)−1−メチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド及び(R)−4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブタン酸からこの化合物を製造する。
MS(M+1):371.08;R=1.34min。
実施例6に記載のようにして測定されるIC50は100ナノモル以下である。
G.1−(6−クロロピリジン−3−イル)−9−エチル−2−(3,3,3,−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン(化合物7)。
工程1.5−アミノ−N−(6−クロロピリジン−3−イル)−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0279】
【化067】

【0280】
トリメチルアルミニウム(2Mのヘキサン溶液、8.9mL、17.7ミリモル)を、4−クロロアニリン(1.13g、8.87ミリモル)の1,2−ジクロロエタン(18mL)溶液に、窒素雰囲気下、RTで5minかけて滴下する。得られる懸濁液を30min撹拌した後、5−アミノ−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボキシレート(5.91ミリモル)を加えて、スラリーを6h加熱還流する。冷却して、この溶液をCHCl(60mL)で希釈して、飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液(60mL)、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)及びMeOH(10mL)を加える。混合物を1h激しく撹拌し、次いで1h放置した後、層を分離する。水層を8%のCHOH/DCM(50mL)で抽出して、合わせた有機抽出液を1Mの酒石酸ナトリウムカリウム(150mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮すると、固体が得られる。この固体をジエチルエーテル中でスラリー化して混合物をろ過する。残渣をエーテルで洗浄して、気流中で1h乾燥すると、標題の化合物が固体として得られる。
工程2.N−(6−クロロピリジン−3−イル)−1−エチル−5−(4,4,4,−トリフルオロ−3−メチルブタンアミド)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド
【0281】
【化068】

【0282】
5−アミノ−N−(6−クロロピリジン−3−イル)−1−エチル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(1.14ミリモル)、4,4,4,−トリフルオロ−3−メチルブタン酸(1.93ミリモル)、ビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロライド(1.93ミリモル)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.93ミリモル)及びジクロロエタン(10mL)を混合して、電子レンジで160℃にて20分間加熱すると、TLCで反応が完了したことを示す。混合物をDCM(30mL)及び10%炭酸カリウム水溶液(30mL)の間で分配する。層を分離し、水層を追加のDCM(30mL)で抽出し、有機層を合わせて、水及び食塩水で洗浄する。有機層を乾燥(MgSO)して、蒸発させる。残渣をエーテルで粉砕すると、標題の化合物が得られる。
工程3.1−(6−クロロピリジン−3−イル)−9−エチル−2−(3,3,3,−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン
【0283】
【化069】

【0284】
N−(6−クロロピリジン−3−イル)−1−エチル−5−(4,4,4,−トリフルオロ−3−メチルブタンアミド)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(3.73ミリモル)をPOCl(10mL)に加えて、得られる溶液を110℃で4h還流する。殆どの揮発物質を減圧下で除去して、残渣をDCM中に取り込む。有機物を飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥して、減圧下で濃縮する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、標題の化合物が得られる。
MS(M+1):386.06;R=1.23min。
実施例6に記載のようにして測定されるIC50は100ナノモル以下である。
【実施例3】
【0285】
追加の代表的なハロアルキル−置換ピリミジノン誘導体
出発物質を変更すること、また、追加の工程を導入することによる通常の修飾方法を用いて、本明細書のその他の化合物を製造することができる。表Iに記載されている化合物は、このような方法を用いて製造される。表I中の「IC50」と表示されている欄の「*」は、実施例6に記載されているようにして測定されたIC50値が、100ナノモル以下であることを示している(すなわち、カプサイシン(の1つのIC50)に暴露している細胞の蛍光応答を50%減少させるのに必要なそのような化合物の濃度が、100ナノモル以下である)。上記のようにして得られるマススペクトルのデータは、「MS」と表してある欄に、M+1として示し、そして保持時間は、「R」と表してある欄に、分で示してある。
【0286】
【化070】

【0287】
【化071】

【0288】
【化072】

【0289】
【化073】

【0290】
【化074】

【実施例4】
【0291】
VR1導入細胞及び膜調合液
この実施例は、カプサイシン結合試験(実施例5)で用いるためのVR1導入細胞及びVR1含有膜調合液の調製を説明している。
【0292】
ヒトカプサイシン受容体(米国特許第6,482,611号の配列番号1、2又は3)の全長をコードするcDNAを、哺乳動物の細胞中で組み換え体を発現させるために、プラスミドpBK−CMV(Stratagene、 La Jolla, CA)にサブクローンする。
【0293】
ヒト胎児腎細胞(HEK293)に、標準の方法を用いて、ヒトカプサイシン受容体の全長をコードするpBK−CMV発現構築物を導入する。導入された細胞をG418(400μg/ml)を含有する培地で2週間培養して選択し、安定に導入された細胞の集合(pool)を得る。この集合から独立したクローンを限界希釈法によって単離して、次の実験に用いる、安定にクローン化された細胞系を得る。
【0294】
放射性リガンド結合試験のために、細胞をT175細胞培養フラスコ中の抗生物質を含有しない培地に播種して約90%になるまで増殖させる。次いで、フラスコをPBSで洗浄し、5mMのEDTAを含有するPBS中に細胞を集める。細胞を緩やかに遠心分離してペレット状にし、試験まで−80℃で保管する。
【0295】
先の凍結した細胞を、組織ホモジナイザーを用いて氷冷したHEPESホモジナイズ緩衝液(5mMのKCl5、5.8mMのNaCl、0.75mMのCaCl、2mMのMgCl、320mMの蔗糖、及び10mMのHEPES;pH7.4)中でバラバラにする。組織のホモジネートはまず1000×g(4℃)で10分間遠心分離して核画分及び破片を除去し、次いで最初の遠心分離の上澄液をさらに35,000×g(4℃)で30分遠心分離して、部分的に精製された膜画分を得る。膜は試験前に再度HEPESホモジナイズ緩衝液に懸濁する。この膜ホモジネートの1アリコートを、ブラッドフォード法(Bradford method :BIO-RAD Protein Assay Kit, #500-0001, BIO-RAD, Hercules, CA)による蛋白濃度測定に用いる。
【実施例5】
【0296】
カプサイシン受容体結合試験
この実施例は、化合物のカプサイシン(VR1)受容体に対する結合親和性を測定するために用いることができる、代表的なカプサイシン受容体結合試験を説明するものである。
【0297】
H]レジニフェラトキシン(RTX)を用いる結合の検討は、実質的には、Szallasi and Blumberg (1992)( J. Pharmacol. Exp. Ter. 262: 883-888)に記載されているように実施される。この手順では、結合反応の終了後にウシα酸性糖タンパク(1管あたり100μg)を添加することによって非特異的なRTX結合が減少する。
【0298】
H]RTX(37Ci/mmol)は、Chemical Synthesis and Analysis Laboratory(National Cancer Institute-Fredrick Cancer Research and Development Center, Fredric, MD)で合成されたものを入手する。また、[H]RTXは、一般業者(例えば、Amersham Pharmacia Biotech, Inc.; Piscataway, NJ )からも入手できる。
【0299】
実施例4の膜ホモジネートを前述のように遠心分離して、蛋白濃度が333μg/mlになるように、ホモジネート緩衝液に再懸濁する。結合試験用の混合物は、氷の上に備え付けられ、[H]RTX(比活性:2200mCi/ml)、2μlの非放射性のテスト化合物、0.25mg/mlのウシ血清アルブミン(コーンフラクションV)、及び5×10〜1×10個のVR1導入細胞を含有している。上記の氷冷HEPESホモジネート緩衝液(pH7.4)で、最終容量を500μl(競合結合試験用)又は1,000μl(飽和結合試験用)に調整する。非特異的結合は、1μMの非放射性のRTX(ALexis Corp.; San Diego, CA)が存在する時に生じるものであると定義する。結合を飽和させるために、[H]RTXを、1〜2倍希釈にて、7〜1,000pMの濃度範囲で添加する。一般に、飽和結合曲線当り11個の濃度ポイントが収集される。
【0300】
競合結合試験は、60pMの[H]RTX及び各種の濃度のテスト化合物の存在下で実施される。結合反応は、試験混合物を37℃の水浴槽に移したときに始まり、60分間培養した後、管を氷の上で冷却して終了する。膜に結合したRTXは、使用する2時間前に1.0%のPEI(ポリエチレンイミン)に予備浸漬したWALLACグラスファイバーフィルター(PERKIN-ELMER, Gaithersburg, MD)でろ過して非結合物から分離し、同様にα酸性糖タンパクに結合したRTXからも分離する。フィルターを一晩乾燥して、WALLAC BETA SCINTシンチレーション液を添加した後に、WALLAC 1205 BETA PLATEカウンターでカウントする。
【0301】
平衡結合変数は、Szallasiらの(J. Pharmacol. Exp. Ther. 266: 678-683 (1993))に記載のように、コンピュータプログラムFIT P(Biosoft, Ferguson, MO)を用いて、アロステリックのヒルの式を測定値に当てはめて算出する。本発明の化合物は、当該試験において、一般にカプサイシン受容体に対して1μM、100nM、50nM、25nM、10nM又は1nM未満のK値を示す。
【実施例6】
【0302】
カルシウム非固定化試験
この実施例は、テスト化合物の作動薬及び拮抗薬の活性を評価するために用いる代表的なカルシウム非固定化試験を説明するものである。
【0303】
発現プラスミドを導入してヒトカプサイシン受容体を発現している細胞(実施例4に記載のような)を、FALCONの壁が黒く、底が透明な、96ウェルプレート(#3904, BECTON-DICKINSON, Franklin Lakes, NJ)に播種し、70〜90%集密になるまで増殖させる。96ウェルプレートから培養液をとり除き、FLUO−3 AMカルシウム感受性染料(Molecular Probes, Eugene, OR)をそれぞれのウェルに加える(染料溶液:FLUO−3 AM(1mg)、DMSO(440μl)及び20%のプルロン酸のDMSO溶液(440μl)を、クレブス−リンガーHEPES(KRH)緩衝液(25mMのHEPES、5mMのKCl、0.96mMのNaHPO、1mMのMgSO、2mMのCaCl、5mMのグルコース、1mMのプロベネシド、pH7.4)で1:250に希釈し、希釈液をウェル当たり50μl加える)。プレートをアルミニウムホイルで覆って、5%のCOを含有する環境下、37℃で1〜2時間培養する。培養後、プレートから染料を除き、細胞をKRH緩衝液で一回洗浄して、KRH緩衝液に再懸濁する。
【0304】
(カプサイシンEC50値の算出)
カプサイシン受容体を発現している細胞において、カプサイシン又はその他のバニロイド作動薬に対するカルシウム非固定化の応答を作動させる又は拮抗させる、テスト化合物の能力を調べるために、先ず作動カプサイシンのEC50値を測定する。上記のようにして調製した、各ウェルの細胞に追加の20μlのKRH緩衝液及び1μlのDMSOを加える。KRH緩衝液中の100μlのカプサイシンを、FLIPR装置により各ウェルに自動的に移す。カプサイシンが誘導するカルシウムの非固定化は、FLUOROSKAN ASCENT(Labsystems; Franklin, MA)又はFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダーシステム;Molecular Devices, Sunnyvale, CA)装置の何れかを用いて観察する。作動薬を適用してから30秒〜60秒後に得られるデータを用いて、カプサイシンの最終濃度が1nM〜3μMに於ける、8点の濃度応答曲線を作成する。KALEIDAGRAPHソフトウェア(Synergy Software, Reading, PA)を使用して、このデータを式:
y=a(1/(1+(b/x)))
に当てはめ、応答に対する50%影響濃度(EC50値)を算出する。この式において、yは最大蛍光シグナルであり、xは作動薬又は拮抗薬(この場合は、カプサイシン)の濃度であり、aはEmaxで、bはEC50値に対応し、そしてcはヒル(Hill)係数である。
【0305】
(作動薬活性の測定)
テスト化合物をDMSOに溶解し、KRH緩衝液で希釈し、直ちに、上記のように調製した細胞に加える。100nMのカプサイシン(およそEC90の濃度)を、陽性対照として同様の96ウェルプレート中の細胞に加える。試験ウェル中のテスト化合物の最終濃度は0.1nM〜5μMである。
【0306】
テスト化合物のカプサイシン受容体の作動薬として作用する能力を、化合物に誘発されてカプサイシン受容体を発現している細胞の蛍光応答を測定することにより、化合物濃度の関数として決定する。このデータを上記のように当てはめて、EC50値を得る。一般に、このEC50値は、1マイクロモル未満、好ましくは100nM未満、より好ましくは10nM未満である。各テスト化合物の有効性の範囲も、100nMのカプサイシンが誘発する応答に対する、ある濃度(通常、1μM)のテスト化合物が誘発する応答の割合を算定することにより決定される。シグナルのパーセント(POS)と呼ばれる、この値は以下の式によって算出される:
POS=100テスト化合物による応答/100nMのカプサイシンによる応答
【0307】
この分析は、テスト化合物のヒトカプサイシン受容体作動薬としての能力及び有効性の両方の定量的な評価を提供する。ヒトカプサイシン受容体の作動薬は一般に、100μM未満の濃度で、又は好ましくは1μM未満の濃度で、最も好ましくは10nM未満の濃度で検出可能な応答を誘発する。ヒトカプサイシン受容体の有効性の範囲は、1μMの濃度で、好ましくは30POSより大きく、より好ましくは80POSより大きい。ある作動薬は、以下に記載される試験において、化合物の4nM未満の濃度で、より好ましくは10μM未満の濃度で、最も好ましくは100μM以下の濃度で、検出可能な拮抗薬活性がないことが示されるように、実質的に拮抗薬活性がない。
【0308】
(拮抗薬活性の測定)
テスト化合物をDMSOに溶解し、試験ウェル中のテスト化合物の最終濃度が1μM〜5μMになるように、20μlのKRH緩衝液で希釈して、上記のように調製した細胞に加える。調製細胞及びテスト化合物を含有する96ウェルプレートを、暗所において室温で0.5〜6時間培養する。6時間を越えて培養を続けないことが重要である。蛍光応答を測定する直前に、上記のように測定したEC50値の2倍濃度の、KRH緩衝液中のカプサイシン100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに、最終試料容量が200μlそして最終カプサイシン濃度がEC50値と等しくなるように、FLIPR装置により自動的に加える。試験ウェル中のテスト化合物の最終濃度は、1μM〜5μMである。カプサイシン受容体の拮抗薬は、対応する対照(すなわち、テスト化合物の非存在下に、EC50値の2倍濃度のカプサイシンで処理した細胞)と比べて、10マイクモル以下の濃度で、好ましくは1マイクモル以下の濃度で、この応答を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約80%減少する。カプサイシンの存在下で、拮抗薬なしで観測される応答に対して、50%の減少を示すのに必要な拮抗薬の濃度が、拮抗薬のIC50値であり、この値は1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満が好ましい。
【0309】
このデータを次のように分析する。先ず、陰性対照ウェル(作動性なし)からの平均最大相対蛍光単位(relative Fluorescent unit:RFU)応答を、他の実験ウェエルのそれぞれについて検出した最大応答から引く(引き算する)。2番目に、陽性対照ウェル(作動性ウェル)について平均最大RFU応答を計算する。次いで、それぞれのテスト化合物についての抑制パーセントを式:
抑制パーセント=100−100×(試験細胞におけるピークシグナル/
対照細胞におけるピークシグナル):
を用いて計算する。この抑制パーセントデータをテスト化合物濃度の機能としてプロットして、試験化合物のIC50を、例えば、KALEIDAGRAPHソフトウェア(Synergy Software, Reading, PA)を使用して、このデータを式:
y=m*(1/(1+(m/mm3))
に当てはめて計算する。式中の、yは阻害パーセントであり、mは作動薬の濃度であり、mは最大RFUであり、mはテスト化合物のIC50(作動薬の存在下で拮抗薬の非存在下で観察した応答と比較して、50%の減少をもたらすのに必要な濃度)に対応し、そしてmはヒル(Hill)係数である。また、テスト化合物のIC50は、xがln(テスト化合物の濃度)でyがln(阻害パーセント/(100−阻害パーセント)である直線回帰を用いて算出する。90%より大きいかもしくは15%未満の阻害パーセントを有するデータは避けて、回帰に用いない。この方法で計算したIC50は、e(−遮断/勾配)である。
【0310】
ある好ましいVR1調節剤は、上記試験において、化合物の4nM未満の濃度で、より好ましくは10μM未満の濃度で、最も好ましくは100μM以下の濃度で、検出可能な作動薬活性がないことが示されるように、実質的に作動薬活性がない拮抗薬である。
【実施例7】
【0311】
脊髄後根神経節細胞試験
この実施例は、化合物のVR1拮抗薬又は作動薬活性を評価するための代表的な脊髄後根神経節細胞試験について説明する。
【0312】
DRG(脊髄後根神経節)は新生児ラットから解剖して得、解離して、標準的な方法(Aguayo and White (1992) Brain Research 570: 61-67)を用いて培養する。48時間培養した後、細胞を一回洗浄し、カルシウム感受性染料Fluo4AM(2.5〜10ug/ml;TefLabs, Austin, TX)と共に30〜60分間培養する。次いで細胞を一回洗浄する。細胞にカプサイシンを加えることにより、VR1に依存して細胞内のカルシウムレベルが増加するが、これを蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化として監視する。60〜180秒のデータを集めて最大蛍光シグナルを算定する。
【0313】
拮抗薬試験については、種々の濃度の化合物を細胞に加える。蛍光シグナルを化合物濃度の関数としてプロットして、カプサイシン活性化応答を50%阻害するのに必要な濃度、又はIC50値を決定する。カプサイシン受容体の拮抗薬は、好ましくは1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50値を有している。
【0314】
作動薬試験については、種々の濃度の化合物をカプサイシンを添加していない細胞に加える。カプサイシン受容体の作動薬である化合物は、VR1に依存する細胞内のカルシウムレベルが増加するが、これは蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化として監視する。EC50値又はカプサイシン活性化応答の最大シグナルの50%を達成するのに必要な濃度は、1マイクロモル未満、100ナノモル未満又は10ナノモル未満が好ましい。
【実施例8】
【0315】
疼痛緩和確認のための動物モデル
この実施例は、化合物がもたらす疼痛緩和の程度を評価する代表的な方法について説明している。
【0316】
A.疼痛緩和試験
以下の方法は疼痛緩和を評価するために用いられる。
【0317】
(機械的異痛)
機械的異痛(無害の刺激に対する異常な応答)は本質的に、Chaplanら(J. Neurosci. Methods 53: 55-63(1994))並びに Tal及びEliavら(Pain 64 (3): 511-518 (1998))に記載のようにして評価する。各種硬度を有する一組のフォン・フライのフィラメント(von Frey filaments:一般に、1組に8〜14本のフィラメント)を、後足の足底面にフィラメントが曲がるのに十分な力で適用する。フィラメントを、この位置で3秒以内、又はラットが陽性の異痛応答を示すまで保持する。陽性の異痛応答とは、ラットが刺激された足を上げ、直ちに足を舐めるか振ることである。個々のフィラメントを適用する順序及び頻度は、ディクソンのアップダウン法を用いて決定する。試験は一組の内の中程度のヘアーから始め、最初に適用されたフィラメントでそれぞれ陰性又は陽性応答のどちらが得られたかによって、上行性又は下行性の連続法で次のフィラメントを適用する。
【0318】
このような化合物で処置されたラットが陽性の異痛応答を示すのに、非処置の又は賦形剤で処置された対照のラットに比べて、より硬い強度のフォン・フライのフィラメントでの刺激が必要であれば、化合物は機械的異痛様の症状の改善又は予防に有効であると言える。また更には、化合物を前投与又は後投与して動物の慢性疼痛の試験を実施することができる。このような試験において有効な化合物とは、化合物で処置する前に応答を引き起こす、又は、慢性疼痛であるが未処置のままか賦形剤で処置されている動物に応答を引き起こすフィラメントと較べて、化合物で処置した後に応答を引き起こすのに、より硬度の高いフィラメントを要するものである。テスト化合物は疼痛が発現する前又は後に投与する。疼痛発現の後にテスト化合物を投与する場合は、投与してから10分〜3時間経過した後に試験を実施する。
【0319】
(機械的痛覚過敏)
機械的痛覚過敏(疼痛刺激に対する誇張された応答)は実質的に、Kochら(Analgesia 2 (3): 157-164(1996))に記載のようにして評価する。ラットを、温めた、穴の開いた金属の床でできているオリの個室に入れる。一方の後足の足底面に中程度に針を刺してから、後足を引っ込めている状態を持続している時間(すなわち、動物が足を床に戻す前の足を抱えている時間の量)を測定する。
【0320】
後足を引っ込める時間を統計学的に有意に減少させるならば、化合物は機械的痛覚過敏を減弱させると言える。テスト化合物は、疼痛発現の前又は後で投与してもよい。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与してから10分〜3時間後に実施する。
【0321】
(熱的痛覚過敏)
熱的痛覚過敏(有害な熱刺激に対する誇張された応答)は本質的に、Hargreavesら(Pain. 32 (1): 77-88 (1988))に記載のようにして測定する。つまり、一定の放射熱源を動物の一方の後足の足底面 に当てる。引っ込める時間(すなわち、熱が当てられてから動物が足を動かすまでの時間の量)、乃至は熱閾値(thermal threshold or latency)として記載されているもの、が動物の後足の熱に対する感受性を決定する。
【0322】
後足を引っ込める時間において統計学的に有意な増加が認められれば(すなわち、応答又は潜在する熱閾値が増加すれば)、化合物は熱的痛覚過敏を減弱させると言える。テスト化合物は疼痛発現の前又は後で投与してもよい。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与してから10分〜3時間後に実施する。
【0323】
B.疼痛モデル
化合物の鎮痛効果を試験するために、疼痛を下記の方法を用いて誘発することができる。一般に、本発明の化合物は、雄性SDラット及び少なくとも1つの下記モデルを用いて、先に述べた少なくとも1つの試験方法によって確認されるように、統計的に有意に疼痛を減弱させる。
【0324】
(急性炎症性疼痛モデル)
急性炎症性疼痛モデルはカラギナンモデルを用いて、本質的に、Fieldら(Br. J. Pharmacol. 121 (8): 1513-1522 (1997))に記載のように誘発する。1〜2%のカラギナン溶液100〜200μlをラットの後足に注射する。注射して3〜4時間後に、熱及び機械刺激に対する動物の感応性を上記の方法を用いて試験する。テスト化合物(0.01〜50mg/kg)を試験前又はカラギナン注射前に、動物に投与する。化合物は経口若しくは何れかの非経口経路を介して、又は足に局所的に投与することができる。当該モデルにおいて疼痛を緩和する化合物は、機械的異痛及び/又は熱的痛覚過敏を統計的に有意に減弱させる。
【0325】
(慢性炎症性疼痛モデル)
慢性炎症性疼痛モデルは下記の手順のうちの1つを用いて誘発される。
1.本質的に、Bertorelliら(Br. J. Pharmacol. 128 (6): 1252-1258 (1999))及びSteinら(Pharmacol. Biochem. Behav. 31 (2):455-51 (1998))による記載のように、完全フロインドアジュバント(CFA:加熱死させ乾燥した M.Tuberculosis;0.1mg)をラットの後足に注射する(100μlを背面に、100μlを足底面に)。
2.本質的に、Abbadieら(J. Neurosci. 14 (10):5865-5871 (1994))による記載のように、150μlのCFA(1.5mg)をラットの脛骨足根骨関節に注射する。
どちらの手順においてもCFAの注射前に、動物の後足の機械的及び熱的刺激に対する個々の基準感受性を、各実験動物に対して求める。
【0326】
CFAの注射に続いて、ラットに上記のような熱的痛覚過敏、機械的異痛及び機械的痛覚過敏の試験を行う。症状の進展を確認するために、CFAの注射から5,6、及び7日目にラットを試験する。7日目に、動物をテスト化合物、モルヒネ又は賦形剤で処置する。モルヒネ(1〜5mg/kg)の経口用量が、陽性対照として適当である。一般に、テスト化合物の0.01〜50mg/kgの用量が用いられる。化合物は試験の前に単回ボーラス投与か、又は試験前の数日間、1日当たり1回、2回又は3回投与することができる。薬剤は動物に経口若しくは何れかの非経口経路を介して、又は局所的に投与する。
【0327】
結果は最大潜在的有効性のパーセント(Percent Maximum Potential Efficacy; MPE)として表す。0%MPEを賦形剤の鎮痛効果と定義し、100%MPEを、動物がCFA投与前の基準感受性に戻ることと定義する。当該モデルにおいて疼痛を緩和する化合物は、少なくとも30%のMPEをもたらす。
【0328】
(慢性神経障害性疼痛モデル)
慢性神経障害性疼痛は本質的に、Bennett及びXie(Pain 33:87-107 (1988))による記載のように、ラットの坐骨神経に対する慢性の狭窄損傷(CCI)を用いて誘発される。ラットを麻酔する(例えば、ペントバルビタール50〜65mg/kgの腹腔内用量で、必要により追加用量を投与して)。各後肢の外側面の毛をそり、消毒する。無菌法を用いて、後肢の外側面を大腿の真ん中あたりで切断する。大腿二頭筋をずばり切り開き、坐骨神経を露出する。各動物の一方の後肢上に、坐骨神経の周りにおよそ1〜2mm離して4つのゆるく結ぶ結紮を行う。他方の坐骨神経は結紮せず、処理しない。筋肉を連続法で閉じ、皮膚を創傷クリップ又は縫合糸で閉じる。ラットを上記のように、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び熱的痛覚過敏について評価する。
【0329】
当該モデルにおいて疼痛を緩和する化合物は、試験の直前に単回ボーラス投与、又は試験前の数日間(1日当たり1回、2回又は3回)投与(0.01〜50mg/kg経口、非経口又は局所投与)すると、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び/又は熱的痛覚過敏を統計的に有意に減少させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化075】

(式中の、
【化076】

は、O、N及びSから独立して選ばれる1、2又は3個のヘテロ原子を含有する(残余の環員原子は炭素である)縮合した5又は6員のヘテロアリールを表し(ここにおいて、縮合したヘテロアリールはアミノ、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルキルスルホニルアミノ、C−Cアルカノイルアミノ、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている);
Arは、それぞれがハロゲン、シアノ、アミノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜4個の置換基で置換されているフェニル又は5又は6員のヘテロアリールであり;
Xは、C−Cアルキレンであり(ここにおいて、それぞれの炭素原子はメチル、エチル、及び一緒になってC−Cシクロアルキルを形成する置換基から選ばれる0、1又は2個の置換基で置換されていて、少なくとも1個の炭素原子は置換されている);そして
Yは、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルである):
の化合物又はその薬学的に許容される塩又は水和物。
【請求項2】
化合物が式:
【化077】

(式中の、
【化078】

は、O、N及びSから独立して選ばれる1、2又は3個のヘテロ原子を含有する(残余の環員原子は炭素である)縮合した5又は6員のヘテロアリールを表し(ここにおいて、縮合したヘテロアリールはアミノ、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルキルスルホニルアミノ、C−Cアルカノイルアミノ、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜3個又は0〜2個の置換基で置換されている);
Wは、N、又はRで表される置換基で置換されていてもよいCHであり;そして
は、ハロゲン、シアノ、アミノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、及びモノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノから独立して選ばれる0〜3個の置換基を表す):
を有する、請求項1に記載の化合物又はその塩若しくは水和物。
【請求項3】
【化079】

が、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる0〜2個の置換基で置換されている5員のヘテロアリールである、請求項1又は2に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項4】
【化080】

が、
【化081】

(式中の、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル又は(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキルである)である、請求項3に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項5】
【化082】

が、ヒドロキシ、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルカノイルアミノ又はC−Cアルキルスルホニルアミノから独立して選ばれる0〜3個の置換基で置換されている6員のヘテロアリールである、請求項1又は2に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項6】
【化083】

が、
【化084】

(式中の、Rはヒドロキシ、C−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアルコキシ、モノ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルカノイルアミノ又はC−Cアルキルスルホニルアミノから独立して選ばれる1〜3個の置換基を表す)である、請求項5に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項7】
が、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる1〜3個の置換基を表す、請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項8】
で表される1個の置換基が、パラ位にあるハロゲン又はシアノである、請求項7に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項9】
が正確に1個の置換基を表す、請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項10】
化合物が式:
【化085】

(式中の、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、又はC−Cシクロアルキルであり;
はハロゲン、シアノ、C−Cアルキル又はC−Cハロアルキルであり;そして
はC−Cアルキル、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル及びC−Cハロアルキルから独立して選ばれる1〜2個の置換基を表す):
を有する、請求項8に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項11】
Xが、−CH(R)−、−CH−CH(R)−又は−CH(R)−CH−(各式中のRはメチル又はエチルである)である、請求項1〜10の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項12】
Xが、−CH(CH)−、−CH−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−、−C(CH−、−C(CH−CH−、−CH−C(CH−、−CH(CH)−CH(CH)−、−CH(CH−CH(CH)−、−CH(CH)−CH(CH−又は−CH(CH−CH(CH−である、請求項1〜10の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項13】
化合物が式:
【化086】

を有する、請求項12に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項14】
化合物が式:
【化087】

を有する、請求項12に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項15】
化合物が式:
【化088】

を有する、請求項1〜10の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項16】
Yがトリフルオロメチルである、請求項1〜15の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項17】
化合物が式:
【化089】

【化090】

を有する、請求項16に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項18】
化合物が式:
【化091】

【化092】

を有する、請求項16に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項19】
化合物が式:
【化093】

を有する、請求項16に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項20】
化合物が式:
【化094】

【化095】

を有する、請求項16に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項21】
がハロゲン又はシアノである、請求項16〜20の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項22】
化合物が、
(S)−1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1H−プリン−6(9H)−オン;
(S)−1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1H−プリン−6(9H)−オン;
1-(4−クロロフェニル)-9-(2,2,2−トリフルオロエチル)-2-(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−(2,2−ジフルオロエチル)−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−(2,2−ジフルオロエチル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−(2,2−ジフルオロエチル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−シクロプロピル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−エチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−エチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−エチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2,2−ジメチルブチル)−1H−プリン−6(9H)−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−(4,4−ジフルオロブチル)−1H−プリン−6(9H)−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−[(2R)−3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル]−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−[(2R)−4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル]−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1-(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−[(3R)−4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル]−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−クロロフェニル)−9−メチル−2−[(3S)−4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル]−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−9−メチル−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
1−(6−クロロピリジン−3−イル)−9−エチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン;
3−(4−クロロフェニル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)ピリド[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
3−(4−フルオロフェニル)−7−メチル−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
4−[9−エチル−6−オキソ−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
4−[9−エチル−6−オキソ−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
4−[9−エチル−6−オキソ−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
4−[9−メチル−6−オキソ−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
4−[9−メチル−6−オキソ−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
4−[9−メチル−6−オキソ−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−6,9−ジヒドロ−1H−プリン−1−イル]ベンゾニトリル;
6−(4−クロロフェニル)−5−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−7(6H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−5−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)[1,3]チアゾロ[5,4−d]ピリミジン−7(6H)−オン;
7−メチル−3−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)チエノ[3,2−d]ピリミジン-4(3H)-オン;
9−(2,2−ジフルオロエチル)−1−(4-フルオロフェニル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
9−(2,2−ジフルオロエチル)−1−(4-フルオロフェニル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9−ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
9−エチル−1−(4-フルオロフェニル)−2−(3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル)−1,9ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
9−エチル−1−(4-フルオロフェニル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−2−メチルブチル)−1,9ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;又は
9−エチル−1−(4-フルオロフェニル)−2−(4,4,4−トリフルオロ−3−メチルブチル)−1,9ジヒドロ−6H-プリン−6−オン;
である、請求項1に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項23】
化合物が、カプサイシン受容体作用のインビトロアッセイにおいて、検出可能な作動活性を示さない、請求項1〜22の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項24】
化合物が、カプサイシン受容体のカルシウム非固定化アッセイにおいて、1マイクロモル又はそれ未満のIC50値を有する、請求項1〜23の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項25】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つを、生理学的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる、医薬組成物。
【請求項26】
カプサイシン受容体を発現する細胞を請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つと接触させ、これによりカプサイシン受容体のカルシウム伝達を低減することを含んでなる、細胞カプサイシン受容体のカルシウム伝達を低減する方法。
【請求項27】
細胞を動物体内でインビボ接触させる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞が神経細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞が尿路上皮細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
接触中に化合物、又はその塩若しくは水和物を動物の体液中に存在させる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
化合物、又はその塩若しくは水和物を5マイクロモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
化合物、又はその塩若しくは水和物を1マイクロモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
動物がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
化合物が経口投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
カプサイシン受容体を、バニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを検出可能な程度阻害するのに十分な条件下及び量で、請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つと接触させることを含んでなる、バニロイドリガンドがインビトロでカプサイシン受容体に結合するのを阻害する方法。
【請求項36】
カプサイシン受容体を発現する細胞を、バニロイドリガンドがインビトロでクローン化カプサイシン受容体を発現する細胞と結合するのを検出可能な程度阻害するのに十分な量で、請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つと接触させ、これによりバニロイドリガンドが患者中のカプサイシン受容体に結合するのを阻害することを含んでなる、バニロイドリガンドが患者中のカプサイシン受容体に結合するのを阻害する方法。
【請求項37】
患者がヒトである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
化合物、又はその塩若しくは水和物を5マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
化合物、又はその塩若しくは水和物を1マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つの治療有効量を患者に投与し、これにより患者の疾患を軽減することを含んでなる、患者のカプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する方法。
【請求項41】
患者が、(i)カプサイシンへの暴露、(ii)熱への暴露による火傷若しくは炎症、(iii)光への暴露による火傷若しくは炎症、(iv)催涙ガス、感染病原体、大気汚染若しくは唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮若しくは炎症、又は(v)酸への暴露による火傷若しくは炎症を患っている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
疾患が、喘息又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物少なくとも1つの治療有効量を、疼痛を患っている患者に投与し、これにより患者の疼痛を軽減することを含んでなる、患者の疼痛を治療する方法。
【請求項44】
化合物、又はその塩若しくは水和物を、5マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
化合物、又はその塩若しくは水和物を、1マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
患者が神経障害性疼痛に罹っている、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
疼痛が、乳房切除後疼痛症候群、断端痛、幻肢痛、口腔内神経性疼痛、歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、反射交感神経性ジストロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、線維筋痛、ギラン・バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群、両側性末梢神経障害、灼熱痛、神経炎、ニューロン炎、神経痛、AIDS関連神経障害、MS関連神経障害、脊髄損傷関連の疼痛、手術関連の疼痛、筋骨格の疼痛、背中の疼痛、頭痛、片頭痛、狭心症、陣痛、痔、消化不良、シャルコー痛、腸内ガス、生理、ガン、毒汚染、過敏性腸症候群、炎症性大腸炎、及び外傷:から選ばれる疾患に関連している、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
患者がヒトである、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の痒みを軽減することを含んでなる、患者の痒みを治療する方法。
【請求項50】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の咳又はしゃっくりを軽減することを含んでなる、患者の咳又はしゃっくりを治療する方法。
【請求項51】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の尿失禁又は過活動膀胱を軽減することを含んでなる、患者の尿失禁又は過活動膀胱を治療する方法。
【請求項52】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の更年期症状を軽減することを含んでなる、患者の更年期症状を治療する方法。
【請求項53】
請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の治療有効量を、患者に投与し、これにより患者の減量を促進することを含んでなる、肥満患者の減量を促進する方法。
【請求項54】
化合物が放射性標識されている、請求項1に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物。
【請求項55】
(a)サンプルを、化合物がカプサイシン受容体と結合することが可能な条件下で、請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物と接触させる;及び
(b)カプサイシン受容体に結合した化合物、又はその塩若しくは水和物のレベルを示すシグナルを検出し、これによりサンプル中のカプサイシン受容体の有無を決定する;
の工程からなる、サンプル中のカプサイシン受容体の有無を決定する方法。
【請求項56】
化合物、又はその塩若しくは水和物が、放射性標識化合物であり、そして検出の工程が、
(i)結合した化合物から、結合していない化合物を分離する;及び
(ii)サンプル中の結合した放射性標識の有無を検出する;
工程からなる、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
(a)容器中の請求項24に記載の医薬組成物;及び
(b)前記組成物を疼痛の治療に用いるための説明書;
を含有してなる、包装された医薬製剤。
【請求項58】
(a)容器中の請求項24に記載の医薬組成物;及び
(b)前記組成物を咳又はしゃっくりの治療に用いるための説明書;
を含有してなる、包装された医薬製剤。
【請求項59】
(a)容器中の請求項24に記載の医薬組成物;及び
(b)前記組成物を肥満の治療に用いるための説明書;
を含有してなる、包装された医薬製剤。
【請求項60】
(a)容器中の請求項24に記載の医薬組成物;及び
(b)前記組成物を尿失禁又は過活動膀胱の治療に用いるための説明書;
を含有してなる、包装された医薬製剤。
【請求項61】
カプサイシン受容体調節の応答に関連する疾患を治療する薬剤を製造するための、請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の使用。
【請求項62】
疾患が、疼痛;喘息;慢性閉塞性肺疾患;咳;しゃっくり;肥満症;尿失禁;過活動膀胱;更年期症状;カプサイシンへの暴露;熱への暴露による火傷若しくは炎症;光への暴露による火傷若しくは炎症;催涙ガス、感染病原体、大気汚染若しくは唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮若しくは炎症;又は酸への暴露による火傷若しくは炎症である、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
(i)請求項1〜24の何れか一項に記載の化合物、又はその塩若しくは水和物の少なくとも1つ、及び(ii)イブプロフェンの合剤の治療有効量を疼痛に罹っている患者に投与し、それによって患者の疼痛を軽減することからなる、患者の疼痛を治療する方法。

【公表番号】特表2010−501571(P2010−501571A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525628(P2009−525628)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/018635
【国際公開番号】WO2008/024433
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(500015456)ニューロジェン・コーポレーション (48)
【Fターム(参考)】