説明

ハンドレール用粘着シート

【課題】ハンドレールに貼付し繰り返し使用しても皺、剥がれ等の問題が発生せず、かつ、印刷された絵柄、文字等に違和感のないハンドレール用粘着シートを提供する。
【解決手段】ポリエステル系の熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム2,4と粘着剤層3が積層された粘着シート1,8であって、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム2,4の5%伸張時の応力0歪みが0.4%以下であることを特徴とするハンドレール用粘着シート9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベア等のハンドレール用粘着シートに関し、詳しくは、広告・案内表示等の目的で用いられるハンドレール用粘着シート、該粘着シートの貼付方法および該粘着シートが貼付された乗客コンベア用ハンドレールに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアにおいて、広告手段あるいは情報伝達手段として、乗客と共に移動するハンドレールの表面に、広告や案内等の表示をすることは公知である。
特許文献1には、ハンドレールの化粧ゴム層上に、有機溶剤で表面処理を施したポリウレタンフィルムを固着した模様付ハンドレールが提案されている。しかしながら、特許文献1記載の模様付ハンドレールは、ハンドレールの未加硫化粧ゴム層上に、模様若しくは文字等が描かれたポリウレタンフィルムを、直接、高温、高圧下でプレスするものである。
このため、金型を使用した高温高圧処理を必要とし、かつ、広告等の媒体としてのポリウレタンフィルムはハンドレールと一体化されており、広告対象物や内容を一定期間ごとに変更するなど、表示内容を適宜変更する必要がある広告等の用途には適切でない。
特許文献2には、ハンドレールの表面に着色ウレタンからなる表示と、その上に透明ウレタン樹脂を塗布したコーティング膜を有する乗客コンベア用デザインハンドレールが提案されている。しかし、特許文献2記載の乗客コンベア用デザインハンドレールにおいても、前述同様の問題がある。
【0003】
一方、特許文献3、4には、粘着手段により表面加工されたハンドレール用粘着シートが提案されており、施工の容易さが期待される。しかし、これらの特許文献には、表示材料に関する具体的説明がない為、オレフィン系や塩化ビニル系等の軟質フィルムを貼付すると、ハンドレールの屈曲に追随できず皺や剥がれが発生するという問題があった。また、乗客のいたずらで容易に剥がされるという現実の問題があるが、その提示および解決手段についての開示もされていない。
さらに、特許文献4には、耐摩耗性の点から、合成樹脂フィルムの最表面が摩擦指数1以下のもの、合成樹脂フィルムの少なくとも一つがポリウレタン樹脂フィルム等であるものの態様が記載されているが、特許文献4の記載に準じて粘着シートを長さ方向に5〜15%伸ばして貼付すると、5%伸張後の応力0歪の範囲では、積層フィルムに皺、剥がれ等の問題が発生したり、目視すると印刷された絵柄、文字等に違和感がある等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−305487号公報
【特許文献2】特許第2567969号公報
【特許文献3】登録実用新案第3044426号公報
【特許文献4】特開2003−276975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ハンドレールに貼付し繰り返し使用しても皺、剥がれ等の問題が発生せず、かつ、印刷された絵柄、文字等に違和感のないハンドレール用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために、まず、乗客コンベア等のハンドレールに作用する曲げ伸ばしを詳細に考察した。
乗客コンベアのハンドレールは、寸法安定性を高めるために金属ワイヤーや金属プレートの芯材が挿入され、合成ゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ゴム等のゴム材料などの変形性に富む材料が用いられている。そして、乗客コンベアが走行する際には、エンドレスベルト状のハンドレールが案内レール等に沿って曲げ伸ばしされながら回転を続ける。
ハンドレールが回転部で反転する際、芯材から数mm〜十数mmの厚みをもって被覆された上表面及び上側面は、直線部で貼付された状態を原点とすると、屈曲部では絶えず伸ばされ、一方、芯材より下のハンドレール下側面は、直線部で貼付された状態を原点とすると、屈曲部では絶えず圧縮され、芯材からの距離と曲げ伸ばしされた曲率に応じた伸縮が常に生じている。
このため、ハンドレールの表面に粘着シートを貼付する場合、この伸縮に十分追従できる合成樹脂フィルムを使用しないと、皺や割れ、剥がれ等の問題が生じること、また、粘着シートはハンドレールの下側面まで貼付できる幅がないと乗客によるいたずらを回避できないこと等を知得した。
【0007】
上記知見に基づき、発明者らは鋭意検討の結果、特定の熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムに粘着剤層が積層された粘着シート、あるいは、ハンドレールの下側面まで貼付できる幅の積層シートを用いることにより上記問題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、
(1)熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムと粘着剤層が積層された粘着シートであって、該熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの5%伸張時の応力0歪みが0.4%以下であることを特徴とするハンドレール用粘着シート、
(2)熱可塑性ポリウレタン樹脂がポリエステル系である前記(1)記載の粘着シート、
(3)前記粘着シートを2枚積層したシートで、ハンドレールに貼着される熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの上面のシートに印刷が施されている前記(1)又は(2)記載の粘着シート、
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シートを3〜5%伸ばして貼付することを特徴とするハンドレール用粘着シートの貼付方法、
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シートが、ハンドレールの下面に到達する幅で貼付されたことを特徴とする乗客コンベア用ハンドレール
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハンドレール用粘着シートは、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの5%伸張時の応力0歪みが0.4%以下である、弾性回復性能に優れたフィルムを選択しているので、ハンドレールへの貼着使用時に、ハンドレールの屈曲に完全に追従して変形、回復できる。このため、粘着シートの皺の発生や、印刷された絵柄、文字等の変形による違和感、ハンドレールからの剥離等の問題が生ずることのない、宣伝広告等に適した粘着シートを提供できる。
また、本発明の粘着シートの貼着方法によれば、ハンドレールへの貼着使用時にハンドレールの屈曲に完全に追従して変形、回復できるので、粘着シートの皺の発生や、印刷された絵柄等の変形、ハンドレールからの剥離などを生じさせない貼着方法を提供できる。
さらに、本発明のハンドレールは、動く歩道等の乗客コンベア用に用いれば、広告や案内の表示又はデザイン性、抗菌、ハンドレールの表面保護等の目的で有効に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のハンドレール用の粘着シートは、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムと粘着剤層が積層されたものである。
熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムとして使用する熱可塑性ポリウレタン樹脂は、短鎖グリコール成分とジイソシアネートによる結晶性ウレタンをハードセグメント相とし、長鎖ポリオール成分とジイソシアネートによるゴム状ウレタンをソフトセグメント相とするブロックポリマーである。ここで、長鎖ポリオール成分としては、分子量500〜3000のポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等からなる群から選択される少なくとも1種であり、短鎖グリコール成分とは1,4−ブタンジオール等であり、ジイソシアネートとは例えばMDI等である。
熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法としては、主に、ワンショット法とプレポリマー法がある。ワンショット法によれば、短鎖グリコール、長鎖ポリオール、及びジイソシアネートを混合攪拌(重合)、加熱熟成後、造粒することによって得ることができる。プレポリマー法によれば、予め長鎖ポリオールとジイソシアネートからプレポリマーを生成した後、短鎖グリコールと混合攪拌(重合)、加熱熟成後、造粒することによって得ることができる。
【0010】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の市販品としては、株式会社クラレ製、商品名「クラミロンU」、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「パンデックス」、協和発酵工業株式会社製、商品名「エステン」、大日精化工業株式会社製、商品名「レザミン」、日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「ミラクトラン」、ダウ・ケミカル社製、商品名「ペレセン」、「アイソプラスト」、BASF社製、商品名「エラストラン」、バイエル社製、商品名「パンデックス」、「デスモパン」、「テキシン」、シーダム社製「ハイグレス」等が挙げられる。
【0011】
本発明に使用される熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、印刷性と物性のバランス等の点から、ポリエステル系ポリオールを用いて得られたポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂が、特に好ましい。
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、ポリカルボン酸と低分子ポリオールとの縮合物で、分子量500〜10000のものが挙げられる。具体的には、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリ(ジエチレンアジペート)(PDA)、ポリ(プロピレンアジペート)(PPA)、ポリ(テトラメチレンアジペート)(PBA)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)(PHA)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)(PNA)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリオール、PEAとPDAのランダム共重合体、PEAとPPAのランダム共重合体、PEAとPBAのランダム共重合体、PHAとPNAのランダム共重合体、又はε−カプロラクトンを開環重合して得たカプロラクトンポリオール、β−メチル−δ−バレロラクトンをエチレングリコールで開環することにより得られたポリオール等が挙げられる。
また、ポリエステル系ポリオールとして、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、ダイマー酸(混合物)、パラオキシ安息香酸、無水トリメリット酸、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどの酸の少なくとも1つと、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどのグリコールの少なくとも1つとの共重合体が挙げられる。
これらは、単独で又は2以上混合して使用することができる。
【0012】
本発明に使用される熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムは、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂をTダイ法等の押出し成形法を適用して得ることができる。この際、原料にワックス、可塑剤を添加すると、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム表面へのブリードアウトや、印刷性の低下の問題が起こり易くなるため、好ましくない。
熱可塑性ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料、抗菌剤、無機充填剤、難燃化剤等の添加剤を、単独で又は組合わせて添加することができる。
【0013】
このようにして得られた本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムは、5%伸張時の応力0歪みが0.4%以下であり、好ましく0.3%以下である。
本発明において5%伸張時の応力0歪みとは、23℃雰囲気下に於いて、幅25mm、縦方向のつかみ間隔が100mmのフィルム試料を、万能引張型試験機、例えばテンシロン(商品名、東洋ボールドウィン社製)を用いて、縦方向に300mm/分の速度で5%伸張させ、直ちに同速度で元のつかみ間隔100mmまで反転させ、そのときに得られる応力及び歪みを軸とするヒステリシス曲線から、反転時に応力が0となった時点の歪み値(%)である。
5%伸張時の応力0歪みが0.4%以内の熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを用いて、所定の範囲に伸ばして貼付すれば、繰り返し使用後において、粘着シートの皺の発生や、印刷された絵柄文字等の変形による違和感、ハンドレールからの剥離等の問題が生ずることがない。
【0014】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを基材とする粘着シートの総厚は、0.10〜0.35mmの範囲が好ましく、0.15〜0.25mmが更に好ましい。
粘着シートの総厚が0.10mmより薄いと、粘着シートの生産時や貼付け時の取り扱いが不便となり、0.35mmを超えると、貼付部分と未貼付部分又は重ね貼り部分の段差が大きくなり過ぎて、いたずらや不用意に剥がされる危険性が高くなる。
【0015】
また、耐摩耗性および乗客の触感等の観点から、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムは、5%モジュラスが1〜4Mpa、JIS K7311によるA硬度が85〜98度、特に88〜95度であることが好ましい。熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの物性が前記の範囲であれば、ハンドレールに貼着使用時に、適度の触感と耐摩耗性を備えることができる。
【0016】
本発明に用いる粘着剤は、従来から一般的に使用されているアクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜使用でき、特に限定されるものではないが、粘着力と再剥離性を設計しやすいアクリル系粘着剤がより好ましい。
粘着剤層の厚さは、10〜50μmが好ましく、さらに好ましくは20〜35μmである。粘着剤層は、予めセパレーター上に粘着剤層を形成した後、該粘着剤層上に基材フィルムである熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを積層すればよい。
【0017】
粘着剤の粘着力はJIS Z0237に従って測定した粘着力が、5〜20N/25mmであることが好ましく、7〜15N/25mmであることが更に好ましい。粘着剤の接着力が20N/25mmを超えるものは、粘着シートの貼り替え時に剥離し難く、5N/25mmより低いものではハンドレールの屈曲による粘着シートの伸縮で剥がれが発生するリスクがあることから好ましくない。
【0018】
本発明に使用される粘着シートの幅は、使用されるハンドレールとの関係から、101〜120mmの範囲が好ましく、110〜120mmが更に好ましい。粘着シートの幅が101mmより狭いと、粘着シート貼着部と未貼着部が乗客の目線に入り易く、違和感が生じることや、乗客の指先で剥がされるという問題が発生しやすくなる。また、120mmより広くなると、ハンドレールに粘着シートの貼着施工が難しくなる等の問題が発生する。
【0019】
本発明のハンドレール用粘着シートは、広告や案内等の粘着シートとする場合は、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムと粘着剤層が積層された粘着シートを2枚積層した粘着シートとし、ハンドレールに貼着される側の粘着シートの熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの上面に印刷により絵柄、文字等が施された構成とすればよい。
この構成では、上層の粘着シートは、印刷を保護する役割を担うものである。
【0020】
印刷により絵柄、文字等を施すには、一般にハンドレールは濃色に着色されているので、これを隠蔽してハンドレール上に鮮明な広告や案内等の表示を施すため、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムに着色されていることが好ましく、白色の着色がさらに望ましい。
本発明においては、印刷層の形成、すなわちコロナ放電処理やアンカー剤のコート処理等は必ずしも必要でなく、直接ポリウレタン樹脂フィルムに印刷することができる。
また、使用されるインクについては、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムを侵さない溶剤で製造されたインクが望ましく、無溶剤のドライトナー方式の印刷がより望ましい。
【0021】
本発明のハンドレール用粘着シートの貼付方法では、粘着シートをハンドレールに貼付するに際して、熱可塑性ポリウレタン樹脂製フィルムと粘着剤が積層された、前記の粘着シートを3〜5%伸ばして貼り付ける。
3〜5%伸ばした範囲で貼り付ければ、ハンドレールへの貼り付け後に、印刷された絵柄、文字等の変形による違和感がなく、又はンドレールによる繰り返し屈曲作用を受けても、粘着シートに皺が入ったり、粘着シートが剥がれたりすることがない。
【0022】
本発明の粘着シートをハンドレールに貼着するには、粘着剤層を保護するセパレーターを剥がしながらゴムロール、スキージー等でハンドレールに圧着する簡易貼付治具を使用すれば容易に貼付できる。
さらに、3〜5%伸ばしながら貼付するには、簡易治具の粘着シート繰り出し部に3〜5%の伸びに対応したテンションを付与できるテンションコントローラーを設置すれば、連続的に貼着できる。
【0023】
本発明の乗客コンベア用ハンドレールは、粘着シートがハンドレールの下面に到達する幅で貼付されている。
粘着シートが下面に到達する幅を有しない場合は、粘着シート貼着部と未貼着部が乗客の目線に入り易く、違和感が生じたり、乗客の指先で剥がされるという問題が発生しやすくなる。
【実施例】
【0024】
以下に、図1を参照しながら、実施例、比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0025】
実施例1
(ラミ(保護層用)粘着シートの作製)
5%伸張後の応力0歪が0.3%で75μm厚のポリエステル系透明熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム(シーダム社製)2に、25μm厚のアクリル系粘着剤層3が形成されたセパレーター(剥離紙:図示省略)を積層して、印刷粘着シートを保護するためのラミ用粘着シート1を作製した。
実施例2
(印刷用粘着シートおよび印刷粘着シートの作製)
5%伸張後の応力0歪が0.3%で100μm厚のポリエステル系白色熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム4(同社製)に前記の25μm厚のアクリル系粘着剤層3が形成されたセパレーター5を積層することで、印刷用粘着シート6を作製した。
次いで、印刷用粘着シート6の表面に電子写真方式で10mm角の格子模様の印刷部分7を施し、印刷済粘着シート8を作製した。
ラミ用粘着シート1のセパレーターを剥がし、印刷面を保護する形で印刷済粘着シート8に積層することにより、ラミ用粘着シート1と印刷済粘着シート8の2枚の粘着シートを貼り合わせたハンドレール用粘着シート9を得た。
粘着シート9の粘着力は、前記のJIS Z0237に従って測定した粘着力が9N/25mmであった。
【0026】
実施例3〜4、比較例1〜2
図2は、ハンドレールの模式断面図および部位説明図であり、図3は、粘着シートの評価に用いた屈曲試験機の説明図である。
図2に示すハンドレール11に、実施例2によるハンドレール用粘着シート9を貼着する時の張力を、3%(実施例3)、5%(実施例4)、1.5%(比較例1)、7%(比較例2)として、ハンドレール用粘着シート9の実用性を評価するため、屈曲試験を行った。
まず、貼着時の張力は、両端に屈曲試験機への取付用孔加工を施した長さ2mのハンドレールを図3に示す屈曲試験機20に固定し、そのハンドレール11上に、一端は固定され、他端は水平方向に伸張可能な把持部を有する伸張器(図示省略)を用いて、セパレータを剥離した粘着シート9を所定の伸張率で引き伸ばした状態で、上方向からゴムローラーでハンドレール11上に圧着して貼着した。
はじめに、ハンドレール11の上面部12を貼着し、しかる後、上側面13、下側面14の順に貼着した。
なお、ハンドレール11は、中央に5本の鋼線を芯材15として含み、補強布等にゴム材料を含浸積層したもので、幅wが80mm、xy間の上表面周長が145mmのものである。
【0027】
(屈曲試験)
粘着シートが貼着されたハンドレール10の屈曲試験について、第3図に基づいて説明する。
図3において、屈曲試験機20は、水平フレーム21とこれと直角をなす垂直フレーム22とで構成される逆L字型をなし、水平フレーム21には直径75cmのガイド23が固着されている。直径75cmのガイド23は、ハンドレール運転時の回転部に相当する引張力、圧縮力を粘着シート付ハンドレールサンプル11に加えるためのものである。また、水平フレーム21には、ハンドレール11の一端を保持するためのチャック24が設けられている。チャック24は、ハンドレールの他端側の上下動に追随して回動できるよう軸支されている。
一方、垂直フレーム22には、上部に可動固定された棒状案内ガイド25に沿って摺動ブロック26が、上下に往復運動可能に保持され、該ブロック26にハンドレール用チャック27が軸支されている。往復動は、エアーシリンダーにより980mmのストロークで、20秒サイクルで上下往復運動を繰返し、この往復動に伴って、直径75cmの屈曲変形がハンドレールに負荷される構成である。
試験条件は25℃、60%RHの条件下、20秒サイクルで水平―屈曲状態を繰り返し、8時間運転後、すなわち、1440回屈曲した後の皺、剥がれ等を評価した。
【0028】
(屈曲試験の評価)
第2図のハンドレールの上面12、上側面13、下側面14の各部位に分けて観察して、次のように評価した。
○:上面、側面共に皺、浮き、剥がれがなし。
△:上面は皺、浮き、剥がれなし。側面に皺、浮き、剥がれが1箇所発生。
×:上面は皺、浮き、剥がれなし。側面に皺、浮き、剥がれが複数箇所発生。
【0029】
(貼着時のハンドレール用粘着シートの外観評価)
屈曲試験機に110mm幅、長さ1m、印刷は10mm角の格子のハンドレール用粘着シートを所定の割合に伸ばして貼着し、目視により印刷された絵柄の違和感を評価した。
○:違和感がない。
×:違和感がある。
屈曲試験および貼着時外観の評価結果をまとめて表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1、2で得られた、印刷用粘着シート(5%伸張時の応力0歪:0.3%)とラミ用粘着シート(5%伸張時の応力0歪:0.3%)を積層したハンドレール用粘着シートにおいて、ハンドレールへの貼着張力が、3%、5%の実施例3、4では、貼着後外観において印刷の違和感がなく、屈曲試験後の上面、側面共に皺、浮き、剥がれがなく良好であった。
これに対して、貼着張力を1.5%とした比較例1では、屈曲試験で上面に皺、浮き、剥がれがないが、側面に皺が複数箇所発生していた。また、貼着張力を7%とした比較例2では、貼着後外観において、印刷の格子柄が変形し違和感のあるものであった。
一方、比較例3で得られた、印刷粘着シート(5%伸張時の応力0歪:0.8%)とラミ粘着シート(5%伸張時の応力0歪:0.3%)を積層した粘着シートでは、屈曲試験において、上面には皺、浮き、剥がれがないが、側面には浮きが1箇所発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のハンドレール用粘着シートは、ハンドレールの屈曲に完全に追随して変形,回復するので、粘着シートの皺の発生や、印刷された絵柄、文字等の変形による違和感、ハンドレールからの剥離等の問題が生ずることのない、宣伝広告等に適した粘着シートとして利用できる。
また、本発明の粘着シートの貼着方法は、ハンドレールへの貼着使用時に粘着シートの皺の発生や、印刷された絵柄、文字等の変形、ハンドレールからの剥離などを生じさせない貼着方法として利用できる。
さらに、本発明のハンドレールは、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベア用に、広告や案内の表示又はデザイン性、抗菌、ハンドレールの表面保護等の目的で有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例による粘着シートの模式断面図である。
【図2】ハンドレールの模式断面図、部位説明図である。
【図3】粘着シートの評価に用いた屈曲試験機の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1. ラミ用粘着シート
2. 透明ポリウレタン樹脂フィルム
3. 粘着剤層
4. 白色ポリウレタン樹脂フィルム
5. セパレーター
6. 印刷用粘着シート
7. 印刷部分
8. 印刷済粘着シート
9. ハンドレール用粘着シート
10. 粘着シート付ハンドレール
11. ハンドレール
12. ハンドレールの上面
13. ハンドレールの上側面
14. ハンドレールの下側面
15. ハンドレールの芯材
20. 屈曲試験機
21. 屈曲試験機の水平フレーム
22. 屈曲試験機の垂直フレーム
23. 屈曲試験機の案内ガイド
24. 屈曲試験機のチャック
25. 屈曲試験機の摺動ブロック案内ガイド
26. 屈曲試験機の摺動ブロック
27. 屈曲試験機のチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムと粘着剤層が積層された粘着シートであって、該熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの5%伸張時の応力0歪みが0.4%以下であることを特徴とするハンドレール用粘着シート。
【請求項2】
熱可塑性ポリウレタン樹脂がポリエステル系である請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートを2枚積層したシートで、ハンドレールに貼着される熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムの上面のシートに印刷が施されている請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シートを3〜5%伸ばして貼付することを特徴とするハンドレール用粘着シートの貼付方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シートが、ハンドレールの下面に到達する幅で貼付されたことを特徴とする乗客コンベア用ハンドレール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−347648(P2006−347648A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172748(P2005−172748)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】