説明

ハードディスク装置の金属テクスチャリング用の添加剤を含有しない繊維

記憶媒体ディスクをテクスチャリングする部材を形成するための布帛が、かつ、二酸化チタンを実質的に含有しない繊維から形成された不織ポリマー材料から形成される。また、金属記憶媒体ディスクの表面をテクスチャリングするための方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布帛に関連する。より詳細には、本発明は、添加剤を含有しない、ハードディスク装置の表面をテクスチャリング(texturing)するための布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク(ハードディスク装置内の)のような記憶媒体の製造の分野では、こうしたディスク表面は、円滑で欠陥が無いように表面をテクスチャリングしなければならない。これらディスクの記憶容量が増加しているので、ディスク表面の製造仕様もまた高くなっている。
【0003】
ナイロンは、ディス表面をテクスチャリングするための布帛として通常用いられる材料である。布帛用に製造されるナイロン繊維は、通常、ポリマーから紡がれ、このポリマーには、押出およびペレット化の間、様々なレベルで溶融物に二酸化チタン(TiO)が混和される。添加剤は、プロセスを簡単にし、レオロジー特性を与え、光阻止作用(light inhibition)を与え、またつや消しのために用いられる。
【0004】
添加剤を含まない繊維は知られているが、これらの繊維は、概ね透明で光沢度が高い。これらの性質は、共に一般的な布帛の用途には望ましくない。このため、これらの完全にブライトな繊維は特定用途のみに用いられる。
【0005】
ハードディスク装置(例えば、ウィンチェスタードライブ(Winchester Drive))の製造で用いられる精密にテクスチャリングされた金属媒体の引掻き傷は、表面が一層円滑になり、5オングストロームより低く、なるにつれ大きな問題となりつつある。
【0006】
表面の平均粗さが大きい場合には問題とならなかった微細な引掻き傷が、最新の記憶媒体では高率で欠陥となる。テクスチャリングした表面を得るために既存のテクスチャリングテープを研磨剤なしに用いた場合、欠陥ディスクに見られるのと同様な小さな引掻き傷が形成されることが判明している。これは、繊維に用いられている二酸化チタンが原因であると考えられる。
【0007】
公知の布帛は、二酸化チタンが充填された標準的な繊維を用いており、深い引掻き傷を形成することが分った。こうして形成された引掻き傷によって、1平方インチ当り120ギガバイトの高度なディスク装置用には許容できない表面となる。
【0008】
二酸化チタンを含有しない布帛は、ガラス媒体への用途では使用されてきた。ガラス媒体への用途で、二酸化チタンを含有しない繊維が用いられるのは、引掻き傷とは関連せず、減摩した繊維によるガラス表面の汚染を管理するためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ディスク表面をテクスチャリングするたの布帛用の添加剤を含有しない繊維が必要である。こうした布帛は、よく知られた布帛(繊維)で、かつ、製造が容易であることが望ましい。こうした布帛を使用することによって、表面の引掻き傷が低減され、ディスクの記憶容量が技術が許容する容量に釣り合うことが更に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
記憶媒体ディスクをテクスチャリングする部材を形成するための布帛が、二酸化チタンを実質的に含有しない繊維から形成した不織ポリマー材料から形成される。好ましい繊維は、約0.02デニール以下、より好ましくは約0.01〜約0.02デニールである。
【0011】
前記布帛のポリマーは、ナイロンおよびポリウレタンの組合せとすることができ、前記ナイロンとポリウレタンの比率は約1:1〜約3:1である。
【0012】
金属製記憶媒体ディスクの表面をテクスチャリングするための方法が、繊維から形成され、かつ、二酸化チタンを実質的に含有しない不織ポリマー材料を具備した布帛を準備する段階と、前記布帛を前記ディスクに接触させる段階と、前記布帛またはディスクを互いに相対的に移動させ、前記ディスク表面をテクスチャリングする段階とを含んで成る。
【0013】
前記方法は、前記ディスクと前記布帛との間に、研磨剤/潤滑剤スラリーのような流体を導入する段階を含むことができる。前記布帛は、約0.02デニール以下、より好ましくは約0.01〜約0.02デニールのテープとして提供される。
【0014】
本布帛は、ナイロンおよびポリウレタンから形成され、前記ナイロンとポリウレタンの比率は約1:1〜約3:1である。
【0015】
前記方法は、前記ディスクを回転平面内で回転し、かつ、該回転平面と同一平面内で揺動させることを含む。前記テープは、前記回転平面と平行な平面内で直線方向に移動させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の上記特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0017】
本発明の利益および利点は、添付図面を参照して説明する以下の詳細な説明から当業者には一層容易に明らかとなろう。
【0018】
本発明は種々の形態の実施例を許容するが、現時点で好ましい実施形態を図面に示し、また以下に説明する。本明細書の開示は本発明の例示であり、本発明を示された特定の実施形態に限定する趣旨ではないことは理解されるべきである。
【0019】
更に、本明細書の本項目の名称、すなわち「発明の詳細な説明」は、米国特許商標庁の要求に従うものであって、本明細に開示される主題を意味したり、或いはそれを限定する趣旨であると推論すべきではない。
【0020】
現時点で添加剤を含まないテクスチャリング布帛は、二酸化チタンを含まないナイロン布帛である。この布帛は、繊維であると考えられている媒体の引掻き傷の主要原因を大幅に低減(本質的に除去)する。引掻き傷の高さが低ければ、標準的な繊維では不可能な、或いは非常に困難な高い生産性と高い最大記憶容量とを達成する。(記憶媒体)ディスク表面は、「引掻き傷」を管理されたレベルの深さ、幅、密度にテクスチャリングされることは当業者には理解されよう。「引掻き傷」との語が表面のテクスチャリングに関連して使われるが、テクスチャリングそれ自体は引掻き傷ではなく、またテクスチャリングはむしろ表面現象であってパターン化され管理されており、(望ましくない)引掻き傷はテクスチャリングよりも深く不規則である。
【0021】
二酸化チタンを含まない0.01〜0.02デニールの布帛が、二酸化チタンを含有する繊維から成る同様の布帛よりも、予想外に引掻き傷を形成しないことが判明している。また、ナイロンとポリウレタンから形成された布帛が、媒体ディスクの製造で用いるのに必要な構造と物理的安定性を備えていることが判明している。テクスチャリングのために用いる本布帛は、ナイロンとポリウレタンの比率が50/50〜75/25であり、この比率が適切な安定性を有した布帛を形成する。他の比率も本発明の範囲および精神に包含される。
【0022】
ディスクのテクスチャリングは、図1に略示するような装置10を用いて実施される。図1において、ディスク12は、該ディスク12と布帛14とが相対移動するように、布帛14に接触させられる。本構成では、ディスク12は、ディスク12と布帛テープ14との相対動作が参照番号16で示す回転動作と、参照番号18で示す揺動動作となるように、前記布帛テープに接触させられる。すなわち、ディスク12は(図面に対して垂直方向の)中心軸A12を中心として回転し、該中心軸は、また、回転16の平面と同じ平面内で揺動動作18をする。同時に、布帛14(図示するテープのような部材として形成される)は、テープ14が連続的に移動するように、供給ロール22から給送され、巻取ロール24へ排送されて参照番号20で示すように移動する。
【0023】
ディスク12とテープ(布帛)14の相対動作に加えて、参照番号26にて指示するスラリーのような流体が、テクスチャリングに影響を与えたり(例えば、ディスク12の表面粗さに影響する)、ディスク12とテープ14との間の摩擦を低減するために、スラリー供給装置28からディスク12とテープ14との間に供給される。このスラリー26は、研磨および潤滑の双方をなす。
【0024】
図2は、二酸化チタンTiOを含有し或いは含有していない種々のデニールの布帛に対する引掻き傷の総平均(Ra)を示したグラフである。図2のグラフにおいて、dはデニールを示している。また、OSAは、(望ましいテクスチャリングとの比較において)表面上の望ましくない引掻き傷を検知、計数し、または、その高さ(1枚あたりの引掻き傷の総平均OSAとして示されている)を測定するための光学的表面分析器(代表的な使用例はカンデラモデル5100(Candela Model 5100)等である)を表している。上記望ましいテクスチャリングは、Ra(TMS)として示されている。Raは、媒体製造において、粗度または反対に平滑度を測定するために用いられる統計的に得られる平均であり、典型的にオングストローム(10−10に等しい長さの単位)で表され、「平均粗度」を示している。ディスクの望ましい粗度は、例えば、ディスクを形成する材料(金属)や、所望の記憶容量のような特定の要因に基づいて予め決定された高さであり、通常、望ましい「幅(band)」で与えられることは当業者には理解されよう。TMSは測定で用いる機器である。ここで用いた機器は、シュミット測定システムズ(Schmitt Measurement Systems)社により製造されたモデルTMS2000−RCである。この機器は、表面を乱さないように非接触法を用いている。
【0025】
図2の結果から理解されるように、0.02および0.015デニールの布帛は、TiOを含有する同じ材料(約444および339)と比較して、著しく引掻き傷が少なくなっている(1枚あたりの引掻き傷の総平均OSA値が約174および144)となっている。0.01デニールでは、1枚あたりの引掻き傷の総平均は、TiOを含有する材料がTiOを含有しない布帛よりも低い値を示している。これは、布帛のデニール値が低いことに起因すると考えられる。
【0026】
本明細書で参照した全ての特許は、本開示にその旨特に記載なくとも、本明細書と一体をなすものとして参照する。
【0027】
本開示では、「a」または「an」との語は、単数および複数の双方を含んでいる。反対に、複数の項目は、それが適切な場合には、単数を含むものとする。
【0028】
本発明の新規な概念の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正と変形が可能であることは明らかである。記述の特定の実施形態は限定する趣旨ではないことは理解されるべきである。この開示は、特許請求の範囲が、該特許請求の範囲内の全ての変形を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の原理による布帛と共に示す金属記憶媒体ディスクの表面をテクスチャリングするための装置の略図である。
【図2】OSA値とRa値とを、テープの繊維にTiOを含有する或いは含有しない場合について、様々なデニールの繊維材料で比較したグラフであり、OSA値はX軸から上方に延びる棒グラフで示され、Ra値はOSA値の概ね上方のブロックで示されている。
【符号の説明】
【0030】
10 テクスチャリング装置
12 ディスク
14 布帛(テープ)
16 回転動作
18 揺動動作
20 テープの移動方向
22 供給ロール
24 巻取ロール
26 スラリー
28 スラリー供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維から形成され、かつ、二酸化チタンを実質的に含有しない不織ポリマー材料を具備した、記憶媒体ディスクをテクスチャリングする部材を形成するための布帛。
【請求項2】
前記布帛は、約0.02デニール以下である請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記布帛は、約0.01〜約0.02デニールである請求項1に記載の布帛。
【請求項4】
前記布帛はナイロンおよびポリウレタンから形成される請求項1に記載の布帛。
【請求項5】
前記布帛のナイロンとポリウレタンの比率は約1:1〜約3:1である請求項4に記載の布帛。
【請求項6】
前記布帛は、約0.01〜約0.02デニールである請求項5に記載の布帛。
【請求項7】
金属製記憶媒体ディスクの表面をテクスチャリングするための方法において、
繊維から形成され、かつ、二酸化チタンを実質的に含有しない不織ポリマー材料を具備した布帛を準備する段階と、
前記布帛を前記ディスクに接触させる段階と、
前記布帛またはディスクを互いに相対的に移動させ、前記ディスク表面をテクスチャリングする段階とを含んで成る方法。
【請求項8】
前記ディスクと前記布帛との間に流体を導入する段階を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記布帛はテープとして提供される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記布帛は、約0.02デニール以下である請求項7に記載の布帛。
【請求項11】
前記布帛は、約0.01〜約0.02デニールである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記布帛はナイロンおよびポリウレタンから形成される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記布帛のナイロンとポリウレタンの比率は約1:1〜約3:1である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記布帛は、約0.01〜約0.02デニールである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ディスクを回転平面内で回転し、かつ、該回転平面と同一平面内で揺動させる請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記テープは、前記回転平面と平行な平面内で直線方向に移動させられる請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−536689(P2007−536689A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512608(P2007−512608)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051296
【国際公開番号】WO2005/106855
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】