説明

ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムおよびハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法

【課題】優れた光学特性を有し、かつ十分な表面硬度を有する、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを、簡便な方法で得ることができる、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法および、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】ノルボルネン系樹脂基材フィルムを成形する工程と、得られたノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、少なくとも2種類の有機成分を有するハードコート層を成形する工程を有し、かつ該ハードコート層が相分離している、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法およびハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムとその製造方法に関する。より詳しくは、ノルボルネン系樹脂フィルムを基材とする、相分離したハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系樹脂は、透明性、耐熱性、耐薬品性等に優れることから、各種光学部品の材料として注目されている。特に光学フィルム用途として好適な性能を有しており、例えば、偏光膜にノルボルネン系樹脂シートを保護層として積層した偏光フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ノルボルネン系樹脂から得られる光学フィルムは、表面硬度が不十分であり、偏光膜の保護層や位相差フィルム、表示素子基板等に用いる際に、傷付きが生じやすく、その傷による光学特性の低下等が生じるという問題があった。この問題点を克服するため、フィルム表面に紫外線硬化性樹脂等からなるハードコート層を形成する試みがなされているが(特許文献2参照)、ハードコート層との密着性が不十分であったり、ハードコート層を設けても表面硬度が十分に発現しなかったりする等の問題があり、ノルボルネン系樹脂の優れた光学特性を維持しながら表面硬度を改善した積層体は、未だ開発されていなかった。
【特許文献1】特開平6−51117号公報
【特許文献2】特開平8−12787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、優れた光学特性を有し、かつ十分な表面硬度を有するハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムとその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、特定のハードコート層が積層されてなり、該特定のハードコート層が相分離していることを特徴とする。
前記特定のハードコート層は、(a)脂環構造を有する構造単位を有するポリマー成分と、(b)硬化性モノマー成分を含有してなるコーティング組成物より形成されていることが好ましい。
【0006】
上記ノルボルネン系樹脂基材フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
さらに、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、特定のハードコート層の表面が、中心線平均粗さ0.1〜20.0μmの凹凸を有することが好ましい。
【0007】
本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法は、ノルボルネン系樹脂により基材フィルムを形成する工程と、得られたノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、少なくとも2種類の有機成分を有するハードコート層(以下、「特定コート層」ともいう)を形成する工程を有し、且つ該特定コート層が相分離していることを特徴とする。
【0008】
上記ノルボルネン系樹脂基材フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
また、ノルボルネン系樹脂基材フィルム表面に対してプラズマ処理を行った後に、ハードコート層を形成することが好ましい。
また、上記ノルボルネン系樹脂基材フィルムは、ノルボルネン系樹脂を溶融押出成形することにより得られることが好ましい。
さらに、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法は、ノルボルネン系樹脂基材フィルムを延伸する工程をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた光学特性を有し、ノルボルネン系樹脂基材フィルムとの密着性が良好で、かつ十分な表面硬度を有するハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを、簡便な方法で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、基材フィルムがノルボルネン系樹脂フィルムからなり、当該ノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、特定コート層が積層されてなる。
【0011】
<ノルボルネン系樹脂基材フィルム>
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムを構成するノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系化合物を少なくとも1種含む単量体組成物を(共)重合して得られた樹脂、または、必要に応じてこの樹脂に水素添加して得られた樹脂である。
【0012】
(単量体組成物)
前記単量体組成物に含まれるノルボルネン系化合物としては、たとえば、下記式(1)で表されるノルボルネン系化合物を挙げることができる。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;または酸素、窒素、イオウもしくはケイ素を含有していてもよい1価の基を表す。前記1価の基としては、1価の有機基、シアノ基、アミノ基などが挙げられる。さらに、1価の有機基としては、酸素、窒素、イオウもしくはケイ素を含む連結基を有していてもよい、置換または非置換の炭素数1〜15の炭化水素基などが挙げられる。xは0または1〜3の整数、yは0または1を表す。
【0015】
また、R1とR2、またはR3とR4とが相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、あるいは、R1とR2、R3とR4、またはR2とR3とが相互に結合して単環もしくは多環の炭素環または単環もしくは多環の複素環を形成してもよい。ここで、「R1とR2とが相互に結合してアルキリデン基を形成する」とは、R1とR2のいずれか一方が脱離し、残りの基が2重結合により環構造と結合している状態(下記式(1’))を意味する。R3とR4の場合も同様である。また、上記炭素環または複素環としては、脂環式、芳香族環が挙げられる。
【0016】
【化2】

【0017】
上記式(1)で表されるノルボルネン系化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記式(1)で表されるノルボルネン系化合物としては、たとえば、以下の化合物が例示できるが、これらの化合物に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0018】
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
【0019】
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
【0020】
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
【0021】
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
【0022】
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
本発明で用いられるノルボルネン系化合物の種類および使用量は、求められる樹脂の特性に応じて適宜選択される。
【0023】
上記式(1)で表されるノルボルネン系化合物のうち、酸素原子、窒素原子、イオウ原子およびケイ素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を分子内に少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という)を有する化合物が、他の素材との接着性や密着性に優れている点で好ましい。特に、上記式(1)中、R1およびR3が水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくは水素原子またはメチル基であり、R2またはR4のいずれか一つが極性構造を有する基であって他が水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である化合物は、得られる樹脂の吸水(湿)性が低くなる点、紫外線吸収剤の相溶性に優れる点等で好ましい。さらに、極性構造を有する基が下記式(2)で表わされる基であるノルボルネン系化合物は、得られる樹脂の耐熱性と吸水(湿)性とのバランスがよく、特に好ましく用いられる。
【0024】
−(CH2zCOOR (2)
式(2)中、Rは置換または非置換の炭素数1〜15の炭化水素基を表し、zは0または1〜10の整数を表す。
【0025】
上記式(2)において、zの値が小さいものほど得られる重合体の水素添加物のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れるので、zが0または1〜3の整数であることが好ましく、さらに、zが0である単量体はその合成が容易である点で好ましい。また、上記式(2)におけるRは、炭素数が多いほど得られる重合体の水素添加物の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、耐熱性を保持する観点からは炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、特に炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
上記式(1)において、上記式(2)で表される基が結合した炭素原子に炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合している化合物は、耐熱性と吸水(湿)性のバランスの点で好ましい。さらに、上記式(1)において、xが0または1でありyが1である化合物は、反応性が高く、高収率で重合体が得られること、また、耐熱性が高い重合体水素添加物が得られること、さらに工業的に入手しやすいことから好適に用いられる。
【0027】
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂を得るにあたっては、本発明の効果を損なわない範囲で前記ノルボルネン系化合物と共重合可能な単量体を単量体組成物に含ませて重合することができる。
【0028】
これらの共重合可能な単量体としては、たとえば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの環状オレフィン;1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエンなどの非共役環状ポリエンを挙げることができる。
【0029】
これらの共重合性単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(重合方法)
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂の重合方法については、上記ノルボルネン系化合物を含む単量体組成物の重合が可能である限り、特に制限されるものではないが、たとえば、開環重合または付加重合によって重合することができる。
【0030】
(1)開環重合
開環重合による重合体の製造は、ノルボルネン系化合物についての公知の開環重合反応により行うことができ、前記ノルボルネン系化合物を含む単量体組成物を、重合触媒、重合反応用溶媒、および必要に応じて分子量調節剤を用いて、開環重合させることによって製造することができる。
【0031】
(a)重合触媒
本発明において、単量体組成物の重合を開環(共)重合反応により行う場合は、メタセシス触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0032】
このメタセシス触媒は公知の触媒を用いることができ、具体的には、(A)W、MoおよびReを有する化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物(以下、化合物(A)という)と、(B)デミングの周期律表IA族元素(たとえばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(たとえば、Mg、Caなど)、IIB族元素(たとえば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(たとえば、B、Alなど)、IVA族元素(たとえば、Si、Sn、Pbなど)、またはIVB族元素(たとえば、Ti、Zrなど)を有する化合物であって、この元素と炭素との結合またはこの元素と水素との結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、化合物(B)という)との組み合わせからなる触媒である。また、触媒の活性を高める添加剤(C)としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができ、たとえば以下の(1)〜(9)を用いることができる。
【0033】
(1)単体ホウ素、BF3、BCl3、B(O−n−C493、(C2532、BF、
23、H3BO3などのホウ素の非有機金属化合物、Si(OC254などのケイ素の
非有機金属化合物;
(2)アルコール類、ヒドロパーオキシド類およびパーオキシド類;
(3)水;
(4)酸素;
(5)アルデヒドおよびケトンなどのカルボニル化合物およびその重合物;
(6)エチレンオキシド、エピクロルヒドリン、オキセタンなどの環状エーテル類;
(7)N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、アニリン、モルホリン、ピペリジンなどのアミン類およびアゾベンゼンなどのアゾ化合物;
(8)N−ニトロソジメチルアミン、N−ニトロソジフェニルアミンなどのN−ニトロソ化合物;
(9)トリクロルメラミン、N−クロルサクシノイミド、フェニルスルフェニルクロリドなどのS−ClまたはN−Cl基を含む化合物。
【0034】
メタセシス触媒の使用量は、前記化合物(A)と重合に供される全単量体のモル比(化合物(A):全単量体)が、通常1:500〜1:50,000、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる量が望ましい。
【0035】
化合物(A)と化合物(B)との割合(化合物(A):化合物(B))は、金属原子比で1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30が望ましい。
化合物(A)と化合物(C)との割合(化合物(C):化合物(A))は、モル比で0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1が望ましい。
【0036】
(b)重合溶媒
開環重合反応において用いられる溶媒としては、重合に供される単量体組成物や触媒等が溶解し、かつ触媒が失活することがなく、また、生成した開環重合体が溶解するものであれば特に限定されないが、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化アルカン;クロロベンゼンなどのハロゲン化アリール化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なお、このような溶媒は、前記ノルボルネン系化合物、共重合性単量体および/またはメタセシス触媒を溶解するための溶媒の他、分子量調節剤溶液を構成する溶媒としても用いることができる。
【0037】
溶媒の使用量は、溶媒と重合に供する単量体組成物との重量比(溶媒:単量体組成物)が、通常1:1〜10:1、好ましくは1:1〜5:1となる量が望ましい。
(c)分子量調節剤
得られる開環重合体の分子量は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によって調節することも可能であるが、分子量調節剤を反応系に共存させることによっても調節することができる。
【0038】
好適な分子量調節剤としては、たとえばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類;およびスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−エチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類を挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
分子量調節剤の使用量は、開環重合反応に供される単量体1モルに対して、通常0.005〜0.6モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。
(d)その他の重合条件
前記開環重合体は、前記ノルボルネン系化合物を開環重合させて、もしくは前記ノルボルネン系化合物と共重合性単量体とを開環共重合させて得ることができるが、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなど、主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下でノルボルネン系化合物を含む単量体組成物を開環重合させてもよい。
【0040】
(2)付加重合
付加(共)重合による重合体の製造は、ノルボルネン系化合物についての公知の付加重合反応により行うことができ、前記ノルボルネン系化合物を含む単量体組成物を、重合触媒、必要に応じて重合反応用溶媒、および必要に応じて分子量調節剤を用いて、付加重合させることによって製造することができる。
【0041】
(水素添加反応)
前記開環重合反応により得られる重合体は、その分子中にオレフィン性不飽和結合を有している。また、前記付加重合反応においても、重合体がその分子中にオレフィン性不飽和結合を有する場合がある。重合体分子中に存在するオレフィン性不飽和結合は経時着色やゲル化等の劣化の原因となる場合があるので、このオレフィン性不飽和結合を飽和結合に変換する水素添加反応を行うことが好ましい。
【0042】
水素添加反応は、通常の方法、すなわちオレフィン性不飽和結合を含有する重合体の溶液に公知の水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行うことができる。
【0043】
水素添加重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定した値で通常50
%以上、好ましく70%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、水素添加重合体は熱や光に対する安定性が優れており、成形体として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができるため好ましい。
【0044】
前記方法で得られた重合体がその分子内に芳香族基を有する場合、この芳香族基は経時着色やゲル化等劣化の原因とはならず、むしろ、機械的特性や光学的特性において有利な作用を及ぼすこともあるため、このような芳香族基については必ずしも水素添加する必要はない。
【0045】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0046】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。これらの触媒は、粉末でも粒状でもよい。
【0047】
これらの水素添加触媒は、通常、開環重合体と水素添加触媒との重量比(開環重合体:水素添加触媒)が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
(ノルボルネン系樹脂の特性)
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂は、30℃のクロロホルム中における固有粘度〔η〕inhが好ましくは0.2〜2.0dl/g、さらに好ましくは0.35〜1.0d
l/g、特に好ましくは0.4〜0.85dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が好ましくは5000〜100万、さらに好ましくは1万〜50万、特に好ましくは1.5万〜25万であり、重量平均分子量(Mw)が1万〜200万、さらに好ましくは2万〜100万、特に好ましくは3万〜50万であることが望ましい。固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重
量平均分子量が上記範囲にあると、ノルボルネン系樹脂は機械的強度に優れ、破損しにくいノルボルネン系樹脂基材フィルムが得られる。
【0048】
また、前記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは130℃以上である。Tgが上記範囲内にあると、長期使用においても高い信頼性を有するノルボルネン系樹脂基材フィルムが得られる。
【0049】
(紫外線吸収剤)
本発明において、ノルボルネン系樹脂には紫外線吸収剤が添加されることが好ましい。当該紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することにより、ノルボルネン系樹脂を劣化させる原因となる活性ラジカル種の発生を抑制し、劣化により生じる着色や透明性の低下を防ぐ。また、得られるハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを位相差フィルムや偏光板保護フィルムとして用いる際には、偏光膜への紫外線の透過を阻害し、偏光膜の劣化を防ぐ役割を有する。当該紫外線吸収剤としては公知の紫外線吸収剤を任意に用いることができるが、ノルボルネン系樹脂との相溶性に比較的優れており、揮発性の少ない高分子量ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0050】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の融点は、ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg−35℃〜Tg+75℃、特に好ましくはTg−30℃〜Tg+70℃である。融点がTg−35℃より低いと、紫外線吸収剤の揮発性が増し、当該紫外線吸収剤やその分解物がフィルムやフィルム成形機等に付着するという問題がある。一方、融点がTg+75℃より高いと、フィルム成形時等に紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードし、成形冷却の過程で融点が高いため相溶できずに表面で固化するためにロールまたはフィルム表面に付着するという問題がある。
【0051】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−〔2H−ベンゾトリアゾール−2−イル〕フェノール〕2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらのうち、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−〔2H−ベンゾトリアゾール−2−イル〕フェノール〕が特に好ましく用いられる。
【0052】
紫外線吸収剤の添加量としては、ノルボルネン系樹脂100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。紫外線吸収剤の添加量が0.1重量部未満では、十分な紫外線吸収効果が見られず、本発明の効果が発現されにくい。また、20重量部を超えると、得られたフィルムの可視光領域での光線透過率が低下することがある。
また、全紫外線吸収剤中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の割合は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上である。
【0053】
(その他の成分)
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、ノルボルネン系樹脂にさらに、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0054】
酸化防止剤としては、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0055】
また、後述する溶液キャスティング法によりノルボルネン系樹脂基材フィルムを製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂フィルムの製造を容易にすることができる。
【0056】
これら添加剤は、本発明に用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムを製造する際に、ノルボルネン系樹脂などとともに混合してもよいし、ノルボルネン系樹脂を製造する際に添加することにより予め配合してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるが、ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部であることが望ましい。
【0057】
(ノルボルネン系樹脂機材フィルムの製造方法)
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムは、前記ノルボルネン系樹脂、または前記ノルボルネン系樹脂と前記添加剤とを含有する樹脂組成物を溶融押出成形することにより、あるいは溶媒に溶解してキャスティング(キャスト成形)することにより好適に成形することができる。
【0058】
(A)溶融成形
本発明に用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムは、前記ノルボルネン系樹脂、または前記ノルボルネン系樹脂と前記添加剤とを含有する樹脂組成物を溶融押出成形することにより製造することができる。これらのうち、成形方法が簡便なため設備コストが安価であり、溶媒を使用しないためランニングコストが低く廃棄物も少ないという点で、溶融押出成形が特に好ましく用いられる。
【0059】
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、通常5〜500μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは20〜100μmであることが望ましい。フィルムの厚さが上記範囲にあると、十分な強度のフィルムが得られ、また、複屈折性、透明性、外観性が良好なフィルムを得ることができる。
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムは、光透過性が通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であるのが望ましい。
【0060】
(プラズマ処理)
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムは、特定コート層との接着性を高める目的で、表面処理を施したものであってもよい。当該表面処理としては、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等が挙げられる。上記表面処理のうち、とりわけプラズマ処理を用いることにより、ノルボルネン系樹脂基材フィルムと特定コート層を強固に密着することができる。
これらの表面処理のうち、特に大気圧(常圧)プラズマ処理を施すことが好ましく、ヘリウム、アルゴン等の希ガスもしくは窒素、空気などの放電ガスと必要に応じて、酸素、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水蒸気、メタン、4フッ化メタンなどを1種以上含有する反応ガスによって表面改質することができる。例えば、特開2000−356714号公報に記載の方法に準拠して、ノルボルネン系樹脂基材フィルム表面に、プラズマ処理を施すことができる。
【0061】
(延伸処理)
本発明で用いられるノルボルネン系樹脂基材フィルムは、延伸処理を施すことにより位相差フィルムとして使用することができる。
【0062】
延伸処理の方法としては、ノルボルネン系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸する方法が用いられる。
一軸延伸処理の場合、延伸速度は、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、より好ましくは100〜1,000%/分である。
【0063】
二軸延伸処理の場合には、同時に二方向に延伸処理を行う方法、一軸延伸処理した後にこの延伸処理した方向と異なる方向に延伸処理する方法を適用することができる。このとき、2つの延伸軸の交わり角度は、目的とする光学フィルム(位相差フィルム)に要求される特性に応じて適宜決定され、特に限定されないが、通常、60〜120度の範囲である。また、延伸速度は、通常1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分であり、各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
延伸処理温度は、特に限定されるものではないが、用いるノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+15℃の範囲である。延伸処理温度を上記範囲内に設定することにより、得られる延伸フィルムに位相差ムラが発生することを抑制することができ、また、屈折率楕円体の制御が容易となる点で好ましい。
【0065】
延伸倍率は、目的とする光学フィルムに要求される特性に応じて適宜決定され、特に限定されないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が上記範囲にあると、得られる延伸フィルムの位相差を容易に制御することができる。延伸処理されたフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒間以上、好ましくは30秒間〜60分間、さらに好ましくは1〜60分間保持した後に冷却することが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なくて安定した位相差フィルムが得られる。
【0066】
上記のようにして延伸処理が施されたフィルムは、延伸処理により分子が配向した結果、透過光に位相差を付与することができるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さなどにより制御することができる。
【0067】
<特定コート層>
本発明で用いられる特定コート層は、相分離する少なくとも2種類の有機成分を有することを特徴とする。このような構成を有することにより、特定コート層表面は、通常、凹凸を有するものとなり、当該凹凸の中心線平均粗さは、通常0.1〜1.0μm、好ましくは0.15〜0.8μmである。表面に凹凸を有することにより、当該特定コート層は、高硬度を付与する役割の他に、防眩性を付与する役割を有していてもよい。好ましい防眩性としては、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムのヘーズが5〜65であり、全光線透過率が80〜98%である特性を与える性能である。
【0068】
特定コート層は、通常、得られるハードコート層が相分離してれば特に制限は無いが、少なくとも2種類の有機成分を有するコーティング組成物(以下、「特定コーティング組成物」ともいう)をノルボルネン系基材フィルム上に塗布し、乾燥または光硬化等により塗膜として形成する。
【0069】
上記少なくとも2種類の有機成分としては、互いに相溶性に乏しくハードコート層の状態で相分離となる有機成分の組合せであり、乾燥や光硬化によってタックのない塗膜を形成できるものであれば特に制限はない。コーティング組成物中で相分離していても、溶媒中で均一であり、乾燥後に相分離するものであってもよい。例えば、複数の異種ポリマーの組合せ、ポリマーと硬化性モノマーとの組合せ、複数の異種硬化性モノマーの組合せ等が挙げられる。なお、ここでいう硬化性モノマーとは、光硬化性モノマーおよび熱硬化性モノマーを指すが、硬化時間が短いことなどから、光硬化性モノマーが好ましい。
【0070】
上記ポリマーとしては、熱可塑性樹脂が挙げられ、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン樹脂、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。
【0071】
(a)脂環構造を有する構造単位を有するポリマー成分
相分離させる手段としてはSP値の異なる成分の組合せが一般に知られており、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等を有する硬化性モノマー成分に対しては、上記(a)脂環構造を有する構造単位を有するポリマーと組み合わせることで相分離させることが可能である。このような脂環構造としてはイソボルニル基が好ましい。脂環構造を有するポリマーとしてはイソボルニル基を有する重合性モノマーにより導入することができる。また、脂環構造を導入することで、ノルボルネン系樹脂基材フィルムとの良好な密着性が発現する。
上記脂環構造を有する構造単位は、ポリマーを構成する全構造単位を100重量%としたときに、通常50〜99重量%、好ましくは60〜95重量%、特に好ましくは75〜90重量%有することが好ましい。脂環構造を有する構造単位が上記範囲内であるとノルボルネン系樹脂基材フィルムとの密着性が良好であり好ましい。
【0072】
(b)硬化性モノマー
上記(b)硬化性モノマーとしては、好ましくは、分子末端に不飽和結合を有し、光によるラジカル重合可能なモノマー類である。例えば、末端基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニル基などの末端不飽和基を有するモノマー類が挙げられ、これらのモノマー類の中では光硬化性(光重合性)と硬化物の物性が総合的に良好なことからアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を分子末端に有する光重合性モノマー類、即ち(メタ)アクリレート類の使用が好ましく、特に2〜6官能の多官能(メタ)アクリレート類の使用が好ましい。
【0073】
具体的には、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド4モル付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エタンジオールジグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸2モル付加物(アクリル酸またはメタアクリル酸の付加反応物を表す。以下の2モル付加物も同意味である。)、1,2−プロパンジオールジグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸2モル付加物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸2モル付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸2モル付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸2モル付加物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル・(メタ)アクリル酸3モル付加物などを脂肪族系、脂環族系および芳香族系の多官能(メタ)アクリレート類として例示できる。
【0074】
特定コーティング組成物の成分として、光硬化性モノマーを用いる場合には、通常、組成物中に光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、本発明に限定されるような化合物はなく、一般的に使用されている光重合開始剤、即ち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ジアセチル類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、ヒドロキシフェニルケトン類、アミノフェニルケトン類などのカルボニル化合物系光重合開始剤、チウラムサルファイド類、チオキサントン類などの有機硫黄化合物系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド類などの有機燐化合物系光重合開始剤などがすべて使用できる。本発明ではこのような多種類の光重合開始剤を単独に、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
特定コーティング組成物には、さらに、上記2種類の有機成分に共通して相溶性のある有機溶媒や、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラーなどを添加しても良い。
【0075】
特定コーティング組成物は、上述した成分を混合して得られる。
特定コート層は、当該特定コーティング組成物をノルボルネン系基材フィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥させた後、好ましくは紫外線等の放射線を照射して形成することができる。
特定コート層の膜厚は、特に限定されないが、膜厚が薄すぎると高い表面硬度を得ることが困難であり、厚すぎると基材のカールが発生するなどの不具合が発生しやすくなるため、通常は0.5〜25μm、好ましくは2〜15μmである。フィルムの厚さが上記範囲にあると、十分な硬度の積層体が得られ、また、複屈折性、透明性、外観性が良好な積層体を得ることができる。
特定コート層のコンフォーカル顕微鏡により測定した中心線平均粗さは通常0.1〜10.0μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.1〜3μmの凹凸を有する。特定コート層の中心線平均粗さが上記範囲内にあると高い表面硬度発現とカール抑制が両立できるため好ましい。
【0076】
<ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム>
本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系樹脂基材フィルムに特定コート層が積層されてなり、ノルボルネン系樹脂基材フィルムが有する複屈折性、透明性および耐熱性を損なわずに、表面硬度を大きく改善できるという効果を有する。
【0077】
特に、溶融押出成形により得られたノルボルネン系樹脂基材フィルムは、生産性、位相差発現性、膜厚精度などで良好な性能を有する一方で、特に表面硬度が低いという問題点があるが、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、溶融押出成形により得られたフィルムをノルボルネン系樹脂基材フィルムとして用いても、表面硬度が大きく改善されるという驚くべき効果を有する。
さらに、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系樹脂基材フィルムと特定コート層との密着性が極めて高いという特徴も有している。
【0078】
特に、本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを光学用途に用いる場合にはノルボルネン系樹脂基材フィルムに紫外線吸収剤を添加することが好ましいが、紫外線吸収剤を含有するフィルムは、特にハードコート層との密着性に乏しいという問題点がある。本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を有するフィルムをノルボルネン系樹脂基材フィルムとして用いても、特定コート層との高い密着性を有し、表面硬度が大きく改善されるという驚きべき効果を有する。
本発明のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム表面の鉛筆硬度は、通常2H以上、好ましくは3H以上である。また、全光線透過率は、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。さらに、プラズマ処理を行うことでJIS K5600に記載の方法によるクロスカット密着性にて100/100の基材との高密着性を有する積層体とすることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【0080】
また、各評価は、下記の方法により実施した。
<ガラス転移温度(Tg)>
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気で昇温速度が20℃/分の条件でガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)を測定した。
<全光線透過率>
日本分光(株)製の分光光度計V7300を用い、全光線透過率を測定した。
<ヘーズ(曇価)>
ヘーズメーターHZ−2(スガ試験機(株)製)を用い、JIS K7105に記載の方法によりヘーズを測定した。
【0081】
<密着性(碁盤目剥離試験)>
セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用いて、JIS−D0202に記載の方法にて測定した。
<鉛筆硬度>
JIS K5600に記載の方法により荷重500gにて測定した。
<UV透過率>
日立ハイテクノロジーズ社の分光光度計「U3310」を用いて、波長380nmにおけるUV透過率を測定した。
<中心線粗さ>
レーザーテック社のコンフォーカル顕微鏡「OPTELICS C130」を用いて、中心線粗さRaを測定した。
【0082】
[合成例1]
(ノルボルネン系樹脂の合成)
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 227.5部とビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 22.5部、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部、トルエン(開環重合反応用溶媒)750部とを窒素置換した反応容器内に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(1.5モル/l)0.62部と、t−ブタノール/メタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0083】
このようにして得られた開環共重合体溶液 4,000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C 0.48部を添加し、水素ガス圧力100kg/cm、反応温度160℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加された環状オレフィン系樹脂Aを得た。樹脂AのTgは140℃であった。また、GPC法により測定したポリスチレン換算のMn、Mw、Mw/Mnは、それぞれ、24,000、67,000、2.8であり、固有粘度(ηinh)は0.49dl/gであった。また、樹脂Aの透湿度は、110(g・25μm/m・24hr)であった。
【0084】
[作製例1]
<ノルボルネン系樹脂基材フィルムの成形>
2軸押出機を用い、樹脂A100部に対して、(ペンタエリスリチルテトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート:融点115℃) 0.3部、ベンゾトリアゾール化合物として、(2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]:融点199℃)を1.5部の配合比で270℃で溶融混練りした後、ストランド上に押出し、水冷後フィーダールーダーを通してペレットを得た。得られたペレットを、100℃、3時間、窒素下で循環除湿乾燥した後、ホッパーに送り、スクリュウ径75mmφの単軸押出機を用いて樹脂温度270℃で溶融させた。
この溶融樹脂を両軸排出型のギアポンプにより、280℃に加温したポリマーフィルター(目開き5μm)を介して700mm幅コートハンガーダイに導いた。ダイから出た樹脂は250mmφのキャストロールに落として圧着し、キャストロール軸に対し水平に設置した2本の冷却ロールで順に圧着した後剥離し引取って、80μmの厚みのフィルム(A−1)を得た。
フィルム(A−1)をプラズマ処理機(積水化学工業(株)製)を用いて周波数10kHz、窒素雰囲気下にてプラズマ処理を行い、フィルム(A−2)を得た。得られたフィルム(A−2)の表面張力は、73mN/m(濡れ試薬測定)であった。
【0085】
[作製例2]
<ノルボルネン系樹脂基材フィルムの成形>
ベンゾトリアゾール系化合物を用いなかった以外は作製例1と同様にして、80μmの厚みのフィルム(a−1)を得た。フィルム(a−1)についても作製例1と同様にしてプラズマ処理を行ってフィルム(a−2)を得た。得られたフィルム(a−2)の表面張力は、73mN/m(濡れ試薬測定)であった。
【0086】
[調製例1]
<特定コーティング組成物1の調製>
イソボロニルメタクリレート147.2g、メチルメタクリレート2.8g、エチルヒドロキシアクリレート4.0g、メタクリル酸10.0g 及びプロピレングリコールモノメチルエーテル160.0gからなる混合物を混合した。この混合液を、撹拌羽根、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で110℃ に加温したプロビレングリコールモノメチルエーテル200.0g に、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後、110℃ で30分間反応させた。
【0087】
その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル17gの溶液を滴下して110℃ で30分間反応させた。その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド1 .5gとハイドロキノン0.1gを含む5.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、グリシジルメタクリレート17.3gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させ、数平均分子量8,800、重量平均分子量18,000の重合体を得た。得られた重合体5重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート75重量部、光開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド5重量部およびパーフルオロアルキル基含有オリゴマー0.1重量部に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを溶媒として不揮発分が23重量%となるように調整し、特定コーティング組成物1を得た。
【0088】
[調製例2]
<特定コーティング組成物2の調製>
イソボロニルメタクリレート171.6g、メチルメタクリレート2.6g、メタクリル酸9.2gからなる混合物を混合した。この混合液を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で110℃ に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル330.0gに、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1.8gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル80.0g溶液と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後、110℃ で30分間反応させた。その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2gをプロピレングリコールモノメチルエーテル17.0gの溶液を滴下してテトラブチルアンモニウムブロマイド1.4gとハイドロキノン0.1gを含む5.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル22.4gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gの溶液を2時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させ、数平均分子量5,500、重量平均分子量18,000の重合体を得た。得られた重合体5重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート50重量部、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート50重量部および光開始剤である2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン13重量部を、溶媒であるメチルイソブチルケトンに混合して不揮発分が60重量%となるように調整し、特定コーティング組成物2を得た。
【0089】
[比較調製例]
<コーティング組成物の調製>
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート250部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1,000部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめグリシジルメタアクリレート750部、ラウリルメルカプタン3.7部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に該混合液を約2時間を要して系内に滴下し、同温度で3時間保温した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。得られた重合体の重量平均分子量は19,000(GPCによるスチレン換算)であった。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸507部、メトキノン2.0部およびトリフェニルホスフィン5.4部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。
【0090】
同温度にて8時間保温した後、メトキノン1.4部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、ワニスを得た。このワニス25部にトリメチロールプロパントリアクリレート50部、多官能ウレタンアクリレート(荒川化学社工業株式会社製、商品名「ビームセット557」)25部を混合して酢酸エチルにより固形分を50%になるよう調整し、これに、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンを配合物の固形分に対し5%添加し、溶解させた後、酢酸エチルによって固形分濃度を80%に調整した紫外線硬化性組成物を調製した。この紫外線硬化性組成物65.1部、メチルエチルケトン25.8部およびシリカ(アエロジル(平均粒径:約12nm)、日本アエロジル社製)9.17部を、攪拌用オープンドラム(内側直径約40cm、内側高さ58cm)に配合し、直径約11cmの羽で、150分間、ディスパー攪拌した。その後、メチルエチルケトンで希釈し、固形分40%のコーティング組成物を得た。
【0091】
[実施例1]
製作例1で得られたフィルム(A−2)表面に、調製例1で得られた特定コーティング組成物1を環境温度23℃で、バーコーター(No.18)を用いて塗布し、膜厚が6μmとなるように50℃で10分間加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、超高圧水銀灯で紫外線を1J/cm のエネルギーとなるように露光してコート層を形成し、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(B−1)を得た。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例2]
製作例2で得られたフィルム(a−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(B−2)を得た。評価結果を表1に併せて示す。
[実施例3]
製作例1で得られたフィルム(A−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(B−3)を得た。評価結果を表1に併せて示す。
[実施例4]
製作例1で得られたフィルム(A−2)を用い、調製例2で得られた特定コーティング組成物2を環境温度23℃で、バーコーター(No.5)を用いて塗布し、膜厚が4μmとなるように80℃で加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、超高圧水銀灯で紫外線を1J/cmのエネルギーとなるように露光してコート層を形成し、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(B−4)を得た。評価結果を表1に併せて示す。
【0093】
[比較例]
製作例1で得られたフィルム(A−1)を用い、比較調製例で得られたコーティング組成物をグラビアリバース法にて塗布し、80℃で60秒間乾燥し、150mJ/cmの紫外線を照射し、硬化させて、膜厚4μmのコート層を形成し、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(b)を得た。評価結果を表1に併せて示す。
【0094】
【表1】

【0095】
上記実施例において、本発明の構成によるハードコートフィルムは、高い鉛筆硬度を示し、全光線透過率が高く優れていることが確認された。本発明によりタッチパネルや偏光板などの光学用フィルムなどに適用できる優れた基材を提供できることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、少なくとも2種類の有機成分を有するハードコート層が形成されてなり、該ハードコート層が相分離していることを特徴とする、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層が、(a)脂環構造を有する構造単位を有するポリマー成分と、(b)硬化性モノマー成分を含有してなるコーティング組成物より形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記(a)脂環構造を有する構造単位を有するポリマー成分の、脂環構造構造を有する単位の含有量が、ポリマー全構成単位を100重量%としたときに、50〜99重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項4】
ノルボルネン系樹脂基材フィルムが、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の表面が、中心線平均粗さ0.1〜10.0μmの凹凸を有することを特徴とする、請求項1〜4に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項6】
ノルボルネン系樹脂基材フィルムを成形する工程と、得られたノルボルネン系樹脂基材フィルム上に、少なくとも2種類の有機成分を有するハードコート層を形成する工程を有し、該ハードコート層が相分離していることを特徴とする、ハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
ノルボルネン系樹脂基材フィルムが、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする、請求項6に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
ノルボルネン系樹脂基材フィルム表面に対してプラズマ処理を行った後に、ハードコート層を形成することを特徴とする、請求項6または7に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
ノルボルネン系樹脂基材フィルムが、ノルボルネン系樹脂を溶融押出成形することにより得られることを特徴とする、請求項6〜8に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
ノルボルネン系樹脂基材フィルムを延伸する工程をさらに有することを特徴とする、請求項6〜9に記載のハードコート層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−137290(P2009−137290A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289873(P2008−289873)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】